特許第6761409号(P6761409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6761409多能性幹細胞由来細胞から形成された神経回路網
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761409
(24)【登録日】2020年9月8日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】多能性幹細胞由来細胞から形成された神経回路網
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0793 20100101AFI20200910BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   C12N5/0793
   C12Q1/02
【請求項の数】28
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-509656(P2017-509656)
(86)(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公表番号】特表2017-528127(P2017-528127A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】US2015045869
(87)【国際公開番号】WO2016028880
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2018年5月31日
(31)【優先権主張番号】62/039,244
(32)【優先日】2014年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510003830
【氏名又は名称】フジフィルム セルラー ダイナミクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】マンガン カイル ピー
(72)【発明者】
【氏名】カールソン コビー ビー
【審査官】 山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/042669(WO,A1)
【文献】 伊東 大輔 他,培養神経回路網の形成過程と同期バースト,生物物理,2014年 7月30日,54(4),210-214
【文献】 Brian J. Wainger, et al.,Cell Reports,2014年 4月10日,Vol.7,p.1-11
【文献】 Kile P.Mangan, et al.,Genetic Engineering & Biotechnology News,2014年 5月 1日,Vol.34, No.9,p.14-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューロン集団を生産するためのインビトロ法であって、
(a)複数の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンをインビトロで混合すること、および
(b)前記ニューロンを、神経回路網を形成するのに十分な期間培養すること、を含み、
前記興奮性ニューロンと前記抑制性ニューロンはいずれも多能性幹細胞に由来するものであり、前記多能性幹細胞がヒト人工多能性幹(iPS)細胞であり、興奮性ニューロンの抑制性ニューロンに対する比率が同期的なニューロンの発火または同期的な活動電位を生じるのに十分なものであり、前記ニューロン集団が40%から90%までの興奮性ニューロンと10%から60%までの抑制性ニューロンを含んでいる、インビトロ法。
【請求項2】
前記ニューロンの培養物がさらにアストロサイトを含んでおり、前記アストロサイトが多能性幹細胞に由来するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多能性幹細胞が、マウス、ラット、霊長類、類人猿、またはサル由来のiPS細胞である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記iPS細胞が健常提供者に由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記iPS細胞が、疾患を患っている対象に由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患が神経疾患または神経変性疾患である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記疾患が自閉症、てんかん、統合失調症、ADHD、ALS、または双極性障害である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ニューロン集団がさらに5%から25%までのアストロサイトを含んでおり、、前記アストロサイトがiPS細胞由来である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記アストロサイトがヒトiPS細胞に由来する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ニューロン集団が、多能性幹細胞に由来する興奮性ニューロンの第一の培養物と多能性幹細胞に由来する抑制性ニューロンの第二の培養物との混合物を含み、前記第一の培養物が少なくとも90%のグルタミン酸作動性ニューロンを含み、前記第二の培養物が少なくとも70%のGABA作動性ニューロンを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記多能性幹細胞がヒト人工多能性幹(iPS)細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記集団が、90%から20%までの前記第一の培養物と10%から80%までの前記第二の培養物を含んでいる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ニューロン集団がさらに5%から25%までのアストロサイトを含んでおり、前記アストロサイトがiPSC由来である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ニューロン集団を多電極アレイ上で培養する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記多電極アレイがマエストロ(Maestro)MEAである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多電極アレイが少なくとも8個の電極を備えている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記多電極アレイが少なくとも16個の電極を備えている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記多電極アレイは、多電極アレイの個々のウェル中に、前記ニューロンの複数の培養物を含み、興奮性ニューロンの抑制性ニューロンに対する比率は培養物間で異なっている、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記興奮性ニューロンがグルタミン酸作動性、ドーパミン作動性、またはコリン作動性ニューロンである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記抑制性ニューロンがGABA作動性ニューロンである、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ニューロン集団が、皮質ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、海馬ニューロン、扁桃体ニューロン、末梢ニューロン、運動ニューロン、または侵害受容器を発現しているニューロンを含んでいる、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法がさらに、前記ニューロン集団と被験化合物とを接触させることを含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記被験化合物が神経伝達を調節することができる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記集団の電気的な活動またはニューロン活動を検出することまたは測定することをさらに含む、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記検出することまたは測定することが、前記集団によって生成された電圧を測定することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記検出することまたは測定することによって得られたデータをアイセル(アイセル)(登録商標)ニューロアナライザー(NeuroAnalyzer)を使って解析する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法によって生産されたニューロンの培養物。
【請求項28】
前記ニューロンが多電極アレイに含まれているまたは多電極アレイ上にある、請求項27に記載の培養物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年8月19日に出願の米国仮特許出願第62/039,244号の優先権を主張し、その全体は参照することにより本明細書に組み入れられる。
1.発明の分野
本発明は基本的に、分子生物学、細胞生物学および医学の分野に関する。より具体的には、本発明は、多能性幹細胞に由来するニューロンの培養物を混合または組み合わせること、およびそのような混合した細胞培養物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
哺乳類の脳は、興奮と抑制のバランスが正常なときにのみ、適切に機能する。興奮/抑制(E/I)比の不均衡は、感覚処理の異常および意識消失と関連している(チャンおよびサン、2011;マッシミニら、2012)。E/I比が高くなると、新皮質の神経回路活動の長期化、刺激への過敏症、認知機能障害およびてんかんが引き起こされる可能性がある(ハガーマンおよびハガーマン、2002;ギブソンら、2008:チャンおよびサンによる総説、2011)。同様にE/I比の低下は、社会的相互作用の障害や自閉症的行動などの異常性、および知的障害(レット症候群)と関連づけられてきた(タブチら、2007;ダニら、2005;チャンおよびサンによる総説、2011)。これらのことについては研究が進展しており、E/I比は発達中に興奮の低下と抑制の増加を伴って変化し、この変化が興奮と抑制のいずれかに偏ることがE/I比の不均衡を引き起こす可能性があることが分かっている(チャンおよびサンによる総説、2011)。神経疾患の発症頻度が劇的に高まっていることから、より良い治療法が望まれている。しかしながら、神経科学研究および創薬においては、現在においても、臨床的に意義のある細胞モデルの入手が大きな課題である。ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)由来のニューロンは、神経疾患の機序をより深く理解するのに使うことができる細胞型を提供するものである。インビボの系をより効率的にシミュレーションすることができるインビトロでの手法にニーズがあることは明らかである。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの側面において本発明は、インビトロで神経回路網の同期バーストを示すことが可能な、人工多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)由来ニューロンの改良した培養物を提供することによって、このような先行技術の制限を克服するものである。いくつかの側面では、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを様々な比率で共培養し、必要に応じてこの培養にアストロサイトをさらに添加する。このようなニューロンの培養物は、例えば、神経培養を被験化合物に暴露した結果生じる、回路網コミュニケーションの変化を検出するのに使うことができる。いくつかの態様では、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを混合することによって同期する神経回路網を生成し、次いで、多電極アレイ(multi−electrode array)を使って、自発的かつ同期的な神経バーストを測定する。
【0004】
本発明はある側面においてニューロン集団を生産するためのインビトロ法に関し、この方法は、(a)複数の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンをインビトロで混合すること、および(b)このニューロンを、神経回路網を形成するのに十分な期間培養することを含み、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンはいずれも多能性幹細胞に由来するものであり、興奮性ニューロンの抑制性ニューロンに対する比率は、ニューロンの同期的な発火または同期的な活動電位を生じるのに十分な比率である。このニューロンの培養物にアストロサイトをさらに含めてもよく、この場合、アストロサイトも多能性幹細胞に由来するものである。多能性幹細胞はヒト人工多能性幹(iPS)細胞であってよい。多能性幹細胞は、マウス、ラット、霊長類、類人猿、またはサル由来のiPS細胞であってよい。いくつかの態様においてiPS細胞は、健常提供者(例えば健常なヒト提供者)由来である。いくつかの態様においてiPS細胞は、疾患を患っている対象(例えば、遺伝性疾患などの疾患を患っているヒト)に由来する。疾患は、神経疾患または神経変性疾患であってよい。疾患は例えば、自閉症、てんかん、統合失調症、ADHD、ALS、または双極性障害であってよい。ニューロンの集団は、約30%から約90%までの興奮性ニューロンと約10%から約70%までの抑制性ニューロンを含み得る。集団は、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、もしくは90%、またはこれから誘導される任意の範囲内の興奮性ニューロンを含み得る。集団は、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、もしくは70%、またはこれから誘導される任意の範囲内の抑制性ニューロンを含み得る。このニューロン集団を、モル浸透圧濃度が約300〜320、約305〜315、もしくは約300、305、310、315、320mOsmol、またはこれから誘導される任意の範囲内のいかなる濃度の溶液もしくは培地中に入れて培養しても、インキュベートしてもおよび/または提供してもよい。溶液または培地には、N2、B27、レチノイン酸、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、アスコルビン酸、cAMP、ラミニン、および/またはコレステロールのうちの1、2、3、4、5種またはそれ以上、あるいはこの全てを添加してもよい。いくつかの態様においてニューロン集団はさらに、約5%から約25%までのアストロサイトを含み、アストロサイトは、例えばヒトiPS細胞などのiPS細胞(iPSC)由来である。アストロサイトはヒトiPS細胞に由来するものであってよく、例えば、アストロサイトはヒトiPS細胞に由来するものである場合があり、iPS細胞は健常提供者または疾患をもった提供者由来の細胞から生産されたものである。いくつかの態様においてニューロン集団は、多能性幹細胞由来興奮性ニューロンの第一の培養物と多能性幹細胞由来抑制性ニューロンの第二の培養物の混合物を含み、第一の培養物は少なくとも約70%のGABA作動性ニューロンを含み、第二の培養物は少なくとも約90%のグルタミン酸作動性ニューロンを含む。いくつかの態様では、多能性幹細胞とはヒト人工多能性幹(iPS)細胞である。集団は、約90%から約20%までの第一の培養物と約10%から約80%までの第二の培養物を含み得る。ニューロン集団は、約5%から約25%までのアストロサイトをさらに含んでいてもよく、アストロサイトはiPSC由来である。いくつかの態様では、ニューロン集団を、多電極アレイ(例えばマエストロ(Maestro)MEA、アキシオン(Axion)MEA;アキシオン・バイオシステムズ(Axion Biosystems)、アトランタ、GA)上で培養する。多電極アレイは少なくとも8個の電極を備え得る。いくつかの態様では、多電極アレイは少なくとも16個の電極を備えている。例えば多電極アレイは、少なくとも8個、少なくとも16個、少なくとも32個、または少なくとも64個の電極を、多電極アレイの各ウェル内に備えていてもよい。いくつかの態様では、多電極アレイの各ウェル内に埋め込まれた少なくとも8、16、32、または64個の個別の微小電極を使って(例えば直径が約30〜50μmの電極が中心間距離約200〜350μmの間隔で埋め込まれており、場合により、接地電極も組み込まれている)、ニューロンの活動を同時にモニタリングしてもよい。多電極アレイは、多電極アレイ中の各ウェルに、前記ニューロンの複数の培養物を含んでいてもよく、ここで、興奮性ニューロンの抑制性ニューロンに対する比率は培養物ごとに異なる。いくつかの態様において興奮性ニューロンは、グルタミン酸作動性、ドーパミン作動性、またはコリン作動性ニューロンである。いくつかの態様において抑制性ニューロンは、GABA作動性ニューロンである。ニューロン集団は、皮質ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、海馬ニューロン、扁桃体ニューロン、末梢ニューロン、運動ニューロン、または侵害受容器を発現しているニューロンを含んでいる場合がある。この方法にさらに、ニューロン集団を被験化合物と接触させることを含めてもよい。いくつかの態様では、被験化合物は神経伝達を調節することができる化合物である。いくつかの態様においてこの方法はさらに、集団の電気的な活動またはニューロンの活動を検出することまたは測定することを含む。いくつかの態様では、前記検出することまたは測定することは、前記集団によって生成された電圧を測定することを含む。前記検出することまたは測定することから得られたデータを、例えばアイセル(iCell)(登録商標)ニューロアナライザー(NeuroAnalyzer)を使って解析してもよい。
【0005】
本発明の別の側面は、本明細書に記載したニューロンの培養物または本発明の方法によって生産されたニューロンの培養物に関する。この培養物は、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、および神経回路網を含んでいてもよく、興奮性ニューロンの抑制性ニューロンに対する比率は、同期的なニューロンの発火または同期的な活動電位を生じさせるのに十分なものである。いくつかの態様では、このニューロンは多電極アレイに含まれているかまたは多電極上にある。
【0006】
本発明のさらに別の側面は、複数の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを含んでいるニューロンの培養物に関し、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンはいずれも多能性幹細胞に由来するものであり、興奮性ニューロンの抑制性ニューロンに対する比率は同期的なニューロンの発火または同期的な活動電位を生じるのに十分なものである。本明細書で記載するように、多能性細胞は人工多能性細胞であってよく、例えば、本明細書で記載するように、健常のまたは疾患をもつ哺乳類またはヒト対象由来の人工多能性細胞であってよい。ニューロンの培養物を、例えば本明細書で記載するように、多電極アレイに乗せて提供してもよい。興奮性ニューロンの抑制性ニューロンに対する比率は、多電極アレイの個々のウェルによって異なっていても異なっていなくてもよい。このニューロン集団をモル浸透圧濃度が約300〜320、約305〜315、もしくは約300、305、310、315、320mOsmol、またはこれから誘導される任意の範囲内のいかなる濃度の溶液もしくは培地(例えば生理学的に許容可能な細胞培地)に入れて、培養しても、インキュベートしてもおよび/または提供してもよい。多電極アレイの各ウェルに入れたニューロン培養物は、本明細書に記載したような培地、例えばバーディら、2015または国際公開第2014172580号に記載されているような培地においてインキュベートしてもよく、あるいはこれらを、各ウエル中に含んでいてもよい。培地には、N2、B27、レチノイン酸、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、アスコルビン酸、cAMP、ラミニン、および/またはコレステロールのうちの1、2、3、4、5種またはそれ以上、あるいはこの全てを添加してもよい。このニューロンの培養物がアストロサイトを含むものであってもよい。いくつかの態様では、1つ以上の神経細胞が遺伝子組換えされているかまたは遺伝的に改変されたものである。いくつかの態様では、ニューロンの培養物はさらに、複数の人工多能性幹細胞および/または神経前駆細胞を含んでいてもよく、例えば、本明細書で記載するように、多電極アレイに入った神経細胞と共に存在する。
【0007】
本明細書で使用する場合「興奮性ニューロン」とは、シナプス前ニューロンとしてシナプス間隙において神経伝達物質(例えばグルタミン酸)を放出したときに、シナプス後ニューロンにおける活動電位の発生頻度を上げるニューロンを指す。本明細書で使用する場合「抑制性ニューロン」とは、シナプス前ニューロンとしてシナプス間隙において神経伝達物質(例えばガンマアミノ酪酸(GABA))を放出したときに、シナプス後ニューロンの活動電位の発生頻度を抑制するニューロンを指す。
【0008】
本明細書で使用する場合「同期的なニューロンの発火」、「同期的なニューロンの発火」および「同期的な活動電位」は本明細書では同じ意味で使用され、ニューロンの発火が一定の期間繰り返し起こること、例えば、周期的な神経振動またはニューロンの活動電位の繰り返し発火が生じることを指す。周期的な神経振動は、その周波数、振幅、および位相によって特徴付けることができる。当業者であれば、様々な電気生理学的手法によって同期的な神経発火または同期的な活動電位を検出できることが理解できるであろう。
【0009】
いくつかの側面では、多能性幹細胞、例えばヒトiPS細胞に由来する神経細胞の混合物を提供する。この混合物は、例えば皮質ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、海馬ニューロン、扁桃体ニューロン、末梢ニューロン、運動ニューロン、および/または侵害受容器を発現しているニューロンに分類される興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの組み合わせを含んでいてもよい。興奮性および抑制性神経細胞の混合物は、インビボでは脳の同じ一般的な神経解剖学的領域または異なる神経解剖学的領域(例えば、ヒト、霊長類、類人猿、サル、マウス、またはラットなどの哺乳類対象の脳領域)に見られることがある。
【0010】
本明細書で使用する場合、「1」または「ひとつ」は、1つ以上であることを意味する場合がある。添付の特許請求の範囲で「含んでいる/含む」という語と共に使用される場合、「1」または「ひとつ」という語は、1つまたは1つ以上であることを意味し得る。
【0011】
本開示で使われる「または」という用語は、選択肢のうちのどれか1つおよび「および/または」の定義を支持するものであるが、請求項の中で使われる「または」という用語は、選択肢のうちのどれか1つを指すことが明記されているか、または両方を指すことには矛盾が生じるのではない限り、「および/または」の意味で使用される。本明細書で使用する場合「別の(another)」は、少なくとも第二の、または第三以上のものを意味し得る。
【0012】
「約/およそ」という用語は、本出願全体を通じて、その値が、その値を決定するのに用いられた装置および方法に固有の誤差、または研究対象間に存在する差異を含むことを示すのに使用される。
【0013】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい態様を示しているものではあるが、例示のためだけに記載されているものであり、当業者にはこの詳述から、本発明の精神および範囲内での様々な変更および修正が明らかであると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の図面は本明細書の一部をなしており、本発明の特定の側面をさらに示すために含まれている。これらの図面の1つ以上を、本明細書に記載の特定の態様に関する詳細な説明と共に参照することで、本発明をより深く理解することができるだろう。
【0015】
図1】凍結保存したアイセル(iCell)(登録商標)ニューロン生成の模式図。
【0016】
図2】興奮性対抑制性細胞の量が様々な神経細胞型の例。
【0017】
図3】抑制の量を増やしていった8ウェルの例示的なラスタープロットおよびベロシティグラフ。E/I比は、アイセル(登録商標)ドーパニューロン(DopaNeuron、70:30、E:I%)とアイセル(登録商標)ニューロン(30:70)を混合することによって調整した(各細胞型のパーセンテージをグラフの上に示している)。ベロシティグラフでは、培養6〜10日目に開始した同期的回路網バーストの4分間の記録の瞬間的な平均発火頻度を、500ミリ秒ごとに示している。
【0018】
図4】アキシオン(Axion)社の48ウェル(各ウェルにつき16チャネル)MEAプレートを使用し、8段階、6つ組で、阻害(アイセル(登録商標)ニューロン)の量を増やしながら興奮(アイセル(登録商標)ドーパニューロン)の量を決定した。アキシオン社の神経測定(Neural Metrics)解析ツールボックスを使い、(各チャネルの)平均発火頻度、チャネルバースト頻度(ポアソン・サプライズ(poisson surprise))およびバースト強度、ならびに(全チャネルの)回路網バーストおよび各神経回路バーストに含まれるチャネルの数(増幅)を評価した。各項目について、8条件(N=6)の平均およびSEMを示している。阻害の量が増えると、発火頻度とバースト頻度が低下したが、バースト強度の変化は見られなかった。抑制性の比が高くなると回路網バーストと増幅の両方が切り替わった。
【0019】
図5-1】興奮の量を増やしていった8ウェルに関する例示的な生データのトレースとベロシティグラフを示している。E/I比は、アイセル(登録商標)ニューロン(30:70)とグルタミン酸作動性(Glutamatergic)95(95:5)細胞を混合することによって調整した。興奮の量が増えると、回路網バーストの増幅(枠内)および強度の高まりが観察された。興奮が閾値に達すると回路網でバーストの持続(seizure)が見られ(5)、これは興奮性の比が最も高くなり、培養がおよそ止まるまで続いた(8)。各グラフについて、アイセル(登録商標)ニューロンのパーセンテージ(左側、大きな文字)とグルタミン酸作動性95のパーセンテージ(右側、小さい文字)を示している。
図5-2】興奮の量を増やしていった8ウェルに関する例示的な生データのトレースとベロシティグラフを示している。E/I比は、アイセル(登録商標)ニューロン(30:70)とグルタミン酸作動性(Glutamatergic)95(95:5)細胞を混合することによって調整した。興奮の量が増えると、回路網バーストの増幅(枠内)および強度の高まりが観察された。興奮が閾値に達すると回路網でバーストの持続(seizure)が見られ(5)、これは興奮性の比が最も高くなり、培養がおよそ止まるまで続いた(8)。各グラフについて、アイセル(登録商標)ニューロンのパーセンテージ(左側、大きな文字)とグルタミン酸作動性95のパーセンテージ(右側、小さい文字)を示している。
図5-3】興奮の量を増やしていった8ウェルに関する例示的な生データのトレースとベロシティグラフを示している。E/I比は、アイセル(登録商標)ニューロン(30:70)とグルタミン酸作動性(Glutamatergic)95(95:5)細胞を混合することによって調整した。興奮の量が増えると、回路網バーストの増幅(枠内)および強度の高まりが観察された。興奮が閾値に達すると回路網でバーストの持続(seizure)が見られ(5)、これは興奮性の比が最も高くなり、培養がおよそ止まるまで続いた(8)。各グラフについて、アイセル(登録商標)ニューロンのパーセンテージ(左側、大きな文字)とグルタミン酸作動性95のパーセンテージ(右側、小さい文字)を示している。
図5-4】興奮の量を増やしていった8ウェルに関する例示的な生データのトレースとベロシティグラフを示している。E/I比は、アイセル(登録商標)ニューロン(30:70)とグルタミン酸作動性(Glutamatergic)95(95:5)細胞を混合することによって調整した。興奮の量が増えると、回路網バーストの増幅(枠内)および強度の高まりが観察された。興奮が閾値に達すると回路網でバーストの持続(seizure)が見られ(5)、これは興奮性の比が最も高くなり、培養がおよそ止まるまで続いた(8)。各グラフについて、アイセル(登録商標)ニューロンのパーセンテージ(左側、大きな文字)とグルタミン酸作動性95のパーセンテージ(右側、小さい文字)を示している。
【0020】
図6】アキシオン社の48ウェルプレートでは、8つの条件について6つ組で実験を行うことができる。平均の発火頻度、チャネルバースト頻度およびバースト強度はいずれも、異なるE/I比のピークと分布を示している。チャネルバーストと強度は、興奮レベルが上がると下がった。興奮がより少ない量で一定していた増幅レベルも、興奮が過剰になると低下したことに注目されたい。
【0021】
図7図5で示したものと同じ培養物に、およそ15kのアイセル(登録商標)アストロサイトを添加した7日後の結果。
【0022】
図8】アストロサイトを添加すると、チャネルバースト頻度のE/I比分布は変化し、強度、回路網バーストおよび増幅レベルは全E/I比にわたって標準化された。
【0023】
図9】発現しているE/I比が相同の(70:30)、例示的な2つのニューロン培養物(12日目)。アイセル(登録商標)ドーパニューロン(上段)は中脳ニューロンであり、グルタミン酸作動性(Glutamatergic)70(下段)細胞型は皮質ニューロンである。両方の回路網が同程度の回路網バースト強度レベルを示したが、バースト後のノイズ(rumbling)レベルはアイセル(登録商標)ドーパニューロンでより顕著だったことに注目されたい。
【0024】
図10】アイセル(登録商標)ドーパニューロン培養物(およそ12日)の回路網バースト解析(バーストしている例:図9:上段)を示している。Brain Phys(BP)で培養すると、平均発火頻度(上段:赤色)および同期性(上段:紫色)のいずれもが対照(維持培地、maintenance media、MM)よりも上昇し、また、より安定な神経回路網が形成された(*全比較においてp<0.05)。特に、BPでの培養によって、培養回路網の活性が、MMで見られる高頻度、短チャネル(ポアソン過程で補足)のバースト挙動(枠内左側)から、より高いパーセンテージ(%)のチャネルバースト活性(下段)を含む、高頻度で長期間持続する回路網(ISIで補足)バースト挙動(枠内右側)へと変化した。
【0025】
図11】2つの例示的な興奮性の薬剤であるTHIP(上段)およびL−655,708(下段)がアイセル(登録商標)ドーパニューロン培養物に及ぼす影響を示す。THIPは睡眠補助薬で持続性抑制を活性化するものであり、L−655,708は持続性抑制を低減する向知性薬で、発作(seizures)を引き起こすことも知られている。持続性抑制は、細胞の静止膜が定まるのを補助し、興奮性電位を細胞の脱分極から活動電位の閾値へと切り替える抑制性の電流である。結果は、いずれの薬剤も回路網バースト強度を変化させることはないが、バースト後の挙動を変化させることを示している。THIPによって、バースト全体の間隔とバースト後のノイズ(rumble)が短くなり、逆にL−655,708では持続的なノイズ活性が誘導されることで「バーストが収まった後」の発火(after-quiet)が見えなくなった。これらの実験から、培養回路網の同期性が、既知の興奮性調節薬に対して正しく反応することが示された。
【0026】
図12】ヒトiPS細胞由来のニューロン培養物で観察されたバースト。
【0027】
図13】異なる比率の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを単一のMEA中で共培養してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、部分的には、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの組み合わせをインビトロで混合または組み合わせて、同期発火を示す神経回路網を形成することができるという発見に基づいている。いくつかの態様では、特定の比率の興奮性ニューロンと抑制性ニューロン(E/I比)が、神経回路網の形成に有効に活用できることが見いだされた。神経細胞培養物におけるE/I比は、多能性幹細胞、例えばヒトiPS細胞に由来する異なる細胞型(例えばアイセル(登録商標)ニューロン、アイセル(登録商標)ドーパニューロン、グルタミン酸作動性X、ここでXはグルタミン酸作動性ニューロンのパーセンテージと等しい)を組み合わせることによって調整することができる。例えば、ヒトiPS細胞からE/I比の異なるニューロンの培養物を1つ、2つ、3つまたはそれ以上生産して組み合わせ、インビトロで培養して神経回路網を形成させてもよい。種々の態様においてiPS細胞は、健常対象または神経疾患または神経変性疾患などの疾患を患っている患者に由来するものであってよい。以下の実施例に示すように、アキシオン(Axion)マエストロ(Maestro)多電極アレイ(MEA)プラットフォームを使用して、E/I比が異なるiPS細胞由来ニューロン培養物におけるニューロンの活動、同期性、およびバースト挙動を評価した。いくつかの態様では、ヒトiPS細胞(例えばアイセル(登録商標)アストロサイト)などの多能性幹細胞に由来するアストロサイトを培養物に含めてもよい。解析は、例えば、神経測定(Neural Metrics)統計ツールボックス(アキシオン)を使って行うことができる。以下の実施例に示すように、結果から、神経回路網の同期性、増幅、および発作の傾向を調節するのにE/I比を用いることができるという仮説が支持された。本明細書で提供する培養物および方法は特に、例えば、毒性のスクリーニングおよび/または神経伝達の調節に関して治療上有用だと考えられる化合物のスクリーニングまたは試験に有用であろう。
【0029】
I.異なる細胞型比率を使った同期的回路網の生成
いくつかの態様では、種々の細胞を様々な比率でインビトロで組み合わせてニューロンの同期的な回路網を形成することができる。例えばいくつかの態様では、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを様々な比率でインビトロで組み合わせて(例えば、多電極アレイなどのマルチウェルプレート上で)、例えば電気生理学的手法を介して記録可能な同期発火を示す神経回路網を形成してもよい。いくつかの態様では、このニューロン培養物はアストロサイトを含まない。しかしながらいくつかの態様では、アストロサイトを興奮性および/または抑制性ニューロンと組み合わせて、インビトロで含めてもよい。
【0030】
形成された神経回路網の用途に応じて、ニューロンの回路網または神経回路網を形成するために興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの比率を変えてもよい。例えば、興奮性ニューロンの活性が高いかまたは抑制性ニューロンの活性が低いことを特徴とする表現型の神経疾患(例えばてんかん)をインビトロで再現したい場合、興奮性ニューロンの割合が抑制性ニューロンより高いもの、例えばE:I比が約100:0、90:10、80:20、もしくは70:30、またはそこから導きだされる任意の範囲の比率のものを使用することができる。あるいは、興奮性ニューロンの活性が低いことまたは抑制性ニューロンの活性が高いことに関連する表現型の神経疾患(例えば自閉症スペクトル障害)をインビトロで再現したい場合、抑制性ニューロンと興奮性ニューロンの割合が、例えばE:I比が約20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、またはそこから導きだされる任意の範囲の比の神経培養物を用いることができる。例えば、E:I比が約0:100、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5、もしくは100:0、またはそこから導きだされる任意の範囲の比の培養物を使用してもよい。いくつかの態様では、疾患でない表現型をインビトロで再現することが望まれる場合、およそ同数の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを使用してもよく、好ましくは、E対Iの比をおよそ80:20、75:25、70:30、60:40、55:45、50:50、またはそこから導きだされる任意の範囲とその全ての組み合わせにすることができる。
【0031】
神経培養物または神経回路網にさらにアストロサイトを含めてもよい。いくつかの態様では、神経培養物または神経回路網の約1、2.5、5、10、15、20、25、35、40、45、50、または55%、またはそこから導きだされる任意の範囲のアストロサイトを含めてもよい。いくつかの態様では、少なくとも約1k(つまり約1000)、2.5k、5k、10k、15k、20k、25k、またはそれより多くのアストロサイトを、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを含む培養物に添加してもよい。
【0032】
本出願の種々の態様では、多能性幹細胞、例えばヒト人工多能性幹細胞(iPSC)由来の様々な細胞集団を使用することができる。このような細胞集団としては、例えば皮質(GABA作動性/抑制性)ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、ストリキニーネ感受性グリシン受容体を発現しているニューロン、アセチルコリンニューロン、エピネフリンもしくはノルエピネフリンニューロン、ヒスタミン応答性ニューロン、AデルタまたはC群の痛覚線維、侵害受容器を発現しているニューロン、およびアストロサイトが挙げられる。いくつかの態様では、通常、海馬、扁桃体、周辺(周辺ニューロン)、運動ニューロン、または皮質ニューロン(例えばグルタミン酸作動性または興奮性ニューロン)で見られる型のニューロンを、種々の態様で使用してもよい。例えばいくつかの態様では、例えば米国特許第8,513,017号または米国特許第8,796,022号で記載されているようにコリン作動性ニューロンを生成することができる。いくつかの態様では、例えば米国特許第8,735,149号で記載されているように運動ニューロンを生成してもよい。いくつかの態様では、国際公開第2013067362号;国際公開第2013163228号;国際公開第2012080248号;または国際公開第2011130675号に記載されているようにドーパミン作動性ニューロンを生成することができる。
【0033】
人工多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)を生成し、維持するためには様々な方法を使うことができる。例えばiPS細胞は、ユウら(2007)、ユウら(2008)、ユウら(2009)、タカハシら、(2006)、タカハシら(2007)、米国特許第8,546,140号、米国特許第8,741,648号または米国特許公開(U.S.Pat.Pub)第2011/0104125号に記載されているように生成することができる。iPS細胞は、例えば、米国特許公開第2007/0238170号、米国特許公開第2003/0211603号、および米国特許公開第2008/0171385号、および/または米国特許公開第2009/0029462号に記載されている方法で培養し、未分化状態で維持することができる。特定の態様では、限定されていな条件を使用してもよい。例えば、幹細胞を未分化状態に維持するために、多能性細胞を、線維芽細胞のフィーダー細胞上でまたは線維芽細胞のフィーダー細胞に暴露した培地上で培養してもよい。あるいは、限定された、フィーダーを使用しない培養系、例えばTeSR培地(ラドウィグら、2006a;ラドウィグら、2006b)またはE8または必須(Essential)8培地(チェンら、2011:PCT/US2011/046796)を使用して多能性細胞を培養し、本質的に未分化な状態に維持することもできる。
【0034】
いくつかの態様では、インビトロで同期的な神経発火を生じる神経回路網を形成するために、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを特定の比率でインビトロの単一のウェルまたは容器に播種してもよい。いくつかの態様では、例えばインビトロで同期的な神経発火を示す神経回路網または培養物を生産するために、E:I比が約90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、55:45、50:50、またはそこから導きだされる任意の範囲の比の興奮性(例えばグルタミン酸作動性)ニューロンと抑制性ニューロン(例えばGABA作動性ニューロン)を播種または培養する。
【0035】
II.インビトロでニューロンを培養する方法
いくつかの態様では、神経回路網を形成するためにニューロンをインビトロで培養する。ニューロンは必要に応じて培養しても、またはアストロサイトと共培養してもよい。いくつかの態様では、マルチウェルプレート自体または多電極アレイの上でニューロンを培養する。例えば、いくつかの態様で使用することができるマルチウェル電極アレイの例としては、アキシオン・バイオシステム(Axion BioSystems)多電極アレイ(MEA)が挙げられる。MEAシステムには、ニューロンの電気的な活動の検出に使うことのできる電極が各ウェルに備えられており、MEAプレートにはウェルが48個または96個ある。マルチチャネルシステムズ(Multichannel Systems、ロイトリンゲン、ドイツ)およびニューロネクサス(NeuroNexus、アナーバー、ミシガン)も、本発明の様々な態様で使用可能な市販の多電極アレイを製造している。しかしながらいくつかの態様では、細胞を培養皿またはマルチウェルディッシュ上で培養し、その後、細胞の神経活性を検出する別の技術、例えば、ニューロンの動機発火を検出することができる他の電気生理学的な技術、例えばFLIPRカルシウムアッセイならびに電位感受性色素および/またはタンパク質(VIP)を使って、個別に測定してもよい。基本的には、回路網のバースト、回路網レベルのコミュニケーション、回路網の結合性、神経の伝導率、結合性、または同期ニューロンバーストもしくは発火の測定または検出を含む本質的に全ての技術を本発明で使用してもよいことが想定される。
【0036】
いくつかの態様では、アキシオン・バイオシステムズ(Axion BioSystems)社のマエストロ(Maestro)多電極アレイ(MEA)技術を利用する。MEAは、単一細胞または細胞回路網の電気的な活動を測定するのに使用することができる、非侵襲性で標識の不要なプラットフォームである。いくつかの態様では、iPS細胞(例えばアイセル(登録商標)ニューロン、アイセル(登録商標)ドーパニューロン)由来のニューロンを解凍し、直接MEA上で培養して、電気生理学的な照合に適したニューロン回路網を形成させることができる。マエストロMEAシステムで検出されたニューロンの電気的な活動は、アイセル(登録商標)ニューロアナライザー(NeuroAnalyzer)、MATLABを基礎としたスクリプト、および/またはアキシオン社の神経測定(Neural Metrics)を使って解析することができる。合わせて、これらの方式は、神経伝達を調節する化合物の潜在的な効果を評価するための非侵襲的なプラットフォームとして使用することができる。
【0037】
インビトロでのニューロンの培養には様々な培地を使用することができる。いくつかの態様では、インビトロでニューロンを培養するのに人工脳脊髄液(ACSF)を使用してもよい。一般的に、培地は適切な濃度の無機塩類を含み(例えばDMEM/F12培地と同様に)、モル浸透圧濃度が適切であり(例えば約305〜315mOsmol)、そしてpHが正確にまたはおよそ7.4であってよい。いくつかの態様では、細胞を培養するのにブレインフィズ(BrainPhys)培地(ソーク研究所、ラホーヤ、CA;バーディら、2015;国際公開第2014172580号)を使用してもよい。ブレインフィズ培地には必要に応じて、例えば、培養物に含まれている未分化の細胞または神経前駆細胞のさらなる分化を促進するために、N2、B27、レチノイン酸、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、アスコルビン酸、cAMP、ラミニン、およびコレステロールを添加することができる。いくつかの態様では、自発的なおよび誘発された活動電位、回路網自発的なカルシウム活性、興奮性のシナプス活性、および生理学的な条件に匹敵するグルコースレベルを引き起こすためにこの培地を使用する。いくつかの態様では、自発的な神経伝達を誘導するために、必要に応じて培地に、神経伝達物質(例えばGABA、グルタミン酸、アセチルコリン、および/またはドーパミン)、グリピカン4、および/またはグリピカン6を含めてもよい。他の態様では、神経培養に加えられる培地は神経伝達物質を含まないか、含んでいても微量である。
【0038】
興奮性シナプスの形成を促進するために、通常のaCSF型培地または通常のaCSF型培地に、さらにアストロサイト因子を含めてもよいと想定される(例えばグリピカン4および/またはグリピカン6;アレンら、2010)。いくつかの態様では、以下のようなaCSF培地を使用してもよいことが想定される:aCSF(低Mg+):125mM NaCl、25mM NaHCO、2.5mM KCl、1.25mM NaHPO、2.8mM CaCl、0.2mM MgCl、25mM D−グルコース、13.87M ショ糖、そして95%Oと5%COで通気する。培地のpHは約7.4であってよい。aCSF型の培地にさらに、約4〜10nMもしくは8nMのグリピカン4および/または約4〜10nMもしくは8nMのグリピカン6を含めてもよい。いくつかの態様では、グルタミン酸作動性またはGABA作動性のシナプス活性に影響を及ぼす可能性のある向神経活性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、セリン)のレベルを下げるかこれらを除去するために培地を改変した。培地のNaCl濃度は神経生理学的レベルと同程度、例えば約120〜125nMであってよい。培地のカルシウムレベルは、インビボのヒト髄液におけるレベルと同程度、例えばCa2+が約1.1mMであってよい。培地のモル浸透圧濃度は、約300〜315、300〜305、300〜310、300、305、310、315mOsmol、約300を超えて約315mOsmolまで、またはそこから導きだされる任意の範囲であってよい。
【0039】
III.多能性細胞からニューロンおよびアストロサイトを生産する方法
本発明の様々な側面で使用するためのニューロンおよび/またはアストロサイトを生成するには、様々な方法が利用可能である。いくつかの態様では、ニューロン(例えばGABA作動性、グルタミン酸作動性、またはドーパミン作動性ニューロンなど)またはアストロサイトを、多能性細胞、例えばiPS細胞または幹細胞から培養・生産することができる。いくつかの態様では、多電極アレイ(例えばMEA)を構成しているウェルの中で培養する前にニューロンを分化させてもよく、他の態様では、未分化な、多能性の、多分化能の(multipotent)、または神経前駆細胞である細胞を多電極アレイのウェルに入れ、その後、神経細胞へと分化させてもよい。
【0040】
いくつかの態様では、健常提供者から得られた細胞から生成されたiPS細胞から、神経細胞またはアストロサイトを生産する。他の態様では、提供者は疾患を患っている。例えばいくつかの態様では、提供者は、例えば、てんかん、自閉症、注意欠陥多動障害(ADHD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、ハンチントン病、家族性てんかん、統合失調症、家族性アルツハイマー病、フリードライヒ失調症、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症、遺伝性痙性対麻痺、白質ジストロフィー、フェニルケトン尿症、テイ・サックス病、ウィルソン病、依存症、うつ状態、または気分障害などの神経学的または神経変性疾患を患っている。疾患は、遺伝性疾患であっても、または特定の神経疾患に遺伝的な感受性が高まっているのでもよい。
【0041】
いくつかの態様では、以下の方法を使用して胚性幹細胞またはiPS細胞などの多能性幹細胞から、GABA作動性、グルタミン酸作動性、ドーパミン作動性、またはコリン作動性ニューロンを生産してもよい。例えばいくつかの態様では、多能性幹細胞からニューロンを生産するのに米国特許出願第2012/0276063号の方法を使用することができる。例えばいくつかの態様では、iPS細胞などの多能性細胞の培養に使われる培地からbFGFおよびTGFβを除去し(例えばTeSRまたは必須8培地などの限定培地から除去し)、その後、凝集体の形成を開始させ(細胞は接着培養に入れたままで)、次いでこれを多能性細胞のニューロン分化を促進するのに使用してもよい。いくつかの態様では、TeSR成長因子の非存在下でiPS細胞を「刺激」したときに、つまり、凝集体を形成させる前に、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびトランスフォーミング増殖因β(TGFβ)を含まない任意の培地中で数日間培養したときに、細胞は高純度で、迅速に、そして均一なニューロン系へと発達する場合がある。ニューロンを生産するための他の方法としては、チャンら(2013)、米国特許第7,820,439号、国際公開第2011/091048号、米国特許第8,153,428号、米国特許第8,252,586号、および米国特許第8,426,200号の方法がある。
【0042】
様々な方法を利用して、胚性幹細胞またはiPS細胞などの多能性幹細胞からアストロサイトを生産することができる。このような方法としては、例えば米国特許出願第2012/0276063号があり、その全体は免責条項なしに、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0043】
いくつかの態様では、スチューダーらの方法を使ってドーパミン作動性神経細胞を生成してもよい(国際公開第2013/067362号、参照することにより本明細書に組み入れられる)。これらの結果から、この方法によって生産したドーパミン作動性ニューロンがインビボで効率的に生着できることが示されている。いくつかの態様では、米国特許出願第14/664,245に記載の方法によってドーパミン作動性神経細胞を生成することもできる。
【0044】
iPS細胞などの多能性細胞由来の神経細胞型の培養物は市販されてもおり、購入することもできる。例えば、アイセル(登録商標)ニューロン、アイセル(登録商標)ドーパニューロン、およびアイセル(登録商標)アストロサイトはヒトiPS細胞に由来するものであり、セルラーダイナミクス・インターナショナル(Cellular Dynamics International、マジソン、ウィスコンシン)から購入することができる。アイセル(登録商標)ニューロンは、天然のヒトニューロンと同じ生化学的、電気生理学的、および病態生理学的特性を示す、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)由来のニューロンである。その純度、機能的な関連が高いことと使用が簡便であることから、アイセル(登録商標)ニューロンは、基礎研究および多数の創薬分野において、神経生物学的照合に非常に有用なインビトロ試験系となっている。
【0045】
いくつかの態様では、iPS細胞などの多能性細胞からニューロンまたはアストロサイトを生産するのに限定培地(つまり組織、フィーダー細胞、または細胞馴化培地を含んでいない培地)を使っても良い。
【0046】
iPS細胞からニューロンまたはアストロサイトを生産するために使用される培地は、本質的に血清および/または血清由来の成長因子を含まない培地であってもよい。さらなる態様では、外部から添加されたTGFβスーパーファミリーのシグナル伝達調節因子、BMPシグナル伝達および/またはアクチビン(Activin)/ノダル(Nodal)/TGFβ/GDFシグナル伝達の正の調節因子または阻害剤などを含んでいても、またはそれらを本質的に含まないものであってもよい。例えば、BMPシグナル伝達の阻害剤はドルソモルフィン(dorsomorphin)であってよく、アクチビン/ノダル/TGFβ/GDFシグナル伝達の阻害剤はSB431542であってよい。その上さらに別の態様では、培地は、外部から添加された他のFGFシグナル伝達調節因子、特にFGF阻害剤を含むものであっても、またはこれらを本質的に含まないものであってもよい。
【0047】
方法には、分化に使う出発材料として、多能性幹細胞を使用することが含まれる場合もあり、多能性幹細胞は、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹細胞、または体細胞核移植に由来する胚性幹細胞であってよい。特定の側面において多能性幹細胞は、単一の多能性幹細胞由来のクローンであってよく、単一細胞由来のクローン細胞を実質的な割合で含むものであってよく、または細胞の複数の集団(それぞれの集団は単一の細胞に由来するクローン細胞である)を集めたプールであってもよい。特定の側面において多能性幹細胞は、細胞の集団、例えば単一細胞由来の細胞の集団であってよい。
【0048】
単一細胞から多能性幹細胞を得るための例示的な方法は、単一の多能性幹細胞を、ROCK阻害剤またはミオシンII阻害剤(例えばブレビスタチン)を含む培地に入れ、細胞の成長を促進する条件でインキュベートすること、例えば接着培養の条件でインキュベートすることを含む場合がある。凝集体を形成させるために多能性幹細胞を浮遊培養で成長させる前に、出発材料となる単一の多能性幹細胞を、1、2、3、4回、または好ましくは少なくとも5回継代する。別の側面において多能性幹細胞は、2つ以上の細胞を含んでいるiPS細胞の集団に由来するものであってもよい。細胞は、ヒト、マウス、または他の哺乳類の細胞であってよい。
【0049】
分化させる前に、多能性幹細胞を非細胞性基質成分上で培養してもよい。基質成分の非限定的な例としては、コラーゲン、ゼラチン、ポリ−L−リシン、ポリ−D−リシン、ポリ−D−オルニチン、ラミニン、レクトロネクチン(RectroNectin、登録商標)、ビトロネクチンおよびフィブロネクチンならびにこれらの混合物、例えば、エンゲルブレス・ホルム・スワーム(Engelbreth−Holm−Swarm)マウス肉腫細胞由来のタンパク質混合物(例えばマトリゲル(Matrigel、登録商標)またはゲルトレックス(Geltrex、登録商標))および溶解した細胞膜の調整物(クリマンスカヤら、2005)が挙げられる。性質不明の成分によって引き起こされる変動をなくすために、培地は、血清、フィーダー細胞、または動物由来のタンパク質などの、外部から添加した、ヒト以外の動物由来の成分を本質的に含まないものであってよい。
【0050】
培地は化学的に限定されたものでも、または限定されていないものでも(つまり外部から添加された化学的に明らかでない成分を含んでいても)よい。限定培地では、全成分の量および化学組成が分かっている。非限定培地は、いくつかの複合体のような明らかになっていない成分、例えば、複数の化学種を未知の割合で含んでいる混合物からなる細胞抽出物をいくぶん含んでいる場合がある。特定の例において限定培地は、栄養混合物F−12を含むDMEM培地(DMEM/F12)、N2添加剤を加えたDMEM/F12培地、B−27添加剤を加えたDMEM−F12培地、またはインスリン、トランスフェリン、およびセレン(ITS)添加剤を含むDMEM−F12培地などのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に基づく培地であってよい。
【0051】
いくつかの側面では、凝集体を形成させる前に、細胞を刺激(priming)培地で約4、8、もしくは12時間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間(またはそこから導きだされる任意の範囲の期間)培養してもよい。細胞は、約5、10、15、20、25、30、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500mL、またはそこから導きだされる任意の範囲の容量の刺激培地中で培養することができる。細胞を刺激培地中で、培地を4、8、または12時間ごと、1、2、3、4、5日ごと、またはそこから導きだされる任意の範囲の期間ごとに交換しながら培養してもよい。特定の側面では、細胞を刺激培地中で刺激期間の間、培養することができる。刺激期間は決められた期間であるか、または選択した多能性幹細胞系もしくはクローンまたは他の特定の条件について最適化することで同定された期間であってよい。刺激期間は例えば、分化開始前の約4、8、もしくは12時間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間(またはそこから導きだされる任意の範囲)あるいはそこから導きだされる任意の範囲の期間から始まるものであってよい。刺激期間は、約4、8、もしくは12時間、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日間続いてもよく、またはさらなる分化が始まるまで継続させてもよい(この間に入る任意の期間も含まれ得る)。
【0052】
さらなる側面において、本方法は、多能性幹細胞またはその後代細胞を、外部から添加した決められた量のTGFβスーパーファミリーシグナル伝達阻害剤および/またはFGF8の存在下で培養することをさらに含んでよい。このような培養することは、刺激する工程(凝集体形成の前に培養すること)、凝集体を形成する工程、またはさらなる分化工程のうちの何時であってもよい。特定の側面では、細胞を、刺激している最中におよび/または凝集体を形成している最中に、外部から添加した決められた量のTGFβスーパーファミリーシグナル伝達阻害剤および/またはFGF8の存在下で、最長約1、2、3、4、5、6日間(またはそこから導きだされる任意の範囲の期間)培養してもよい。さらに特定の側面では細胞を、凝集体が形成された後、さらなる分化の最初の最長約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日間(またはそこから導きだされる任意の範囲の期間)、外部から添加した決められた量のTGFβスーパーファミリーシグナル伝達阻害剤および/またはFGF8存在下で培養し、その後の続く期間は、外部から添加したTGFβスーパーファミリーシグナル伝達阻害剤および/またはFGF8の非存在下で培養してもよい。特定の側面では、刺激している最中に、凝集体を形成している最中におよび/またはさらに分化している最中に、外部から添加した決められた量のTGFβスーパーファミリーシグナル伝達阻害剤および/またはFGF8存在下で細胞を培養してもよい。特定の側面では、刺激している最中に、凝集体を形成している最中におよび/またはさらに分化している最中に、外部から添加したTGFβスーパーファミリーシグナル伝達阻害剤および/またはFGF8の非存在下において細胞を培養してもよい。
【0053】
細胞系同士およびクローン同士の変動性(つまり細胞系間およびクローン間の変動性)があるため、多能性幹細胞集団を神経に分化させるための適切な量のTGFβスーパーファミリーシグナル伝達阻害剤および/またはFGF8を決定する方法を利用してもよい。特定の側面において方法は、効率的な神経分化を生じさせて高純度の神経培養を得るのに必要な、(もしあれば)外部から添加するTGFβスーパーファミリーシグナル伝達阻害剤および/またはFGF8の適切な量を決定するために、多能性幹細胞集団の神経分化効率を試験することをさらに含んでいてもよい。神経分化効率は、全ニューロンに関して、または神経細胞型、例えばアストロサイトに関して測定することができる。
【0054】
分化の開始には多能性幹細胞の分離(dissociating)が伴われる場合も伴われない場合もある。いくつかの態様では、分化には、幹細胞を本質的に単一の培養物へと分離することが含まれてもよい。分離には、本質的に単一細胞の培養物を生じることが可能な、現在知られている方法のいずれかまたは今後開発される方法のいずれかを使用することが包含される。例示的な態様では、プロテアーゼ処理によってまたはピペッティングのような機械的な処理によって細胞を分離してもよい。プロテアーゼは例えば、コラゲナーゼ、トリプシン−EDTA、ディスパーゼ、またはそれらの組み合わせであってよい。あるいは、クエン酸ナトリウム、EGTA、EDTAまたはそれらの組み合わせなどのキレート剤を使用して、細胞を分離してもよい。本質的に単一細胞の培養物とは、成長が望まれる細胞が互いに分離しているため、大部分の細胞が単一の細胞であるか、または多くても2つの細胞が結合したまま(2連(ダブレット))の細胞培養物であってよい。培養が望まれる細胞のうちの50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が単一またはダブレットであることが好ましい。
【0055】
分化方法には、多能性幹細胞を分化させることが可能な、現在知られている方法のいずれかまたは今後開発される方法のいずれかの使用が包含される。分化させることが細胞凝集体(胚様体)の形成を伴っていてもよく、または細胞凝集体を形成させることが必要でなくてもよい。特定の態様では、分離した細胞は培地中で細胞凝集体を形成する場合もある(凝集体形成培地)。凝集体形成培地には、TGFβスーパーファミリーシグナル伝達調節因子およびbFGFが含まれている場合も、これらを本質的に含んでいない場合もある。
【0056】
刺激培地、凝集体形成培地および/またはさらなる分化培地のいずれも、外部から添加された少なくともまたは最大約5〜約200ng/mlのFGF8、例えば少なくともまたは約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、180、200ng/mlまたはそこから導きだされる任意の範囲の濃度のFGF8を含み得る。外部から添加されたFGF8またはTGFβスーパーファミリーシグナル伝達阻害剤の量は、少なくとも、約もしくは最大5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、150、200ng/ml、少なくとも、約、もしくは最大0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、25、50μM、またはそこから導きだされる任意の範囲の量、または高純度な神経細胞型の生産を改良するのに有効な任意の濃度であってよい。
【0057】
分離した細胞の生存を促進するために、培地に外部から添加されたミオシンII阻害剤またはRho関連キナーゼ(ROCK)阻害剤を含めてもよい。ミオシンII阻害剤がブレビスタチンであってもよい。ROCK阻害剤は、Y27632、HA−100またはH1152であってよい。このような阻害剤の濃度は、約0.05〜約50μM、例えば、少なくとももしくは約0.05、0.1、0.2、0.5、0.8、1、1.5、2、2.5、5、7.5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50μM(そこから導きだされる任意の範囲の濃度を含む)、または細胞の成長または生存を促進するのに有効な任意の濃度であってよい。
【0058】
多能性幹細胞から形成された凝集体の直径は、少なくともまたは最大、約5、10、15、20、25、30、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500μmとなる可能性がある。直径は、平均値、中央値または平均直径であってよい。別の側面では、凝集体の少なくとも約20%、30%、40%、50%、80%、90%、95%、または99%(またはそこから導きだされる任意の範囲)が、少なくともまたは約10、15、20、25、30、35、40、45、50、80、100、150、200、250、300、400、500、1000個の細胞、またはそこから導きだされる任意の範囲の数の細胞を含み得る。特定の側面では、凝集体の実質的な割合(例えば少なくとも約50%、80%、90%、95%、99%またはそこから導きだされる任意の範囲)の直径が約80〜200μmである。凝集体の大きさの最適範囲がおよそ均一であることによって、分化が促進され得る。これは分化が、凝集体の大きさを変化させることによって操作可能な、様々な細胞型間の空間的な手がかり(spatial cue)および相互作用によって導かれるためである。
【0059】
分化させることは、接着培養または浮遊培養で多能性幹細胞および/またはその後代細胞を培養することを含む場合がある。特定の態様では、分化させている最中に、細胞を接着培養に移してもよい。接着培養は例えば、非細胞性基質成分を含んでいてもよい。好ましい態様では、浮遊培養中で多能性幹細胞を分化させて神経細胞を形成するために、この方法を使用してもよい。多能性幹細胞またはその後代細胞を浮遊培養中でインキュベートしてもよい。さらなる態様では、多能性幹細胞凝集体を浮遊培養中で形成させることもできる。浮遊培養の容量は、例えばバイオリアクター中に入れた、少なくともまたは最大、約2mL、5mL、10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、100mL、200mL、500mL、1リットル、3リットル、5リットル、10リットル、20リットル、25リットル、30リットル、40リットル、50リットル、またはそこから導きだされる任意の範囲であってよい。いくつかの態様は、標準的なシャーレまたは96ウェルプレートよりも大きな容量の空間で細胞を成長させることを含み、その結果いくつかの態様では、そのような容器の使用が排除される。
【0060】
細胞凝集体の大きさと成長を最適化するために、少なくともまたは約5、10、15、20、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100rpmの速度、またはそこから導きだされる任意の範囲の速度で浮遊培養を動かしてもよい。動きの非限定的な例としては、撹拌、振とう、前後への揺れまたは回転が挙げられる。
【0061】
分化に使われる培地は、外部から添加されたTGFβスーパーファミリーシグナル伝達阻害剤、bFGF阻害剤、またはその両方の使用を含んでいてもまたは含んでいなくてもよい。TGFβスーパーファミリー阻害剤はBMPシグナル伝達阻害剤および/またはアクチビン/ノダル/TGFβ/GDFシグナル伝達阻害剤であってよい。bFGFシグナル伝達阻害剤はPD166866であってよい。刺激することで神経誘導を改善し、分化におけるそのような阻害剤を使用する必要性を方法から排除してもよい。
【0062】
特定の側面では、単一のiPS細胞から、iPS細胞または分化した細胞の集団をクローン的に誘導してもよい。さらなる側面では、少なくともまたは約10、10、10、または最大約1010個(またはそこから導きだされる任意の範囲の数の)細胞の集団を提供し得る。提供された細胞集団は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%(またはそこから導きだされる任意の範囲)の細胞、例えば神経細胞を含んでいる可能性がある。特定の態様において細胞集団は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%(またはそこから導きだされる任意の範囲)の神経細胞を含み得る。本発明は多能性幹細胞を分化させることから、現在知られている方法および刺激を使用しない方法と比較して、予期できないほど多量の神経細胞の生成を達成し得る。
【0063】
上述した方法のいずれかによって提供される神経細胞またはアストロサイトを含む細胞集団も提供し得る。さらなる態様では、少なくともまたは約10、10、10、10、1010個(またはそこから導きだされる任意の範囲の数)の神経細胞の単離した細胞集団を提供し得る。分化した細胞は、少なくとも90%(例えば、少なくともまたは約90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそこから導きだされる任意の範囲のパーセンテージ)の神経細胞またはアストロサイトを含んでいる場合がある。特定の実施例において細胞は、神経細胞に特異的なプロモーターの制御下にある導入遺伝子(例えば選択可能なマーカーおよび/またはスクリーニング可能なマーカーをコードしている導入遺伝子)を含んでいてもよい。例えば導入遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質をコードしている遺伝子であってよい。神経特異的なプロモーターの非限定的な例としては、ダブルコルチン(DCX)、ニューロンのβ−チューブリン クラスIII(TUJ−1)、シナプシンI(SYN1)、エノラーゼ2/神経特異エノラーゼ(ENO2/NSE)、神経膠線維酸性タンパク質(GFAP)、チューブリンα−1A鎖(TUBA1A)、ニューロゲニン2(NGN2)または微小管結合タンパク質2(MAP−2)のプロモーターが挙げられる。方法は、例えば、選択可能なマーカーまたはスクリーニング可能なマーカーの神経細胞特異的またはアストロサイト特異的な発現を利用して、神経細胞またはアストロサイトを単離することまたは濃縮することをさらに含む場合もある。
【0064】
B.ニューロン系の特徴付け
神経細胞を同定するために、ニューロン系への分化効率を決定するために、神経細胞を選択もしくは単離するために、または神経細胞を濃縮するために、ニューロン系の特徴を評価してもよい(シュワルツら、2008)。
【0065】
特定の態様では、ニューロン系の前駆細胞、例えば培養細胞を、その細胞がネスチン、Sox1、Pax6、FORSE−1、N−CAD、CD133、FOXG1および3CB2のうちの1つ以上を発現していることに基づいて、神経細胞であると同定することができる。そのような細胞培養は、本明細書に記載の方法または今後開発される方法を含む他の方法によって生産することができる。特定の態様では、培養細胞を含む成熟神経細胞は、Dcx、MAP−2、シナプシン1、TuJ1、NSE、Map2a、Gap43、NF、CD24、CDH2/CD325、シナプトフィジン、およびCD56/NCAMのうちの1つ以上を発現していることに基づいて、成熟神経細胞と同定することができる。そのような細胞培養は、本明細書に記載の方法または今後開発される方法を含む他の方法によって生産することができる。
【0066】
神経細胞を、表現型基準の数によって特徴付けることができる。そのような基準には、これらには限定されないが、形態学的特徴の顕微鏡観察、発現している細胞マーカーの検出または定量、酵素活性、神経伝達物質およびその受容体、ならびに電気生理学的機能を含む。
【0067】
種々の態様において使用することができる一定の細胞は、ニューロン細胞に特徴的な形態学的特徴を有する。これらの特徴は当業者によって認識される。例えばニューロンは細胞体が小さく、また、軸索と樹状突起に関連した突起を含む。
【0068】
神経細胞はまた、特定の種の神経細胞、例えばこれらには限定されないが、ドーパミン作動性ニューロン(マーカーとしては以下のものがある:TH、AaDC、Dat、Otx−2、FoxA2、LMX1AおよびVMAT2)、コリン作動性ニューロン(マーカーとしては以下のものがある:NGF、ChAT)、GABA作動性ニューロン(マーカーとしては以下のものがある:GAD67およびvGAT)、グルタミン酸作動性ニューロン(マーカーとしては以下のものがある:vGLUT1)、セロトニン作動性ニューロン、運動ニューロン(マーカーとしては以下のものがある:HB9、SMN、ChAT、NKX6)、感覚ニューロン(マーカーとしては以下のものがある:POU4F1およびペリフェリン)、アストロサイト(マーカーとしては以下のものがある:GFAPおよびTapa1)、およびオリゴデンドロサイト(マーカーとしては以下のものがある:O1、O4、CNPアーゼ(CNPase)、およびMBP)に特徴的な表現型マーカーをそれらが発現しているか否かによっても特徴づけることができる。神経細胞は、神経細胞型に特異的な種のマーカーを1、2、3、4、又は5種以上発現している場合がある。
【0069】
また、特定のサブタイプのニューロン、特に、ドーパミン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性、セロトニン作動性、およびコリン作動性ニューロンのような特に最終分化した細胞の特徴としては、神経伝達物質の生合成、放出、および再取り込みに関わる受容体および酵素であること、ならびにシナプス伝達に関連する脱分極および再分極事象に関わるイオンチャネルが挙げられる。シナプス形成の証拠は、シナプトフィジンの染色によって得ることができる。特定の神経伝達物質の受容性に関する証拠は、例えば、ガンマアミノ酪酸(GABA)、グルタミン酸、ドーパミン、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、ノルアドレナリン、アセチルコリン、およびセロトニンの受容体を検出することによって得ることができる。
【0070】
特定の側面では、アストロサイトをニューロンと一緒に培養または共培養してもよい。アストロサイトは中枢神経系にあるグリア細胞のサブタイプであり、アストログリア細胞としても知られている。一般的に星形で、これらの多くの突起は通常、インビボでニューロンによって作られたシナプスを包んでいる。これまでの研究においてアストロサイトは、組織学的な分析によって同定されてきた。これらの細胞の多くは中間径フィラメント神経膠線維酸性タンパク質(GFAP)を発現している。CNSには、線維型、原形質型、および放射状の3種のアストロサイトが存在する。通常、線維型グリアは白質に局在し、細胞小器官が比較的少なく、長く分岐していない細胞突起を示す。この種の細胞は、毛細血管壁に非常に接近したときに、毛細血管壁の外側にある細胞に物理的に繋がる「終足」をもっていることも多い。原形質型グリアは、灰白質組織に見られ、比較的多量の細胞小器官を有し、短く、分岐の多い三枚羽(tertiary)構造の突起を示す。放射状グリアは脳室の軸に対して垂直な平面に配置される。放射状グリアは主に発生段階で存在し、インビボではニューロンの遊走に関わっていると考えられる。網膜のミュラー細胞と小脳皮質のバーグマングリアは例外で、成人期にも発現している。
【0071】
C.細胞の遺伝子変異
本明細書に記載した種々の側面において使用される細胞(例えばニューロン、アストロサイトなど)は、分化する前、分化中、または分化後のいずれかの時点で、細胞の遺伝子操作によって1つ以上の遺伝子変異を含むように改変することができる(米国特許公開第2002/0168766号)。通常、人為的操作の任意の好適な手段によってポリヌクレオチドが細胞内に導入されたとき、またはその細胞が遺伝するポリヌクレオチドを有する最初に変化した細胞の後代である場合に、細胞は「遺伝子変異している」または「トランスジェニック」である。例えば、細胞が限定された発生系譜の細胞または高分化型細胞に進む前または進んだ後のいずれかの時点で、細胞がテロメラーゼ逆転写酵素を発現するように遺伝子変異させてその複製能力を高めるように処理することができる(米国特許公開第2003/0022367号)。別の例では、神経細胞の選択またはスクリーニングを効率的にするために、細胞に、神経プロモーター(例えばMAP2プロモーター)の制御下にあるスクリーニング可能なマーカーまたは選択マーカーを含めることができる。特に、多能性細胞をマーカーで改変し、神経細胞へと分化させ、その後、マーカーに基づいて選択して、精製した神経細胞(例えばニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、GABAニューロンなど)の集団を得ることができる。
【0072】
IV.神経培養物の使用
同期的なニューロンの発火または同期的な活動電位を示す神経細胞培養物は、例えば、神経の分化もしくは生存に与える分子の効果を試験することにおいて、または毒性試験において、あるいは神経もしくはニューロンの機能におよぼす分子の効果を試験することにおいて使用することができる。このことは、ニューロンの活動、可塑性(例えば長期的な相乗効果)、または機能に影響をおよぼす化合物を同定するためのスクリーニングも含む場合がある。細胞培養物を、新薬や、神経幹細胞、神経前駆細胞または分化したニューロンつまりニューロン型と相互作用する、またはそれらのバイオロジーに影響を与える化合物の探索、開発および試験に使用することもできる。神経細胞は、軸索誘導、神経変性障害、ニューロンの可塑性および学習と記憶を含むがこれらには限定されない、神経の発達および障害の細胞学的および分子学的な基礎を明らかにするために設計された研究においても非常に有用である。このような神経生物学的な研究を、このような過程の新規分子成分を同定するのに用いてもよく、また、このような研究から、既存の薬剤や化合物の新規使用法が提供されたり、新規薬剤標的または薬剤候補が同定されたりするだろう。
【0073】
いくつかの態様では、1つ以上の特定の化合物を、その化合物が疾患の治療に有益な効果を有しているか否かを決定するために試験してもよい。例えば、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを含んでいる培養物、必要に応じてアストロサイトも含んでいる培養物(ここで、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、および/またはアストロサイトは、健常提供者から得られたiPS細胞に由来するものである)を暴露することによって、ある化合物が神経回路網の活性、例えば同期バーストを変化させる能力を使用することができる。その後、化合物が神経活動に与える効果に基づいて、その化合物が疾患の治療に有用である可能性があるか否かを判断することができる。例えば、ニューロンの同期発火を抑制することが分かった化合物は、同期発火が過多であることを特徴とする疾患(例えばてんかん、自閉症、統合失調症など)の治療に有用な可能性がある。いくつかの態様では、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、および/またはアストロサイトは、疾患(例えば遺伝性疾患または遺伝要素もしくはリスク因子を伴う疾患)、例えば神経疾患または神経変性疾患(例えば自閉症、てんかん、ADHD、統合失調症、双極性障害など)を患っている対象から得たiPS細胞に由来する。いくつかの態様では、ニューロンを、神経培養物が疾患状態と同じような特徴を示すように、第一の化合物または毒素が存在する条件で培養してもよい。これらの態様では、この神経培養物に第二の化合物を加え、第二の化合物が第一の化合物または毒素の効果を軽減または抑制するか否かをみてもよい。他の態様では、神経培養物を、化合物が神経培養物に対して毒性または有害事象を引き起こすか否かを判断するのに使用してもよい。
【実施例】
【0074】
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を示すために含まれるものである。以下に記載される実施例中で開示される技術は、発明者らによって発見され、本発明の実践においてうまく機能する技術を示すものであり、従ってその実践に好ましい形態を構成していると考えられると当業者は認識すべきである。しかしながら、本開示を踏まえると、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示した特定に態様に多くの変更を施し、その上でなお、似たようなまたは同様の結果が得られるということを当業者であれば理解できる。
【0075】
実施例1
マエストロ(Mestro)多電極アレイを使った、iPS細胞由来ニューロンの細胞外単一ユニット記録
以下の方法を使用して、マエストロ多電極アレイ(MEA)上において神経細胞を培養してもよい。アイセル(iCell)(登録商標)ニューロンを解凍し、50%ポリエチレンイミン(PEI;シグマ)溶液で予めコーティングしておいた48ウェルMEAプレートにプレーティングする。プレーティングの1日後、消費した培地の100%を、10%ノックアウト血清代替品(KSR;ライフ・テクノロジーズ)を添加したニューロベーサル(Neurobasal)−A培地(NBA;ライフ・テクノロジーズ)で交換する。プレーティングの5日後、消費した培地の50%をNBA+10%KSRで交換する。プレーティングの8日後、ベースライン活性を記録し、細胞を化合物で処理し、その後、活性を記録する。
【0076】
48ウェルMEAプレートの準備
1. 3.10gのホウ酸と4.75gのテトラホウ酸ナトリウムを蒸留水に溶解して1Lのホウ酸緩衝液を準備する。pHを8.4に調整する。必要に応じて計量する。
2. 50%のPEI溶液をホウ酸緩衝液で希釈して0.05〜0.1%のPEI溶液を準備する。0.05〜0.1%のPEI溶液を0.22μmフィルターに通して濾過する。注意:0.05〜0.1%のPEI溶液は4℃で1ヶ月間保存できる。
3. 0.05〜0.1%のPEI溶液を48ウェルMEAプレートの1ウェルにつき125μl入れる。室温で1時間インキュベートする。
4. 48ウェルMEAプレートからPEI溶液を吸引する。ウェルが乾かないように注意する。
5. 1ウェル当たり少なくとも300μlの滅菌水で4回すすぐ。
6. 48ウェルMEAプレートに蓋をしない状態で、無菌の生物学的安全キャビネット内で一晩風乾する。最適な細胞接着性と最大性能を引き出すために48ウェルMEAプレートを一晩風乾させてもよい。
【0077】
アイセル(登録商標)ニューロンの解凍:以下の手順では、バイアル1本分のアイセル(登録商標)ニューロンを解凍し、48ウェルMEAプレートにプレーティングする工程を詳述する。バイアル2本分のアイセル(登録商標)ニューロンについては、これに従って量を増やすこと。一度に2枚を超える48ウェルMEAプレートの準備をしないこと。
1. アイセル(登録商標)ニューロンの使用説明書に従って、完全アイセル(登録商標)ニューロン維持培地(完全維持培地、Complete Maintenance Medium)を調製する。必要に応じて、ペニシリン−ストレプトマイシンを1×最終濃度で完全維持培地に添加してもよい。
2. 250μlのラミニン溶液のストック(1mg/ml)を25ml完全維持培地を添加して希釈して最終濃度を10μg/mlにする。チューブを反転しながら穏やかに混合する。ラミニン溶液のストックは室温でまたは4℃で一晩かけて解凍することができる。
3. 使用説明書に従ってアイセル(登録商標)ニューロンを解凍し、この細胞懸濁液を、10μg/mlのラミニンを含有する完全維持培地で最終容量が10mlになるように希釈する。
4. 必要に応じて、細胞懸濁液試料を除去し、血球計数器でニューロンを計数して、細胞の生存率と総数を決定してもよい。
5. 細胞懸濁液を15mlの遠心管に移す。
6. 380×gで5分間遠心してニューロンを濃縮する。
7. ペレットを壊さないように注意しながら細胞塊の間近まで上清を吸引し、およそ50μlを残す。この近似容量は、真空吸引器の不正確な特性から導き出されたものである。
8. 細胞ペレットに10μg/mlラミニン含有完全維持培地を125μl加え、上下にピペッティングすることで穏やかに再懸濁する。
9. ピペッタ−を使って細胞懸濁液の最終容量を測定する。10μg/mlラミニン含有完全維持培地を最終容量が220μlになるように加える。ピペッティングで穏やかに混合する。
10. 細胞懸濁液を1.5mlの遠心管に移す。
【0078】
アイセル(登録商標)ニューロンの48ウェルMEAプレートへのプレーティング
1. チューブを2〜3回、ゆっくりと上下に反転させ、細胞懸濁液を完全に混合する。ウェルの底面が見えるように、48ウェルMEAプレートを一定の角度に傾ける。直ちに、PEI溶液で予めコーティングしておいた48ウェルMEAのウェルの記録電極部分に直接、1ウェル当たり、細胞懸濁液の液滴4μlを分注する。
2. 液滴が蒸発しないように、48ウェルMEAプレートのウェルの周囲に滅菌水2mlを添加する。水が48ウェルMEAプレートのウェルの中に入らないように注意する。プレートを傾けた時に水がウェル中に漏れるのを回避するために、細胞懸濁液をプレーティングした後に水を加えることもできる。48ウェルMEAプレートの湿潤環境を維持できれば、水の量は重要ではないだろう。
3. 滅菌済みのマイクロクライム・エンバイロメンタル・リッド(MicroClime Environmental lid)で48ウェルMEAプレートを覆い、37℃、5% CO2、湿度95%にした細胞培養用インキュベーター内で約40分インキュベートする。
4. 培地を加える前に、滅菌済みのチップを備えた12チャネルピペッターを装填し、必要があれば、48ウェルMEAプレートへの分注に応じて、チップを外す。
5. 急勾配(およそ75〜80°)になるようにプレートを傾ける。1ウェル当たり150μlの10μg/mlラミニン含有完全維持培地を、48ウェルMEAプレートの1列分のウェルの片側に、12チャネルピペッターを使って一度にゆっくりと加える。培地を勢いよく加えると接着しているニューロンがはがれる恐れがある。この工程ではタイミングが重要になる可能性がある。液滴が乾くと性能が落ちる可能性がある。それぞれのウェルに一度の全容量を入れずに、先に少量の培地を全ウェルに入れておいてもよい。
6. 48ウェルMEAプレートをゆっくりと、生物学的安全キャビネットの表面で水平に戻し、培地が液滴をゆっくりと覆うようにする。
7. 1ウェル当たりの最終容量が300μlになるまで工程5を繰り返す。
8. 滅菌済みマイクロクライム・エンバイロメンタル・リッドで48ウェルMEAプレートを覆い、37℃、5% CO2、湿度95%にした細胞培養用インキュベーター内でインキュベートする。
【0079】
48ウェルMEAプレート上でのアイセル(登録商標)ニューロンの維持
1. 10%のKSRと1×ペニシリン−ストレプトマイシンを加えたNBA培地(NBA+KSR培地)を準備する。0.22μmのフィルターで濾過する。必要に応じて、ペニシリン−ストレプトマイシンを最終濃度が1×となるように培地に加えてもよい。
2. プレーティングした1日後に、NBA+KSR培地を水浴中、37℃で平衡化する。
3. 培地を分注し、消費した培地を48ウェルMEAプレートの一列分のウェルから一度に除去するために、前述したように、滅菌済みのチップを備えた12チャネルピペッターを装填する。
4. 37℃のNBA+KSR培地を1ウェル当たり150μl、48ウェルMEAプレートの1列分のウェルの片側に、12チャネルピペッターを使って一度にゆっくりと加える。培地を勢いよく加えると接着しているニューロンがはがれる恐れがある。
5. 1ウェル当たりの最終容量が300μlになるまで工程4を繰り返す。
6. 滅菌済みマイクロクライム・エンバイロメンタル・リッドで48ウェルMEAプレートを覆い、37℃、5% CO2、湿度95%にした細胞培養用インキュベーター内で4日間インキュベートする。
7. プレーティングした5日後、消費した培地の50%(150μl/ウェル)を1ウェル当たり150μlの、新しい37℃のNBA+KSR培地で交換する。
8. 37℃、5% CO2、湿度95%にした細胞培養用インキュベーター内で3日間インキュベートする。最適性能を発揮するために、プレーティングした8日後にデータを収集することができる。
【0080】
データの解析と収集はAxISソフトウェア(アキシオン・インテグレーテッド・スタジオ、アキシオン・バイオシステムズ(AxionIntegratedStudio、AxionBioSystems))を使って行うことができる。プレーティング後8日目以降のニューロン調整物がデータ収集に好適である場合がある。データ収集には、処理前記録(基準)、化合物処理記録、続く、処理後記録(ドーズ)が含まれる場合がある。AxISソフトウェアを使って電気活性を収集してもよい。CDIニューロンコンフィグ.データストリーム(CDIneuronconfig.datastream)ファイルであれば、データ収集に適した設定がAxISソフトウェアにロードされることを確実とすることができる。
【0081】
実施例2
ヒトiPSC由来細胞型を用いたE/I比の決定による神経回路網バーストおよび同期性の調節
アイセル(登録商標)ニューロン:発明者らは、健常提供者または疾患特異的提供者から得た成人細胞を多能性状態にリプログラミングするためにiPSC技術を利用してきた。この状態では、iPS細胞は実質的に、これまでは扱うことができなかったヒトのニューロンを含む全ての細胞型に分化する能力を有する。重要なことは、アイセル(登録商標)ニューロンが凍結保存された材料として提供され、解凍でき、その週のいつでも使用できるということである。図1に、凍結保存したアイセル(登録商標)ニューロンを生成するための一般的な模式図を示す。
【0082】
細胞試料の特徴を以下に明らかにする。アイセル(登録商標)ニューロンは、ヒトiPSC由来皮質ニューロンの純度の高い集団(>95%)で、これがニューロンであるということはβIII−チューブリン陽性かつネスチン陰性の染色結果に基づいている。この細胞は古典的なニューロンの形態を有し、二極または多極の神経突起の伸長が培養1日目には始まる。これらの細胞は、抑制性ニューロン(GABA作動性;〜70%)と興奮性ニューロン(グルタミン酸作動性;〜30%)両方の混合物であると考えられており、またこれらは、特徴的な分子マーカーに関する遺伝子発現レベルや表現型解析によって分析されてきた。
【0083】
アイセル(登録商標)ドーパニューロン:ドーパミン作動性(DA)ニューロンは長期間培養することができる。2週間後には、かなりの程度の神経突起が成長し、この時点で形成される精巧な回路網は、古典的なニューロンの表現型を想起させる。アイセル(登録商標)ドーパニューロンの80%超がTH陽性である。アイセル(登録商標)ドーパニューロンもまた、抑制性ニューロン(GABA;〜30%)と興奮性ニューロン(グルタミン酸作動性;〜70%)両方の混合物である。ニューロンが興奮性ニューロンであるか抑制性ニューロンであるかの確認には免疫組織化学を用いた(図2)。
【0084】
これらの実験では、アイセル(登録商標)ドーパニューロン、アイセル(登録商標)ニューロン、およびアイセル(登録商標)アストロサイトをセルラー・ダイナミクス・インターナショナル社(Cellular Dynamics International Inc.、マジソン、ウィスコンシン)から入手し、混合して、実施例1で記述したようにMEAプレート上で培養した。細胞は、ソーク研究所(ラホーヤ、カリフォルニア)から入手したブレインフィズ(BrainPhys)培地(バーディら、2015)を使って培養した。
【0085】
これらの実験では、個々のニューロン型それぞれを再懸濁した後であって、打点(dot)する直前に、それぞれの細胞型を混合してE/I比を決定した。例えば、50%アイセル(登録商標)ドーパニューロン混合物を50%アイセル(登録商標)ニューロンと混合する場合、再懸濁したアイセル(登録商標)ドーパニューロン40マイクロリットル(uL)と、再懸濁したアイセル(登録商標)ニューロン40μlとを混合した。細胞型の混合が終わった後、この混合溶液をMEAプレートに打点した。
【0086】
ブレインフィズ(Brain Phys)培地はニューロン回路網の構築/安定化を助ける
アイセル(登録商標)ドーパニューロンを解凍後、維持培地(MM)またはブレインフィズ(BP)培地のいずれかを使い、〜12日間培養した。神経回路網の活動/結合性を図示するバースト動態の解析から、MM中で生育させた培養と比較して、BPで処理した培養の方が、より強固で安定した大きな回路網バーストを示すことが分かった。より具体的には、回路網の挙動は、MMで見られたより大きな回路網の活動を伴わない、強く、小さい回路網(単一チャネル)バーストから、大きく、培養全体を包含した(全チャネル)回路網バーストへと変化し、それでもなお、BPで処理した培養では、強く、小さい回路網(単一チャネル)バーストも見られた。解析および結果を図10に示す。
【0087】
E/I比の決定:EからIは脱同期化
抑制の量を増やしていった8つのウェルに関する例示的なラスタープロットおよびベロシティグラフ。E/I比は、アイセル(登録商標)ドーパニューロン(70:30、E:I%)とアイセル(登録商標)ニューロン(30:70)(各細胞型の%を各グラフの上に示した)を混合することで調整した。ベロシティグラフは、記録を行った4分間の500ミリ秒ごとの瞬間的な平均発火頻度を示している。同期回路網バーストは培養の6〜10日目に始まっている。結果を図3に示す。
【0088】
アキシオン社の神経測定(Neural Metrics)解析ツールボックスを使い、(各チャネル)平均発火頻度、チャネルバースト頻度(ポアソン・サプライズ)およびバースト強度ならびに(全チャネル)回路網バーストおよび各神経回路バーストに含まれるチャネルの数(増幅)を評価した。このツールボックスを使用して、記載のように混合した培養の全ウェルについて活動を評価した。阻害の量が増えると発火頻度とバースト頻度が低下したが、各バーストの強度には阻害による変化は見られなかったことに注目されたい。阻害が多量になると回路網バーストは完全に消失した。結果を図4に示す。
【0089】
E/I比の決定:IからEは高同期化
興奮の量を増やしたときの8ウェルに関する例示的な生データのトレースとベロシティグラフを示している。E/I比は、アイセル(登録商標)ニューロン(30:70、E:I%)とグルタミン酸作動性95(95:5、E:I%)細胞を混合することによって調整した。培養は数週間の間、同期回路網バーストを示し続けた。興奮の量が増えると回路網バーストが増大し(図5、枠内)、強度が高まることに注目されたい。また、興奮が閾値に達すると回路網の発作(seizures)の出現も注目に値する。結果を図5に示す。
【0090】
平均発火頻度、チャネルバースト頻度およびバースト強度はいずれも、異なるE/I比のピークと分布を示している。チャネルバーストと強度は、興奮レベルが上がると下がった。興奮がより少ない量で一定していた増幅レベルも、興奮が過剰になると低下したことに留意されたい。結果を図6に示す。
【0091】
アストロサイトを含む神経回路網は安定している
E/I比の決定で使用したものと同じ培養物を使用した。ただし、アイセル(登録商標)アストロサイトを細胞培養に添加した点が異なる。アイセル(登録商標)アストロサイト添加7日後の結果を図7に示す。アストロサイト添加後には、チャネルバースト頻度のE/I比分布が変化し、強度、回路網バーストおよび増大レベルは全E/I比にわたって標準化された。結果を図8に示す。
【0092】
発現しているE/I比が相同の(70:30)、例示的な2つのニューロン培養物(12日目)を図9に示す。アイセル(登録商標)ドーパニューロン(上段)は中脳ニューロンであり、グルタミン酸作動性(グルタミン酸作動性)70(下段)細胞型は皮質ニューロンである。両方の回路網が同程度の回路網バースト強度レベルを示したが、バースト後のノイズ(rumbling)レベルはアイセル(登録商標)ドーパニューロンでより顕著だったことに注目されたい。
【0093】
2つの例示的な興奮性の薬剤であるTHIP(上段)およびL−655,708(下段)がアイセル(登録商標)ドーパニューロン培養物に及ぼす影響を図11に示している。THIPは持続性抑制を活性化し、L−655,708は持続性抑制を低減する。いずれの薬剤でも回路網バースト強度は変化しなかったが、バースト後の挙動はいずれにおいても変化した。THIPによって、バースト全体の間隔とバースト後のノイズ(rumbling time)が短くなった。逆にL−655,708では「バーストが収まった後」の発火(after-quiet)が見られなくなり、回路網を脱同期化し、それによって、活動を支配する、継続的なノイズ活性が誘導された。
【0094】
培養したニューロンにおける同期バーストを観察した。MEAの同じウェル中になる全16電極の大部分において、同時に発火が見られた。これらの強いバーストの活動電位は、ニューロン回路網が形成されており、細胞が同期的に発火していることを示している。図12に示すように、ヒトiPS細胞由来ニューロン培養物でバースト表現型が観察された。図11の各グラフのy軸の目盛りに注意されたい。図13に示すように、異なる比率の興奮性ニューロンと抑制性ニューロンを多電極アレイ上で、例えばMEA中で共培養してもよい。
【0095】
本明細書で開示し、特許請求した全ての方法は、本開示を踏まえれば、過度の実験を行うことなく立案および実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様の観点から説明してきたが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法におよび本明細書に記載の方法の各工程に、または各工程の順序に様々な変更を適用可能であることが当業者には明らかである。より具体的には、同じまたは同様の結果が達成される限り、本明細書に記載に薬剤を、化学的および生理学的の両面で関連した特定の薬剤で置き換えてもよいことが明らかである。このような、当業者に明らかな相同の置き換えおよび変更は、添付の請求項で定義される本発明の精神、範囲および概念の範囲内にあると見なされる。
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に示す詳細の補足となる手続上の詳細の例または他の詳細の例を提供する範囲において、具体的に参照することによって本明細書に組み入れられる。
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図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
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