特許第6761696号(P6761696)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6761696自転車用制御装置および自転車の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761696
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】自転車用制御装置および自転車の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20200917BHJP
   B62M 6/50 20100101ALI20200917BHJP
【FI】
   B62M6/45
   B62M6/50
【請求項の数】31
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-160498(P2016-160498)
(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公開番号】特開2018-27753(P2018-27753A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2018年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】土澤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩史
【審査官】 田中 成彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−068244(JP,A)
【文献】 特開2015−044526(JP,A)
【文献】 特開2014−139067(JP,A)
【文献】 特開2015−048056(JP,A)
【文献】 特開2016−107835(JP,A)
【文献】 特表2016−501157(JP,A)
【文献】 特開平08−150982(JP,A)
【文献】 特開平09−207865(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02724925(EP,A1)
【文献】 特開2011−000971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45
B62M 6/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する制御部を含み、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記制御部は前記モータを停止し、
前記制御部は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置に応じて、前記予め定める角度を変更する、自転車用制御装置。
【請求項2】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する制御部を含み、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記制御部は前記モータを停止し、
前記予め定める角度は、前記クランクのクランクアームが上死点を含む第1の範囲および下死点を含む第2の範囲にあるときに、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になった場合よりも、前記クランクのクランクアームが前記上死点から90°離れた回転位置を含む第3の範囲および前記下死点から90°離れた回転位置を含む第4の範囲にあるときに、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になった場合のほうが小さい、自転車用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置に応じて、前記予め定める角度を変更する、請求項2に記載の自転車用制御装置。
【請求項4】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する制御部を含み、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記制御部は前記モータを停止し、
前記予め定める角度は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置が、上下死点から離れるにつれて小さくなり、前記上下死点に近づくにつれて大きくなる、自転車用制御装置。
【請求項5】
前記予め定める角度は、前記クランクのクランクアームが上死点を含む第1の範囲および下死点を含む第2の範囲にあるときに、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になった場合よりも、前記クランクのクランクアームが前記上死点から90°離れた回転位置を含む第3の範囲および前記下死点から90°離れた回転位置を含む第4の範囲にあるときに、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になった場合のほうが小さい、請求項4に記載の自転車用制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置に応じて、前記予め定める角度を変更する、請求項4または5に記載の自転車用制御装置。
【請求項7】
前記予め定める角度は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置が、前記上下死点から離れるにつれて段階的に小さくなり、前記上下死点に近づくにつれて段階的に大きくなる、請求項4〜6のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、操作部から送信される信号、外部装置から送信される信号、または、前記自転車のクランクが所定回数に亘って回転するときの人力駆動力のプロファイルに応じて前記予め定める閾値を変更する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項9】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する制御部を含み、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下になる時点での前記クランクのクランクアームの角度位置から前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記制御部は前記モータを停止し、
前記制御部は、操作部から送信される信号、外部装置から送信される信号、または、前記自転車のクランクが所定回数に亘って回転するときの人力駆動力のプロファイルに応じて前記予め定める閾値を変更する、自転車用制御装置。
【請求項10】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する制御部を含み、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記制御部は前記モータを停止し、
前記制御部は、操作部から送信される信号、外部装置から送信される信号、または、前記自転車のクランクが所定回数に亘って回転するときの人力駆動力のプロファイルに応じて、前記予め定める閾値を変更する、自転車用制御装置。
【請求項11】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する制御部を含み、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下になる時点での前記クランクのクランクアームの角度位置から前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記制御部は前記モータを停止し、
前記制御部は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置に応じて、前記予め定める角度を変更する、自転車用制御装置。
【請求項12】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する制御部を含み、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下になる時点での前記クランクのクランクアームの角度位置から前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記制御部は前記モータを停止し、
前記予め定める角度は、前記クランクのクランクアームが上死点を含む第1の範囲および下死点を含む第2の範囲にあるときに、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になった場合よりも、前記クランクのクランクアームが前記上死点から90°離れた回転位置を含む第3の範囲および前記下死点から90°離れた回転位置を含む第4の範囲にあるときに、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になった場合のほうが小さい、自転車用制御装置。
【請求項13】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する制御部を含み、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下になる時点での前記クランクのクランクアームの角度位置から前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記制御部は前記モータを停止し、
前記予め定める角度は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置が、上下死点から離れるにつれて小さくなり、前記上下死点に近づくにつれて大きくなる、自転車用制御装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置に応じて、前記予め定める角度を変更する、請求項9または10に記載の自転車用制御装置。
【請求項15】
前記予め定める角度は、前記クランクのクランクアームが上死点を含む第1の範囲および下死点を含む第2の範囲にあるときに、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になった場合よりも、前記クランクのクランクアームが前記上死点から90°離れた回転位置を含む第3の範囲および前記下死点から90°離れた回転位置を含む第4の範囲にあるときに、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になった場合のほうが小さい、請求項9〜11のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項16】
前記予め定める角度は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置が、上下死点から離れるにつれて小さくなり、前記上下死点に近づくにつれて大きくなる、請求項9〜12のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項17】
前記予め定める角度は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置が、前記上下死点から離れるにつれて段階的に小さくなり、前記上下死点に近づくにつれて段階的に大きくなる、請求項16に記載の自転車用制御装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記クランクのクランクアームの上下死点と、前記自転車のフレームに対する前記クランクのクランクアームの角度位置との対応関係を、前記自転車の傾斜角度に基づいて補正する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項19】
前記角度情報は、前記クランクのクランクアームの角度位置に関する情報を含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項20】
前記自転車の傾斜角度を検出する傾斜検出部をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項21】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する制御部を含み、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記制御部は前記モータを停止し、
前記制御部は、前記クランクの回転速度に応じて、前記予め定める角度を変更する、自転車用制御装置。
【請求項22】
前記クランクの回転速度が高くなると、前記予め定める角度が小さくなる、請求項21に記載の自転車用制御装置。
【請求項23】
前記制御部は、前記人力駆動力が減少しているとき、前記クランクの減速度に応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項24】
前記制御部は、前記クランクの減速度が高くなると、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を高くする、請求項23に記載の自転車用制御装置。
【請求項25】
前記制御部は、前記クランクの回転速度が予め定める速度以下のとき、前記モータを停止する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項26】
前記クランクの回転速度を検出する速度検出部をさらに含む、請求項1〜25のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項27】
前記角度情報を出力するクランクセンサをさらに含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【請求項28】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する自転車の制御方法であって、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記モータを停止し、
前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置に応じて、前記予め定める角度を変更する、自転車の制御方法。
【請求項29】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する自転車の制御方法であって、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記モータを停止し、
前記予め定める角度は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクのクランクアームの角度位置が、上下死点から離れるにつれて小さくなり、前記上下死点に近づくにつれて大きくなる、自転車の制御方法。
【請求項30】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する自転車の制御方法であって、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記モータを停止し、
前記クランクの回転速度に応じて、前記予め定める角度を変更する、自転車の制御方法。
【請求項31】
自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する自転車の制御方法であって、
前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記モータを停止し、操作部から送信される信号、外部装置から送信される信号、または、前記自転車のクランクが所定回数に亘って回転するときの人力駆動力のプロファイルに応じて、前記予め定める閾値を変更する、自転車の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用制御装置および自転車の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自転車の推進をアシストするモータを、人力駆動力に応じて制御する自転車用制御装置が開示されている。この自転車用制御装置は、人力駆動力が第1の閾値以下の状態が所定時間継続した後にモータへの電流の供給を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4129084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の自転車用制御装置では、人力駆動力が第1の閾値以下の状態が所定時間継続した後にモータを停止するため、ゆっくりペダリングしているときでも、速くペダリングしているときでも、モータが停止するまでの時間が変わらない。クランクの回転速度が高くなるほど、ペダリングの停止に応じてモータが停止するまでに自転車が走行する距離が長くなってしまう。
本発明の目的は、クランクの回転速度が高くなっても、ペダリングの停止に応じてモータが停止するまでに自転車が走行する距離が長くなってしまうことを抑制することができる自転車用制御装置および自転車の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に従う自転車用制御装置の一形態は、自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する制御部を含み、前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記制御部は前記モータを停止する。
【0006】
制御部は、モータを駆動しているとき、人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、クランクが予め定める角度以上回転すると、モータを停止するため、人力駆動力が予め定めた閾値以下になってからモータが停止するまでの時間は、クランクの回転速度が高くなるほど短くなる。したがって、クランクの回転速度が高くなっても、ペダリングの停止に応じてモータが停止するまでに自転車が走行する距離が長くなってしまうことを抑制することができる。
【0007】
(2)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記クランクは、クランクアームを含み、前記角度情報は、前記クランクアームの角度位置に関する情報を含む。
角度情報がクランクアームの角度位置に関する情報を含むため、制御部がクランクアームの角度位置と予め定める角度との比較に基づいてモータを制御することができる。
【0008】
(3)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクアームの角度位置に応じて、前記予め定める角度を変更する。
【0009】
人力駆動力が予め定める閾値以下になったときのクランクアームの角度位置に応じて、制御部が予め定める角度を変更するため、クランクの回転状態に基づいて、モータを適切に停止することができる。
【0010】
(4)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記予め定める角度は、前記クランクアームが上死点を含む第1の範囲および下死点を含む第2の範囲にあるときに、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になった場合よりも、前記クランクアームが前記上死点から90°離れた回転位置を含む第3の範囲および前記下死点から90°離れた回転位置を含む第4の範囲にあるときに、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になった場合のほうが小さい。
【0011】
ライダーが自転車で通常走行しているとき、クランクアームの角度位置が上下死点から90°の位置では、通常、人力駆動力が最も大きくなる。このため、クランクアームの角度位置が上下死点から90°の位置で人力駆動力が予め定める閾値以下となる場合には、ライダーが意図的に人力駆動力を低下させていると考えられるので、モータをより速やかに停止させるのが好ましい。本自転車用制御装置では、クランクアームが上死点から90°離れた回転位置を含む第3の範囲および下死点から90°離れた回転位置を含む第4の範囲で、モータをより速やかに停止させることができる。
【0012】
(5)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記予め定める角度は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクアームの角度位置が、上下死点から離れるにつれて小さくなり、前記上下死点に近づくにつれて大きくなる。
【0013】
人力駆動力が予め定める閾値以下になったときのクランクアームの角度位置が上下死点から離れるにつれて予め定める角度が小さくなり、クランクアームの角度位置が上下死点に近づくにつれて予め定める角度が大きくなるため、クランクアームの上下死点において、モータによるアシストが必要であるにもかかわらずモータが停止することを抑制できる。
【0014】
(6)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記予め定める角度は、前記人力駆動力が前記予め定める閾値以下になったときの前記クランクアームの角度位置が、前記上下死点から離れるにつれて段階的に小さくなり、前記上下死点に近づくにつれて段階的に大きくなる。
【0015】
人力駆動力が予め定める閾値以下になったときのクランクアームの角度位置が上下死点から離れるにつれて予め定める角度が段階的に小さくなり、クランクアームの角度位置が上下死点に近づくにつれて予め定める角度が段階的に大きくなるため、制御に必要な情報量を少なくすることができる。
【0016】
(7)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記クランクアームの上下死点と、前記自転車のフレームに対する前記クランクアームの前記角度位置との対応関係を、前記自転車の傾斜角度に基づいて補正する。
【0017】
自転車が平道を走行する場合のクランクの上下死点と、自転車が上り坂または下り坂を走行する場合のクランクの上下死点とは、自転車のフレームに対する角度位置が異なる。
本自転車用制御装置では、クランクアームの上下死点と自転車のフレームに対するクランクアームの角度位置との対応関係を自転車の傾斜角度に基づいて補正するため、クランクアームの角度位置と予め定める角度との比較に基づいて好適にモータを停止することができる。
【0018】
(8)前記自転車用制御装置の一形態によれば、前記自転車の傾斜角度を検出する傾斜検出部をさらに含む。
自転車用制御装置が自転車の傾斜角度を検出する傾斜検出部を含むため、傾斜角度を精度よく取得できる。
【0019】
(9)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記クランクの回転速度に応じて、前記予め定める角度を変更する。
クランクの回転速度に応じて予め定める角度を変更するため、自転車の走行状態に応じて、モータを停止するタイミングを変更することができる。
【0020】
(10)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記クランクの回転速度が高くなると、前記予め定める角度が小さくなる。
クランクの回転速度が高くなると予め定める角度が小さくなるため、クランクの回転速度が高い状態から、ペダリングを停止したときにより速やかにアシストを停止することができる。
【0021】
(11)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記人力駆動力が減少しているとき、前記クランクの減速度に応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更する。
【0022】
人力駆動力が減少しているとき、クランクの減速度に応じて人力駆動力の変化に対するモータの応答速度を変更するため、クランクの減速度に応じてアシスト力を変更することができる。
【0023】
(12)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記クランクの減速度が高くなると、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を高くする。
クランクの減速度が高くなると人力駆動力の変化に対するモータの応答速度を高くするため、人力駆動力が減少して人力駆動力が予め定める閾値以下となってからクランクが予め定める角度以上回転するまでに、アシスト力を小さくすることができる。これにより、アシスト力が付与されている状態からアシスト力が付与されていない状態に切り替わるときのアシスト力の変化を小さくすることができる。
【0024】
(13)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記制御部は、前記クランクの回転速度が予め定める速度以下のとき、前記モータを停止する。
クランクの回転速度が予め定める速度以下のとき、モータを停止するため、人力駆動力が予め定めた閾値以下になったときにクランクが予め定めた角度未満の回転で停止するような場合でも、モータを速やかに停止することができる。
【0025】
(14)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記クランクの回転速度を検出する速度検出部をさらに含む。
自転車用制御装置がクランクの回転速度を検出する速度検出部を含むため、クランクの回転速度を精度よく取得できる。
【0026】
(15)前記自転車用制御装置の一例によれば、前記角度情報を出力するクランクセンサをさらに含む。
自転車用制御装置がクランクセンサを含むため、クランクの角度に関する角度情報を精度よく取得できる。
【0027】
(16)本発明に従う自転車の制御方法の一形態は、自転車の推進をアシストするモータを、前記自転車のクランクの角度に関する角度情報と、人力駆動力とに応じて制御する自転車の制御方法であって、前記モータが駆動しているとき、前記人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、前記クランクが予め定める角度以上回転すると、前記モータを停止する。
【0028】
モータが駆動しているとき、人力駆動力が予め定める閾値以下の状態で、クランクが予め定める角度以上回転すると、モータを停止するため、人力駆動力が予め定める閾値以下になってからモータが停止するまでの時間は、クランクの回転速度が高くなるほど短くなる。したがって、クランクの回転速度が高くなっても、ペダリングの停止に応じてモータが停止するまでに自転車が走行する距離が長くなってしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
上記自転車用制御装置および自転車の制御方法によれば、クランクの回転速度が高くなっても、ペダリングの停止に応じてモータが停止するまでに自転車が走行する距離が長くなってしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態の自転車用制御装置を含む自転車の電気的構成を示すブロック図。
図2図1の制御部によって実行される第1のアシスト停止処理のフローチャート。
図3】制御部によって実行される第2のアシスト停止処理のフローチャート。
図4】クランクアームの角度位置と予め定められる角度との対応付けを示すマップ。
図5】制御部によって実行される第3のアシスト停止処理のフローチャート。
図6】クランクアームの角度位置に対する人力駆動力の変化を示すグラフ。
図7】第2実施形態の自転車用制御装置について、傾斜角度に応じた人力駆動力とクランクアームの角度位置との関係を示すグラフ。
図8】傾斜角度と進角量および遅角量との対応付けを示すマップ。
図9】第3実施形態の自転車用制御装置について、基本走行補助力の時間変化を示すグラフ。
図10】走行補助力の時間変化を示すグラフ。
図11】クランクの減速度と時定数との対応付けを示すマップ。
図12】モータの応答速度と走行補助力の時間変化との関係を示すグラフ。
図13】第4実施形態の自転車用制御装置について、クランクの回転速度と予め設定される角度の補正値との対応付けを示すマップ。
図14】変形例の自転車用制御装置について、クランクアームの角度位置と予め定められる角度との対応付けを示すマップ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
図1図6を参照して、第1実施形態の自転車用制御装置10について説明する。
図1に示されるように、自転車用制御装置10は、制御部12を含む。自転車用制御装置10は、自転車(図示略)に設けられている。自転車には、ドライブユニット20、トルクセンサ30、クランクセンサ32、速度検出部34、傾斜検出部38、バッテリ40、および、クランク50が設けられている。クランク50は、クランクアーム54を含む。好ましくは、クランク50は、クランク軸52およびペダル56をさらに含む。
【0032】
制御部12には、ドライブユニット20の駆動回路22、トルクセンサ30、クランクセンサ32、速度検出部34、車速センサ36、および、傾斜検出部38が有線または無線によって通信可能に接続されている。制御部12および駆動回路22には、バッテリ40が電気的に接続されている。バッテリ40は、例えば自転車のフレームに搭載されている。自転車のフレームは、リアキャリアおよびフロントキャリアの少なくとも一方を含んでもよい。トルクセンサ30、クランクセンサ32、速度検出部34、車速センサ36、および、傾斜検出部38が有線で制御部12に接続されている場合、制御部12からこれらに電力を供給してもよく、バッテリ40から電力を直接供給してもよい。トルクセンサ30、クランクセンサ32、速度検出部34、車速センサ36、および、傾斜検出部38が無線で制御部12に接続されている場合、トルクセンサ30、クランクセンサ32、速度検出部34、車速センサ36、および、傾斜検出部38は、それぞれ電源を備える。電源は、例えば充電池、発電機などである。
【0033】
制御部12は、自転車の推進をアシストするドライブユニット20のモータ24を、自転車のクランクの角度に関する角度情報と、自転車に入力される人力駆動力とに応じて制御する。制御部12は、演算処理部および記憶部を含む。演算処理部は、予め定められた制御プログラムを実行し、例えばCPU(Central Processing Unit )またはMPU(Micro Processing Unit )を含む。記憶部には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部は、例えばRAM(Random access memory )およびROM(Read only memory )を含む。なお、記憶部は、制御部12とは別に形成されてもよい。制御部12は、ドライブユニット20に設けられてもよく、これとは別に設けられてもよい。制御部12は、1または複数の演算処理部および記憶部を含んでいてもよい。例えば、制御部12が複数の演算処理部および記憶部を含む場合、ドライブユニット20およびドライブユニット20とは別の部品にも制御部12を構成する演算処理部および記憶部がそれぞれ設けられてもよい。制御部12は、入力インタフェース回路および出力インタフェース回路のような一般的な回路を含んでもよい。
【0034】
ドライブユニット20は、駆動回路22およびモータ24を含む。駆動回路22は、バッテリ40からモータ24に供給される電力を制御する。モータ24は、自転車の推進をアシストする。モータ24は、自転車に入力される人力駆動力をアシストする。モータ24は電気モータを含む。モータ24は、自転車のクランク軸52からリアスプロケットまでの間の動力伝達経路に結合される。モータ24は、クランク軸52からフロントスプロケットまでの動力伝達経路に連結されることが好ましい。ドライブユニット20は、モータ24の回転を減速する減速機を含んでいてもよい。ドライブユニット20は、フロントハブまたはリアハブに含まれていてもよく、この場合、モータ24はフロントハブまたはリアハブのハブシェルに結合される。
【0035】
自転車用制御装置10は、トルクセンサ30、クランクセンサ32、速度検出部34、および、傾斜検出部38を含む。
トルクセンサ30は、人力駆動力に応じた信号を出力する。トルクセンサ30は、クランク50またはペダル56に与えられる人力駆動力を検出する。トルクセンサ30は、例えば、歪センサ、磁歪センサ、光学センサ、および、圧力センサの少なくとも1つを含む。制御部12は、トルクセンサ30の出力に基づいて単位時間当たりの人力駆動力(以下、「人力駆動力TH」)を演算する。
【0036】
クランクセンサ32は、自転車のクランク50の角度に関する角度情報を出力する。この角度情報は、クランクアーム54の角度位置に関する情報を含む。クランクセンサ32は、ドライブユニット20に取り付けられる。クランクセンサ32は、第1の磁石58の磁界を検出する第1の素子32Aと、第2の磁石60との位置関係に応じた信号を出力する第2の素子32Bとを含む。第1の磁石58は、クランク軸52またはクランクアーム54に設けられ、クランク軸52と同軸に配置される。第1の磁石58は、環状の磁石であって、周方向に複数の磁極が交互に並んで配置されている。第1の素子32Aは、フレームに対するクランクアーム54の回転角度に応じた信号を出力する。第1の素子32Aは、クランクアーム54が1回転するとき、360°を同極の磁極の数で割った角度を1周期とした信号を出力する。クランクセンサ32が検出可能なクランクアーム54の角度位置の最小値は、180°以下であり、好ましくは15°であり、さらに好ましくは、6°である。第2の磁石60は、クランク軸52またはクランクアーム54に設けられる。第2の素子32Bは、フレームに対するクランクアーム54の基準位置(例えば、クランクアーム54の上死点または下死点)を検出する。第2の素子32Bは、クランクアーム54の1回転を1周期とした信号を出力する。制御部12は、第1の素子32Aおよび第2の素子32Bからの信号に基づいて、フレームに対するクランクアーム54の角度位置を定義する。第1の素子32Aは、リードスイッチを構成する磁性体リードまたはホール素子を含む。第2の素子32Bは、磁性体リードまたはホール素子を含む。
【0037】
クランクセンサ32は、第1の素子32Aおよび第2の素子32Bに代えて、磁界の強さを検出する第3の素子を含んでいてもよい。クランク軸52またはクランクアーム54には、周方向に磁界の強さが変化する環状の磁石が設けられ、この磁石の磁界の強さに対応する信号を第3の素子が出力する。制御部12は、第3の素子の出力に基づいて、自転車のフレームに対するクランクアーム54の角度位置を定義することができる。この場合、制御部12の記憶部は、フレームに対するクランクアーム54の基準位置において、第3の素子から出力される信号を記憶している。第3の素子は、ホール素子または磁気抵抗効果(MR)素子を含む。
【0038】
速度検出部34は、ドライブユニット20に設けられてもよく、これとは別に設けられてもよい。速度検出部34は、クランクセンサ32の出力に基づいて、クランク50の回転速度(以下、「クランク50の回転速度VC」)を検出する。速度検出部34は、制御部12に含まれてもよい。速度検出部34は、クランクセンサ32の出力に基づいて、クランク50の回転速度VCを検出する。速度検出部34は、第1の素子32Aおよび第2の素子32Bが出力する信号の少なくとも一方、または第3の素子が出力する信号に基づいて、クランク50の回転速度VCを検出する。
【0039】
車速センサ36は、自転車のチェーンステイに取り付けられる。車速センサ36は、後輪のスポークに取り付けられた磁石との相対位置の変化に応じた値を制御部12に出力する。車速センサ36は、リードスイッチを構成する磁性体リード、または、ホール素子を含むことが好ましい。制御部12は、車速センサ36の出力、および、記憶部に予め記憶された後輪の周長に基づいて単位時間当たりの走行距離(以下、「車速VS」)を演算する。車速センサ36は、フロントフォークに取り付けられてもよい。この場合、前輪のスポークに磁石が取り付けられる。車速センサ36は、GPS(Global Positioning System )受信機を含んでもよい。車速センサ36は、GPS受信機を含む場合、GPS受信機が受信する位置データと、記憶部に記憶されている地図データとに基づいて、車速VSを演算する。
【0040】
傾斜検出部38は、自転車のフレームに取り付けられる。傾斜検出部38は、自転車の傾斜角度を検出する。傾斜検出部38は、3軸のジャイロセンサ38Aおよび3軸の加速度センサ38Bを含む。傾斜検出部38の出力は、3軸のそれぞれの姿勢角度、および、3軸のそれぞれの加速度の情報を含む。なお、3軸の姿勢角度は、ピッチ角度DA、ロール角度DB、および、ヨー角度DCである。ジャイロセンサ38Aの3軸と加速度センサ38Bの3軸とは一致することが好ましい。傾斜検出部38は、自転車の左右方向とピッチ角度DAの軸の延びる方向とが略一致するように自転車に取り付けられることが好ましい。なお、傾斜検出部38は、フロントフォーク、ハンドルバー、または、ドライブユニット20に取り付けられてもよい。傾斜検出部38は、1軸の加速度センサを含んでいてもよい。
【0041】
制御部12は、自転車の傾斜角度に関する情報を、自転車の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜検出部38から取得する。例えば、制御部12は、傾斜検出部38の出力に基づいて自転車の傾斜角度Dを演算する。傾斜角度Dは、自転車の左右方向に延びる軸まわりの自転車の前後方向の傾斜角度である。すなわち傾斜角度Dは、ピッチ角度DAである。傾斜角度Dは、自転車が水平な場所に設置されるときに0°となるように設定されている。このため、傾斜角度Dは、走行路面の勾配と相関する。
【0042】
制御部12は、人力駆動力THおよび車速VSに応じてモータ24を制御する。制御部12は、人力駆動力THのX(Xは実数)倍の走行補助力PXを基本走行補助力PAとして演算する。制御部12は、人力駆動力THによって動力伝達経路に作用するトルクのX倍のトルクが、ドライブユニット20から動力伝達経路に与えられるように、モータ24を制御する。
【0043】
制御部12は、第1のアシスト停止処理、第2のアシスト停止処理、および、第3のアシスト停止処理を実行する。制御部12は、モータ24を駆動しているときには、所定期間毎に各アシスト停止処理を実行する。各アシスト停止処理を実行するタイミングは、互いに等しくても異なってもよい。
【0044】
制御部12は、第1のアシスト停止処理において、車速VSに基づいて、アシストしているモータ24を停止する。制御部12は、第2のアシスト停止処理において、クランク50の回転速度VCに基づいて、アシストしているモータ24を停止する。制御部12は、第3のアシスト停止処理において、人力駆動力THおよびクランク50の角度位置に基づいて、アシストしているモータ24を停止する。
【0045】
図2を用いて、第1のアシスト停止処理の処理手順について説明する。なお、以降の説明において、符号が付された自転車の各構成要素は、図1の自転車の各構成要素を示す。
制御部12は、ステップS11において車速VSが予め定める所定の車速VL以上か否かを判定する。所定の車速VLは、例えば時速25kmである。制御部12は、車速VSが所定の車速VL以上と判定したとき、ステップS12においてモータ24を停止する。一方、制御部12は、車速VSが所定の車速VL未満と判定したとき、処理を一旦終了する。
【0046】
図3を用いて、第2のアシスト停止処理の内容およびその処理手順について説明する。
制御部12は、クランク50の回転速度VCが予め定める速度XV以下のとき、モータ24を停止する。詳細には、制御部12は、ステップS21においてクランク50の回転速度VCが予め定める速度XV以下か否かを判定する。予め定める速度XVは、例えば10rpmまたは5rpmである。制御部12は、クランク50の回転速度VCが予め定める速度XV以下と判定したとき、ステップS22においてモータ24を停止する。一方、制御部12は、クランク50の回転速度VCが予め定める速度XVよりも高いと判定したとき、処理を一旦終了する。
【0047】
図4図6を用いて、第3のアシスト停止処理について説明する。
第3のアシスト停止処理は、モータ24が駆動しているとき、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下の状態で、クランク50が予め定める角度XA以上回転すると、モータ24を停止する自転車の制御方法である。
【0048】
言い換えれば、モータ24が駆動しているとき、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下の状態で、クランク50が予め定める角度XA以上回転すると、制御部12はモータ24を停止する。さらに詳細には、制御部12は、モータ24を駆動しているとき、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下の状態で、クランク50の角度に関する角度情報に基づいてクランク50が予め定める角度XA以上回転したと判定すると、モータ24を停止する。制御部12は、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下になったときのクランクアーム54の角度位置に応じて、予め定める角度XAを変更する。閾値XTは、0Nmが好ましいが、トルクセンサ30の出力のばらつきを考慮して例えば3〜5Nmの範囲に設定される。
【0049】
制御部12は、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下になったときのクランクアーム54の角度位置と、予め定める角度XAとの関係を示す情報を有する。左右のクランクアーム54は180°位相が異なるので、制御部12は、左右の一方のクランクアーム54の角度位置と、予め定める角度XAとの関係を示す情報を有していればよい。この情報は、図4に示されるようなマップとして記憶部に記憶されていてもよく、関数として記憶部に記憶されていてもよい。予め定める角度XAは、クランクアーム54が上死点を含む第1の範囲R1および下死点を含む第2の範囲R2にあるときに、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下になった場合よりも、クランクアーム54が上死点から90°離れた回転位置を含む第3の範囲R3および下死点から90°離れた回転位置を含む第4の範囲R4になるときに、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下になった場合のほうが小さい。予め定める角度XAは、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下になったときのクランクアーム54の角度位置が、上下死点から離れるにつれて小さくなり、上下死点に近づくにつれて大きくなる。
【0050】
ここで、上死点は、クランクアーム54の角度位置においてクランクアーム54の先端部が鉛直方向の最も上側となる位置である。下死点は、クランクアーム54の角度位置においてクランクアーム54の先端部が鉛直方向の最も下側となる位置である。また、第1の範囲R1は、例えば、上死点を中心としてクランクアーム54の第1の回転方向に10°およびクランクアーム54の第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に10°となる範囲である。第2の範囲R2は、例えば、下死点を中心としてクランクアーム54の第1の回転方向に10°およびクランクアーム54の第2の回転方向に10°となる範囲である。第3の範囲R3は、例えば、上死点から90°離れた回転位置を中心としてクランクアーム54の第1の回転方向に10°およびクランクアーム54の第2の回転方向に10°となる範囲である。第4の範囲R4は、例えば、下死点から90°離れた回転位置を中心としてクランクアーム54の第1の回転方向に10°およびクランクアーム54の第2の回転方向に10°となる範囲である。
【0051】
図5に示されるように、第3のアシスト停止処理の処理手順は次のようになる。
制御部12は、ステップS31において人力駆動力THが予め定める閾値XT以下か否かを判定する。制御部12は、人力駆動力THが予め定める閾値XTよりも大きいと判定とき、処理を一旦終了する。制御部12は、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下と判定したとき、ステップS32においてクランクアーム54の角度位置を取得し、ステップS33において予め定める角度XAを設定する。例えば、制御部12は、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下と判定した時点でのクランクアーム54の角度位置を取得する。そして制御部12は、図4のマップを用いて、ステップS32において取得したクランクアーム54の角度位置に対応する予め定める角度XAを設定する。
【0052】
次に、制御部12は、ステップS34においてクランクアーム54の角度位置からの回転角度量を演算し、ステップS35においてクランクアーム54の回転角度量が予め定める角度XA以上か否かを判定する。制御部12は、クランクアーム54の回転角度量が予め定める角度XA以上と判定したとき、ステップS36においてモータ24を停止する。
【0053】
制御部12は、クランクアーム54の回転角度量が予め定める角度XA未満と判定したとき、ステップS37において人力駆動力THが予め定める閾値XT以下か否かを判定する。制御部12は、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下のとき、ステップS34のクランクアーム54の回転角度量の演算に再び移行する。制御部12は、人力駆動力THが予め定める閾値XTよりも大きいとき、処理を一旦終了する。制御部12は、第1または第2のアシスト停止処理によってモータ24を停止したときには、第3のアシスト停止処理を一旦終了する。
【0054】
図6は、第3のアシスト停止処理を実行しているときの、クランクアーム54の角度位置に対する人力駆動力THの変化の一例を示すグラフである。
自転車を推進するためにクランクアーム54を上下死点から第1の回転方向に回転させると、クランクアーム54が0°の角度位置から回転するにつれて人力駆動力THが増加する。そして、クランクアーム54の角度位置が90°を超えると、人力駆動力THが増加から減少に転じ、クランクアーム54の角度位置A1において人力駆動力THが予め定める閾値XT以下となる。このとき、制御部12は、図4のマップからクランクアーム54の角度位置A1に対応した予め定める角度XAを設定する。
【0055】
そしてクランクアーム54の角度位置が180°を超えると、人力駆動力THが増加に転じ、クランクアーム54の角度位置A2において人力駆動力THが予め定める閾値XTを超える。このとき、制御部12は、クランクアーム54の角度位置A1と角度位置A2との回転角度量を演算し、その回転角度量が予め定める角度XA以上か否かを判定する。ここでは、回転角度量が予め定める角度XA未満となるため、モータ24の駆動を維持する。
【0056】
そしてクランクアーム54の角度位置が270°を超えると、人力駆動力THが増加から減少に転じ、クランクアーム54の角度位置A3において人力駆動力THが予め定める閾値XT以下となる。このとき、制御部12は、図4のマップからクランクアーム54の角度位置A3に対応した予め定める角度XAを設定する。なお、上下死点に対するクランクアーム54の角度位置A3は、上下死点に対するクランクアーム54の角度位置A1と同じであるため、クランクアーム54の角度位置A1のときの予め定める角度XAと同じ角度XAが設定される。
【0057】
そしてクランクアーム54の角度位置が360°(0°)を超えると、人力駆動力THが減少から増加に転じるものの、その増加度合が小さい。そしてクランクアーム54の角度位置A3から予め設定された角度XAを加算した角度位置A4においても人力駆動力THが予め設定された閾値XT以下となる。すなわち人力駆動力THが予め定めた閾値XT以下となるクランクアーム54の回転角度量が予め定めた角度XA以上となる。このとき、制御部12は、モータ24を停止する。
【0058】
また図6では図示していないが、ライダーが自転車を漕ぎ出して自転車が発進しようとするときに自転車がライダーよりも前に先行してしまい、人力駆動力THが予め定めた閾値XT以下となる場合がある。この場合、制御部12は、人力駆動力THが予め定めた閾値XT以下となる状態のクランクアーム54が予め定めた角度XA以上回転したと判定すると、モータ24を停止する。その結果、自転車の急発進を抑制することができる。
【0059】
また、ライダーがペダル56から足を離したとき、ペダル56から足を離している状態でクランクアーム54がモータ24に連れ回される場合がある。しかし、ペダル56から足を離しているため、人力駆動力THが予め定めた閾値XT以下の状態で、クランクアーム54が回転する。このため、制御部12は、クランクアーム54が予め定めた角度XA以上回転したと判定すると、モータ24を停止する。このため、ライダーがペダル56から足を離したときにアシスト制御が継続することを抑制することができる。
【0060】
(第2実施形態)
図7および図8を参照して、第2実施形態の自転車用制御装置10について説明する。
傾斜角度Dが0°の平道を自転車が走行しているとき、人力駆動力THは、上下死点において最小となり、上下死点から90°離れた位置において最大となる。
【0061】
傾斜角度Dが0°よりも大きい上り坂を自転車が走行しているとき、人力駆動力THは平地における上下死点よりも遅いタイミング(クランクアーム54の角度位置が0°+|RX|°および180°+|RX|°)で最小となる。なお、RXは、平地における上死点または下死点と、人力駆動力THが最小となるクランクアーム54の角度位置との角度差である。
【0062】
傾斜角度Dが0°よりも小さい下り坂を自転車が走行しているとき、人力駆動力THは平地における上下死点よりも速いタイミング(クランクアーム54の角度位置が0°−|RX|°および180°−|RX|°)で最小となる。
【0063】
角度差RXは、傾斜角度Dと実質的に等しい。傾斜角度Dが0°よりも大きいときの角度差RXは正の値であり、傾斜角度Dが0°よりも小さいときの角度差RXは負の値である。具体的には、上り坂および下り坂においてクランクアーム54が路面に対して垂直方向に延びる状態のとき、人力駆動力THは最小となる。
【0064】
このように、傾斜角度Dによって、人力駆動力THが最小となるクランクアーム54の角度位置が異なるため、制御部12は、クランクアーム54の上下死点と、自転車のフレームに対するクランクアーム54の角度位置との対応関係を、自転車の傾斜角度Dに基づいて補正する。制御部12は、自転車の傾斜角度Dと、角度差RXとの関係を示す情報を有する。この情報は、図8に示すようなマップとして記憶部に記憶されていてもよく、関数として記憶部に記憶されていてもよい。制御部12は、マップから分かるとおり、傾斜角度Dが0°よりも大きい、上り勾配のとき、傾斜角度Dが0°のときよりも、クランクアーム54の基準の角度位置を進角する。傾斜角度Dが0°よりも小さい、下り勾配のとき、傾斜角度Dが0°のときよりも、クランクアーム54の基準の角度位置を遅角する。傾斜角度Dが0°よりも大きい範囲において傾斜角度Dが大きくなるにつれて進角量が多くなり、傾斜角度Dが0°よりも小さい範囲において傾斜角度Dが小さくなるにつれて遅角量が多くなる。
【0065】
制御部12は、第3のアシスト停止処理において、人力駆動力THが予め設定された閾値XT以下となったときのクランクアーム54の角度位置を、自転車の傾斜角度Dに基づいて補正する。制御部12は、傾斜角度Dが0°よりも大きい場合、人力駆動力THが予め設定された閾値XT以下となったときのクランクアーム54の角度位置を、クランクセンサ32から取得したクランクアーム54の角度位置から、傾斜角度Dに基づく角度差RX分だけ進角した値とする。制御部12は、傾斜角度Dが0°よりも小さい場合、人力駆動力THが予め設定された閾値XT以下となったときのクランクアーム54の角度位置を、クランクセンサ32から取得したクランクアーム54の角度位置から、傾斜角度Dに基づく角度差RX分だけ遅角した値とする。制御部12は、傾斜角度Dに基づいて補正したクランクアーム54の角度位置に基づいて、予め設定された角度XAを図4のマップから演算する。
【0066】
(第3実施形態)
図9図12を参照して、第3実施形態の自転車用制御装置10について説明する。
制御部12は、人力駆動力THが減少するとき、この人力駆動力THの減少に対して走行補助力PXの低下が遅れるように、走行補助力PXを制御する。言い換えると、制御部12は、人力駆動力THの減少の変化に対して走行補助力PXの応答速度を低下させる。制御部12は、基本的には、人力駆動力THに応じて設定される基本走行補助力PAを走行補助力PXとしてモータ24に出力させる。そして制御部12は、人力駆動力THが減少するとき、基本走行補助力PAを補正して、補正後の基本走行補助力PAを走行補助力PXとしてモータ24に出力させる。この補正後の基本走行補助力PAは、補正前の基本走行補助力PA以上となる。制御部12は、この補正処理を、例えばローパスフィルタ、または、移動平均フィルタを用いて行う。ここで、人力駆動力THに応じて設定される基本走行補助力PAおよび走行補助力PXと、基本走行補助力PAおよび走行補助力PXの時間変化について説明する。
【0067】
図9に示されるように、人力駆動力THのX倍となる基本走行補助力PAは、クランクアーム54が上下死点に位置するときに最小となり、クランクアーム54が上下死点から90°回転した位置に位置するときに最大となる。
【0068】
制御部12は、基本走行補助力PAを走行補助力PXとしてモータ24に出力させる一方で、人力駆動力THが減少するとき、基本走行補助力PAを補正して、その補正後の基本走行補助力PAを走行補助力PXとしてモータ24に出力させる。
【0069】
図10に示されるように、制御部12は、基本走行補助力PAが最大値を示す時刻t1の次の時刻t2において、人力駆動力THが減少したと判定したとき、人力駆動力THの減少に対して走行補助力PX(図10の実線)の減少を遅らせる。具体的には、制御部12は、一次ローパスフィルタを用いて基本走行補助力PAを補正して走行補助力PXとする。このように制御部12は、一次ローパスフィルタを用いて基本走行補助力PAを補正することによって、走行補助力PXの低下は人力駆動力THの低下に対して遅れる。なお、図10中の仮想線は、基本走行補助力PAを示している。
【0070】
また制御部12は、基本走行補助力PAの補正処理を開始した後、補正後の走行補助力PXが補正前の基本走行補助力PAよりも大きい間において、基本走行補助力PAの補正処理を続ける。すなわち、図10の時刻t2から時刻t3までの間、制御部12は、基本走行補助力PAの補正処理を続ける。そして、制御部12は、時刻t3において補正前の基本走行補助力PAが補正後の基本走行補助力PA以上となると、補正処理を停止する。
【0071】
また、制御部12は、人力駆動力THが減少しているとき、クランク50の減速度に応じて、人力駆動力THの変化に対するモータ24の応答速度を変更する。すなわち、制御部12は、人力駆動力THが減少しているとき、クランク50の減速度に応じて、人力駆動力THの低下に対する走行補助力PXの低下の遅れを制御する。
【0072】
詳細には、制御部12は、クランクセンサ32の出力からクランク50の減速度を演算する。なお、速度検出部34がクランク50の減速度を演算し、制御部12に出力してもよい。そして制御部12は、一次ローパスフィルタの時定数に関して、クランク50の減速度に対応した時定数を設定する。時定数が小さくなるほど、人力駆動力THが減少するときのモータ24の応答速度が速くなり、時定数が大きくなるほど、人力駆動力THが減少するときのモータ24の応答速度が遅くなる。制御部12は、クランク50の減速度が高くなると、人力駆動力THの変化に対するモータ24の応答速度を高くする。制御部12は、クランク50の減速度が高くなるにつれて、時定数を小さくし、クランク50の減速度が低くなるにつれて、時定数を大きくする。
【0073】
例えば、制御部12は、図11に示す時定数のマップを有し、この時定数のマップに基づいて、時定数を設定する。この時定数のマップは、時定数とクランク50の減速度とを対応付けた情報を含んでおり、クランク50の減速度が高くなるにつれて時定数が小さくなる。また、クランク50の減速度が所定値DX以上の場合、時定数が最小の一定値となるように対応付けられている。制御部12は、このような時定数のマップを用いるのではなく、予め設定された計算式によって、クランク50の減速度に応じた時定数を演算してもよい。
【0074】
時定数のマップにおいて、時定数とクランク50の減速度との関係は、図11の線L11で示すように一次関数のような関係となっていてもよいし、図11の線L12,L13で示すようにn次関数のような関係となっていてもよい。また図11の線L14で示すように、クランク50の減速度が所定値DXのときに時定数が最小値よりも大きい数値となっていてもよい。時定数のマップは、図11の線L11〜L14で示すようにクランク50の減速度の変化に応じて時定数が連続的に変化するようになっていてもよいし、図11の線L15で示すようにクランク50の減速度の変化に応じて段階的に不連続に変化するようになっていてもよい。このような時定数のマップは、実験等により決定される。制御部12は、複数の時定数のマップを備え、自転車の操作部や外部装置によって複数の時定数のマップを選択して設定してもよい。
【0075】
図12に示すように、制御部12は、図11のマップを用いてクランク50の減速度が高くなるにつれて時定数を小さくするため、クランク50の減速度が高くなるにつれて走行補助力PX(図12の実線)が基本走行補助力PA(図12の破線)に近づく。これにより、人力駆動力THが減少しているとき、クランク50の減速度が高くなるにつれて走行補助力PXが速やかに小さくなる。このため、アシスト力が付与された状態からアシスト力が付与されない状態に切り替わるときにおけるモータ24の出力トルクTAの差が小さくなるので、ライダーが自転車を減速して停止するときに、出力トルクTAが急に低下することを感じにくくなる。
【0076】
(第4実施形態)
図13を参照して、第4実施形態の自転車用制御装置10について説明する。
制御部12は、クランク50の回転速度VCに応じて、予め定める角度XAを変更する。この予め定める角度XAの変更において、クランク50の回転速度VCが高くなると、予め定める角度XAが小さくなる。例えば、制御部12は、クランク50の回転速度VCが高くなるにつれて、予め定める角度XAが小さくなるように補正する。制御部12は、予め定める角度XAの補正値のマップを有しており、この補正マップに基づいて予め定める角度XAを補正する。
【0077】
図13に示す補正マップは、クランク50の回転速度VCと予め定める角度XAの補正値とを対応付けた情報を含んでおり、クランク50の回転速度VCが高くなるにつれて補正値が大きくなる。制御部12は、このような補正値のマップを用いるのではなく、予め設定された計算式によって、クランク50の回転速度VCに応じた補正値を演算してもよい。補正マップにおいて、図13の実線で示すように、クランク50の回転速度VCの変化に応じて補正値が連続的に変化するようになっていてもよいし、図13の破線で示すように、クランク50の回転速度VCの変化に応じて補正値が段階的に不連続に変化するようになっていてもよい。
【0078】
制御部12は、第3のアシスト停止処理において予め定める角度XAを設定するとき(図5のステップS33)、図13の補正マップを用いて予め定める角度XAを補正する。具体的には、制御部12は、クランク50の回転速度VCを取得し、図13の補正マップを用いてクランク50の回転速度VCに対応する補正値を演算する。そして制御部12は、予め定める角度XAから補正値を減算することにより補正後の予め定める角度XACを演算する。制御部12は、予め定める角度XAに代えて、予め定める角度XACに基づいて、図5のステップS35の判定を行う。
【0079】
(その他の実施形態)
上記各実施形態に関する説明は、本発明の自転車用制御装置および自転車の制御方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明の自転車用制御装置および自転車の制御方法は、例えば以下に示される上記各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0080】
・第1実施形態〜第4実施形態は、2つ以上の実施形態を組み合わせることができる。
・第1実施形態において、予め定める角度XAは、人力駆動力THが予め定める閾値XT以下になったときのクランクアーム54の角度位置が、上下死点から離れるにつれて段階的に小さくなり、上下死点に近づくにつれて段階的に大きくなってもよい。例えば、制御部12は、クランクアーム54の角度位置と予め定めた角度XAとを対応付けしたマップを図4のマップに代えて、図14のマップを用いてもよい。
【0081】
図14に示されるように、予め定めた角度XAは、クランクアーム54の角度位置が0°から90°に向かうにつれて3段階の階段状に小さくなり、90°から180°に向かうにつれて3段階の階段状に大きくなる。なお、段階数は任意の設定事項であり、2段階でも4段階以上であってもよい。
【0082】
・第2実施形態において、図4のクランクアーム54の角度位置と予め定めた角度XAとの対応付けを示すマップを変更してもよい。例えば制御部12は、傾斜角度Dに基づいて、予め定めた角度XAに対するクランクアーム54の角度位置を、図4のマップにおけるクランクアーム54の角度位置から進角または遅角する。制御部12は、傾斜角度Dが0°よりも大きいとき、傾斜角度Dの大きさに応じて予め定めた角度XAに対するクランクアーム54の角度位置を、図4のマップにおけるクランクアーム54の角度位置から遅角する。制御部12は、傾斜角度Dが0°よりも小さいとき、傾斜角度Dの大きさに応じて予め定めた角度XAに対するクランクアーム54の角度位置を、図4のマップにおけるクランクアーム54の角度位置から進角する。
【0083】
・第2実施形態において、傾斜角度Dが0°よりも大きい場合に傾斜角度Dが大きくなるにつれてクランクアーム54の角度位置の遅角量が段階的に大きくなってもよい。また、傾斜角度Dが0°よりも小さい場合に傾斜角度Dが小さくなるにつれてクランクアーム54の角度位置の進角量が段階的に大きくなってもよい。
【0084】
・各実施形態において、制御部12は、人力駆動力THに関する予め定める閾値XTをユーザの操作によって変更してもよい。この場合、例えば自転車の操作部によって、または、自転車用制御装置10に外部のコンピュータを接続可能なポートを設け、外部装置によって予め定める閾値XTを変更する。また、制御部12は、ライダーがクランク50を所定回数に亘って回転させたときの人力駆動力THのプロファイルを記憶し、そのプロファイルに基づいて閾値XTを変更してもよい。
【0085】
・各実施形態において、制御部12は、傾斜角度DをGPSによって取得することもできる。GPSによる傾斜角度Dの情報は、例えばサイクルコンピュータまたはスマートフォン等を介して制御部12に入力される。また、制御部12は、傾斜角度Dを操作者の入力を介して取得することもできる。
【0086】
・第1実施形態、第3実施形態、および、第4実施形態の自転車用制御装置10から傾斜検出部38を省略してもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…自転車用制御装置、12…制御部、24…モータ、32…クランクセンサ、34…速度検出部、38…傾斜検出部、50…クランク、54…クランクアーム。
図1
図2
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図5
図6
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図10
図11
図12
図13
図14