(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の傾斜部は、前記取り付け孔の壁面を前記弁体側から前記ストッパ側に向かって拡径させたものであり、前記第2の傾斜部は、前記ストッパの外周を前記弁軸の先端側から基端側に向かって縮径させたものであることを特徴とする請求項1記載のウェイストゲートバルブ。
前記第1の傾斜部および前記第2の傾斜部は、いずれか一方が湾曲した凸面を有し、他方が前記湾曲した凸面が嵌合する湾曲した凹面を有することを特徴とする請求項2記載のウェイストゲートバルブ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
1.第1の実施形態
本発明の第1の実施形態を説明する。
1−1.エンジンの全体構成
図1にターボチャージャー4を含むエンジン100の全体構成を示している。ここでは、一例として、四気筒エンジンの構成を示している。エンジン100は、給気通路1、排気通路2、エンジン本体3、ターボチャージャー4および制御部としてのECU5(Engine Control Unit)を備えている。
【0013】
給気通路1は、空気をエンジン本体3に供給する経路であり、外部から空気を吸入し加圧する給気管11とそれに接続する給気マニホールド12とを備えている。給気マニホールド12は四つに分岐してエンジン本体3の四つのシリンダ30に接続し、給気管11から吸入された空気をそれぞれのシリンダ30に供給する。給気管11には、外部からエンジン本体3に向かってエアクリーナ13、コンプレッサ14、およびインタークーラ15が設置されている。
【0014】
エアクリーナ13は、吸入する空気に含まれる塵または埃等の異物を除去する。コンプレッサ14は、空気を大気圧以上に加圧して、エンジン本体3における燃焼効率を高める。インタークーラ15はコンプレッサ14で加圧されて温度が上昇した空気を冷却する。
【0015】
エンジン本体3は、詳細な構成の説明および図示は省略するが、燃焼室を形成するシリンダブロックおよびシリンダヘッドと、燃料噴射装置を備えるものである。燃料噴射装置によって噴射された燃料が、燃焼室において空気と混合され、点火プラグによって着火し、燃焼する。燃焼後のガスは排気通路2に排出される。
【0016】
排気通路2は、エンジン本体3から排気された燃焼ガスを外部に排出する経路であり、4つのシリンダ30のそれぞれに接続し、排出された燃焼ガスを一つにまとめる排気マニホールド21と、それに接続する排気管22とを備える。排気管22には、タービン23が設置されている。タービン23は給気通路1に設置されたコンプレッサ14と回転軸RSによって連結されている。排気通路2には、タービン23をまたぐようにしてバイパス通路40が接続されている。バイパス通路40の入口はタービン23の上流側、出口はタービン23の下流側に接続されている。バイパス通路40には、バイパス通路40を開閉するウェイストゲートバルブ6が設置されている。タービン23、コンプレッサ14、バイパス通路40およびウェイストゲートバルブ6によって、ターボチャージャー4が構成される。
【0017】
エンジン本体3から排出された燃焼ガスによってタービン23が回転すると、回転軸RSで連結されたコンプレッサ14も回転して給気を圧縮する。すなわち、コンプレッサ14は排出する燃焼ガスのエネルギーを利用して、給気を圧縮する。コンプレッサ14によって圧縮されエンジン本体3に送り込まれる給気の圧力を過給圧というが、この過給圧が高くなり過ぎると、ノッキングが発生し、エンジン100の損傷を招く可能性がある。そのため、給気通路1のコンプレッサ14の下流側には、不図示の過給圧センサが設置されている。過給圧センサで検出される圧力に応じてウェイストゲートバルブ6を動作させ、バイパス通路40を開閉する。ウェイストゲートバルブ6を開くと、燃焼ガスの一部はバイパス通路40に流入するため、タービン23を通過せずに外部に排出される。このように、バイパス通路40を開閉することよって、タービン23を通る燃焼ガスの量を制御し、過給圧を調整する。
【0018】
ECU5は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROM等で構成されるマイクロコンピュータである。ECU5はエンジン100の各部の動作を制御するが、一例として、過給圧センサで検出される圧力に基づいて、ウェイストゲートバルブ6の開閉動作を制御する。
【0019】
1−2.ウェイストゲートバルブの構成
図2および
図3に、本実施形態のウェイストゲートバルブ6の構成を示している。
図2の(a)は、ウェイストゲートバルブ6の構成を示す平面図である。
図2の(b)は
図2の(a)の矢印Iで示す方向から見た側面図である。なお、
図2の(b)では、わかりやすくするために、バイパス通路40のみを断面で示している。
図3は
図2の(a)のII-II断面図である。
【0020】
ウェイストゲートバルブ6は、バイパス通路40を構成する配管の出口に配置されている。ウェイストゲートバルブ6は、バイパス通路40を開閉するバルブ7、バルブ7をバイパス通路40に対して接離する方向に移動させるアーム部材8、およびバルブ7に接続するストッパ9を備えている。なお、
図2および3はバルブ7がバイパス通路40の出口を閉塞している状態を示している。以降、ウェイストゲートバルブ6のバイパス通路40に近づく方向を下方向、バイパス通路40から離れる方向を上方向として説明する。
【0021】
バルブ7は、柱状の弁軸71と、弁軸71に固定され、バイパス通路40を閉塞する弁体72とを備えている。弁軸71は、基端部である大径部71aと先端部である小径部71bから構成される。小径部71bは、円錐台に、円錐台の小径面と同径の円柱を接続した形状である。大径部71aは小径部71bの円柱よりも大径の円柱である。大径部71aと小径部71bは同軸に配置され、大径部71aの一端面に小径部71bの円柱の端面が固定されている。大径部71aの小径部71bが固定された端面とは反対側の端面に、弁体72が固定されている。大径部71aが下側、小径部71bが上側に配置されている。すなわち、弁軸71の先端とは小径部71bの上面であり、弁軸71の基端とは大径部71aの底面である。
【0022】
弁体72は傘型の部材であり、言い換えると、下方に向かって拡径した円錐台で、底面に凹部(不図示)を有している。弁体72の上面が、弁軸71の基端、すなわち大径部71aの底面に同軸に固定されている。弁体72の上面の径は、取り付け孔82の径よりも大きい。弁体72の底面の径は、バイパス通路40の出口よりも大きく、出口を覆って密閉できるようになっている。
【0023】
アーム部材8は、バルブ7を支持する支持部82、支持部82を駆動するアクチュエータ83、支持部82とアクチュエータ83を接続する軸部81とを備えている。支持部82の先端部は円柱形状であり、その先端部に取り付け孔82aが形成されている。
図2および
図3に示す状態では、支持部82は、バイパス通路40を閉塞する弁体72に接触している。支持部82の取り付け孔82aは、円柱形状の先端部を上面から底面に軸方向に貫通するように設けられている。取り付け孔82aの壁面の径は、弁軸71の大径部71aの径よりも大きく、弁体72の上面の径よりも小さい。取り付け孔82aに、弁軸71の大径部71aが隙間を介して挿通される。アクチュエータ83は、軸部81および軸部81に接続された支持部82を、上下方向、すなわちバイパス通路40に接離する方向に移動させる。
【0024】
弁軸71の取り付け孔82aから突出した先端部分には、リング状のストッパ9が設けられている。具体的には、ストッパ9は弁軸71の小径部71bの円柱の外周に固定されている。実施の形態では、便宜上、ストッパ9とバルブ7を別体として説明するが、ストッパ9とバルブ7は鍛造工法等により一体的に成形することができる。一体成形の場合は、弁軸71の小径部71bの円柱部分とストッパ9が一体化する。なお、ストッパ9とバルブ7を別々に製造して、双方を接着剤や固定具等を用いて固定することも可能である。
【0025】
ストッパ9の外周は、大径部71aの径より大きく、外周部分が大径部71aの外方に張り出す。張り出した部分は弁軸71の軸線(
図3の一点鎖線)に対して直交する方向に延び、アーム部8の支持部82に隙間を介して対向している。
【0026】
図3に示すように、ストッパ9の外周部には、傾斜部SIが形成されている。傾斜部SIは、ストッパ9が張り出す方向、すなわち弁軸71の軸線の直交方向(
図3の二点差線)に対して直線状に傾斜した円錐面を持つ。言い換えると、傾斜部SIは、ストッパ9の外周を弁軸71の先端側から基端側に向かってテーパー状に縮径させた形状である。傾斜部SIの表面はローレット加工が施されたローレット面、あるいは段付き加工が施された段付き面である。
【0027】
支持部82の、取り付け孔82aのストッパ9側外周部には、傾斜部AIが形成されている。傾斜部AIは傾斜部SIの下に位置する。傾斜部AIは傾斜部SIと同様に、弁軸71の軸線の直交方向(
図3の二点差線)に対して直線状に傾斜した円錐面を持つ。言い換えると、傾斜部AIは、取り付け孔82aの壁面を弁体72側からストッパ9側に向かって拡径させた形状である。バルブ7がバイパス通路40の出口を閉塞している状態では、傾斜部SIと傾斜部AIは隙間を介して対向する。傾斜部AIの表面は、ローレット加工が施されたローレット面、あるいは段付き加工が施された段付き面である。
【0028】
傾斜部SIと傾斜部AIは、弁軸71の軸線の直交方向に対して、同じ傾斜角度αを有する。傾斜部SIの外径は傾斜部AIの内径より大きい。また、傾斜部SIと傾斜部AIは少なくとも一部が、弁軸71の先端側から見て重なり合う位置に配置されるが、傾斜部SIと傾斜部AIは特定の大きさに限られない。例えば、傾斜部SIの外径は傾斜部AIの外径よりも小さくても良く、その場合、弁軸71の先端側から見たとき、傾斜部SIの全体が傾斜部AIによって形成されるすり鉢状の領域内に収まる。また、例えば、傾斜部SIの外径は傾斜部AIの外径よりも大きくても良い。その場合、弁軸71の先端側から見たとき、傾斜部AIは、ストッパ9に完全に覆われる。
【0029】
1−3.作用
エンジン100およびターボチャージャー4の作用については簡単に前述したので、詳しい説明は省略する。ここでは、本実施形態のウェイストゲートバルブ6の作用について説明する。
【0030】
図2および
図3に示すように、ウェイストゲートバルブ6が閉弁されている状態では、バルブ7の弁体72がバイパス通路40の出口を閉塞している。また、アーム部材8はバルブ7の弁軸71およびストッパ9に所定の隙間を介して対向した状態であり、接触していない。弁体72がバイパス通路40を閉塞するために、支持部82と弁体72は接触した状態となる。
【0031】
図4および
図5に、バイパス通路40の開放時のウェイストゲートバルブ6の動作を示している。
図4の(a)はウェイストゲートバルブ6平面図である。
図4の(b)は
図4の(a)の矢印IIIで示す方向から見た側面図である。
図5は
図4の(a)のIV-IV断面図である。
【0032】
ウェイストゲートバルブ6を開弁する際には、アクチュエータによってアーム部材8が駆動され、バイパス通路40から離間する方向、すなわち上方向に移動する。支持部82は、上方向の移動によって弁体72から離れて、ストッパ9に接触する。前記したように、傾斜部SIの下に傾斜部AIが位置し、傾斜部SIおよび傾斜部AIの傾斜角度α(
図3参照)は同じである。よって、支持部82の傾斜部AIが、ストッパ9の第1の傾斜部SIに接触して支持する。傾斜部AIが傾斜部SIを支持したまま、アーム部材8が上方向へ移動を続けることによって、ストッパ9とストッパ9に固定されたバルブ7も上方向に移動する。これによって、バイパス通路40を閉塞していたバルブ7の弁体72がバイパス通路40の出口から離れ、
図4の(b)に示すように、バイパス通路40が開放される。
【0033】
ウェイストゲートバルブ6を閉弁する際には、アーム部材8をバイパス通路40に近づく方向、すなわち下方向に移動させる。アーム部材8に支持されたバルブ7も下方向に移動し、弁体72がバイパス通路40の出口に着座してバイパス通路40を閉塞する。弁体72の着座により、バルブ7およびストッパ9はそれ以上移動しない。アーム部材8はさらに下方向に移動する。アーム部材8は、支持部82が弁体72と接触し、かつストッパ9と所定の隙間離間する位置で、停止する。
【0034】
エンジン本体3からバイパス通路40に流入した燃焼ガスGAはバイパス通路40の出口から排出される。排出された燃焼ガスGAは出口の上方に位置するバルブ7に向かって吹き付け、さらにバルブの径方向に流れる。
【0035】
上述したように、バルブ7はアーム部材8に固定されているわけではなく、ストッパ9を介して支持部82の上面に支持されているに過ぎない。そして、バルブ7の弁軸71と取り付け孔82aの間には隙間が設けられている。そのため、
図5に示すように、吹き付けられた燃焼ガスGAによって煽られたバルブ7とバルブ7に固定されたストッパ9は、取り付け孔82a内で径方向に揺動する。揺動によって、バルブ7の弁軸とストッパ9がアーム部材8に衝突する。燃焼ガスGAが吹き付ける間は、揺動と衝突が持続する。衝突が繰り返されることによって、いわゆるチャタリングが発生する。揺動が多くなると衝突の回数も多くなり、チャタリングが騒音につながる可能性が大きくなる。
【0036】
図6に、バイパス通路40の開放時におけるストッパ9の揺動の振れ幅を模式的に示している。ストッパ9は、ある一点P
1でアーム部材8と接触した後、揺動して最初の接触点P
1に対向する一点P
2でアーム部材8と再び接触する。すなわち、ストッパ9の揺動の振れ幅は、アーム部材8とストッパ9の一方の接触点P
1から他方の接触点P
2の範囲となる。本実施形態では、ストッパ9の傾斜部SIはアーム部材8の傾斜部AIによって形成されるすり鉢状の領域に収まるように配置されているため、接触点P
1,P
2は、傾斜部AIと傾斜部SIの面上に位置する。
【0037】
ここで、比較例となるウェイストゲートバルブ600を
図7(a)に示している。比較例のウェイストゲートバルブ600は、アーム部材800とストッパ900に傾斜部AIと傾斜部SIを設けていない。そのため、ストッパ900の底面の張り出した部分とアーム部材800の支持部820の上面は、弁軸の直交方向に平行に延びる。開弁時にアーム部材800が上方向に上昇すると、支持部820の上面がストッパ900の張り出し部分の底面に接触してストッパ900を支持し、ストッパ900およびバルブ700を上方向に移動させる。この比較例において、開弁時にアーム部材800とストッパ900が接触する面積を、本実施形態の傾斜部AIと傾斜部SIの接触面積と同じにするためには、ストッパ900の外径を本実施形態よりも大きくする必要がある。本実施形態では、ストッパ9の外径は支持部820の径よりも小さいが、比較例のストッパ900の外径は、支持部820の径と同じとなっている。ストッパ900の外径を大きくしたことによって、
図7(b)に示すように、ストッパ900の揺動の振れ幅、すなわちアーム部材800とストッパ900の接触点P
10からP
20の範囲は、本実施形態よりも大きくなる。
【0038】
すなわち、本実施形態のウェイストゲートバルブ6は、アーム部材8とストッパ9の接触する部分を傾斜部AIおよび傾斜部SIとしたことによって、接触部の面積は維持しつつストッパ9の外径を小さくすることができ、結果として、揺動の振れ幅を小さくしている。また、アーム部材8の傾斜部AIによって形成されるすり鉢状の領域内に、ストッパ9の傾斜部SIが収まるため、ストッパ9がアーム部材8の傾斜部AIを超えた範囲で揺動することが防止される。また、傾斜部AIおよび傾斜部SIの傾斜角度α(
図3参照)が同じであるため、傾斜部AIおよび傾斜部SIが面接触しやすくなる。これによって、バイパス通路40の開放時に、アーム部材8がストッパ9およびバルブ7を確実に支持する。また、傾斜部AIおよび傾斜部SIの接触時に生じる摩擦によって、バルブ7とストッパ9の揺動自体も抑制されやすくなる。さらに、本実施形態では、傾斜部AIおよび傾斜部SIの傾斜面はローレット面あるいは段付き面である。そのため、傾斜部AIおよび傾斜部SIの接触摩擦はさらに増加する。これによって、バルブ7とストッパ9の揺動がさらに抑制される。
【0039】
1−4.効果
(1)以上詳述したように、本実施形態のウェイストゲートバルブ6は、弁軸71と、弁軸71の基端に接続され、エンジン本体3から排出された燃焼ガスが通過するバイパス通路40を閉塞する弁体72とを有するバルブ7と、弁軸71が隙間を介して挿通される取り付け孔82aが設けられた支持部82と、支持部82をバイパス通路40に接離する方向に移動させるアクチュエータ83とを有するアーム部材8と、弁軸71の取り付け孔82aから突出した先端部分に設けられ、弁軸71の軸線の直交方向に張り出すストッパ9と、を備える。支持部82の取り付け孔82aのストッパ9側外周部に、弁軸71の軸線の直交方向に対して傾斜する傾斜部AI(第1の傾斜部)を設けた。ストッパ9に、弁軸71の軸線の直交方向に対して傾斜し、支持部82をバイパス通路40から離間する方向に移動させた際に、傾斜部AIと支持部82に接触する傾斜部SI(第2の傾斜部)を設けた。アーム部材8をバイパス通路40から離間する方向に移動させると、傾斜部AIが傾斜部SIに接触し、ストッパ9がアーム部材8の支持部82に支持されてバイパス通路40から離間する方向に移動し、弁体72がバイパス通路40を開放する。具体的には、傾斜部SIは、ストッパ9の外周を弁軸71の先端側から基端側に向かって縮径させたものであり、傾斜部AIは、取り付け孔82aの壁面を弁体72側からストッパ9側に向かって拡径させたものである。
【0040】
ストッパ9とアーム部材8の接触面を傾斜部SIおよび傾斜部AIとしたことにより、バルブ7を支持するための接触面積を維持しつつストッパ9の外径を小さくすることができる。たとえば、ストッパ9の外径を、アーム部材8の支持部82の径よりも小さくしてもよい。ストッパ9の外径を小さくすることによって、バイパス通路40を開放した際の、ストッパ9およびバルブ7の揺動の振れ幅を低減することができる。これによって、追加の部品を必要とせずに、チャタリングによる騒音の発生を防止する。また、ストッパ9の径を小さくすることができるため、材料コストも低減でき、経済性に優れたウェイストゲートバルブ6を提供することができる。また、本発明のウェイストゲートバルブ6を使用したエンジン100の快適性を向上させることができる。
【0041】
(2)傾斜部SIおよび傾斜部AIは、弁軸71の軸線の直交方向に対して同じ傾斜角度αを持つ円錐面を有する。これによって、バイパス通路40の開放時に傾斜部SIおよび傾斜部AIが面接触しやすくなり、アーム部材8がストッパ9およびバルブ7を確実に支持する。また、傾斜部SIおよび傾斜部AIの接触時に生じる摩擦によって、バルブ7とストッパ9の揺動自体も抑制されやすくなる。
【0042】
(3)傾斜部SIの少なくとも一部は、弁軸71の先端側から見て、傾斜部AIによって形成される領域に収まるようにしても良い。これによって、ストッパ9がアーム部材8の傾斜部AIを超えた範囲で揺動し、揺動の振れ幅が大きくなることを防止することができる。
【0043】
(4)傾斜部SIおよび傾斜部AIはローレット面または段付き面である。そのため、傾斜部SIおよび傾斜部AIの接触時に生じる摩擦力がさらに増加する。これによって、バルブ7とストッパ9の揺動をさらに抑制することができる。
【0044】
2.第2の実施形態
第2の実施形態のウェイストゲートバルブ6について説明する。なお、前述の実施形態とは異なる点のみを説明し、前述の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
図8に示すように、第2の実施形態のウェイストゲートバルブ6は、アーム部材8の支持部82の取り付け孔82aの弁体72側の端部に、取り付け孔82aの壁面を拡径させた拡径部Cが形成されている。拡径部Cは、具体的にはストッパ9側から弁体72側に向かって取り付け孔82aの壁面を連続的に拡径させたものである。拡径部Cは円環状であり、傾斜部AIと反対の方向へ傾斜した直線状の円錐面を有している。すなわち、拡径部Cは支持部82の底面側の下端が最大径となり、弁軸71の先端側の上端が最小径となっている。
【0046】
第1の実施形態で説明したように、バイパス通路40の開放時、バルブ7とストッパ9が取り付け孔82a内で揺動して、バルブ7の弁軸71とストッパ9がアーム部材8に衝突する。第1の実施形態では
図6を用いてストッパ9の揺動の態様を説明した。一方、バルブ7の弁軸71と取り付け孔82aの接触点は、
図9に示すように、弁軸71とアーム部材8の支持部82のある接触点P
3から、接触点P
3に対向する他方の接触点P
4の範囲で揺動する。
【0047】
比較のために、
図10に、拡径部Cを設けなかった場合のバルブ7の揺動の態様を示している。拡径部Cを設けなかった場合は、アーム部材8と弁軸71の下部に接触点P
3、P
4が位置する。揺動の中心点P
0は接触点P
3とP
4の中間位置となる。ここで、バルブ重心Gはバルブ7の軸中心上の、弁体72の内部に位置する。
図10において、バルブ重心Gと揺動の中心点P
0は近接した位置にある。
【0048】
図9に戻り、第2の実施形態では、アーム部材8の下部に拡径部Cを設けたことにより、拡径部Cを設けなかった場合と比較して、アーム部材8と弁軸71の接触点P
3からP
4が上方に移動する。接触点P
3,P
4が上方に移動したことにより、揺動の中心点P
0も上方に移動し、バルブ重心Gから遠ざかる。
【0049】
テコの原理に照らし合わせると、揺動の中心点P
0がバルブ重心Gから離れることは支点と作用点の距離が離れることを意味する。すなわち、バルブ7を揺動させるのに必要なエネルギーが増加し、揺動自体が抑制される。大きな抑制効果を得るためには、接触点P
3,P
4をできるだけ上方に移動させることが望ましい。しかしながら、取り付け孔82aの壁面の、傾斜部AIと拡径部Cを除いた部分、すなわち弁軸71の軸線(
図8の一点鎖線)と平行な壁面は、ストッパ9とバルブ7の支持のために一定の長さを確保する必要がある。よって、拡径部Cの長さは、取り付け孔82aの壁面に必要とされる長さを考慮して適宜決定することができる。
【0050】
以上申し述べたように、第2の実施形態のウェイストゲートバルブ6は、アーム部材8の、取り付け孔82aの弁体72側の端部に、取り付け孔82aの壁面を拡径させた拡径部Cを設けた。拡径部Cによって、バルブ7の揺動中心点P
0が、バルブ重心Gに対して離れる。傾斜部AIおよび傾斜部SIによるストッパ9の揺動の振れ幅の低減に加えて、拡径部Cによりバルブ7の揺動の発生自体を抑制することできる。これによって、騒音の発生を抑制することでき、快適性を向上させたエンジン100を提供することができる。
【0051】
3.その他の実施形態
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではない。本発明の実際に際しては、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置き換え、変更を行うことができる。
【0052】
例えば、
図1ではエンジン100の構造として4気筒エンジンを示したが、あくまで一例であり、たとえば6気筒エンジン等の他の構造のエンジンにも、本発明のウェイストゲートバルブ6は適用することができる。
【0053】
第1の実施形態では傾斜部AIおよび傾斜部SIの双方がローレット面または段付き面である例を説明したが、いずれか一方のみをローレット面または段付き面としても良い。この場合でも、接触摩擦を増加させ、バルブ7の揺動を抑制することができる。
【0054】
第1の実施形態では、傾斜部AIおよび傾斜部SIの傾斜角度αを同じにすることで、バイパス通路40の開放時に傾斜部AIおよび傾斜部SIが面接触しやすくするようにしたが、これに限られない。バイパス通路40の開放時にアーム部材8がストッパ9を支持するのに必要な接触面積を確保できれば良く、傾斜角度αに違いがあっても良い。
【0055】
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した傾斜部AIおよび傾斜部SIを形成したウェイストゲートバルブ6に対して、拡径部Cをさらに形成したが、これに限られない。たとえば、傾斜部AIおよび傾斜部SIを設けないウェイストゲートバルブ6に対して拡径部Cのみを形成しても良い。この場合も、揺動の中心点P
0とバルブ重心Gを遠ざけることで、揺動を抑制することができる。
【0056】
第1の実施形態では、傾斜部AIおよび傾斜部SIが直線状の傾斜面である例を説明したが、傾斜部AIおよび傾斜部SIは弁軸の軸線の直交方向に傾斜するものであれば良く、直線状の傾斜面に限られない。例えば、
図11に示すように、傾斜部AIおよび傾斜部SIは湾曲した傾斜面を有しても良い。この場合、傾斜部AIおよび傾斜部SIが面接触しやすいように、例えば、傾斜部SIを凸面とし、傾斜部AIは凸面が嵌合する凹面としても良い。もちろん、傾斜部AIを凸面、傾斜部SIを凹面としても良い。
【0057】
第2の実施形態では、拡径部Cをストッパ9側から弁体72側に向かって連続的に拡径する直線状の傾斜面である例を説明したが、これに限られない。拡径部Cは、取り付け孔82aの弁体72側の端部を拡径させるものであれば良い。よって、拡径部は、例えば直線状の傾斜面ではなく、湾曲した傾斜面としても良い。また、
図12に示すように、拡径部Cは、取り付け孔82aの径を一段階で最大径まで拡径したものであっても良い。この場合、拡径部Cは弁軸71の軸線(一点鎖線)と平行な面を有する。なお、
図12に示すように、拡径部Cの外縁に面取り加工を行うことによって、面取り部Sを設けても良い。図示していないが、
図8に示した拡径部Cの外縁にも面取り加工を行って、面取り部Sを設けても良い。