(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乗員が前記電源ボタンを押下して前記制御回路が起動したときに、前記電源ボタンの押下が継続されていた場合、前記電源ボタンの押下が無くなった後、前記所定の時間が経過してから、前記制御回路は、前記光センサの出力信号に応じた前記ヘッドランプのオンおよびオフの制御を開始する、請求項1から6のいずれかに記載の電動補助自転車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動補助自転車のハンドルのグリップ近傍には、乗員の操作を受け付ける複数のボタンが配置された操作盤が設けられる。そのような操作盤の中には液晶パネルを有し、その液晶パネルに各種情報を表示させるものがある。また、操作盤の中には、ヘッドランプのオンおよびオフの制御に用いる光センサを有するものがある。
【0005】
より多くの情報を表示したり、表示情報の視認性を向上させたりするためには、操作盤が有する液晶パネルのサイズは大きいことが望ましい。しかし、大きなサイズの液晶パネルを設ける場合、操作盤にはその大きなサイズの液晶パネルを配置するスペースを確保する必要がある。また、光センサを有する操作盤では、電動補助自転車の周囲からの光が入射するように光センサを配置するスペースを確保する必要がある。
【0006】
一方で、ハンドルに設けられた操作盤のうちのハンドルからはみ出す部分は小さいことが望ましい。そのため、操作盤の筐体サイズは大きくならないことが求められる。また、乗員にとって操作盤のボタン操作が容易であることが求められる。
【0007】
操作盤に大きなサイズの液晶パネルを設けた場合、ボタンおよび光センサは配置の制限を受ける。限られた配置スペースにおいて、ボタンと光センサとを近接して配置した場合、ボタンを操作する指が光センサに入射する光を遮ることが起こり得、ヘッドランプが不必要に点灯する場合がある。
【0008】
本発明は、電動補助自転車の操作盤のボタンを操作する指が光センサに入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプが点灯することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る電動補助自転車は、乗員の人力を補助する補助力を発生させる電動モータと、前記電動モータに電力を供給するバッテリと、ヘッドランプと、情報を表示する表示装置、電源のオンおよびオフを行うための電源ボタン、受けた光に応じた信号を出力する光センサ、前記ヘッドランプのオンおよびオフを制御する制御回路を有する操作盤とを備えた電動補助自転車であって、前記電源ボタンと前記光センサとは近接して前記操作盤に配置されており、前記乗員が前記電源ボタンを操作して前記制御回路が起動した後、所定の時間が経過してから、前記制御回路は、前記光センサの出力信号に応じた前記ヘッドランプのオンおよびオフの制御を開始する。
【0010】
電源ボタンと光センサとを近接させて操作盤に配置した場合、電源ボタンを操作する指が光センサに入射する光を遮ることが起こり得る。本発明では、電源ボタンを操作して制御回路が起動した後、所定の時間が経過してから、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を開始する。すなわち、電源ボタンを操作して制御回路が起動した後、所定の時間が経過するまでは、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を開始しない。その所定の時間の間に、電源ボタンを操作した指は電源ボタンおよび光センサの周囲から離れることができる。これにより、電源ボタンを操作する指が光センサに入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプが点灯することを抑制することができる。
【0011】
ある実施形態によれば、前記所定の時間は1秒以上3秒未満の時間であってもよい。これにより、電源ボタンを操作する指が光センサに入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプが点灯することを抑制することができる。また、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を適切なタイミングで開始することができる。
【0012】
ある実施形態によれば、前記所定の時間は1.5秒であってもよい。これにより、電源ボタンを操作する指が光センサに入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプが点灯することを抑制することができる。また、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を適切なタイミングで開始することができる。
【0013】
ある実施形態によれば、前記操作盤は時計を有し、前記制御回路は、起動した時刻に応じて前記所定の時間の長さを変更してもよい。1日のうちのヘッドランプが早くオンになることが望まれる時刻と必ずしもそうではない時刻とで、所定の時間の長さを変更することで、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を適切なタイミングで開始することができる。
【0014】
ある実施形態によれば、前記操作盤は時計を有し、前記制御回路は、起動した時刻が属する時間帯に応じて、前記所定の時間の長さを変更してもよい。ヘッドランプが早くオンになることが望まれる時間帯と必ずしもそうではない時間帯とで、所定の時間の長さを変更する。例えば、ヘッドランプが早くオンになることが望まれる夜間と必ずしもそうではない昼間とで所定の時間の長さを変更する。これにより、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を適切なタイミングで開始することができる。
【0015】
ある実施形態によれば、前記制御回路は日付を計算し、起動したときの日付に応じて前記所定の時間の長さを変更してもよい。季節によって日照時間が異なることを考慮し、例えば、起動した日が冬季である場合と夏季である場合とで所定の時間の長さを変更する。これにより、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を適切なタイミングで開始することができる。
【0016】
ある実施形態によれば、前記乗員が前記電源ボタンを押下して前記制御回路が起動したときに、前記電源ボタンの押下が継続されていた場合、前記電源ボタンの押下が無くなった後、前記所定の時間が経過してから、前記制御回路は、前記光センサの出力信号に応じた前記ヘッドランプのオンおよびオフの制御を開始してもよい。乗員によって、電源ボタンを指で押下してからその指を離すまでの時間に差がある。制御回路の起動後も指が電源ボタンを押下し続けていた場合、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を開始したときに指が光センサに入射する光を遮っている可能性がある。電源ボタンの押下が無くなった後、所定の時間が経過してから、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を開始することにより、指が光センサに入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプが点灯することを抑制することができる。
【0017】
ある実施形態によれば、前記電動補助自転車は、乗員が手で握る左グリップおよび右グリップを有するハンドルをさらに備え、前記操作盤は、前記ハンドルの左部に配置され、前記操作盤は、前記電動モータの補助力を設定するための補助力設定ボタンと、前記表示装置に表示する前記電動補助自転車の走行状態に関する情報を切り替えるための切替ボタンと、前記ヘッドランプのオンおよびオフを行うためのライトボタンとをさらに有し、前記操作盤の前記左グリップに近い位置から遠い位置に向かって、前記補助力設定ボタン、前記切替ボタン、前記ライトボタン、前記電源ボタンおよび前記光センサがこの順に配置されてもよい。
【0018】
操作頻度の高いボタンほど左グリップに近い位置に配置する。これにより、操作盤を操作するときに乗員がグリップから手を離す割合を小さくすることができる。
【0019】
また、電源ボタンは、左グリップから遠い位置に配置する。これにより、他のボタンの操作中に誤って電源ボタンを押してしまうことを抑制することができる。
【0020】
また、光センサは、左グリップから一番遠い位置に配置する。これにより、各種ボタンの操作中に指が光センサに入射する光を遮ることを抑制することができる。
【0021】
ある実施形態によれば、前記操作盤は、プリント基板をさらに有し、前記表示装置、前記補助力設定ボタン、前記切替ボタン、前記ライトボタン、前記電源ボタン、前記光センサおよび前記制御回路は、同一の前記プリント基板に配置されてもよい。
【0022】
表示装置、各種ボタン、光センサおよび制御回路を同一のプリント基板に配置することで、操作盤の厚さを薄くすることができる。また、プリント基板の配線パターンを用いて部品同士を電気的に接続することにより断線を抑制し、操作盤の動作の信頼性を高くすることができる。
【発明の効果】
【0023】
電源ボタンと光センサとを近接させて操作盤に配置した場合、電源ボタンを操作する指が光センサに入射する光を遮ることが起こり得る。本発明の実施形態に係る電動補助自転車では、電源ボタンを操作して制御回路が起動した後、所定の時間が経過してから、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を開始する。すなわち、電源ボタンを操作して制御回路が起動した後、所定の時間が経過するまでは、ヘッドランプのオンおよびオフの制御を開始しない。その所定の時間の間に、電源ボタンを操作した指は電源ボタンおよび光センサの周囲から離れることができる。これにより、電源ボタンを操作する指が光センサに入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプが点灯することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る電動補助自転車を説明する。実施形態の説明においては、同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。本発明の実施形態における前後、左右、上下とは、電動補助自転車のサドル(シート)に乗員がハンドルに向かって着座した状態を基準とした前後、左右、上下を意味する。
【0026】
以下の説明では、子供が乗車するチャイルドシートを備えた電動補助自転車を例示する。以下の説明における「乗員」(rider)は、一緒に乗車している子供ではなく、自転車を操縦する者を指す。電動補助自転車に子供が乗車することは必須ではない。本発明は、チャイルドシートを備えない電動補助自転車にも適用される。以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る電動補助自転車1を示す側面図である。
図1は、電動補助自転車1の一例として、二輪の電動補助自転車を示している。
【0028】
電動補助自転車1は、前後方向に延びる車体フレーム11を有する。車体フレーム11は、ヘッドパイプ12、ダウンチューブ5、ブラケット6、チェーンステイ7、シートチューブ16、シートステイ19を含む。ヘッドパイプ12は車体フレーム11の前端に配置される。ハンドルステム13は、ヘッドパイプ12に回転可能に挿入される。ハンドル14は、ハンドルステム13の上部に固定される。ハンドルステム13の下部にはフロントフォーク15が固定される。フロントフォーク15の下端部には、操舵輪である前輪25が、車軸22を介して回転可能に支持される。フロントフォーク15の下端部には、前輪25の回転を検出する前輪回転センサ49が設けられている。前輪25の側方にはヘッドランプ2が配置される。ヘッドランプ2は、フロントフォーク15に取り付けられる。
【0029】
ハンドル14には、ハンドル14と一緒に回動可能なようにチャイルドシート90が設けられている。ハンドル操作時に乗員がハンドル14を回動させると、チャイルドシート90はハンドル14と一緒に回動する。
【0030】
ダウンチューブ5は、ヘッドパイプ12から後方斜め下方に向かって延びている。シートチューブ16は、ダウンチューブ5の後端部から上方に向かって延びている。チェーンステイ7は、シートチューブ16の下端部から後方に向かって延びている。ブラケット6は、ダウンチューブ5の後端部、シートチューブ16の下端部、チェーンステイ7の前端部を接続する。
【0031】
シートチューブ16にはシートポスト17が挿入され、シートポスト17の上端部には乗員が座るサドル27が設けられる。チェーンステイ7の後部は、駆動輪である後輪26を回転可能に支持する。シートステイ19は、シートチューブ16の上部から後方斜め下方に向かって延びている。シートステイ19の下端部は、チェーンステイ7の後部に接続される。シートステイ19は、サドル27の後方に設けられた荷台24を支持する。
【0032】
車体フレーム11の車両中央部付近に配置されたブラケット6には駆動ユニット30が取り付けられる。駆動ユニット30は、制御装置32、電動モータ33、クランクアーム34、ペダル35、クランク軸37、駆動スプロケット42、補助スプロケット44、トルクセンサ47、クランク回転センサ48を含む。駆動ユニット30のこれらの構成要素はユニットケース31に組み込まれる。従動スプロケット45は、後輪26の駆動軸23と同軸に設けられている。ブラケット6には電動モータ33等に電力を供給する着脱式バッテリ36が搭載される。着脱式バッテリ36はシートチューブ16に支持されてもよい。着脱式バッテリ36は、電動補助自転車1に対して着脱可能である。電動補助自転車1から着脱式バッテリ36を取り外した状態で、バッテリ36を外部の充電器(図示せず)に接続して充電を行う。
【0033】
クランク軸37は駆動ユニット30に左右方向に貫通して支持されている。クランク軸37の両端部にはクランクアーム34が設けられている。クランクアーム34の先端には、ペダル35が回転可能に設けられている。乗員がペダル35に加えた人力(踏力)は、クランク軸37に発生するトルクとしてトルクセンサ47に検出される。クランク回転センサ48は、クランク軸37の回転を検出する。
【0034】
制御装置32は、電動補助自転車1の各種動作を制御する。乗員がペダル35を足で踏んで回転させたときに発生するクランク軸37の回転出力は、駆動スプロケット42、チェーン28、従動スプロケット45を介して後輪26に伝達される。制御装置32は、クランク軸37の回転出力に応じた駆動補助出力を発生するように電動モータ33を制御する。電動モータ33から出力された駆動補助出力は、補助スプロケット44、チェーン28、従動スプロケット45を介して、後輪26に伝達される。チェーン28の代わりにベルト、シャフト等が用いられてもよい。電動補助自転車1では、電動モータ33が乗員の人力を補助する補助力を発生することにより、例えば坂道の走行時や荷物を積んでいるときの乗員の負担を減らすことができる。
【0035】
ハンドル14には、操作盤60が設けられている。乗員は、操作盤60を操作して、電動補助自転車1の電源のオンとオフとを切り替えたり、電動モータ33の補助力の大きさを設定したりすることができる。操作盤60は、配線38を介して、制御装置32と情報の送受信を行う。
【0036】
図2は、電動補助自転車1の前方部を示す斜視図である。ハンドル14は、右ハンドルバー81および左ハンドルバー82を有する。右ハンドルバー81の後端部には、右グリップ83が設けられている。左ハンドルバー82の後端部には、左グリップ84が設けられている。乗員は、これらの右グリップ83および左グリップ84を握って操舵を行う。
【0037】
右グリップ83の近傍には、前輪ブレーキレバー85が設けられている。左グリップ84の近傍には、後輪ブレーキレバー86が設けられている。右手によって右グリップ83とともに前輪ブレーキレバー85が握られると、前輪25に制動力が付与される。左手によって左グリップ84とともに後輪ブレーキレバー86が握られると、後輪26に制動力が付与される。
【0038】
右ハンドルバー81における右グリップ83の近傍には、乗員が変速比を切り替える操作を行う変速操作器87が設けられる。左ハンドルバー82における左グリップ84の近傍には、操作盤60が設けられる。
【0039】
ハンドル14は、子供が着座可能なチャイルドシート90を支持している。チャイルドシート90は、右ハンドルバー81および左ハンドルバー82の間に配置されている。チャイルドシート90は、上方が開放された凹形状を有する。チャイルドシート90は、その底面に子供が着座可能な着座部92を有しており、その前部に子供の脚を通す挿通孔93がある。挿通孔93の下方には、足載せ95が設けられている。チャイルドシート90には、着座した子供を保持するシートベルト94が設けられている。シートベルト94は、シートベルト94の着脱に用いるバックル98を有する。着座部92の前方かつ上方には、子供が把持可能なバー96が設けられている。
【0040】
図3は、電動補助自転車1の機械的および電気的構成を示すブロック図である。駆動ユニット30は、クランク軸37、トルクセンサ47、一方向クラッチ43、クランク回転センサ48、駆動スプロケット42、制御装置32、電動モータ33、モータ回転センサ52、減速機51、一方向クラッチ53、補助スプロケット44を備える。駆動ユニット30は、ペダル35に加えられた乗員の人力に応じた駆動補助出力を電動モータ33に発生させる補助出力制御システムである。
【0041】
まず、動力の伝達経路を説明する。乗員がペダル35を踏み込んでクランク軸37を回転させると、そのクランク軸37の回転は、一方向クラッチ43および駆動スプロケット42を介してチェーン28に伝達される。一方向クラッチ43は、クランク軸37の順回転のみを駆動スプロケット42に伝達し、クランク軸37の逆回転は駆動スプロケット42に伝達させない。電動モータ33の回転は、減速機51、一方向クラッチ53、補助スプロケット44を介してチェーン28に伝達される。一方向クラッチ53は、チェーン28を順回転させる方向の回転のみを補助スプロケット44に伝達し、チェーン28を逆回転させる方向の回転は補助スプロケット44に伝達させない。乗員がペダル35に加えた人力により発生するクランク回転出力と、電動モータ33が発生する駆動補助出力とは、チェーン28で合成される。
【0042】
チェーン28の回転は、従動スプロケット45を介して駆動軸23に伝達される。駆動軸23の回転は、変速機構55および一方向クラッチ56を介して後輪26に伝達される。
【0043】
変速機構55は、乗員による変速操作器87の操作に応じて変速比を変更する機構である。一方向クラッチ56は、駆動軸23の回転速度が後輪26の回転速度よりも速い場合にのみ、駆動軸23の回転を後輪26に伝達する。駆動軸23の回転速度が後輪26の回転速度よりも遅い場合には、一方向クラッチ56は駆動軸23の回転を後輪26に伝達しない。
【0044】
次に、制御装置32による電動モータ33の駆動制御を説明する。制御装置32は、例えばMCU(Motor Control Unit)である。制御装置32は、マイクロコントローラ101、メモリ102、モータ駆動回路107を備える。マイクロコントローラ101は、電動モータ33の動作を制御するとともに、電動補助自転車1の各部の動作を制御する。メモリ102は、電動モータ33および電動補助自転車1の各部の動作を制御するための手順を規定したコンピュータプログラムを格納している。マイクロコントローラ101は、メモリ102からコンピュータプログラムを読み出して各種制御を行う。
図3中のマイクロコントローラ101の内部は、マイクロコントローラ101の機能ブロックを示している。マイクロコントローラ101は、トルク算出部103、補助出力演算部104、変速比検知部105として機能する。
【0045】
乗員がペダルに加えた人力(踏力)は、クランク軸37に発生するトルクとしてトルクセンサ47に検出される。トルクセンサ47は、検出したトルクに応じた電圧信号をトルク算出部103に出力する。トルク算出部103は、トルクセンサ47からの電圧信号をトルクに換算する。例えば、トルクセンサ47から入力されるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換し、デジタル電圧信号の大きさからトルクを算出する。トルク算出部103は、算出したトルクを補助出力演算部104に出力する。
【0046】
クランク回転センサ48は、クランク軸37の回転角を検出する。クランク回転センサ48は、クランク軸37の回転角に応じた信号を補助出力演算部104に出力する。例えば、クランク回転センサ48は、クランク軸37の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。補助出力演算部104は、クランク回転センサ48の出力信号からクランク軸37の回転速度を算出する。補助出力演算部104は、クランク軸37の回転速度とトルク算出部103が算出したトルクとを乗じて、クランク回転出力を算出する。
【0047】
電動モータ33には、モータ回転センサ52が設けられている。モータ回転センサ52は例えばエンコーダである。モータ回転センサ52は、電動モータ33のロータの回転角を検出し、回転角に応じた信号を変速比検知部105およびモータ駆動回路107へ出力する。例えば、モータ回転センサ52は、ロータの回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。変速比検知部105およびモータ駆動回路107は、モータ回転センサ52の出力信号から電動モータ33の回転速度を算出する。
【0048】
前輪回転センサ49は、前輪25の回転角を検出し、回転角に応じた信号を変速比検知部105へ出力する。例えば、前輪回転センサ49は、前輪25の回転を所定の角度毎に検出し、矩形波信号または正弦波信号を出力する。変速比検知部105は、前輪回転センサ49の出力信号から前輪25の回転速度を算出する。変速比検知部105は、電動モータ33の回転速度と前輪25の回転速度から変速比を算出し、算出した変速比を補助出力演算部104へ入力する。
【0049】
補助出力演算部104は、トルク算出部103、クランク回転センサ48、変速比検知部105からの出力、乗員による操作盤60のボタン操作、およびメモリ102に格納されている情報などから、適切な駆動補助出力を発生させるための指令値を算出し、モータ駆動回路107へ送信する。補助出力演算部104は、例えば、ペダル35に加えられた乗員の人力により発生するクランク回転出力と、電動モータ33が発生する駆動補助出力の関係等に基づいて作成されたマップを参照することにより指令値を算出する。メモリ102には複数種類のマップが格納されている。補助出力演算部104は、メモリ102から条件に合ったマップを読み出し、読み出したマップを参照することにより指令値を算出する。
【0050】
モータ駆動回路107は、例えばインバータであり、補助出力演算部104からの指令値に応じた電力を着脱式バッテリ36から電動モータ33に供給する。電力が供給された電動モータ33は回転し、所定の駆動補助出力を発生させる。このように、補助出力演算部104は、走行時の乗員のペダル35を漕ぐ動作をアシストするように、電動モータ33に駆動補助出力を発生させることができる。
【0052】
図4は、操作盤60の外観図である。操作盤60は、乗員の操作を受け付ける複数のボタン64a、64b、66、68、70と、光センサ63と、液晶パネル72とを有している。複数のボタンは具体的には、補助力設定ボタン64aおよび64b、切替ボタン66、ランプ点灯ボタン68、および、電源ボタン70である。
【0053】
補助力設定ボタン64aおよび64bは、電動モータ33の補助力、または、補助力の大きさに対応する走行モードを設定するために利用される。電動モータ33の「補助力」とは、人力を補助する力である。この例では、電動補助自転車1に4つの走行モードが設けられている。4つの走行モードは、例えば、人力に対する補助力の強さが小さい方から順に、アシスト無しモード、エコモード、標準モードおよび強モードである。アシスト無しモードでは、電動モータ33は補助力を発生しない。
【0054】
アシスト無しモード時に乗員が補助力設定ボタン64aを押下すると、アシスト無しモードがエコモードに変更される。エコモード時に乗員が補助力設定ボタン64aを押下すると、エコモードが標準モードに変更される。通常モード時に乗員が補助力設定ボタン64aを押下すると、標準モードが強モードに変更される。なお、強モード時に乗員が補助力設定ボタン64aをさらに押下しても、強モードのままであり、それ以上モードは変化しない。一方、補助力設定ボタン64bが押下されると、次に説明するように、強モードから標準モードに変更される。
【0055】
一方、補助力設定ボタン64bは、補助力設定ボタン64aとは逆に、補助力が低い走行モードを選択するために押下される。強モード時に乗員が補助力設定ボタン64bを押下すると、強モードが標準モードに変更される。標準モード時に乗員が補助力設定ボタン64bを押下すると、標準モードがエコモードに変更される。エコモード時に乗員が補助力設定ボタン64bを押下すると、エコモードがアシスト無しモードに変更される。アシスト無しモード時に乗員が補助力設定ボタン64bをさらに押下しても、アシスト無しモードのままであり、それ以上モードは変化しない。補助力設定ボタン64aが押下されると標準モードに変更される。
【0056】
図4では、液晶パネル72の表示画面の左端に走行モードの表示エリアが設けられている。
図4では、中央の標準モードがハイライトされ、標準モードが設定されている様子が示されている。
【0057】
切替ボタン66は、乗員が液晶パネル72の表示を切り替えるために利用される。本実施形態では、液晶パネル72には、着脱式バッテリ36の残量、アシスト走行が可能な残りの距離、現在の走行速度を表示可能であるとする。乗員が切替ボタン66を押下するたびに、液晶パネル72の表示が、着脱式バッテリ36の残量、アシスト走行が可能な距離、および、現在の走行速度に順に切り替わる。
図4では、液晶パネル72の表示画面の右上の表示エリアに、切り替えられた情報が表示される。
図4では、着脱式バッテリ36の残量を表す「90%」が表示されている。他の「残km」および「km/h」はそれぞれ、アシスト走行が可能な残りの距離、および、現在の走行速度を表す。
【0058】
操作盤60は時計機能を有し、液晶パネル72の表示画面の右下の表示エリアに、時刻が表示される。
図4では、時刻「16:09」が表示されている。本実施形態では、操作盤60が有するマイコンが時刻の計算を行い、液晶パネル72に時刻を表示させる。
【0059】
電源ボタン70は、電動補助自転車1の電源のオンおよびオフを行うためのボタンである。電動補助自転車1の電源がオン状態のとき駆動ユニット30は動作し、電源がオフ状態のとき駆動ユニット30は動作しない。
【0060】
液晶パネル72は、本実施形態では、セグメント方式で文字、記号、アイコン等を表示する。しかしながらこれは一例である。液晶パネル72はドットマトリクス方式で文字、記号、アイコン等を表示してもよいし、動画を表示してもよい。また、操作盤60が有する表示装置として液晶パネル72を例示しているが、液晶パネル以外の表示装置、例えば有機ELパネルまたは電子ペーパーパネルが用いられてもよい。
【0061】
ランプ点灯ボタン68は、ヘッドランプ2の点灯および消灯を交互に切り替えるボタンである。
図5は、ヘッドランプ2を示す斜視図である。
図5に示す例では、ヘッドランプ2は、ヘッドランプブラケット2aを介してフロントフォーク15に取り付けられている。ランプ点灯ボタン68を押下してヘッドランプ2をオンにすると、ヘッドランプ2は光を出射し、電動補助自転車1の進路を照らすことができる。
【0062】
光センサ63には、電動補助自転車1の周囲から光が入射する。光センサ63は、受けた光に応じた信号を出力する。この光センサ63の出力信号に応じてヘッドランプ2のオンおよびオフを切り替える。これにより、電動補助自転車1の周囲の明るさに応じて、ヘッドランプ2のオンおよびオフを自動的に切り替えることができる。光センサ63は、例えば照度センサであるが、それに限定されない。光センサ63として、可視光を検出可能な任意のセンサを用いることができる。以下の実施形態の説明では、光センサ63は照度センサであるとして説明する。
【0063】
図5に示す例では、ヘッドランプ2は前輪25の側方に配置されているが、本発明はそれに限定されない。例えば、電動補助自転車1が前かごを有する場合は、その前かごの前部または底部等にヘッドランプ2が取り付けられてもよい。
【0064】
図6は、ハンドル14の左グリップ84近傍に設けられた操作盤60を示す斜視図である。操作盤60の左グリップ84に近い位置から遠い位置に向かって、補助力設定ボタン64aおよび64b、切替ボタン66、ランプ点灯ボタン68、電源ボタン70および照度センサ63がこの順に配置される。照度センサ63は電源ボタン70に近接して配置されている。
【0065】
本実施形態では、操作頻度の高いボタンほど左グリップ84に近い位置に配置している。例えば、補助力設定ボタン64aおよび64bは他のボタンよりも操作頻度が高い。また、切替ボタン66の操作頻度は、補助力設定ボタン64aおよび64bに次いで高い。ランプ点灯ボタン68の操作頻度は低く、電源ボタン70の操作頻度は一番低い。
図6に示すように、操作頻度の高いボタンほど左グリップ84に近い位置に配置することにより、操作盤60を操作するときに乗員が左グリップ84から手を離す割合を小さくすることができる。
【0066】
電源ボタン70は、左グリップ84から遠い位置に配置する。これにより、他のボタンの操作中に誤って電源ボタン70を押してしまい、電源がオフになることを抑制することができる。
【0067】
また、照度センサ63は、左グリップ84から一番遠い位置に配置する。これにより、各ボタンの操作中に指が照度センサ63に入射する光を遮ることを抑制することができる。
【0068】
図7は、操作盤60のハードウェア図である。
図4に示すボタン等の他、操作盤60は、内蔵バッテリ61と、マイクロコントローラ(以下「マイコン」と記述する。)62と、レギュレータ69と、水晶またはシリコンを用いる発振子74と、ROM76aと、RAM76bとを有する。
【0069】
マイコン62は、操作盤60の動作を制御する制御回路であり、例えば半導体集積回路である。マイコン62は、電動補助自転車1に着脱式バッテリ36が装着されて電源がオンの状態では、着脱式バッテリ36から供給される電力を用いて動作する。電源がオン状態におけるマイコン62の動作では、内蔵バッテリ61の電力を併用してもよい。内蔵バッテリ61は、例えばボタン電池等の一次電池である。内蔵バッテリ61は、充電可能な二次電池であってもよい。
図7では、着脱式バッテリ36および内蔵バッテリ61からマイコン62へ供給される電力を破線で示している。
【0070】
駆動ユニット30(
図1)の制御装置32はレギュレータ39(
図7)を有する。電源ボタン70は配線38(
図1)を介して制御装置32に接続されている。電源オフ時に乗員が電源ボタン70を押下すると、レギュレータ39は動作を開始する。例えば、電源ボタン70を押下すると制御装置32の回路の一部がGNDと導通し、この導通をトリガとしてレギュレータ39が動作を開始する。レギュレータ39は、着脱式バッテリ36の出力電圧(例えば、24V)を、制御装置32の動作電圧(例えば、12V)に降圧する。また、この降圧された電圧は、配線38(
図1)を介して操作盤60のレギュレータ69へ供給される。レギュレータ69は、入力された電圧をマイコン62の動作電圧(例えば、5.0V)に降圧し、マイコン62に供給する。マイコン62は、レギュレータ69から電力を供給されて起動する。なお、レギュレータ39および69の代わりにDC/DCコンバータが用いられてもよい。
【0071】
レギュレータ69から電力を供給されたマイコン62は、ROM76aに格納されているコンピュータプログラムを読み出してRAM76bに展開し、操作盤60の各種処理を実行する。ROM76aおよびRAM76bはマイコン62に組み込まれていてもよい。
【0072】
マイコン62は、複数のボタン64a、64b、66、68、70と接続され、各ボタンが押下されたことを検出する。各ボタンの押下の態様として、マイコン62は「短押し」および「長押し」を検出することができる。たとえば乗員のボタンの押下開始により、マイコン62は、所定以上の大きさの電圧値および/または電流値を検出する。そしてボタンの押下終了に伴い、マイコン62は、それまで検出していた電圧値および/または電流値が、たとえば0になったことを検出する。マイコン62は、電圧値および/または電流値が検出されてから、検出されなくなるまでの時間に応じて、短押しまたは長押しを判定することができる。また、マイコン62は、同時に複数のボタンの短押しまたは長押しを並列的に検出することもできる。
【0073】
マイコン62は時刻の計算を行い、液晶パネル72に時刻を表示させる。マイコン62はカウンタ78を利用して時刻を計算する。マイコン62は、発振子74から供給されるクロック信号、または、クロック信号を分周した分周信号を利用して、カウンタ78の値をカウントアップする。マイコン62は、カウント値を現実の時刻に換算する。発振子を用いて時刻を求める方法は公知であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0074】
マイコン62は、カウンタ78を利用して時間の計測を行うことができる。例えば、ボタンの短押しまたは長押しを判定するためにカウント値を利用する。また、マイコン62は、後述する照度を判定しない時間の計測にもカウント値を利用する。
【0075】
マイコン62は時刻の計算に加えて、日付の計算を行ってもよい。マイコン62は、時刻が午前0時になるごとに日付を1日ずつ進めていく。この場合は、液晶パネル72に時刻とともに日付を表示してもよい。
【0076】
電動補助自転車1の電源がオンからオフになった場合、駆動ユニット30の動作は停止するが、マイコン62はスリープモードに移行して動作し続ける。スリープモードでは、マイコン62は内蔵バッテリ61から供給される電力を用いて動作する。電力消費量を抑えるために、マイコン62は、スリープモード中は操作盤60の最低限の動作を行う。最低限の動作とは、例えば時刻の計算等の動作である。スリープモード中も時刻の計算を継続することで、電動補助自転車1の電源がオフからオンになり、マイコン62がスリープモードから起動したときに、マイコン62は液晶パネル72に現在時刻を表示させることができる。
【0077】
本実施形態では、上述の操作盤60の構成要素は1枚のプリント基板に実装される。
図8(a)は操作盤60が備えるプリント基板65のおもて面を示す図であり、
図8(b)はプリント基板65の裏面を示す図である。操作盤60が電動補助自転車1に取り付けられた状態では、プリント基板65のおもて面は上側の面、裏面は下側の面となる。
【0078】
液晶パネル72のサイズは大きいため、プリント基板65のおもて面の大部分は液晶パネル72が占めることになる。この大きなサイズの液晶パネル72は、
図8(a)中のプリント基板65の右上に配置する。そして、プリント基板65のおもて面の残りのスペースに、補助力設定ボタン64aおよび64b、切替ボタン66、ランプ点灯ボタン68、電源ボタン70および照度センサ63を配置する。
【0079】
図6を用いて説明したように、操作盤60の左グリップ84に近い位置から遠い位置に向かって、補助力設定ボタン64aおよび64b、切替ボタン66、ランプ点灯ボタン68、電源ボタン70および照度センサ63がこの順に配置される。配置スペースの制限から、照度センサ63は電源ボタン70に近接して配置されている。各ボタンの配置スペースが制限される状態において、このような順にボタンを配置することで、操作盤60のサイズを小さくするとともに、乗員によるボタンの操作性を向上させることができる。
【0080】
図8(b)に示すように、プリント基板65の裏面には、内蔵バッテリ61、マイコン62、レギュレータ69、発振子74が配置される。この例では、ROM76aおよびRAM76bはマイコン62と一体化されている。
【0081】
図8(b)では、プリント基板65のおもて面に配置される構成要素を破線で示している。
図8(b)に示す例では、内蔵バッテリ61、マイコン62、レギュレータ69、発振子74は、液晶パネル72の配置スペースの裏側に配置している。液晶パネル72の電極と重ならない位置であれば、部品の配置は可能である。
図8(b)に示す例では、液晶パネル72の配置スペースの裏側の部分を利用することで、内蔵バッテリ61、マイコン62、レギュレータ69、発振子74の配置スペースを確保している。内蔵バッテリ61は、内蔵バッテリ61の少なくとも一部を覆うプレート61aをプリント基板65にねじ止めすることで、プリント基板65に固定される。プレート61aは内蔵バッテリ61と電気的に接触する電極として機能してもよい。
【0082】
操作盤60の構成要素を複数の基板に分けて配置したり、基板と液晶パネルとを別々に配置したりした場合は、操作盤60の厚さは大きくなってしまう。本実施形態では、操作盤60の構成要素を同一のプリント基板65に配置することで、操作盤60の厚さを小さくすることができる。また、プリント基板65の配線パターンを用いて構成要素同士を電気的に接続することにより断線を抑制し、操作盤60の動作の信頼性を高くすることができる。
【0083】
次に、照度センサ63を用いてヘッドランプ2のオンおよびオフを制御するマイコン62の動作の詳細を説明する。
図9は、照度センサ63を用いてヘッドランプ2のオンおよびオフを制御するマイコン62の動作を示すフローチャートである。
【0084】
上述したように、操作盤60の構成要素の配置スペースの制限から、照度センサ63は電源ボタン70に近接して配置される。例えば、照度センサ63は、電源ボタン70以外のボタンよりも電源ボタン70に近い位置に配置される。照度センサ63は電源ボタン70と接触して配置されてもよいし、接触せずに配置されてもよい。例えば、電源ボタン70と照度センサ63とは互いに隣接して配置されてもよい。
【0085】
電源ボタン70と照度センサ63とを近接させて操作盤60に配置した場合、電源ボタン70を操作する指が照度センサ63に入射する光を遮ることが起こり得る。本実施形態では、電源ボタン70を操作してマイコン62が起動した後、所定の時間が経過してから、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始する。すなわち、電源ボタン70を操作してマイコン62が起動した後、所定の時間が経過するまでは、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始しない。所定の時間は、例えば1秒以上3秒未満の時間である。より好ましくは1秒以上2.5秒未満の時間である。その所定の時間の間に、電源ボタン70を操作した指は電源ボタン70および照度センサ63の周囲から離れることができる。これにより、電源ボタン70を操作する指が照度センサ63に入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプ2が点灯することを抑制することができる。
【0086】
図9を参照して、電動補助自転車1の電源がオフの状態で乗員が電源ボタン70を押下すると、レギュレータ39(
図7)は動作を開始し、着脱式バッテリ36からマイコン62に電力が供給される(ステップS101)。着脱式バッテリ36から電力を供給されたマイコン62は起動処理を開始する(ステップS102)。
【0087】
起動処理を開始したマイコン62は、ROM76aに格納されているコンピュータプログラムを読み出してRAM76bに展開し、補助力設定ボタン64aおよび64b、切替ボタン66、ランプ点灯ボタン68のボタン操作を受け付け可能な状態となり、起動が完了する(ステップS103)。起動したマイコン62は、制御装置32との間でデータを送受信したり、液晶パネル72に各種情報を表示させたりすることができる。
【0088】
起動したマイコン62は、カウンタ78を用いて時間のカウントを開始し、カウント値を累積していく(ステップS104およびS105)。マイコン62は、時間のカウントを開始してから所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS106)。この例では、所定の時間を1.5秒とする。時間のカウントを開始してから1.5秒が経過してない場合は、時間のカウントを継続する。時間のカウントを開始してから1.5秒経過すると、マイコン62は、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始する(ステップS107)。
【0089】
マイコン62は、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始すると、照度センサ63の出力信号を受け取り、その出力信号に応じてヘッドランプ2をオンにするかオンにしないかの判定処理を行う(ステップS108)。この判定処理は、例えば照度センサ63の出力信号を0.3秒間監視して行う。例えば、0.3秒間、照度センサ63の出力信号が所定値未満であり続けた場合は、ヘッドランプ2をオンにすると判定する(ステップS109)。例えば、0.3秒間、照度センサ63の出力信号が所定値以上であり続けた場合は、ヘッドランプ2をオフにすると判定する(ステップS110)。マイコン62は判定結果に応じて、ヘッドランプ2をオンおよびオフさせる。電動補助自転車1の電源をオンにした直後は、ヘッドランプ2はオフになっている。このため、照度センサ63の出力信号が所定値以上であり続けた場合は、ヘッドランプ2のオフ状態を継続する処理となる。なお、0.3秒間という判定時間は一例であり、判定時間はそれ以外の長さであってもよい。
【0090】
電動補助自転車1の電源がオンの間は、ヘッドランプ2をオンにするかオンにしないかの判定処理を継続する(ステップS111でYes)。電源ボタン70が押下されて電動補助自転車1の電源がオフになると、マイコン62の電源もオフになり処理は終了する。
【0091】
マイコン62が起動した後、所定の時間が経過してから、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始する。その所定の時間の間に、電源ボタン70を操作した指は電源ボタン70および照度センサ63の周囲から離れることができる。これにより、電源ボタン70を操作する指が照度センサ63に入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプ2が点灯することを抑制することができる。
【0092】
マイコン62は、所定の時間が経過するまではヘッドランプ2のオンおよびオフの制御は開始しない。例えば、マイコン62が照度センサ63の出力信号を受け取ってはいるが、ヘッドランプ2をオンにするかしないかの判定処理に用いていない状態は、「ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始していない」に該当する。電源をオンにした直後の照度センサ63に通電されていない状態も「ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始していない」に該当する。
【0093】
なお、上記のヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始しない所定の時間の長さは、マイコン62が起動した時刻に応じて変更してもよい。例えば、マイコン62が起動した時刻が、ヘッドランプ2が早くオンになることが望まれ得る夜間の時間帯であった場合は、所定の時間を短くしてもよい。また、例えば、マイコン62が起動した時刻が、ヘッドランプ2が早くオンになることが必ずしも望まれない昼間の時間帯であった場合は、所定の時間を長くしてもよい。これにより、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を適切なタイミングで開始することができる。
【0094】
図10は、照度センサ63を用いてヘッドランプ2のオンおよびオフを制御するマイコン62の動作を示すフローチャートである。
図10に示す処理では、マイコン62は所定の時間の長さを変更する。
図10に示すステップS101からステップS103の処理は、
図9を用いて説明した処理と同じである。
【0095】
起動したマイコン62は、マイコン62が起動した時刻に応じて所定の時間の長さを設定する。例えば、起動した時刻が午後4時00分から午前7時59分の間の時刻であった場合は、所定の時間を1.0秒に設定する。また、例えば、起動した時刻が午前8時00分から午後3時59分の間の時刻であった場合は、所定の時間を2.0秒に設定する。
【0096】
所定の時間の長さを設定したマイコン62は、カウンタ78を用いて時間のカウントを開始する(ステップS104)。ステップS104からステップS112の処理は、所定の時間の長さ以外は、
図9を用いて説明した処理と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0097】
なお、操作盤60は電波時計の機能を有していてもよい。この場合は、時刻の正確性が高くなるので、より精度良く所定の時間の設定を行うことができる。
【0098】
また、マイコン62が時刻に加えて日付も計算する場合は、日付をさらに考慮して所定の時間の長さを変更してもよい。日照時間は季節によって変化する。日照時間は、冬季は短くなり、夏季は長くなる。
【0099】
例えば、日付が6月1日から9月30日の間である場合は、昼間とする時間帯を長くし、夜間とする時間帯を短くする。この場合、例えば、起動した時刻が午後5時00分から午前6時59分の間の時刻であった場合は、所定の時間を1.0秒に設定する。また、例えば、起動した時刻が午前7時00分から午後4時59分の間の時刻であった場合は、所定の時間を2.0秒に設定する。それに対し、日付が10月1日から5月31日の間である場合は、昼間とする時間帯を短くし、夜間とする時間帯を長くする。この場合、例えば、起動した時刻が午後4時00分から午前7時59分の間の時刻であった場合は、所定の時間を1.0秒に設定する。また、例えば、起動した時刻が午前8時00分から午後3時59分の間の時刻であった場合は、所定の時間を2.0秒に設定する。これにより、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を季節に応じた適切なタイミングで開始することができる。
【0100】
また、乗員が電源ボタン70を押下してマイコン62が起動を完了したときに、電源ボタン70の押下が継続されていた場合は、所定の時間のカウントは開始しなくてもよい。乗員によって、電源ボタン70を指で押下してからその指を離すまでの時間に差がある。マイコン62の起動後も指が電源ボタン70を押下し続けていた場合、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始したときに指が照度センサ63に入射する光を遮っている可能性がある。そのため、電源ボタン70の押下が無くなった後、所定の時間が経過してから、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始することにより、指が照度センサ63に入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプ2が点灯することを抑制することができる。
【0101】
図11は、照度センサ63を用いてヘッドランプ2のオンおよびオフを制御するマイコン62の動作を示すフローチャートである。
図11に示す処理では、電源ボタン70が押下されている間は、マイコン62は所定の時間のカウントは開始しない。
図11に示すステップS101からステップS103の処理は、
図9を用いて説明した処理と同じである。
【0102】
起動したマイコン62は、電源ボタン70が押下されているか否か判定する(ステップS121)。電源ボタン70が押下されていると判定した場合は、マイコン62は所定の時間のカウントは開始しない。電源ボタン70が押下されていないと判定した場合に、ステップS104の処理に進み、マイコン62は所定の時間のカウントを開始する。ステップS104からステップS112の処理は、
図9を用いて説明した処理と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0103】
電源ボタン70の押下が継続されていた場合、電源ボタン70の押下が無くなった後、所定の時間が経過してから、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始する。これにより、指が照度センサ63に入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプ2が点灯することを抑制することができる。
【0104】
また、電動補助自転車1によっては、電源ボタン70を長押しすることで電源ボタン70の操作を無効にする電源ロック機能を有することが考えられる。乗員が電源ロックモードにしようとして電源ボタン70を押し続けた場合は、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始したときに指が照度センサ63に入射する光を遮っている可能性がある。マイコン62は、電源ボタン70の押下が無くなった後、所定の時間が経過してから、ヘッドランプ2のオンおよびオフの制御を開始する。これにより、指が照度センサ63に入射する光を遮ることに起因して、ヘッドランプ2が点灯することを抑制することができる。
【0105】
上記の説明では、電動補助自転車として二輪の電動補助自転車を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電動補助自転車は三輪以上の電動補助自転車であってもよい。
【0106】
また、上記の説明では、乗員がペダルを踏んで発生させる人力および電動モータが発生させる補助力が伝達される駆動輪は後輪であったが、本発明はこれに限定されない。電動補助自転車の形態に応じて、それら人力および補助力は前輪に伝達されてもよいし、前輪および後輪の両方に伝達されてもよい。
【0107】
以上、本発明の実施形態を説明した。上述の実施形態の説明は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。また、上述の実施形態で説明した各構成要素を適宜組み合わせた実施形態も可能である。本発明は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、改変、置き換え、付加および省略などが可能である。