特許第6761491号(P6761491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6761491硬化性組成物、硬化物および硬化性組成物の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761491
(24)【登録日】2020年9月8日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物および硬化性組成物の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20200910BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20200910BHJP
   C08K 5/5455 20060101ALI20200910BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20200910BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20200910BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20200910BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20200910BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20200910BHJP
【FI】
   C08L83/04
   C08K5/548
   C08K5/5455
   C08K5/541
   H01L23/30 F
   H01L21/56 J
   H01L33/56
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-565(P2019-565)
(22)【出願日】2019年1月7日
(62)【分割の表示】特願2015-537988(P2015-537988)の分割
【原出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2019-90031(P2019-90031A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2019年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-195837(P2013-195837)
(32)【優先日】2013年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】松井 優美
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 幹広
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−221393(JP,A)
【文献】 特開2014−177570(JP,A)
【文献】 特開2011−063663(JP,A)
【文献】 特開2009−185131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/04
C08K 5/541
C08K 5/5455
C08K 5/548
H01L 21/56
H01L 23/29
H01L 23/31
H01L 33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分と(B)成分とを、(A)成分と(B)成分の質量比で、〔(A)成分:(B)成分〕=100:0.1〜100:50の割合で含有し、
さらに、下記の(D)成分、紫外線吸収剤、光安定剤、及び希釈剤から選ばれるその他の成分の一種又は二種以上を含有することを特徴とする硬化性組成物。
(A)成分:下記式(a−1)
【化1】
〔式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、及び無置換若しくは置換基を有する炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を表し、Zは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。mは正の整数を表し、n、oはそれぞれ独立して、0または正の整数を表す。R同士、Z同士は、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示される、重量平均分子量が、1,000〜20,000であるシラン化合物重合体
(B)成分:下記式(b−1)〜式(b−4)
【化2】
〔式中、Y、Yは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、A、Aは、それぞれ独立に、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、R’は、炭素数1〜20の1価の有機基を表す。pは、1〜4の整数を表す。Y同士、Y同士は、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
のいずれかで示される、分子内に、硫黄原子含有官能基を有するシランカップリング剤
(D)成分:分子内に、酸無水物構造を有するシランカップリング剤
【請求項2】
さらに、下記の(C)成分含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
(C)成分:分子内に、窒素原子含有官能基を有するシランカップリング剤
【請求項3】
前記(C)成分のシランカップリング剤が、下記式(c−3)〜式(c−6)のいずれかで示される化合物である、請求項2に記載の硬化性組成物。
【化3】
〔式中、Rは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、又は無置換若しくは置換基を有するアリール基を表す。複数のR同士、R同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。tは、1〜10の整数を表す。〕
【請求項4】
前記(C)成分を、前記(A)成分と(C)成分の質量比で、〔(A)成分:(C)成分〕=100:0.3〜100:30の割合で含有する、請求項2又は3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記その他の成分の少なくとも一種が、下記の(D)成分である、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
(D)成分:分子内に、酸無水物構造を有するシランカップリング剤
【請求項6】
前記(D)成分のシランカップリング剤が、3−〔トリ(炭素数1〜6)アルコキシシリル〕プロピル無水コハク酸である、請求項〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記(D)成分を、前記(A)成分と(D)成分の質量比で、〔(A)成分:(D)成分〕=100:0.3〜100:30の割合で含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
光素子固定材用組成物である請求項1〜のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
光素子固定材である請求項に記載の硬化物。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の硬化性組成物を、光素子固定材用接着剤として使用する方法。
【請求項12】
請求項1〜のいずれかに記載の硬化性組成物を、光素子固定材用封止剤として使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、耐熱性、接着性に優れ、かつ、温度変化に対する耐久性にも優れる硬化物が得られる硬化性組成物、この組成物を硬化してなる硬化物、並びに、前記組成物を光素子用接着剤又は光素子用封止剤として使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、硬化性組成物は、光素子封止体を製造する際に、光素子用接着剤や光素子用封止剤等の光素子固定材用組成物として利用されてきている。
光素子には、半導体レーザー(LD)等の各種レーザーや発光ダイオード(LED)等の発光素子、受光素子、複合光素子、光集積回路等がある。近年においては、発光のピーク波長がより短波長である青色光や白色光の光素子が開発され広く使用されてきている。このような発光のピーク波長の短い発光素子の高輝度化が飛躍的に進み、これに伴い光素子の発熱量がさらに大きくなっていく傾向にある。
【0003】
ところが、近年における光素子の高輝度化に伴い、光素子固定材用組成物の硬化物が、より高いエネルギーの光や光素子から発生するより高温の熱に長時間晒されることで、劣化して接着力が低下するという問題が生じた。
【0004】
この問題を解決するべく、特許文献1〜3において、ポリシルセスキオキサン化合物を主成分とする光素子固定材用組成物が提案されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたポリシルセスキオキサン化合物を主成分とする光素子固定材用組成物の硬化物であっても、十分な接着力を保ちつつ、耐熱性及び透明性を得るのが困難な場合があった。
【0005】
また、近年における光素子の高輝度化及び長寿命化に伴い、用いる光素子固定材は、温度変化に対する耐久性にも優れることが重要になってきている。
従って、透明性、耐熱性、接着性に優れ、かつ、温度変化に対する耐久性にも優れる硬化物が得られる硬化性組成物の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−359933号公報
【特許文献2】特開2005−263869号公報
【特許文献3】特開2006−328231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、透明性、耐熱性、接着性に優れ、かつ、温度変化に対する耐久性にも優れる硬化物が得られる硬化性組成物、この組成物を硬化してなる硬化物、並びに、前記組成物を光素子用接着剤又は光素子用封止剤として使用する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、以下に述べるように、特定のシラン化合物重合体と、分子内に、硫黄原子含有官能基を有するシランカップリング剤とを特定の割合で含有する組成物は、透明性、耐熱性及び接着性に優れ、かつ、温度変化に対する耐久性にも優れる硬化物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、下記〔1〕〜〔7〕の硬化性組成物、〔8〕、〔9〕の硬化物、〔10〕、〔11〕の硬化性組成物の使用方法が提供される。
【0010】
〔1〕下記の(A)成分と(B)成分とを、(A)成分と(B)成分の質量比で、〔(A)成分:(B)成分〕=100:0.1〜100:50の割合で含有することを特徴とする硬化性組成物。
(A)成分:下記式(a−1)
【0011】
【化1】
【0012】
〔式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、及び無置換若しくは置換基を有する炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を表し、Zは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。mは正の整数を表し、n、oはそれぞれ独立して、0または正の整数を表す。R同士、Z同士は、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示される、重量平均分子量が、1,000〜20,000であるシラン化合物重合体
(B)成分:下記式(b−1)〜式(b−4)
【0013】
【化2】
【0014】
〔式中、Y、Yは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、A、Aは、それぞれ独立に、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、R’は、炭素数1〜20の1価の有機基を表す。pは、1〜4の整数を表す。Y同士、Y同士は、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
のいずれかで示される、分子内に、硫黄原子含有官能基を有するシランカップリング剤
〔2〕さらに、下記の(C)成分、下記の(D)成分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、及び希釈剤から選ばれるその他の成分を含有する、〔1〕に記載の硬化性組成物。
(C)成分:分子内に、窒素原子含有官能基を有するシランカップリング剤
(D)成分:分子内に、酸無水物構造を有するシランカップリング剤
〔3〕前記(C)成分のシランカップリング剤が、下記式(c−3)〜式(c−6)のいずれかで示される化合物である、〔2〕に記載の硬化性組成物。
【0015】
【化3】
【0016】
〔式中、Rは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、又は無置換若しくは置換基を有するアリール基を表す。複数のR同士、R同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。tは、1〜10の整数を表す。〕
〔4〕前記(C)成分を、前記(A)成分と(C)成分の質量比で、〔(A)成分:(C)成分〕=100:0.3〜100:30の割合で含有する、〔2〕又は〔3〕に記載の硬化性組成物。
〔5〕前記(D)成分のシランカップリング剤が、3−〔トリ(炭素数1〜6)アルコキシシリル〕プロピル無水コハク酸である、〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔6〕前記(D)成分を、前記(A)成分と(D)成分の質量比で、〔(A)成分:(D)成分〕=100:0.3〜100:30の割合で含有する、〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔7〕光素子固定材用組成物である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の硬化性組成物。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
〔9〕光素子固定材である〔8〕に記載の硬化物。
〔10〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の硬化性組成物を、光素子固定材用接着剤として使用する方法。
〔11〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の硬化性組成物を、光素子固定材用封止剤として使用する方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の硬化性組成物によれば、透明性、耐熱性、接着性に優れ、かつ、温度変化に対する耐久性にも優れる硬化物を得ることができる。
本発明の硬化性組成物は、光素子固定材を形成する際に使用することができ、特に、光素子用接着剤、及び光素子用封止剤として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、1)硬化性組成物、2)硬化物、及び、3)硬化性組成物の使用方法、に項分けして詳細に説明する。
【0019】
本発明の硬化性組成物は、下記の(A)成分と(B)成分とを、(A)成分と(B)成分の質量比で、〔(A)成分:(B)成分〕=100:0.1〜100:50の割合で含有することを特徴とする。
【0020】
(A)成分(シラン化合物重合体(A))
本発明の硬化性組成物に用いる(A)成分は、下記式(a−1)で示されるシラン化合物重合体(A)である。
【0021】
【化4】
【0022】
前記式(a−1)において、式:−(RSiO3/2)−で表される繰り返し単位、式:−(RSiZO2/2)−で表される繰り返し単位、及び、式:−(RSiZ1/2)−で表される繰り返し単位は、それぞれ、下記(a11)〜(a13)で表すことができる。なお(a11)〜(a13)において、「−O−」は、隣接する2つのSi原子に共有されている酸素原子を表す。
【0023】
【化5】
【0024】
前記式(a−1)中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、及び無置換若しくは置換基を有する炭素数6〜20のアリール基から選ばれる基を表し、Zは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。mは正の整数を表し、n、oはそれぞれ独立して、0または正の整数を表す。R同士、Z同士は、互いに同一でも、異なっていてもよい。
【0025】
本発明に用いるシラン化合物共重合体(A)において、前記式(a−1)中、m、n、oがそれぞれ2以上のとき、前記式(a11)〜(a13)で表される繰り返し単位同士はそれぞれ、同一であっても相異なっていてもよい。
【0026】
の、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
【0027】
の、炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0028】
の、無置換若しくは置換基を有する炭素数6〜20のアリール基のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。アリール基の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、t−ブチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、Rとしては炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。
【0030】
Zは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。
炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
これらの中でも、Zは水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、水酸基又は炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましい。
mは正の整数を表し、n、oはそれぞれ独立して、0または正の整数を表す。
【0031】
シラン化合物重合体(A)は、単独重合体(Rが一種の重合体)であっても、共重合体(Rが二種以上の重合体)であってもよい。
シラン化合物重合体(A)が共重合体である場合、シラン化合物重合体(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等のいずれの共重合体であってもよい。また、シラン化合物重合体(A)の構造は、ラダー型構造、ダブルデッカー型構造、籠型構造、部分開裂籠型構造、環状型構造、ランダム型構造のいずれの構造であってもよい。
【0032】
シラン化合物重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜30,000の範囲であり、より好ましくは1,200〜20,000であり、特に好ましくは1,500〜15,000の範囲である。このような範囲内の重量平均分子量を有するシラン化合物重合体(A)を用いることで、透明性、耐熱性、接着性により優れる硬化物が得られる硬化性組成物を得ることができる。
重量平均分子量(Mw)は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0033】
シラン化合物重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限されないが、通常1.0〜8.0、好ましくは1.5〜7.0の範囲であり、特に好ましくは3.0〜6.0の範囲である。このような範囲内の分子量分布を有するシラン化合物重合体(A)を用いることで、透明性、耐熱性、接着性により優れる硬化物が得られる硬化性組成物を得ることができる。
【0034】
シラン化合物重合体(A)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
シラン化合物重合体(A)の製造方法は特に限定されない。例えば、以下のように、式(1):RSi(OR(X3−uで示されるシラン化合物(1)を縮合させることにより、シラン化合物重合体(A)を製造することができる。ここで、「縮合」は、加水分解及び重縮合反応を含む広い概念で用いている。
【0036】
式(1)中、Rは前記と同じ意味を表す。Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、uは0〜3の整数を表す。
【0037】
の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
uが2以上のとき、OR同士は同一であっても相異なっていてもよい。また、(3−u)が2以上のとき、X同士は同一であっても相異なっていてもよい。
【0038】
シラン化合物(1)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリプロポキシシラン、n−プロピルトリブトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン化合物類;
【0039】
シクロプロピルトリメトキシシラン、シクロプロピルトリエトキシシラン、シクロプロピルトリプロポキシシラン、シクロブチルトリメトキシシラン、シクロブチルトリエトキシシラン、シクロブチルトリプロポキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリプロポキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリプロポキシシラン、シクロオクチルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリエトキシシラン、シクロオクチルトリプロポキシシラン等のシクロアルキルトリアルコキシシラン化合物類;
【0040】
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリプロポキシシラン、4−メチルフェニルトリメトキシシラン、4−メチルフェニルトリエトキシシラン、4−メチルフェニルトリプロポキシシラン、2−クロロフェニルトリメトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン化合物類;
【0041】
メチルクロロジメトキシシラン、メチルクロロジエトキシシラン、メチルジクロロメトキシシラン、メチルブロモジメトキシシラン、エチルクロロジメトキシシラン、エチルクロロジエトキシシラン、エチルジクロロメトキシシラン、エチルブロモジメトキシシラン、n−プロピルクロロジメトキシシラン、n−プロピルジクロロメトキシシラン、n−ブチルクロロジメトキシシラン、n−ブチルジクロロメトキシシラン等のアルキルハロゲノアルコキシシラン化合物類;
【0042】
シクロプロピルクロロジメトキシシラン、シクロプロピルクロロジエトキシシラン、シクロプロピルジクロロメトキシシラン、シクロプロピルブロモジメトキシシラン、シクロブチルクロロジメトキシシラン、シクロブチルクロロジエトキシシラン、シクロブチルジクロロメトキシシラン、シクロブチルブロモジメトキシシラン、シクロペンチルクロロジメトキシシラン、シクロヘキシルクロロジメトキシシラン、シクロオクチルクロロジメトキシシラン等のシクロアルキルハロゲノアルコキシシラン化合物類;
【0043】
フェニルクロロジメトキシシラン、フェニルクロロジエトキシシラン、フェニルジクロロメトキシシラン、フェニルブロモジメトキシシラン、ナフチルクロロジメトキシシラン、ナフチルクロロジエトキシシラン、ナフチルジクロロメトキシシラン、ナフチルブロモジメトキシシラン、4−メチルフェニルクロロジメトキシシラン、4−メチルフェニルジクロロメトキシシラン、4−メチルフェニルブロモジメトキシシラン、2−クロロフェニルクロロジメトキシシラン等のアリールハロゲノアルコキシシラン化合物類;
【0044】
メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリトリクロロシラン、エチルトリブロモシラン、n−プロピルトリクロロシラン、n−プロピルトリブロモシラン、n−ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、n−ペンチルトリクロロシラン、n−ヘキシルトリクロロシラン、イソオクチルトリクロロシラン等のアルキルトリハロゲノシラン化合物類;
【0045】
シクロプロピルトリクロロシラン、シクロプロピルトリブロモシラン、シクロブチルトリクロロシラン、シクロブチルトリブロモシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリブロモシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリブロモシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、シクロオクチルトリブロモシラン等のシクロアルキルトリハロゲノシラン化合物類;
【0046】
フェニルトリクロロシラン、フェニルトリブロモシラン、ナフチルトリクロロシラン、ナフチルトリブロモシラン、4−メチルフェニルトリクロロシラン、4−メチルフェニルトリブロモシラン、2−クロロフェニルトリクロロシラン等のアリールトリハロゲノシラン化合物類;等が挙げられる。
これらのシラン化合物(1)は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
これらの中でも、シラン化合物(1)としては、接着性により優れる硬化物が得られる硬化性組成物を得ることができることから、アルキルトリアルコキシシラン化合物類、シクロアルキルトリアルコキシシラン化合物類、又はアリールトリアルコキシシラン化合物類が好ましい。
【0048】
前記シラン化合物(1)を縮合させる方法としては、特に限定されないが、シラン化合物(1)を溶媒に溶解し、所定量の触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法が挙げられる。
【0049】
用いる触媒は、酸触媒及び塩基触媒のいずれであってもよい。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸;等が挙げられる。
【0050】
塩基触媒としては、アンモニア水、トリメチルアミン、トリエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、アニリン、ピコリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、イミダゾール等の有機塩基;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。
【0051】
触媒の使用量は、シラン化合物の総モル量に対して、通常、0.1mol%〜10mol%、好ましくは1mol%〜5mol%の範囲である。
【0052】
用いる溶媒は、シラン化合物の種類等に応じて、適宜選択することができる。例えば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、或いは二種以上を混合して用いることができる。
【0053】
溶媒の使用量は、溶媒1リットルあたり、シラン化合物の総モル量が、通常0.1mol〜10mol、好ましくは0.5mol〜10molとなる量である。
【0054】
シラン化合物を縮合(反応)させるときの温度は、通常0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは20℃〜100℃の範囲である。反応温度があまりに低いと縮合反応の進行が不十分となる場合がある。一方、反応温度が高くなりすぎるとゲル化抑制が困難となる。反応は、通常30分から20時間で完結する。
【0055】
反応終了後は、酸触媒を用いた場合は、反応溶液に炭酸水素ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加することにより、塩基触媒を用いた場合は、反応溶液に塩酸等の酸を添加することにより中和を行い、その際に生じる塩をろ別又は水洗等により除去し、目的とするシラン化合物重合体を得ることができる。
【0056】
上記方法により、シラン化合物重合体(A)を製造する際、シラン化合物(1)のOR又はXのうち、脱水及び/又は脱アルコールされなかった部分は、シラン化合物重合体(A)中に残存する。すなわち、残存するOR又はXが1つである場合は、前記式(a−1)において、(CHR−D−SiZO2/2)として残存し、残存するOR又はXが2つである場合は、式(a−1)において、(CHR−D−SiZ1/2)として残存する。
【0057】
(B)成分(分子内に、硫黄原子含有官能基を有するシランカップリング剤)
本発明の硬化性組成物は、(B)成分として、分子内に、硫黄原子含有官能基を有するシランカップリング剤(以下、「シランカップリング剤(B)」ということがある。)を含む。本発明の硬化性組成物は、シランカップリング剤(B)を含有するため、その硬化物は、透明性、耐熱性、接着性に優れ、かつ、温度変化に対する耐久性にも優れるものとなる。
【0058】
シランカップリング剤(B)としては、分子内に、チオール基(−SH);アシルチオ基(−S−CO−R’);スルフィド基(−S−);ジスルフィド基(−S−S−)、テトラスルフィド基(−S−S−S−S−)等のポリスルフィド基〔−(S)−〕;等の硫黄原子含有官能基を有するシランカップリング剤であれば特に制限はない。
【0059】
シランカップリング剤(B)としては、下記式(b−1)〜式(b−4)のいずれかで示されるシランカップリング剤や、硫黄原子含有官能基を有するその他のシランカップリング剤が挙げられる。
【0060】
【化6】
【0061】
〔式中、Y、Yは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、A、Aは、それぞれ独立に、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、R’は、炭素数1〜20の1価の有機基を表す。は、1〜4の整数を表す。Y同士、Y同士は、互いに同一であっても相異なっていてもよい。〕
【0062】
、Yの、炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
、Yとしては、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましい。
【0063】
、Aの、無置換若しくは置換基を有する炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、(アルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基)とアリーレン基との組み合わせからなる炭素数7〜20の2価の基等が挙げられる。
【0064】
炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基等が挙げられる。
炭素数6〜20のアリーレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、2,6−ナフチレン基等が挙げられる。
【0065】
これらの炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、及び炭素数2〜20のアルキニレン基が有する置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。
【0066】
前記炭素数6〜20のアリーレン基の置換基としては、シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。
これらの置換基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアリーレン基等の基において任意の位置に結合していてよく、同一若しくは相異なって複数個が結合していてもよい。
【0067】
無置換若しくは置換基を有する(アルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基)と無置換若しくは置換基を有するアリーレン基との組み合わせからなる2価の基としては、前記無置換若しくは置換基を有する(アルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基)の少なくとも一種と、前記無置換若しくは置換基を有するアリーレン基の少なくとも一種とが直列に結合した基等が挙げられる。具体的には、下記式で表される基等が挙げられる。
【0068】
【化7】
【0069】
これらの中でも、A、Aとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。
【0070】
R’としては、−CO−R’が保護基として機能し得るものであれば特に制限されない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等のアルキル基;無置換若しくは置換基を有するフェニル基;等が挙げられる。
R’の無置換若しくは置換基を有するフェニル基の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;が挙げられる。
R’としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。
は、1〜4の整数を表し、1、2又は4が好ましく、2又は4がより好ましい。
【0071】
式(b−1)で示されるシランカップリング剤としては、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン類が挙げられる。
【0072】
式(b−2)で示されるシランカップリング剤としては、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン等のアルカノイルチオアルキルトリアルコキシシラン化合物類が挙げられる。
【0073】
式(b−3)で示されるシランカップリング剤としては、2−トリメトキシシリルエチルスルファニルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルスルファニルトリエトキシシラン、2−トリエトキシシリルエチルスルファニルトリメトキシシラン、2−トリエトキシシリルエチルスルファニルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルスルファニルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルスルファニルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピルスルファニルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピルスルファニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0074】
式(b−4)で示されるシランカップリング剤としては、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド等のジスルフィド化合物;ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のテトラスルフィド化合物;等が挙げられる。
【0075】
硫黄原子含有官能基を有するその他のシランカップリング剤としては、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド等のチオカルバモイル基含有シランカップリング剤;3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等のベンゾチアゾリル基含有シランカップリング剤;3−トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートモノスルフィド等の(メタ)アクリレート基含有シランカップリング剤〔「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。〕;ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ポリスルフィド等のポリスルフィド基含有シランカップリング剤;等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、本発明の(B)成分としては、式(b−1)又は式(b−3)で示されるシランカップリング剤が好ましく、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン等の、式(b−1)中、Yが炭素数1〜10のアルコキシ基であるシランカップリング剤、又は、2−トリメトキシシリルエチルスルファニルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルスルファニルトリエトキシシラン、2−トリエトキシシリルエチルスルファニルトリメエトキシシラン、2−トリエトキシシリルエチルスルファニルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルスルファニルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルスルファニルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピルスルファニルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピルスルファニルトリエトキシシラン等の、式(b−3)中、Y及びYが炭素数1〜10のアルコキシ基であるシランカップリング剤がより好ましく、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン又は3−トリメトキシシリルプロピルスルファニルトリエトキシシランがさらに好ましい。
シランカップリング剤(B)は、1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
(A)成分と(B)成分との含有割合(質量比)は、〔(A)成分〕:〔(B)成分〕=100:0.1〜100:50、好ましくは100:0.4〜100:20であり、特に好ましくは100:0.8〜100:13である。
このような割合で(A)成分及び(B)成分を含有する硬化性組成物の硬化物は、透明性、耐熱性、接着性に優れ、かつ、温度変化に対する耐久性にも優れるものとなる。
【0078】
本発明の硬化性組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記成分に、さらに他の成分を含有させてもよい。
他の成分としては、下記の(C)成分(分子内に、窒素原子含有官能基を有するシランカップリング剤)、(D)成分(分子内に、酸無水物構造を有するシランカップリング剤)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈剤等が挙げられる。
【0079】
(C)成分は、分子内に、窒素原子含有官能基を有するシランカップリング剤(以下、「シランカップリング剤(C)」ということがある。)である。
(B)成分に加えて、(C)成分を含有する硬化性組成物の硬化物は、透明性、耐熱性、接着性により優れるものとなる。
【0080】
シランカップリング剤(C)としては、分子内に窒素原子を有するものであれば特に制限はなく、例えば、下記式(c−1)又は式(c−2)で示されるシラン化合物が挙げられる。
【0081】
【化8】
【0082】
上記式中、Rは、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。複数のR同士は同一であっても相異なっていてもよい。
炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
これらの中でも、Rは、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましい。
【0083】
は、炭素数1〜6のアルキル基、又は無置換若しくは置換基を有するアリール基を表す。
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
無置換若しくは置換基を有するアリール基としては、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基等が挙げられる。
【0084】
は、窒素原子を有する、炭素数1〜10の有機基を表す。また、Rは、さらに他のケイ素原子を含む基と結合していてもよい。
の炭素数1〜10の有機基の具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピル基、3−アミノプロピル基、N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)アミノプロピル基、3−ウレイドプロピル基、N−フェニル−アミノプロピル基等が挙げられる。
【0085】
前記式(c−1)又は(c−2)で表される化合物のうち、Rが、他のケイ素原子を含む基と結合した有機基である場合の化合物としては、イソシアヌレート骨格を介して他のケイ素原子と結合してイソシアヌレート系シランカップリング剤を構成するものや、ウレア骨格を介して他のケイ素原子と結合してウレア系シランカップリング剤を構成するものが挙げられる。
【0086】
これらの中でも、より高い接着力を有する硬化物が得られる観点から、イソシアヌレート系シランカップリング剤、及びウレア系シランカップリング剤が好ましく、さらに、Rで表される基を4以上有するものが好ましい。
【0087】
で表される基を4以上有するイソシアヌレート系シランカップリング剤としては、下記式(c−3)又は下記式(c−4)で示される化合物が挙げられる。
で表される基を4以上有するウレア系シランカップリング剤としては、下記式(c−5)又は下記式(c−6)で示される化合物が挙げられる。
【0088】
【化9】
【0089】
式中、R、Rは、前記と同じ意味を表す。複数のR同士、R同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
tは、1〜10の整数を表し、1〜6の整数であるのが好ましく、3であるのが特に好ましい。
式:−(CH)−Si(Rで表される基同士、又は式:−(CH)−Si(R(R)で表される基同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
【0090】
式(c−3)で表される化合物の具体例としては、1,3,5−N−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−トリイソプロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−トリブトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等の、1,3,5−N−トリス〔(トリ(炭素数1〜6)アルコキシ)シリル(炭素数1〜10)アルキル〕イソシアヌレート;
1,3,5−N−トリス(3−トリクロロシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5,−N−トリス(3−トリクロロシリルプロピル)イソシアヌレート等の1,3,5−N−トリス〔トリハロゲノシリル(炭素数1〜10)アルキル〕イソシアヌレート;等が挙げられる。
【0091】
式(c−4)で表される化合物の具体例としては、1,3,5−N−トリス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジメトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジメトキシイソプロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジメトキシn−プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジエトキシイソプロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジエトキシn−プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジイソプロポキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジイソプロポキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジイソプロポキシイソプロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジイソプロポキシn−プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジブトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジブトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジブトキシイソプロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジブトキシn−プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート等の、1,3,5−N−トリス{〔ジ(炭素数1〜6)アルコキシ〕〔(炭素数1〜6)アルキル〕シリル(炭素数1〜10)アルキル}イソシアヌレート;
1,3,5−N−トリス(3−ジメトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジエトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジイソプロポキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−ジブトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート等の、1,3,5−N−トリス{〔ジ(炭素数1〜6)アルコキシ〕〔(炭素数6〜20)アリール〕シリル(炭素数1〜10)アルキル}イソシアヌレート;等が挙げられる。
【0092】
式(c−5)で表される化合物の具体例としては、N,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’−ビス(3−トリプロポキシシリルプロピル)ウレア、N,N’−ビス(3−トリブトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’−ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ウレア等のN,N’−ビス〔(トリ(炭素数1〜6)アルコキシシリル)(炭素数1〜10)アルキル〕ウレア;
N,N’−ビス(3−トリクロロシリルプロピル)ウレア、N,N’−ビス(3−トリブロモシリルプロピル)ウレア等のN,N’−ビス〔トリハロゲノシリル(炭素数1〜10)アルキル〕ウレア;等が挙げられる。
【0093】
式(c−6)で表される化合物の具体例としては、N,N’−ビス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)ウレア、N,N’−ビス(3−ジメトキシエチルシリルプロピル)ウレア、N,N’−ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)ウレア等のN,N’−ビス〔(ジ(炭素数1〜6)アルコキシ(炭素数1〜6)アルキルシリル(炭素数1〜10)アルキル)ウレア;
N,N’−ビス(3−ジメトキシフェニルシリルプロピル)ウレア、N,N’−ビス(3−ジエトキシフェニルシリルプロピル)ウレア等のN,N’−ビス〔(ジ(炭素数1〜6)アルコキシ(炭素数6〜20)アリールシリル(炭素数1〜10)アルキル)ウレア;
N,N’−ビス(3−ジクロロメチルシリルプロピル)ウレア等のN,N’−ビス〔ジハロゲノ(炭素数1〜6)アルキルシリル(炭素数1〜10)アルキル)ウレア;
N,N’−ビス(3−ジクロロフェニルシリルプロピル)ウレア等のN,N’−ビス〔ジハロゲノ(炭素数6〜20)アリールシリル(炭素数1〜10)アルキル)ウレア;等が挙げられる。
【0094】
これらは、1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、(C)成分としては、1,3,5−N−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ウレア、又は、N,N’−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ウレアを用いるのが好ましく、1,3,5−N−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート又は1,3,5−N−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを用いるのが特に好ましい。
【0095】
(C)成分を用いる場合、(A)成分と(C)成分との含有割合(質量比)は、〔(A)成分〕:〔(C)成分〕=100:0.3〜100:30が好ましく、100:5〜100:20がより好ましい。
このような割合で(C)成分を配合することにより、本発明の硬化性組成物の硬化物は、透明性、耐熱性、接着性により優れ、かつ、温度変化に対する耐久性により優れるものとなる。
【0096】
(D)成分は、分子内に、酸無水物構造を有するシランカップリング剤(以下、「シランカップリング剤(D)」ということがある。)である。
(B)成分に加えて、(D)成分を含有する硬化性組成物の硬化物は、透明性、耐熱性、接着性により優れるものとなる。
【0097】
シランカップリング剤(D)としては、下記式(d−1)で示されるシランカップリング剤が挙げられる。
【0098】
【化10】
【0099】
式中、Qは酸無水物構造を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、又は無置換若しくは置換基を有するフェニル基を表し、Rは水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。iは1〜3の整数を表し、jは0〜2の整数を表し、kは1〜3の整数を表し、i+j+k=4である。複数のQ同士、R同士、R同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
Qとしては、下記式
【0100】
【化11】
【0101】
(式中、hは0〜10の整数を表す。)で表される基等が挙げられ、(Q1)で表される基が特に好ましい。
【0102】
の、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
の、無置換若しくは置換基を有するフェニル基としては、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基等が挙げられる。
【0103】
の、炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
の、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
これらの中でも、Rは、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましい。
なかでも、式(d−1)で表される化合物としては、下記式(d−2)
【0104】
【化12】
【0105】
(式中、R、h、i、j、kは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物が好ましい。式中、hは2〜8であるのが好ましく、2又は3であるのがより好ましく、3であるのが特に好ましい。
【0106】
式(d−2)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、2−(トリメトキシシリル)エチル無水コハク酸、2−(トリエトキシシリル)エチル無水コハク酸、3−(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸、3−(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸等の、トリ(炭素数1〜6)アルコキシシリル(炭素数2〜8)アルキル無水コハク酸;
2−(ジメトキシメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ジ(炭素数1〜6)アルコキシメチルシリル(炭素数2〜8)アルキル無水コハク酸;
2−(メトキシジメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、(炭素数1〜6)アルコキシジメチルシリル(炭素数2〜8)アルキル無水コハク酸;
【0107】
2−(トリクロロシリル)エチル無水コハク酸、2−(トリブロモシリル)エチル無水コハク酸等の、トリハロゲノシリル(炭素数2〜8)アルキル無水コハク酸;
2−(ジクロロメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ジハロゲノメチルシリル(炭素数2〜8)アルキル無水コハク酸;
2−(クロロジメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ハロゲノジメチルシリル(炭素数2〜8)アルキル無水コハク酸;等が挙げられる。
【0108】
これらの中でも、トリ(炭素数1〜6)アルコキシシリル(炭素数2〜8)アルキル無水コハク酸が好ましく、3−(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸、3−(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸が特に好ましい。
シランカップリング剤(D)は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
(D)成分を用いる場合、(A)成分と(D)成分との含有割合(質量比)は、〔(A)成分〕:〔(D)成分〕=100:0.3〜100:30が好ましく、100:0.5〜100:10がより好ましい。
このような割合で(D)成分を配合することにより、本発明の硬化性組成物の硬化物は、透明性、耐熱性、接着性により優れ、かつ、温度変化に対する耐久性により優れるものとなる。
【0110】
酸化防止剤は、加熱時の酸化劣化を防止するために添加される。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0111】
リン系酸化防止剤としては、ホスファイト類、オキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール類、ビスフェノール類、高分子型フェノール類等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0112】
これら酸化防止剤は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の使用量は、(A)成分に対して、通常、10質量%以下である。
【0113】
紫外線吸収剤は、得られる硬化物の耐光性を向上させる目的で添加される。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤の使用量は、(A)成分に対して、通常、10質量%以下である。
【0114】
光安定剤は、得られる硬化物の耐光性を向上させる目的で添加される。
光安定剤としては、例えば、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}]等のヒンダードアミン類等が挙げられる。
【0115】
光安定剤は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
光安定剤の使用量は、(A)成分に対して、通常、10質量%以下である。
【0116】
希釈剤は、硬化性組成物の粘度を調整するため添加される。
希釈剤としては、例えば、グリセリンジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイド等が挙げられる。
これらの希釈剤は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0117】
本発明の硬化性組成物は、例えば、前記(A)、(B)成分、及び、所望により他の成分を所定割合で配合して、公知の方法により混合、脱泡することにより得ることができる。
【0118】
以上のようにして得られる本発明の硬化性組成物によれば、高エネルギーの光が照射される場合や高温状態に置かれた場合であっても、長期にわたって優れた透明性及び高い接着力を有するとともに、温度変化に対する耐久性にも優れる硬化物を得ることができる。
したがって、本発明の硬化性組成物は、光学部品や成形体の原料、接着剤、コーティング剤等として好適に使用される。特に、光素子の高輝度化に伴う、光素子固定材の劣化に関する問題を解決することができることから、本発明の硬化性組成物は、光素子固定用組成物として好適に使用することができる。
【0119】
2)硬化物
本発明の第2は、本発明の硬化性組成物を硬化してなる硬化物である。
本発明の硬化性組成物を硬化する方法としては加熱硬化が挙げられる。硬化するときの加熱温度は、通常、100〜200℃であり、加熱時間は、通常10分から20時間、好ましくは30分から10時間である。
【0120】
本発明の硬化物は、透明性、耐熱性、接着性に優れ、かつ、温度変化に対する耐久性にも優れるものである。
【0121】
本発明の硬化物が透明性に優れることは、光透過率を測定することで確認することができる。硬化物の光透過率は、例えば、波長400nm、450nmの光で、80%以上が好ましい。
【0122】
本発明の硬化物は、高い接着力及び優れた耐熱性を有することは、例えば、次のようにして接着力を測定することで確認することができる。すなわち、シリコンチップのミラー面に硬化性組成物を塗布し、塗布面を被着体の上に載せ圧着し、加熱処理して硬化させる。これを、予め所定温度(例えば、23℃、100℃)に加熱したボンドテスターの測定ステージ上に30秒間放置し、被着体から50μmの高さの位置より、接着面に対し水平方向(せん断方向)に応力をかけ、試験片と被着体との接着力を測定する。
硬化物の接着力は、23℃および100℃において35N/2mm□以上であることが好ましく、80N/2mm□以上であることがより好ましい。
【0123】
本発明の硬化物が温度変化に対する耐久性に優れることは、上記の接着力測定の試験片と同様の方法により試験片付被着体を作製し、この試験片付被着体を用いて、温度サイクル試験を行った後、上記と同様の方法により接着力を測定することで確認することができる。
具体的には、−40℃で30分間維持後、100℃で30分間維持する操作を1サイクルとし、100サイクル繰り返す温度サイクル試験後に、試験片と被着体との接着力を23℃において測定したときに、その接着力が、温度サイクル試験を行っていない試験片の23℃における接着力に比べて、30%以上に維持されることが好ましく、60%以上に維持されることがより好ましい。
【0124】
本発明の硬化物は、例えば、光学部品や成形体の原料、接着剤、コーティング剤、封止材等として好適に使用される。特に、本発明の硬化物は、光素子の高輝度化に伴う光素子固定材の劣化に関する問題を解決することができることから、光素子固定材として好適に使用することができる。
【0125】
3)硬化性組成物の使用方法
本発明の第3は、本発明の硬化性組成物を、光素子用接着剤又は光素子用封止剤等の光素子固定材用組成物として使用する方法である。
光素子としては、LED、LD等の発光素子、受光素子、複合光素子、光集積回路等が挙げられる。
【0126】
〈光素子用接着剤〉
本発明の硬化性組成物は、光素子用接着剤として好適に使用することができる。
本発明の硬化性組成物を光素子用接着剤として使用する方法としては、接着の対象とする材料(光素子とその基板等)の一方又は両方の接着面に該組成物を塗布し、圧着した後、加熱硬化させ、接着の対象とする材料同士を強固に接着させる方法が挙げられる。
【0127】
光素子を接着するための主な基板材料としては、ソーダライムガラス、耐熱性硬質ガラス等のガラス類;セラミックス;鉄、銅、アルミニウム、金、銀、白金、クロム、チタン及びこれらの金属の合金、ステンレス(SUS302、SUS304、SUS304L、SUS309等)等の金属類;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ガラスエポキシ樹脂等の合成樹脂;等が挙げられる。
【0128】
加熱硬化させる際の加熱温度は、用いる硬化性組成物等にもよるが、通常、100〜200℃である。加熱時間は、通常10分から20時間、好ましくは30分から10時間である。
【0129】
〈光素子用封止剤〉
本発明の硬化性組成物は、光素子封止体の封止剤として好適に用いることができる。
本発明の硬化性組成物を光素子用封止剤として使用する方法としては、例えば、該組成物を所望の形状に成形して、光素子を内包した成形体を得た後、そのものを加熱硬化させることにより光素子封止体を製造する方法等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物を所望の形状に成形する方法としては、特に限定されるものではなく、通常のトランスファー成形法や、注型法等の公知のモールド法を採用できる。
【0130】
加熱硬化する際の加熱温度は、用いる硬化性組成物等にもよるが、通常、100〜200℃である。加熱時間は、通常10分から20時間、好ましくは30分から10時間である。
【0131】
得られる光素子封止体は、本発明の硬化性組成物を用いているので、光素子に、白色や青色発光LED等の、発光のピーク波長が400〜490nmと短波長のものを用いても、熱や光により着色劣化することがない透明性、耐熱性に優れるものである。
【実施例】
【0132】
次に実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0133】
(重量平均分子量測定)
下記製造例で得たシラン化合物重合体の重量平均分子量(Mw)は標準ポリスチレン換算値とし、以下の装置及び条件にて測定した。
装置名:HLC−8220GPC、東ソー社製
カラム:TSKgelGMHXL、TSKgelGMHXL、及び、TSKgel2000HXLを順次連結したもの
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:80μl
測定温度:40℃
流速:1ml/分
検出器:示差屈折計
【0134】
(IRスペクトルの測定)
製造例で得たシラン化合物重合体のIRスペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(Spectrum100、パーキンエルマー社製)を使用して測定した。
【0135】
(製造例1)
300mlのナス型フラスコに、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業社製)71.37g(400mmol)を仕込んだ後、内容物を撹拌しながら、リン酸0.20g(2mmol)を蒸留水21.6mlに溶解して得たリン酸水溶液を30℃で加えた。リン酸水溶液の添加後、30℃で2時間、次いで、70℃で5時間、内容物の撹拌を続けた。
次いで、水層のpHが4になるまで、有機層を精製水にて繰り返し洗浄した後、有機層をエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物を真空乾燥することにより、シラン化合物重合体1を53.5g得た。シラン化合物重合体1の重量平均分子量は8780、分子量分布は5.25であった。
【0136】
シラン化合物重合体1のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−CH:1272cm−1,1409cm−1,Si−O:1132cm−1
【0137】
(製造例2)
100mlのナス型フラスコに、エチルトリエトキシシラン(東京化成工業社製)9.62g(50mmol)を仕込んだ後、内容物を撹拌しながら、リン酸0.025g(0.25mmol)を蒸留水2.7mlに溶解して得たリン酸水溶液を30℃で加えた。リン酸水溶液の添加後、30℃で2時間、次いで、70℃で5時間、内容物の撹拌を続けた。
次いで、水層のpHが4になるまで、有機層を精製水にて繰り返し洗浄した後、有機層をエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物を真空乾燥することにより、シラン化合物重合体2を5.9g得た。シラン化合物重合体2の重量平均分子量は2150、分子量分布は1.96であった。
【0138】
シラン化合物重合体2のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−CH−:1253cm−1,1415cm−1,−CH:2882cm−1,2964cm−1,Si−O:1132cm−1
【0139】
(製造例3)
100mlのナス型フラスコに、プロピルトリエトキシシラン(東京化成工業社製)10.32g(50mmol)を仕込んだ後、内容物を撹拌しながら、リン酸0.025g(0.25mmol)を蒸留水2.7mlに溶解して得たリン酸水溶液を30℃で加えた。リン酸水溶液の添加後、30℃で2時間、次いで、70℃で5時間、内容物の撹拌を続けた。
次いで、水層のpHが4になるまで、有機層を精製水にて繰り返し洗浄した後、有機層をエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物を真空乾燥することにより、シラン化合物重合体3を6.2g得た。シラン化合物重合体3の重量平均分子量は2560、分子量分布は1.85であった。
【0140】
シラン化合物重合体3のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si−CH−:1253cm−1,1415cm−1,−CH:2958cm−1,2872cm−1,−CH−:2931cm−1,Si−O:1132cm−1
【0141】
(実施例1)
製造例1で得たシラン化合物重合体1 100部(質量部、以下同じ)に、(B)成分として、3−(トリメトキシシリル)プロピルスルファニルトリエトキシシラン0.5部を加え、全容を十分に混合、脱泡することにより硬化性組成物1を得た。
【0142】
(実施例2〜32、比較例1〜5)
第1表に示す割合で各成分を用いたことを除き、実施例1と同様にして実施例2〜32、比較例1〜5の硬化性組成物2〜32、1r〜5rを得た。
第1表中の(A1)〜(A3)、(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)は以下の通りである。
【0143】
(A1):シラン化合物重合体1
(A2):シラン化合物重合体2
(A3):シラン化合物重合体3
(B1):3−(トリメトキシシリル)プロピルスルファニルトリエトキシシラン
(B2):3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
(C1):1,3,5−N−トリス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕イソシアヌレート
(C2):N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリルプロピル)〕ウレア
(D1):3−(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物
【0144】
【表1】
【0145】
実施例1〜32及び比較例1〜5で得た硬化性組成物1〜32、1r〜5rの硬化物につき、下記のようにして、接着力、温度サイクル試験後の接着力、透過率を測定し、接着性、耐熱性(高温接着性)、温度変化に対する耐久性、透明性を確認した。測定結果及び評価を下記第2表に示す。
【0146】
(接着力試験)
2mm角のシリコンチップのミラー面に、実施例1〜32及び比較例1〜5で得た硬化性組成物1〜32、1r〜5rのそれぞれを厚さが約2μmになるよう塗布し、塗布面を被着体(銀メッキ銅板)の上に載せ圧着した。その後、170℃で2時間加熱処理して硬化させて試験片付被着体を得た。この試験片付被着体を、予め所定温度(23℃、100℃)に加熱したボンドテスター(シリーズ4000、デイジ社製)の測定ステージ上に30秒間放置し、被着体から50μmの高さの位置より、スピード200μm/sで接着面に対し水平方法(せん断方向)に応力をかけ、23℃及び100℃における、試験片と被着体との接着力(N/2mm□)を測定した。
【0147】
(温度変化に対する耐久性評価)
上記の接着力測定に用いた試験片付被着体と同様の試験片付被着体を作製し、この試験片付被着体を用いて、冷熱衝撃装置(TSA−71S、エスペック社製)にて−40℃で30分間維持後、100℃で30分間維持する操作を100サイクル繰り返した。前記温度サイクル試験後、上記と同様の方法により試験片と被着体との接着力を測定した。
温度サイクル試験後の試験片と被着体との接着力が、上記の接着力試験で得た、23℃における接着力を基準として、60%以上であるときを「A」、30%以上60%未満であるときを「B」、30%未満であるときを「C」と評価した。
【0148】
(透過率の測定)
実施例1〜32及び比較例1〜5で得た硬化性組成物1〜32、1r〜5rのそれぞれを、長さ25mm、幅20mm、厚さ1mmとなるように鋳型に流し込み、140℃で6時間加熱して硬化させ、試験片をそれぞれ作製した。得られた試験片につき、分光光度計(MPC−3100、島津製作所社製)にて、波長400nm、450nmの透過率(%)を測定した。
【0149】
【表2】
【0150】
第2表から以下のことが分かる。
実施例1〜32で得られた硬化性組成物の硬化物は、接着力、温度変化に対する耐久性、透明性に優れている。特に、(B)成分、(C)成分、(D)成分を併用することで、より接着力に優れたものとなる。
一方、比較例1〜5で示されるように、(B)成分を含有しない硬化性組成物の硬化物は、接着力、温度変化に対する耐久性に劣っている。