特許第6761637号(P6761637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761637
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】特定の脂肪酸鎖分布を有するベタイン
(51)【国際特許分類】
   C07C 233/38 20060101AFI20200917BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20200917BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20200917BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20200917BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20200917BHJP
   C11D 1/90 20060101ALN20200917BHJP
   C11D 1/04 20060101ALN20200917BHJP
   C11D 3/20 20060101ALN20200917BHJP
【FI】
   C07C233/38
   A61K8/42
   A61Q5/02
   A61Q11/00
   A61Q19/10
   !C11D1/90
   !C11D1/04
   !C11D3/20
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-15786(P2016-15786)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-141684(P2016-141684A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】15153151.4
(32)【優先日】2015年1月30日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリア ヤヴォルスカ−マスランカ
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ベゴイーン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー シュプリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク シューフ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ クライン
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−189788(JP,A)
【文献】 特開平06−145693(JP,A)
【文献】 特開平03−153797(JP,A)
【文献】 特開2000−053997(JP,A)
【文献】 特開平10−231277(JP,A)
【文献】 特開2003−277792(JP,A)
【文献】 特開平06−049435(JP,A)
【文献】 油化学,1978年,Vol.27,p.190
【文献】 熱帯農業,1991年,Vol.35,pp.240-243
【文献】 Journal of the American Oil Chemists' Society,1995年,Vol.72,pp.1587-1589
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61Q
C11D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I):
【化1】
[前記式中、
n=1〜10であり、
1CO=パーム核油のアシル基の混合物である]
の脂肪酸アミドアルキルベタインを21〜55質量%の量で含有する水溶液において、
前記アシル基の混合物は、前記混合物の全アシル基に対して、オレイン酸アシル基の含分が12〜21質量%、かつ、リノール酸アシル基の含分が2.5〜4質量%である、前記水溶液。
【請求項2】
n=2〜5である、請求項1に記載の水溶液。
【請求項3】
n=3である、請求項2に記載の水溶液。
【請求項4】
前記脂肪酸アミドアルキルベタインを21〜49質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水溶液。
【請求項5】
前記脂肪酸アミドアルキルベタインを31〜39質量%の量で含有することを特徴とする、請求項4に記載の水溶液。
【請求項6】
前記アシル基の混合物は、オレイン酸アシル基の含分が13〜17質量%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水溶液。
【請求項7】
前記アシル基の混合物は、オレイン酸アシル基の含分が14〜15質量%であることを特徴とする、請求項6に記載の水溶液。
【請求項8】
前記アシル基の混合物は、リノール酸アシル基の含分が2.5〜3.5質量%であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水溶液。
【請求項9】
前記アシル基の混合物は、リノール酸アシル基の含分が2.5〜3質量%であることを特徴とする、請求項8に記載の水溶液。
【請求項10】
pHの値が、3.1〜12.9の範囲にあることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の水溶液。
【請求項11】
pHの値が、3.6〜7.9の範囲にあることを特徴とする、請求項10に記載の水溶液。
【請求項12】
pHの値が、4.1〜6.9の範囲にあることを特徴とする、請求項11に記載の水溶液。
【請求項13】
遊離脂肪酸を含有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の水溶液。
【請求項14】
グリセリンを含有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の水溶液。
【請求項15】
さらなる界面活性剤を含有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、例えばパーム核油をベースとする、特定の脂肪酸鎖分布を有するベタインであり、ここでパーム核油は不飽和C18脂肪酸の含分が向上している。
【背景技術】
【0002】
現在、工業的には主に、ココナツ油をベースとするベタインが使用されている。特に、活性含分が高く高度に濃縮されたベタインは、従来ほぼココナツ油のみをベースとするコカミドプロピルベタインとして利用できる。天然のココナツ油は、オレイン酸割合(C18:1)を、トリグリセリド中に含有される全脂肪酸に対して、最大10質量%含有し、よってベタインを製造するために使用される工業的な脂肪酸留分は、オレイン酸含分を0〜10質量%有する。ココナツ油は、パーム核油とは、(特にオレイン酸含分中における)脂肪酸鎖分布が異なり、これはココナツ油の場合には一般的に5〜10質量%、パーム核油の場合には一般的に10〜20質量%である。
表1:ココナツ油とパーム核油の脂肪酸鎖分布(記載は質量%)、国際食品規格委員会のCodex Alimentarius(CODEX STAN 210-1999)に従ったガスクロマトグラフ分析に基づくもの。
【表1】
表2:ココナツ油とパーム核油の脂肪酸鎖分布(記載は質量%)、Thieme ROEMPP Online, Georg Thieme Verlag, 2014に従ったガスクロマトグラフ分析に基づくもの。
【表2】
【0003】
既に80年代に、相応する市販で利用可能なベタインが、特許文献1に開示されており、これは炭素原子数が6〜18の脂肪酸をベースとするベタインを製造するための方法に関し、水溶液中でω−ハロゲンアルキルカルボン酸により脂肪酸アミドを四級化することが記載されている。その実施例では、ココナツ油により処理される。
【0004】
特許文献2は、高度に濃縮された流動性、及びポンプ給送可能な、ベタイン含分が少なくとも32質量%であるベタイン水溶液の製造方法を開示しており、この方法では、ミセル状の粘稠剤を添加しながら、第三級アミン窒素を含有する化合物をω−ハロゲンカルボン酸で四級化する。脂肪酸としては、任意で硬化されていてよいココナツ脂肪酸混合物、又はパーム核脂肪酸混合物が提案されている。その実施例では、ココナツ油でのみ処理される。
【0005】
特許文献3は、好適には硬化されたココナツ脂肪酸又はココナツ脂肪酸の平均に相当する脂肪酸混合物のアシル基をベースとする、液状のベタイン水溶液を開示しており、ここで前記溶液は、固体含分が少なくとも40質量%であり、pH値が5〜8であり、アミノアミド含分が1質量%以下であり、その特徴は、平均で8〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸1種以上、又は平均で8〜24個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸1種以上の含分が1〜3質量%(溶液に対して)、グリセリンが0〜4質量%(溶液に対して)であることである。脂肪酸としては、任意で硬化されていてよいココナツ脂肪酸混合物、又はパーム核脂肪酸混合物が提案されており、ここでは硬化された脂肪酸混合物が好ましい。その実施例では、ココナツ油及び/又はオレイン酸含分が最大11%の脂肪で作業されているに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許第2926479号明細書
【特許文献2】欧州特許第1659109号明細書
【特許文献3】欧州特許第0560114号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、公知のベタインに比して改善された適用技術特性(例えば良好な発泡性及び/又は改善された粘稠度)を有する新規ベタインを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外なことに、脂肪酸鎖分布においてオレイン酸含分が高められた特別なパーム核油から誘導される、パーム核油をベースとするベタインは、適用技術的に利点を有することが判明した。
【0009】
よって本発明の対象は、請求項1に記載のように、脂肪酸アミドアルキルベタインである。
【0010】
本発明のさらなる対象は、本発明による脂肪酸アミドアルキルベタインの使用であって、化粧品、医薬品、及び技術的な適用における使用である。
【0011】
本発明の利点は、特に水性界面活性剤調製物の粘稠度が改善されることである。これによれば、本発明によるベタインの存在下では、同様の組成を有する水性界面活性剤調製物中で、本発明によらないベタインを含有するものよりも、高い粘稠度が達成される。さらに、本発明によらないベタインを本発明によるベタインと交換すると、調製物中で添加する粘稠剤又は食塩の量も、粘度を失うことなく減らすことができる。或いはまた、粘稠剤粘度が同じままで、本発明によるベタインの量を、粘度を失うことなく減らすことができる。これに相応して、つまり本発明によるベタインは、一般的に化粧品界面活性調製物の総濃度を低下させることができ、これによってより大きな効率が得られる。塩の含分が減ることによってさらに、刺激の少なさ(Mildheit)、肌触り(Hautgefuehl)、及び界面活性調製物の腐食に対して有利に作用する。
【0012】
本発明によるベタインのさらなる利点は、撹拌、振動、又は他のあらゆる剪断力作用のもとで強化された発泡が、本発明によらないベタインと比べてより迅速に、水溶液中に生じることである。強化された発泡形成は通常、使用量の低減、ひいては供給源の節約を適用者にもたらす。
【0013】
本発明によるベタインのさらなる利点は、本発明によらないベタインと比較して、繊維織布に適用した後の剛性が低減することである。
【0014】
本発明によるベタインの別の利点は、本発明によらないベタインと比較して、繊維織布に適用した後の柔軟性が向上することである。
【0015】
本発明の対象は、下記一般式Iに記載の脂肪酸アミドアルキルベタインである:
【化1】
上記式中、
nは1〜10、好ましくは2〜5、特に3であり、
1COは、パーム核油のアシル基の混合物であり、
その特徴は、アシル基の混合物は、オレイン酸アシル基の含分が、混合物の全アシル基に対して、12〜21質量%、好ましくは13〜17質量%、特に好ましくは14〜15質量%であることにある。
【0016】
よって本願では、脂肪酸アミドアルキルベタインの混合物を特許請求する。
【0017】
本発明との関連で「パーム核油のアシル基の混合物」とは、この混合物が以下に挙げる量(質量%で記載)で各アシル基を有することであり、ここで挙げた質量%は、混合物中に含有される全アシル基に対するものである:
【表3】
【0018】
よってこの関連で「パーム核油のアシル基の混合物」とは、本来パーム核油から製造されたものではないが、例えば合成化合物を前記アシル基分布に混合することによって調整されたアシル基の混合物のことでもある。
【0019】
それぞれのアシル基含分は、2種の液体クロマトグラフィー法を組み合わせることによって実験的に測定できる。この際、アシル基中に炭素原子を8〜18個有する混合物の各ベタインをまず、HPLC/RIによって、R. Gerhardsらが記載した方法(Modern methods for the analysis of cocamidopropyl betaines; Gerhards. Rら著、「Tenside, Surfactants, Detergents」、1996年、33(1):1-12)に従って分別する。この方法は、オレイルアミドプロピルベタイン割合が存在する場合、アシル基中にある炭素原子数が16〜18のベタイン(C16、C18:0、C18:1、及びC18:2)のためのピーク分離をもたらすには不充分なため、この割合は第二の勾配HPLC法によって分別する。これにより、RPカラムによって(逆相カラム、Hypersil Gold 100 mm×3 mm; 5μ, Thermofisher)、50℃で、0.05質量%の水性ギ酸アンモニウム溶液の勾配(pHは4.2にギ酸で調整)で、及びアセトニトリル(勾配プログラム:10%のアセトニトリルで開始して、一分間維持、それから15分で、アセトニトリル10%から95%へと直線状の勾配、それから10分、アセトニトリル95%で維持)、ここでそれぞれのベタインフラクションは、CADにより(Charged Aerosol Detector=装填アエロゾル検知器、Dionex Corona Ultra RS, Thermo Scientific社製)、検知する。
【0020】
よってアシル基が8〜14個の炭素原子を有する各ベタインのアシル基含分、並びにアシル基が16〜18個の炭素原子を有するベタイン(C16、C18:0、C18:1、及びC18:2)のアシル基含分の合計は、HPLC/RI測定のピーク面積パーセントから測定することができる。
【0021】
アシル基が炭素原子を16〜18個有する各ベタイン(C16、C18:0、C18:1、及びC18:2)のアシル基含分は、HPLC/CAD測定からの面積パーセントを、HPLC/RI測定から得られるこれら4種のベタインのピーク面積パーセントの合計に標準化して得られる。このために、HPLC/CAD測定から得られる各ベタインのピーク面積パーセントを、HPLC/RI測定から得られるこれら4種のベタインのピーク面積パーセントの合計と掛け、それからHPLC/CAD測定から得られるこれら4種のベタインのピーク面積パーセントの合計で割る。
【0022】
「アシル基含分」とは常に、存在する全てのアシル基に対する質量割合として規定される。
【0023】
「ココナツ油」と「ココナツオイル」という用語は、同義で使用する。
【0024】
「パーム核油」と「パーム核オイル」という用語は、同義で使用する。
【0025】
全てのパーセンテージ(%)は、特に記載のない場合、質量パーセントである。
【0026】
別の好ましい実施態様において、本発明による脂肪酸アミドアルキルベタインの特徴は、混合物のアシル基が、オレイン酸アシル基の含分を、混合物の全アシル基に対して、19〜21質量%含有することである。
【0027】
本発明による好ましい脂肪酸アミドアルキルベタインの特徴は、パーム核油のアシル基の混合物が、リノール酸アシル基(C18:2)の含分を、混合物の全アシル基に対して、1.5〜4質量%、好ましくは2〜3.5質量%、特に好ましくは2.5〜3質量%含有することにある。
【0028】
本発明による特に好ましい脂肪酸アミドアルキルベタインの特徴は以下の通りである:パーム核油のアシル基の混合物は、
・オレイン酸アシル基の含分が、混合物の全アシル基に対して12〜21質量%であり、・リノール酸アシル基の含分が、混合物の全アシル基に対して2〜4質量%であり、
・特にオレイン酸アシル基の含分が、混合物の全アリル基に対して13〜21質量%であり、
・リノール酸アシル基の含分が、混合物の全アシル基に対して2〜4質量%である。
【0029】
水溶液中に含有されている本発明の脂肪酸アミドアルキルベタインが、本発明によれば好ましい。よって本発明の対象は、本発明による脂肪酸アミドアルキルベタインを含有する水溶液である。特に好ましいのは、完全かつ明らかに水溶液中に溶解した脂肪酸アミドアルキルベタインである。
【0030】
本発明との関連で「水溶液」とは、全組成物に対して水含分が少なくとも10質量%の組成物であると理解される。
【0031】
本発明によれば水溶液は、25℃、圧力1barで液状であるのが好ましい。特に好ましくは、25℃での粘度が1〜9999mPasの範囲であり、ここで粘度はAnton Paar社の粘度計(Modell MCR 301、プレート・プレート型(40mm))、温度25℃で、0.1s−1〜1000s−1の剪断範囲で測定する。
【0032】
本発明による水溶液は、本発明による脂肪酸アミドアルキルベタインを好ましくは、水溶液全体の量に対して、15〜55質量%、好ましくは21〜49質量%、特に好ましくは31〜39質量%の量で含有する。
【0033】
これによって例えば、特定の濃縮型食器洗い機用洗剤を、比較的高度に濃縮されたベタインのみを用いることによって製造できる。さもなくば食器洗い機用調製物の水含分が高過ぎ、活性物質の割合が少なすぎることになってしまうからである。ベタイン含分は、100%から、水、塩、及びグリセリンのパーセンテージ割合の合計を引いた差分を計算することによって、又は乾燥残渣含分のパーセンテージと、塩及びグリセリンのパーセンテージ割合の合計との差によって計算される。含分の特定は専門的に、例えばOil and Soap, 22, 115, (1945年)、及びJ.A.O.A.C., 26, 99, (1943年)、及びProc.Sci.Sect. Tollet Goods Ass'n, 5, (1946年)を用いて、並びにDIN 51777、及びDGF E--III 10、及びDGF C--III 13a、並びにDGF H-III 9、並びにDGF B-Il 3 / C-III 12によって行う。
【0034】
本発明によれば好ましくは、本発明による脂肪酸アミドアルキルベタインを含有する水溶液は、pH値が3.1〜12.9、好ましくは3.6〜7.9、特に好ましくは4.1〜6.9の範囲である。
【0035】
本発明との関連で「pH値」とは、25℃で5分間撹拌した後に、ISO 4319 (1977)に従って較正したpH電極で測定した値として規定される。
【0036】
本発明によれば、n=3である本発明による脂肪酸アミドアルキルベタインを含有する水溶液が特に好ましく、その濃度は溶液全体に対して15〜55質量%、好ましくは21〜49質量%、特に好ましくは31〜39質量%であるが、その特徴は、パーム核油のアシル基の混合物が、オレイン酸アシル基の含分を、混合物の全アシル基に対して12〜21質量%、好ましくは13〜17質量%、特に好ましくは14〜15質量%含有し、特に好ましくはパーム核油のアシル基の混合物が、リノール酸アシル基の含分を、混合物の全アシル基に対して、2〜4質量%含有することである。
【0037】
本発明によれば、n=3である本発明による脂肪酸アミドアルキルベタインを含有する水溶液が極めて特に好ましく、その濃度は溶液全体に対して15〜55質量%、特に好ましくは31〜39質量%であり、パーム核油のアシル基の混合物は、オレイン酸アシル基の含分が、混合物の全アシル基に対して13〜21質量%であり、特に好ましくはパーム核油のアシル基の混合物は、リノール酸アシル基の含分が、混合物の全アシル基に対して、2〜4質量%である。
【0038】
本発明による脂肪酸アミドアルキルベタインは、例えば独国特許第2926479号明細書、又は独国特許第4207386号明細書(C1)の方法により製造できる。
【0039】
脂肪酸アミドアルキルベタイン含分を水溶液中で相応して向上させるために例えば、水を蒸発によって除去することができる。
【0040】
製造条件によって、アミドアミンもベタインも、遊離脂肪酸の残留含分を僅かに含有することができる。これはアミドアミンでは酸価として、ベタインでは遊離脂肪酸として特定可能であり、例えばM. J. Cooper、M. W. Anders著、Anal. Chem. , 1974年、46 (12), pp 1849〜1852に記載されている。
【0041】
本発明によればこの水溶液は好ましくは、遊離脂肪酸、特にパーム核油の脂肪酸を含有する。遊離脂肪酸は、溶液全体に対して好ましくは0.05〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%の量で含有されている。
【0042】
さらに、本発明による溶液がグリセリンを含有すれば有利であり得るため好ましく、その量は0.05〜5質量%、特に好ましくは1.0〜3.0質量%である。
【0043】
本発明による脂肪酸アミドアルキルベタインは有利には、水性調製物、好ましくはケア用調製物及び洗浄調製物、特に化粧品調製物、及び皮膚科用調製物を製造するために使用できる。よって、本発明による脂肪酸アミドアルキルベタインを含有する調製物(特に化粧品用調整物と皮膚科用調製物)は、同様に本発明の対象である。
【0044】
本発明による好ましい調製物はさらに、少なくとも1種のさらなる界面活性剤、特にラウレス硫酸ナトリウムを含有する。このような調製物は例えば、シャンプー、シャワージェル、バスオイル、液体石鹸、口腔洗浄液、家庭用洗浄剤、工業用洗浄剤、食器洗い機用洗剤、テキスタイルケア剤、及びテキスタイル仕上げ剤である。
【0045】
以下の実施例では、本発明は単に例示的に記載されているに過ぎず、本発明は実施例に挙げた態様に制限されるべきではない。本発明の適用範囲は、明細書と特許請求の範囲全体から得られる。
【実施例】
【0046】
例1:アミドアミン
ベタインの前段階としてまずアミドアミンを、ジメチルアミノプロピルアミンと相応する脂肪酸ベースのトリグリセリドとの反応により、公知の方法で欧州特許第656346号明細書に従って製造した。トリグリセリドとしては、硬化したココナツ油、硬化していないココナツ油、並びに硬化していないパーム核油、及び前記原料の混合物を使用した。合成が終わった後、全てのアミドアミンは、酸価及びエステル価が、最大2mgKOH/gである。
【0047】
アミドアミンAは、以下の脂肪酸鎖分布を有するトリグリセリドから製造した:
【表4】
【0048】
アミドアミンBは、以下の脂肪酸鎖分布を有するトリグリセリドから製造した:
【表5】
【0049】
アミドアミンCは、以下の脂肪酸鎖分布を有するトリグリセリドから製造した:
【表6】
【0050】
アミドアミンDは、以下の脂肪酸鎖分布を有するトリグリセリドから製造した:
【表7】
【0051】
アミドアミンEは、以下の脂肪酸鎖分布を有するトリグリセリドから製造した:
【表8】
【0052】
アミドアミンFは、以下の脂肪酸鎖分布を有するトリグリセリドから製造した:
【表9】
【0053】
例2:ベタイン(本発明によらない)
全アシル基に対してオレイン酸基を0.2%含有するベタインAの合成:
欧州特許第0560114号明細書に従って、アミドアミンAを、モノクロロ酢酸ナトリウムと反応させてベタインAにし、アミドアミン含分を0.5%に低下させた。この生成物は、乾燥残渣が45.8%、NaCl含分が6.4%、グリセリン含分が2.6%であり、これによってベタイン含分は、36.8%と算出された。
【0054】
全アシル基に対してオレイン酸基を6.0%含有するベタインBの合成:
欧州特許第0560114号明細書に従って、アミドアミンBを、モノクロロ酢酸ナトリウムと反応させてベタインBにし、アミドアミン含分を0.5%に低下させた。この生成物は、乾燥残渣が45.8%、NaCl含分が6.8%、グリセリン含分が2.6%であり、これによってベタイン含分は、36.4%と算出された。
【0055】
全アシル基に対してオレイン酸基を11.0%含有するベタインCの合成:
欧州特許第0560114号明細書に従って、アミドアミンCを、モノクロロ酢酸ナトリウムと反応させてベタインCにし、アミドアミン含分を0.5%に低下させた。この生成物は、乾燥残渣が45.5%、NaCl含分が7.4%、グリセリン含分が2.5%であり、これによってベタイン含分は、35.6%と算出された。
【0056】
例3:ベタイン(本発明による)
全アシル基に対してオレイン酸基を13.5%含有するベタインDの合成:
C18含分が比較的高いため、また約45%の水溶液における合成の間、公知の方法では著しい粘度上昇が生じるため、アミドアミンDをモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させてまず、乾燥残渣が37%のベタインD*にして、アミドアミン含分を0.4%に低下させた。続いて、乾燥質量含分が45.1%、NaCl含分が7.8%、グリセリン含分が2.4%の溶液が得られるような量で水を蒸発させて、ベタインDを製造し、これによってベタイン含分は、溶液全体に対して34.9%となる。
【0057】
全アシル基に対してオレイン酸基を15.8%含有するベタインEの合成:
C18含分が比較的高いため、また約45%の水溶液における合成の間、このC18含分から公知の方法では著しい粘度上昇が生じるため、アミドアミンEをモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させてまず、乾燥残渣が37%のベタインE*にして、アミドアミン含分を0.4%に低下させた。続いて、乾燥質量含分が44.3%、NaCl含分が7.6%、グリセリン含分が2.3%の溶液が得られるような量で水を蒸発させて、ベタインEを製造し、これによってベタイン含分は、溶液全体に対して34.4%となる。
【0058】
全アシル基に対してオレイン酸基を19.8%含有するベタインFの合成:
C18含分が比較的高いため、また約45%の水溶液における合成の間、このC18含分から公知の方法では著しい粘度上昇が生じるため、アミドアミンFをモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させてまず、乾燥残渣が37%のベタインF*にして、アミドアミン含分を0.4%に低下させた。続いて、乾燥質量含分が45.0%、NaCl含分が7.3%、グリセリン含分が2.4%の溶液が得られるような量で水を蒸発させて、ベタインFを製造し、これによってベタイン含分は、溶液全体に対して35.3%となる。
【0059】
全てのベタインA〜Fについて、これらの脂肪酸鎖分布は、先に使用したトリグリセリドの脂肪酸鎖分布に相当することが、合成後に確認された。
【0060】
例4:化粧品調製物の粘稠度
粘稠度は、非常に慣用の、市販の界面活性剤系で試験した。調製物の成分は、一般的に認知されたINCI命名法の形で、英語の用語で知られている。適用例におけるあらゆる濃度は、質量%で記載されている。粘度の測定は、Brookfield社製の粘度計によって25℃で行った(Brookfield LVF、2アーム式、30rpm)。
【0061】
表3及び表4のデータで実証されているように、使用したベタインのみが異なる調製物は、明らかに粘度が高い(本発明によらないベタインA又はBの代わりに、本発明によるベタインE又はFを使用した場合)。
【0062】
表5のデータに示されているように、所定の調製物粘度は、既に本発明によるベタインを、本発明によらないベタインを添加するよりも僅かな量、添加することによって達成される。
【0063】
表3:標準的な界面活性剤調製物における粘度比較
【表10】
【0064】
表4:Texapon(登録商標)NSO(BASF SE、28質量%)を32%、及びベタインを8%含有する水性調製物における塩濃度に応じた、粘度比較
【表11】
【0065】
表5:調製物の粘度(3500mPas)に必要なベタイン含分
【表12】
【0066】
例5:発泡性
SITA測定(c=0.5%、T=30℃、10d°H(ドイツ硬度)の水、pH=6、1500rpm)において、本発明によるベタインD及びEは、本発明によらないベタインA及びCに比べて、明らかに発泡性が良好である。その結果が、表6に示されている。
【0067】
表6:0.5%の水溶液中の発泡性
【表13】
【0068】
例6:テキスタイル織布上にベタインを適用した後の柔軟性と剛性
柔軟性と剛性を比較するために、wfk-Testgewebe GmbH社のニットにフラー布(Foulard)でベタインを適用し(ローラ塗布、Mathis AG社製のHVF型、0.25%の(活性)溶液からの排出物=柔軟性測定のための0.003g/g、実験室用の乾燥機(Mathis AG社製のLTE型)で織布を乾燥、105℃で2分間+滞留時間、及び150℃で3分間固定(滞留時間無し)、テキスタイルを約24時間、温度調整可能な空間で23℃、湿度50%で貯蔵)、それから組織の柔軟性分析機(Emtec Electron GmbH製)で行った。表7にはその結果が、5回の測定からの平均値として記載されている。柔軟性というパラメータの場合、本発明によるベタインDの適用は、本発明によらないベタインA及びCに比べて有利であることが実証されている。比較的低い値は、柔軟性が向上していることを意味するからである。剛性というパラメータの場合、より高い値は剛性が低下していることを示し、これによりここでも本発明によるベタインDの適用は、本発明によらないベタインA及びCよりも有利であることが実証されている。
【0069】
表7:TSA測定結果
【表14】
【0070】
例7:高度に濃縮された食器洗い機用洗剤の製造
本願実施例のように、粘度が低いことと常温加工性に基づき、市場での標準品である28%のナトリウムラウリルエーテルスルフェート溶液を作製した場合、表8から分かるように、独国特許出願第102007005942号明細書に従って、濃縮度が低いベタインD*に比べて、比較的高度に濃縮されたベタインDを使用するだけで、高度に濃縮された食器洗い機用洗剤が製造できた。
【0071】
表8:pH値6での、高度に濃縮された食器洗い機用洗剤の製造
【表15】