特許第6761566号(P6761566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6761566-研磨パッド 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761566
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/00 20120101AFI20200917BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   B24B37/00 K
   H01L21/304 622F
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-197113(P2015-197113)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-64884(P2017-64884A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082108
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 博仁
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】松岡 立馬
(72)【発明者】
【氏名】三國 匠
(72)【発明者】
【氏名】大掛 航
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−066977(JP,A)
【文献】 特表2008−539093(JP,A)
【文献】 特開2006−111700(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0127955(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00−37/24
B24D 3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ウレタンからなる研磨層を有した研磨パッドにおいて、
上記研磨層は、TDI、DEG、PTMGを配合したプレポリマーとポリアミン硬化剤により形成されたものであって、
上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30と90℃における貯蔵弾性率E’90との比(E’30/E’90)が8.5以上であり、
上記研磨層に対して歪0.001、測定周波数10rad/secとし、温度を−50から150℃(5℃/min)に変化させる加熱・冷却工程を行った場合における、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’30−1と、歪0.001、測定周波数10rad/secとし、温度を−50から150℃(5℃/min)に変化させる加熱・冷却工程を1回以上経た、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30−2との比(E’30−2/E’30−1)、および上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’90−1と1回以上の上記加熱・冷却工程を経た上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率E’90−2との比(E’90−2/E’90−1)が、いずれも1.15〜1.22の範囲内であることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
上記研磨層の40℃における貯蔵弾性率E’ 40が100MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
上記研磨層はポリウレタンポリウレア樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドに関し、より詳しくは硬質ウレタンからなる研磨層を有した研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学材料や半導体基板、ハードディスク用のガラス基板といった被研磨物を研磨するために研磨パッドが用いられており、このような研磨パッドとしてポリウレタンなどの硬質ウレタンを用いた研磨パッドが知られている。
ここで、温度変化に対する安定性が高い研磨パッドとして、30℃〜90℃における貯蔵弾性率の比(E’30/E’90)を相対的に小さな1〜3.6の範囲となるようにした研磨パッドが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−507076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記研磨パッドにおいては、30℃〜90℃における貯蔵弾性率の比(E’30/E’90)が相対的に小さいので、研磨層が高温となっても低温時と同様に相対的に大きな貯蔵弾性率が維持されることになる。したがって研磨中に想定される温度範囲(30℃〜90℃)に対して、安定性に優れた研磨パッドとなる。また、上記研磨パッドにおいては、半導体材料の絶縁体部分と導線部分とで材料が異なるために生じるディッシングという問題を解決するために、40℃における貯蔵弾性率を100〜2000MPaとする研磨パッドが開示されている。
しかしながら、30℃〜90℃の範囲に亘って大きな貯蔵弾性率が維持されると、研磨層と被研磨物との間に研磨くずが介在された際には、該研磨くずが硬い研磨層によって被研磨物に強く押圧されるようになるので、該被研磨物の表面にスクラッチが生じ易くなっていた。
本発明は上述した事情に鑑み、ディッシングが生じにくく、かつスクラッチが生じにくく、さらに研磨レートに優れた研磨パッドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる研磨パッドは、硬質ウレタンからなる研磨層を有した研磨パッドにおいて、
上記研磨層は、TDI、DEG、PTMGを配合したプレポリマーとポリアミン硬化剤により形成されたものであって、
上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30と90℃における貯蔵弾性率E’90との比(E’30/E’90)が8.5以上であり、
上記研磨層に対して歪0.001、測定周波数10rad/secとし、温度を−50から150℃(5℃/min)に変化させる加熱・冷却工程を行った場合における、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’30−1と、歪0.001、測定周波数10rad/secとし、温度を−50から150℃(5℃/min)に変化させる加熱・冷却工程を1回以上経た、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30−2との比(E’30−2/E’30−1)、および上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’90−1と1回以上の上記加熱・冷却工程を経た上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率E’90−2との比(E’90−2/E’90−1)が、いずれも1.15〜1.22の範囲内であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率は30℃の貯蔵弾性率に比較して1/5以下の小さな貯蔵弾性率となり、90℃における貯蔵弾性率は相対的に小さな貯蔵弾性率となって柔らかくなるので、スクラッチを効果的に抑制することができる。
その理由は次の通りであると考えられる。
すなわち、被研磨物の研磨は、上述したように一般的には40℃前後の温度で行われるが、研磨パッドと被研磨物との間に研磨くずが介在されると、その研磨くずによって研磨パッドが局部的に高温になる。研磨パッドが高温になっても大きな貯蔵弾性率を有する場合には、上述したように研磨パッドは相対的に硬い状態を維持するので、上記研磨くずが被研磨物にスクラッチを生じさせるようになる。
これに対し本発明においては、90℃における貯蔵弾性率は30℃の貯蔵弾性率に比較して1/5以下の小さな貯蔵弾性率となるので、局部的に高温になった部分は相対的に柔らかくなり、効果的に研磨くずを研磨パッドに埋収することができるようになる。したがって、これによって被研磨物に研磨くずが強く押圧されるのを防止してスクラッチが生じるのを抑制することが可能となる。
また、30℃における貯蔵弾性率E’30は90℃における貯蔵弾性率E’90よりも5倍以上大きいので、被研磨物を研磨する際の一般的な温度である40℃前後では大きな貯蔵弾性率(100MPa以上)となり、これによりディッシングを効果的に抑制することができる。
【0007】
他方、局部的に高温になった部分が小さな貯蔵弾性率となってそのままの状態であることは、新たな被研磨物に対する次回の研磨の際には望ましくない。
そこで本発明においては、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’30−1と1回以上の加熱・冷却工程を経た上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30−2との比(E’30−2/E’30−1)、および上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’90−1と1回以上の加熱・冷却工程を経た上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率E’90−2との比(E’90−2/E’90−1)が、いずれも0.75〜1.25の範囲内となるようにしてある。
研磨層を90℃に加熱した後に冷却してその後の状態における上述の比が0.75〜1.25の範囲内となっていれば、当該研磨パッドは概ね最初の状態に回復されることになり、したがって上述したディッシング抑制効果とスクラッチ抑制効果とを期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】研磨パッド1を備えた研磨装置2の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示実施例について説明すると、図1は本発明にかかる研磨パッド1を備えた研磨装置2の側面図を示し、絶縁材の表面に金属製の導線を形成した被研磨物としての半導体基板3の研磨を行うものとなっている。
上記研磨装置2は、下方に設けられて研磨パッド1を支持する研磨定盤4と、上方に設けられて半導体基板3を支持する支持定盤5と、スラリーを供給するスラリー供給手段6とを備えている。
上記研磨パッド1および半導体基板3はそれぞれ略円盤状を有しており、本実施例では研磨パッド1の直径は半導体基板3の直径よりも大径となっている。また研磨パッド1は両面テープ等によって研磨定盤4に固定され、半導体基板3は支持定盤5に真空吸着されている。
また上記研磨定盤4および支持定盤5は図示しない駆動手段によって相対的に回転するとともに、上記支持定盤5は研磨定盤4の中心位置から半径方向に往復動可能に設けられ、これにより上記研磨パッド1と半導体基板3とが相対的に回転しながら摺動するようになっている。
上記スラリー供給手段6は、所要の薬品中に砥粒の混合されたスラリーを上記研磨パッド1の上面に形成された研磨面1a供給し、これにより当該スラリーが研磨面1aと半導体基板3との間に入り込むことで、半導体基板3の研磨が行われるようになっている。
このような構成を有する研摩装置自体は従来公知であり、これ以上の詳細な説明については省略する。なお上記構成を有する研磨装置2の他、例えば支持定盤5には駆動がなく、研磨定盤4の回転により支持定盤5が連れ回るようにした研磨装置2など、その他の構成を有した研磨装置2も使用可能である。
【0010】
本実施例で使用する研磨パッド1の製造方法としては、例えば、少なくともプレポリマーとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤、中空体を準備する準備工程;少なくとも、上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤を混合して成形体成形用の混合液を得る混合工程;上記成形体成形用混合液からポリウレタンポリウレア樹脂成形体を成形する成形体成形工程;および上記ポリウレタンポリウレア樹脂成形体から、上記研磨面1aを有する研磨層を形成する研磨層形成工程、を含むことが挙げられる。
以下、準備工程、混合工程、成形体成形工程、研磨層形成工程に分けて、それぞれ説明する。
【0011】
上記準備工程として、上記研磨パッド1の製造には、ポリウレタンポリウレア樹脂成形体の原料として、少なくとも、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤、中空体が用いられる。更にポリオール化合物を上記成分とともに用いてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を併せて用いてもよい。
【0012】
上記準備工程で準備される上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物は、下記ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを、通常用いられる条件で反応させることにより得られる化合物であり、ポリウレタン結合とイソシアネート基を分子内に含むものである。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分がポリウレタン結合含有イソシアネート化合物に含まれていてもよい。
上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物としては、市販されているものを用いてもよく、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて合成したものを用いてもよい。上記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法および条件を用いて付加重合反応すればよい。
例えば、40℃に加温したポリオール化合物に、窒素雰囲気にて撹拌しながら50℃に加温したポリイソシアネート化合物を添加し、30分後に80℃まで昇温させ更に80℃にて60分間反応させるといった方法で製造することが出来る。
【0013】
まず上記ポリイソシアネート化合物とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。またポリイソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。
例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。
さらにポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物が好ましく、中でも2,4−TDI、2,6−TDI、MDIがより好ましく、2,4−TDI、2,6−TDIが特に好ましい。
これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
次に上記ポリオール化合物とは、分子内に2つ以上のアルコール性水酸基(OH)を有する化合物を意味する。
上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の合成に用いられるポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(又はポリテトラメチレンエーテルグリコール)(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物;ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等を挙げることができる。
また、エチレンオキサイドを付加した3官能性プロピレングリコールを用いることもできる。これらの中でも、PTMG、又はPTMGとDEGの組み合わせが好ましい。
上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
ここで、NCO基1個当たりのPP(プレポリマー)の分子量を示すプレポリマーのNCO当量としては、200〜800であることが好ましく、300〜700であることがより好ましく、400〜600であることがさらにより好ましい。
具体的に上記プレポリマーのNCO当量は以下のようにして求めることができる。
プレポリマーのNCO当量=(ポリイソシアネート化合物の質量部+ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)−(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]
【0016】
上記硬化剤(鎖伸長剤ともいう)としては、例えば、ポリアミン化合物および/又はポリオール化合物を用いることができる。
ポリアミン化合物とは、分子内に2つ以上のアミノ基を有する化合物を意味し、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物、特にはジアミン化合物を使用することができる。
例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス−o−クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)、MOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物等を挙げることができる。
また、ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。
ポリアミン化合物としては、ジアミン化合物が好ましく、MOCA、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンがより好ましく、MOCAが特に好ましい。
ポリアミン化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリアミン化合物を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミン化合物は、他の成分と混合し易くするためおよび/又は後の成形体形成工程における気泡径の均一性を向上させるために、必要により加熱した状態で減圧下脱泡することが好ましい。減圧下での脱泡方法としては、ポリウレタンの製造において公知の方法を用いればよく、例えば、真空ポンプを用いて0.1MPa以下の真空度で脱泡することができる。
硬化剤(鎖伸長剤)として固体の化合物を用いる場合は、加熱により溶融させつつ、減圧下脱泡することができる。
【0017】
また硬化剤としてのポリオール化合物としては、ジオール化合物やトリオール化合物等の化合物であれば特に制限なく用いることができる。また、プレポリマーを形成するのに用いられるポリオール化合物と同一であっても異なっていてもよい。
具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの低分子量ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの高分子量のポリオール化合物などが挙げられる。
上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ここで、上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤に存在する活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比であるR値が、0.60〜1.40となるよう、各成分を混合する。R値は、0.65〜0.1.30が好ましく、0.70〜1.20がより好ましい。
【0019】
上記中空体とは、空隙を有する微小球体を意味する。微小球体には、球状、楕円状、およびこれらに近い形状のものが含まれる。中空体の例としては、熱可塑性樹脂からなる外殻(ポリマー殻)と、外殻に内包される低沸点炭化水素とからなる未発泡の加熱膨張性微小球状体を、加熱膨張させたものが挙げられる。
上記ポリマー殻としては、特開昭57−137323号公報等に開示されているように、例えば、アクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体などの熱可塑性樹脂を用いることができる。同様に、ポリマー殻に内包される低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル等を用いることができる。
【0020】
次に混合工程について説明すると、当該混合工程では、上記準備工程で準備した、プレポリマーとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤および中空体を、混合機内に供給して攪拌・混合する。混合工程は、上記各成分の流動性を確保できる温度に加温した状態で行われる。
混合順序に特に制限はないが、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物と中空体とを混合した混合液と、硬化剤および必要に応じて他の成分を混合した混合液とを用意し、両混合液を混合器内に供給して混合撹拌することが好ましい。このようにして、成形体成形用の混合液が調製される。
【0021】
次に成形体成形工程では、上記混合工程で調製された成形体成形用混合液を50〜100℃の型枠内に流し込み、硬化させることによりポリウレタンポリウレア樹脂成形体を成形する。
このとき、プレポリマー、硬化剤が反応してポリウレタンポリウレア樹脂を形成することにより該混合液は硬化する。
【0022】
そして研磨層形成工程では、上記成形体成形工程により得られたポリウレタンポリウレア樹脂成形体をシート状にスライスするとともに、スライスした樹脂シートを円形に裁断したら、上記研磨面1aに相当する面の反対側の面に両面テープを装着する。
さらに、必要に応じて研磨面1aに相当する面に格子状の溝等を形成したり、上記研磨面1aとは反対側の面にクッション層等を貼り合わせて、研磨パッド1を複層にすることもできる。
【0023】
そして本発明にかかる研磨パッドは、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30と90℃における貯蔵弾性率E’90との比(E’30/E’90)が5.0以上であり、かつ、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’30−1と1回の加熱・冷却工程を経た上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30−2との比(E’30−2/E’30−1)、および上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’90−1と1回の加熱・冷却工程を経た上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率E’90−2との比(E’90−2/E’90−1)が、いずれも0.75〜1.25の範囲内であることを特徴とするものである。
【0024】
(実施例)
【表1】
【表2】
【0025】
上記表1及び表2は、本発明に係る実施例1の研磨パッドと、比較例1、2の研磨パッドとについての試験結果を示したものである。
貯蔵弾性率E’とは、正弦的に変化する応力を発泡体に加えた場合における、1周期あたりに貯蔵され完全に回復するエネルギーの尺度であり、該貯蔵弾性率E’は、JIS K7244−4に準じ、引張モードで、初期荷重800gから500g、300g、200gと変化させた変動荷重にて測定した。また、歪0.001、測定周波数10rad/secとし、温度は−50から150℃(5℃/min)に変化させて測定した。
表1において、初回の1回目の30℃における貯蔵弾性率をE’30−1と表記し、同様に1回目の90℃における貯蔵弾性率をE’90−1、2回目の30℃における貯蔵弾性率をE’30−2、2回目の90℃における貯蔵弾性率をE’90−2とそれぞれ表記してある。
【0026】
また、表2は実施例及び比較例の研磨試験結果を示したものである。研磨レート、スクラッチ及びディッシングは以下の通り求めた。
(研磨レート)
研磨試験の条件は下記の通りである。
・使用研磨機:荏原製作所社製、F−REX300
・Disk:3M A188(#60)
・回転数:(定盤)70rpm、(トップリング)71rpm
・研磨圧力:3.5psi
・研磨剤:キャボット社製、品番:SS25(SS25原液:純水=1:1の混合液を使用)
・研磨剤温度:20℃
・研磨剤吐出量:200ml/min
・使用ワーク(被研磨物):12インチφシリコンウエハ上にテトラエトキシシランを PE−CVDで絶縁膜1μmの厚さになるように形成した基板
(スクラッチ)
スクラッチ等のディフェクトの評価は、25枚の基板を研磨し、研磨加工後の21〜25枚目の基板5枚について、ウエハ表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP1DLS)の高感度測定モードにて測定し、基板表面におけるスクラッチ等のディフェクトの個数を評価した。スクラッチ等のディフェクトの評価では、12インチ(300mmφ)ウエハに0.16μm以上のディフェクトが200個未満を○、200個以上を×とした。
(ディッシング)
ディッシングは、銅配線パターン付ウエハ(セマテック社製754wafer)を用い、100μm/100μmのディッシングをKLAテンコール社製 段差・表面あらさ・微細形状測定装置 P-16+で評価し、1000Å未満のディッシングを○として、1000Å以上のディッシングを×とした。
【0027】
上記試験に用いた実施例1の研磨パッドは、上述した製造方法に基づき、プレポリマーとして、TDI(2,4−トルエンジイソシアネート)、DEG(ジエチレングリコール)、PTMG1000(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)を配合したものを用い、NCO当量は458であった。
また中空体としてはエクスパンセル社製のExpancel 551DE40 d42を1.8%、松本油脂製薬社製のマツモトマイクロスフェアー F−80DEを0.45%それぞれ使用した。硬化剤としてはMOCA(4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン))を用い、その場合のR値は0.90であった。
【0028】
比較例1の研磨パッドとしては、ニッタ・ハース社製のIC1000を用いた。
比較例2の研磨パッドは、上記製造方法に基づき、プレポリマーとして、TDI、DEG、PTMG650を配合したものを用い、NCO当量は400であった。
また中空体としては551DE40 d42を1.8%、F−80DEを0.45%それぞれ使用した。硬化剤としてはMOCAおよびPTMG650を3:1の割合で用い、その場合のR値は0.90であった。
【0029】
上記試験結果によれば、本発明品である実施例1の研磨パッドは、比較例1、2と比較して、2回目の試験後においてもディッシングとスクラッチとの双方について良好な結果が得られ、かつ研磨レートにも優れている。
【符号の説明】
【0030】
1 研磨パッド 1a 研磨面
2 研磨装置 3 被研磨物
4 研磨定盤 5 支持定盤
6 スラリー供給手段
図1