(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、橋梁等の構造物の劣化や損傷の有無を監視するため、構造物に加速度を計測する計測装置を設置し、計測された加速度から構造物の固有振動数、減衰(構造減衰)、撓み量等を算出している。かかる計測装置として、例えば、歪みゲージを用いた電気式計測装置が一般に使用されている。
【0003】
しかしながら、歪みゲージを用いた計測装置は、測定データを電気的に取得するため、例えば、過酷な環境下に置かれた構造物のような場合、断線やショートによる不具合が発生するおそれがある。また、歪みゲージが構造物から剥離してしまうと、計測自体が不可能になってしまう。
【0004】
そこで、上記の不具合を回避できる計測装置として、光信号を利用して測定データを取得するように構成した装置が種々開発されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1に記載された加速度計は、構造物に対して光ファイバ及びばね部材を介して重り部材を連結し、構造物の加速度を重り部材の変位方向と平行に配置した光ファイバの歪みに基づいて計測するように構成されている。
【0006】
また、特許文献2に記載された加速度計は、構造物に対して光ファイバ及びばね部材を介して重り部材を連結し、構造物の加速度を重り部材の変位方向と直交する方向に変形する光ファイバの変形量に基づいて計測するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された加速度計では、光ファイバに重り部材が直接連結されているため、計測可能な周波数領域は、光ファイバが弾性変形できる範囲内に制限されてしまうという問題がある。また、特許文献2に記載された加速度計では、光ファイバがばね部材に沿って配置されていることから、光ファイバの撓みに基づいて歪み量を算出することとなる。したがって、おもりの揺動量に対して光ファイバの撓み量が小さく、振幅の少ない振動や低周波領域の振動の計測が難しく、計測可能な周波数領域が狭いという問題がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、広範囲の周波数領域の計測に対応することができる加速度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、支軸を中心として揺動可能に配置されるアーム部材と、該アーム部材の端部に配置される重錘と、を備えた振動子と、該振動子の揺動方向に延伸するように前記アーム部材に配置された光ファイバセンサと、を備え、
前記アーム部材は、長手方向に沿って形成され前記支軸が挿通される長孔を備えており、前記光ファイバセンサにより出力される歪み量に基づいて加速度を計測する、ことを特徴とする加速度計が提供される。
【0011】
前記加速度計は、前記光ファイバセンサと平行に前記アーム部材に配置された弾性部材を備えていてもよい。
【0012】
また、前記光ファイバセンサ及び前記弾性部材は、前記アーム部材の両側に配置されていてもよい。
【0013】
また、前記光ファイバセンサ及び前記弾性部材は、前記支軸を挟んで前記重錘と反対側に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係る加速度計によれば、振動子が揺動した際に光ファイバセンサが伸縮し、その歪み量に基づいて加速度を計測することができる。また、本発明によれば、計測対象物に生じる振動特性に応じてアーム部材の支軸の位置を変更することができ、広範囲の周波数領域の計測に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について
図1(a)〜
図4(c)を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係る加速度計の構成を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は
図1(a)におけるB−B矢視断面図、である。
図2は、
図1に示した加速度計を橋梁の加速度計測に適用した場合の概略構成図である。なお、
図1(a)及び
図1(b)に示したXYZ軸は、Z軸を鉛直方向とする三軸直交座標系を示している。
【0018】
本発明の第一実施形態に係る加速度計1は、例えば、
図1に示したように、支軸2を中心として揺動可能に配置されるアーム部材3と、アーム部材3の端部に配置される重錘4と、を備えた振動子5と、振動子5の揺動方向(Z軸方向)に延伸するようにアーム部材3に配置された光ファイバセンサ6と、光ファイバセンサ6と平行にアーム部材3に配置された弾性部材7と、振動子5等を収容する筐体8と、を備え、光ファイバセンサ6により出力される歪み量に基づいて加速度を計測するように構成されている。
【0019】
加速度計1を構成する部品(振動子5、光ファイバセンサ6及び弾性部材7)は、略直方体形状の筐体8に収容されユニット化されている。筐体8は、計測対象物である構造物Sへの取付部を形成するフランジ部8aを有していてもよい。筐体8は、加速度計1の各構成部品を外部環境から保護する容器であり、十分な剛性及び防水性を有していることが好ましい。
【0020】
支軸2は、
図1(b)に示したように、両端部が筐体8の側面に固定される。本実施形態において、支軸2は水平方向(Y軸方向)に沿って配置されている。なお、支軸2の支持方法は、図示した構成に限定されるものではなく、例えば、筐体8の下面に配置された一対の支持部材によって支軸2を支持するようにしてもよい。
【0021】
アーム部材3は、
図1(a)に示したように、鉛直面(XZ平面)内で揺動可能な状態となるように支軸2に軸支される。本実施形態では、アーム部材3の中間部に支軸2が挿通されている。
【0022】
また、アーム部材3の一端部には重錘4が配置される。本実施形態では、重錘4をアーム部材3の端部に固定しているが、アーム部材3の長手方向に沿って重錘4の位置を変更できるように構成してもよい。例えば、アーム部材3の一端にネジを切っておき、そのネジに重錘4を螺合させる構成であってもよい。また、重錘4にアーム部材3を挿通する開口部を形成しておき、アーム部材3及び重錘4を側面からピンで連結する構成であってもよい。また、重錘4は、用途に応じて重量の異なる重錘に交換可能であってもよい。
【0023】
かかるアーム部材3及び重錘4により振動子5が構成される。なお、本実施形態では、支軸2を筐体8に固定しアーム部材3を支軸2に対して揺動可能に構成しているが、支軸2を筐体8に回動可能に接続しアーム部材3を支軸2に固定して支軸2及びアーム部材3を揺動可能に構成してもよい。
【0024】
光ファイバセンサ6は、例えば、光ファイバの内部に屈折率が周期的に変化するブラッグ格子61が形成されたセンサである。ブラッグ格子61は、光ファイバが伸縮して格子間隔が変化した際、その間隔に応じた特定の波長の光のみを反射する。したがって、光ファイバセンサ6に広帯域のスペクトルを有する光を導入し、反射された光の波長を計測することにより、光ファイバに発生した歪みを検出することができる。
【0025】
また、光ファイバセンサ6は、光ファイバセンサ6は、一本の光ファイバで多点計測が可能であることから、
図1(a)に示したように、一本の光ファイバにより構成される光ファイバセンサ6をアーム部材3の両側に配置するようにしてもよい。具体的には、光ファイバセンサ6は、筐体8の下面に固定された一端と、筐体8の上面に固定された他端と、アーム部材3に貫通した状態で固定された中間部と、を備えている。
【0026】
したがって、光ファイバセンサ6は、アーム部材3の揺動方向(Z軸方向)に延伸するように配置される。また、光ファイバセンサ6の他端は、図示したように、光コネクタ12を介して筐体8に固定されていてもよい。光コネクタ12には光を伝送する光ケーブル11が接続される。
【0027】
なお、光ファイバセンサ6の構成は図示した構成に限定されるものではなく、例えば、複数本の光ファイバセンサ6を用いた構成であってもよい。例えば、
図1(a)において、アーム部材3の上方に配置された光ファイバセンサ6と、アーム部材3の下方に配置された光ファイバセンサ6と、を異なる光ファイバセンサ6によって構成してもよい。この場合、それぞれの光ファイバセンサ6には、個別に光を伝送する光コネクタ及び光ケーブルが接続される。
【0028】
また、図示しないが、アーム部材3の片側にのみ光ファイバセンサ6を配置するようにしてもよい。例えば、
図1(a)において、アーム部材3の上方にのみ光ファイバセンサ6を配置するようにしてもよいし、アーム部材3の下方にのみ光ファイバセンサ6を配置するようにしてもよい。
【0029】
弾性部材7は、例えば、
図1(a)に示したように、アーム部材3の両側に配置された一対のコイルスプリングである。アーム部材3の上方に配置された弾性部材7は、筐体8の上面に固定された一端と、アーム部材3に固定された他端と、を備えている。また、アーム部材3の下方に配置された弾性部材7は、筐体8の下面に固定された一端と、アーム部材3に固定された他端と、を備えている。
【0030】
弾性部材7は、光ファイバセンサ6と平行に配置されており、加速度計1に鉛直方向の加速度が付与されていない静止状態において、アーム部材3を略水平状態に保持する。また、弾性部材7は、所定の弾性係数を有するものを任意に選択して使用することにより、アーム部材3の揺動範囲(上限及び下限)を規定することができ、計測可能な加速度の周波数領域を調整することができる。
【0031】
なお、弾性部材7は、図示した構成に限定されるものではなく、アーム部材3を弾性的に支持できることができれば、ゴムやエアダンパ等を用いてもよい。また、図示しないが、アーム部材3の片側にのみ弾性部材7を配置するようにしてもよい。例えば、
図1(a)において、アーム部材3の上方にのみ弾性部材7を配置するようにしてもよいし、アーム部材3の下方にのみ弾性部材7を配置するようにしてもよい。
【0032】
また、本実施形態において、光ファイバセンサ6及び弾性部材7は、支軸2を挟んで重錘4と反対側に配置されている。弾性部材7を重錘4と反対側の端部に配置することにより、重錘4によってアーム部材3に作用するモーメントを効果的に抑制することができ、アーム部材3の揺動する範囲(振幅)を低減することができる。したがって、本実施形態に係る加速度計1は、大きな振幅の振動を生じる場所にも適用することができる。
【0033】
また、光ファイバセンサ6は、重錘4と弾性部材7との間であれば、アーム部材3のどの位置に固定されていてもよいが、支軸2に近すぎると、光ファイバセンサ6の伸縮量が小さくなってしまい、歪み量の計測が困難になる場合もあり得る。したがって、光ファイバセンサ6は、重錘4と支軸2との中間部、又は、弾性部材7と支軸2との中間部に配置することが好ましい。なお、光ファイバセンサ6も一定の弾性力を有していることから、図示したように、弾性部材7と支軸2との中間部に配置すると効果的である。
【0034】
ここで、
図2を参照しつつ、上述した加速度計1を用いて橋梁13の振動計測に適用した場合の処理について説明する。橋梁13は、例えば、一対の橋台13aと、橋台13aに支承を介して支持される上部構造体13bとによって構成される。加速度計1は、上部構造体13bの所定の箇所に複数配置される。また、これらの加速度計1は、光ケーブル11を介して解析装置14に接続される。
【0035】
解析装置14は、例えば、広帯域のスペクトルを有する光を供給する光源14aと、光源14aと光ケーブル11とを連結するカプラ14bと、加速度計1から戻ってきた光の波長を計測する光センサ14cと、計測された波長に基づいて加速度を計測する加速度演算部14dと、計測された加速度に基づいて橋梁13の状態を解析する解析部14eと、を備えている。
【0036】
光源14aから光ケーブル11に供給された光は、各加速度計1の光ファイバセンサ6に伝送される。各光ファイバセンサ6のブラッグ格子61により反射された光は、光ケーブル11を介してカプラ14bに伝送され、カプラ14bから光センサ14cに伝送される。光センサ14cは、伝送された光の周波数を計測して波長を算出する。
【0037】
光センサ14cで算出された波長のデータは、加速度演算部14dに供給される。加速度演算部14dは、橋梁13が健全な状態にあるときに計測した基準波長のデータと、監視時において計測した波長のデータとを比較し、その波長の変化量から光ファイバセンサ6の歪み量を算出する。そして、加速度演算部14dは、算出された歪み量に基づいて加速度を算出する。
【0038】
加速度演算部14dで算出された加速度のデータは解析部14eに供給される。解析部14eは、加速度計1により計測された加速度に基づいて橋梁13の状態を解析する。例えば、解析部14eは、橋梁13の固有振動数、減衰(構造減衰)、撓み量等の解析データを算出して橋梁13の状態を解析する。また、解析部14eは、これらの算出した解析データと、橋梁13の構造解析によって算出された理論値とを比較することにより、橋梁13の状態(例えば、劣化や損傷の程度等)を判定するようにしてもよい。
【0039】
なお、
図2では、加速度計1の計測対象物である構造物Sの一例として橋梁13を図示しているが、構造物Sは橋梁13に限定されるものではない。例えば、構造物Sは、水門、建築鉄骨、工場建屋、プラント構造物、海洋構造物等の他の構造物であってもよい。
【0040】
上述した本実施形態に係る加速度計1によれば、振動子5を構成するアーム部材3の揺動方向(Z軸方向)に延伸するように光ファイバセンサ6を配置したことにより、振動子5が揺動した際に光ファイバセンサ6が伸縮し、その歪み量に基づいて加速度を計測することができる。
【0041】
ところで、上述した加速度計1では、構造物Sに鉛直方向(Z軸方向)の振動が発生した際、重錘4の慣性力によりアーム部材3は支軸2を中心としてZ軸方向に揺動する。揺動するアーム部材3の固有振動数は、一般に支軸2と重錘4との間の距離に依存する。例えば、支軸2と重錘4との間の距離を大きく設定すれば、固有振動数を小さくすることができ、支軸2と重錘4との間の距離を小さく設定すれば、固有振動数を大きくすることができる。したがって、支軸2の位置を調整することにより、広範囲の周波数領域で加速度を計測することができる。
【0042】
例えば、特定の構造物Sに最適な加速度計1を設計する場合には、適用する構造物Sの振動特性に応じて支軸2の位置を設計すればよい。このとき、重錘4の重量や弾性部材7の弾性係数等も考慮して加速度計1の各構成部品を設計する。また、加速度計1のアーム部材3が交換可能に構成されている場合には、支軸2を固定する位置が異なる複数のアーム部材3を用意しておき、用途に応じてアーム部材3を選択するようにすればよい。
【0043】
このように、本実施形態に係る加速度計1によれば、計測対象物である構造物Sに生じる振動特性に応じてアーム部材3の支軸2の位置を変更することができ、広範囲の周波数領域の計測に対応することができる。したがって、橋梁のような低次の振動モード特性を有する大型構造物の振動計測だけでなく、高次の振動モード特性を有する構造物Sの振動計測にも適用することができる。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態に係る加速度計1について、
図3及び
図4を参照しつつ説明する。ここで、
図3は、本発明の第二実施形態に係る加速度計を示す縦断面図である。
図4は、本発明の他の実施形態に係る加速度計を示す縦断面図であり、(a)は第三実施形態、(b)は第四実施形態、(c)は第五実施形態、を示している。なお、各図において、上述した第一実施形態に係る加速度計1と同一の構成部品については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0045】
図3に示した第二実施形態に係る加速度計1は、重錘4と支軸2との間の距離を調整可能に構成したアーム部材3を有している。具体的には、アーム部材3は、長手方向に沿って形成され支軸2が挿通される長孔31を備えている。かかる構成により、長孔31の長手方向に沿って支軸2を移動させることができ、重錘4と支軸2との間の距離を調整することができる。
【0046】
なお、支軸2の位置決め方法は種々の方法が考えられるが、例えば、長孔31に挿通された支軸2とアーム部材3とを貫通するボルト・ナット32によって位置決めするようにしてもよい。この場合、支軸2とアーム部材3とが固定されることから、支軸2は筐体8に軸受を介して回動可能に支持しておく。また、図示しないが、支軸2とアーム部材3との間に軸受を配置して、軸受を長孔31に沿って相対移動可能かつ所定の位置で固定可能に構成してもよい。
【0047】
図4(a)に示した第三実施形態に係る加速度計1は、
図1に示した第一実施形態に係る加速度計1から弾性部材7を省略したものである。かかる第三実施形態では、光ファイバセンサ6は、センサ機能に加えて、アーム部材3を弾性的に支持する機能を併せ持っている。なお、かかる第三実施形態において、歪み量を高精度に検知するためには、光ファイバセンサ6の変形を弾性変形の範囲内とする必要がある。したがって、かかる加速度計1は、小さい振幅の振動や低い周波数領域の加速度の計測に適している。
【0048】
図4(b)に示した第四実施形態に係る加速度計1は、重錘4と支軸2との間に光ファイバセンサ6及び弾性部材7を配置したものである。かかる構成の加速度計1であっても、上述した第一実施形態に係る加速度計1と同様の効果を有する。また、図示したように、光ファイバセンサ6を支軸2側に配置し、弾性部材7を重錘4側に配置することにより、光ファイバセンサ6に負荷される応力を低減することができる。勿論、光ファイバセンサ6と弾性部材7の位置を入れ替えてもよい。
【0049】
図4(c)に示した第五実施形態に係る加速度計1は、
図1に示した第一実施形態に係る加速度計1の向きを鉛直面(XZ平面)内で90°偏向させ、構造物Sの水平方向(X軸方向)の加速度を計測するように構成したものである。例えば、図示したように、支軸2はY軸方向に沿って配置され、光ファイバセンサ6及び弾性部材7はX軸方向に沿って配置され、アーム部材3は静止状態でZ軸方向に沿って配置されている。
【0050】
このように、加速度計1は、構造物Sに配置する場所に応じて、筐体8の内部に収容される構成部品の向きを任意に変更することができる。また、第一実施形態に係る加速度計1及び第五実施形態に係る加速度計1の両方を用いることにより、鉛直方向及び水平方向の加速度を同時に計測することができる。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。