(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761718
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】ホースの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 35/02 20060101AFI20200917BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20200917BHJP
B29C 48/09 20190101ALI20200917BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20200917BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20200917BHJP
C08L 9/02 20060101ALI20200917BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20200917BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20200917BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20200917BHJP
B29L 23/00 20060101ALN20200917BHJP
【FI】
B29C35/02
F16L11/04
B29C48/09
C08L21/00
C08K3/22
C08L9/02
C08L27/06
C08L23/16
B29K21:00
B29L23:00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-193537(P2016-193537)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-52054(P2018-52054A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】香月 宏大
(72)【発明者】
【氏名】平井 亮
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 望
(72)【発明者】
【氏名】加藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】大西 由真
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−157508(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/073660(WO,A1)
【文献】
特開昭61−290011(JP,A)
【文献】
特開平07−138429(JP,A)
【文献】
特開昭59−188423(JP,A)
【文献】
特開2002−249621(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/084082(WO,A1)
【文献】
特開2010−054037(JP,A)
【文献】
特開2007−045945(JP,A)
【文献】
特開2014−214188(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/096031(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 35/00−35/12
C08L 7/00、9/00、11/00
C08L 23/22
F16L 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物を単層構造のホース状に中空押出成形した後、その押出成形品を連続的に大気圧下で加硫する工程を備えているホースの製造方法において、上記ゴム組成物として、150℃における最小トルク値が0.2N・m以上のゴム組成物を用いることを特徴とするホースの製造方法。
【請求項2】
上記ゴム組成物として、その加硫温度における10%加硫時間が0.1〜7.0分のものを用いる、請求項1記載のホースの製造方法。
【請求項3】
上記大気圧下での加硫を、過熱水蒸気加硫、UHF加硫、電子線架橋、溶融塩架橋、熱風炉、および赤外線加熱架橋からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋方法により行う、請求項1または2記載のホースの製造方法。
【請求項4】
上記ゴム組成物として、脱水剤を含有するゴム組成物を用いる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のホースの製造方法。
【請求項5】
上記脱水剤が、酸化カルシウムである、請求項4記載のホースの製造方法。
【請求項6】
上記ゴム組成物として、アクリロニトリルブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドポリマー(NBR−PVC)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)およびエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなる群から選ばれた少なくとも一つを主成分とするゴム組成物であって、その加硫温度における最小トルク値が0.2N・m以上であるゴム組成物を用いる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のホースの製造方法。
【請求項7】
上記ゴム組成物の中空押出成形を、偏肉させながら行い、その偏肉を利用して曲がり部をつくることにより中空曲管ホース形状を成形する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ホース、水系ホース、エアーホース等として用いられる曲がり管ホースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用の燃料ホース、水系ホース、エアーホース等として用いられるホースは、通常、ゴム材料をホース状に押出成形したものをマンドレルに挿入して加硫することにより製造される。そして、上記加硫は、一般的に、スチーム缶を用いたバッチ生産により、加圧しながら行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−225042号公報
【特許文献2】特開2009−121545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホースの生産効率を考慮すると、加硫工程をバッチ生産で行うよりも、流れ作業で加硫を行うといった連続生産のほうが、効率的である。また、マンドレルを用いずにホースを成形することができれば、マンドレルの作製やマンドレルから脱型させる工数が無くなるため、更に生産効率が上がると考えられる。
【0005】
ところが、上記のように加硫を連続生産で行うのであれば、密閉空間での加硫を行うことは難しく、その結果、大気圧下での加硫となるため、ゴム発泡の問題が生じる。上記ゴム発泡は、ゴム組成物中の水分や加硫ガス、揮発成分等に起因して発生するが、バッチ生産による加硫は密閉空間で加圧しながら行うため、ゴム発泡を抑えることができ、大気圧下での加硫では、ゴム発泡を抑えることができないのである。そして、このようなゴム発泡が起こると、ホースの外観が損なわれるといった問題や、ゴムの伸びが短くなる等のホース性能に支障をきたすといった問題が生じる(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
なお、上記特許文献2に開示されたホースでは、ホースの長手方向に沿ってガス抜き用の繊維コードを埋設することにより、構造的にゴム発泡の問題の解消を図っている。しかし、このようなホースは、流れ作業で連続生産しづらく、しかも、繊維コードの埋設に、手間やコストが余計にかかるといった問題もある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ホースの生産効率に優れるとともに、加硫時のゴム発泡の問題を解消することができるホースの製造方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、ゴム組成物を
単層構造のホース状に中空押出成形した後、
その押出成形品を連続的に大気圧下で加硫する工程を備えているホースの製造方法において、上記ゴム組成物として、
150℃における最小トルク値が0.2N・m以上のゴム組成物を用いる、ホースの製造方法を、その要旨とする。
【0009】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、ゴム組成物を、マンドレルを用いずにホース状に中空押出成形した後、大気圧下で加硫し、その加硫の際のゴム発泡を、ゴム強度(ゴムの応力)により抑え込むことを検討した。そして、各種実験を重ねた結果、上記ゴム組成物として、その加硫温度における最小トルク値(ML値)が0.2N・m以上のゴム組成物を用いると、その加硫の際のゴム発泡を、ゴム強度により抑え込むことができることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明のホースの製造方法は、ゴム組成物をホース状に中空押出成形した後、大気圧下で加硫する工程を備えており、上記ゴム組成物として、その加硫温度における最小トルク値(ML値)が0.2N・m以上のゴム組成物を用いる。そのため、ホースの生産効率に優れるとともに、加硫時のゴム発泡の問題を解消することができる。そして、上記のように加硫時のゴム発泡の問題が解消されることから、本発明の製造方法では、発泡によるホースの外観不良の問題や、発泡によりゴムの伸びが短くなる等のホース性能低下の問題を解消することができる。
【0011】
特に、上記ゴム組成物をホース状に中空押出成形した後、連続的に大気圧下で加硫すると、目的とするホースを、連続的に効率よく製造することができる。
【0012】
また、上記ゴム組成物として、その加硫温度における10%加硫時間(T10)が0.1〜7.0分のものを用いると、より加硫時のゴム発泡の問題を解消することができる。
【0013】
また、上記大気圧下での加硫を、過熱水蒸気加硫、UHF加硫、電子線架橋、溶融塩架橋、熱風炉、および赤外線加熱架橋からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋方法により行うと、より加硫時のゴム発泡の問題を解消することができる。
【0014】
また、上記ゴム組成物として、酸化カルシウム等の脱水剤を含有するゴム組成物を用いると、より加硫時のゴム発泡の問題を解消することができる。
【0015】
また、上記ゴム組成物として、アクリロニトリルブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドポリマー(NBR−PVC)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)およびエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなる群から選ばれた少なくとも一つを主成分とするゴム組成物であって、その加硫温度における最小トルク値が0.2N・m以上であるゴム組成物を用いると、上記主成分が汎用ポリマーであるため、コストが下がるなどの点で優れるようになる。
【0016】
そして、上記ゴム組成物の中空押出成形を、偏肉させながら行い、その偏肉を利用して曲がり部をつくることにより中空曲管ホース形状を成形すると、曲管ホースを連続的に効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0018】
本発明のホースの製造方法は、先に述べたように、ゴム組成物をホース状に中空押出成形した後、大気圧下で加硫する工程を備えており、上記ゴム組成物として、その加硫温度における最小トルク値(ML値)が0.2N・m以上のゴム組成物を用いている。上記中空押出成形は、通常、マンドレルを用いないで行われるが、必要に応じ、マンドレルを用いても構わない。また、上記中空押出成形と、その後の加硫工程とは、連続的に行うことが、製造効率の観点から好ましい。
【0019】
そして、上記のような最小トルク値(ML値)を示すゴム組成物を使用することにより、大気圧下での加硫時のゴム発泡の問題を解消することができることから、ゴム発泡を抑えた高品質なホースを、効率良く生産することができる。上記ゴム組成物の最小トルク値(ML値)は、上記と同様の観点から、好ましくは、0.2N・m以上の範囲であり、より好ましくは、0.3〜0.8N・mの範囲である。なお、上記ゴム組成物の最小トルク値(ML値)は、JIS K 6300−2の加硫曲線解析の方法により、トルクが最小となる値を読みとったものであり、上記トルクは、例えば、ローターレス型のレオメーター等により測定することができる。また、上記の「加硫温度」は、ゴム種により異なり、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドポリマー(NBR−PVC)のときは140〜160℃であり、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)のときは140〜160℃であり、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)のときは140〜160℃であり、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム(H−NBR)のときは150〜170℃であり、アクリルゴム(ACM)のときは150〜170℃であり、エチレンアクリレートゴム(AEM)のときは150〜170℃であり、塩素化ポリエチレン(CM)のときは150〜170℃であり、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)のときは140〜160℃であり、フッ素ゴム(FKM)のときは150〜170℃であり、クロロプレンゴム(CR)のときは140〜160℃である。
【0020】
特に、上記ゴム組成物の中空押出成形を、偏肉させながら行い、その偏肉を利用して曲がり部をつくることにより中空曲管ホース形状を成形すると、曲管ホースを連続的に効率よく製造することができる。また、上記のように偏肉させながら中空押出成形を行うことにより、マンドレルや金型を用いなくとも曲管のホースを製造することが可能となる。なお、上記のように、マンドレルや金型を用いずに、偏肉させながら曲管状にゴム組成物の中空押出成形を行うと、得られた未加硫ゴムホースにおいて、ゴムの自重や収縮によるへたりや曲げ戻りが発生しやすく、ホースの形状保持に支障をきたすといった問題も懸念されるが、上記のような物性のゴム組成物を使用することにより、そのような問題も解消することができる。特に、上記ゴム組成物の60℃におけるグリーン強度が0.6MPa以上であると、未加硫ゴムホースの形状保持の観点から、より優れるようになる。同様の観点から、上記グリーン強度は、より好ましくは、0.8MPa以上である。なお、上記ゴム組成物のグリーン強度は、そのゴム組成物を用いて予備成形した未加硫シートよりJIS1号のダンベルを採取し、60℃雰囲気下で引張試験を行い、25%伸長時の引張応力を測定した値(M(モジュラス)25)を採用した。
【0021】
また、上記ゴム組成物をホース状に中空押出成形した後、その押出成形品を所定の長さに切断し、連続的に大気圧下で加硫すると、目的とする長さのホースを、連続的に効率よく製造することができるため、好ましい。
【0022】
また、上記ゴム組成物として、その加硫温度における10%加硫時間(T10)が0.1〜7.0分(6秒〜7分)のものを用いると、より加硫速度が速いことから、ゴム強度が高くなる速度が速く、それによりゴム発泡を抑える効果がより高くなるため、好ましい。同様の観点から、上記10%加硫時間(T10)は、より好ましくは0.5〜4.5分(30秒〜4分30秒)である。なお、上記ゴム組成物の10%加硫時間(T10)は、JIS K 6300−2の加硫曲線解析の方法により、最小トルク値(ML値)を示す時間から、最小トルク値(ML値)と最大トルク値(MH値)とのトルク差の10%にまでトルク値が上昇するまでの時間を読みとったものである。
【0023】
また、上記大気圧下での加硫を、過熱水蒸気加硫、UHF加硫、電子線架橋、溶融塩架橋、熱風炉、および赤外線加熱架橋からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋方法により行うと、ゴム組成物の加硫速度をより速くすることができることから、ゴム強度が高くなる速度を速めることができ、それによりゴム発泡を抑える効果がより高くなるため、好ましい。なお、上記UHF加硫は、マイクロ波連続式ゴム加硫装置(UHF)による加硫を意味する。また、初期の加硫には、エネルギーを大きく与える必要があるため、過熱水蒸気加硫やUHF加硫が好ましく、後加硫には、ゴムの中まで加硫させるために、熱風炉による架橋が好ましい。なお、本発明において、上記大気圧下での加硫は、上記架橋方法に限定されるものではなく、加熱炉による架橋等のように、適用可能な架橋方法を行ってもよい。
【0024】
また、上記ゴム組成物として、脱水剤を含有するゴム組成物を用いると、ゴム組成物中の水分が蒸発することに起因するゴム発泡の問題を効果的に解消することができるため、好ましい。上記脱水剤としては、例えば、酸化カルシウム、塩化カルシウム、シリカゲル等が、単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、酸化カルシウムが、よりゴム組成物中の水分の脱水効果に優れているため、好ましい。また、上記のような効果を得る観点から、上記脱水剤の含有割合は、ゴム成分100重量部に対し、好ましくは3〜20重量部の範囲である。
【0025】
また、上記ゴム組成物としては、先にも述べたように、その加硫温度における最小トルク値が0.2N・m以上であるゴム組成物を用いられるが、そのゴム組成物の主成分(ゴム成分)としては、アクリロニトリルブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドポリマー(NBR−PVC)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリレートゴム(AEM)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、フッ素ゴム(FKM)、クロロプレンゴム(CR)等が用いられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、汎用性に優れるNBR−PVC、NBR、EPDMが好ましく用いられる。なお、上記「主成分」とは、ゴム組成物全体の特性に大きな影響を与えるもののことであり、本発明においては、全体の20重量%以上を意味する。
【0026】
上記ゴム組成物は、その主成分であるゴムの他、必要に応じて、架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、リターダー、可塑剤、共架橋剤、表面改質剤、老化防止剤、カーボンブラック等の充填剤等を配合し、これらをニーダー,バンバリーミキサー,ロール等の混練機を用いて混練することにより調製されるが、その加硫温度における最小トルク値が0.2N・m以上となるよう、各材料の配合調整を行う必要がある。なお、ゴム加硫に用いられる上記架橋剤は、硫黄系架橋剤であっても過酸化物系架橋剤であってもよいが、本発明の製造方法においては、硫黄系架橋剤を用いた際の加硫ガスによるゴム発泡の抑制効果が、良好にみられる。
【0027】
上記のような本発明のホースの製造方法により得られたホースは、単層構造であるが、必要に応じ、上記単層構造のホースの外周に、ゴム層、樹脂層、補強糸層を形成して、多層構造のホースとしても差し支えない。
【0028】
上記ホースの最内層の厚み(単層構造の場合は、その厚み)は、1〜15mmが好ましく、特に好ましくは2〜10mmである。また、ホース内径は、6〜60mmが好ましく、特に好ましくは15〜40mmである。すなわち、この範囲に設定することにより、ホースに求められる寸法安定性を有利に得ることができるからである。
【0029】
上記ホースは、そのポリマーであるゴム成分の種類に応じ、ホース全般に使用することが可能であり、例えば、フィラーホース,エバポホース,ブリーザーホース等の燃料系ホース、ラジエーターホース,ヒーターホース,ドレーンホース等の水系ホース、ターボエアーホース,バキュームブレーキホース等のエアーホースとして使用することができる。また、上記ホースが曲管ホースであると、曲げやすくなるため、車両やシステムへの組み付け性が、より優れるようになる。そして、上記ホースは、自動車,トラクター,耕運機,船舶等の輸送機やこれらホースの機能を必要とするシステムや設備に、好適に用いられる。
【実施例】
【0030】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0032】
〔NBR−PVC〕
Nipol DN508SCR(5重量%油添されたNBR−PVC)、日本ゼオン社製
【0033】
〔加硫助剤〕
酸化亜鉛2種、ハクスイテック社製
【0034】
〔ステアリン酸〕
ルナック S-70V、花王社製
【0035】
〔老化防止剤1〕
アンテージRD、川口化学工業社製
【0036】
〔老化防止剤2〕
アンテージ3C、川口化学工業社製
【0037】
〔カーボンブラック1〕
旭#60、旭カーボン社製
【0038】
〔カーボンブラック2〕
旭#52、旭カーボン社製
【0039】
〔可塑剤〕
アデカサイザーRS−700、ADEKA社製
【0040】
〔加硫促進剤1〕
アクセルTMT、川口化学工業社製
【0041】
〔加硫促進剤2〕
アクセルM、川口化学工業社製
【0042】
〔加硫促進剤3〕
アクセルTRA、川口化学工業社製
【0043】
〔加硫促進剤4〕
アクセルCZ、川口化学工業社製
【0044】
〔架橋剤〕
硫黄、鶴見化学工業社製
【0045】
〔酸化カルシウム〕
CML−21、近江化学工業社製
【0046】
〔リターダー〕
アンスコーチCTP、川口化学工業社製
【0047】
《実施例1〜5、比較例1〜4》
上記各成分を後記の表1に示す割合(NBR−PVCは油添分を除いた割合)で配合し、バンバリーミキサーおよびオープンロールを用いて混練して、ゴム組成物を調製した。具体的には、架橋剤および加硫促進剤を除く成分を、バンバリーミキサーで混練し、150℃に達したときに放出し、マスターバッチを得た後、そのマスターバッチに、架橋剤および加硫促進剤を同表に示す割合で配合し、これらをオープンロールで混練してゴム組成物を調製した。
【0048】
このようにして得られた実施例および比較例のゴム組成物の各物性を、下記の基準に従い測定した。その結果を、後記の表1に併せて示した。
【0049】
<ML値>
ローターレス型のレオメーター(東洋精機製作所社製)により、150℃におけるゴム組成物のトルクをJIS K 6300−2の加硫曲線解析の方法により測定し、その最小トルク値(ML値)を読みとった。
【0050】
<グリーン強度>
上記ゴム組成物を用いて100℃で予備成形して得られた未加硫シートより、JIS1号のダンベルを採取し、60℃雰囲気下で引張試験を行い、25%伸長時の引張応力の値(M(モジュラス)25)を測定した。そして、その値を、グリーン強度(MPa)とした。
【0051】
<T10>
JIS K 6300−2の加硫曲線解析の方法により、150℃における上記ゴム組成物が最小トルク値(ML値)を示す時間から、最小トルク値(ML値)と最大トルク値(MH値)とのトルク差の10%にまでトルク値が上昇するまでの時間を読みとり、その値を、T10とした。
【0052】
≪伸び≫
上記ゴム組成物を用いて160℃で40分間熱風炉にて加硫して得られた加硫シートからテストピースを切り出し、JIS K 6251に準拠して引張試験を実施し、破断時の伸び(%)を測定した。
【0053】
上記各物性が後記の表1に示す値である実施例および比較例のゴム組成物を用い、下記の基準に従い、ゴムホースを作製して、断面観察を行い、評価した。その結果を、後記の表1に併せて示した。
【0054】
≪断面観察≫
上記ゴム組成物を用いて、内径30mm、肉厚4mmで管状(円筒状)に中空押出成形した後、長さ300mmにカットした。このようにして得られた未加硫ゴムホースを、熱風炉を用いて、大気圧下で、160℃×40分の熱風加硫を行い、ゴムホースを得た。そして、得られたゴムホースをカットし、その断面を、光学顕微鏡(KEYENCE社製)により、視野範囲20mm×3.7mmで観察し、直径0.1mm以上の発泡数を数えた。
【0055】
【表1】
【0056】
上記表の結果より、実施例のホースの材料であるゴム組成物は、その加硫温度におけるML値が0.2N・m以上であることから、大気圧下で加硫を行っているにもかかわらず、ホースの外観に支障をきたすような数のゴム発泡が、断面観察からは見受けられなかった。また、上記のようにゴム発泡が抑えられたことから、伸びも抑えられる結果となった。また、実施例のホースの材料であるゴム組成物は、グリーン強度が高く、中空押出成形後にヘタリが生じることもなかった。
【0057】
これに対し、比較例のホースの材料であるゴム組成物は、その加硫温度におけるML値が0.2N・m未満であることから、大気圧下での加硫で、ホースの外観や伸びに支障をきたすほど多数のゴム発泡(視野範囲20mm×3.7mmにおいて直径0.1mm以上の発泡数が15個を超えている)がみられる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のホースの製造方法は、例えば、フィラーホース,エバポホース,ブリーザーホース等の燃料系ホース、ラジエーターホース,ヒーターホース,ドレーンホース等の水系ホース、ターボエアーホース,バキュームブレーキホース等のエアーホースの製造方法として適用することができる。そして、上記の製造方法により得られたホースは、自動車,トラクター,耕運機,船舶等の輸送機やこれらホースの機能を必要とするシステムや設備に使用することができる。