特許第6761620号(P6761620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761620
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】ロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20200917BHJP
   H02K 23/30 20060101ALI20200917BHJP
   H02K 15/095 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   H02K3/18 P
   H02K23/30
   H02K15/095
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-254491(P2014-254491)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-116377(P2016-116377A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年12月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】石原 正浩
(72)【発明者】
【氏名】川島 琴司
(72)【発明者】
【氏名】新井 悠亮
【審査官】 三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−220992(JP,A)
【文献】 特開2003−088025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/18
H02K 15/095
H02K 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸周りの周方向に配された複数の突極を有する鉄芯と、
前記回転軸の軸方向に前記複数の突極と並設され、前記回転軸周りの周方向に配され、前記突極と対をなして配設された複数の端子を有する整流子と、
前記複数の突極と前記複数の端子とに亘って巻回された巻き線と
を備えたロータであって、
前記複数の突極と前記複数の端子とは、前記軸方向に並んで配置された対突極と対端子との対で構成され
前記巻き線は、前記突極に巻回されて、前記突極から前記端子に直接接続された第1の部分と、前記対端子と直接接続され、前記対突極と前記周方向に隣接する他の突極に巻回される第2の部分とを有し、前記対突極及び前記他の突極と前記対端子とが直接接続される部分は、前記第1の部分及び前記第2の部分のみであり、
前記巻き線は、前記回転軸の径方向で見て、互いに交差する前記第1の部分と前記第2の部分とが、これらの交差点において前記軸方向に対して非対称に巻き回される非対称構造を有し、前記第1の部分と繋がる部分が前記対突極に一巻き以上巻回されることで、いずれの交差点においても前記第1の部分と前記第2の部分との間に隙間が形成されていることを特徴とするロータ。
【請求項2】
回転軸と、
前記回転軸周りの周方向に配された複数の突極を有する鉄芯と、
前記回転軸の軸方向に前記複数の突極と並設され、前記回転軸周りの周方向に配され、前記突極と対をなして配設された複数の端子を有する整流子と、
前記複数の突極と前記複数の端子とに亘って巻回された巻き線と
を備えたロータであって、
記複数の突極と前記複数の端子とは、前記軸方向に並んで配置されて対をなす第1の突極と第1の端子とを有し、
前記巻き線は、前記第1の突極に巻回されて、前記第1の突極から前記第1の端子に直接接続された第1の部分と、前記第1の端子と直接接続され、前記第1の突極と前記周方向に隣接する第2の突極に巻回される第2の部分とを有し、前記第1の突極及び前記第2の突極と前記第1の端子とが直接接続される部分は、前記第1の部分及び前記第2の部分のみであり、
前記巻き線は、
前記第2の部分と繋がり、前記第2の突極と前記第1の突極とを巻回される第3の部分を有しており、
前記第3の部分は、前記第2の突極と前記軸方向に並んで配置されて対をなす第2の端子に接続されると共に、前記第2の部分よりも前記鉄芯の径方向の外側に位置することを特徴とするロータ。
【請求項3】
回転軸と、
前記回転軸周りの周方向に配された複数の突極を有する鉄芯と、
前記回転軸の軸方向に前記複数の突極と並設され、前記回転軸周りの周方向に配され、前記突極と対をなして配設された複数の端子を有する整流子と、
前記複数の突極と前記複数の端子とに亘って巻回された巻き線と
を備えたロータであって、
前記複数の突極と前記複数の端子とは、前記軸方向に並んで配置されて対をなす第1の突極と第1の端子とを有し、
前記巻き線は、前記第1の突極に巻回されて、前記第1の突極から前記第1の端子に直接接続された第1の部分と、前記第1の端子と直接接続され、前記第1の突極と前記周方向に隣接する第2の突極に巻回される第2の部分とを有し、前記第1の突極及び前記第2の突極と前記第1の端子とが直接接続される部分は、前記第1の部分及び前記第2の部分のみであり、
前記巻き線は、
前記第1の突極を巻回されて、前記第2の突極とは反対側で前記周方向に隣接する第3の突極と前記軸方向に並んで配置されて対をなす第3の端子に接続される第4の部分を有しており、
前記第4の部分は、前記第1の部分よりも前記鉄芯の径方向の外側に位置することを特徴とするロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁機器のロータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付き直流モータのような電磁機器は、ステータとロータとを備えている。ステータはモータ内部に磁界を作り、ロータは外部からの電流によって回転磁界を作るものである。ロータには、巻き線が巻回された駆動コイルと整流子とが取り付けられている。整流子は、整流子に設けられた複数の端子を介して、外部からの電流の供給先である駆動コイルを次々と切り換えて、ロータが連続的に回転するようにしている。
【0003】
図9に電磁機器のロータ100の側面図を示す。ロータ100は、回転軸101と、複数の突極を含む鉄芯102と、複数の端子103a、103bを含む整流子103と、突極に巻回され端子103a、103bへと接続される巻き線105と、巻き線105と鉄芯102とを絶縁するインシュレータ104とを備える。回転軸101には、鉄芯102と鉄芯102から所定距離離間して配置された整流子103とが圧入または接着固定されている。巻き線105は、一方の端子103aと接続された後、隣り合う2つの突極に巻回され、その後他の端子103bへと接続される。また、巻き線105は、後述する渡り線部105a、105bを含む。
【0004】
図10は、ロータ100における巻き線の端子への接続及び突極への巻回の様子を示す説明図である。図10では、説明のためロータの円周方向に等間隔で配置された突極及び端子を便宜的に平面上に展開して配置しており、突極及び端子の形状も便宜的に矩形状で表している。図10において、上下方向はロータの軸方向であり、左右方向はロータの周方向である。突極102a、102b、102c、102d、102eは、鉄芯102に均等配置された5つの突極である。また、端子103a、103b、103c、103d、103eは、整流子103の外周の5か所に均等に配置され、突極と対応する位置に設けられた5つの端子である。
【0005】
突極102a〜102eと整流子103の端子103a〜103eとは、同じ数配置されており、互いにロータ100の軸方向のほぼ同じ位置に配置されている。また、巻き線105は、隣り合う二つの突極を囲んで巻回されて1つの相を形成している。したがって、突極が5か所に設置されている形態では、巻き線105は5相に分けて形成されることになる。
【0006】
以下に図10の突極102a、102b及び端子103a、103bを用いて、巻き線105の第1相を形成する様子を説明する。なお図10において、説明の便宜上、第1相を形成する箇所については、他の箇所と比べて太い線で示している。まず端子103aに接続され、突極102bへ架け渡される。端子103aから突極102bの巻き線105を渡り線部105aとする。次いで、巻き線105は、この渡り線部105aを経て、突極102bから隣接する突極102aへと巻回され、二つの突極102a、102bを囲んで図中反時計回りに所定の巻き数巻回される。なお、図10では、所定の巻き数を便宜的に1巻きとしている。最後に、巻き線105は、突極102aから端子103bへ架け渡され、端子103bに接続される。突極102aから端子103bの巻き線105を渡り線部105bとする。このようにして、巻き線105の第1相が形成される。
【0007】
第1相を形成した方法と同様に、端子103b、103c及び突極102b、102cに巻き線105が接続及び巻回されることで第1相に次いで、第2相が形成される。第2相から、第3、4、5相へと巻き線105が端子及び突極に接続及び巻回される。このようにして、5つの相すべての形成が完了すると、巻き線105は最初の端子103aに接続されて、ロータ100に巻き線105を巻回する作業が完了する。
【0008】
図11は、上記した突極102a、102bに巻回される第1相のみを示したロータ100の部分平面図である。図11の平面図は、説明のため突極102a、102bのみを示し、整流子103が装着された側の軸方向から見た図である。整流子103は、その外周面から径方向外方に突出する突出部を有し、これを端子103a、103bとしている。
【0009】
巻き線105は、突出部である端子103aに、引掛けられるか、または巻回されることで接続される。端子103aに接続された巻き線105は、図11中右側の突極102bへと向かい、突極102b及び隣接する突極102aの二つの突極を囲んで所定回数巻回される。なお、図において中央部分の一点鎖線付近に示す分割された矢印で示す箇所は、巻き線が二つの突極102a、102bに複数回巻回されることを示している巻き線105は、突極102a、102bに所定回数巻回された後、突極102aから端子103bに接続される。なお、端子103aから突極102bまでの巻き線105を渡り線部105aで示し、突極102aから端子103bまでの巻き線105を渡り線部105bで示す。
【0010】
図9から図11を参照すると、渡り線部105aと渡り線部105bとの経路には、それぞれの渡り線部が互いに交差する交差点CPが存在する。特に図11から理解されるように、渡り線部105a、105bの一方の端部は、突極102a、102bの径方向内側に配置された端子103a、103bに接続され、他方の端部は、端子103a、103bより径方向外側の突極102a、102bに配置されている。このため、二つの渡り線部105a、105bの経路は、交差点CPを通る面(図11中一点鎖線)に対して略対称となっている。したがって、二つの渡り線部105a、105bは、交差点CPにおいて互いに接近して配置されており、接触しやすいことがわかる。
【0011】
このような場合、電磁機器作動時のロータ100の振動や、ロータ100に加わる衝撃等により、渡り線部105a、105b同士が、交差点CPで互いに接触し、擦れることがある。そうすると、渡り線部105a、105bの絶縁被膜が破れ、電気的なショートや断線を引き起こすことがある。
【0012】
渡り線部の接触によるショートを防ぐ対策として、特許文献1には、インシュレータに渡り線部を案内する溝を設けることが提案されている。つまり、インシュレータ等の絶縁部材に設けた溝に渡り線部を通すことで、複数の渡り線部の経路を変えて、渡り線部同士の接触を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−167604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、インシュレータに案内溝を設けることは、インシュレータに新たな加工を施すことになるので、コストの増加を引き起こしてしまう。
【0015】
本発明は、複数の渡り線部同士の接触を回避可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によると、例えば、回転軸と、前記回転軸周りの周方向に配された複数の突極を有する鉄芯と、前記回転軸の軸方向に前記複数の突極と並設され、前記回転軸周りの周方向に配され、前記突極と対をなして配設された複数の端子を有する整流子と、前記複数の突極と前記複数の端子とに亘って巻回された巻き線とを備えたロータであって、前記複数の突極と前記複数の端子とは、前記軸方向に並んで配置された対突極と対端子との対で構成され、前記巻き線は、前記突極に巻回されて、前記突極から前記端子に直接接続された第1の部分と、前記対端子と直接接続され、前記対突極と前記周方向に隣接する他の突極に巻回される第2の部分とを有し、前記対突極及び前記他の突極と前記対端子とが直接接続される部分は、前記第1の部分及び前記第2の部分のみであり、前記巻き線は、前記回転軸の径方向で見て、互いに交差する前記第1の部分と前記第2の部分とが、これらの交差点において前記軸方向に対して非対称に巻き回される非対称構造を有し、前記第1の部分と繋がる部分が前記対突極に一巻き以上巻回されることで、いずれの交差点においても前記第1の部分と前記第2の部分との間に隙間が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の渡り線部同士の接触を回避可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態によるブラシ付き直流モータの分解斜視図。
図2】第1実施形態によるロータの側面図。
図3】第1実施形態による巻き線の巻回の様子を示す説明図。
図4】第1実施形態によるロータを軸方向から見た平面図。
図5】第2実施形態による巻き線の巻回の様子を示す説明図。
図6】第2実施形態によるロータを軸方向から見た平面図。
図7】第3実施形態による巻き線の巻回の様子を示す説明図。
図8】第3実施形態によるロータを軸方向から見た平面図。
図9】従来例によるロータの側面図。
図10】従来例による巻き線の巻回の様子を示す説明図。
図11】従来例によるロータを軸方向から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については、図面から省略する。また、各図において、同じ参照符号は、同様の要素を示している。なお、電磁機器として、インナーロータを有するブラシ付き直流モータを使用して本実施形態を説明するが、これに限定されず、何らかのロータを使用するための電磁機器に対しても本発明は適用可能である。
【0020】
図1に第1実施形態であるブラシ付き直流モータ1の分解斜視図を示す。ブラシ付き直流モータ1は、ロータ100と、ケースユニット200と、ターミナルユニット300と、歯車ユニット400とを備える。以下にそれぞれの要素について説明する。
【0021】
<ロータ100>
ロータ100は、回転軸101と、回転軸101に固定された鉄芯102及び整流子103と、鉄芯102に巻回された巻き線105と、バリスタ106と、大ワッシャ107と、小ワッシャ108とを備える。
【0022】
整流子103は、鉄芯102から所定距離離間して配置されるように回転軸101に固定される。巻き線105は、絶縁層(インシュレータ)104を介して鉄芯102の突極に巻回され、整流子103の端子に接続される。巻き線105は、突極が5本あれば5相に分けて巻回される。
【0023】
バリスタ106は、整流子103の端子に半田付けで取り付けられ、整流子103が電流路を切り替える時に発生する電磁ノイズを低減する。大ワッシャ107は、回転軸101に挿入され整流子103の端面に当接する。一対の小ワッシャ108、108の一方は、回転軸101に挿入され、絶縁層104に当接する。他方の小ワッシャ108は、回転軸101に挿入されて大ワッシャ107に当接する。
【0024】
<ケースユニット200>
ケースユニット200は、ケース201と、大軸受202と、ステータである一対の駆動マグネット203、203と、駆動マグネット203を固定するためのマグネットスプリング204と、補助ヨーク205とを含む。
【0025】
大軸受202は、ケース201の天面中心孔201aに圧入される。ケース201の内周面には、周方向等間隔に一対の駆動マグネット203、203が配置される。マグネットスプリング204は、一対の駆動マグネット203、203の間に挿入されることで、駆動マグネット203をケース201に固定している。
【0026】
ケース201の外周面には補助ヨーク205が装着される。補助ヨーク205は、一方の駆動マグネット203から発生する磁束の通り道を広くして、より多くの磁束が反対側の駆動マグネット203に戻るようにしている。これにより、鉄芯102の突極と駆動マグネット203が作るエアーギャップ部の磁束密度を増やせるので、モータが発生する回転トルクを大きくすることができる。
【0027】
<ターミナルユニット300>
ターミナルユニット300は、ケース201の開口側に圧入されるブラシホルダ301と、ブラシホルダ301の中心孔に圧入される小軸受302と、一対のブラシアームユニット303、303とを含む。ブラシアームユニット303は、防振ゴム3031と、ブラシアーム3032と、ターミナル3032aと、ブラシ3033とを含み、ブラシホルダ301に圧入固定される。
【0028】
<ブラシ付き直流モータ1の組み立て>
ブラシ付き直流モータ1は、ロータ100をケース201内に装着し、次いで、ケース201の開口側からブラシホルダ301が圧入されることで組み立てられる。その際、ロータ100の突極の外周面は、ケース201内の駆動マグネット203と対向して配置される。また、ロータ100の回転軸101は、ケース201の大軸受202とブラシホルダ301の小軸受302に回動自在に支持される。
【0029】
ロータ100の整流子103は、ブラシ3033と接触することで、ブラシアーム3032及びターミナル3032aと電気的に導通する。ターミナル部3032に電流が供給されるとブラシ3033及び整流子103を介して、巻き線105に電流が流れ、鉄芯102の突極が磁化する。最適なタイミングで整流子103が巻き線105の各相に流れる電流を切り替えることにより、突極の磁化が変化して、回転磁界が発生する。回転磁界は、駆動マグネット203と磁気的相互作用をすることにより、ロータ100を回転させる。歯車ユニット400は、ロータ100の回転動力を外部機器に伝達する。
【0030】
図2は、第1実施形態の電磁機器のロータ100の側面図である。図2に示すロータ100において、上記した図9に示すロータと同一の参照符号で示される部材は、同様の要素を示している。しかし、図2に示すロータ100は、図9に示すロータと後述する巻き線105の突極への巻回方法が異なっているため、渡り線の配置が異なっている。
【0031】
図3は、ロータ100における巻き線105の端子への接続及び突極への巻回の様子を示す説明図である。図3では、説明のためロータの円周方向に等間隔で配置された突極及び端子を便宜的に平面上に展開して配置しており、突極及び端子の形状も便宜的に矩形状で表している。図3において、上下方向はロータの軸方向であり、左右方向はロータの周方向である。突極102a、102b、102c、102d、102eは、鉄芯102に均等配置された5つの突極である。また、端子103a、103b、103c、103d、103eは、整流子103の外周の5か所に均等に配置され、突極と対応する位置に設けられた5つの端子である。図3に示すように5つの突極と5つの端子は、ロータ100の軸方向において対応する位置であって、突極と端子とがロータの軸方向から見て互いに重なり合っている位置に配置されている。巻き線105は、隣り合う2つの突極を囲んで巻回されて1つの相を形成する。したがって、突極が5か所に設置されている形態では、巻き線105は5相に分けて形成されることになる。なお、本実施形態において、突極と端子との数は5つに限定されるものではなく、巻き線が巻回する突極の数も2つに限定されるものではない。
【0032】
以下に図3の突極102a、102b及び端子103a、103bを用いて、巻き線105の第1相を形成する様子を説明する。なお図3において、説明の便宜上、第1相を形成する箇所については、他の箇所と比べて太い線で示している。なお、本実施形態のロータを製造する際にも同様の工程が実行される。巻き線105は、まず一方の端子である端子103aに接続され、突極102bへ架け渡される。端子103aから突極102bの巻き線105を渡り線部105aとする。次いで、巻き線105は、この渡り線部105aを経て、突極102bから隣接する突極102aへと巻回される。このとき、この突極102aが巻き始めの突極になる。その後、巻き線105は、二つの突極102a、102bを囲んで図中反時計回りに、所定の巻き数巻回される。なお、図3においては、説明を簡便にするために巻き線105を1巻きのみ巻回した様子を示しているが、これに限定されない。
【0033】
巻き線105は、二つの突極102a、102bに巻回された後、少なくとも1巻き以上突極102bにのみ巻回される。このとき、この突極102bが巻き終わりの突極になる。なお、図3においては、説明を簡便にするために巻き線105を1巻きのみ巻回した様子を示しているが、これに限定されない。最後に、巻き線105は、突極102bから端子103bへ架け渡され、他方の端子である端子103bに接続される。突極102bから端子103bの巻き線105を渡り線部105kとする。このようにして、第1実施形態における、巻き線105の第1相が形成される。
【0034】
第1相を形成した工程と同様に、端子103b、103c及び突極102b、102cに巻き線105が接続及び巻回されることで第1相に次いで、第2相が形成される。そして、第2相から、第3、4、5相へと巻き線が端子及び突極に接続及び巻回される。このようにして、5つの相すべての形成が完了すると、巻き線105は最初の端子103aに接続されて、ロータ100に巻き線105を巻回する作業が完了する。
【0035】
図4は、上記した第1実施形態における突極102a、102bに巻回される巻き線105の第1相のみを示したロータ100の部分平面図である。図4の平面図は、説明のため突極102a、102bのみを示し、整流子103が装着された側の軸方向から見た図である。整流子103は、その外周面から径方向外方に突出する突出部を有し、これを端子103a、103bとしている。
【0036】
巻き線105は、突出部である端子103aに、引掛けられるか、または巻回されることで接続される。端子103aに接続された巻き線105は、巻き始めの突極となる図4中右の突極102bへと向かい、突極102b及び隣接する突極102aの二つの突極を囲んで所定巻き数巻回される。なお、図4において中央部分の一点鎖線付近に示す分割された矢印で示す箇所は、巻き線105が二つの突極102a、102bに複数回巻回されることを示している。このとき、巻き線105は、突極102a、102bに巻回される度に、巻き線105の突極102a、102bに対する位置が径方向内側から外側に向かって移動するように巻回される。
【0037】
巻き線105は、突極102a、102bに所定回数巻回された後、巻き終わりの突極である突極102bにのみ少なくとも1巻き以上巻回された後、端子103bに接続される。なお、端子103aから突極102bまでの巻き線105を渡り線部105aで示し、突極102bから端子103bまでの巻き線105を渡り線部105kで示す。図4において、説明を簡便にするために巻き線105を1巻きのみ巻回した様子を示しているが、これに限定されず、複数回巻回されてもよい。
【0038】
図4を参照すると、渡り線部105aは、一端が端子103aに接続され、他端が突極102bの径方向内側に配置されている。渡り線部105aは、その全体にわたって整流子103付近の突極102bの径方向内側に配置されている。一方、渡り線部105kは、一端が端子103bに接続されており、他端が巻き終わりの突極である突極102bに少なくとも1巻き以上巻回されて径方向外側に配置されているために、突極102bの径方向外側から径方向内側の端子103bへと延びている。つまり、二つの渡り線部105a、105kの経路が互いに異なっているので、これら二つの渡り線部が交差点CP1で互いに接近することを回避できる。なお、以上のことは、例えば渡り線部105kが突極102aを巻き終わりの突極とした場合も同様である。つまり、巻き終わりの突極で1巻き以上巻回されることで、渡り線部105kの端部が突極の径方向外側に移動されるため、二つの渡り線部が交差点CP1で互いに接近することを回避できる。
【0039】
さらに、図4を参照すると、二つの渡り線部105a、105kの経路は、交差点CP1を通る面(図4中一点鎖線)に対して対称となっていないことがわかる。そして、渡り線部105aは、突極102aの径方向内側にある端子103aから、突出部である端子103bの下方を通って、突極102bの図4中右端まで架け渡されている。これに対し、渡り線部105kは、突極102bの径方向における渡り線部105aよりも外側に存在し、且つ突極102bの左端から、突極102bに隣接する端子103bへと架け渡されている。つまり、渡り線部105kは、端子103bの下方に位置する渡り線部105aを覆うように、突極102bの径方向外側に位置した箇所から、急な勾配で端子103bへと架け渡されている。したがって、渡り線部105a、105kは、交差点CP1において互いに所定の隙間を形成して交差しており、ロータ100の振動等によって接触するほど接近していない。
【0040】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、巻き終わりの突極102bのみに巻き線105を1巻き以上巻回したが、巻き始めの突極のみに巻き線を1巻き以上巻回してもよい。以下図5にその例を示す。図5では、突極102a、102b及び端子103a、103bを用いて、第2実施形態における巻き線105の第1相を形成する工程を説明する。図5において、説明の便宜上、第1相を形成する箇所については、他の箇所と比べて太い線で示している。なお、本実施形態のロータを製造する際にも同様の工程が実行される。図5に示す突極及び端子の配置は、上記した図3に示す形態と同様であり、突極及び端子の数や、巻き線が巻回する突極の数や巻く回数等も同様に図に示す数や回数に限定されるものではない。
【0041】
以下に第2実施形態における、巻き線105の第1相を形成する工程を突極102a、102b及び端子103a、103bを用いて説明する。巻き線105は、まず一方の端子である端子103aに接続され、巻き始めの突極である突極102aへ架け渡される。端子103aから突極102aの巻き線105を渡り線部105pとする。次いで、巻き線105は、この渡り線部105aを経て、少なくとも1巻き以上突極102aにのみ巻回される。その後、突極102aから隣接する突極102bへと巻回される。巻き線105は、二つの突極102a、102bを囲んで図中反時計回りに巻回され、所定の巻き数巻回される。
【0042】
巻き線105は、二つの突極102a、102bに巻回された後、巻き終わりの突極となる突極102aを経て、他方の端子である端子103bへ架け渡され、端子103bに接続される。突極102aから端子103bの巻き線105を渡り線部105bとする。このようにして、第2実施形態における、巻き線105の第1相が形成される。
【0043】
第1相を形成した工程と同様に、他の端子及び他の突極に巻き線105が接続及び巻回されることで第1相に次いで、第2、3、4、5相が形成される。このようにして、5つの相すべての形成が完了すると、巻き線105は最初の端子103aに接続されて、ロータ100に巻き線105を巻回する作業が完了する。
【0044】
図6は、第2実施形態における上記した第1相のみを示したロータ100の部分平面図であり、図4と同様な平面図である。端子103aに接続された巻き線105は、図6中左側の巻き始めの突極となる突極102aへと向かい、少なくとも1巻き以上突極102aにのみ巻回される。その後、突極102a及び突極102bの二つの突極を囲んで所定回数巻回される。なお、図6において中央部分の一点鎖線付近に示す分割された矢印で示す箇所は、巻き線105が二つの突極102a、102bに複数回巻回されることを示している。このとき、巻き線105は、突極102a、102bに巻回される度に、巻き線105の突極102a、102bに対する位置が径方向内側から外側に向かって移動するように巻回される。
【0045】
巻き線105は、突極102a、102bに所定回数巻回された後、巻き終わりの突極となる突極102aを経て、端子103bに接続される。なお、端子103aから突極102aまでの巻き線105を渡り線部105pで示し、突極102aから端子103bまでの巻き線105を渡り線部105bで示す。なお、図4においても上記したように、説明を簡便にするために巻き線105を1巻きのみ巻回した様子を示しているが、これに限定されず、複数回巻回されてもよい。
【0046】
図5及び図6を参照すると、渡り線部105pと渡り線部105bとの経路には、それぞれの渡り線部が互いに交差する交差点CP2が存在する。特に図6を参照すると、二つの渡り線部105p、105bの経路は、交差点CP2を通る面に対して対称となっていないことがわかる。
【0047】
そして、渡り線部105pは、突極102aの径方向内側にある端子103aから、ほぼ垂直に突極102aへ延びて突極102aにのみ巻回される。一方、渡り線部105bは、突極102aの径方向外側であり図6中左端から端子103bへ延びている。したがって、端子103a付近に存在する渡り線部105pに対して、渡り線部105bは、端子103a付近の渡り線部105pが存在する領域を避けるような経路をとっている。したがって、渡り線部105p、105bは、交差点CP2において互いに所定の隙間を形成して交差しており、ロータ100の振動等によって接触するほど接近していない。
【0048】
<第3実施形態>
上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、巻き終わりまたは巻き始めの突極のみに巻き線105を1巻き以上巻回したが、巻き始め及び巻き終わりの突極の両方に巻き線を1巻き以上巻回してもよい。以下図7にその例を示す。図7では、突極102a、102b及び端子103a、103bを用いて、第3実施形態における巻き線105の第1相を形成する工程を説明する。なお図7において、説明の便宜上、第1相を形成する箇所については、他の箇所と比べて太い線で示している。なお、本実施形態のロータを製造する際にも同様の工程が実行される。図7に示す突極及び端子の配置は、上記した図3に示す形態と同様であり、突極及び端子の数や、巻き線が巻回する突極の数や巻く回数等も同様に図に示す数や回数に限定されるものではない。
【0049】
以下に第3実施形態における、巻き線105の第1相を形成する工程を突極102a、102b及び端子103a、103bを用いて説明する。巻き線105は、まず一方の端子である端子103aに接続され、巻き始めの突極である突極102aへ架け渡される。端子103aから突極102aへの巻き線105を渡り線部105pとする。次いで、巻き線105は、この渡り線部105pを経て、少なくとも1巻き以上突極102aにのみ巻回される。その後、突極102aから隣接する突極102bへと巻回される。巻き線105は、二つの突極102a、102bを囲んで図中反時計回りに巻回され、所定の巻き数巻回される。
【0050】
巻き線105は、二つの突極102a、102bに巻回された後、少なくとも1巻き以上巻き終わりの突極である突極102bにのみ巻回される。最後に、巻き線105は、他方の端子である端子103bへ架け渡され、端子103bに接続される。突極102bから端子103bの巻き線105を渡り線部105kとする。このようにして、第3実施形態における、巻き線105の第1相が形成される。
【0051】
第1相を形成した工程と同様に、他の端子及び他の突極に巻き線105が接続及び巻回されることで第1相に次いで、第2、3、4、5相が形成される。このようにして、5つの相すべての形成が完了すると、巻き線105は最初の端子103aに接続されて、ロータ100に巻き線105を巻回する作業が完了する。
【0052】
図8は、第3実施形態における上記した第1相のみを示したロータ100の部分平面図であり、図4と同様な平面図である。端子103aに接続された巻き線105は、図8中左側の巻き始めの突極である突極102aへと向かい、少なくとも1巻き以上突極102aにのみ巻回される。その後、突極102a及び突極102bの二つの突極を囲んで所定回数巻回される。なお、図8において中央部分の一点鎖線付近に示す分割された矢印で示す箇所は、巻き線105が二つの突極102a、102bに複数回巻回されることを示している。このとき、巻き線105は、突極102a、102bに巻回される度に、巻き線105の突極102a、102bに対する位置が径方向内側から外側に向かって移動するように巻回される。
【0053】
巻き線105は、突極102a、102bに所定回数巻回された後、少なくとも1巻き以上巻き終わりの突極である突極102bにのみ巻回され、端子103bに接続される。なお、端子103aから突極102aまでの巻き線105を渡り線部105pで示し、突極102bから端子103bまでの巻き線105を渡り線部105kで示す。図8においても、説明を簡便にするために巻き線105を1巻きのみ巻回した様子を示しているが、これに限定されず、複数回巻回されてもよい。
【0054】
図7及び図8を参照すると、渡り線部105pと渡り線部105kとの経路は、それぞれの隣接する突極と端子との間で架け渡されるため、互いに交差することはない。したがって、渡り線部105pと渡り線部105kとは、互いに交差することなく配置されているので、互いに所定の隙間を形成しており、ロータ100の振動等によって接触することはない。
【0055】
<他の実施形態>
なお、上記第1〜第3実施形態においては、突極と端子とは、ロータの軸方向において対応する位置であって、突極と端子とがロータの軸方向から見て互いに重なり合っている位置に配置されている。しかしながら、本実施形態の突極と端子との軸方向の位置関係は、これに限定されず、例えば、隣接する二つの突極の間に対応する位置に端子が設けられるように、突極と端子とがオフセットされて配置されている構成でもよい。
【0056】
また、電磁機器としては、モータと発電機が例示できる。モータの用途としては、紙幣、小切手、有価証券、原稿、記録用紙等の各種原稿を搬送する搬送機構の駆動源に用いられるものを例示できる。またモータの用途として、例えば、スキャナ、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の駆動モータや、プリンタ等の印字ヘッドを移動させるキャリッジリターンモータ等に用いられるものも例示できる。
【符号の説明】
【0057】
100 ロータ、101 回転軸、102 鉄芯、103 整流子、104インシュレータ、105 巻き線、106 バリスタ、107 大ワッシャ、108 小ワッシャ、201 ケース、202 大軸受、203 駆動マグネット、204 マグネットピン、205 補助ヨーク、301 ブラシホルダ、302 小軸受、303 ブラシアームユニット、3031 防振ゴム、3032 ブラシアーム、3033 ブラシ、400 歯車ユニット
図1
図2
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