特許第6761346号(P6761346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6761346-脂質異常症治療剤 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761346
(24)【登録日】2020年9月8日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】脂質異常症治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/505 20060101AFI20200910BHJP
   A61K 31/423 20060101ALI20200910BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20200910BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   A61K31/505
   A61K31/423
   A61P3/06
   A61P43/00 121
   A61P43/00 111
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-550428(P2016-550428)
(86)(22)【出願日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2015077234
(87)【国際公開番号】WO2016047799
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-196001(P2014-196001)
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100158872
【弁理士】
【氏名又は名称】牛山 直子
(72)【発明者】
【氏名】井口 勇太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 治樹
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 俊明
【審査官】 渡部 正博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/023777(WO,A1)
【文献】 特表2002−533410(JP,A)
【文献】 特表2014−520795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び(S)-trans-{4-[({2-[({1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5-[2-(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)メチル]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有してなる脂質異常症の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項2】
脂質異常症が、高LDLコレステロール血症である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び(S)-trans-{4-[({2-[({1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5-[2-(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)メチル]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物との質量比が、1:1〜1:10000である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物;並びに(S)-trans-{4-[({2-[({1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5-[2-(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)メチル]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物;
を併用してなるLDLコレステロールを低下させるための医薬。
【請求項5】
LDL-Cの低下を必要とする疾患が、高LDLコレステロール血症である、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び(S)-trans-{4-[({2-[({1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5-[2-(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)メチル]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物との質量比が、1:1〜1:10000である、請求項4又は5に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症のような脂質異常症状態を予防及び/又は治療することを目的とした、(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、及び(S)-trans-{4-[({2-[({1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5-[2-(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)メチル]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸を含有する組成物、及びこれらの併用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食の欧米化により、いわゆる生活習慣病の範疇とされる高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症等が増加傾向にある。また最近では、高コレステロール血症と高トリグリセリド血症の両方を有する混合型又は複合型脂質異常症が増加している。とりわけ混合型脂質異常症患者は、LDLコレステロール(LDL-C)とトリグリセリド(TG)が上昇し、HDLコレステロール(HDL-C)が低下しており、このような高TG、低HDL-C状態は、メタボリックシンドロームや糖尿病を持つ患者にも見られる。高LDL-C血症、低HDL-C血症、高TG血症は、冠動脈疾患(coronary artery disease : CAD)や脳血管障害などの危険因子であることが立証されており、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」においても、これらの脂質異常症の管理の重要性が示されている。
【0003】
脂質異常症、特に高コレステロール血症は、スタチンの登場によりすでにかなり医療満足度の高い疾患領域になった。しかし多くの大規模臨床試験の結果から、血中LDLコレステロールをより下げることが冠動脈疾患の予防に繋がること(the lower, the better)が判明し、より厳しい脂質コントロールが求められている。スタチンだけでは目標の血中LDL-C値に到達できない患者も多く、多剤併用も求められるようになっている(非特許文献1)。
【0004】
PPARは、核内受容体ファミリーに属する受容体の一つである。この受容体には3つのサブタイプ(α、γ、δ)の存在が知られている(非特許文献2)。これらのうち、PPARαは主に肝臓に発現しており、PPARαが活性化されるとアポC-IIIの産生が抑制され、次いでリポプロテインリパーゼ(LPL)が活性化されて、その結果、脂肪が分解される。PPARαアゴニストとしては、不飽和脂肪酸や、フェノフィブラート、ベザフィブラート、ゲムフィブロジル等のフィブラート系薬剤等が知られている(非特許文献3)。また、近年、従来のフィブラート系薬剤よりも強力かつ選択的にPPARα活性化作用をもつ化合物が報告されている(特許文献1)。
【0005】
コレステロールエステル転送蛋白(CETP)は主として肝臓及び小腸で産生される分子量68,000〜74,000の疎水性の強い糖蛋白であり、高比重リポ蛋白(HDL)中のコレステロールエステルを超低比重リポ蛋白(VLDL)や低比重リポ蛋白(LDL)に転送する働きを有している。このことからAnacetrapib([4S,5R]-5-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-{[4'-フルオロ-2'-メトキシ-5'-(プロパン-2-イル)-4-(トリフルオロメチル)[1,1'-ビフェニル]-2-イル]メチル}-4-メチル-1,3-オキサゾリジン-2-オン(非特許文献5)、以下、化合物Cと称する場合がある)やEvacetrapib(特許文献2)に代表されるCETP阻害剤は、HDLからLDLへのコレステロール転送を抑制し、LDL-C減少をもたらすことが報告されている(非特許文献4)。
【0006】
このような中、特許文献3において、フィブリン酸誘導体とCETP阻害剤の組合せ医薬に関する報告がある。この特許文献は、心血管疾患を治療する方法、具体的には、医学、特に、哺乳動物におけるアテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、及びその他の冠状動脈疾患などに、当該組合せ医薬が使用できると記されている。しかしながら、当該文献中には本発明の化合物の組合せは記載されておらず、さらに開示のあるフィブリン酸誘導体とCETP阻害剤の組合せにおいても、具体的な実験例は一切含まれておらず、多剤組合せによる薬理作用については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2005/023777号パンフレット
【特許文献2】WO2011/002696号パンフレット
【特許文献3】WO2000/038724号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日薬理誌, 129, 267-270(2007)
【非特許文献2】J. Lipid Research, 37, 907-925(1996)
【非特許文献3】Trends in Endocrinology and Metabolism, 15(7), 324-330(2004)
【非特許文献4】Vasc. Health. Risk. Manag., 8, 483-493(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症のような脂質異常症状態を予防及び/又は治療するための組合せ医薬組成物及び薬剤の併用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、斯かる実情に鑑み、鋭意研究した結果、選択的なPPARα活性化作用剤として報告されている(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸(特許文献1の実施例85:以下、化合物Aと称する場合がある)と、WO2008/129951号パンフレットにおいてCETP阻害剤として報告されている化合物のうち、実施例45の光学活性体である(S)-trans-{4-[({2-[({1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5-[2-(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)メチル]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(以下、化合物Bと称する場合がある)を併用することにより、強力な血中LDLコレステロール低下作用を発揮する事実を見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
a)(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び、
b)(S)-trans-{4-[({2-[({1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5-[2-(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)メチル]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有してなる脂質異常症の予防及び/又は治療用医薬組成物を提供するものである。
【0012】
より詳細には、
a)(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び、
b)(S)-trans-{4-[({2-[({1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5-[2-(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)メチル]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有してなる、高LDLコレステロール血症の予防及び/又は治療用医薬組成物を提供するものである。
【0013】
本発明をより詳細に説明すれば次のとおりとなる。
(1)(R)-2-[3-[[N-(ベンズオキサゾール-2-イル)-N-3-(4-メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸(化合物A)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び(S)-trans-{4-[({2-[({1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}{5-[2-(メチルスルホニル)エトキシ]ピリミジン-2-イル}アミノ)メチル]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}(エチル)アミノ)メチル]シクロヘキシル}酢酸(化合物B)、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有してなる、脂質異常症の予防及び/又は治療用医薬組成物。
(2)脂質異常症が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(1)に記載の医薬組成物。
(3)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物;と化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物;の質量比が、1:1〜1:10000である、前記(1)又は(2)に記載の医薬組成物。
(4)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有してなる、LDLコレステロール(LDL-C)を低下させるための医薬組成物。
(5)LDLコレステロール(LDL-C)の低下を必要とする疾患が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(4)に記載の医薬組成物。
(6)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物;と化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物;の質量比が、1:1〜1:10000である、前記(4)又は(5)に記載の医薬組成物。
(7)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物;並びに、化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物;
を併用してなるLDLコレステロール(LDL-C)を低下させるための医薬。
(8)LDLコレステロール(LDL-C)の低下を必要とする疾患が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(7)に記載の医薬。
(9)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物;と化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物;の質量比が、1:1〜1:10000である、前記(7)又は(8)に記載の医薬。
【0014】
(10)脂質異常症の患者又は脂質異常症になるおそれのある患者に、化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有してなる医薬組成物の有効量を投与することからなる、患者の脂質異常症を予防及び/又は治療する方法。
(11)脂質異常症が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(10)に記載の方法。
(8)医薬組成物における化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の質量比が、1:1〜1:10000である、前記(10)又は(11)に記載の患者の脂質異常症を予防及び/又は治療する方法。
(12)LDLコレステロール(LDL-C)の低下を必要とする患者に、化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有してなる医薬組成物の有効量を投与することからなる、患者のLDLコレステロール(LDL-C)を低下させる方法。
(13)LDLコレステロール(LDL-C)の低下を必要とする疾患が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(12)に記載の方法。
【0015】
(14)化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と組み合わせて用いるための、化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする脂質異常症を予防及び/又は治療するための医薬組成物。
(15)脂質異常症が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(14)に記載の医薬組成物。
(16)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と、化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の質量比が、1:1〜1:10000である、前記(14)又は(15)に記載の医薬組成物。
(17)化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と組み合わせて用いるための、化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするLDLコレステロール(LDL-C)を低下させるための医薬組成物。
(18)LDLコレステロール(LDL-C)の低下を必要とする疾患が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(17)に記載の医薬組成物。
(19)化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と組み合わせて脂質異常症を予防及び/又は治療するための医薬組成物を製造するための、化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の使用。
(20)脂質異常症が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(19)に記載の使用。
(21)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と、化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の質量比が、1:1〜1:10000である、前記(19)又は(20)に記載の使用。
(22)化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と組み合わせてLDLコレステロール(LDL-C)を低下させるための医薬組成物を製造するための、化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の使用。
(23)LDLコレステロール(LDL-C)の低下を必要とする疾患が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(22)に記載の使用。
【0016】
(24)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物と組み合わせて用いるための、化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする脂質異常症を予防及び/又は治療するための医薬組成物。
(25)脂質異常症が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(24)に記載の医薬組成物。
(26)化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と、化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の質量比が、1:1〜10000:1である、前記(24)又は(25)に記載の医薬組成物。
(27)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と組み合わせて用いるための、化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とするLDLコレステロール(LDL-C)を低下させるための医薬組成物。
(28)LDLコレステロール(LDL-C)の低下を必要とする疾患が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(27)に記載の医薬組成物。
(29)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と組み合わせて脂質異常症を予防及び/又は治療するための医薬組成物を製造するための、化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の使用。
(30)脂質異常症が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(29)に記載の使用。
(31)化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と、化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の質量比が、1:1〜10000:1である、前記(29)又は(30)に記載の使用。
(32)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と組み合わせてLDLコレステロール(LDL-C)及びを低下させるための医薬組成物を製造するための、化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の使用。
(33)LDLコレステロール(LDL-C)の低下を必要とする疾患が、高LDLコレステロール(LDL-C)血症である、前記(32)に記載の使用。
【発明の効果】
【0017】
本発明の薬剤及び医薬組成物は、優れた血中LDLコレステロール低下作用を有し、脂質異常症、特に高LDL-C血症の予防及び/又は治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、化合物A(0.3 mg/kg)、化合物B(10 mg/kg)、化合物C(10 mg/kg)の単独、化合物A(0.3 mg/kg)と化合物B(10 mg/kg)との併用、化合物A(0.3 mg/kg)と化合物C(10 mg/kg)との併用投与時の血漿中LDL-Cを示す図である。
【0019】
本発明に用いる化合物Aは、例えば、WO2005/023777号パンフレット等に記載の方法に従って製造することができる。また、文献に記載の方法に準じて製造することもできる。
【0020】
化合物Aを化学構造式で記載すると、以下の通りである。
【0021】
【化1】
【0022】
また、本発明では化合物Aの塩若しくは溶媒和物を用いることもできる。塩及び溶媒物は常法により、製造することができる。
【0023】
化合物Aの塩としては、薬学的に許容できるものであれば特に制限はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリアルキルアミン塩等の有機塩基塩;塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;酢酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0024】
化合物A、若しくはその塩の溶媒和物としては、水和物、アルコール和物(例えば、エタノール和物)等が挙げられる。
【0025】
本発明に用いる化合物Bは、例えば、特開2013-136572号公報に記載の方法に従って製造することができる。また、文献に記載の方法に準じて製剤化することもできる。
【0026】
化合物Bを化学構造式で記載すると、以下の通りである。
【0027】
【化2】
【0028】
また、本発明では化合物Bの塩若しくは溶媒和物を用いることもできる。塩及び溶媒物は常法により、製造することができる。
【0029】
化合物Bの塩としては、薬学的に許容できるものであれば特に制限はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリアルキルアミン塩等の有機塩基塩;塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;酢酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0030】
化合物B、若しくはその塩の溶媒和物としては、水和物、アルコール和物(例えば、エタノール和物)等が挙げられる。
【0031】
後述する実施例において示されるように、化合物A、若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を併用することで、ハムスターを用いた評価系において、血漿中LDL-Cの低下作用を示した。従って、本発明の薬剤は、高コレステロール血症、高LDL-C血症のような脂質異常症の予防及び/又は治療に有用である。
【0032】
本明細書に使用する時、脂質異常症とは、血液中の総トリグリセリド(TG)量、総コレステロール(TC)量、VLDLコレステロール(VLDL-C)量、LDLコレステロール(LDL-C)量、又はHDLコレステロール(HDL-C)量のいずれかひとつ、又はこれらの2種以上が、正常値の範囲を逸脱している場合をいう。本発明における脂質異常症としては、LDLコレステロール(LDL-C)量が、正常値の範囲を逸脱している場合が、好ましい対象として挙げられる。また、本発明におけるLDLコレステロール(LDL-C)の低下を必要とする疾患とは、血液中のLDL-C量が正常値よりも上昇している場合をいう。
【0033】
本発明の医薬組成物は単独又は他の薬学的に許容される担体を用いて、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、ローション剤、軟膏剤、注射剤、座剤等の剤型とすることができる。これらの製剤は、公知の方法で製造することができる。例えば、経口投与用製剤とする場合には、トラガントガム、アラビアガム、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、オリーブ油、大豆油、PEG400等の溶解剤;澱粉、マンニトール、乳糖等の賦形剤;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤;結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤;タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、軽質無水ケイ酸等の流動性向上剤等を適宜組み合わせて処方することにより製造することができる。
【0034】
本発明の医薬組成物の使用形態は、a)化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び、b)化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を組み合わせて用い、薬剤個々の作用に加えて、両薬剤投与による相乗的な血中HDL-C上昇作用を用いて高コレステロール血症、高LDL-C血症等の脂質異常症の予防及び/又は治療効果が得られるような形態として使用することができるが、これらの使用形態に限定されるものではない。化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は同時に投与してもよいし、間隔を置いて別々に投与してもよい。
【0035】
化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を単一製剤化するか又は両薬剤を別々に製剤化してキットとして使用してもよい。即ち、本発明の医薬組成物は、化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有してなる薬剤、及び、化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の少なくとも1種を含有してなる薬剤を組み合わせてなるキットであってもよい。
【0036】
本発明において、両薬剤を単一製剤として投与する場合、化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の配合比は、それぞれの有効成分の有効投与量の範囲で適宜選定することができるが、一般的には質量比で1:1〜1:10000の範囲が好ましく、1:5〜1:4000の範囲がより好ましい、また1:10〜1:1000の範囲が特に好ましい。
【0037】
化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を別々に製剤化する場合は、両薬剤の剤型は同一でもよく、異なってもよい。また、各成分の投与回数は異なってもよい。
【0038】
本発明の化合物A、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、経口投与又は非経口投与により投与される。本発明の医薬の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状等によって異なるが、通常成人の場合、化合物Aとして一日0.001〜100 mg、好ましくは0.01〜10 mg、特に好ましくは0.1〜0.4 mgを1〜3回に分けて投与するのがよい。また、化合物B、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、化合物Bとして0.01〜1000 mg、好ましくは0.1〜800 mg、特に好ましくは1〜400 mgを一日1〜4回に分けて投与するのがよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1 ハムスターのLDL-Cに対する化合物Aと化合物Bの併用効果
1.方法
雄性ハムスター(6週齢、Slc:Syrian、日本エスエルシー(株))を実験に使用した。飽食下に頸静脈より採血し、血漿中TG、TC及び体重をもとに6群(N=8)に群分けした。翌日から、溶媒(0.5% メチルセルロース水溶液:MC)、化合物A単独、化合物B単独、化合物Aと化合物Bの併用を1日1回2週間経口投与した。比較対象として、化合物C単独、化合物Aと化合物Cの併用を1日1回2週間経口投与した。薬物の最終投与日に、4時間絶食条件下でイソフルラン麻酔下に採血し、血漿中のLDL-CをUsuiらの方法(Usui S et al. Clin Chem. 46, 63-72, 2000.)により高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
2.群構成
第1群:Control
第2群:化合物A 0.3 mg/kg
第3群:化合物B 10 mg/kg
第4群:化合物A 0.3 mg/kgと化合物B 10 mg/kg
第5群:化合物C 10 mg/kg
第6群:化合物A 0.3 mg/kgと化合物C 10 mg/kg
3.統計解析及びデータ処理法
結果は、平均値±標準偏差で示した。対照群と薬物投与群との比較はDunnettの多重比較検定で行い、危険率5%未満を有意差ありと判定した。
4.結果
LDL-Cを測定した結果を図1に示す。化合物A、化合物B及び化合物Cの単独投与ではLDL-Cに対して明らかな影響は認められなかったが、化合物A 0.3 mg/kgと化合物B 10 mg/kgとの併用投与群では、有意(***:p<0.001、対コントロール)なLDL-Cの低下が認められた(図1)。化合物A 0.3 mg/kgと化合物C 10 mg/kgとの併用投与群では、LDL-Cに対して明らかな影響は認められなかった。
これらの成績は、化合物A及び化合物Bに関して、単剤では薬物治療による作用が認められない用量でも組み合わせにより効力を発揮することを示している。すなわち、本発明の薬剤及び医薬組成物である化合物A及び化合物Bの組み合わせにより強力な脂質異常改善作用を発揮することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の薬剤及び医薬組成物は、優れた血中LDL-C低下作用を有し、脂質異常症のなかでも、特に高LDLコレステロール血症の予防及び/又は治療に有用であることから、産業上利用可能性を有している。
図1