(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761639
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】バックル
(51)【国際特許分類】
A44B 11/28 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
A44B11/28
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-20538(P2016-20538)
(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公開番号】特開2017-136285(P2017-136285A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】南部 円香
(72)【発明者】
【氏名】金子 仁
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/175634(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/093313(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0013121(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/002235(WO,A1)
【文献】
特開2007−229307(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/103009(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結可能で、各々所定の部材に取り付けられる取付部(24、42)を有するプラグ(12)とソケット(14)から成り、
前記プラグ(12)は、一対の脚部(20)を備え、前記一対の脚部(20)の先端部(20a)寄りの位置に各々係合部(22)が形成され、
前記ソケット(14)は、上面部(45)と下面部(46)が互いに間隔を空けて対面するとともに、前記上面部(45)と前記下面部(46)の端部に前記プラグ(12)が挿入可能な挿入口(40a)を有し、前記上面部(45)と前記下面部(46)間の空間により前記挿入口(40a)から連続する嵌合部(40)が形成され、
前記嵌合部(40)を形成した前記上面部(45)の内面と前記下面部(46)の内面の少なくとも一方に、前記係合部(22)が係合する一対の被係合部(52)を備え、
前記上面部(45)および前記下面部(46)の少なくとも一方に、表裏方向に開口し一対の前記被係合部(52)から各々連続した一対の透孔(54)を備え、
前記ソケット(14)の前記取付部(42)側の、前記上面部(45)と前記下面部(46)間に、前記嵌合部(40)に連通し前記挿入口(40a)に対向する開口部(62,78)が形成され、
前記上面部(45)と前記下面部(46)の少なくとも一方の前記取付部(42)側で、かつ左右方向の中央部に、前記開口部(62,78)に連通するとともに表裏方向に貫通し前記挿入口(40a)には開口していない凹形状の開口凹部(58,72,76,82)が形成され、前記開口凹部(58,72,76,82)は、前記上面部(45)および前記下面部(46)の少なくとも一方の一対の前記透孔(54)の間に形成され、前記透孔(54)と前記開口凹部(58,72,76,82)の間に、前記上面部(45)または前記下面部(46)の一部で形成された側縁部(64)が設けられ、前記開口凹部(58,72,76,82)の左右方向の幅は、前記一対の脚部(20)の互いに対向する側面間の左右方向の間隔よりも狭く形成されていることを特徴とするバックル。
【請求項2】
前記開口凹部(58,72,76,82)は、前記上面部(45)と前記下面部(46)の一方に形成され、前記上面部(45)と前記下面部(46)の他方の、前記取付部(42)側の端部により前記開口凹部(58,72,76,82)が覆われている請求項1記載のバックル。
【請求項3】
前記嵌合部(40)の前記取付部(42)側の端面に端面壁部(60)が設けられ、前記開口部(62)は前記端面壁部(60)に形成されている請求項1記載のバックル。
【請求項4】
前記開口部(62)は、左右方向の幅が前記一対の透孔(54)の前記開口凹部(58)側の側縁間の間隔より狭く形成されている請求項1記載のバックル。
【請求項5】
前記開口部(78)は、左右方向の幅が前記一対の透孔(54)の前記開口凹部(76)側の側縁間の間隔より広く形成されている請求項1記載のバックル。
【請求項6】
前記プラグ(12)は、一対の脚部(20)の間に前後方向に突出したガイド部(30)を有し、
前記プラグ(12)と前記ソケット(14)が係合した状態で、前記ガイド部(30)の先端は、前記開口凹部(58)の前記挿入口(40a)側の端縁に位置する請求項1記載のバックル。
【請求項7】
前記端面壁部(60)は、前記側縁部(64)の前記取付部(42)側の端縁にて、前記上面部(45)および前記下面部(46)を連結して形成されている請求項3記載のバックル。
【請求項8】
前記開口部(62,78)は、前記嵌合部(40)の表裏面間の幅全体にわたって開口している請求項1記載のバックル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いに係合及び係合解除可能なプラグとソケットとを備え、テープやベルト、その他の部材の別々の部分同士を連結状態から分離するバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二つの連結対象物を着脱自在に連結するバックルとして、例えば特許文献1に開示されているバックルがあった。このバックルは、プラグとソケットから成り、プラグは、テープ等が挿通され連結されるテープ挿通孔が設けられた取付部であるテープ通し部と、テープ通し部の幅方向両端部から互いに平行に延びる一対の脚部とを有する。各脚部は、弾性変形可能に設けられ、先端部に、表裏方向に突出して形成された一対の係合突部が設けられている。プラグが嵌合するソケットにも、テープ挿通孔が設けられたテープ通し部が設けられ、テープ通し部の一方の端部から中空のプラグ嵌合部が一体に設けられている。プラグ嵌合部は、先端部が開口した上板と下板とから成り、上板及び下板の幅方向両側縁には、操作開口部が形成されている。操作開口部の基端部側には、プラグ嵌合部に挿入された一対の脚部の一対の係合突部とそれぞれ係合可能な被係合部が形成されている。そして、ソケットの下板のテープ通し部側の端部には、テープ通し部の長手方向に平行に延びた孔部が形成され、この孔部の周縁部からソケット内に突部が設けられ、プラグの係合突起が係合可能に設けられている。従って、プラグとソケットの係合状体で、孔部からはプラグの係合突起が露出している。
【0003】
また、特許文献2に開示されたバックルも上記特許文献1と同様の基本的構成を備えているが、ソケットのテープ通し部側には、開口した解放口が設けられているとともに、この開放口から、ソケットの下板にプラグの挿入口側に向かって凹状に形成された開口縁が連続して設けられている。これにより、この解放口には、プラグの係合突部の先端面と裏面が露出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−160166号公報
【特許文献2】特開2011−254929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたバックルは、ソケットに形成された孔部が、プラグの挿入方向と直交する面に設けられているため、ソケット内にゴミや雪等の異物が詰まっていた場合、その異物が孔部から排出されずソケット内に詰まり、ソケットの挿入や、係合突部の係合ができない場合があった。
【0006】
また、特許文献2に開示されたバックルの場合、ソケットのテープ通し部側に解放口が形成されているので、ソケット内に多少の異物があっても、プラグの挿入時に、異物がソケットのテープ通し部側の解放口から排出される。しかし、解放口が大きく、かえってソケット内に異物が入りやすいという問題があった。さらに、プラグとソケットの係合状態で、解放口の凹状の開口縁から異物が入り、一対の脚部間に挟み込んだ場合、異物によりプラグの係合突部が互いに近づく方向に揺動できず、係合状態から解除できない場合があった。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みて成されたもので、ソケット内に異物があってもプラグの係合を容易に行うことができ、係合解除も確実に可能なバックルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、互いに連結可能で、各々所定の部材に取り付けられる取付部を有するプラグとソケットから成り、前記プラグは、一対の脚部を備え、前記一対の脚部の先端部寄りの位置に各々係合部が形成され、前記ソケットは、上面部と下面部が互いに間隔を空けて対面するとともに、前記上面部と前記下面部の端部に前記プラグが挿入可能な挿入口を有し、前記上面部と前記下面部間の空間により前記挿入口から連続する嵌合部が形成され、前記嵌合部を形成した前記上面部の内面と前記下面部の内面の少なくとも一方に、前記係合部が係合する一対の被係合部を備え、前記ソケットの前記取付部側の、前記上面部と前記下面部間に、前記嵌合部に連通し前記挿入口に対向する開口部が形成され、前記上面部と前記下面部の少なくとも一方の前記取付部側で、かつ左右方向の中央部に、前記開口部に連通するとともに表裏方向に貫通し
前記挿入口には開口していない凹形状の開口凹部が形成され、前記開口凹部の左右方向の幅は、前記一対の脚部の互いに対向する側面間の左右方向の間隔よりも狭く形成されているバックルである。
【0009】
前記ソケットは、前記上面部および前記下面部の少なくとも一方に、表裏方向に開口し一対の前記被係合部から各々連続した一対の透孔を備え、前記開口凹部は、
前記上面部および前記下面部の少なくとも一方の一対の前記透孔の間に形成され、前記透孔と前記開口凹部の間に、前記上面部または前記下面部の一部で形成された側縁部が設けられたものである。
【0010】
前記開口凹部は、前記上面部と前記下面部の一方に形成され、前記上面部と前記下面部の他方の、前記取付部側の端部により、前記開口凹部が覆われているものである。
【0011】
前記嵌合部の前記取付部側の端面に端面壁部が設けられ、前記開口部は前記端面壁部に形成されているものである。前記開口部は、左右方向の幅が前記一対の透孔の前記開口凹部側の側縁間の間隔より狭く形成されている。または、前記開口部は、左右方向の幅が前記一対の透孔の前記開口凹部側の側縁間の間隔より広く形成されているものでも良い。
【0012】
前記プラグは、一対の脚部の間に前後方向に突出したガイド部を有し、前記プラグと前記ソケットが係合した状態で、前記ガイド部の先端は、前記開口凹部の前記挿入口側の端縁に位置するものでも良い。
【0013】
前記端面壁部は、前記側縁部の前記取付部側の端縁にて、前記上面部および前記下面部を連結して形成されている。また、前記開口部は、前記嵌合部の表裏面間の幅全体にわたって開口しているものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明のバックルは、ソケット内に異物があってもプラグの係合を容易に行うことができ、係合解除も確実に可能なものである。これにより、操作性が良く、係合及び係合解除が確実に行われ、信頼性や安全性の高いバックルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の第一実施形態のバックルのプラグとソケットの係合状態を示す斜視図である。
【
図2】第一実施形態のバックルのプラグとソケットの係合状態を示す背面図である。
【
図3】第一実施形態のバックルのプラグとソケットの係合状態を示す底面図である。
【
図4】第一実施形態のバックルのソケットの斜視図である。
【
図5】第一実施形態のバックルのソケットの正面図である。
【
図6】第一実施形態のバックルのソケットの背面図である。
【
図7】第一実施形態のバックルのソケットの右側面図である。
【
図8】第一実施形態のバックルソケットの底面図である。
【
図11】第一実施形態のバックルのプラグを示す斜視図である。
【
図12】第一実施形態のバックルのプラグの正面図である。
【
図13】第一実施形態のバックルのプラグの背面図である。
【
図14】この発明の第二実施形態のバックルを示す斜視図である。
【
図15】第二実施形態のバックルのソケットの背面図である。
【
図16】第二実施形態のバックルのソケットを示す斜視図である。
【
図17】この発明の第三実施形態のバックルを示す斜視図である。
【
図18】第三実施形態のバックルのソケットの背面図である。
【
図19】第三実施形態のバックルのソケットを示す斜視図である。
【
図20】この発明の第四実施形態のバックルを示す斜視図である。
【
図21】第四実施形態のバックルのソケットの背面図である。
【
図22】第四実施形態のバックルのソケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の第一実施形態のバックル10について、
図1〜
図13を基にして説明する。このバックル10は、
図1〜
図3に示すように、プラグ12と、プラグ12が嵌合して係止されるソケット14とから成るもので、テープやベルト、その他の一対の部材に各々取り付けられ、互いに連結及び連結解除を任意に可能にする。以後の説明において、プラグ12をソケット14に挿入または離脱する方向を前後方向とし、プラグ12をソケット14に挿入する方向を前方向、連結状態にあるプラグ12をソケット14から離脱する方向を後ろ方向とし、前後方向とは、
図2の紙面において上下方向でもある。ソケット14の後述する一対の操作孔50が対向する方向であって、プラグ12の一対の脚部20が対向する方向を左右方向とし、左右方向とは、
図2の紙面において左右方向でもある。左右方向及び前後方向に直交する方向を表裏方向また厚み方向という。
【0017】
プラグ12は、例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレンなどの合成樹脂で一体成形により形成されている。プラグ12は、
図11〜
図13に示すように、ソケット14に挿入される脚部20と、脚部20の先端部20aに位置した先端連結部23、及び先端連結部23のさらに先端寄りの位置に一体に設けられた係合部である係合突起22を備えている。係合突起22とは反対側には、一対の脚部20の基端部20bに一体に設けられた取付部24が設けられている。取付部24は、テープやベルト、その他の所定の部材を挿通し連結する部分として機能する。
【0018】
一対の脚部20は、互いに対称に取付部24から突出し、各脚部20は、外側脚片25と内側脚片27を備え、外側脚片25と内側脚片27の突出方向先端に、先端連結部23が一体に設けられ、外側脚片25と内側脚片27の先端が互いに連結されている。外側脚片25は、突出方向の中央部が左右方向の外側に膨出し、膨らんだ部分がプラグ12の係合を解除する操作部26になる。内側脚片27は、外側脚片25の左右方向の内側に位置し、外側脚片25よりも左右方向の厚みが薄く形成されている。さらに内側脚片27は、外側脚片25よりも大きな曲率で左右方向の外側に湾曲した形状に形成されている。
【0019】
脚部20の先端部20aに設けられた先端連結部23は、操作部26よりも表裏方向の厚みが薄く形成され、外側脚片25と内側脚片27の厚み方向の中央部に位置して前後方向に延出している。係合突起22は、先端連結部23の先端に位置して表裏方向の両方に突出して各々設けられている。係合突起22には、脚部20の基端部20b側に面して、係止段部22a設けられ、係止段部22aは、後述するソケット14の被係合部52の被係止段部52aに係合可能に形成されている。
【0020】
一対の脚部20の基端部20b側では、外側脚片25と内側脚片27の基端が、取付部24の両端から一体に延出したアーム部28により、各々連結されている。これにより、各脚部20は、各々外側脚片25と内側脚片27及び先端連結部23とアーム部28により囲まれた空間29を有して形成されている。各アーム部28は、取付部24の両端であって、一対の脚部20の基端部20bに位置し、左右方向の中央部に向かって脚部20の突出方向に傾斜した直線状に形成され、略V字状に設けられている。中央部の互いに対向したアーム先端部28a同士は一定の隙間を有し、後述するガイド部30のスリット32の端部として対向している。
【0021】
各アーム部28のアーム先端部28aが対向した左右方向中央部には、プラグ12のソケット14への挿入動作をガイドするガイド部30が、脚部20の突出方向と平行に設けられている。ガイド部30は、アーム先端部28aから互いに平行に左右方向に対向して、一体に前後方向に延出し細長いU字状に形成されている。ガイド部30の先端部30aは、脚部20の先端連結部23付近で互いに連結され、ガイド部30のU字状の間の空間がスリット32として形成されている。先端部30aの位置は、脚部20の先端連結部23の先端よりも僅かに前後方向の基端部20b寄りに位置している。
【0022】
取付部24は、プラグ12の端部の第1のバー33と、一対の脚部20の基端部20bを連結した第2のバー34とが左右方向に平行に設けられ、その間にテープ挿通孔24aが形成され一体に設けられている。さらに、第2のバー34とアーム部28で囲まれる部分も空間が設けられ、テープ挿通孔24bを形成している。第1のバー33は、取付部24の表裏方向の幅と等しく形成され、第2のバー34は、取付部24の表裏方向の表面側に位置して、表裏方向に第1のバー33よりも薄く形成されている。いる。
【0023】
ソケット14も、例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレンなどの合成樹脂で一体成形により形成されている。ソケット14は、
図4〜
図10に示すように、プラグ12の脚部20が挿入される中空の嵌合部40と、嵌合部40の挿入口40aとは反対側に位置した取付部42とから成る。取付部42には、テープやベルト、その他の所定部材を挿通するテープ挿通孔42aが形成され、テープ部材等を連結する連結バー44が設けられている。
【0024】
ソケット14の嵌合部40は、上面部45と下面部46が互いに所定間隔を空けて対面し、プラグ12の挿入空間を形成している。上面部45と下面部46の挿入口40a側の端部は、その中央部に向かって前後方向の挿入口40a中央に傾斜する略V字状に形成されている。ソケット14の左右方向の側面は、互いに対向した側壁部48が設けられ、側壁部48の前後方向の中央部に、脚部20の操作部26が各々露出する操作孔50が各々形成されている。操作孔50は、左右方向に互いに近づくように凹状に湾曲して形成され、操作部26が左右方向に露出可能に形成されている。
【0025】
嵌合部40の上面部45と下面部46の内面には、挿入口40aから連続して、プラグ12の挿入動作をガイドするガイド溝56が各々形成されている。ガイド溝56は、挿入口40aから前後方向に設けられ、挿入口40a側が広くラッパ状に形成されて、ガイド部30が嵌合して前後方向の摺動動作をガイドする。嵌合部40の上面部45と下面部46内の取付部42寄りの位置には、一対の係合突起22が係合する一対の被係合部52が、嵌合部40内の空間に、互いに対向するように表裏方向に突出して設けられている。各被係合部52は、係合突起22の係止段部22aが対面して係合する被係止段部52aを備え、係止段部22aと被係止段部52aは、脚部20の突出方向と直交する面を有して設けられている。各被係合部52には、前後方向に対して傾斜し互いに取付部42に向かって近づくように設けられた面である側面部52bが形成されている。側面部52bは、プラグ12の挿入時に、係合突起22に当接して、脚部20を互いに近づける方向に弾性変形させる。
【0026】
下面部46には、テープ挿通孔42aに近接して表裏方向に開口した一対の透孔54が設けられ、透孔54の挿入口40a側の縁部が、各被係合部52の周縁部に面一に連続して設けられている。ソケット14のテープ挿通孔42a側の端面は、端面壁部60により閉じているとともに、端面壁部60の中央部には、テープ挿通孔42aと嵌合部40内を連通した開口部62が形成されている。開口部62は、ソケット14の上面部45と下面部46間の幅で前後方向に開口し、左右方向の幅が、一対の透孔54の互いに対向する内側縁部の間隔より狭く形成されている。
【0027】
開口部62には、下面部46の取付部42側端縁から凹状に開口凹部58が連続して形成されている。開口凹部58は、下面部46にのみ設けられ、上面部45の取付部42側の端部により覆われている。開口凹部58は、開口部62の左右方向の幅と等しく形成され、透孔54間に位置している。従って、各透孔54と開口凹部58の間には、下面部46の一部である側縁部64が形成されている。また、開口凹部58の左右方向の幅W1は、一対の脚部20の対向する側面間の左右方向の幅W2の左右方向の幅よりも狭く形成され、開口凹部58の位置は、一対の脚部20を、開口凹部58が形成された下面部46に投影した箇所の間に設けられている。つまり、
図2の背面図に表すように、この実施形態のバックル10は左右方向に対称に形成され、開口凹部58は下面部46の取付部44側にて、左右方向の中央に形成されており、開口凹部58の両側に一対の脚部20が位置している。そして、各透孔54は、係合突起22が露出可能な位置に設けられている。なお、この実施形態のバックル10では、開口凹部58が下面部46に形成されるが、開口凹部58が上面部45に形成される場合には、開口凹部58は、一対の脚部20を上面部45に投影した箇所の間に設けられる。
【0028】
次に、この実施形態のバックル10の係合動作及び使用方法について以下に説明する。まず、このバックル10のプラグ12にテープ部材等を取り付けるには、プラグ12の取付部24のテープ挿通孔24bの裏面側から連結用の図示しないテープ部材の端部を挿入し、第2のバー34の外周を経て、プラグ12の表面側からテープ挿通孔24aに挿入し、テープ挿通孔24aの裏面側で自身のテープ部材に重ねられ、長さ調節自在に引き出される。一方、ソケット14に取り付けられる図示しないテープ部材等は、1本の連結バー44に調節不能に連結される。
【0029】
プラグ12とソケット14の係合は、
図1、
図2に示すように、プラグ12の脚部20をソケット14の嵌合部40の挿入口40aに対向させて、プラグ12をソケット14内へ押し込む。脚部20が嵌合部40内に挿入されると、脚部20の係合突起22の外側面が被係合部52の側面部52bに当接して、一旦脚部20が互いに近づく方向に弾性変形しながら挿入される。さらにプラグ12を押し込むと、側面部52bから係合突起22が離れて弾性変形した一対の脚部20が元に戻り、一対の脚部20の係合突起22の係止段部22aが、各々被係合部52の被係止段部52aに対面して、係合突起22と被係合部52が互いに係合する。
【0030】
プラグ12のソケット14への挿入時に、ソケット14内にゴミや雪等の異物が入っていた場合も、プラグ12の挿入動作に伴ってソケット14内の異物が、テープ挿通孔42aに連通した開口凹部58及び開口部62から排出される。
【0031】
プラグ12とソケット14との連結を解除するには、一対の操作部26を外側方から押圧して、プラグ12の係合突起22をソケット14の被係合部52と対面しない位置に弾性変形させる。この状態で、プラグ12とソケット14が互いに離れる方向に僅かに相対的に移動させると、脚部20の弾性力により、係合突起22が被係合部52の側面部52bに沿って係合位置から押し出されるように離れる。これにより、容易に係合が解除される。
【0032】
さらに、プラグ12とソケット14の係合状態で、開口凹部58や開口部62から雪等の異物が入る場合も、プラグ12の一対の脚部20の係合突起22は、開口凹部58から側縁部64を挟んで形成されているので、雪等の異物は側縁部64の幅だけ係合突起22間に入る量が減る。これにより、プラグ12の係合解除操作に際して、脚部20が互いに近づく方向への揺動が、側縁部64の幅の分だけ容易に可能であり、係合解除動作を確実に行うことができる。
【0033】
この実施形態のバックル10によれば、テープ挿通孔42aに連通した開口凹部58及び開口部62がソケット14に設けられているので、プラグ12の挿入時に、ソケット14内に入り込んでいた雪やゴミ等の異物が容易に排出され、プラグ12とソケット14の係合動作を確実に行うことができる。さらに、プラグ12とソケット14の係合状態で、開口凹部58や開口部62から雪等の異物が侵入した場合も、プラグ12の一対の脚部20の係合突起22間は、側縁部64の幅の分だけ異物が入り難く、プラグ20の揺動スペースが形成され、係合解除動作も確実に行うことができる。
【0034】
次に、この発明の第二実施形態について
図14〜
図16に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態のバックル70は、テープ挿通孔42aに連通した開口凹部72が、下面部46の前後方向の中央部よりも挿入口40a側に延びて形成されたものである。開口凹部72は、テープ挿通孔42aに向かって僅かに広がるように台形状の形状に設けられ、台形の下底部分が、ソケット14の端面の開口部62に連通している。
【0035】
この発明のバックル70によれば、上記実施形態と同様の作用効果を有し、ソケット14内に雪等の異物がある場合もプラグ12の挿入がより容易であり、プラグ12の係合解除動作も確実に行うことができる。
【0036】
次に、この発明の第三実施形態について
図17〜
図19に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態のバックル74は、ソケット14のテープ挿通孔42a側の端面全面がテープ挿通孔42aに開口し、開口部78が形成され、開口部78の側端縁から凹状に開口凹部76が連続して形成されている。開口部78は、左右方向の両端縁部78aを残して、ソケット14のテープ挿通孔42a側のほぼ端面全面に開口しているので、ソケット14内の脚部20の係合突起22の先端が、開口部78に露出している。開口部78の左右方向の幅は、一対の透孔54の開口凹部76側の側縁間の間隔より広く形成されている。
【0037】
この発明のバックル74によれば、上記実施形態と同様の作用効果を有し、ソケット14のテープ挿通孔42a側の端面全面がテープ挿通孔42aに開口して開口部78が形成されているので、ソケット14内に雪等の異物がある場合もプラグ12の挿入がより容易であり、プラグ12の係合解除動作も確実に行うことができる。
【0038】
次に、この発明の第四実施形態について
図20〜
図22に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態のバックル80は、テープ挿通孔42aに連通した開口凹部82が、下面部46の前後方向の中央部よりも挿入口40a側に延びて形成されたものである。開口凹部82は、テープ挿通孔42aに向かって長方形状に設けられ、長方形の短辺部分が、ソケット14の端面の開口部62に連通している。
【0039】
この発明のバックル80によれば、上記実施形態と同様の作用効果を有し、ソケット14内に雪等の異物がある場合もプラグ12の挿入がより容易であり、プラグ12の係合解除動作も確実に行うことができる。
【0040】
なお、この発明のバックルは、上記各実施形態に限定されるものではなく、ソケットのテープ挿通孔側の端面に形成された開口部や凹状の開口凹部は、ソケットの下面部以外に上面部に形成されていても良く、両方に設けられていても良い。開口部や開口凹部の大きさや形状も適宜設定可能なものであり、ソケットの端面部分と下面部等で連通して、開口部と開口凹部が形成されていれば良い。一対の透孔も、上面部に形成されていても良く、下面部と上面部の両方に形成されていても良い。さらに、一対の透孔は、開口凹部と各々所定幅の側縁部を挟んで形成されていれば良く、側縁部の幅も適宜設定し得るものである。また、脚部に設けられた係合部は、脚部の先端部以外の基端側に設けられ、ソケットの被係合部が、側壁部の内側に設けられたバックルにも適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10,70,74,80 バックル
12 プラグ
14 ソケット
20 脚部
22 係合突起
24,42 取付部
24a,24b,42a テープ挿通孔
40 嵌合部
40a 挿入口
44 連結バー
45 上面部
46 下面部
50 操作孔
52 被係合部
54 透孔
58,72,76,82 開口凹部
60 端面壁部
62,78 開口部
64 側縁部