(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御処理実行部は、前記積算値が前記閾値以上であると判定した場合に、前記制御処理として、前記規制物質の排出を抑制する処理を実行する請求項1に記載のエンジン制御装置。
前記規制物質の排出を抑制する処理は、空燃比を制御する処理、トルクを抑制する処理、および、前記規制物質を浄化する触媒の昇温を促進させる処理のうち、いずれか1または複数である請求項2に記載のエンジン制御装置。
前記制御処理実行部は、前記積算値が前記閾値未満であると判定した場合に、前記制御処理として、燃費を向上させる処理を実行する請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
前記燃費を向上させる処理は、前記エンジンに供給される空気量を低減する処理、および、前記エンジンの回転数を低減する処理のいずれか一方または両方である請求項4に記載のエンジン制御装置。
前記積算値導出部は、前記規制物質を浄化する触媒が所定の劣化温度以上に曝された時間、前記エンジンに対して燃料の供給をカットした時間、および、空燃比がリッチになった時間のうち、いずれか1または複数に基づいて前記触媒の浄化率を推定し、推定した前記触媒の浄化率に基づいて前記積算値を導出し、
前記制御処理実行部は、前記積算値導出部によって推定された前記触媒の浄化率が、所定の想定浄化率未満である場合、前記次回の走行期間において、前記触媒の劣化を抑制する処理を実行する請求項1から5のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、エンジン制御装置1の構成を示す概略図である。ただし、以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0016】
図1に示すように、エンジン制御装置1は、エンジン2およびECU3(Engine Control Unit)が設けられており、ECU3によってエンジン2全体が駆動制御される。エンジン2は、シリンダブロック10と、シリンダブロック10と一体形成されたクランクケース12と、シリンダブロック10に連結されたシリンダヘッド14とが設けられている。
【0017】
シリンダブロック10には、複数のシリンダ16が形成されており、シリンダ16には、ピストン18が摺動自在にコネクティングロッド20に支持される。そして、シリンダヘッド14と、シリンダ16と、ピストン18の冠面とによって囲まれた空間が燃焼室22として形成される。
【0018】
また、エンジン2には、クランクケース12によってクランク室24が形成されており、クランク室24内にクランクシャフト26が回転自在に支持される。クランクシャフト26には、コネクティングロッド20を介してピストン18が連結される。
【0019】
シリンダヘッド14には、吸気ポート28および排気ポート30が燃焼室22に連通するように形成される。
【0020】
吸気ポート28には、インテークマニホールド32を含む吸気流路34が接続される。吸気ポート28は、インテークマニホールド32に臨む吸気の上流側に1つの開口が形成されるとともに、燃焼室22に臨む下流側に2つの開口が形成されており、上流から下流に向かう途中で流路が2つに分岐される。吸気ポート28と燃焼室22との間には、吸気バルブ36の先端が位置し、不図示のカムシャフトの回転に伴って吸気バルブ36が吸気ポート28を燃焼室22に対して開閉する。
【0021】
排気ポート30には、エキゾーストマニホールド38を含む排気流路40が接続される。排気ポート30は、燃焼室22に臨む排気の上流側に2つの開口が形成されるとともに、エキゾーストマニホールド38に臨む下流側に1つの開口が形成されており、上流から下流に向かう途中で流路が1つに統合される。排気ポート30と燃焼室22との間には、排気バルブ42の先端が位置し、不図示のカムシャフトの回転に伴って排気バルブ42が排気ポート30を燃焼室22に対して開閉する。
【0022】
また、シリンダヘッド14には、先端が燃焼室22内に位置するようにインジェクタ44および点火プラグ46が設けられており、吸気ポート28を介して燃焼室22に流入した空気に対してインジェクタ44から燃料が噴射される。そして、空気と燃料との混合気が、所定のタイミングで点火プラグ46に点火されて燃焼する。かかる燃焼により、ピストン18がシリンダ16内で往復運動を行い、その往復運動が、コネクティングロッド20を通じてクランクシャフト26の回転運動に変換される。
【0023】
吸気流路34には、上流側から順に、エアクリーナ48、スロットル弁50が設けられている。エアクリーナ48は、外気から吸入された空気に混合する異物を除去する。スロットル弁50は、アクセル(不図示)の開度に応じてアクチュエータ52により開閉駆動され、燃焼室22へ送出する空気量を調節する。
【0024】
排気流路40内には、触媒60が設けられる。触媒60は、例えば、三元触媒(Three-Way Catalyst)であって、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含んで構成され、燃焼室22から排出された排気ガス中の規制物質(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx))を浄化(除去)する。
【0025】
また、エンジン制御装置1には、アクセル開度センサ70、スロットル開度センサ72、クランク角センサ74、フローメータ76、空燃比センサ78、吸気温度センサ80、排気温度センサ82、触媒温度センサ84が設けられる。
【0026】
アクセル開度センサ70は、アクセルペダルの踏み込み量を検出する。スロットル開度センサ72は、スロットル弁50の開度(エンジン負荷)を検出する。
【0027】
クランク角センサ74は、クランクシャフト26近傍に設けられており、クランクシャフト26が所定角度回転する毎にパルス信号を出力する。
【0028】
フローメータ76は、吸気流路34内におけるスロットル弁50の下流に設けられており、スロットル弁50を通過し燃焼室22へ供給される空気量を検出する。
【0029】
空燃比センサ78は、排気流路40内における触媒60よりも上流に設けられ、燃焼室22から排出される排気ガスの空燃比(A/F(Air By Fuel))を検出する。
【0030】
吸気温度センサ80は、吸気流路34における空気の温度を検出する。排気温度センサ82は、排気流路40における排気ガスの温度を検出する。触媒温度センサ84は、触媒60の温度を検出する。
【0031】
ECU3は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含むマイクロコンピュータでなり、エンジン2を統括制御する。本実施形態では、ECU3は、エンジン制御処理を実行する際、駆動制御部110、積算値導出部112、積算値判定部114として機能する。
【0032】
駆動制御部110は、クランク角センサ74によって検出されたパルス信号に基づいて現時点のエンジン回転数を導出し、導出したエンジン回転数、および、アクセル開度センサ70によって検出されたアクセル開度に基づき、予め記憶された目標マップを参照して目標トルクおよび目標エンジン回転数を導出する。
【0033】
また、駆動制御部110は、導出した目標エンジン回転数および目標トルクに基づいて、各シリンダ16に供給する目標空気量を決定し、決定した目標空気量に基づいて、目標スロットル開度を決定する。そして、駆動制御部110は、決定した目標スロットル開度でスロットル弁50が開口するように、アクチュエータ52を駆動する。
【0034】
また、駆動制御部110は、決定した目標空気量に基づいて、例えば理論空燃比(λ=1)となる燃料量を目標噴射量として決定し、決定した目標噴射量の燃料をピストン18の吸気行程あるいは圧縮行程でインジェクタ44から噴射させるために、インジェクタ44の目標噴射時期および目標噴射期間を決定する。そして、駆動制御部110は、決定した目標噴射時期および目標噴射期間でインジェクタ44を駆動することで、インジェクタ44から目標噴射量の燃料を噴射させる。
【0035】
また、駆動制御部110は、導出した目標エンジン回転数、および、クランク角センサ74によって検出されるパルス信号に基づいて、点火プラグ46の目標点火時期を決定する。そして、駆動制御部110は、決定した目標点火時期で点火プラグ46を点火させる。
【0036】
ところで、全ての規制物質の排出量が低減するエンジンの運転状態と、燃費が向上する運転状態とは、必ずしも一致しない。そのため、それらを常時両立することは難しい。一方、それらを短期的には両立することはできなくても、ある程度の期間で見たときには結果的にそれらを両立できる可能性がある。
【0037】
そこで、本実施形態では、積算値導出部112が、規制物質の排出量を積算した積算値を導出し、積算値判定部114が、積算値が所定の閾値未満であるか否かを判定する。そして、積算値が閾値と異なる場合に、制御処理実行部として機能する駆動制御部110が所定の制御処理を実行することで、大気汚染物質の排出を抑制する。以下、積算値導出部112、積算値判定部114、制御処理実行部として機能する駆動制御部110の具体的な構成について詳述する。
【0038】
積算値導出部112は、所定の走行期間(ドライビングサイクル:例えば、走行距離が1000kmとなる期間)における、排気ガスに含まれる規制物質の排出量の積算値を導出する。具体的に説明すると、積算値導出部112は、(1)前サイクル浄化率推定処理、(2)触媒浄化率推定処理、(3)濃度導出処理、(4)排気ガス流量導出処理、(5)積算値導出処理を実行する。
【0039】
(1)前サイクル浄化率推定処理
積算値導出部112は、前回のドライビングサイクルにおいて、触媒温度センサ84が検出した触媒60の温度が所定の劣化温度以上となった時間を導出する。そして、積算値導出部112は、予め定められた、触媒60が劣化温度以上に曝された場合の単位時間当たりの触媒60の劣化度に基づいて、熱に基づく触媒60の劣化度を導出する。
【0040】
また、積算値導出部112は、前回のドライビングサイクルにおいて、空燃比センサ78が検出した空燃比がリッチになった時間を導出する。そして、積算値導出部112は、予め定められた、空燃比がリッチになった単位時間当たりの触媒60の劣化度に基づいて、未燃焼燃料による被毒に基づく触媒60の劣化度を導出する。
【0041】
また、積算値導出部112は、前回のドライビングサイクルにおいて、駆動制御部110が燃焼室22への燃料の供給をカットした時間を導出する。そして、積算値導出部112は、予め定められた、燃料の供給をカットした単位時間当たりの触媒60の劣化度に基づいて、酸素(酸化)に基づく触媒60の劣化度を導出する。
【0042】
続いて、積算値導出部112は、熱に基づく触媒60の劣化度、被毒に基づく触媒60の劣化度、酸素に基づく触媒60の劣化度を合計する。そして、積算値導出部112は、予め記憶された劣化度マップと、劣化度の合計値とに基づいて、前回のドライビングサイクル終了時の触媒60の浄化率(前サイクル浄化率)を推定する。なお、劣化度マップは、触媒60の劣化度と触媒60の浄化率とが対応付けられたマップである。
【0043】
(2)触媒浄化率推定処理
積算値導出部112は、(1)前サイクル浄化率推定処理で推定された前回のドライビングサイクル終了時の触媒60の浄化率と、触媒温度センサ84が検出した現時点の触媒60の温度とに基づいて、現時点の触媒60の浄化率を推定する。
【0044】
(3)濃度導出処理
積算値導出部112は、予め記憶された濃度マップと、駆動制御部110が導出したエンジン回転数と、スロットル開度センサ72が検出したエンジン負荷とに基づいて、現時点の排気ガス中の炭化水素の濃度、一酸化炭素の濃度、窒素酸化物の濃度をそれぞれ導出する。
【0045】
図2は、濃度マップ200および運転領域を説明する図である。
図2(a)に示すように、濃度マップ200は、複数の運転領域A〜Dそれぞれに対して、排気ガス中の炭化水素の濃度、一酸化炭素の濃度、窒素酸化物の濃度が対応付けられたマップである。なお、
図2(b)に示すように、運転領域A〜Dは、エンジン回転数とエンジン負荷とに基づいて決定される。
【0046】
(4)排気ガス流量導出処理
積算値導出部112は、フローメータ76が検出した空気量と、吸気温度センサ80が検出した吸気流路34における空気の温度と、排気温度センサ82が検出した排気流路40における排気ガスの温度とに基づいて、現時点において燃焼室22から排出された排気ガス流量を導出する。
【0047】
(5)積算値導出処理
積算値導出部112は、(2)触媒浄化率推定処理で導出した現時点の触媒60の浄化率と、(3)濃度導出処理で導出した現時点の炭化水素の濃度と、(4)排気ガス流量導出処理で導出した現時点の排気ガスの流量とを乗算し、現時点の炭化水素の排出量を導出する。そして、積算値導出部112は、現時点の炭化水素の排出量を、前回までの炭化水素の排出量の積算値に加算する。積算値導出部112は、今回のドライビングサイクルが終了するまで、積算値導出処理を実行する。こうして、今回のドライビングサイクル終了時において、炭化水素の排出量の積算値が導出されることとなる。
【0048】
同様に、積算値導出部112は、一酸化炭素の排出量の積算値、および、窒素酸化物の排出量の積算値を導出する。
【0049】
図1に戻って説明すると、積算値判定部114は、炭化水素の排出量の積算値が所定のHC閾値未満であるか否かを判定する。また、積算値判定部114は、一酸化炭素の排出量の積算値が所定のCO閾値未満であるか否かを判定する。また、積算値判定部114は、窒素酸化物の排出量の積算値が所定のNOx閾値未満であるか否かを判定する。ここで、HC閾値は、所定の最大想定走行期間(例えば、走行距離が10万kmとなる期間)の経過時において予め規定されているHC排出量の許容値を、ドライビングサイクル/最大想定走行期間で除算したものである。同様に、CO閾値は、最大想定走行期間の経過時において予め規定されているCO排出量の許容値を、ドライビングサイクル/最大想定走行期間で除算したものである。NOx閾値は、最大想定走行期間の経過時において予め規定されているNOx排出量の許容値を、ドライビングサイクル/最大想定走行期間で除算したものである。
【0050】
駆動制御部110は、積算値判定部114の判定結果に基づき、次回のドライビングサイクルにおいて所定の制御処理を実行する。
図3は、駆動制御部110による制御処理のイメージを説明する図である。
【0051】
例えば、積算値判定部114によって、炭化水素の排出量の積算値がHC閾値以上であったと判定された場合、駆動制御部110は、
図3(a)に示すように、次回のドライビングサイクルにおいて、超過分(積算値からHC閾値を減算した値)を回収すべく、炭化水素の排出を抑制する排出量抑制処理を実行する。具体的に説明すると、駆動制御部110は、炭化水素の排出を抑制する排出量抑制処理として、空燃比がリーンとなる燃料量を目標噴射量として決定する。同様に、積算値判定部114によって、一酸化炭素の排出量の積算値がCO閾値以上であったと判定された場合、駆動制御部110は、次回のドライビングサイクルにおいて、一酸化炭素の排出を抑制する排出量抑制処理として、空燃比がリーンとなる燃料量を目標噴射量として決定する。
【0052】
また、積算値判定部114によって、窒素酸化物の排出量の積算値がNOx閾値以上であったと判定された場合、駆動制御部110は、次回のドライビングサイクルにおいて、窒素酸化物の排出を抑制する排出量抑制処理として、空燃比がリッチとなる燃料量を目標噴射量として決定する。なお、燃焼室22から排出される窒素酸化物の排出量は、空燃比によって変化することはない。しかし、上記したように、空燃比がリーンであるほど炭化水素の排出量が低減する。このため、空燃比がリーンであるほど、触媒60において炭化水素によって還元される窒素酸化物の量が低減され、結果的に外部に排出される窒素酸化物の排出量が増加してしまう。したがって、窒素酸化物の排出を抑制する排出量抑制処理として、空燃比をリッチとする処理を実行する。
【0053】
以上説明したように、駆動制御部110が、排出量抑制処理を実行することにより、規制物質の排出量を抑制することが可能となる。
【0054】
一方、積算値判定部114によって、炭化水素の排出量の積算値がHC閾値未満であったと判定された場合、駆動制御部110は、
図3(b)に示すように、次回のドライビングサイクルにおいて、炭化水素の排出量を、余裕分(HC閾値から積算値を減算した値)まで増加させて、燃費を向上させる燃費向上処理を実行する。具体的に説明すると、駆動制御部110は、燃費向上処理として、アクチュエータ52を制御してスロットル弁50の開度を低減し、燃焼室22に供給される空気量を低減し、また、理論空燃比となる燃料量を目標噴射量として決定する。これにより、燃料量を低減することができ、燃費を向上することが可能となる。
【0055】
また、駆動制御部110は、(1)前サイクル浄化率推定処理において、積算値導出部112によって推定された、前回のドライビングサイクル終了時の触媒60の浄化率が、所定の想定浄化率未満であるか否かを判定する。その結果、駆動制御部110は、触媒60の浄化率が想定浄化率未満であると判定した場合、今回のドライビングサイクルにおいて、触媒60の劣化を抑制する劣化抑制処理を実行する。なお、想定浄化率は、触媒60の浄化率の初期値と、最大想定走行期間の経過時において予め規定されている触媒60の浄化率との差分を、ドライビングサイクル/最大想定走行期間で除算したものである。
【0056】
具体的に説明すると、駆動制御部110は、劣化抑制処理として、触媒60の温度が劣化温度以上となる時間を低減したり、空燃比がリッチになる時間を低減したり、燃焼室22への燃料の供給をカットする時間を低減したりする。これにより、触媒60が想定よりも劣化してしまう事態を回避することができる。
【0057】
(エンジン制御処理)
続いて、制御処理実行部として機能する駆動制御部110、積算値導出部112、積算値判定部114によるエンジン制御処理について説明する。
図4は、エンジン制御処理の流れを説明するフローチャートである。また、本実施形態において、所定の時間間隔毎に生じる割込によってエンジン制御処理が繰り返し実行される。
【0058】
(ステップS110)
駆動制御部110は、ドライビングサイクルの終了タイミングであるか否かを判定する。その結果、駆動制御部110は、ドライビングサイクルの終了タイミングではないと判定した場合には、積算値導出処理S120に処理を移し、ドライビングサイクルの終了タイミングであると判定した場合には、前サイクル浄化率推定処理S140に処理を移す。
【0059】
(ステップS120)
積算値導出部112は、積算値導出処理S120を実行する。なお、この積算値導出処理S120の具体的な処理については、後に詳述する。
【0060】
(ステップS130)
駆動制御部110は、1回目のドライビングサイクルの期間中であるか否かを判定する。その結果、駆動制御部110は、1回目のドライビングサイクルの期間中ではないと判定した場合には、制御実行処理S180に処理を移し、1回目のドライビングサイクルの期間中であると判定した場合には、当該エンジン制御処理を終了する。
【0061】
(ステップS140)
積算値導出部112は、前サイクル浄化率推定処理S140を実行する。なお、この前サイクル浄化率推定処理S140の具体的な処理については、後に詳述する。
【0062】
(ステップS150)
駆動制御部110は、前サイクル浄化率推定処理S140において導出された、前回のドライビングサイクル終了時の触媒60の浄化率(前サイクル浄化率)が、想定浄化率より小さいか否かを判定する。その結果、前サイクル浄化率が想定浄化率未満であると判定した場合には、駆動制御部110は、劣化抑制フラグオン処理S170に処理を移す。一方、前サイクル浄化率が想定浄化率未満ではないと判定した場合には、駆動制御部110は、判定処理S160に処理を移す。
【0063】
(ステップS160)
積算値判定部114は、判定処理S160を実行して、当該エンジン制御処理を終了する。なお、この判定処理S160の具体的な処理については、後に詳述する。
【0064】
(ステップS170)
駆動制御部110は、劣化抑制フラグをオンして、当該エンジン制御処理を終了する。
【0065】
(ステップS180)
駆動制御部110は、制御実行処理S180を実行して、当該エンジン制御処理を終了する。なお、この制御実行処理S180の具体的な処理については、後に詳述する。
【0066】
(積算値導出処理S120)
図5は、積算値導出処理S120の流れを説明するフローチャートである。
【0067】
(ステップS120−1)
積算値導出部112は、上記(2)触媒浄化率推定処理を実行して、現時点の触媒60の浄化率を推定する。
【0068】
(ステップS120−3)
積算値導出部112は、上記(3)濃度導出処理を実行して、現時点の排気ガス中の炭化水素の濃度、一酸化炭素の濃度、窒素酸化物の濃度をそれぞれ導出する。
【0069】
(ステップS120−5)
積算値導出部112は、上記(4)排気ガス流量導出処理を実行して、現時点において燃焼室22から排出された排気ガス流量を導出する。
【0070】
(ステップS120−7)
積算値導出部112は、上記(5)積算値導出処理を実行して、前回までの規制物質の排出量の積算値に、今回導出した規制物質の排出量を加算して、当該積算値導出処理S120を終了する。なお、積算値導出部112は、後述するバッファを参照し、バッファに超過分が記憶されていれば、各ドライビングサイクルの1回目のステップS120−7を実行する際に、超過分を1回のみ加算する。また、バッファに余裕分が記憶されている場合、積算値導出部112は、各ドライビングサイクルの1回目のステップS120−7を実行する際に、余裕分を1回のみ減算する(つまり、積算値がマイナスからスタートする)。また、積算値導出部112は、今回のドライビングサイクルが1回目のドライビングサイクルである場合、(5)積算値導出処理において用いる現時点の触媒60の浄化率を初期値とする。
【0071】
(前サイクル浄化率推定処理S140)
図6は、前サイクル浄化率推定処理S140の流れを説明するフローチャートである。
【0072】
(ステップS140−1)
積算値導出部112は、劣化抑制フラグ、排出量抑制フラグ、燃費向上フラグをオフする。また、積算値導出部112は、バッファをリセットする。
【0073】
(ステップS140−3)
積算値導出部112は、上記したように、前回のドライビングサイクルにおいて触媒60の温度が劣化温度以上となった時間と、触媒60が劣化温度以上に曝された場合の単位時間当たりの触媒60の劣化度に基づいて、熱に基づく触媒60の劣化度を導出する。
【0074】
(ステップS140−5)
積算値導出部112は、上記したように、前回のドライビングサイクルにおいて空燃比がリッチになった時間と、空燃比がリッチになった単位時間当たりの触媒60の劣化度に基づいて、未燃焼燃料による被毒に基づく触媒60の劣化度を導出する。
【0075】
(ステップS140−7)
積算値導出部112は、上記したように、前回のドライビングサイクルにおいて燃料の供給をカットした時間と、燃料の供給をカットした単位時間当たりの触媒60の劣化度に基づいて、酸素(酸化)に基づく触媒60の劣化度を導出する。
【0076】
(ステップS140−9)
積算値導出部112は、上記したように、劣化度マップと、劣化度の合計値とに基づいて、前回のドライビングサイクル終了時の触媒60の浄化率(前サイクル浄化率)を導出(推定)して、当該前サイクル浄化率推定処理S140を終了する。
【0077】
(判定処理S160)
図7は、判定処理S160の流れを説明するフローチャートである。
【0078】
(ステップS160−1)
積算値判定部114は、炭化水素の排出量の積算値がHC閾値未満であり、一酸化炭素の排出量の積算値がCO閾値未満であり、窒素酸化物の排出量の積算値がNOx閾値未満であるか否かを判定する。その結果、積算値判定部114は、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物の排出量の積算値がすべて閾値未満であると判定した場合には、ステップS160−7に処理を移す。一方、積算値判定部114は、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物の排出量の積算値のうち、いずれか1の積算値が閾値以上であると判定した場合には、ステップS160−3に処理を移す。
【0079】
(ステップS160−3)
積算値判定部114は、規制物質の排出量の積算値のうち、閾値以上である積算値から閾値を減算した値(超過分)を導出してバッファに記憶する。
【0080】
(ステップS160−5)
積算値判定部114は、排出量抑制フラグをオンし、規制物質の排出量の積算値をすべてリセットして、当該判定処理S160を終了する。
【0081】
(ステップS160−7)
積算値判定部114は、閾値から積算値を減算した値(余裕分)を導出してバッファに記憶する。
【0082】
(ステップS160−9)
積算値判定部114は、燃費向上フラグをオンし、規制物質の排出量の積算値をすべてリセットして、当該判定処理S160を終了する。
【0083】
(制御実行処理S180)
図8は、制御実行処理S180の流れを説明するフローチャートである。
【0084】
(ステップS180−1)
駆動制御部110は、劣化抑制フラグがオンであるか否かを判定する。その結果、駆動制御部110は、劣化抑制フラグがオンであると判定した場合には、ステップS180−3に処理を移す。一方、駆動制御部110は、劣化抑制フラグがオンではないと判定した場合には、ステップS180−5に処理を移す。
【0085】
(ステップS180−3)
駆動制御部110は、上記劣化抑制処理を実行して、当該制御実行処理S180を終了する。
【0086】
(ステップS180−5)
駆動制御部110は、排出量抑制フラグがオンであるか否かを判定する。その結果、駆動制御部110は、排出量抑制フラグがオンであると判定した場合には、ステップS180−7に処理を移す。一方、駆動制御部110は、排出量抑制フラグがオンではないと判定した場合には、ステップS180−9に処理を移す。
【0087】
(ステップS180−7)
駆動制御部110は、バッファに記憶されている超過分を参照し、上記排出量抑制処理を実行して、当該制御実行処理S180を終了する。
【0088】
(ステップS180−9)
駆動制御部110は、燃費向上フラグがオンであるか否かを判定する。その結果、駆動制御部110は、燃費向上フラグがオンであると判定した場合には、ステップS180−11に処理を移す。一方、駆動制御部110は、燃費向上フラグがオンではないと判定した場合には、ステップS180−13に処理を移す。
【0089】
(ステップS180−11)
駆動制御部110は、バッファに記憶されている余裕分を参照し、上記燃費向上処理を実行して、当該制御実行処理S180を終了する。
【0090】
(ステップS180−13)
駆動制御部110は、通常の制御処理を実行して、当該制御実行処理S180を終了する。
【0091】
以上説明したように、本実施形態にかかるエンジン制御装置1およびエンジン制御装置1を用いたエンジン制御処理によれば、規制物質の排出量の低減と燃費の向上の両立を図ることができる。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0093】
なお、上記実施形態において、排出量抑制処理として、空燃比をリーンまたはリッチに制御する処理を例に挙げて説明した。しかし、排出量抑制処理は、規制物質の排出量を抑制することができれば、処理内容に限定はない。例えば、排出量抑制処理として、空燃比を制御する処理に代えて、または、加えて、トルクを抑制する処理や、触媒60の昇温を促進させる処理を実行してもよい。トルクを抑制する処理は、例えば、駆動制御部110が、アクセル開度センサ70が検出したアクセル開度に基づいて、スロットル弁50の開度を制御する場合に、アクセル開度に対して予め決定されているスロットル弁50の開度より、小さい開度に制御する処理である。また、触媒60の昇温を促進させる処理は、点火時期を遅角させる処理や、アイドル回転数を上昇させる処理である。
【0094】
また、上記実施形態において、燃費向上処理として、燃焼室22に供給される空気量を低減する処理を例に挙げて説明した。しかし、燃費向上処理は、燃費を向上できれば、処理内容に限定はない。例えば、燃費向上処理として、エンジンの回転数を低減してもよい。
【0095】
また、上記実施形態において、積算値導出部112は、触媒60が劣化温度以上に曝された時間、エンジンに対して燃料の供給をカットした時間、および、空燃比がリッチになった時間に基づいて、触媒60の浄化率を推定する構成を例に挙げて説明した。しかし、積算値導出部112は、触媒60が劣化温度以上に曝された時間、エンジンに対して燃料の供給をカットした時間、および、空燃比がリッチになった時間のうち、少なくともいずれか1に基づいて、触媒60の浄化率を推定してもよい。
【0096】
また、上記実施形態において、排出量抑制処理、燃費向上処理に優先して、劣化抑制処理を実行する場合を例に挙げて説明した。しかし、劣化抑制処理に優先して、排出量抑制処理、燃費向上処理を実行してもよい。
【0097】
また、排出量抑制処理を実行している期間において、排出量抑制処理を実行している旨を報知(例えば、表示部に表示)してもよい。また、燃費向上処理を実行している期間において、燃費向上処理を実行している旨を報知してもよい。さらに、劣化抑制処理を実行している期間において、劣化抑制処理を実行している旨を報知してもよい。これにより、運転者に違和感を与えてしまう事態を回避することができる。