特許第6761681号(P6761681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761681
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】袋体用不織布シート
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/04 20120101AFI20200917BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20200917BHJP
   B32B 5/12 20060101ALI20200917BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20200917BHJP
   D04H 3/011 20120101ALI20200917BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   D04H3/04
   B32B5/26
   B32B5/12
   B32B27/36
   D04H3/011
   B65D77/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-128978(P2016-128978)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-3185(P2018-3185A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】中村 光男
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−213560(JP,A)
【文献】 特開平05−132869(JP,A)
【文献】 特開2013−082084(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0004860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
B65D67/00−79/02
81/18−81/30
81/38
85/88
D04H1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)で形成され且つ延伸された複数の繊維が一方向に沿って配列された第1繊維層と、
ポリエチレンテレフタレート共重合体(PET共重合体)で形成され且つ延伸された複数の繊維が一方向に沿って配列された第2繊維層と、
を含み、
前記第1繊維層を構成する繊維の平均繊維径及び前記第2繊維層を構成する繊維の平均繊維径が10μm以下であり、
前記第1繊維層と前記第2繊維層とが互いの繊維が交差するように積層されており、
曲げ硬さが1mN・cm未満である
袋体用不織布シート。
【請求項2】
前記PET共重合体の融点は210〜230℃である、請求項1に記載の袋体用不織布シート。
【請求項3】
前記PET及び前記PET共重合体は、顔料を含んでいないか、あるいは、1重量%未満の顔料を含む、請求項1又は2に記載に袋体用不織布シート。
【請求項4】
前記第1繊維層と前記第2繊維層とが熱圧着されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の袋体用不織布シート。
【請求項5】
ロール状の巻取体として形成されている、請求項1〜4のいずれか一つに記載の袋体用不織布シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の袋体用不織布シートから形成された、茶葉を封入するためのティーバッグ用の袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布シートに関し、特に、袋体を形成するための好適に用いられ得る袋体用不織布シートに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるティーバッグにおいて、紅茶や緑茶などの原料(茶葉)は透水性を有する袋体に封入されている。ティーバッグ用の袋の素材としては、従来、主に不織布シートやナイロン紗が使用されている。例えば、特許文献1には、融点が230℃以上の合成樹脂からなる高融点不織布と融点が100〜170℃の合成樹脂からなる低融点不織布とを合わせてヒートシールして形成された不織布シートをティーバッグ用の袋の素材として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2513153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に不織布シートは、ナイロン紗に比べて、生産性が高いという利点を有している。しかし、従来の不織布シートは、ナイロン紗に比べて、外観の高級感や透過視認性(透明性)が劣るという課題がある。なお、ここでいう透過視認性(透明性)とは、主に袋体を形成した場合における当該袋体の収容物の外部からの視認し易さのことをいい、例えばティーバッグにおける茶葉の状態の確認し易さが該当する。
【0005】
そこで、本発明は、従来の不織布シートに比べて、外観の高級感があり、かつ、透過視認性(透明性)に優れる袋体用不織布シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、袋体用不織布シートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)で形成され且つ延伸された複数の繊維が一方向に沿って配列された第1繊維層と、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PET共重合体)で形成され且つ延伸された複数の繊維が一方向に沿って配列された第2繊維層と、を含む。前記第1繊維層を構成する繊維の平均繊維径及び前記第2繊維層を構成する繊維の平均繊維径が10μm以下であり、前記第1繊維層と前記第2繊維層とが互いの繊維が交差するように積層されており、曲げ硬さが1mN・cm未満である
【発明の効果】
【0007】
前記袋体用不織布シートは、従来の不織布シートに比べて、外観の高級感と高い透過視認性(透明性)が得られる。また、製袋時に、例えば第2繊維層を内側にしてヒートシール等によって接着することにより、袋体が容易かつ安定して形成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る袋体用不織布シートの概略構造を示す図である。
図2】前記袋体用不織布シート、ナイロン紗及び従来の不織布シートの曲げ硬さの測定結果を示す図である。
図3】前記袋体用不織布シート(及びこれを用いたティーバッグ)と、ナイロン紗(及びこれを用いたティーバッグ)と、従来の不織布シート(及びこれを用いたティーバッグ)との比較結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の概要を説明する。本発明は、袋体を形成するために好適に用いられ得る袋体用不織布シートを提供する。袋体は、例えば所定の大きさに形成され又は切断された前記袋体用不織布シートの端部同士をヒートシールや超音波シールなどによって接着(融着)することにより形成され得る。前記袋体用不織布シートを用いて形成される袋体は、通気性や透水性を有する袋として使用することができ、その形状や用途などは特に制限されない。通気性を有する袋は、例えば野菜などを収容する袋であり得、透水性を有する袋は、例えば茶葉等を封入するティーバッグ用の袋や水切り袋であり得る。
【0010】
本発明による袋体用不織布シートは、いわゆる積層不織布として形成される。具体的には、本発明による袋体用不織布シートは、第1熱可塑性樹脂で形成され且つ延伸された複数の繊維が一方向に沿って配列された構成を有する第1繊維層(ウエブ)と、第2熱可塑性樹脂で形成され且つ延伸された複数の繊維が一方向に沿って配列された構成を有する第2繊維層(ウエブ)とを含み、前記第1繊維層と前記第2繊維層とが互いの繊維が交差するように積層されている。前記第1繊維層を構成する各繊維と前記第2繊維層を構成する各繊維とは、必ずしも直交する必要はなく、斜めに交差していてもよい。また、前記第1繊維層と前記第2繊維層とは、例えば熱圧着によって一体化(接着)されている。
【0011】
ここで、前記第1熱可塑性樹脂で形成された繊維及び前記第2熱可塑性樹脂で形成された繊維の延伸倍率は、2〜10倍であり、好ましくは3〜5倍である。このようにするのは、延伸倍率が低すぎると強度が十分に得られないおそれがあり、延伸倍率が高すぎるとばらつきが大きくなったり、白化を招いたりするおそれがあるからである。
【0012】
また、本発明による袋体用不織布シートを構成する繊維(構成繊維)の平均繊維径は、10μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm未満であり、本発明による袋体不織布シートの目付は、5〜100g/m、好ましくは5〜60g/m、より好ましくは8〜40g/mであり、本発明による袋体不織布シートの厚さは、50〜130μmである。このようにするのは、袋体を形成した場合に、通気性、透水性及び軽量性を確保しつつ、収容物の落下や流出を防止するためである。特にティーバッグ用の袋を形成した場合においては、良好な浸出性と透過視認性(透明性)とを確保しつつ、封入された茶葉等の流出を防止するためである。
【0013】
前記構成繊維の平均繊維径が10μm以下(好ましくは、5μm以上10μm未満)であればよく、繊維径が10μmを超える繊維や繊維径が5μm未満の繊維が含まれてもよい。また、前記第1繊維層を構成する繊維の平均繊維径と、前記第2繊維層を構成する繊維の平均繊維径とが異なってもよい。例えば、前記第1繊維層の構成繊維の平均繊維径が8μmであり、前記第2繊維層の構成繊維の平均繊維径が7μmであり得る。この場合において、前記第1繊維層を構成する繊維のうちの90%以上の繊維の径が5〜11μm(すなわち、8±3μm)の範囲内にあることが好ましく、前記第2繊維層を構成する繊維のうちの90%以上の繊維の径が4〜10μm(すなわち、7±3μm)の範囲内にあることが好ましい。
【0014】
前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂としては、主に透過視認性(透明性)の低下を防止するため、それぞれ顔料を含まない熱可塑性樹脂が使用される。但し、これに限られるものではなく、透過視認性(透明性)の低下が少なければ、少量の顔料(例えば1重量%未満の顔料)を含む熱可塑性樹脂が使用されてもよい。また、前記第1熱可塑性樹脂(すなわち、第1繊維層)と前記第2熱可塑性樹脂(すなわち、第2繊維層)とは、互いの融点(及び軟化点)が異なることになるが、前記第1熱可塑性樹脂の融点と前記第2熱可塑性樹脂の融点との差(融点差)は、50℃以下であることが好ましく、より好ましくは20℃以上かつ40℃以下である。このようにするのは、前記第1繊維層と前記第2繊維層とを一体化(接着)するための熱圧着、及び/又は、袋体を形成する際(製袋時)のヒートシールや超音波シールを、比較的容易に且つ安定して行えるようにするためである。
【0015】
具体的には、本発明による袋体用不織布シートにおいては、融点が約260℃のポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)が前記第1熱可塑性樹脂として用いられており、融点が240℃未満、好ましくは、融点が210〜230℃のポリエチレンテレフタレート共重合体(以下「PET共重合体」という)が前記第2熱可塑性樹脂として用いられている。これらの樹脂は、紡糸性がよいことに加えて、延伸性及び分子配向性もよいため、本発明による袋体用不織布シートの構成繊維の原料として好適だからである。ここで、前記PET及び前記PET共重合体は、顔料を含んでいないか、あるいは、1重量%未満の顔料を含む。
【0016】
前記PET共重合体は、例えば、PETのジカルボン酸成分について、テレフタル酸の一部をコモノマーで置換して生成され得る。ジカルボン酸成分のコモノマーは、例えば、IPA(イソフタル酸)である。あるいは、PET共重合体は、PETのジオール成分について、エチレングリコールの一部をコモノマーで置換して生成される。ジオール成分のコモノマーは、例えば、1,3−プロパンジオール(PDO)、1,4−ブタンジオール(BDO)及びネオペンチルグリコール(NPG)の少なくとも一つである。
【0017】
本発明による袋体用不織布シートは、上記構成を有するため、従来の一般的な不織布シートに比べて、例えば次のような利点を有している。(a)織物のような外観を有しているため、意匠性が高い。(b)軽量かつ高強度である。(c)厚みを薄くすることができると共に、厚みムラが少ない。(d)寸法安定性が高く、加工性及び保形性もよい。(e)透明性が高い。
【0018】
このため、本発明による袋体用不織布シートは、通気性や透水性を有する様々な形状の袋体を形成するために使用される。特に、本発明による袋体用不織布シートは、軽量性、透過視認性(透明性)及び外観の意匠性が要求される又は高いことが好まれる袋体を形成するための好適に用いられ得る。例えば、本発明による袋体用不織布シートを用いてティーバッグ用の袋を形成すると、従来の一般的な不織布シートを用いた場合に比べて、ティーバッグ用の袋の透過視認性(透明性)を向上させたり、ティーバッグ用の袋に高級感を付与したりすることができる。
【0019】
次に、本発明による袋体用不織布シートの実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る袋体用不織布シート(以下単に「不織布シート」という)の概略構造を示している。図1に示されるように、実施形態に係る不織布シート1は、第1繊維層2と第2繊維層3とが互いの繊維が直交(厳密に直交している必要はなく、概ね直交していればよい)するように積層された直交積層不織布として形成されている。なお、以下の説明において、「縦方向」とは、不織布シート1を製造する際の機械方向(MD:Machine Direction)、つまり、製造される不織布シート1の長さ方向のことをいい、「横方向」とは、縦方向に垂直な方向(TD:Transverse Direction)、つまり、製造される不織布シート1の幅方向のことをいう。実施形態に係る不織布シート1は、例えば次のようにして製造される。
【0020】
[第1繊維層2の形成]
第1繊維層2は、例えば、溶融押出し機、搬送コンベア及び横延伸機を含む第1紡糸装置によって形成される。前記溶融押出し機は、前記第1熱可塑性樹脂としてのPETを溶融して溶融状態のPETを複数の紡糸ノズルから繊維として押出すると共に、押出された繊維に高速エアなどを衝突させて横方向(前記搬送コンベアに搬送方向に直交する方向)に振動させることによって、概ね横方向に延びる複数の繊維を前記搬送コンベア上に形成する(横紡糸工程)。前記横延伸機は、前記溶融押出し機によって形成された複数の繊維を横方向に延伸する(横延伸工程)。これにより、PETで形成され且つ延伸された複数の繊維が横方向に沿って配列された、換言すれば、複数の横方向に延びる延伸繊維(横繊維)がほぼ平行に並んで構成された第1繊維層(=横ウエブ)2が形成される。
【0021】
[第2繊維層3の形成]
第2繊維層3は、例えば、溶融押出し機、搬送コンベア及び縦延伸機を含む第2紡糸装置によって形成される。前記溶融押出し機は、前記第2熱可塑性樹脂としてのPET共重合体を溶融し、溶融状態のPET共重合体を複数の紡糸ノズルから繊維として押出すことによって、概ね縦方向(前記搬送コンベアの搬送方向)に延びる複数の繊維を前記搬送コンベア上に形成する(縦紡糸工程)。前記縦延伸機は、前記溶融押出し機によって形成された複数の繊維を縦方向に延伸する(縦延伸工程)。これにより、PET共重合体で形成され且つ延伸された複数の繊維が縦方向に沿って配列された、換言すれば、複数の縦方向に延びる延伸繊維(縦繊維)がほぼ平行に並んで構成された第2繊維層(=縦ウエブ)3が形成される。
【0022】
[不織布シート1の形成]
不織布シート1は、第1繊維層(横ウエブ)2と第2繊維層(縦ウエブ)3とを積層する積層工程、及び、積層された第1繊維層(横ウエブ)2と第2繊維層(縦ウエブ)3とを熱圧着によって接着して一体化する熱圧着工程を経て形成される。不織布シート1の形成は、例えば、搬送コンベア及び少なくとも一方が表面に凹凸を有するエンボスロールである一対のヒートロールを含む熱圧着機を用いて行われる。この場合において、前記積層工程では、第1繊維層(横ウエブ)2と第2繊維層(縦ウエブ3)とが重ねて前記搬送コンベア上に載置され、その後、前記熱圧着工程において、前記搬送コンベア上に重ねて載置された横ウエブ2と縦ウエブ3とを前記一対のヒートロールの間を通過させることによって接着する。このようにして実施形態に係る不織布シート1が製造される。実施形態に係る不織布シート1は、上述のように直交積層不織布であり、繊維が縦横に配列された構造を有する。また、実施形態に係る不織布シート1は、横ウエブ2(横繊維)と縦ウエブ3(縦繊維)とが互いに異なる熱可塑性樹脂で形成されているという特徴を有する。
【0023】
以上のようにして形成された不織布シート1は、通常、長尺帯状の形態を有しており、ロール状に巻き取られた巻取体として保管され及び/又は移送される。そして、一般的には、袋体を形成する際に、当該袋体の形状や用途に応じて所定の大きさに切断される。
【0024】
[袋体の形成]
不織布シート1を用いて袋体を形成する場合、所定の大きさに切断された不織布シート1の端部同士をヒートシールや超音波シールなどによって接着(溶着)する。ここで、不織布シート1においては、第1繊維層(横ウエブ)2の融点よりも第2繊維層(縦ウエブ)3の融点の方が低い。そのため、不織布シート1を用いて袋体を形成する場合には、不織布シート1の第2繊維層(縦ウエブ)3の端部同士が接着(溶着)され、その結果、第1繊維層(横ウエブ2)が外側面を構成し、第2繊維層(縦ウエブ3)が内側面を構成する袋体が形成される。なお、前記ヒートシール又は前記超音波シールなどにおける接着温度は、第1繊維層(横ウエブ)2の融点(約260℃)よりも低い温度、例えば、240〜250℃に設定される。このようにすると、製袋時に袋体の外側面を構成する第1繊維層(横ウエブ)2が溶けたり、変形したりすることが防止されるため、前記ヒートシール又は前記超音波シールなどが容易かつ安定して行えると共に、袋体の外観を害することもないからである。
【0025】
ところで、以上説明した不織布シート1は、第2繊維層(縦ウエブ)3の融点が第1繊維層(横ウエブ)2の融点よりも低くなるように形成されている。しかし、これに限られるものではなく、不織布シート1は、第1繊維層(横ウエブ)2の融点が第2繊維層(縦ウエブ)3の融点よりも低くなるように形成されてもよい。この場合においては、PET共重合体が前記第1熱可塑性樹脂として用いられ、PETが前記第2熱可塑性樹脂として用いられる。そして、製袋時には、第1繊維層(横ウエブ)2の端部同士が前記ヒートシール又は前記超音波シールなどによって接着され、第2繊維層(縦ウエブ)3が外側面を構成し、第1繊維層(横ウエブ)2が内側面を構成する袋体が形成される。また、第1繊維層2及び/又は第2繊維層3の上に第3繊維層などが追加されてもよい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明による袋体用不織布シートを実施例により具体的に説明する。但し、以下の実施例は、本発明を何ら限定するものではない。また、実施例及び比較例における各値は下記の方法で求めた。
【0027】
(1)第1繊維層(横ウエブ)及び第2繊維層(縦ウエブ)の構成繊維の平均繊維径
第1繊維層(横ウエブ)及び第2繊維層(縦ウエブ)のそれぞれの表面を走査型電子顕微鏡により撮影し、得られた写真から無作為にN(≧10)枚を選択し、選択したN枚の写真内の繊維の本数を数えると共に全ての繊維の径を測定した。選択したN枚の写真におけるデータを一つのデータとして扱い、N枚の写真中に含まれる繊維の総数及びすべての繊維の繊維径に基づき繊維径の平均値を求め、それを構成繊維の平均繊維径とした。
【0028】
(2)曲げ硬さ
コシの強さ(柔らかさ)の指標として、実施例及び比較例のそれぞれについて曲げ硬さを測定した。具体的には、実施例及び比較例のそれぞれについて、縦方向(MD方向)が長手となる複数のサンプル(試験片)を用意し、「JIS L1913 6.7.3 41.5°カンチレバー法」に対応した剛軟度試験機を用いて、縦方向(MD方向)の曲げ硬さ(mN・cm)を測定した。
【0029】
[実施例1−1:不織布シート1]
前記第1熱可塑性樹脂としてPET(融点:約260℃)を用いて第1繊維層(横ウエブ)2を形成し、前記第2熱可塑性樹脂としてPET共重合体(融点:約225℃)を用いて第2繊維層(縦ウエブ)3を形成した。なお、前記PET共重合体は、PETのジカルボン酸成分としてIPA(イソフタル酸)を共重合して得られたものである。
【0030】
形成された第1繊維層(横ウエブ)2の構成繊維の平均繊維径は8μm(繊度:約0.6デニール)であり、ばらつきの範囲は5〜11μmであった。つまり、第1繊維層(横ウエブ)2は、繊維径が8±3μmである複数の横繊維によって構成されていた。また、形成された第2繊維層(縦ウエブ)3の構成繊維の平均繊維径は7μm(繊度:約0.5デニール)であり、ばらつきの範囲は5〜9μmであった。つまり、第2繊維層(縦ウエブ)3は、繊維径が7±2μmである複数の縦繊維によって構成されていた。そして、形成された第1繊維層(横ウエブ)2と形成された第2繊維層(縦ウエブ)3とを積層し、エンボスロールを含む一対のヒートロールを用いた熱圧着(熱圧着温度:約185℃)によって一体化して不織布シート1を得た。得られた不織布シート1の目付は、19g/mであり、縦方向(MD方向)の曲げ硬さは、0.570mN・cmであった。
【0031】
[実施例1−2:袋体(ティーバッグ)]
得られた不織布シート1を所定の大きさに切断し、切断された不織布シート1の第2繊維層(縦ウエブ)3の端部同士をヒートシール(溶着温度:240〜250℃)によって接着して袋体を形成し、形成された袋体の内部に茶葉を封入してティーバッグを作製した。
【0032】
[比較例1−1:ナイロン紗]
市販のティーバッグに使用されているナイロン紗を用意した。かかるナイロン紗の目付は、22.6g/mであり、曲げ硬さは、0.225mN・cmであった。
【0033】
[比較例1−2:ナイロン紗を用いた袋体(ティーバッグ)]
比較例1−1のナイロン紗を用いて袋体を形成し、実施例1−2と同じ茶葉を封入してナイロン紗を用いたティーバッグを作製した。
【0034】
[比較例2−1:従来の不織布シート]
従来の不織布シートの一例として、第1繊維層(横ウエブ)及び第2繊維層(縦ウエブ)がPETを用いて形成された積層直交不織布を用意した。かかる従来の不織布シートにおいれ、第1繊維層(横ウエブ)の構成繊維の平均繊維径及び第2繊維層(縦ウエブ)の構成繊維の平均繊維径は10μm(繊度:1デニール)であり、ばらつきの範囲は、6〜12μmであった。また、従来の不織布シートの目付は、20.7g/mであり、曲げ硬さは、1.118mN・cmであった。なお、従来の不織布シートとして積層直交不織布を選択したのは、繊維がランダムに配置されている一般的な不織布シートでは、外観の意匠性や透過視認性(透明性)などの面で実施例1−1との間に明らかに差があり、比較対象としてはあまり好ましくないと考えられるからである。
【0035】
[比較例2−2:従来の不織布シートを用いた袋体(ティーバッグ)]
比較例2−1の従来の不織布シートを用いて袋体を形成し、実施例1−2と同じ茶葉を封入してナイロン紗を用いたティーバッグを作製した。
【0036】
[実施例と比較例との比較]
図2は、実施例1−1(不織布シート1)、比較例1−1(ナイロン紗)及び比較例2−1(従来の不織布シート)における曲げ硬さの測定結果を示している。図2に示されるように、実施例1−1の曲げ硬さは、1mN・cm未満であり、比較例2−1の曲げ硬さ)よりも比較例1−1の曲げ硬さに近い。すなわち、不織布シート1は、従来の不織布シートに比べて、織物であるナイロン紗に近い柔らかさを有することが確認された。
【0037】
実施例1−1(不織布シート1)、比較例1−1(ナイロン紗)及び比較例2−1(従来の不織布シート)の外観を比較した。外観の高級感について、実施例1−1は、比較例1−1にはやや劣るが、比較例2−1と比べるとかなり高く感じられた。また、透過視認性(透明性)については、比較例1−1が最も高く、次に実施例1−1が高く、比較例2−1は最も低かった。すなわち、不織布シート1は、従来の不織布シートに比べて、ナイロン紗に近い高級感と透過視認性を有することが確認された。なお、これらの結果は、ティーバッグ(実施例1−2、比較例1−2及び比較例2−2)の外観を比較した場合も同様である。
【0038】
次に、実施例1−2(不織布シート1を用いたティーバッグ)、比較例1−2(ナイロン紗を用いたティーバッグ)及び比較例2−2(従来の不織布シートを用いたティーバッグ)をそれぞれ同温の湯に浸して比較を行った。茶の浸出具合について、実施例1−2、比較例1−2及び比較例2−2の間にほとんど差はなかった。透過視認性(透明性)、具体的には、内部の茶葉の状態の確認し易さについて、実施例1−2は、比較例1−2にはやや劣るが、比較例2−2と比べると内部の茶葉の状態を鮮明に確認することができた。なお、上述のように、生産性(生産速度、生産コスト)については、ナイロン紗(比較例1−1)よりも不織布(実施例1−1、比較例2−1)の方が高い。これらの比較結果を図3に示す。
【0039】
以上説明したように、本発明による袋体用不織布シート、すなわち、「PETで形成され且つ延伸された複数の繊維が一方向に沿って配列された第1繊維層と、PET共重合体で形成され且つ延伸された複数の繊維が一方向に沿って配列された第2繊維層とを含み、前記第1繊維層を構成する繊維の平均繊維径及び前記第2繊維層を構成する繊維の平均繊維径が10μm以下であり、前記第1繊維層と前記第2繊維層とが互いの繊維が交差するように積層されている」という特徴を有する袋体用不織布シートは、従来の不織布シート(一般的な不織布シートや従来の積層直交不織布)よりもナイロン紗に近い外観や透過視認性(透明性)などを有している。このため、特に透過視認性(透明性)や外観の意匠性が要求される又は高いことが好まれるティーバッグの袋を形成するための好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0040】
1…不織布シート(袋体用不織布シート)
2…第1繊維層
3…第2繊維層
図1
図2
図3