(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボール体を被測定物から離れた待機位置から前記被測定物に近づく所定の一方向に移動させることで前記被測定物に当接させることを、3回以上の複数回おこなうボール体当接工程と、
前記ボール体当接工程で前記被測定物に複数回当接させたときの前記ボール体の複数個所の位置を用いて、前記被測定物を計測する計測工程と、を有し、
前記ボール体当接工程での前記各待機位置を前記所定の一方向から見ると、前記各待機位置のそれぞれは、お互いが、前記ボール体の直径の値もしくは直径より小さな値だけ離れており、
前記ボール体当接工程は、前記当接を少なくとも4回おこなう工程であるとともに、前記各待機位置を前記所定の一方向から見ると、少なくとも4つの前記待機位置のうちの3つの前記待機位置における前記ボール体の中心で形成する3角形の内側に、4つの前記待機位置のうちの他の1つの前記待機位置における前記ボール体の中心が位置しており、
前記計測工程が、前記3角形の内側に位置している1つの前記待機位置での前記ボール体の中心を含みZ軸方向に延びている1つの延長線と前記被測定物の表面との交点の位置、前記3角形の内側に位置している1つの前記待機位置からの移動で前記被測定物に前記ボール体が接したときの当接点の位置の、少なくともいずれかを計測する工程を含む、ことを特徴とする被測定物測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、タッチプローブの先端球(ボール体)は、当然のことではあるが、点ではなく(位置情報だけでなく)球状になっており三次元空間で大きさ(位置情報と体積)を持っている。
【0008】
したがって、
図11や
図12で示すように、被測定物Wが四角柱や円柱等の単純形状である場合、その中心に向かってプローブ101(先端球103)を移動すれば、先端球103を被測定物Wの表面に垂直にあてることが容易である。そして、実際の測定位置(先端球103と被測定物Wとの当接位置W1)は、当接時の先端球103の中心の座標に、先端球103の半径Rの値を加えたり減じたりすれば、容易に得ることができる。
【0009】
しかし、被測定物の表面が、
図4で示すように非球面等の複雑な三次元形状である場合、当接時の先端球の当接角度がわからず、先端球と被測定物との当接位置等を容易に得ることができないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、被測定物の表面が複雑な三次元形状であっても、先端球と被測定物との当接位置等を容易に得ることができる被測定物測定装置および被測定物測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、ボール体を被測定物から離れた待機位置から前記被測定物に近づく所定の一方向に移動させることで前記被測定物に当接させることを、3回以上の複数回おこなうボール体当接工程と、前記ボール体当接工程で前記被測定物に複数回当接させたときの前記ボール体の複数個所の位置を用いて、前記被測定物を計測する計測工程と、を有し、前記ボール体当接工程での前記各待機位置を前記所定の一方向から見ると、前記各待機位置のそれぞれは、お互いが、前記ボール体の直径
の値もしくは直径より小さな値だけ離れており、前記ボール体当接工程は、前記当接を少なくとも4回おこなう工程であるとともに、前記各待機位置を前記所定の一方向から見ると、少なくとも4つの前記待機位置のうちの3つの前記待機位置における前記ボール体の中心で形成する3角形の内側に、4つの前記待機位置のうちの他の1つの前記待機位置における前記ボール体の中心が位置しており、前記計測工程が、前記3角形の内側に位置している1つの前記待機位置での前記ボール体の中心を含みZ軸方向に延びている1つの延長線と前記被測定物の表面との交点の位置、前記3角形の内側に位置している1つの前記待機位置からの移動で前記被測定物に前記ボール体が接したときの当接点の位置の、少なくともいずれかを計測する工程を含む被測定物測定方法である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の被測定物測定方法において、前記
3角形の3つの辺それぞれの長さの値が、前記ボール体の直径の値の1/3倍〜1倍の範囲内になっている被測定物測定方法。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の被測定物測定方法において、前記
3角形の3つの辺それぞれの長さの値がお互いに等しくなっている被測定物測定方法である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の被測定物測定方法において、前記ボール体当接工程で複数回の当接を行い前記計測工程で計測を行うことを、待機位置を変えて複数回繰り返すことで、前記被測定物の外形形状をもとめる被測定物測定方法である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の被測定物測定方法において、前記ボール体当接工程で、前記ボール体を4回以上の複数回で前記被測定物に当接させる場合、前記所定の一方向からみたときに、複数回−(マイナス)1回の当接における前記ボール体の中心位置のそれぞれが、所定の円の円周を当分配するところに位置しており、残りの1回の当接における前記ボール体の中心位置が、前記円の中心のところに位置している被測定物測定方法である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、ボール体を被測定物に対して相対的に移動させるボール体移動部と、前記ボール体が前記被測定物に当接したときの前記ボール体の位置を検出するボール体検出部と、前記ボール体を前記被測定物から離れた待機位置から前記被測定物に近づく所定の一方向に移動させることで前記被測定物に当接させることを、3回以上の複数回おこなうように、前記ボール体移動部を制御し、前記ボール体を前記被測定物に複数回当接させたときの前記ボール体の複数個所の位置を検出するように前記ボール体検出部を制御するとともに、前記ボール体を前記被測定物に複数回当接させたときの前記ボール体の複数個所の位置を用いて、前記被測定物を計測する制御部と、を有し、前記制御部は、前記各待機位置を前記所定の一方向から見ると、前記各待機位置のそれぞれが、お互いに、前記ボール体の直径
の値もしくは直径より小さな値だけ離れており、前記当接が少なくとも4回おこなわれるとともに、前記各待機位置を前記所定の一方向から見ると、少なくとも4つの前記待機位置のうちの3つの前記待機位置における前記ボール体の中心で形成する3角形の内側に、4つの前記待機位置のうちの他の1つの前記待機位置における前記ボール体の中心が位置し、前記3角形の内側に位置している1つの前記待機位置での前記ボール体の中心を含みZ軸方向に延びている1つの延長線と前記被測定物の表面との交点の位置、前記3角形の内側に位置している1つの前記待機位置からの移動で前記被測定物に前記ボール体が接したときの当接点の位置の、少なくともいずれかを計測するように構成されている被測定物測定装置である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の被測定物測定装置において、前記
3角形の3つの辺それぞれの長さの値が、前記ボール体の直径の値の1/3倍〜1倍の範囲内になっている被測定物測定装置である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項6〜請求項7のいずれか1項に記載の被測定物測定装置において、前記
3角形の3つの辺それぞれの長さの値がお互いに等しくなっている被測定物測定装置である。
請求項9に記載の発明は、請求項6〜請求項7のいずれか1項に記載の被測定物測定装置において、前記制御部は、ボール体の当接を複数回行い前記ボール体を前記被測定物に複数回当接させたときの前記ボール体の複数個所の位置を検出することを、待機位置を変えて複数回繰り返すことで、前記被測定物の外形形状をもとめる被測定物測定装置である。
請求項10に記載の発明は、請求項6〜請求項7のいずれか1項に記載の被測定物測定装置において、前記制御部は、前記ボール体を4回以上の複数回で前記被測定物に当接させる場合、前記所定の一方向からみたときに、複数回−(マイナス)1回の当接における前記ボール体の中心位置のそれぞれが、所定の円の円周を当分配するところに位置しており、残りの1回の当接における前記ボール体の中心位置が、前記円の中心のところに位置するように構成されている被測定物測定装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被測定物の表面が複雑な三次元形状であっても、先端球と被測定物との当接位置等を容易に得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る被測定物の測定方法(被測定物測定方法)は、たとえば、
図1等で示す被測定物の測定装置(被測定物測定装置)1によってなされる。
【0022】
被測定物測定装置1は、被測定物3を測定する専用機であってもよいが、被測定物測定装置1として、汎用の精密加工機(たとえば、金属精密加工用のマシニングセンター)が使用される。精密加工機1では、複数の工具のうちの1つの工具をタッチプローブ5に交換して、被測定物(ワーク)3を測定する。
【0023】
ここで、説明の便宜のために、水平な所定の一方向をX軸方向とし、水平な他の所定の一方向であってX軸方向に対して直交する方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とに対して直交する方向(上下方向)をZ軸方向とする。
【0024】
タッチプローブ5は、
図1や
図2で示すように、筐体(タッチプローブ筐体)7とスタイラス9とを備えて構成されている。スタイラス9は、細長い棒体部11と、棒体部11の先端に設けられている球状のボール体(先端球)13とを備えて構成されている。
【0025】
スタイラス9の基端側の部位(上側の部位)は、タッチプローブ筐体7内に入り込んでおり、タッチプローブ筐体7に支持されている。
【0026】
スタイラス9は、たとえば、ボール体13が棒体部11の下端に位置するとともに、棒体部11の中心軸が上下方向に延びるようにして、タッチプローブ筐体7の下端から下方に突出している。
【0027】
スタイラス9は、Z軸方向、X軸に平行なA軸まわり、および、Y軸に平行なB軸まわりで、タッチプローブ筐体7に対して僅かに移動自在になっている。
【0028】
常態(スタイラス9に何ら外力が加わっていない状態)では、スタイラス9は、タッチプローブ筐体7に対して最も下方に突出し、しかも、棒体部11の中心軸がZ軸方向に延びるように(基本姿勢になるように)、図示しない付勢部で付勢されている。
【0029】
そして、タッチプローブ5を被測定物3に対して移動し、ボール体13が被測定物3に当接してスタイラス9に外力が働いたときに、Z軸方向への移動、X軸に平行なA軸まわりの回動、Y軸に平行なB軸まわりの回動のうちの少なくともいずれかの態様で、スタイラス9がタッチプローブ筐体7に対してごく僅かに移動するようになっている。
【0030】
また、タッチプローブ5は、当接によって上記ごく僅かな移動を開始した時(ボール体13が被測定物3に当接して基本姿勢から動き始めた時)に、当接信号(接触信号)を外部に発するようになっている。この後、タッチプローブ5が被測定物3から離れたときに、タッチプローブ5は基本姿勢に戻るようになっている。
【0031】
被測定物測定装置1は、
図1や
図2で示すように、ベース体(ベッド)15と、X軸移動体17とY軸移動体19とZ軸移動体21とヘッド筐体23と主軸回転体25とを備えている。
【0032】
X軸移動体17は、ベース体15に載置されるようにして、X軸方向で移動自在なようにベース体15に係合しており、X軸サーボモータ27(
図3参照)等のアクチュエータによって、ベース体15に対してX軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0033】
X軸移動体17の上面の所定の位置には、被測定物3(
図1や
図2では図示せず)が、被測定物固定体(図示せず)を用いて、一体的に設置されるようになっている。
【0034】
Y軸移動体19は、ベース体15に載置されるようにして、Y軸方向で移動自在なようにベース体15に係合しており、Y軸サーボモータ29(
図3参照)等のアクチュエータによって、ベース体15に対してY軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0035】
Z軸移動体21は、X軸移動体17やX軸移動体17に設置された被測定物3の上方に位置しており、Y軸移動体19の側部でY軸移動体19に係合しており、Y軸移動体19に対してZ軸方向で移動自在になっている。また、Z軸サーボモータ31(
図3参照)等のアクチュエータによって、Y軸移動体19に対してZ軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0036】
ヘッド筐体23は、X軸移動体17やX軸移動体17に設置された被測定物3の上方に位置しており、Z軸移動体21に一体的に設けられている。主軸回転体25は、Z軸方向に延びた中心軸を回転中心にして回転するように、ヘッド筐体23に設けられている。
【0037】
そして、主軸サーボモータ33(
図3参照)等のアクチュエータによって、Z軸移動体21に対して回転位置決め自在になっている。
【0038】
主軸回転体25は、この下端部がヘッド筐体23から下方に僅かに突出しており、主軸回転体25の下端部に、X軸移動体17の上面に一体的に設置されたワークを加工するための工具もしくはX軸移動体17の上面に一体的に設置された被測定物3を測定するためのタッチプローブ5(タッチプローブ筐体7)が一体的に設置されるようになっている。
【0039】
このように構成されていることで、主軸回転体25の回転を停止して主軸回転体25をヘッド筐体23に固定すると、X軸移動体17に一体的に設置されている被測定物3に対して、主軸回転体25に一体的に設置されているタッチプローブ筐体7が、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向で、移動位置決め自在になる。
【0040】
また、被測定物測定装置1では、たとえば、X軸サーボモータ27の回転出力軸に設けられているロータリエンコーダ等の検出器(図示せず)によって、X軸移動体17の位置を検出することができるようになっている。
【0041】
同様にして、Y軸サーボモータ29の回転出力軸に設けられているロータリエンコーダ等の検出器(図示せず)によって、Y軸移動体19の位置を検出することができ、Z軸サーボモータ31の回転出力軸に設けられているロータリエンコーダ等の検出器(図示せず)によって、Z軸移動体21の位置を検出することができるようになっている。
【0042】
被測定物測定装置1についてさらに説明する。
【0043】
被測定物測定装置1は、ボール体13を被測定物3に対して相対的に移動させるボール体移動部35と、ボール体13が被測定物3に当接したときのボール体13の位置(X,Y,Z座標)を検出するボール体検出部37と、制御部39とを備えて構成されている。
【0044】
ボール体移動部35は、すでに理解されるように、たとえば、X軸移動体17とY軸移動体19とZ軸移動体21とヘッド筐体23と主軸回転体25とX軸サーボモータ27とY軸サーボモータ29とZ軸サーボモータ31とにより、上述した態様で構成されている。
【0045】
ボール体検出部37は、主軸回転体25に設置されているタッチプローブ5のボール体13が、X軸移動体17に設置されている被測定物3に当接し、タッチプローブ5が当接信号を外部に発した時の、X軸移動体17の位置とY軸移動体19の位置とZ軸移動体21との位置を、上記各検出器で検出することで、ボール体13の位置を検出するように構成されている。このとき、主軸回転体25はヘッド筐体23に固定されている。
【0046】
制御部39は、CPU41とメモリ43とを備えて構成されており、次に示すように、ボール体移動部35とボール体検出部37とを制御するようになっている。
【0047】
ボール体(ヘッド筐体23に固定されている主軸回転体25に設置されているタッチプローブ5のボール体)13を、被測定物(X軸移動体17に設置されている被測定物)3から、たとえば上方に離れた待機位置に位置させるようになっている。そして、この待機位置から被測定物3に近づく所定の一方向(たとえば、Z軸方向の下方)に移動させることで、被測定物3に当接させることを、3回以上の複数回、繰り返しておこなうようにボール体移動部35の制御をするようになっている。
【0048】
また、ボール体13を被測定物3に複数回当接させたときのボール体13の複数個所の位置(たとえばボール体13の中心の位置;座標)を検出するように、ボール体検出部37を制御するとともに、ボール体13を被測定物3に複数回当接させたときのボール体13の複数個所の位置を用いて、被測定物3を計測するようになっている。
【0049】
なお、上記各待機位置(各当接位置)をZ軸方向から(Z軸方向で)見ると、上記各待機位置のそれぞれは、お互いが一直線上に位置することなく僅かに離れている。
【0050】
また、被測定物測定装置1では、制御部39が、各待機位置でのボール体13の中心を含みZ軸方向に延びている複数の延長線のそれぞれと、被測定物3の表面との複数の交点のうちの少なくとも1つの交点の位置(座標)をもとめることで、被測定物3を計測するようになっている。
【0051】
なお、上記計測の態様に代えてもしくは加えて、制御部39が、ボール体13と被測定物3との複数の当接点(接触点)のうちの少なくとも1つの当接点の位置(座標)を計測(算出)することで、被測定物3を計測するようになっていてもよい。
【0052】
さらに、制御部39が、上記当接を少なくとも4回おこなうようになっており、各待機位置をZ軸から見ると、複数の待機位置のうちの1つの待機位置が、複数待機位置のうちの他の複数の待機位置の内側に位置していてもよい。
【0053】
たとえば、4つの待機位置のうちの3つの待機位置におけるボール体13の中心で形成する3角形の内側に、4つの待機位置のうちの他の1つの待機位置におけるボール体13の中心が位置していてもよい。
【0054】
この場合、制御部39が、3角形の内側に位置している1つの待機位置でのボール体13の中心を含みZ軸方向に延びている1つの延長線と被測定物3表面との交点の位置(座標)、3角形の内側に位置している1つの待機位置からの移動で被測定物3にボール体が接したときの当接点の位置(座標)の、少なくともいずれかを計測(算出)するように構成されていてもよい。
【0055】
さらに、被測定物測定装置1において、制御部39が、ボール体13の当接を複数回行いボール体13を被測定物3に複数回当接させたときのボール体13の複数個所の位置(たとえばボール体13の中心の位置;座標)を検出することを、待機位置を変えて(ずらして)、被測定物3の計測対象になっている表面を網羅するように複数回繰り返すことで、被測定物3の外形形状をもとめるようになっていてもよい。
【0056】
次に、被測定物測定装置1の動作(被測定物測定方法)について説明する。
【0057】
被測定物測定装置1は、たとえば、メモリ43に予め格納されている動作プログラムによって動作するようなっている。なお、
図3に示す出力部45によって動作プログラムを表示したり、
図3に示す入力部47によって動作プログラムを変更することができるようになっている。
【0058】
初期状態として、X軸移動体17上の所定に位置に被測定物3が一体的に設置されており、主軸回転体25にタッチプローブ5(タッチプローブ筐体7)が一体的に設置されており、主軸回転体25がヘッド筐体23に対して回転しないように固定されており、タッチプローブ5が、被測定物3の上方で被測定物3から離れて待機位置に位置しているものとする。
【0059】
まず、ボール体13を被測定物3から離れた待機位置から被測定物3に近づくZ軸下方向に直線的に移動させることで被測定物3に当接させることを、3回以上の複数回繰り返しておこなう(ボール体当接工程)。
【0060】
ボール体当接工程で被測定物3に複数回当接させたときのボール体13の複数個所の位置(たとえばボール体13の中心の位置;座標)を用いて、被測定物3を計測する(計測工程)。
【0061】
なお、上述したように、ボール体当接工程での各待機位置(各当接位置)をZ軸方向で見ると、各待機位置のそれぞれは、お互いが一直線上に位置することなく僅かに離れている。
【0062】
また、計測工程では、各待機位置でのボール体13の中心を含みZ軸方向に延びている複数の延長線のそれぞれと被測定物3の表面との複数の交点のうちの少なくとも1つの交点の位置(座標)、ボール体13と被測定物3との複数の当接点(接触点)のうちの少なくとも1つの当接点の位置(座標)の、少なくともいずれかを計測(算出)する。
【0063】
詳しく説明する。ボール体当接工程では、次に示すようにして、たとえば3回、ボール体13を被測定物3に当接させてボール体13の位置(3つの位置)を検出する。
【0064】
まず、1回目の当接では、第1の待機位置P1(
図6参照)から、ボール体13をZ軸下方向に移動して、ボール体13を被測定物3に当接させる(
図5参照)。この後、ボール体13をZ軸上方に移動することで被測定物3から離して、X軸方向やY軸方向に僅かに移動して、第1の待機位置P1から僅かに離れた第2の待機位置P2(
図6参照)に位置させる。
【0065】
続いて、2回目の当接では、第2の待機位置Pから、ボール体13をZ軸方向(1回目の当接における方向と同方向)に移動して、1回目の当接と同様に、ボール体13を被測定物に当接させる。この後、ボール体13をZ軸上方に移動することでボール体13を被測定物3から離して、X軸方向やY軸方向に僅かに移動して、第1の待機位置P1および第2の待機位置P2から僅かに離れた第3の待機位置P3(
図6参照)に位置させる。
【0066】
続いて、3回目の当接では、第3の待機位置P3から、ボール体13をZ軸方向(1回目と2回目との当接における方向と同方向)に移動して、1回目や2回目の当接と同様に、ボール体13を被測定物3に当接させる。
【0067】
上記3つの待機位置P1,P2,P3をZ軸方向から見ると、
図6で示すように、各待機位置P1,P2,P3のそれぞれにおけるボール体13の中心位置O1,O2,O3が三角形49の頂点のところに位置している。この三角形49の3つの辺それぞれの長さの値は、
図6では、ボール体13の直径(たとえば1mm程度)の値よりも大きくなっているが、実際には、小さくなっていることが望ましい。
【0068】
なお、三角形49の3つの辺それぞれの長さの値が、ボール体13の直径の値の1倍〜10倍の範囲内になっていてもよいし、1/3倍〜1倍の範囲内になっていてもよい。また、三角形49の3つの辺それぞれの長さの値がお互いに等しくなっていてもよい。
【0069】
なお、各待機位置P1,P2,P3は、Z軸方向から見てお互いが僅かに離れているのであって、Z軸方向と交差する方向(たとえば直交する方向であるX軸方向)から見たときにお互いが大きく離れていてもよい。
【0070】
計測工程では、たとえば、次に示すようにして、待機位置P1からの移動でボール体13が被測定物3に当接した時(1回目の当接時)のボール体13の中心を含みZ軸方向に延びている延長線51(
図5参照)と被測定物3の表面との交点53の位置(x座標、y座標、z座標)をもとめる。
【0071】
さらに、詳しく説明すると、ボール体当接工程でのボール体13の1回目の被測定物3への当接時におけるボール体13の中心CP
1の位置(第1の中心位置;
図7(a)で示すCP
1(x
1、y
1、z
1))と、ボール体当接工程でのボール体13の2回目の被測定物3への当接時におけるボール体13の中心CP
2の位置(第2の中心位置;
図7(a)で示すCP
2(x
2、y
2、z
2))と、ボール体当接工程でのボール体13の3回目の被測定物3への当接時におけるボール体13の中心CP
3の位置(第3の中心位置;
図7(a)で示すCP
3(x
3、y
3、z
3))とから、3つの中心位置(座標)を含む平面(a
1x+b
1y+c
1z+d
1=0;
図7(b)参照)をもとめる。
【0072】
なお、ボール体13が、Z軸方向にしか移動しないので、当接位置でのボール体13の中心位置CP
1のx座標、y座標は、待機位置でのボール体13の中心位置O1のx座標、y座標と等しい。同様にして、中心位置CP
2のx座標、y座標は、待機位置での中心位置O2のx座標、y座標と等しく、中心位置CP
3のx座標、y座標は、待機位置での中心位置O3のx座標、y座標と等しい。
【0073】
平面の方程式(a
1x+b
1y+c
1z+d
1=0)は、第1の中心CP
1の位置から第2の中心CP
2の位置へ向かうベクトル(
図8(b)に示すベクトルCP
12)と、第1の中心CP
1の位置から第3の中心CP
3の位置で向かうベクトル(
図8(b)に示すベクトルCP
13)との外積(外積ベクトル(p,q,r))と、第1の中心CP
1の位置とからもとめることができるし、また、第1の中心位置CP
1、第2の中心位置CP
2、第3の中心位置CP
3の3点からももとめることができる。
【0074】
このもとめた平面(a
1x+b
1y+c
1z+d
1=0)とXY平面(z=0;
図7(c)参照)との交差角度θの余弦(cosθ;
図7(d)参照)をもとめる。このもとめたcosθとボール体13の半径Rとから、Z軸の座標の補正値(Zc=R/cosθ)をもとめる。
【0075】
1回目の当接位置におけるボール体13の中心CP
1の位置(中心の座標;x
1,y
1,z
1)とZ軸の座標の補正値Zcとから、1回目の当接でのボール体13の中心CP
1(第1の待機位置P1でのボール体13の中心O1)を含んでZ軸方向に延びている1本の延長線51と被測定物3の表面との交点53位置(交点53の座標;x
1,y
1,z
1−R/cosθ)をもとめる。なお、待機位置P1からボール体13が被測定物3側に近づく方向を、マイナス(−)方向としている。
【0076】
同様にして、ボール体13の2回目の被測定物3への当接時におけるボール体13の中心を含みZ軸方向に延びている延長線と被測定物3の表面との交点の位置(x座標、y座標、z座標)をもとめ、ボール体13の3回目の被測定物3への当接時におけるボール体13の中心を含みZ軸方向に延びている延長線と被測定物3の表面との交点の位置(x座標、y座標、z座標)をもとめてもよい。
【0077】
すなわち、2回目の当接時におけるボール体13の中心位置CP
2(中心の座標;x
2,y
2,z
2)とZ軸の座標の補正値とから、2回目の当接でのボール体13の中心位置CP
2を含んでZ軸方向に延びている1本の延長線と被測定物3の表面との交点位置(交点の座標;x
2,y
2,z
2−R/cosθ)をもとめてもよいし、3回目の当接時におけるボール体13の中心位置CP
3(中心の座標;x
3,y
3,z
3)とZ軸の座標の補正値とから、3回目の当接でのボール体13の中心位置CP
3を含んでZ軸方向に延びている1本の延長線と被測定物3の表面との交点位置(交点の座標;x
3,y
3,z
3−R/cosθ)をもとめてもよい。
【0078】
なお、計測工程で、ボール体13と被測定物3との当接点55の位置(座標)をもとめるときには、たとえば、次のようにする。
【0079】
前述した場合と同様にして、ボール体当接工程でのボール体13の第1の中心位置CP
1(
図8(a)参照)と第2の中心位置CP
2(
図8(a)参照)と第3の中心位置CP
2(
図8(a)参照)とから、3つの中心位置(座標)を含む平面をもとめる。
【0080】
このもとめた平面に対して直交し、1回目の当接でのボール体13の中心を含む直線の方程式(
図8(c)で示す(x−x
L)/L=(y−y
M)/M=(z−z
N)/N)をもとめる。
【0081】
このもとめた直線の方程式と、1回目の当接でのボール体13の表面の方程式(
図8(d)で示す(x−x
1)
2+(y−y
1)
2+(z−z
1)
2=R
2)との2つの交点の
図8(e)で示す座標M
01(x
M1,y
M1,z
M1)、M
02(x
M2,y
M2,z
M2)をもとめる。ただし、z
M1<z
M2であるとする。
【0082】
このもとめた2つの座標のうち、Z軸の座標が小さいほうのものが、1回目の当接での被測定物3とボール体13との接触点(当接点)55の座標(x
M1,y
M1,z
M1)になる。
【0083】
同様にして、2回目のボール体13と被測定物3との当接点の座標や、3回目のボール体13と被測定物3との当接点の座標をもとめてもよい。
【0084】
なお、上述したように、上記ボール体当接工程で、被測定物3でのボール体13の当接を少なくとも4回おこなってもよい。この場合、当接をする前のボール体13の各待機位置(当接したときのボール体13の各位置でもよい。)をZ軸方向から見ると、複数の待機位置のうちの1つの待機位置が、複数待機位置のうちの他の複数の待機位置の内側に位置している。
【0085】
たとえば、4つの待機位置のうちの3つの待機位置におけるボール体13の中心で形成する3角形の内側に、4つの待機位置のうちの他の1つの待機位置におけるボール体13の中心が位置している。
【0086】
また、上記計測工程では、内側に位置している1つの待機位置でのボール体13の中心を含みZ軸方向に延びている1つの延長線と被測定物3の表面との交点の位置(座標)、内側に位置している1つの待機位置からの移動で被測定物3にボール体13が当接したときの当接点の位置(座標)の、少なくともいずれかを計測(算出)するが、3つの待機位置からの当接における交点の位置や当接点の位置を計測してもよい。
【0087】
なお、上記ボール体当接工程で、4回以上の複数回、ボール体を被測定物に当接させる場合、複数回の当接をするときの各待機位置におけるボール体13の中心の位置をZ軸方向からみると、4回のうちの3回で、ボール体13の中心で三角形が形成されていればよい。
【0088】
たとえば、当接を4回行ったとき、Z軸方向から見て、ボール体13の中心の位置を順に適宜つないでいくと、4角形(1つの内角が180°を超えるものを含む)が形成されること(3点以上の点が1直線上に存在していないこと)が通常であるが、4回のうちの3回でボール体の中心の位置が1直線上に存在していることで、3角形しか形成されない態様であってもよい。
【0089】
ボール体当接工程で4回以上の複数回、ボール体13を被測定物3に当接させたときには、最小二乗法によって、上記平面(a1x+b1y+c1z+d1=0;
図7(b)参照)や上記直線((x−x
L)/L=(y−y
M)/M=(z−z
N)/N;
図8(c)参照)をもとめる。
【0090】
また、ボール体当接工程で、ボール体を4回被測定物3に当接させる場合、4回の当接をするときの各待機位置におけるボール体13の中心の位置をZ軸方向からみると、
図9で示すように、4回のうちの3回の当接におけるボール体13の中心位置のそれぞれが正三角形の3つの頂点のそれぞれのところに位置しており、4回のうちの残りの1回の当接におけるボール体13の中心位置が、上記正三角形の中心のところに位置していることが望ましい。そして、残りの1回の当接における当接点の座標等をもとめることが望ましい。
【0091】
なお、被測定物の測定方法によって、被測定物の外形形状をもとめてもよい。
【0092】
すなわち、ボール体当接工程で複数回の当接を行い上記計測工程で計測を行うことを、待機位置を変えて(ずらして)、被測定物3の計測対象になっている表面を網羅するように、複数回繰り返すことで、被測定物3の外形形状をもとめてもよい。
【0093】
被測定物測定方法によれば、ボール体当接工程での各待機位置を所定の一方向から見ると、各待機位置のそれぞれは、お互いが一直線上に位置することなく僅かに離れており、ボール体当接工程で被測定物3に複数回当接させたときのボール体13の複数個所の位置を用い、これらの複数個所の位置を含む平面をもとめ、被測定物3を計測するので、被測定物3の表面が複雑な三次元形状であっても、ボール体13と被測定物3との当接位置を、上記平面を用いた補正によって容易に得ることができる。
【0094】
また、被測定物測定方法によれば、計測工程では、待機位置でのボール体13の中心を含みZ軸方向に延びている複数の延長線のそれぞれと被測定物3の表面との複数の交点のうちの少なくとも1つの交点の位置(座標)をもとめるので、Z軸の座標のみを補正すればよく、被測定物3の計測を一層容易にすることができる。
【0095】
また、計測工程で、ボール体13と被測定物3との複数の当接点(接触点)のうちの少なくとも1つの当接点の位置(座標)をもとめるので、ボール体13と被測定物3との実際の当接点の座標を得ることができる。
【0096】
また、被測定物測定方法によれば、計測工程で、内側に位置している1つの待機位置でのボール体13の中心を含みZ軸方向に延びている1つの延長線と被測定物3の表面との交点の位置(座標)や、内側に位置している1つの待機位置からの移動で被測定物3にボール体13が当接したときの当接点の位置(座標)を計測するので、計測する箇所(被測定物3の表面の点)に接する平面を正確にもとめることができる。
【0097】
また、被測定物測定方法によれば、ボール体当接工程で複数回の当接を行い計測工程で計測を行うことを、待機位置を変えて複数回繰り返すことで、被測定物3の外形形状をもとめるので、被測定物3全体の形状を広範囲(たとえば全体)にわたって得ることができる。
【0098】
ところで、被測定物測定装置1が精密加工機であり、精密加工機1に設置した被測定物3が、荒加工後であってさらに仕上げ加工を要するワークであるとすれば、被測定物3の外形形状をもとめることで、ワーク3の精密加工機1への設置精度、ワーク3の仕上げ代の把握を容易に得ることができる。
【0099】
また、ボール体当接工程で、ボール体を4回以上の複数回被測定物3に当接させる場合Z軸方向からみたときに、
図10で示すように、複数回−(マイナス)1回の当接におけるボール体13の中心位置のそれぞれが、円CZの円周を当分配するところに位置しており、残りの1回の当接におけるボール体13の中心位置が、円CZの中心のところに位置していることが望ましい。
【0100】
また、被測定物測定装置1において、X軸移動体17に設置された被測定物3に対して、主軸回転体25に設置されたタッチプローブ5が、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向で移動位置決め自在になっていることに加えて、X軸方向に延びたA軸まわりで回動位置決め自在であり、Y軸方向に延びたB軸まわりで回動位置決め自在になっていてもよい。