(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下部走行装置のメインフレームの幅方向両外側に一対に設けられたトラックローラフレームと、前記トラックローラフレームのそれぞれから延設されると共に前記メインフレームに挿入され相互に対向する一対の梁集成体と、前記一対の梁集成体を相互に連結するアクチュエータとを備え、前記アクチュエータを伸縮させることにより、前記一対のトラックローラフレームを相互に接離してゲージ幅を変更する作業機械において、前記ゲージ幅を縮幅状態にロックするロック部を具備した、作業機械のゲージ幅のロック機構であって、
前記ロック部は、
前記一対の梁集成体の相互に対向する各先端に一対に設けられ、前後方向に位置をずらして配設されたブラケットと、
前記一対のブラケットの相互間に配置され、上下方向に移動可能に前記メインフレームの幅方向中央に取り付けられたピンとを備えて構成され、
前記一対のブラケットは、相互に対向する先端部に、上方に傾斜する面が前記メインフレームの幅方向内側を向く傾斜面と、前記傾斜面の前記メインフレームの幅方向外側に連設され前記ピンを係止する下向き凹部とをそれぞれ備えた
ことを特徴とする、作業機械のゲージ幅のロック機構。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、ゲージ幅(すなわち下部走行体の左右の履帯の相互間)を可変にしたものがある(例えば特許文献1)。搬送時または移動時は、ゲージ幅を狭くすることで、狭い場所への移送を可能にし、作業時は、ゲージ幅を広げることで、効果的に転倒を防止できる。
【0003】
以下、特許文献1に開示された作業機械について説明する。括弧付きの符号は特許文献1で使用されている符号を示す。
特許文献1に開示の作業機械では、下部走行装置が、メインフレーム(12)と、推進用駆動手段(24),(26)を有するトラックローラフレーム(52),(60)と、トラックローラフレーム(52),(60)の相互間に連結された油圧アクチュエータ(98)とを具備する。油圧アクチュエータ(98)を伸縮させることで、トラックローラフレーム(52),(60)をメインフレーム(12)に対して接離させることができる。すなわちゲージ幅を拡縮できる。
【0004】
そして、特許文献1に開示の作業機械には、ゲージ幅を縮幅状態にロックする機構(以下「ロック機構」ともいう)と、ゲージ幅を縮幅状態とする際にトラックローラフレームの片寄りを防止する機構(以下「センター出し機構」ともいう)とが備えられている。以下、これらのロック機構とセンター出し機構とについて説明する。
【0005】
先ずロック機構について説明する(
図5など参照)。この作業機械には、油圧アクチュエータ(98)を収縮させてトラックローラフレーム(52),(60)を第1の位置としたときに(ゲージ幅を縮幅状態としたときに)、トラックローラフレーム(52),(60)をそれぞれメインフレーム(12)に対して前記第1の位置に保持するための一対の係止手段(146)が備えられている。
この係止手段(146)は、メインフレーム(12)にブラケット(148)を介して設けられた一対のプレート(150),(152)と、トラックローラフレーム(52)にブラケット(158)を介して設けられたプレート(159)と、ピン(162)とを備えて構成されている。
プレート(150),(152)の相互間にプレート(159)を挿入した状態で、これらのプレート(150),(152),(159)に設けられた貫通孔(154),(156),(160)にピン(162)を挿通することで、トラックローラフレーム(52),(60)を前記第1の位置に保持して、ゲージ幅を縮幅状態にロックすることができる。
【0006】
次にセンター出し機構について説明する(
図3など参照)。この作業機械では、メインフレーム(12)の下壁部(50)の概ね幅方向中央に、停止部材(88)がボルトまたは他の適当な方法に固定されている。油圧アクチュエータ(98)を収縮させて、トラックローラフレーム(52),(60)を互いに近接させたときに(ゲージ幅を狭くしたときに)、トラックローラフレーム(52),(60)から内方(幅方向内側)に延在する梁部材(58),(66)が、メインフレーム(12)の前記停止部材(88)に当接して、トラックローラフレーム(52),(60)の内方への移動が停止する。
特許文献1には明記はされていないが、前記停止部材(88)を設けることで、ゲージ幅が縮幅する際にトラックローラフレームが片側に片寄ってしまうことが防止されると推察される。つまり、トラックローラフレーム(52),(60)は、その梁部材(58),(66)が、幅方向中央の停止部材(88)を越えて移動することを規制されるので、油圧アクチュエータ(98)が収縮した際に、各トラックローラフレーム(52),(60)は、その梁部材(58),(66)が停止部材(88)の両端に接した状態で位置を揃えて停止するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の作業機械には以下のような課題がある。
つまり、ロック機構を構成する部品とは別に、センター出し機構を構成する停止部材(88)が必要となっていた分、これらの機構を構成する部品点数及びその組み付け作業が増加していた。
【0009】
また、上述したようにロック機構では、メインフレーム(12)にブラケット(148)を介して設けられたプレート(150),(152)の貫通孔(154),(156)と、トラックローラフレーム(52)にブラケット(158)を介して設けられたプレート(159)の貫通孔(160)との位置をあわせて、これらの貫通孔(154),(156),(160)にピン(162)を挿通することでゲージ幅が縮幅状態にロックされる。
このため、多数の部品〔すなわちブラケット(148),(158)及びプレート(150),(152),(159)〕を介して、メインフレーム(12)側の貫通孔(154),(156)と、トラックローラフレーム(52),(60)側の貫通孔(160)との位置を一致させる必要があるため、高い製造精度が要求される。
【0010】
また、係止手段(146)を構成する部品の内、プレート(150),(152)はメインフレーム(12)から突き出た構造となっており、ブラケット(148)及びプレート(159)はトラックローラフレーム(52)から突き出た構造となっている。このため、作業中に、これらのプレート(150),(152),(159)が周囲の岩などの障害物に衝突しやすい。プレート(150),(152),(159)が障害物に衝突して変形すると、プレート(150),(152),(159)に形成された貫通孔(154),(156),(160)の位置関係がずれてしまい、これらの貫通孔(154),(156),(160)にピン(162)を挿入できずゲージ幅を縮幅状態にロックできなくなるおそれがある。
【0011】
また、ゲージ幅を縮幅状態にロックするためには、メインフレーム(12)側のプレート(150),(152)及びトラックローラフレーム(52)側のプレート(159)に形成された貫通孔(154),(156),(160)にピン(162)を挿通する作業が必要となる。
【0012】
本発明は、上記のような課題に鑑み創案されたもので、製造コストの削減及び破損の抑制を図ることができると共に、ゲージ幅を縮幅状態にロックするための手間を省けるようにした、作業機械のゲージ幅のロック機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記の目的を達成するために、本発明の作業機械のゲージ幅のロック機構は、下部走行装置のメインフレームの幅方向両外側に一対に設けられたトラックローラフレームと、前記トラックローラフレームのそれぞれから延設されると共に前記メインフレームに挿入され相互に対向する一対の梁集成体と、前記一対
の梁集成体を相互に連結するアクチュエータとを備え、前記アクチュエータを伸縮させることにより、前記一対のトラックローラフレームを相互に接離してゲージ幅を変更する作業機械において、前記ゲージ幅
を縮幅状態にロックするロック部を具備した、作業機械のゲージ幅のロック機構であって、前記ロック部は、前記一対の梁集成体の相互に対向する各先端に一対に設けられ、前後方向に位置をずらして配設されたブラケットと、前記一対のブラケットの相互間に配置され、上下方向に移動可能に前記メインフレーム
の幅方向中央に取り付けられたピンとを備えて構成され、前記一対のブラケットは、相互に対向する先端部に、
上方に傾斜する面が前記メインフレームの幅方向内側を向く傾斜面と、前記傾斜面の前記
メインフレームの幅方向外側に連設され前記ピンを係止する下向き凹部とをそれぞれ備えたことを特徴としている。
【0014】
(2)前記一対のトラックローラフレームには、それぞれ、前記梁集成体が前記前後方向に間隔を開けて二組設けられ、前記ロック部が前記二組の梁集成体のそれぞれに設けられることが好ましい。
【0015】
(3)前記ピンは、前記メインフレームから取り外し可能に構成されることが好ましい。
【0016】
(4)前記ピンは、前記メインフレームから離脱しないように抜け止めが取り付けられることが好ましい。
【0017】
(5)前記ピンを前記下向き凹部から離脱した状態に保持する離脱状態保持機構を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
アクチュエータを縮退させてゲージ幅を縮幅状態にする際、両トラックローラフレームに梁集成体を介してそれぞれ取り付けられたブラケットが互いに接近し、これにより、各ブラケットの先端に設けられた幅方向内側且つ上方に向く傾斜面
(言い換えれば、上方に傾斜する面がメインフレームの幅方向内側を向く傾斜面)によって、メインフレームに上下移動可能に取り付けられたピンが押し上げられる。そして、ゲージ幅が縮幅状態となって、両ブラケットの傾斜面の幅方向外側に連設された下向き凹部が重なりあうようになると、この重なりあった下向き凹部にピンが落ち込んで、ピンにより両ブラケットが共に係止され、ゲージ幅が縮幅状態にロックされる。
【0019】
また、ピンは幅方向中央に設けられているので、ゲージ幅を縮幅状態にする際、各ブラケットはピンにより幅方向中央を越えることが規制される。その結果、ゲージ幅が縮幅状態となった際に、両トラックローラフレームは、それぞれに取り付けられたブラケットをピンに接触させた状態で位置を揃えて停止するようになる。つまり、ゲージ幅が縮幅する際にトラックローラフレームが片側に片寄ってしまうことが防止される。
【0020】
したがって、ゲージ幅の縮幅状態におけるロック、及び、ゲージ幅が縮幅する際にトラックローラフレームが片寄ってしまうことの防止(換言すればセンター出し)を、ブラケット及びピンからなる単一のロック機構で同時に行うことができるので、センター出しするための機構をロック機構と別に設ける構成に較べて部品点数を削減することができる。
また、ゲージ幅を縮幅状態にロックしたときのブラケットの係止を、ブラケットの上方に開口した下向き凹部により行っているため、開放側に関しては下向き凹部の位置合わせが不要となって、その分だけ製造精度を緩和することが可能となる。
よって、部品点数の削減及び製造精度の緩和により製造コストの削減を実現できる。
【0021】
さらに、ブラケットが、トラックローラフレームから延設された梁集成体の先端(幅方向内側の端部)に配置され、ピンがメインフレームの幅方向中央に配置されるので、ブラケットやピンが、作業機械の周囲の障害物に接触することが抑制され、障害物との接触により破損してしまうことを防止できる。
さらに、ゲージ幅を縮幅状態にすると自然とロックがかかるようになるので、ロックを掛けるための手間を省くことができる。
【0022】
したがって、本発明によれば、製造コストの削減及び破損の抑制を図ることができると共に、ゲージ幅を縮幅状態にロックするための手間を省くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
また、以下の説明では、作業機械が水平面上に位置しているものとして、作業機械(下部走行装置)の進行方向を前方とし、進行方向と直交する水平方向を幅方向とすると共に前方を基準に左右を定め、重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。また、作業機械に搭載される装置や部品の説明では、それらの装置や部品が作業機械に搭載された状態を基準として、上下方向,左右方向及び前後方向を定める。
また、以下の説明では、メインフレーム21の幅方向の中心線CLに近づく方向を「内側」,「内方」とし、その逆に中心線CLから離れる方向を「外側」,「外方」として説明する。
【0025】
[1−1.作業機械の全体の構成]
本発明の一実施形態に係る作業機械の全体構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る作業機械の全体構成を示す模式的な側面図である。
作業機械(本実施形態では油圧式掘削機械)1は、下部走行装置2と、下部走行装置2の上方に設置され操作室30とエンジン室31とを有する上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられたリンク装置4と、リンク装置4の先端に取り付けられた作業具(本実施形態ではバケット)5とを備えて構成されている。
【0026】
下部走行装置2は、上部旋回体3を回転自在に支持するメインフレーム21と、メインフレーム21の左右側部に一対に取り付けられクローラ(履帯)24L,24Rを有する走行装置22L,22Rとを具備している。
以下、走行装置22L,22Rを区別しない場合には走行装置22と表記し、クローラ24L,クローラ24Rを区別しない場合にはクローラ24と表記する。
【0027】
[1−2.下部走行装置の構成]
本発明の一実施形態に係る下部走行装置2の構成について、
図1に加えて
図2を参照してさらに説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る下部走行装置2の要部をクローラ24を取り外して示す模式図であって、(a)は右斜め前方から視た斜視図、(b)はさらにメインフレーム21を取り外して示す右斜め前方から視た斜視図である。
【0028】
メインフレーム21は、薄い箱型形状をしており、上面プレート21u,下面プレート21d,前面プレート21f及び後面プレート21bを有する。上面プレート21uと下面プレート21dとはそれぞれ水平姿勢で上下に隙間をあけて配置されており、それらの相互間を塞ぐように、前端面に垂直姿勢の前面プレート21fが固定され、後端面に後面プレート21bが固定されている。
【0029】
メインフレーム21の左右両側にはそれぞれトラックローラフレーム23L,23Rが装備されている。
トラックローラフレーム23L,23Rは、走行装置22L,22R(
図1参照)を構成するものであり、トラックローラフレーム23L,23Rの周囲にはそれぞれクローラ24L,24R(
図1参照)が卷回され、各クローラ24L,24Rは、トラックモータ(図示略)によりそれぞれより駆動されトラックローラフレーム23L,23Rの周囲を周回する。
以下、トラックローラフレーム23L,23Rを区別しない場合にはトラックローラフレーム23と表記する。
【0030】
トラックローラフレーム23Lの幅方向内側面には、幅方向内側に向けて延在する一対の梁集成体25L,26Lが前後方向に対して所定の間隔をあけて固定されている。同様に、トラックローラフレーム23Rの幅方向内側面には、幅方向内側に向けて延在する一対の梁集成体25R,26Rが前後方向に対して所定の間隔をあけて固定されている。
以下、梁集成体25L,25Rを区別しない場合には梁集成体25と表記し、梁集成体26L,26Rを区別しない場合には梁集成体26と表記する。
【0031】
各梁集成体25は、先端(内側に向く端部)が開口した略角筒状に構成され、前後方向に互いに間隔をあけて配置されそれぞれ鉛直姿勢の梁部材25a,25bと、梁部材25a,25bの各上端に固定される水平姿勢の上部プレート25cと、梁部材25a,25bの各下端に固定される水平姿勢の下部プレート25dとを備える。
同様に、各梁集成体26は、先端が開口した略角筒状に構成され、前後方向に互いに間隔をあけて配置されそれぞれ鉛直姿勢の梁部材26a,26bと、梁部材26a,26bの各上端に固定される水平姿勢の上部プレート26cと、梁部材26a,26bの各下端に固定される水平姿勢の下部プレート26dとを備える。
【0032】
梁集成体25Lと梁集成体25Rとは、それらの先端を互いに対向させるようにして幅方向に沿って並べられており、油圧アクチュエータ27により連結されている。同様に、梁集成体26Lと梁集成体26Rとは、それらの先端を互いに対向させるようにして幅方向に沿って並べられており、油圧アクチュエータ28により連結されている。
具体的には、梁集成体25Rの内部には油圧アクチュエータ27の本体27aが固定されると共に、梁集成体25Lの内部には油圧アクチュエータ27の駆動ロッド27bが固定され、梁集成体26Rの内部には油圧アクチュエータ28の本体28aが固定されると共に、梁集成体26Lの内部には油圧アクチュエータ28の駆動ロッド28bが固定されている。
【0033】
梁集成体25,26は、それぞれ、幅方向に沿って進退可能にメインフレーム21に挿入されており、油圧アクチュエータ27,28を同期して伸縮することにより、梁集成体25,26を、メインフレーム21に対して幅方向に沿って進退させて、ゲージ幅(クローラ24L,24Rの相互間距離)を変更できるようになっている。すなわち、油圧アクチュエータ27,28を同期して縮退させることにより、梁集成体25L,26Lに固定されたトラックローラフレーム23Lと、梁集成体25R,26Rに固定されたトラックローラフレーム23Rとを互いに接近させてゲージ幅を狭めることができ、逆に、油圧アクチュエータ27,28を同期して伸長させることにより、トラックローラフレーム23Lとトラックローラフレーム23Rとを互いに離隔させてゲージ幅を広げることができる。
【0034】
[1−3.ロック機構]
本発明の一実施形態に係るロック機構を、
図2に加えて
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るロック機構を、メインフレーム21を取り外して示す模式図であって、(a)は要部斜視図であって
図2(b)のX部拡大図、(b)はブラケット60Rの正面図である。便宜的に、
図3(a)ではピン65を二点鎖線で示し、
図3(b)ではメインフレーム21の孔部211及びピン65を二点鎖線で示す。
図4は、本発明の一実施形態に係るロック機構の要部構成を示す模式図であり、(a)は鉛直方向に切断した断面図(断面を示すハッチは省略)、(b)は正面図、(c)は(b)のA−A断面図である(断面を示すハッチは省略)。
ロック機構は、ロック部6を備えて構成され、本実施形態では、ロック部は、前方の梁集成体25及び後方の梁集成体26のそれぞれに設けられている〔なお、
図2(b)では後方の梁集成体26に設けたロック部は省略している〕。梁集成体25,26に設けられたロック部は同様に構成されているので、以下、前方の梁集成体25に設けられたロック部6の構成を取り上げて説明する。
【0035】
図3に示すように、ロック部6は、左右一対のブラケット60L,60Rと、これらのブラケット60L,60Rの相互間に配置されるピン65とを備える。
ブラケット60Lは、トラックローラフレーム23Lの梁集成体25Lの先端に固定され、ブラケット60Rは、トラックローラフレーム23Rの梁集成体25Rの先端に固定されており、ブラケット60L,60Rは互いに対向するようにして設置されている。
ブラケット60L,60Rは、同一形状のものを左右反転させて梁集成体25L,25Rに固定されている。以下、ブラケット60Lとブラケット60Rとを特に区別しない場合には、ブラケット60と表記する。
なお、
図3(a)に示すように、ブラケット60Rを、梁集成体25Rの前面を構成する梁部材25aとの間に隙間64をあけてブラケット60Lの前面よりも前方に配置している。これにより、ブラケット60R,60Lを互いに接近させた際に、ブラケット60Lとブラケット60Rとが接触しないようにしている。
【0036】
各ブラケット60は、その内側(幅方向中心線CL側)に向く先端部61を梁集成体25の先端から突出させて、その外側(幅方向中心線CLと反対側)に向く基端部62を梁集成体25に固定されている。
基端部62を含むブラケット60の本体(ブラケット60の先端部61を除いた部分、以下「ブラケット本体」ともいう)63は方形をしている。また、先端部61は、ブラケット本体63の内側端面63aの下部から突出した鉤形状のものであり、幅方向内側且つ上方に向く傾斜面61aと、この傾斜面61aと前記内側端面63aとの間(換言すれば傾斜面61aの幅方向外側)に下方に凹設された下向き凹部(以下「凹部」という)61bとを備える。
そして、ブラケット60Lの凹部61bと、ブラケット60Rの凹部61bとは、油圧アクチュエータ27を縮退させてゲージ幅を最小幅にした際、前方から視て一致(又は略一致)するように配置されている。
【0037】
このような構成により、油圧アクチュエータ27,28を縮退させると、トラックローラフレーム23及び梁集成体25と一体にブラケット60L,60Rは幅方向内側に移動し、この際、ピン65は傾斜面61aに乗り上げて、傾斜面61aによって上方へと押し上げられる。油圧アクチュエータ27,28の縮退が進んでブラケット60L,60Rの各凹部61bがそれぞれピン65に到達して重合した状態になると、ピン65は、傾斜面61aの上端61a2から、この重合した状態の凹部61b,61b内に自重で落下し収容される。各ブラケット60L,60Rの傾斜面61aの背面には、凹部61bに面して、鉛直方向に沿って真っ直ぐに延在するストレート部(返し)61b1が設けられており、このストレート部61b1により、凹部61b内のピン65が容易に凹部61bから離脱してしまうことを抑制している。
【0038】
ピン65は、
図2(a)及び
図3(b)に示すように、中実円筒状のものであり、メインフレーム21のフロントプレート21fの板厚方向に貫設された縦長の孔部211に貫装されている。詳しくは、孔部211は、その幅寸法がピン65の直径よりも僅かに大きく設定され、その高さ寸法がピン65の直径よりも大きく設定されており、ピン65はこの孔部211に上下に移動可能に取り付けられている。通常状態(ブラケット60L,60Rにより押し上げられていない状態)では、ピン65は、
図2(a)及び
図3(b)に示すように、孔部211の底に着座する。
そして、孔部211は、平面視において中心線CL上に配置され、ひいては、孔部211に取り付けられるピン65は平面視において中心線CL上に配置される。孔部211及びピン65は、厳格に中心線CL上に配置されている必要はなく、中心線CLを含む所定範囲内に設置されていればよい。すなわち、本発明においてピン65はメインフレーム21の幅方向中央に取り付けられるものであるが、幅方向中央とは、中心線CL上だけでなく中心線CLの周辺も含むものである。
【0039】
上述したように、ピン65は、ゲージ幅を縮幅状態とする過程において、トラックローラフレーム23L,23Rと一体に接近するブラケット60L,60Rの各傾斜面61aにより押し上げられ、ゲージ幅が縮幅状態となっときには、重なりあったブラケット60L,60Rの各凹部61bに同時に収容される。これにより、各ブラケット60L,60Rがピン65によってそれぞれ係止されてトラックローラフレーム23L,23Rの位置が保持され、ひいてはゲージ幅が縮幅状態にロックされる。
このロックは、ピン65を上方または前方に移動して凹部61bから離脱させることにより解除することができ、本実施形態では、フロントプレート21fよりも前方(つまりメインフレーム21の外側)に露出したピン65の先端部を作業者が手作業により操作してロックを解除できるようにしている(これについては後述する)。ピン65を凹部61bから離脱させるための離脱装置を設けてもよく、例えば操作室30に設けたスイッチを操作することで離脱機構を動作させて自動でロックを解除できるようにしてもよい。
【0040】
また、通常状態(孔部211の底に着座した状態)のピン65を、ゲージ幅の縮幅過程においてブラケット60L,60Rの少なくとも一方の傾斜面61aにより押し上げて凹部61bへと送り込めるように、傾斜面61aと孔部211との位置関係が設定されている。つまり、
図3(b)に示すように、通常状態のピン65の軸心C0が、
ブラケット60L,60Rの各傾斜面61aの下端61a1よりも高くなるように、且つ、通常状態のピン65の下端65aが、各傾斜面61aの上端61a2よりも低くなるように、傾斜面61aと孔部211との位置関係が設定されている。
【0041】
なお、ピン65は、前端側を前面プレート21fに上下移動可能に保持されると共に、
図2,3では省略しているが、
図4(a)に示すように、後端側を補助プレート67に上下移動可能に保持されている。これにより、ピン65は両端支持された安定した状態でスムーズに上下移動可能となっている。
補助プレート67は、メインフレーム21の内部において、前面プレート21fから所定距離(ピン65の軸長と略同じ長さ)だけ後方に、前面プレート21fと平行な姿勢で設けられている。補助プレート67の中央に、縦長の孔部671が板厚方向に貫設されている。この孔部671は、前面プレート21fに形成された孔部211と同じ形状であり、且つ、孔部211と同じ高さ及び同じ幅方向位置に配置されており、ピン65の後端側はこの孔部671に上下に移動可能に取り付けられている。
【0042】
また、
図2,3では省略しているが、
図4(a),(b),(c)に示すように、ピン65が孔部211,671から脱落しないように、ピン65には前後一対の返し(抜け止め)66が設けられている。
返し66は、円形プレートにより構成され、その直径は孔部211,671の幅寸法よりも大きな直径に設定されている。一対の返し66の内、一方の返し66は、前面プレート21fよりも前方においてピン65の前端面に固定され、他方の返し66は、補助プレート67よりも後方においてピン65の後端面に固定されている。
ピン65は筒状に形成され内周面に雌ネジ65bが加工されており、各返し66は、返し66と一体又は別体のボルト66aを、この雌ネジ65bにそれぞれを螺合することによりピン65の前端面及び後端面にそれぞれ固定される。
【0043】
また、
図4(c)に示すように、ピン65の長さL1は、前面プレート21fの前面213と補助プレート67の後面673との距離L0よりも短く設定されており、前面プレート21fの前方に位置するボルト66aすなわち機外に露出したボルト66aを強く締め付けることで、返し66,66をプレート21f,67にそれぞれ圧接させてピン65の高さを固定できる。したがって、ロックを解除してゲージ幅を縮幅状態から拡大(拡幅)するときには、ボルト66aを強く締め付けることで、
図4(a)に示すように、ピン65を凹部61bから上方に離脱した状態に固定すればよく、ゲージ幅を縮幅して縮幅状態にロックするときには、ボルト66aを緩めてピン65を上下に移動可能な状態とすればよい。
このように、返し66とボルト66aとを備えて、ピン65を凹部61bから離脱した状態に保持する本発明の離脱状態保持機構が構成されている。
【0044】
[1−4.作用・効果]
以下、
図5を参照して、本発明の一実施形態としての作業機械のゲージ幅のロック機構の作用効果について説明する。
図5は、本発明の一実施形態としての作業機械のゲージ幅のロック機構の作用効果を説明するための模式図であって、(a),(b),(c)は、ロック機構の状態を動作順に示す図である。なお、
図5では、便宜的に、ロック部6のブラケット60L,60R,メインフレーム21の孔部211及びピン65のみを示す。
【0045】
先ず、
図5(a)に示すように、操作室30内の操作部を操作して油圧アクチュエータ27,28〔
図2(a),(b)参照〕を同期して縮退させゲージ幅の縮小を開始する。この際、梁集成体25L,25Rの先端に取り付けられたブラケット60L,60Rが矢印で示すように互いに接近し始める。
次いで、
図5(b)に示すように、ゲージ幅がさらに縮小して、ブラケット60L,60Rの先端部61の傾斜面61aが幅方向に対して互いに重なりあい始めると、ピン65は、ブラケット60L,60Rの傾斜面61aによって押し上げられて縦長の孔部211,671に沿ってせり上がる。
そして、
図5(c)に示すようにゲージ幅が最小幅となって、ブラケット60Lとブラケット60Rとの凹部61bが、ピン65の下方において、幅方向に対して相互に重なりあうと、ピン65は両凹部61b内に落ち込んで収容される。
これにより、ゲージ幅が縮幅状態にロックされる。すなわち、ピン65がブラケット60Lとブラケット60Rの両方の凹部61bに収容されることにより、ピン65によりブラケット60L,60Rが共に係止され、ブラケット60L,60Rの内側への移動(ゲージ幅の縮小)及び外側への移動(ゲージ幅の拡大)が規制されるようになる。
【0046】
また、
図5(c)に示すように、中心線CL上に配置されたピン65によってブラケット60L,60Rは中心線CLを越えて幅方向内側に移動するのが規制されるので、ゲージ幅を縮幅状態とする際、トラックローラフレーム23L,23Rは、それぞれ、ブラケット60L,60R〔詳しくは、凹部61bの幅方向外側を形成するブラケット本体60の先端面(内端面)63a〕をピン65に近接させた状態で、位置を揃えて停止するようになる。つまり、ゲージ幅が縮幅する際にトラックローラフレーム23L,23Rが幅方向片側に片寄ってしまうことが防止される。
【0047】
本実施形態によれば、このようにゲージ幅を縮幅状態にロックするロック機構と、ゲージ幅が縮幅する際にトラックローラフレーム23L,23Rの片寄りを防止するセンター出し機構とが、ブラケット60L,60R,孔部211及びピン65により一体的に構成されるので、前述の特許文献1に開示の技術のように、ロック機構とは別にセンター出し機構を設けることが不要となり、従来よりも部品点数を削減することができる。
【0048】
また、特許文献1に開示の技術では、前述したように、メインフレーム(12)にブラケット(148)を介して設けられたプレート(150),(152)の貫通孔(154),(156)と、トラックローラフレーム(52)にブラケット(158)を介して設けられたプレート(159)の貫通孔(160)との位置をあわせ、貫通孔(154),(156),(160)にピン(162)を挿通してゲージ幅を縮幅状態にロックしていた。
このため、ブラケット(148),(158),プレート(150),(152),(159)といった多数の部品を介して、縮幅状態において3つの貫通孔(154),(156),(160)の位置を一致させる必要があるため、高い製造精度が要求されていた。
これに対し、本実施形態では、ロック部6を構成する部品が、ブラケット60L,60Rとピン65の3部品であり、特許文献1に開示の技術較べて部品数が少ない。加えて、ブラケット60L,60Rに設けた凹部61bにピン65が落ち込んで嵌り込むことによりゲージ幅がロックされるが、凹部61bは上方が開放された開放空間なので、開放側に関しての位置合わせは不要となって、その分だけ要求される製造精度が緩和される。
したがって、部品点数の削減及び製造精度の緩和により製造コストの削減を実現できる。
【0049】
さらに、ブラケット60L,60Rが、作業機械1の幅方向内側に設けられているので、作業機械1の周囲の障害物に接触することが抑制され、障害物との接触によりブラケット60L,60Rが破損してしまうことを未然に防止できる。
【0050】
また、梁集成体25,26の両方にロック部を設けているので、2つの油圧アクチュエータ27,28の推力を2つのロック部により受け持つようになる。したがって、各ロック部の強度(例えばブラケット60と梁集成体25,26との接合強度)を、梁集成体25,26の一方のみにロック部を設けた場合に較べて低くすることができ、容易に強度を確保できる。
【0051】
さらに、ピン65を、上下移動可能な状態でプレート21f,67の孔部211,671にセットしておけば、ゲージ幅を縮幅状態にすると自然とロックがかかるので、ロックを掛けるための手間を省くことができる。
【0052】
また、ピン65を、ブラケット60の凹部61bから離脱した状態においてボルト66aを締め付けてピン65の返し66をプレート21f,67に圧接させれば、ピン65を凹部61bから離脱させた状態、すなわちロック機構のロックを解除した状態に保持することができるので、この状態において速やかにゲージ幅を拡幅できるようになる。
【0053】
[1−5.その他]
(1)上記の一実施形態では、ピン65をメインフレーム21の孔部211に常時取り付ける例を説明したが、使用しない時にはピン65を孔部211から取り外せるようにしてもよい。この場合、ゲージ幅を縮幅状態にロックするときだけ、例えばゲージ幅の縮幅動作を開始する直前にピン65を孔部211に取り付ければよい。
【0054】
(2)上記の一実施形態では、ピン65を、凹部61bから離脱した状態に保持する本発明の離脱状態保持機構を返し66とボルト66aとを備えて構成したが、離脱状態保持機構の構成はこの構成に限定されない。以下、
図6(a),(b)を参照して離脱状態保持機構の変形例の構成を説明する。
図6(a),(b)は本発明に係る離脱状態保持機構の変形例の構成を示す模式的な正面図である。
【0055】
図6(a)に示す構成では、離脱状態保持機構を構成する孔部(以下「水平孔部」という)212,672が、孔部211,671の上端から水平方向に延在するようにプレート21f,67に穿設されている。水平孔部212,672には、下方に落ち込む段部212a,672aが設けられている。
したがって、ゲージ幅を縮幅状態から拡幅するときには、ピン65の前端側を水平孔部212の段部212aに載置すると共に後端側を水平孔部672の段部672aに載置することにより、ピン65を、ブラケット60の凹部61b〔
図3(a),(b)参照〕から上方に離脱した状態に保持することができ、ゲージ幅を縮幅して縮幅状態にロックするときには、予めピン65を孔部211,671に配置すればよい。
【0056】
図6(b)に示す構成では、離脱状態保持機構は、前面プレート21fの前面213及び補助プレート67の後面673にそれぞれに設けられている。各離脱状態保持機構は、それぞれ、孔部211,671を幅方向から挟むようにして互いに対向するように配置される左右一対の受け止め部68により構成される。
各受け止め部68は、それぞれ、先端が半球形状の受け部681と、受け部681の後端に先端を接続された水平姿勢のコイルスプリング682とを備えて構成される。各コイルスプリング682の後端側は、それぞれ図示しない取り付け部材によりプレート21f,67に固定されている。
各受け止め部68は、
図4(b)に実線で示すようにピン65を孔部211,671の上部に位置させた際に、受け部681によってピン65を下方から支えることのできるように設置されている。つまり、各受け止め部68は、受け部681の先端側が、孔部211,671の上部において孔部211,671の幅方向内側に突出するよう設置されている。
また、各コイルスプリング682は、鉛直方向に対する剛性として、ピン65を下方から支えることができる程度、且つ、ピン65を押し上げようと(又は押し下げようと)作業者がピン65を介してコイルスプリング682に力を掛けたときに容易に上方又は下方に湾曲する程度の剛性を有している。
【0057】
そして、ゲージ幅を縮幅状態から拡幅するときには、予め、ピン65を、二点鎖線で示す位置から実線で示す位置まで人手により押し上げる。その際、ピン65の移動経路である孔部211,671の幅方向内側に配置された受け部681は、受け部681を支持するコイルスプリング682がピン65からの入力を受けて外側上方に反り返るように弾性変形するので、ピン65を、実線で示すように受け止め部68よりも上方まで押し上げることができる。ピン65が実線で示す位置まで押し上げられると、コイルスプリング682が真っ直ぐな形状に戻って受け部681は前記移動経路内に復帰するので、ピン65が下方より受け止め部68により支持されるようになる。これにより、ピン65をブラケット60の凹部61b(
図5参照)から上方に離脱した状態に保持することができ、拡幅可能な状態とすることができる。
逆に、ゲージ幅を縮幅してロックするときには、予め、ピン65を実線で示す位置から人手により押し下げれば、コイルスプリング682が外側下方に反り返るように弾性変形するので、ピン65を、受け止め部68の下方へと移動させて受け止め部68の拘束から開放することができ、ゲージ幅を縮幅状態にロック可能な状態とすることができる。
【0058】
(3)上記の一実施形態では、ロック機構を、梁集成体25,26の両方に設けられたロック部を備えて構成したが、本発明はこの態様に限定されず、梁集成体25,26の何れか一方にだけロック部を備えてロック機構を構成してもよい。