(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761709
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】切羽地山探査方法及び装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20200917BHJP
E21D 9/093 20060101ALI20200917BHJP
G01S 15/89 20060101ALI20200917BHJP
G01S 7/521 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
E21D9/06 301Z
E21D9/093 F
G01S15/89 Z
G01S7/521 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-173486(P2016-173486)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-40118(P2018-40118A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】粥川 幸司
(72)【発明者】
【氏名】増田 司朗
(72)【発明者】
【氏名】中野 修吾
(72)【発明者】
【氏名】藤本 明生
【審査官】
彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−012548(JP,A)
【文献】
特開平06−307187(JP,A)
【文献】
特開昭60−148998(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0233242(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
E21D 9/093
G01S 7/521
G01S 15/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥水式シールドマシン先端の面板及びカッターからなるカッターヘッドを回転させ、前記カッターヘッド後方のバルクヘッドにより隔成されるチャンバー内に送泥管により泥水を供給充填して、前記カッターヘッド前方の切羽面を泥水で加圧しながら掘削した前記カッターヘッド前方の切羽上部及び前記カッターヘッド天端周辺の地山の状態を把握する切羽地山探査方法であって、
前記シールドマシンの停止中に、制御装置にケーブル又は無線により接続された超音波受発信器を先端に取り付けた探査棒を前記シールドマシンの本体内部から前記バルクヘッドに形成した穴を通して前記チャンバー内の泥水中に挿入するとともに、前記超音波受発信器を前記カッターヘッド前方の切羽上部の地山又は前記カッターヘッド天端周辺の地山に向けて当該地山と前記泥水との境界面を前記泥水の比重に応じて探査可能な地点まで移動し、前記泥水中で前記超音波受発信器から超音波を発信し、当該地山と前記泥水との境界面での反射波を前記超音波受発信器で検知して、前記超音波受発信器から当該地山までの距離を測定することにより、切羽、地山の状態を把握する、
ことを特徴とする切羽地山探査方法。
【請求項2】
超音波受送信器及び制御装置に地中連続壁の側壁測定用の超音波測定装置を含む汎用機を使用する請求項1に記載の切羽地山探査方法。
【請求項3】
予め、チャンバー内に供給する泥水と同じ比重の模擬泥水と模擬土砂を入れた水槽の中で、使用する超音波受発信器が前記模擬泥水と前記模擬土砂との境界面を探査可能な当該境界面からの距離を測定しておき、当該距離に基づいて、探査棒を前記超音波受発信器から前記バルクヘッドに形成した穴を通して前記チャンバー内の泥水中に挿入するとともに、前記超音波受発信器を前記カッターヘッド前方の切羽上部の地山又は前記カッターヘッド天端周辺の地山に向けて当該地山と前記泥水との境界面を前記泥水の比重に応じて探査可能な地点まで移動する請求項1又は2に記載の切羽地山探査方法。
【請求項4】
予め、チャンバー内に供給する泥水と同じ比重の模擬泥水と模擬土砂を入れた水槽の中で、使用する超音波受発信器が前記模擬泥水と前記模擬土砂との境界面を探査可能な当該境界面からの距離を測定しておき、当該距離に基づいて、探査棒に必要な長さを算出する請求項1乃至3のいずれかに記載の切羽地山探査方法。
【請求項5】
超音波受発信器から受発信する超音波をカッターヘッドの面板に土砂の取り込み用に形成されるスリットを通して前記面板を透過させる請求項1乃至4のいずれかに記載の切羽地山探査方法。
【請求項6】
泥水式シールドマシン先端の面板及びカッターからなるカッターヘッドを回転させ、前記カッターヘッド後方のバルクヘッドにより隔成されるチャンバー内に送泥管により泥水を供給充填して、前記カッターヘッド前方の切羽面を泥水で加圧しながら掘削した前記カッターヘッド前方の切羽上部及び前記カッターヘッド天端周辺の地山の状態を把握する切羽地山探査装置であって、
超音波を受発信する超音波受発信器と、
前記超音波受発信器を制御する制御装置と、
前記超音波受発信器を先端に取り付けて、前記超音波受発信器を泥水中で移動するための所定の長さを有する探査棒とを備え、
先端に前記超音波受発信器を有する前記探査棒を前記シールドマシンの本体内部から前記バルクヘッドに形成した穴を通して前記チャンバー内の泥水中を前記カッターヘッド前方の切羽上部の地山又は前記カッターヘッド天端周辺の地山に向けて当該地山と泥水との境界面を泥水の比重に応じて探査可能な探査地点まで延ばし、前記探査地点で前記超音波受発信器から超音波を発信し、当該地山と泥水との境界面での反射波を前記超音波受発信器で検知して、前記超音波受発信器から当該地山までの距離を測定する、
ことを特徴とする切羽地山探査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥水式シールド工法に用いる切羽地山探査方法及び装置に関し、特に、シールドマシンのカッターヘッド前方の切羽上方の地山、及びカッターヘッド天端周辺の地山の状態(地山の崩壊の有無、コピーカッターによって人為的に行った余掘りの状態など)を探査する切羽地山探査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
泥水式シールド工法では、シールドマシンで掘削する切羽面にシールドマシン側から泥水を供給し加圧することにより切羽の安定を図りながら掘削を進め、掘削した土砂は泥水とともに地上へ搬送し、地上で土砂と泥水を分離して、掘削した土砂を回収し、泥水を再利用する。
この工法に用いられるシールドマシンは、一般に、マシン本体の先端に回転自在に支持される面板と複数のカッタ
ービットとからなるカッターヘッド及びカッターヘッドを回転させる駆動モータ
を有するカッター駆動部、カッターヘッドの後方に隔壁により隔成された
カッターチャンバー
(以下、チャンバーと称す。)、マシン本体側からチャンバーに挿通される送泥管及び排泥管などを備えて構成される。
このようにしてカッターヘッドを
カッター駆動部により回転させるとともに、送泥管からベントナイトや粘土などの粘性材料を加えた泥水をチャンバー内に供給充填し切羽面を泥
水で加圧することにより切羽の安定を図りながら掘削を進め、カッターヘッドで掘削した土砂は泥水中に取り込んで排泥水とし、この排泥水を排泥管を通して地上へ搬送するようになっている。
このような泥水式シールド工法においては、掘削土の取り込み過多や土水圧と切羽泥水圧とのアンバランスなどが生じると、地山の崩落やトンネル周りに空洞の発生が懸念される。
カッターヘッド前方の切羽やカッターヘッド周囲の地山に、特に均等係数
の小さい砂層が存在している地盤では、切羽水圧の変動や泥水性状の変化などによって、崩落が起こる危険性が高い。地山に崩落が発生しその状態が残置されると、地下水の流動などにより地盤中の細粒分が移動し、
地盤の緩み、
空洞の拡大が生じ、その結果、地表面で沈下や陥没を引き起こす恐れがある。このため、切羽の掘削には厳格な施工管理が求められる。
ところが、泥水式シールドマシンは密閉型であるため、カッターヘッド前面の切羽の状態をシールドマシン内から直接目視することができない。このため、通常の泥水式シールド工法の切羽の管理では、送配泥水の性状、排土量、排土の性状を常時把握するとともに、切羽泥水圧、カッタ
ートルク、推力などの値や変動を監視し、オペレーターの経験に基づいて判断しているのが現状である。また、シールドマシン内で切羽の状態を探査する場合は、シールドマシン内から切羽に向けてボーリングを実施せざるを得ず、この場合、シールドマシンの掘進を長時間に亘って停止しなければならず、工期の遅延になりかねない。
【0003】
一方、従来より、シールドマシン前方の地盤を探査するための各種の方法や装置が特許文献1−
5などにより提案されている。
(1)特許文献1
特許文献1は前方探査方法に関するもので、この探査方法では、まず、地中を掘進するシールド掘進機の前部に設けられた送波器から前方へ音波を送り出すとともに、このシールド掘進機の前方の地中に存在する障害物からの反射波をシールド掘進機の前部に設けられた受波器にて受け取り、次に、送波データと受波データとの間の相互相関を求めるとともに、相関関数の大きな受波信号を抽出することで受波のノイズを除去し、そして、送波の送り出しの時刻と受波の受け取りの時刻の差と、音波の地中伝搬速度とから、シールド掘進機から障害物までの距離を算定する。
このようにして受波のノイズを取り除き、障害物までの距離を求める。また、音波の周波数を代えることで、障害物の大きさをも測定する。
(2)特許文献2
特許文献2は
掘進機の地盤探査装置に関するもので、この探査装置では、掘進機のシールド面板に送波器と受波器を設けるとともに、シールド面板の前方地盤中にシャフトを突出させて先方送波器を設置することで、送波器からの音波をこれから掘削する前方の障害物に反射して受波器に受信するとともに、先方送波器から受波器に音波を直接受波する。
このようにして土の音波特性を知るために必要な土中での正確な音波速度や音圧の減衰の度合いを測り、かつ掘進機本体を伝搬する直達波の影響を除去する。
(3)特許文献3
特許文献3は
掘進機の地盤探査装置に関するもので、この探査装置は、掘進機のシールド面板に設けられ、音波を発信する送波器と、シールド面板に設けられ、発信された音波が地盤中の人工構造物や埋設物などの障害物に反射して返ってくる音波と送波器からシールド面板上を伝わってくる音波とを受信する受波器と、受波器に設けられ、シールド面板から伝わってくる音波などの不要な波形を計測する振動計とからなり、送波器とは別に、シールド面板前方の地盤中に突出されるシャフトの先端部に、音波を受波器に直接発信して、受波器までの音波速度と音波の減衰の度合いにより掘進機がこれから掘進する土質を判断するための、先方送波器を設ける。
このようにして送波器とは別に掘進機前方の地盤中に設置した先方送波器から同じ受波器に直接受波することで、両器間の音波速度と音波の減衰を測り、これから掘進する土質を判断して、障害物までの距離を把握する。
(4)特許文献4
特許文献4は地中探査装置に関するもので、この地中探査装置では、音波探査装置が、掘進機の前面カッタ面板に取り付けられ、その内部に音波反射法により前方の地山中の障害物を探査するための地中探査センサであるハイドロフォンが設けられる。
このようにして掘削機前方の地山の障害物を探査する。
(5)特許文献5
特許文献5は地山崩壊検知方法およびその装置に関する。
この検知方法では、シールド掘削機側より地山に向かってワイヤの一端を装着した測定弾を発射し、地山に測定弾を一部貫入させた後、シールド掘削機より延びたワイヤの長さを計測することにより地山崩壊を検知する。
また、この検知装置は、ワイヤ装着溝を設けた測定弾を発射する発射管と、発射管に測定弾を装填する測定弾供給装置と、測定弾に装着するワイヤを供給するワイヤリールと、発射管の開口部と測定弾供給装置と間に開口部から順に配置された、ワイヤのカッタ、およびワイヤにこのワイヤを測定弾に固定するストッパを取り付けるストッパ取付装置と、ワイヤリールの回転に応じた回転信号を出力する回転検出装置と、この回転検出装置から回転信号を入力し、シールド掘削機本体から延びたワイヤ長さを計測し、その長さにより崩壊が発生しているかを判断する飛距離検出装置とを備える。
このようにしてワイヤを装着した測定弾を高速で発射すると、測定弾は泥水などの滞留物を貫通し、未崩壊の固い切羽面に到達することにより、地下水や泥水が溜まっている場合や緩く土砂が溜まっている場合でも、誤差を生じることなく、真の崩壊が有るかどうかを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−85483号公報
【特許文献2】特許第3081712号公報
【特許文献3】特許第3136202号公報
【特許文献4】実開平4−122795号公報
【特許文献5】特開平6−58078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1−5では、次のような問題がある。
(1)特許文献1の前方探査方法では、シールド掘進機の前方の地中に存在する障害物を探査するため、シールド掘進機の前部に設けた送波器から前方へ音波を送り出し、障害物からの反射波をシールド掘進機の前部に設けられた受波器にて受け取り、シールド掘進機から障害物までの距離を算定するものとしたが、音波は波長が長く、指向性が低いために、この探査方法で、カッターヘッド前方の切羽上部の地山又はカッターヘッド天端周辺の地山と泥水との境界面を探査することができない。
(2)特許文献2の
掘進機の地盤探査装置では、土の音波特性を知るために必要な土中での正確な音波速度や音圧の減衰の度合いを測り、かつ掘進機本体を伝搬する直達波の影響を除去するため、掘進機のシールド面板に送波器と受波器を設けるとともに、シールド面板の前方地盤中にシャフトを突出させて先方送波器を設置することで、送波器からの音波をこれから掘削する前方の障害物に反射して受波器に受信するとともに、先方送波器から受波器に音波を直接受波するものとしたが、音波は波長が長く、指向性が低いために、この探査装置で、カッターヘッド前方の切羽上部の地山又はカッターヘッド天端周辺の地山と泥水との境界面を探査することができない。
また、この場合、カッターヘッドから前方を削孔し先方送波器を取り付けたシャフトを突出させて測定するので、その間掘進機を停止せざるを得ず、掘進機による高速施工が要求される現代においては実現性は低いものと考えられる。
(3)特許文献3の
掘進機の地盤探査装置では、これから掘進する土質を判断して、障害物までの距離を把握するため、掘進機のシールド面板に設けられ、音波を発信する送波器、及び発信された音波が地盤中の人工構造物や埋設物などの障害物に反射して返ってくる音波と送波器からシールド面板上を伝わってくる音波とを受信する受波器と、受話器に設けられ、受波器にシールド面板から伝わってくる音波などの不要な波形を計測する振動計と、送波器とは別に、シールド面板前方の地盤中に突出されるシャフトの先端部に設けられ、音波を受波器に直接発信して、受波器までの音波速度と音波の減衰の度合いにより掘進機がこれから掘進する土質を判断するための先方送波器とを備えるものとしたが、音波は波長が長く、指向性が低いために、この探査装置で、カッターヘッド前方の切羽上部の地山又はカッターヘッド天端周辺の地山と泥水との境界面を探査することができない。
(4)特許文献4の地中探査装置では、前方の地山中の障害物を探査するため、音波探査装置が掘進機の前面カッタ面板に取り付けられ、その内部にハイドロフォンが設けられるものとしたが、音波は波長が長く、指向性が低いために、この探査装置で、カッターヘッド前方の切羽上部の地山又はカッターヘッド天端周辺の地山と泥水との境界面を探査することができない。また、音波探査装置はカッターヘッドに切羽に向けて設置されていて、この音波探査装置の前面部に生じる可能性のある気泡や付着する土砂を取り除くために、水を噴射する手段を備えているが、音波探査装置がカッターヘッドに取り付けられ、その前面がカッターヘッド面板と略同一面となっているために、この前面を水で洗浄すると、その水流や水圧で切羽面にも影響を与え、場合によっては、泥水で形成された泥膜が破壊され、切羽を保持できなくなる可能性があり、泥水シールドでは適さないものと考えられる。
(
5)特許文献5の地山崩壊検知方法及び装置では、地山崩壊を検知するため、シールド掘削機側より地山に向かってワイヤの一端を装着した測定弾を発射し、地山に測定弾を一部貫入させた後、シールド掘削機より延びたワイヤの長さを計測するものとしたが、測定後はワイヤを切断し、この切断されたワイヤが地山中に残置されるので、少量ではあるものの、場合によってはこれがカッターに絡み付いてカッターの回転不能やチャンバーの閉塞などを引き起こす恐れがある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、地山の崩落やトンネル周りに空洞の発生が懸念される切羽の上方を直接に、簡便で短時間の探査により、掘進工程に影響を与えることなしに、また、切羽の保持に影響することなしに、その状況や空洞の有無などを早期に把握し、早期に対策を行えるようにして、周辺の影響や工程の遅延などを防止する、地山切羽探査方法及び装置を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の地山切羽探査方法は、
泥水式シールドマシン先端の面板及びカッターからなるカッターヘッドを回転させ、前記カッターヘッド後方のバルクヘッドにより隔成されるチャンバー内に送泥管により泥水を供給充填して、前記カッターヘッド前方の切羽面を泥水で加圧しながら掘削した前記カッターヘッド前方の切羽上部及び前記カッターヘッド天端周辺の地山の状態を把握する切羽地山探査方法であって、
前記シールドマシンの停止中に、制御装置にケーブル又は無線により接続された超音波受発信器を先端に取り付けた探査棒を前記シールドマシンの本体内部から前記バルクヘッドに形成した穴を通して前記チャンバー内の泥水中に挿入するとともに、前記超音波受発信器を前記カッターヘッド前方の切羽上部の地山又は前記カッターヘッド天端周辺の地山に向けて当該地山と前記泥水との境界面を前記泥水の比重に応じて探査可能な地点まで移動し、前記泥水中で前記超音波受発信器から超音波を発信し、当該地山と前記泥水との境界面での反射波を前記超音波受発信器で検知して、前記超音波受発信器から当該地山までの距離を測定することにより、切羽、地山の状態を把握する、
ことを要旨とする。
この場合、超音波受送信器及び制御装置に地中連続壁の側壁測定用の超音波測定装置を含む汎用機を使用する。
この場合、予め、チャンバー内に供給する泥水と同じ比重の模擬泥水と模擬土砂を入れた水槽の中で、使用する超音波受発信器が前記模擬泥水と前記模擬土砂との境界面を探査可能な当該境界面からの距離を測定しておき、当該距離に基づいて、探査棒を前記超音波受発信器から前記バルクヘッドに形成した穴を通して前記チャンバー内の泥水中に挿入するとともに、前記超音波受発信器を前記カッターヘッド前方の切羽上部の地山又は前記カッターヘッド天端周辺の地山に向けて当該地山と前記泥水との境界面を前記泥水の比重に応じて探査可能な地点まで移動する。
この場合、予め、チャンバー内に供給する泥水と同じ比重の模擬泥水と模擬土砂を入れた水槽の中で、使用する超音波受発信器が前記模擬泥水と前記模擬土砂との境界面を探査可能な当該境界面からの距離を測定しておき、当該距離に基づいて、探査棒に必要な長さを算出する。
この場合、超音波受発信器から受発信する超音波をカッターヘッドの面板に土砂の取り込み用に形成されるスリットを通して前記面板を透過させる。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の地山切羽探査装置は、
泥水式シールドマシン先端の面板及びカッターからなるカッターヘッドを回転させ、前記カッターヘッド後方のバルクヘッドにより隔成されるチャンバー内に送泥管により泥水を供給充填して、前記カッターヘッド前方の切羽面を泥水で加圧しながら掘削した前記カッターヘッド前方の切羽上部及び前記カッターヘッド天端周辺の地山の状態を把握する切羽地山探査装置であって、
超音波を受発信する超音波受発信器と、
前記超音波受発信器を制御する制御装置と、
前記超音波受発信器を先端に取り付けて、前記超音波受発信器を泥水中で移動するための所定の長さを有する探査棒とを備え、
先端に前記超音波受発信器を有する前記探査棒を前記シールドマシンの本体内部から前記バルクヘッドに形成した穴を通して前記チャンバー内の泥水中を前記カッターヘッド前方の切羽上部の地山又は前記カッターヘッド天端周辺の地山に向けて当該地山と泥水との境界面を泥水の比重に応じて探査可能な探査地点まで延ばし、前記探査地点で前記超音波受発信器から超音波を発信し、当該地山と泥水との境界面での反射波を前記超音波受発信器で検知して、前記超音波受発信器から当該地山までの距離を測定する、
ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の切羽地山探査方法及び装置によれば、シールドマシンの停止中に、制御装置にケーブル又は無線により接続された超音波受発信器を先端に取り付けた探査棒をシールドマシンの本体内部からバルクヘッドに形成した穴を通してチャンバー内の泥水中に挿入するとともに、超音波受発信器をカッターヘッド前方の切羽上部の地山又はカッターヘッド天端周辺の地山に向けて当該地山と泥水との境界面を泥水の比重に応じて探査可能な距離まで移動し、泥水中で超音波受発信器から超音波を発信し、当該地山と泥水との境界面での反射波を超音波受発信器で検知して、超音波受発信器から当該地山までの距離を測定することにより、切羽、地山の状態を把握するようにしたので、地山の崩落やトンネル周りに空洞の発生が懸念される切羽の上方を直接に、簡便で短時間の探査により、掘進工程に影響を与えることなしに、また、切羽の保持に影響することなしに、その状況や空洞の有無などを早期に把握することができ、これにより、地山の崩落や空洞の発生があった場合に、早期の対策を講じることができ、周辺の影響や工程の遅延などを防止することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態による切羽地山探査方法及び装置を示す図((a)はチャンバー近傍の縦断面図(b)はバルクヘッド(隔壁)の横断面図(c)は面板スリットの横断面図)
【
図2】同方法及び装置における超音波受発信器を先端に取り付けた探査棒をバルクヘッドから探査地点に向けて押し出し、設置した状態と引き戻した状態を示す図
【
図3】同方法及び装置における超音波受発信器による泥水中(泥水比重1.220の場合)の超音波探査の確認実験を示す図((1)は実験の方法を模式的に示す図(2)は実験結果を示す図)
【
図4】同方法及び装置における超音波受発信器による泥水中(泥水比重1.220の場合)の超音波探査の指向性を含む確認実験を示す図((1)は実験の方法を模式的に示す図(2)は実験結果を示す図)
【
図5】同方法及び装置における超音波受発信器による泥水中(泥水比重1.220の場合)の超音波探査のスリット透過の確認実験を示す図((1)は実験の方法を模式的に示す図(2)は実験結果を示す図)
【
図6】同方法及び装置における超音波受発信器による泥水中(泥水比重1.250の場合)の超音波探査の確認実験を示す図((1)は実験の方法を模式的に示す図(2)は実験結果を示す図)
【
図7】同方法及び装置における超音波受発信器による泥水中(泥水比重1.250の場合)の超音波探査の指向性を含む確認実験を示す図((1)は実験の方法を模式的に示す図(2)は実験結果を示す図)
【
図8】同方法及び装置における超音波受発信器による泥水中(泥水比重1.250の場合)の超音波探査のスリット透過の確認実験を示す図((1)は実験の方法を模式的に示す図(2)は実験結果を示す図)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1に切羽地山探査方法を示している。
図1に示すように、この切羽地山探査方法は、泥水式シールドマシンS先端の面板10及びカッター11からなるカッターヘッド1を回転させ、カッターヘッド1後方のバルクヘッド2により隔成されるチャンバー3内に送泥管により泥水Mを供給充填して、カッターヘッド1前方の切羽(面)Pを泥水で加圧しながら掘削したカッターヘッド1前方の切羽上部の地山P1(以下、当該地山P1ということがある。)及びカッターヘッド1天端周辺の地山P2(以下、当該地山P2ということがある。)の状態を把握するもので、この方法では、音波よりも周数が高く、指向性の強い超音波を用いた超音波探査を採用する。
この方法では、特に、シールドマシンSの停止中に、超音波測定装置の制御装置(図示省略)にケーブル又は無線により接続された超音波受発信器Uを先端に取り付けた探査棒BをシールドマシンSの本体内部からバルクヘッド2に形成した穴20を通してチャンバー3内の泥水M中に挿入するとともに、超音波受発信器Uをカッターヘッド1前方の切羽上部の地山P1又はカッターヘッド1天端周辺の地山P2に向けて当該地山P1又はP2と泥水Mとの境界面を泥水Mの比重に応じて探査可能な探査地点まで移動し、泥水M中で超音波受発信器Uから超音波を発信し、当該地山P1又はP2と泥水Mとの境界面での反射波を超音波受発信器Uで検知して、超音波受発信器Uから当該地山P1又はP2までの距離を測定することにより、切羽、地山の状態を把握する。
【0012】
図1に切羽地山探査装置を併せて示している。
図1に示すように、この切羽地山探査装置は、泥水式シールドマシンS先端の面板10及びカッター11からなるカッターヘッド1を回転させ、カッターヘッド1後方のバルクヘッド2により隔成されるチャンバー3内に送泥管により泥水Mを供給充填して、カッターヘッド1前方の切羽(面)Pを泥水Mで加圧しながら掘削したカッターヘッド1前方の切羽上部の地山P1(当該地山P1)及びカッターヘッド1天端周辺の地山(当該地山P2)の状態を把握するもので、この装置では、音波よりも周数が高く、指向性の強い超音波を受発信する超音波受発信器Uとこの超音波受発信器Uを制御する制御装置(図示省略)とからなる超音波測定装置を採用する。
この装置では、特に、超音波測定装置、すなわち、超音波を受発信する超音波受発信器U、及びこの超音波受発信器Uを制御する制御装置と、超音波受発信器Uを先端に取り付けて、超音波受発信器Uを泥水中で移動するための所定の長さを有する探査棒Bとを備え、先端に超音波受発信器Uを有する探査棒BをシールドマシンSの本体内部からバルクヘッド2に形成した穴20を通してチャンバー3内の泥水M中をカッターヘッド1前方の切羽上部の地山P1又はカッターヘッド天端周辺の地山P2に向けて当該地山P1又はP2と泥水Mとの境界面を泥水Mの比重に応じて探査可能な探査地点まで延ばし、探査地点で超音波受発信器Uから超音波を発信し、当該地山P1又はP2と泥水との境界面での反射波を超音波受発信器Uで検知して、超音波受発信器Uから当該地山P1又はP2までの距離を測定する。
【0013】
以下、この探査方法及び装置について詳述する。
この探査方法及び装置では、超音波測定装置に地中連続壁の側壁測定用の超音波測定装置などの汎用機を転用して使用する。この場合、超音波測定装置は、地中連続壁の側壁測定用のもので、送信部、受信部、制御部、記録部などを含むパソコンに接続可能な制御装置と、この制御装置にケーブル又は無線で接続される超音波受発信器Uとを備えて構成される。
また、探査棒Bは剛性を有する所定の長さの金属棒材により形成される。この探査方法では、後述するとおり、実際の切羽地山探査の前に予め、チャンバー3内に供給する泥水Mと同じ比重の模擬泥水と模擬土砂を入れた水槽の中で、使用する超音波受発信器Uが模擬泥水と模擬土砂との境界面を探査可能な当該境界面からの距離、すなわち、当該境界面から当該境界面を探査可能な探査地点までの距離を測定するので、当該距離に基づいて、探査棒Bに必要な長さを算出する。この場合、探査棒Bの全長は、バルクヘッド2から探査地点までの長さにシールドマシンSの本体内部に残し、探査棒Bの支持、操作に必要な長さを加えた長さとなる。また、この場合、探査棒Bがバルクヘッド2の穴20からの突出長さが一目して分かるように、この探査棒Bの周面に先端から目盛りを付けておいてもよい。
このようにして超音波受発信器Uを先端に取り付けた探査棒Bを、
図2に示すように、バルクヘッド2に形成した穴20にボールバルブ21などのシール部材を介して、シールドマシンSの本体内部からチャンバー3内を通して所定の探査地点に向けて押し出し可能に、また反対に引き戻し可能に取り付ける。また、この場合、探査棒Bの操作性をよくするために、探査棒Bを支持するための架台や探査棒Bを探査地点の方向に向けて移動案内するためのガイドを併せて設置してもよい。
【0014】
また、この探査方法では、実際の切羽地山探査に際して、超音波受発信器Uをカッターヘッド1前方の切羽上部の地山P1又はカッターヘッド1天端周辺の地山P2に向けて当該地山P1又はP2と泥水Mとの境界面を泥水Mの比重に応じて探査可能な探査地点まで移動させるため、実際の切羽地山探査の前に予め、チャンバー3内に供給する泥水Mと同じ比重の模擬泥水と模擬土砂を入れた水槽の中で、使用する超音波受発信器Uが模擬泥水と模擬土砂との境界面を探査可能な当該境界面からの距離を測定しておく。
この測定手法を
図3から
図8に例示している。
ここで使用する超音波受発信器Uは、本来、地中連続壁工法の施工管理において泥水(安定液)が溜められた縦穴内で上下に移動しながら、超音波を縦穴の側壁に向けて放射し、その反射波を受波して、縦穴の壁面までの距離を測定するもので、この場合の泥水の比重は1.04〜1.10とされており、これに対して泥水式シールド工法で用いる泥水の比重は1.1〜1.25と大きい。
そこで、泥水式シールド工法で用いられる実際の泥水M中でのこの超音波受発信器Uによる地山と泥水との境界面の探査の可否及び探査距離を把握する必要があり、模擬泥水と模擬土砂を使用して模擬泥水中での超音波受発信器Uによる超音波探査の確認実験を行う。この実験では、
図3〜
図8に示すように、水槽A内にその底部の一端から中央付近まで斜めに所定量の土砂E1(模擬土砂E1)を盛り、所定量の泥水M1(模擬泥水M1)を入れておき、この模擬泥水M1の中に超音波受発信器Uを探査棒Bを介して挿入し、模擬土砂E1(模擬土砂E1と模擬泥水M1との境界面)までの斜め距離を変えながら、超音波により距離を計測した。
図3は模擬泥水M1の比重が1.220、超音波受発信器Uの超音波周波数がf=80kHz、土砂角が60°の場合である。その結果を試験結果一覧表に示す。この一覧表から、比重が1.220の場合、80kHzの超音波は土砂から260mm〜760mmまでの反射を捉えているが、土砂から760mmまでの反射については、実験時の比重が時間の経過により1.220より下がったことが予想され、この場合、土砂の適用距離は700mm程度と推察される。
図4は模擬泥水M1の比重が1.220、超音波受発信器Uの超音波周波数がf=80kHzの場合で、土砂角を種々に変えた場合である。その結果を試験結果一覧表に示す。この一覧表から、比重が1.220の場合、80kHzの超音波は土砂角70°〜90°までは土砂E1の反射を検出することができ、この場合、土砂角の適用限界は68°〜70°以上と推測される。
また(
図1を参照すると)、泥水式シールドマシンSは一般に、カッターヘッド1が面板タイプであり、カッター11で切削した土砂を面板10の土砂取り込み用のスリット(開口部)12を通してチャンバー3内に取り込むため、超音波受発信器Uを探査棒Bでチャンバー3内に挿入した際に、超音波の指向性を利用して、超音波をこのスリット12を通して探査できることが必要となる。そこで、水槽A内の土砂E1の上に2枚の鉄板を置いてこの2枚の鉄板の間をスリット(模擬スリット)に見立てて実験を行った。
図5は模擬泥水M1の比重が1.220、超音波受発信器Uの超音波周波数がf=80kHzの場合で、土砂E1の上に2枚の鉄板Cを置き、超音波を2枚の鉄板C間のスリットWに通した場合である。その結果を試験結果一覧表に示す。この一覧表から、比重が1.220の場合、80kHzの超音波はスリットWまでの距離が440mmまではスリットWの影響を受けない。この場合、スリットWの影響を受けない範囲はスリットWまでの距離が440mm〜540以下と推測される。なお、この場合の超音波の指向性は19°〜23°以内と推測される。
図6は模擬泥水M1の比重が1.250、超音波受発信器Uの超音波周波数がf=80kHzの場合で、土砂角が60°の場合である。その結果を試験結果一覧表に示す。この一覧表から、比重が1.250の場合、80kHzの超音波は土砂E1から300mm〜600mmまでの反射を捉えており、この場合、土砂の適用距離は600mm〜700mm以下と推察される。
図7は模擬泥水M1の比重が1.250、超音波受発信器Uの超音波周波数がf=80kHzの場合で、土砂角を種々に変えた場合である。その結果を試験結果一覧表に示す。この一覧表から、比重が1.250の場合、80kHzの超音波は土砂角83°〜90°までは土砂E1の反射を検出することができ、この場合、土砂角の適用限界は80°〜83°以上と推測される。
図8は模擬泥水の比重が1.250、超音波受発信器Uの超音波周波数がf=80kHzの場合で、土砂E1の上に2枚の鉄板Cを置き、超音波を2枚の鉄板C間のスリットWに通した場合である。その結果を試験結果一覧表に示す。この一覧表から、比重が1.250の場合、80kHzの超音波はスリットWまでの距離が380mmまではスリットWの影響を受けない。この場合、スリットWの影響を受けない範囲はスリットWまでの距離が380mm〜490mm以下と推測される。なお、この場合の超音波の指向性は21°〜27°以内と推測される。
以上の実験から、超音波受発信器Uは、泥水の比重が大きくなる程超音波の探査距離が短くなり、泥水の比重が1.25を超えると探査は不可能であるが、泥水の比重が1.25以下であれば、探査距離が300mm〜500mmの範囲内で探査可能であることを確認した。また、この超音波受発信器Uから発信受信される超音波はその指向性により、2枚の鉄板C間の模擬スリットWを通して探査が可能であり、スリットWは影響しないことを確認した。
このようにチャンバー3内に供給する泥水Mと同じ比重の模擬泥水M1と模擬土砂E1を入れた水槽Aの中で、使用する超音波受発信器Uが模擬泥水M1と模擬土砂E1との境界面を探査可能な当該境界面からの距離を測定することで、泥水式シールド工法で用いられる実際の泥水M中での当該地山P1又はP2と泥水Mとの境界面の探査の可否及び探査距離を把握することができる。
【0015】
そして、この探査方法の、実工事での運用では、セグメントの組立中や昼夜交代時などのシールドマシンSの掘進停止中に、カッターヘッド1を回転し所定の位置(面板10のスリット12がカッターヘッド1前方の切羽上部の地山P1又はカッターヘッド1天端周辺の地山P2に近接する位置)に停止させた後、
図2に示すように、超音波受発信器Uを先端に取り付けた探査棒BをシールドマシンSの本体内部からバルクヘッド2に形成した穴20を通してチャンバー3内の泥水M中に挿入するとともに、先端の超音波受発信器Uをカッターヘッド1前方の切羽上部の地山P1又はカッターヘッド1天端周辺の地山P2に向けて当該地山P1又はP2と泥水Mとの境界面を泥水Mの比重に応じて探査可能な探査地点まで、この場合、カッターヘッド1の面板10の土砂取り込み用のスリット12に対して所定の距離離間した位置又はスリット12内まで移動して、超音波探査を実施する。すなわち、泥水M中の探査地点で超音波受発信器Uから超音波を発信し、カッターヘッド1の面板10のスリット12を通して面板10を透過させ、当該地山P1又はP2と泥水Mとの境界面での反射波を超音波受発信器Uで検知して、超音波受発信器Uから当該地山P1又はP2までの距離を測定することにより、切羽、地山の状態を把握する。この探査時間は数分程度である。この探査後、探査棒Bをチャンバー2側からシールドマシンS本体内部へ引き戻す。
【0016】
以上説明したように、この探査方法及び装置によれば、シールドマシンSの停止中に、超音波測定装置の制御装置にケーブル又は無線により接続された超音波受発信器Uを先端に取り付けた探査棒BをシールドマシンSの本体内部からバルクヘッド2に形成した穴20を通してチャンバー3内の泥水M中に挿入するとともに、先端の超音波受発信器Uをカッターヘッド1前方の切羽上部の地山P1又はカッターヘッド天端周辺の地山P2に向けて当該地山P1又はP2と泥水Mとの境界面を泥水Mの比重に応じて探査可能な距離まで移動し、泥水中で超音波受発信器Uから超音波を発信し、当該地山P1又はP2と泥水との境界面での反射波を超音波受発信器Uで検知して、超音波受発信器Uから当該地山P1又はP2までの距離を測定することにより、切羽、地山の状態を把握するようにしたので、地山の崩落やトンネル周りに空洞の発生が懸念される切羽の上方を直接、簡便に短時間で探査することができ、その状況や空洞の有無などを早期に把握することができる。そして、地山の崩落や空洞の発生があった場合には、早期の対策を講じることができ、周辺の影響や工程の遅延などを防止することができる。
また、この場合、泥水式シールド工法の特徴となる切羽地山に形成される泥膜は超音波によって破壊されることはないので、切羽の保持に何ら影響することがない。
さらに、この場合、探査作業が短時間なので、泥水式シールド工法による掘進工程に影響を与えることもない。
また、この探査方法及び装置によれば、同様にして、コピーカッターによって人為的に掘削した余掘りの状態を探査することもできる。
【0017】
なお、この発明は、超音波受発信器を先端に取り付けた探査棒を使って、特に、カッターヘッド前方の切羽上部及びカッターヘッド天端周辺の地山の状態を把握するものとしているが、この超音波受発信器を先端に取り付けた探査棒を同様に使用して、カッターヘッド周方向のどの位置(例えば、下部、左右各側部、上部と左右各側部との間、下部と左右各側部との間)でも、また、カッターヘッド周囲の地山のどの位置(例えば、下部周辺、左右各側部周辺、上部と左右各側部との間、下部と左右各側部との間)でもその状態を同様に把握できることは、勿論である。
【符号の説明】
【0018】
S 泥水式シールドマシン
M 泥水
P 切羽(面)
P1 カッターヘッド前方の切羽上部の地山
P2 カッターヘッド天端周辺の地山
U 超音波受発信器
B 探査棒
1 カッターヘッド
10 面板
11 カッター
12 スリット
2 バルクヘッド(隔壁)
20 穴
21 ボールバルブ
3 チャンバー
A 水槽
E1 土砂(模擬土砂)
M1 泥水(模擬泥水)
C 鉄板
W スリット(模擬スリット)