特許第6761292号(P6761292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許67612923次元CADデータの作成システムおよび作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761292
(24)【登録日】2020年9月8日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】3次元CADデータの作成システムおよび作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/12 20200101AFI20200910BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20200910BHJP
【FI】
   G06F17/50 624A
   G06F17/50 622A
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-138414(P2016-138414)
(22)【出願日】2016年7月13日
(65)【公開番号】特開2018-10455(P2018-10455A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 寛幸
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−155911(JP,A)
【文献】 特開2006−127544(JP,A)
【文献】 特開2012−008867(JP,A)
【文献】 特開2003−075146(JP,A)
【文献】 特開2007−048306(JP,A)
【文献】 特開2007−058508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 −30/28
G01B 11/00 −11/30
G01B 21/00 −21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体構造物を3次元計測して得られる、前記立体構造物の表面の3次元座標を含む3次元点群データを読み出し、設定する3次元座標系に前記3次元点群データに含まれる3次元座標が示す点群をマッピングした3次元点群画像を生成する3次元点群画像生成手段と、
前記マッピングに使用される3次元点群データのうち、前記3次元座標を含む3次元点群データを抽出し、前記立体構造物の表面の位置を求める表面位置特定手段と、
前記立体構造物の表面に位置する3次元点群データのうち、指定される条件に該当する3次元点群データを抽出し、抽出した3次元点群データに含まれる3次元座標によって表される領域を特別領域とみなして前記特別領域を特定した場合、前記条件と関連付けられる寸法情報に基づいて、前記特別領域を表す3次元CADモデルを自動的に生成する特別領域CADモデル生成手段と、
前記3次元点群画像に対して、前記3次元点群画像から特定された前記特別領域を、前記特別領域を表す3次元CADモデルに置換した3次元CADモデル含有画像を生成するCADモデル含有画像生成手段とを具備することを特徴とする3次元CADデータの作成システム。
【請求項2】
前記立体構造物の表面に位置する3次元点群データのうち、前記指定される条件に該当する3次元点群データを抽出し、抽出した3次元点群データに含まれる3次元座標によって表される領域を特別領域とみなして抽出する特別領域抽出手段をさらに具備する請求項1記載の3次元CADデータの作成システム。
【請求項3】
前記特別領域CADモデル生成手段が読み出し可能な記憶領域に、前記寸法情報として与えられる前記立体構造物の表面からの厚さを示す厚さ情報が保持されており、
前記特別領域抽出手段は、前記指定される条件として、前記3次元座標系で規定される単位格子を前記マッピングした範囲を網羅するように配置し、配置した単位格子毎に前記点群を構成する点を数えた場合、前記点の個数が0(ゼロ)以上かつ設定する閾値未満となる単位格子に隣接する単位格子のうち、前記点の個数が前記閾値以上となる単位格子である輪郭単位格子内に存在する点である旨の指定を受け付けた場合、前記輪郭単位格子内に存在する点を抽出し、抽出した点によって包囲される領域を前記特別領域である貫通孔として特定する貫通孔特定部を備え、
前記特別領域CADモデル生成手段は、前記貫通孔特定手段が貫通孔を特定した場合、前記厚さ情報に基づいて、前記貫通孔の両端間の長さを決定し、前記表面に現れる前記貫通孔の端部を底面、前記貫通孔の両端間の長さを高さとする柱体の3次元CADモデルを、前記貫通孔を表す貫通孔CADモデルとして自動的に生成する貫通孔CADモデル生成部を備える請求項2記載の3次元CADデータの作成システム。
【請求項4】
前記特別領域CADモデル生成手段が読み出し可能な記憶領域に、前記立体構造物への取付物を識別する識別情報と前記識別情報と関連付けられる前記取付物の寸法情報および色情報のうち少なくとも寸法情報を含む取付物情報と、前記取付物情報と関連付けられる前記取付物の3次元CADモデルとが保持され、前記マッピングに使用される3次元点群データが点毎の色情報を含んでおり、
前記特別領域抽出手段は、前記指定される条件が、色の階調値の範囲である場合、前記3次元座標系で規定される単位格子を前記マッピングした範囲を網羅するように配置し、前記マッピングに使用される3次元点群データに含まれる点毎の色情報が表す色の階調値が、前記指定される条件に該当する範囲内となる点を配置した単位格子毎に抽出し、抽出した点が設定する閾値以上となる領域を前記取付物とみなす取付物抽出部を備え、
前記特別領域CADモデル生成手段は、前記取付物情報に含まれる、前記寸法情報が表す寸法および色情報が表す色の少なくとも一方を特徴量とし、前記取付物抽出部が特定している前記取付物の種別を判定する際に、前記マッピングに使用される3次元点群データ
から得られる前記特徴量と前記取付物の前記取付物情報から得られる前記特徴量とを比べた結果に基づいて前記取付物の種別を特定するように構成される請求項2または3に記載の3次元CADデータの作成システム。
【請求項5】
前記特別領域CADモデル生成手段は、前記特徴量が寸法である場合、前記取付物とみなした領域の寸法と前記取付物の寸法情報が示す寸法とを比べて最も寸法差が小さい前記取付物を前記取付物情報に基づいて特定する第1のロジックによって前記取付物の種別を特定し、前記特徴量が色である場合、前記指定を受け付けた階調値の範囲内から指定される階調値と前記取付物の色情報が示す階調値とを比べて最も差異が小さい前記取付物を前記取付物情報に基づいて特定する第2のロジックによって前記取付物の種別を特定し、前記取付物情報が前記取付物の寸法情報および色情報の両方を含んでいる場合であって、寸法情報および色情報の何れか一方で前記取付物の種別が一義的に特定される場合、前記第1のロジックおよび前記第2のロジックの何れか一方のロジックによって前記取付物の種別を特定し、寸法情報および色情報の両方を用いることによって前記取付物の種別が一義的に特定される場合、前記取付物とみなした領域の寸法と前記取付物の寸法情報が示す寸法とを比べて最も寸法差が小さく、前記指定を受け付けた階調値の範囲内から指定される階調値と前記取付物の色情報が示す階調値とを比べて最も差異が小さい前記取付物を前記取付物情報に基づいて前記取付物の種別を特定する機能を有する取付物種別特定部と、特定した前記取付物を表す取付物CADモデルを自動的に生成する取付物CADモデル生成部を備える請求項4記載の3次元CADデータの作成システム。
【請求項6】
前記色の階調値の範囲の指定は、各色の階調値の範囲を直接的に指定すること、および前記色の階調値の範囲を定義する中央値、または最大値および最小値を決定する指標を計算する領域を指定することの何れか一方によって行われ、
前記指標は、前記3次元点群データに含まれる点毎の色情報が表す色の階調値から求まる代表値である請求項4または5に記載の3次元CADデータの作成システム。
【請求項7】
前記3次元点群データを抽出する範囲を設定する手段をさらに具備する請求項1から6の何れか1項に記載の3次元CADデータの作成システム。
【請求項8】
前記立体構造物は、3次元CADによって作成された設計図に従って製作された製作物であり、前記設計図は、前記設計図を作成する段階で作成されている前記立体構造物の3次元CADモデルから、指定される2次元化の条件に従って得られる前記立体構造物の2次元図面を含んでおり、
前記3次元CADモデル含有画像と前記立体構造物の2次元図面の画像とを同じ位置を基準点とする2次元座標系に重ねて照合する照合手段をさらに具備する請求項1から7の何れか1項に記載の3次元CADデータの作成システム。
【請求項9】
コンピュータを、立体構造物を3次元計測して得られる、前記立体構造物の表面の3次元座標を含む3次元点群データを読み出し、設定する3次元座標系に前記3次元点群データに含まれる3次元座標が示す点群をマッピングした3次元点群画像を生成する手段、前記マッピングに使用される3次元点群データのうち、前記3次元座標を含む3次元点群データを抽出し、前記立体構造物の表面の位置を求める手段、前記立体構造物の表面に位置する3次元点群データのうち、指定される条件に該当する3次元点群データを抽出し、抽出した3次元点群データに含まれる3次元座標によって表される領域を特別領域とみなして前記特別領域を特定した場合、前記条件と関連付けられる寸法情報に基づいて、前記特別領域を表す3次元CADモデルを自動的に生成する手段、および前記3次元点群画像に対して、前記3次元点群画像から特定された前記特別領域を、前記特別領域を表す3次元CADモデルに置換した3次元CADモデル含有画像を生成する手段として用いる立体構造物の3次元CADデータを作成する方法であって、前記コンピュータが、
立体構造物を3次元計測して得られる、前記立体構造物の表面の3次元座標を含む3次元点群データを読み出し、設定する3次元座標系に前記3次元点群データに含まれる3次元座標が示す点群をマッピングした3次元点群画像を生成する工程と、
前記マッピングに使用される3次元点群データのうち、前記3次元座標を含む3次元点群データを抽出し、前記立体構造物の表面の位置を求める工程と、
前記立体構造物の表面に位置する3次元点群データのうち、指定される条件に該当する3次元点群データを抽出し、抽出した3次元点群データに含まれる3次元座標によって表される領域を特別領域とみなして前記特別領域を特定した場合、前記条件と関連付けられる寸法情報に基づいて、前記特別領域を表す3次元CADモデルを自動的に生成する工程と、
前記3次元点群画像に対して、前記3次元点群画像から特定された前記特別領域を、前記特別領域を表す3次元CADモデルに置換した3次元CADモデル含有画像を生成する工程とを備える処理手順を実行することを特徴とする3次元CADデータの作成方法。
【請求項10】
前記3次元CADモデルを自動的に生成する工程は、前記立体構造物の表面に位置する3次元点群データのうち、指定される条件に該当する3次元点群データを抽出し、抽出した3次元点群データに含まれる3次元座標によって表される領域を前記特別領域とみなして抽出するステップを有する請求項9記載の3次元CADデータの作成方法。
【請求項11】
前記コンピュータが読み出し可能な記憶領域に、前記寸法情報として与えられる前記立体構造物の表面からの厚さを示す厚さ情報が保持されており、
前記3次元CADモデルを自動的に生成する工程は、前記指定される条件として、前記3次元座標系で規定される単位格子を前記マッピングした範囲を網羅するように配置し、配置した単位格子毎に前記点群を構成する点を数えた場合、前記点の個数が0(ゼロ)以上かつ設定する閾値未満となる単位格子に隣接する単位格子のうち、前記点の個数が前記閾値以上となる単位格子である輪郭単位格子内に存在する点である旨の指定を受け付けた場合、前記輪郭単位格子内に存在する点を抽出し、抽出した点によって包囲される領域を前記特別領域である貫通孔として特定するステップと、
前記特別領域として前記貫通孔が特定された場合、前記厚さ情報に基づいて、前記貫通孔の両端間の長さを決定し、前記表面に現れる前記貫通孔の端部を底面、前記貫通孔の両端間の長さを高さとする柱体の3次元CADモデルを、前記貫通孔を表す貫通孔CADモデルとして自動的に生成するステップと、を有する請求項9または10に記載の3次元CADデータの作成方法。
【請求項12】
前記コンピュータが読み出し可能な記憶領域に、前記立体構造物への取付物を識別する識別情報と前記識別情報と関連付けられる前記取付物の寸法情報および色情報の少なくとも一方とを含む取付物情報と、前記取付物情報と関連付けられる前記取付物の3次元CADモデルとが保持され、前記マッピングに使用される3次元点群データが点毎の色情報を含んでおり、
前記3次元CADモデルを自動的に生成する工程は、前記指定される条件が、色の階調値の範囲である場合、前記3次元座標系で規定される単位格子を前記マッピングした範囲を網羅するように配置し、前記マッピングに使用される3次元点群データに含まれる点毎の色情報が表す色の階調値が、前記指定される条件に該当する範囲内となる点を配置した単位格子毎に抽出し、抽出した点が設定する閾値以上となる領域を前記取付物とみなすステップと、
前記取付物情報に含まれる前記寸法情報および色情報の少なくとも一方の情報が表す寸法および色の少なくとも一方を特徴量とし、前記取付物抽出部が特定している前記取付物の種別を判定する際に、前記マッピングに使用される3次元点群データから得られる前記特徴量と前記取付物の前記取付物情報から得られる前記特徴量とを比べた結果に基づいて前記取付物の種別を特定するステップと、を有する請求項9から11の何れか1項に記載
の3次元CADデータの作成方法。
【請求項13】
前記取付物の種別を特定するステップは、前記特徴量が寸法である場合、前記取付物とみなした領域の寸法と前記取付物の寸法情報が示す寸法とを比べて最も寸法差が小さい前記取付物を前記取付物情報に基づいて特定する第1のロジックによって前記取付物の種別を特定し、前記特徴量が色である場合、前記指定を受け付けた階調値の範囲内から指定される階調値と前記取付物の色情報が示す階調値とを比べて最も差異が小さい前記取付物を前記取付物情報に基づいて特定する第2のロジックによって前記取付物の種別を特定し、前記取付物情報が前記取付物の寸法情報および色情報の両方を含んでいる場合、前記第1のロジックおよび前記第2のロジックの何れか一方のロジックによって前記取付物の種別を特定するステップである請求項12記載の3次元CADデータの作成方法。
【請求項14】
前記色の階調値の範囲の指定は、各色の階調値の範囲を直接的に指定すること、および前記色の階調値の範囲を定義する中央値、または最大値および最小値を決定する指標を計算する領域を指定することの何れか一方によって行われ、
前記指標は、前記3次元点群データに含まれる点毎の色情報が表す色の階調値から求まる代表値である請求項12または13に記載の3次元CADデータの作成方法。
【請求項15】
前記処理手順は、前記3次元点群データを抽出する際の抽出範囲の指定を受け付け、受け付けた範囲を、前記3次元点群データを抽出する範囲として設定するステップをさらに有する請求項9から14の何れか1項に記載の3次元CADデータの作成方法。
【請求項16】
前記立体構造物は、3次元CADによって作成された設計図に従って製作された製作物であり、前記設計図は、前記設計図を作成する段階で作成されている前記立体構造物の3次元CADモデルから、指定される2次元化の条件に従って得られる前記立体構造物の2次元図面を含んでおり、
前記処理手順は、前記3次元CADモデル含有画像と前記立体構造物の2次元図面の画像とを同じ位置を基準点とする2次元座標系に重ねて照合する工程をさらに備える請求項9から15の何れか1項に記載の3次元CADデータの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、3次元CADデータの作成システムおよび作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発電プラントの新設工事、改造工事または耐震性向上工事などの工事においては、工事開始前の現場調査、工事終了後の据付状態の記録など、現場の情報を記録する必要が生じることがある。また、文化財などの表面形状を測定して記録する場合がある。これら原子力発電所や文化財などの既設の被測定対象物を現地で効率的に測定して記録する技術としては、例えば、レーザー計測装置、多関節3次元測定器、デジタルカメラおよびCCDカメラなどを用いた3次元形状計測技術が知られている。
【0003】
また、既存の物体の状態を記録するなどの目的で、3次元CAD(Computer Aided Design)のデータを作成すること、すなわち、3次元CADに対応した立体モデル(以下、「3次元CADモデル」とする。)を作成することが必要となる場合がある。3次元CADモデルを作成する場合、通常、作成する3次元CADモデルの元となる物体について計測し、計測結果として得られる3次元点群データをさらに合成処理して得た3次元点群データから3次元CADデータを作成する。
【0004】
上述した3次元CADデータ作成に関する技術の例としては、レーザー計測装置、多関節3次元測定器、デジタルカメラおよびCCDカメラなどの複数種の3次元形状計測装置を、被測定対象である構造物や計測する部分に要求される精度等に応じて選定し、これら複数の3次元形状計測装置によって計測した被測定対象に係る3次元点群データを合成処理し、さらに合成処理した3次元点群データから3次元CADデータを作成する3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−58508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来の3次元CADデータ作成システムおよび3次元CADデータ作成方法では、3次元点群データを可視化して表示した3次元点群画像を作成者(ユーザ)が視認し、見た目で配置位置の調整および確認をしながら一つ一つ入力作業を行っている。従って、形状の異なる取付物(埋込物を含む。以下、同様。)や貫通孔などが多数設けられているなどの被測定対象物が多ければ多いほど、3次元CADモデルを作成するための作業量は増大し、作業者の負担が増大している。
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであり、3次元点群データから効率的に3次元CADモデルを作成する3次元CADデータの作成システムおよび作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る3次元CADデータの作成システムは、上述した課題を解決するため、立体構造物を3次元計測して得られる、前記立体構造物の表面の3次元座標を含む3次元点群データを読み出し、設定する3次元座標系に前記3次元点群データに含まれる3次元座標が示す点群をマッピングした3次元点群画像を生成する3次元点群画像生成手段と、前記マッピングに使用される3次元点群データのうち、前記3次元座標を含む3次元点群データを抽出し、前記立体構造物の表面の位置を求める表面位置特定手段と、前記立体構造物の表面に位置する3次元点群データのうち、指定される条件に該当する3次元点群データを抽出し、抽出した3次元点群データに含まれる3次元座標によって表される領域を特別領域とみなして前記特別領域を特定した場合、前記条件と関連付けられる寸法情報に基づいて、前記特別領域を表す3次元CADモデルを自動的に生成する特別領域CADモデル生成手段と、前記3次元点群画像に対して、前記3次元点群画像から特定された前記特別領域を、前記特別領域を表す3次元CADモデルに置換した3次元CADモデル含有画像を生成するCADモデル含有画像生成手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明の実施形態に係る3次元CADデータの作成方法は、上述した課題を解決するため、コンピュータを、立体構造物を3次元計測して得られる、前記立体構造物の表面の3次元座標を含む3次元点群データを読み出し、設定する3次元座標系に前記3次元点群データに含まれる3次元座標が示す点群をマッピングした3次元点群画像を生成する手段、前記マッピングに使用される3次元点群データのうち、前記3次元座標を含む3次元点群データを抽出し、前記立体構造物の表面の位置を求める手段、前記立体構造物の表面に位置する3次元点群データのうち、指定される条件に該当する3次元点群データを抽出し、抽出した3次元点群データに含まれる3次元座標によって表される領域を特別領域とみなして前記特別領域を特定した場合、前記条件と関連付けられる寸法情報に基づいて、前記特別領域を表す3次元CADモデルを自動的に生成する手段、および前記3次元点群画像に対して、前記3次元点群画像から特定された前記特別領域を、前記特別領域を表す3次元CADモデルに置換した3次元CADモデル含有画像を生成する手段として用いる立体構造物の3次元CADデータを作成する方法であって、前記コンピュータが、立体構造物を3次元計測して得られる、前記立体構造物の表面の3次元座標を含む3次元点群データを読み出し、設定する3次元座標系に前記3次元点群データに含まれる3次元座標が示す点群をマッピングした3次元点群画像を生成する工程と、前記マッピングに使用される3次元点群データのうち、前記3次元座標を含む3次元点群データを抽出し、前記立体構造物の表面の位置を求める工程と、前記立体構造物の表面に位置する3次元点群データのうち、指定される条件に該当する3次元点群データを抽出し、抽出した3次元点群データに含まれる3次元座標によって表される領域を特別領域とみなして前記特別領域を特定した場合、前記条件と関連付けられる寸法情報に基づいて、前記特別領域を表す3次元CADモデルを自動的に生成する工程と、前記3次元点群画像に対して、前記3次元点群画像から特定された前記特別領域を、前記特別領域を表す3次元CADモデルに置換した3次元CADモデル含有画像を生成する工程とを備える処理手順を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、3次元点群データから効率的に3次元CADモデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る3次元CADデータの作成システムの機能的な構成(具体的手段)を示す機能ブロック図。
図2】本発明の実施形態に係る3次元CADデータの作成システムの適用例を示す説明図であり、(A)が部屋の概略図、(B)が部屋の正面壁部分についての拡大図。
図3】正面壁(図2(B))の3次元点群画像を例示する説明図。
図4】特別領域と単位格子との関係を例示する説明図。
図5】本発明の実施形態に係る3次元CADデータの作成システムが貫通孔領域を抽出する例を説明する説明図。
図6】本発明の実施形態に係る3次元CADデータの作成システムが取付物領域を抽出する例を説明する説明図。
図7】本発明の実施形態に係る3次元CADデータの作成システムが位置照合工程において用いる画像の一例を説明する説明図であり、(A)はCADモデル含有画像を例示する説明図、(B)は設計図画像を例示する説明図。
図8】本発明の実施形態に係る3次元CADデータの作成システムが位置照合工程において表示する位置照合結果(結果画像)の一例を説明する説明図。
図9】3次元CADデータ作成処理手順(メインルーチン)の処理の流れを示す流れ図。
図10】貫通孔CADモデル生成工程(サブルーチン)の処理の流れを示す流れ図。
図11】取付物CADモデル生成工程(サブルーチン)の処理の流れを示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る3次元CADデータの作成システムおよび作成方法を図面に基づいて説明する。
【0013】
実施形態に係る3次元CADデータ作成システムは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサおよびROM(Read-Only Memory)およびRAM(Random-Access Memory)などの記憶回路を有する記憶装置を備えるハードウェア資源であるコンピュータと、3次元CADデータ(3次元CADモデル)を作成する機能をコンピュータに実現するソフトウェアである3次元CADデータ作成プログラムとが協働した具体的手段を具備して構成される。
【0014】
ここで、プロセッサとは、例えば、専用または汎用のCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等のプログラムを実行可能な演算処理回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されるプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
【0015】
また、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、プロセッサを構成する回路内にプログラムを直接組み込むよう構成してもよい。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで各種機能を実現する。
【0016】
さらに、複数の独立したプロセッサを組み合わせてプログラムを実行可能な演算処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現してもよい。プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶回路は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、複数のプロセッサの機能に対応するプログラムを幾つか集約して設けてもよい。
【0017】
また、3次元CADデータ作成プログラムは、処理の手順に着目すれば、3次元CADデータを作成する処理手順(以下、「3次元CADデータ作成処理手順」とする。)をコンピュータに実行させるプログラムであるともいえる。つまり、ハードウェア資源であるコンピュータが3次元CADデータ作成プログラムを実行することで、3次元CADデータ作成処理手順を実行する具体的手段を具備した3次元CADデータ作成システムが実現される。
【0018】
続いて、実施形態に係る3次元CADデータの作成システムの機能的な構成(具体的手段)について説明する。
【0019】
図1は、実施形態に係る3次元CADデータの作成システムの一例である3次元CADデータ作成システム10の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
【0020】
3次元CADデータ作成システム10は、例えば、入力手段11と、出力手段12と、3次元点群画像生成手段13と、表面位置特定手段14と、特別領域抽出手段15と、特別領域CADモデル生成手段16と、CADモデル含有画像生成手段17と、照合手段18と、記憶手段19と、制御手段21とを具備して構成される。
【0021】
また、記憶手段19(図1)の内部に示される、3次元点群データ31、厚さ情報32、取付物情報33、3次元点群画像34、CADモデル含有画像35および設計図画像36は、3次元CADデータ作成処理手順を実行する際に、読み出し(リード)または書き込み(ライト)される情報である。
【0022】
入力手段11は、例えば、コンピュータとインターフェイスを介して接続される入力装置またはコンピュータ自身が備えるキーボードやマウス等の入力手段によって実現される。入力手段11は、情報の入力を受け付け、受け付けた情報を制御手段21に与える。入力手段11から入力される情報には、例えば、各種処理の実行要求、厚さ情報32や取付物情報33などの各種情報の入力、などがある。
【0023】
出力手段12は、例えば、コンピュータとインターフェイスを介して接続される表示装置またはコンピュータ自身が備えるディスプレイ等の表示手段、コンピュータとインターフェイスを介して接続されるプリンタ等の印字手段等によって実現される。出力手段12は、表示要求を受け取ると、当該表示要求に応じた内容を表示する。また、出力手段12は、印字要求を受け取ると、当該印字要求に応じた内容を印字出力する。
【0024】
3次元点群画像生成手段13は、立体構造物の形状を3次元形状計測装置で計測して得られる3次元点群データ31に含まれる3次元座標が示す点群(複数個の点の集まり)を、設定する3次元座標系にマッピングした画像(以下、「3次元点群画像」とする。)34を生成する機能を有する。なお、3次元点群データ31は、1箇所から計測された点群データでもよいし、異なる複数箇所から計測された複数の点群データを合成処理して得られる点群データでもよい。
【0025】
3次元点群画像生成手段13は、例えば、記憶手段19等の読み出し可能な記憶領域に保持される3次元点群データ31を読み出す。続いて、3次元点群データ31に含まれる点群を構成する各点の3次元座標を読み出して、設定する3次元座標系の3次元座標に相当する位置に各点をマッピングして3次元点群画像34を生成する。
【0026】
生成された3次元点群画像34は、出力手段12としての表示手段に表示されたり、CADモデル含有画像35を生成する際に用いられたりする。なお、必要に応じて、記憶手段19などの3次元CADデータ作成システム10がアクセス可能な記憶領域に与えられてもよい。
【0027】
表面位置特定手段14は、3次元点群画像34を生成する際のマッピングに使用される3次元点群データ31のうち、3次元座標を含む3次元点群データ31を抽出し、3次元形状計測された立体構造物の表面位置を求める機能を有する。表面位置は、例えば、最小二乗法、領域成長法(Region Growing法)、ランザック法またはその他の導出手法を用いることによって導出できる。
【0028】
表面位置特定手段14が求めた表面位置は、特別領域抽出手段15、特別領域CADモデル生成手段16およびCADモデル含有画像生成手段17へ与えられる。なお、必要に応じて、記憶手段19などの3次元CADデータ作成システム10がアクセス可能な記憶領域に与えられてもよい。
【0029】
特別領域抽出手段15は、3次元点群画像34を生成する際のマッピングに使用される3次元点群データ31のうち、指定される条件に該当する3次元点群データ31を抽出し、抽出した3次元点群データ31に含まれる3次元座標によって表される領域を特別領域とみなして抽出する機能を有する。
【0030】
特別領域には、例えば、3次元点群画像34において、点が存在しない空白領域として現れる貫通孔2(後述する図2)、所定の色合いを有する領域として現れる取付物(表面への埋込物を含む。以下、同様。)3(図2)などがある。なお、実空間内における貫通孔2および取付物3に対応する3次元点群画像34(後述する図3)内の領域は、それぞれ、貫通孔領域5(図3)および取付物領域6(図3)とする。
【0031】
図1に例示される特別領域抽出手段15は、例えば、特別領域の一例である貫通孔2(貫通孔領域5)を抽出する貫通孔抽出部15aと、特別領域の一例である取付物3(取付物領域6)を抽出する取付物抽出部15bと、貫通孔抽出部15aおよび取付物抽出部15bが特別領域を抽出する範囲を設定する抽出範囲設定部15cとを備える。
【0032】
特別領域CADモデル生成手段16は、特別領域抽出手段15が貫通孔2や取付物3などを含む特別領域を、3次元点群画像34から特定した場合、指定される条件と関連付けられる厚さ情報32などの立体構造物の寸法情報に基づき、特別領域を表す3次元CADモデル(以下、「特別領域CADモデル」とする。)を自動的に生成する機能を有する。
【0033】
特別領域CADモデル生成手段16は、例えば、貫通孔2を表す3次元CADモデル(以下、「貫通孔CADモデル」とする。)7(後述する図7)を生成する貫通孔CADモデル生成部16aと、取付物抽出部15bが抽出した取付物3の種別を特定する取付物種別特定部16bと、取付物3を表す3次元CADモデル(以下、「取付物CADモデル」とする。)8(図7)を生成する取付物CADモデル生成部16cとを備える。
【0034】
特別領域CADモデル生成手段16が作成した特別領域CADモデル(3次元CADデータ)は、CADモデル含有画像生成手段17へ与えられる。また、必要に応じて、記憶手段19などの3次元CADデータ作成システム10がアクセス可能な記憶領域に与えられる。
【0035】
CADモデル含有画像生成手段17は、3次元点群画像34(後述する図3)と特別領域CADモデルとを用いてCADモデル含有画像35を生成する機能を有する。CADモデル含有画像生成手段17が生成するCADモデル含有画像35は、3次元点群画像34から抽出された特別領域に相当する領域に特別領域CADモデルを配置した画像である。
【0036】
後述する図3に例示される3次元点群画像34を例に説明すれば、3次元点群画像34に現れる、貫通孔領域5(5a,5b)および取付物領域6を貫通孔CADモデル7および取付物CADモデル8に置換した画像である。
【0037】
CADモデル含有画像生成手段17が作成したCADモデル含有画像35は、照合手段18に与えられる。また、必要に応じて、記憶手段19などの3次元CADデータ作成システム10がアクセス可能な記憶領域に与えられる。
【0038】
照合手段18は、CADモデル含有画像35と設計図画像36とを同じ位置を基準点とする2次元座標系に重ねる機能と、CADモデル含有画像35および設計図画像36にそれぞれ含まれる同一対象物の位置関係を確認する機能(照合機能)とを有する。
【0039】
設計図画像36は、3次元形状計測された立体構造物が設計図を有する場合、当該設計図の画像である。設計図は、3次元CADシステムを用いる場合、通常、CADモデルから作成され、例えば、正面図、背面図、側面図、平面図、矢視図、断面図、その他の2次元図面が該当する。
【0040】
照合手段18は、CADモデル含有画像35と設計図画像36とを同じ位置を基準点とする2次元座標系上に重ね(重畳し)、CADモデル含有画像35および設計図画像36にそれぞれ含まれる同一対象物の位置関係を確認する位置照合工程を行うと、重畳状態を示す画像(以下、単に「結果画像」とする。)37(後述する図8)を生成し、制御手段21に確認結果としての結果画像37の表示を要求する。
【0041】
制御手段21に与えられた結果画像37の表示要求に基づき、制御手段21が出力手段12を制御し、出力手段12としての表示手段に結果画像37が表示される。なお、結果画像37は、必要に応じて、記憶手段19などの3次元CADデータ作成システム10がアクセス可能な記憶領域に与えられてもよい。
【0042】
なお、照合手段18は、同一対象物の位置ずれ量をCAD上で計測する機能や、同一対象物の位置ずれ量が設定量(長さの閾値)を超えている場合に設定量を超えて位置ずれしている対象物を特定する機能をさらに有していてもよい。この場合、照合手段18は、ずれ量の計測結果や設定量を超えて位置ずれしている対象物の特定結果を、出力手段12としての表示手段に表示したり、記憶手段19などのアクセス可能な記憶領域に保存することができる。
【0043】
記憶手段19は、情報の読み出し(リード)および書き込み(ライト)が可能な記憶領域を備え、与えられる情報を当該記憶領域に保持する機能を有する。記憶手段19は、3次元点群画像生成手段13、表面位置特定手段14、特別領域抽出手段15、特別領域CADモデル生成手段16、CADモデル含有画像生成手段17、照合手段18および制御手段21に対して、情報の読み出しおよび書き込み可能な記憶領域を提供し、各々の処理実行に必要な情報の読み出し(リード)および書き込み(ライト)が行なわれる。
【0044】
3次元CADデータ作成処理手順を実行する際には、記憶手段19において、例えば、3次元点群データ31、厚さ情報32、取付物情報33、CADモデル含有画像35および設計図画像36などの3次元CADデータ作成処理手順の実行に必要となる情報が読み書きされる。
【0045】
3次元点群データ31は、3次元形状計測装置で計測して得られる複数の計測点である点群および当該点群を構成する各計測点の3次元座標を含むデータであり、3次元CADデータ作成システム10では、3次元CADデータを作成する対象物(立体構造物)の形状を3次元形状計測装置で計測して得られる計測点および当該計測点の3次元座標を含むデータである。また、3次元点群データ31は、3次元形状計測装置がカラーに対応している場合、各点の色情報を含む。
【0046】
厚さ情報32は、3次元CADデータを作成する対象物(立体構造物)の表面から裏面までの厚さを表す情報である。この厚さ情報32は、例えば、異なる方向からの3次元点群画像34から求める、または設計図や設計用の3次元CADモデル(以下、「設計3次元CADモデル」とする。)がある場合には当該設計図や設計3次元CADモデルから求めるなどして、後述する3次元CADデータ作成処理手順の実行に先立って作成され、記憶手段19などの3次元CADデータ作成システム10がアクセス可能な記憶領域に保持される。
【0047】
取付物情報33は、立体構造物への取付物3(図2)の識別情報と、取付物3の寸法情報および色情報の少なくとも一方とを含む。取付物情報33に含まれる取付物3の識別情報と取付物3の寸法情報および色情報の少なくとも一方とは関連付けられている。従って、一方の情報を検索キーとして他方の情報を検索して特定することができる。
【0048】
ここで、識別情報とは、取付物3(図2)を一義的に識別可能な情報であり、例えば、立体構造物毎に付される番号や名称などがある。寸法情報とは、取付物3の形状および大きさを規定可能な情報であり、例えば、表示する3次元座標系で表現される、方程式、各座標軸方向における基準点からの長さなどがある。色情報とは、取付物3の色合いを決定する情報であり、例えば、光の三原色、すなわち、赤(R)、緑(G)および青(B)の各階調値(例えば、8ビットの場合、0〜255)である。
【0049】
制御手段21は、3次元CADデータ作成システム10のシステム全体の処理を制御する手段であり、入力手段11、出力手段12、3次元点群画像生成手段13、表面位置特定手段14、特別領域抽出手段15、特別領域CADモデル生成手段16、CADモデル含有画像生成手段17、照合手段18および記憶手段19と相互に情報を授受し、これらを制御する機能を有する。
【0050】
制御手段21は、例えば、ユーザから情報の表示要求があった場合、表示要求があった情報と関係する処理手段11,13〜18から表示要求があった情報を受け取り、受け取った情報を出力手段12としての表示手段に表示する表示指令を与える。当該表示指令を受けた出力手段12には、表示要求があった情報が表示される。
【0051】
表示手段に表示される情報としては、例えば、入力手段11から指定された厚さ情報32などの記憶手段19に保持される情報の内容、3次元点群画像生成手段13が生成した3次元点群画像34、表面位置特定手段14が特定した立体構造物の表面の位置、特別領域抽出手段15が特定した特別領域、特別領域CADモデル生成手段16が生成した特別領域CADモデル、CADモデル含有画像生成手段17が生成したCADモデル含有画像、および照合手段18がCADモデル含有画像35と設計図画像36にそれぞれ含まれる同一対象物の位置関係を確認(照合)した結果などがある。
【0052】
上述した3次元CADデータ作成システム10は、3次元点群画像生成手段13、表面位置特定手段14、貫通孔抽出部15a、取付物抽出部15bおよび抽出範囲設定部15cを備える特別領域抽出手段15、貫通孔CADモデル生成部16a、取付物種別特定部16bおよび取付物CADモデル生成部16cを備える特別領域CADモデル生成手段16、CADモデル含有画像生成手段17および照合手段18を具備している例であるが、必ずしも上記例に限定されない。
【0053】
3次元CADデータ作成システム10は、少なくとも、3次元点群画像生成手段13、表面位置特定手段14、貫通孔抽出部15aおよび貫通孔CADモデル生成部16a(または取付物抽出部15b、取付物種別特定部16bおよび取付物CADモデル生成部16c)、並びにCADモデル含有画像生成手段17を具備していればよく、他の処理手段は省略されてもよい。
【0054】
例えば、立体構造物に存在する特別領域が貫通孔のみである場合、3次元CADデータ作成システム10が取付物抽出部15b、取付物種別特定部16bおよび取付物CADモデル生成部16cを具備していなくても、特別領域CADモデルである貫通孔CADモデルを生成し、貫通孔CADモデルを含むCADモデル含有画像35を生成する3次元CADデータ作成システム10を構成することができる。
【0055】
また、立体構造物に存在する特別領域が取付物のみである場合、3次元CADデータ作成システム10が貫通孔抽出部15aおよび貫通孔CADモデル生成部16aを具備していなくても、特別領域CADモデルである取付物CADモデルを生成し、取付物CADモデルを含むCADモデル含有画像35を生成する3次元CADデータ作成システム10を構成することができる。
【0056】
さらに、上述した3次元CADデータ作成システム10は、特別領域抽出手段15および特別領域CADモデル生成手段16が、それぞれ複数の処理部15a〜15cおよび16a〜16cを備える例であるが、各処理部15a〜15cおよび16a〜16cをそれぞれ独立した一つの処理手段として構成してもよい。
【0057】
例えば、上述した3次元CADデータ作成システム10は、特別領域抽出手段15が特別領域を抽出する範囲を設定(限定)する機能を有する抽出範囲設定部15cを備えているが、抽出範囲設定部15cを、特別領域抽出手段15とは独立した一つの処理手段(抽出範囲設定手段)として構成してもよい。換言すれば、貫通孔抽出部15aおよび取付物抽出部15bを特別領域抽出手段15として、抽出範囲設定部15cを抽出範囲設定手段として構成してもよい。
【0058】
また、CADモデル含有画像35および設計図画像36にそれぞれ含まれる同一対象物の位置関係を確認する機能を必要としない場合、照合手段18を具備しない3次元CADデータ作成システム10を構成することができる。なお、照合手段18を具備しない3次元CADデータ作成システム10では、位置照合工程(後述する図9)において使用されない設計図画像36は省略されてもよい。
【0059】
さらに、上述した3次元CADデータ作成システム10は、特別領域抽出手段15および特別領域CADモデル生成手段16がそれぞれ独立した処理手段として構成されている例であるが、特別領域抽出手段15および特別領域CADモデル生成手段16を、特別領域CADモデルを生成する一つの処理手段として構成してもよい。
【0060】
換言すれば、図1に例示される、貫通孔抽出部15a、取付物抽出部15b、貫通孔CADモデル生成部16a、取付物種別特定部16bおよび取付物CADモデル生成部16cのうち、少なくとも貫通孔抽出部15aおよび貫通孔CADモデル生成部16a、または取付物抽出部15b、取付物種別特定部16bおよび取付物CADモデル生成部16cを特別領域抽出機能を有する特別領域CADモデル生成手段16として構成してもよい。
【0061】
さらに、上述した3次元CADデータ作成システム10は、取付物種別特定部16bおよび取付物CADモデル生成部16cが、各々独立した処理部として構成されている例であるが、一つの処理部にまとめられていてもよい。すなわち、取付物種別特定部16bを省略し、取付物種別特定部16bが有する取付物の種別を特定する機能を取付物CADモデル生成部16cに付加してもよい。
【0062】
また、取付物種別特定部16bを特別領域抽出手段15が備える構成とし、特別領域抽出手段15を取付物の種別の特定まで可能な処理手段として構成してもよい。
【0063】
続いて、実施形態に係る3次元CADデータの作成システムを適用する対象物(立体構造物)について説明する。
【0064】
図2は、3次元CADデータの作成システム10の適用例を示す説明図であり、図2(A)が3次元CADデータを作成する対象物(立体構造物)の一例である、プラント建屋内の部屋1の概略図、図2(B)が部屋1の正面の壁(以下、「正面壁」とする。)1a部分についての拡大図である。
【0065】
3次元CADデータの作成システム10は、図2に例示されるように、プラント建屋内の部屋1などの対象物(立体構造物)の3次元CADデータを作成する際に適用される。図2に例示される部屋1は、例えば、穴明けや基礎部材の取り付け(埋め込みを含む)などの工事が終了した後の状態を示している。
【0066】
部屋の構造は、前、後、左、右、上および下の六方向に壁を有する構造が一般的であり、図2に例示される部屋1は、図示が省略されている背面の壁の他、正(前)面、右側面、床(下)面、左側面および天井(上)面の壁1a〜1eを有する。
【0067】
また、壁1a〜1eには、貫通孔2や取付物3などが設けられている。例えば、正面壁1aには、4個の丸貫通孔2a、1個の角貫通孔2bおよび3個の取付物3が設けられている。ここで、丸貫通孔2aとは、出入口が円形または楕円形の貫通孔2をいう。角貫通孔2bとは、出入口が矩形の貫通孔2をいう。
【0068】
続いて、3次元CADデータの作成システム10の作用および効果について、図2に例示される正面壁1aが3次元CADデータを作成する対象物(立体構造物)である場合を例に説明する。
【0069】
図3は、3次元点群画像生成手段13が生成する3次元点群画像34の一例であり、正面壁1a(図2(B))の3次元点群画像34である。
【0070】
3次元点群画像34では、正面壁1a(図2)の壁面(表面)および壁面に取り付けられている取付物3(図2)が点群として現れており、貫通孔2(図2)は点が存在しない空白領域、すなわち、貫通孔領域5(5a,5b)として現れる。なお、丸貫通孔2aおよび角貫通孔2bに相当する貫通孔領域5が、それぞれ、丸貫通孔領域5aおよび角貫通孔領域5bである。
【0071】
取付物3は、正面壁1aと色が異なることが一般的なため、それぞれ、有している色のレベル(階調値)が異なるのが一般的である。すなわち、取付物3に相当する取付物領域6は、正面壁1aと異なる色(R,G,B)の階調値を有する領域として3次元点群画像34に現れる。
【0072】
3次元点群画像34に現れる貫通孔2(2a,2b)および取付物3、すなわち、貫通孔領域5(5a,5b)および取付物領域6を抽出する際には、例えば、ユーザが範囲R1〜R3のように、抽出する範囲を指定する。
【0073】
なお、範囲を指定する際は、例えば、範囲R2のように、複数個の対象物(4個の丸貫通孔領域5a)を含めて指定してもよい。また、抽出する範囲は、常に指定する必要はなく、3次元点群画像34の全範囲を抽出の対象とする設定をしている場合などには省略することができる。
【0074】
続いて、3次元点群画像34に現れる貫通孔2(2a,2b)および取付物3、すなわち、貫通孔領域5(5a,5b)および取付物領域6の抽出手法について説明する。
【0075】
図4は、特別領域の一例である角貫通孔2bに相当する貫通孔領域5と、単位格子4との関係を例示する説明図である。
【0076】
単位格子4(図4)は、3次元点群画像34に現れる、角貫通孔領域5bなどの特別領域を抽出する範囲内に、例えば、格子状(2次元的)に配置される。単位格子4の配置位置は、例えば、3次元点群画像34を生成する際に用いる3次元座標系の3次元座標によって規定される。
【0077】
3次元CADデータの作成システム10では、各単位格子4内に、正面壁1aの表面(壁面)を表す点(点群)が幾つあるかを計数し、計数値が設定する閾(しきい)値以上または閾値未満であるかを判定することによって、角貫通孔領域5bなどの特別領域を抽出する。
【0078】
図5および図6は、3次元CADデータの作成システム10において、特別領域抽出手段15が、それぞれ、3次元点群画像34において、貫通孔領域5(図5)および取付物領域6(図6)を抽出する場合の一例を説明する説明図である。
【0079】
なお、図5および図6に示される単位格子4a(ハッチング有)および4b(ハッチング無)は、それぞれ、閾値以上の単位格子4および閾値未満の単位格子4である。また、図6に示される点Pは、取付物領域6の中心点である。
【0080】
貫通孔領域5(図5)を抽出する場合、貫通孔抽出部15aが、まず、単位格子4を3次元点群画像34内の貫通孔領域5を抽出する範囲を網羅するように配置し、配置した各単位格子4の内に正面壁1aの表面(壁面)を表す点(点群)を計数する。続いて、その計数値が貫通孔領域5を抽出するための閾値以上となるか否(閾値未満である)かを判定する。
【0081】
貫通孔抽出部15aは、計数値が閾値(ここでは、任意の自然数)未満の単位格子4である単位格子4bに相当する領域、すなわち、閾値以上の単位格子4aのうち、単位格子4bと隣接する単位格子(以下、「輪郭単位格子」とする。)4aなどによって包囲される閉領域を、原則、貫通孔領域5として抽出する。
【0082】
但し、単位格子4b(単位格子4bの一例)のように、単位格子4aが連続する領域内に、飛び石的に僅かに存在する場合も起こり得るため、単位格子4bに相当する領域などのように所定の面積(または単位格子4の個数)未満の単位格子4bを貫通孔領域5とみなさないように設定することもできる。
【0083】
例えば、図5に示される例において、2個の単位格子4に相当する面積未満の単位格子4bを貫通孔領域5とみなさないように設定した場合、貫通孔抽出部15aは、縦および横にそれぞれ4個ずつ連続する16(=4×4)個の単位格子4bに相当する領域を、貫通孔領域5とみなす一方、1個の単位格子4bに相当する領域は、貫通孔領域5とみなさない。
【0084】
なお、貫通孔領域5(空白領域)を抽出する閾値は、「1」に限定されるものではなく、2以上でも良い。これは、3次元計測装置の誤検出などによって本来存在しないはずの点が検出されることも起こり得るためであり、理論的には、計数値が0(ゼロ)となるはずの貫通孔領域5(空白領域)の計数値が0とはならない(1以上となる)場合もあるためである。
【0085】
一方、取付物領域6(図6)を抽出する場合、取付物抽出部15bが、まず、抽出する条件となる、色(R,G,B)の階調値の範囲の設定を受け付ける。色の階調値の範囲は、例えば、範囲の下限値(最小値)および上限値(最大値)を指定する、または範囲の中央値および中央値から上限値または下限値までの幅を指定することによって指定することができる。
【0086】
また、色(R,G,B)の階調値の範囲を定義する中央値、または最大値および最小値を定義する指標Iを導入すれば、指標Iを計算する範囲を指定することによって、色の階調値の範囲を規定する中央値、または最大値および最小値を、指標Iを計算した結果に基づいて、指定することができる。指標Iは、例えば、指定した領域(例えば、視覚的に取付物領域6と推定される領域内の少なくとも1点を含む領域)内に含まれる各点の色の階調値を統計学的に処理して得られる、最大値、最小値、平均値、中央値、最頻値などの代表値である。どの代表値を選択するかは、ユーザが任意に設定することができる。
【0087】
指標Iを導入する場合、色の階調値の範囲を規定する中央値Vc(幅はユーザが指定)、または最大値Vmaxおよび最小値Vminは、指標Iを項に含む下記式(1)〜(3)などのように、指標Iを用いて定義される。
[数1]
Vc=I …(1)
Vmax=I+10 …(2)
Vmin=I−10 …(3)
【0088】
色(R,G,B)の階調値の範囲を指定した内容が、例えば、R=100、G=100、B=100を中央値とし、上限値および下限値までの幅を10とした場合、取付物抽出部15bは、色の階調値の範囲を、(R,G,B)=(90,90,90)〜(110,110,110)と設定する。
【0089】
続いて、取付物抽出部15bは、単位格子4を3次元点群画像34内の取付物領域6を抽出する範囲を網羅するように配置し、配置した各単位格子4の内に正面壁1aの表面(壁面)を表す点(点群)のうち、設定した階調値の範囲内にある点(点群)を計数する。
【0090】
続いて、取付物抽出部15bは、計数値が取付物領域6を抽出するための閾値未満となるか否(閾値以上である)かを判定し、計数値が閾値(ここでは、任意の自然数)以上の単位格子4である単位格子4aに相当する領域を、原則、取付物領域6として抽出する。
【0091】
なお、取付物領域6の形状は、図6に例示されるように、3次元形状計測時の誤検出や設定する閾値などの条件により、輪郭を形成する縁部は誤差が生じやすく必ずしも実物の取付物3の形状(矩形)と合致するとは限らない。但し、このような実物との形状不一致が生じたとしても、取付物領域6の中心位置(点P)は、実物の取付物3の中心位置とほぼずれがないことなどから、取付物CADモデル8(図7)などの特別領域CADモデルの位置決め基準は、取付物領域6などの特別領域に相当する領域の中心位置とするのが好ましい。
【0092】
また、取付物領域6が施工図(設計図)に現れる最大の取付物3の大きさが予め既知の場合など、所定の大きさを超える取付物領域6については、取付物領域6とみなさない旨の設定(取付物領域6とみなすか否かの閾値の設定)を可能としてもよい。
【0093】
なお、上述した貫通孔領域5および取付物領域6を抽出する範囲の設定、すなわち、単位格子4を配置する範囲の設定は、入力手段11から入力される範囲を指定する操作、または事前に設定される範囲設定の情報などに基づき、範囲設定部15cが設定する。貫通孔領域5および取付物領域6を抽出する範囲は、3次元点群画像34内の一部範囲に限定することもできるし、全範囲を設定することもできる。
【0094】
続いて、CADモデル含有画像35(図7(A))、設計図画像36(図7(B))および結果画像37(図8)について、それぞれ説明する。
【0095】
図7は、3次元CADデータの作成システム10が位置照合工程(ステップS5:図9)において用いる画像35および36の一例を説明する説明図であり、図7(A)はCADモデル含有画像35を例示する説明図、図7(B)は設計図画像36を例示する説明図である。
【0096】
CADモデル含有画像35は、3次元点群画像34と特別領域CADモデル生成手段16が生成した貫通孔CADモデル7や取付物CADモデル8などの特別領域CADモデルの画像とを重畳して生成される。すなわち、3次元点群画像34から特別領域2,3(図2)とみなして抽出した貫通孔領域5(5a,5b)や取付物領域6などの3次元点群画像34内の該当する領域を特別領域CADモデルとした画像である。
【0097】
CADモデル含有画像35には、少なくとも特別領域を模擬した貫通孔CADモデル7や取付物CADモデル8などの特別領域CADモデル(CADデータ)が存在するため、3次元CADや2次元CADで作成された設計図が存在する場合、両方のCADデータを用いれば、CADシステム上で任意の平面における位置照合に使用することができる。
【0098】
従って、3次元CADデータを作成する対象物(立体構造物)が正面壁1aである場合、丸貫通孔2aおよび角貫通孔2bなどの貫通孔2並びに取付物3としての埋込金物の位置関係を確認する位置照合工程などでCADモデル含有画像35を用いることができる。
【0099】
貫通孔CADモデル7の生成は、まず、貫通孔CADモデル生成部16aが、例えば、厚さ情報32を参照する、または他の方向からの3次元点群画像34から求まる貫通孔2(3次元点群画像34内では貫通孔領域5)の端部の位置情報を用いるなどの手法を用いて貫通孔2(図2)の両端間の長さを決定する。
【0100】
続いて、3次元形状計測された立体構造物の表面に現れる貫通孔2(図2)の端部を底面とし、決定した貫通孔の両端間の長さを高さとした柱体の3次元CADモデル、すなわち貫通孔CADモデル7の形状および寸法を決定し、貫通孔CADモデル7を生成する。
【0101】
取付物CADモデル8の生成は、まず、取付物抽出部15bが抽出した取付物領域6が何れの取付物3(図2)であるか(取付物3の種別)を取付物種別特定部16bが特定し、続いて、取付物CADモデル生成部16cが、特定した取付物3について取付物CADモデル8を生成する。
【0102】
取付物3の種別の特定は、取付物種別特定部16bが、例えば、3次元点群画像34内の取付物領域6の寸法情報を取付物抽出部15bから取得し、取付物情報33に含まれる取付物3毎の寸法情報を参照し、最も寸法差が小さい取付物3を探索する。取付物種別特定部16bは、取付物情報33を参照し、探索した最も寸法差が小さい取付物3の識別情報に基づいて取付物3の種別を特定する(第1のロジック)。
【0103】
また、3次元点群データ31および取付物情報33が、色情報を含んでいる場合、3次元点群画像34内の取付物領域6の色情報を取付物抽出部15bから取得し、取付物情報33に含まれる取付物3毎の色情報を参照し、最も階調値の差が小さい取付物3を探索する。取付物種別特定部16bは、取付物情報33を参照し、探索した最も階調値差が小さい取付物3の識別情報に基づいて取付物3の種別を特定してもよい(第2のロジック)。
【0104】
なお、寸法情報および色情報の何れか一方で取付物3の種別を一義的に特定できる場合には、寸法情報および色情報の何れか一方を選択して取付物3の種別を特定することもできる。また、同色の異なる寸法や異色の同寸法の取付物3が想定されているなど、寸法情報および色情報の何れか一方では、取付物3の種別を一義的に特定できない場合には、寸法情報および色情報の両方を用いて、それぞれ、最も差異が小さくなる取付物3を探索することで取付物3の種別を特定する(第3のロジック)。
【0105】
なお、上述した3次元CADデータの作成システム10では、取付物CADモデル生成部16cが、特定した取付物3について取付物情報33を参照して取付物CADモデル8を生成する場合を説明しているが、各取付物3に対応する取付物CADモデル8を予め生成しておき、記憶手段19等の読み出し可能な記憶領域に保持しておいてもよい。この場合、取付物情報33を参照した取付物CADモデル8の生成は省略することができる。
【0106】
図7(B)に例示される設計図画像36は、図2に例示される正面壁1aの施工図(設計図)の画像である。設計図画像36内の貫通孔領域5(5a,5b)および取付物領域6は、それぞれ、貫通孔2(2a,2b)および取付物3(図2)に対応している。
【0107】
設計図画像36内の施工図(設計図)は、元々存在している正面壁1aの3次元CADデータを2次元化(平坦化)して得られる2次元CADデータ、または予め作成されている2次元CADデータに基づいて作成されている2次元図面であり、貫通孔領域5(5a,5b)および取付物領域6は設計図画像36内の位置を定義する2次元座標系の位置情報を有している。
【0108】
図8は、3次元CADデータの作成システム10が位置照合工程(ステップS5:図9)において表示する位置照合結果(結果画像37)の一例を説明する説明図である。
【0109】
結果画像37は、設計図画像36の上に、設計図画像36と縮尺および基準点を揃えたCADモデル含有画像35の貫通孔CADモデル7(7a,7b)および取付物CADモデル8を重畳(重ね合わせた)画像である。なお、貫通孔2(図2)および取付物3(図2)のうち、同じ位置で重なる対象物については、符号を一方(CADモデル含有画像35内の貫通孔CADモデル7(7a,7b)および取付物CADモデル8)のみに付し、他方(設計図画像36内の貫通孔領域5(5a,5b)および取付物領域6)については省略している。
【0110】
図8に例示される結果画像37では、3個の取付物3のうち、真ん中の取付物3が施工図(設計図)に対して位置ずれを生じており、ユーザは出力手段12としての表示手段に表示される結果画像37を目視することで、取付物3の位置ずれを、3次元CADデータ作成システム10などのCADシステム上で確認することができる。
【0111】
なお、CADモデル含有画像生成手段17が生成するCADモデル含有画像35の縮尺および基準点を、設計図画像36の縮尺および基準点に揃えておけば、照合手段18は、位置や大きさの事前調整を省略することができる。
【0112】
次に、本実施形態に係る3次元CADデータの作成方法について、図2に例示される正面壁1aの3次元CADデータを作成する場合を例に説明する。
【0113】
本実施形態に係る3次元CADデータの作成方法は、例えば、3次元CADデータ作成システム10が3次元CADデータ作成処理手順(後述する図9)を実行することで行うことができる。
【0114】
図9は、3次元CADデータ作成処理手順(メインルーチン)の処理の流れを示す流れ図(フローチャート)である。
【0115】
3次元CADデータ作成処理手順は、例えば、3次元点群画像生成工程(ステップS1)と、表面位置特定工程(ステップS2)と、特別領域CADモデル生成工程(ステップS3)と、CADモデル含有画像生成工程(ステップS4)と、位置照合工程(ステップS5)とを備える。
【0116】
3次元CADデータ作成処理手順は、3次元CADデータ作成システム10から処理実行の指令を受けて開始され(START)、まず、3次元点群画像生成手段13が正面壁1a(図2)などの立体構造物表面の3次元座標を含む3次元点群データ31を読み出して3次元点群画像34を生成する(ステップS1)。
【0117】
ステップS1に続いて、表面位置特定手段14が、読み出した3次元点群データ31から、最小二乗法、領域成長法(Region Growing法)、ランザック法またはその他の導出手法を用いて正面壁1aの表面の位置を求める(ステップS2)。
【0118】
ステップS2に続いて、特別領域抽出手段15が、3次元点群画像34を生成する際のマッピングに使用される3次元点群データ31のうち、例えば、色の階調値の範囲など、指定される条件を満たす3次元点群データ31を抽出し、抽出した3次元点群データ31に含まれる3次元座標によって表される領域を特別領域とみなして抽出し、さらに、特別領域CADモデル生成手段16が、特別領域を表す貫通孔CADモデル7(図7)などの特別領域CADモデルを生成する(ステップS3)。
【0119】
ステップS3に続いて、CADモデル含有画像生成手段17が、貫通孔2(図2)および取付物3(図2)などの特別領域が現れている3次元点群画像34内の貫通孔領域5および取付物領域6などの領域を、貫通孔CADモデル7および取付物CADモデル8などの特別領域CADモデルに置換したCADモデル含有画像35を生成する(ステップS4)。
【0120】
貫通孔CADモデル7および取付物CADモデル8の配置位置は、貫通孔領域5および取付物領域6から求められる基準(輪郭を構成する辺や中心点などの点)に基づいて決定(位置決め)する。
【0121】
ステップS4に続いて、照合手段18が、CADモデル含有画像35と設計図画像36とを同じ位置を基準点とする2次元座標系に重ねて(重畳して)結果画像37を生成し、両画像35,36に現れる取付物3(画像内では取付物領域6に相当)などの同一対象物の位置関係を照合する(ステップS5)。ステップS5が完了すると、3次元CADデータ作成処理手順は、全処理ステップを終了する(END)。
【0122】
なお、図9に例示される3次元CADデータ作成処理手順(ステップS1〜ステップS5)は、位置照合工程(ステップS5)を備える例であるが、位置照合を要しない場合、位置照合工程(ステップS5)を省略してもよい。すなわち、CADモデル含有画像生成工程(ステップS4)を完了した後に、3次元CADデータ作成処理手順の全処理ステップを終了してもよい(END)。
【0123】
続いて、3次元CADデータ作成処理手順における特別領域CADモデル生成工程(ステップS3:図9)の例として、貫通孔CADモデル生成工程(後述する図10)および取付物CADモデル生成工程(後述する図11)を、それぞれ説明する。
【0124】
3次元CADデータ作成処理手順(ステップS1〜ステップS5:図9)では、特別領域CADモデル生成工程(ステップS3:図9)として、貫通孔CADモデル生成工程(ステップS30〜ステップS34:図10)および取付物CADモデル生成工程(ステップS30,ステップS35〜ステップS39:図11)の少なくとも一方の工程を実行する。なお、後述する貫通孔CADモデル生成工程(図10)および取付物CADモデル生成工程(図11)は、並列的に実行してもよいし、直列的に実行(何れか一方の処理工程の完了を待って他方の処理工程を開始)してもよい。
【0125】
図10は、特別領域CADモデル生成工程(ステップS3:図9)の一例である、貫通孔CADモデル生成工程(ステップS30〜ステップS34)の処理の流れを示す流れ図(フローチャート)である。
【0126】
貫通孔CADモデル生成工程(ステップS30〜ステップS34)は、例えば、抽出範囲設定ステップ(ステップS30)と、計数ステップ(ステップS31)と、輪郭単位格子特定ステップ(ステップS32)と、貫通孔抽出ステップ(ステップS33)と、貫通孔CADモデル生成ステップ(ステップS34)とを備える。
【0127】
3次元CADデータ作成処理手順の処理フローが、メインルーチン(図9)から特別領域CADモデル生成工程(ステップS3:図9)のサブルーチン(貫通孔CADモデル生成工程:図10)に入ると(ENTER)、3次元CADデータ作成システム10は、まず、抽出範囲設定ステップ(ステップS30)を実行する。
【0128】
抽出範囲設定ステップ(ステップS30)では、範囲設定部15cが、入力手段11から入力される範囲を指定する操作、または事前に設定される範囲設定の情報などに基づいて3次元点群画像34内から貫通孔領域5を抽出する範囲を設定する。
【0129】
貫通孔領域5を抽出する範囲を設定すると、続いて、貫通孔抽出部15aが、設定した範囲に単位格子4(図5)を配置し、表面に位置する点(点群)が単位格子4(図5)内に幾つ存在するかを単位格子4毎に計数する(ステップS31)。
【0130】
ステップS31に続いて、貫通孔抽出部15aは、閾値(ここでは、任意の自然数)と計数値とを比べて、当該閾値未満の単位格子4b(図5)と隣接する輪郭単位格子4a(図5)を特定する(ステップS32)。
【0131】
ステップS32に続いて、貫通孔抽出部15aは、輪郭単位格子4a(図5)に存在する点によって包囲される閉領域(貫通孔領域5)を貫通孔2とみなして抽出する(ステップS33)。
【0132】
ステップS33に続いて、貫通孔CADモデル生成部16aが、貫通孔領域5の形状および中心位置を輪郭単位格子4a(図5)に存在する点の3次元座標から求め、さらに厚さ情報32を参照するなどして貫通孔2(図2)の両端間の長さ(貫通孔2が設けられる位置における厚さ)を求める。続いて、貫通孔CADモデル生成部16aは、求めた貫通孔領域5の形状および長さに基づいて貫通孔CADモデル7を生成する(ステップS34)。
【0133】
なお、ステップS33で求めている中心位置は、貫通孔CADモデル7を配置する際の基準である。この基準の情報は、CADモデル含有画像生成手段17に与えられ、CADモデル含有画像35を生成する際に用いられる。
【0134】
ステップS34が完了すると、貫通孔CADモデル生成工程の全処理ステップは完了する。3次元CADデータ作成処理手順の処理フローは、特別領域CADモデル生成工程のサブルーチン(図10)を抜けてメインルーチン(図9)に戻る(RETURN)。
【0135】
なお、貫通孔CADモデル生成工程(図10)において、抽出する範囲を限定しない場合や抽出する範囲および抽出の手順を予め設定している場合などでは、ステップS30を省略することができる。
【0136】
図11は、取付物CADモデル生成工程(ステップS30,ステップS35〜ステップS39)の処理の流れを示す流れ図(フローチャート)である。
【0137】
取付物CADモデル生成工程(ステップS30,ステップS35〜ステップS39)は、例えば、抽出範囲設定ステップ(ステップS30)と、色レベル設定ステップ(ステップS35)と、計数ステップ(ステップS36)と、取付物抽出ステップ(ステップS37)と、取付物種別特定ステップ(ステップS38)と、取付物CADモデル生成ステップ(ステップS39)とを備える。
【0138】
3次元CADデータ作成処理手順の処理フローが、メインルーチン(図9)から特別領域CADモデル生成工程(ステップS3:図9)のサブルーチン(取付物CADモデル生成工程:図11)に入ると(ENTER)、3次元CADデータ作成システム10は、まず、抽出範囲設定ステップ(ステップS30)を実行する。
【0139】
取付物CADモデル生成工程における抽出範囲設定ステップ(ステップS30)では、範囲設定部15cが、入力手段11から入力される範囲を指定する操作、または事前に設定される範囲設定の情報などに基づいて3次元点群画像34内から取付物領域6を抽出する範囲を設定する。
【0140】
取付物領域6を抽出する範囲を設定すると、続いて、取付物抽出部15bが、取付物領域6を抽出する点が有する色(R,G,B)の階調値の範囲を設定する(ステップS35)。
【0141】
ステップS35に続いて、取付物抽出部15bが、設定した範囲に単位格子4(図6)を配置し、表面に位置し、設定した範囲内の点(点群)が単位格子4(図6)内に幾つ存在するかを単位格子4毎に計数する(ステップS36)。
【0142】
ステップS36に続いて、取付物抽出部15bが、計数値が取付物領域6を抽出するための閾値(ここでは、任意の自然数)以上となるか否(閾値未満である)かを判定し、計数値が閾値以上の単位格子4a(図6)に相当する領域(取付物領域6)を取付物3(図2)とみなして抽出する(ステップS37)。
【0143】
ステップS37に続いて、取付物種別特定部16bが、取付物情報33に含まれる取付物3毎の寸法情報および色情報のうち少なくとも一方の情報を特徴量として設定し、取付物情報33に含まれる取付物3毎の特徴量を参照し、最も近い特徴量を持つ(最も特徴量の差が小さい)一つの取付物3を探索し、取付物3の種別を特定する。
【0144】
ステップS38に続いて、取付物CADモデル生成部16cが、ステップS37において、取付物種別特定部16bが特定した取付物3を表す取付物CADモデル8を生成する(ステップS39)。
【0145】
ステップS39が完了すると、取付物CADモデル生成工程の全処理ステップは完了する。3次元CADデータ作成処理手順の処理フローは、特別領域CADモデル生成工程のサブルーチン(図11)を抜けてメインルーチン(図9)に戻る(RETURN)。
【0146】
なお、取付物CADモデル生成工程(図11)においても、貫通孔CADモデル生成工程(図10)と同様に、抽出する範囲を限定しない場合や抽出する範囲および抽出の手順を予め設定している場合などでは、ステップS30を省略することができる。
【0147】
以上、3次元CADデータ作成システム10および3次元CADデータ作成処理手順によれば、被測定対象物を計測して得られた3次元点群データ31から貫通孔2や取付物3などの特別領域を抽出し、当該特別領域を表す貫通孔CADモデル7や取付物CADモデル8などの特別領域3次元CADモデルを自動的に作成して特別領域が存在する位置に配置するので、ユーザが特別領域3次元CADモデルを1箇所ずつ作成する手間を省力化することができ、より効率的に3次元CADモデルを作成することができる。
【0148】
また、3次元CADデータ作成システム10を、特別領域を抽出する範囲を指定可能に構成することで、特別領域を抽出する処理ステップにおける処理時間をより早めることができる。
【0149】
さらに、3次元CADデータ作成システム10が照合手段18を具備する場合、3次元点群画像34に映る貫通孔2や取付物3などの対象物の位置を、基準となる設計図画像36に映る同一対象物の位置と比べることができる。例えば、CAD図面である設計図に従って加工された実物を模擬する3次元CADモデル(3次元CADデータ)を作成する場合、設計図が示す対象物の状態(設計図画像36に映る貫通孔領域5(5a,5b)などの位置)と、作成された実物における同対象物の状態(CADモデル含有画像35に配置される、貫通孔CADモデル7(7a,7b)などの位置)とをCADデータに基づいて位置関係を確認(照合)することができる。
【0150】
また、照合手段18を具備する3次元CADデータ作成システム10および位置照合工程を備える3次元CADデータ作成方法は、例えば、設計図が示す物の状態と、当該設計図に従って加工されて完成した後の物の状態とを3次元CADデータを用いて確認し、設計図との違いの有無を確認することができる点で、それぞれを、施工状態を検証する検証システムおよび検証方法として適用することもできる。
【0151】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することが可能である。本発明は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0152】
1 部屋
1a 正面壁
2 貫通孔
2a 丸貫通孔
2b 角貫通孔
3 取付物
4 単位格子
4a,4a 点の個数が閾値以上の単位格子
4b,4b 点の個数が閾値未満の単位格子
5 貫通孔領域
5a 丸貫通孔領域
5b 角貫通孔領域
6 取付物領域
7 貫通孔CADモデル(特別領域CADモデル)
7a 丸貫通孔CADモデル
7b 角貫通孔CADモデル
8 取付物CADモデル(特別領域CADモデル)
10 3次元CADデータ作成システム
11 入力手段
12 出力手段
13 3次元点群画像生成手段
14 表面位置特定手段
15 特別領域抽出手段
15a 貫通孔抽出部
15b 取付物抽出部
15c 抽出範囲設定部
16 特別領域CADモデル生成手段
16a 貫通孔CADモデル生成部
16b 取付物種別特定部
16c 取付物CADモデル生成部
17 CADモデル含有画像生成手段
18 照合手段
19 記憶手段
21 制御手段
31 3次元点群データ
32 厚さ情報
33 取付物情報
34 3次元点群画像
35 CADモデル含有画像
36 設計図画像
37 結果画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11