特許第6761753号(P6761753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761753
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】標識板
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/615 20160101AFI20200917BHJP
   G09F 7/00 20060101ALI20200917BHJP
   G09F 13/16 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   E01F9/615
   G09F7/00 A
   G09F13/16 E
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-249921(P2016-249921)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-104921(P2018-104921A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】坂口 忍
(72)【発明者】
【氏名】中島 純一
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−249988(JP,A)
【文献】 特開2014−202018(JP,A)
【文献】 特開2008−165203(JP,A)
【文献】 特開2006−233664(JP,A)
【文献】 特開2003−108053(JP,A)
【文献】 特開2015−055797(JP,A)
【文献】 特開2008−249962(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0139306(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00−11/00
G08G 1/00−99/00
G09F 13/00−13/46
G09F 7/00−7/22
G09F 15/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口の形状が文字または図形とされる貫通孔を有する基板と、
前記開口及び前記開口の縁と重なるように前記基板の表面側から重ねられる再帰反射部材と、
を備え、
前記再帰反射部材は、前記基板の背面側から前記貫通孔を通って照射される光を透過し、表面側から照射される光を再帰反射する複数の再帰反射素子を有する
ことを特徴とする標識板。
【請求項2】
前記複数の再帰反射素子の一部と接触すると共に他の一部と非接触である空間形成層が前記複数の再帰反射素子の前記基板側に更に備えられ、
前記空間形成層によって前記複数の再帰反射素子の前記基板側に空間が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の標識板。
【請求項3】
前記複数の再帰反射素子が前記貫通孔側に露出している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の標識板。
【請求項4】
前記貫通孔と重なる部位において、前記複数の再帰反射素子の一部に着色された着色物質が付着している
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の標識板。
【請求項5】
前記基板が、基板本体部と前記基板本体部の表面に設けられる樹脂層とを備える
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の標識板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射される光の違いによって生じる標示の視認性の悪化が抑制され得る標識板に関する。
【背景技術】
【0002】
道路標識などの屋外で使用される標識板は、朝方や夕方に太陽光が逆光線として背面側から照射される場合がある。標識板の背面側から逆光線が照射されると、当該標識板の表面は暗くなり、標識板の表面に記された文字や図形からなる標示の判読が困難となる場合がある。このような逆光線による標示の視認性低下を抑制し得る標識板が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
下記特許文献1には、文字又は図形が記された部分に多数のスリットが形成された逆光対策標識板が開示されている。この特許文献1に開示されている標識板では、逆光線が多数のスリットを通ることにより、背面側から逆光線が照射される場合でも多数のスリットの周囲が明るく見えることで表面に記された標示の視認性が低下することが抑止され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−261913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示されている標識板では、表面側から照射される光も上記スリットを通り抜ける。したがって、例えば夜間にヘッドライトが表面側から照射された場合、標識板のスリットに到達した光は当該スリットを通り抜ける。このように表面側から照射された光が通り抜ける部位では、表面に記された標示を視認し難くなる。このように、特許文献1に開示されている標識板では、照射される光の違いによって標示の視認性に差異が生じる場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、照射される光の違いによって生じる標示の視認性の悪化が抑制され得る標識板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の標識板は、開口の形状が文字または図形とされる貫通孔を有する基板と、前記開口及び前記開口の縁と重なるように前記基板の表面側から重ねられる再帰反射部材と、を備え、前記再帰反射部材は、前記基板の背面側から前記貫通孔を通って照射される光を透過し、表面側から照射される光を再帰反射する複数の再帰反射素子を有することを特徴とする。
【0008】
上記標識板では、昼間に太陽光等が順光線として照射される場合、再帰反射部材が備えられる部位を標示として視認することができる。また、夜間にヘッドライト等の光が標識板の表面に照射される場合は、再帰反射部材が当該光を再帰反射することによって、再帰反射部材が備えられる部位を標示として視認することができる。さらに、太陽光等が逆光線として基板の背面側から照射される場合、当該光が基板に形成された貫通孔を通って当該貫通孔に重ねられた再帰反射部材を透過することにより、標示を視認することができる。このとき、貫通孔を通り抜ける光は基板の表面側で回折するため、標識板を表面側から見たときに基板に設けられた貫通孔の開口より少し広い範囲が明るく見える。このように、上記標識板では、どのような方向から光が照射される場合であっても標示が視認され易く、照射される光の違いによって生じる標示の視認性の悪化が抑制され得る。
【0009】
なお、本発明において光が透過するとは、入射した光が10%以上100%以下の割合で透過することを意味する。
【0010】
また、前記複数の再帰反射素子の一部と接触すると共に他の一部と非接触である空間形成層が前記複数の再帰反射素子の前記基板側に更に備えられ、前記空間形成層によって前記複数の再帰反射素子の前記基板側に空間が形成されることが好ましい。
【0011】
複数の再帰反射素子の基板側に空間が形成されることによって、複数の再帰反射素子の基板側の界面での屈折率差が大きくされ易い。このため、複数の再帰反射素子において、基板の背面側から貫通孔を通って照射される光が透過し易くなると共に、表面側から照射される光が反射され易くなる。
【0012】
また、前記複数の再帰反射素子が前記貫通孔側に露出していることが好ましい。
【0013】
複数の再帰反射素子が貫通孔側に露出していることによって、基板の背面側から照射される光が貫通孔を通って複数の再帰反射素子に到達し易くなる。また、複数の再帰反射素子が貫通孔側に露出していることによって、複数の再帰反射素子の貫通孔側の界面は空気と接し、当該界面での屈折率差が大きくされ易い。このため、複数の再帰反射素子において、基板の背面側から貫通孔を通って照射される光が透過し易くなると共に、表面側から照射される光が反射され易くなる。
【0014】
また、前記貫通孔と重なる部位において、前記複数の再帰反射素子の一部に着色された着色物質が付着していることが好ましい。
【0015】
着色物質が複数の再帰反射素子に付着することによって、標識板を表面側から見たときに当該着色物質が目立つことにより、再帰反射部材による標示が視認され易くなる。また、当該着色物質が複数の再帰反射素子の一部にのみ付着することによって、再帰反射素子による再帰反射が当該着色物質によって妨げられることが抑制され得る。
【0016】
また、前記基板が、基板本体部と前記基板本体部の表面に設けられる樹脂層とを備えることが好ましい。
【0017】
基板の表面に設けられる樹脂層は、例えば、着色された層や複数の再帰反射素子を有する層とすることができる。基板の表面に着色された層が設けられることにより、再帰反射部材による標示をより目立たせ易くなる。また、基板の表面に複数の再帰反射素子を有する層が設けられることにより、夜間にヘッドライトが照射される場合等に標識板全体が視認され易くなる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、照射される光の違いによって生じる標示の視認性の悪化が抑制され得る標識板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る標識板を表面側から見る平面図である。
図2図1に示す標識板のII−II線に沿った断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る標識板を図2と同様の視点で示す断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る標識板を図2と同様の視点で示す断面図である。
図5図5(A)から図5(C)は、図4に示す再帰反射部材の製造過程を説明する断面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係る標識板を図2と同様の視点で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る標識板を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る標識板を表面側から見る平面図である。図2は、図1に示す標識板のII−II線に沿った断面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施形態の標識板1は、基板10、再帰反射部材20、背面保護層30を有する。
【0023】
基板10は、基板本体部16及び基板本体部16の表面に設けられる樹脂層15を有する。また、基板10は、開口の形状が文字または図形とされる貫通孔10Hを有する。貫通孔10Hは、基板本体部16及び樹脂層15を貫通している。本実施形態の基板10は、図1に示すように開口の形状が矢印とされる貫通孔10Hを有する。
【0024】
基板本体部16は、板状の部位であり、例えばアルミニウム等の金属や樹脂等からなる。基板本体部16によって、基板10の剛性が確保される。基板本体部16は、一枚の板状体で構成されても良く、複数の板状体を繋げて構成されても良い。
【0025】
本実施形態の樹脂層15は、粘着剤層11、空間形成層12、再帰反射層13、着色層14を有する。
【0026】
粘着剤層11は、樹脂層15のうち最も基板本体部16側に設けられ、樹脂層15を基板本体部16に貼り付けるための粘着剤を含む層である。粘着剤層11を構成する材料としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、シリコーンゴム系樹脂などが挙げられる。
【0027】
再帰反射層13は、板状の保持体部13bと保持体部13b上に設けられる複数の再帰反射素子13aとを有する。複数の再帰反射素子13aは、保持体部13bのうち標識板1の背面側に形成される。この再帰反射層13は、再帰反射素子13aと後述する空間形成層12によって形成される空間との界面において、保持体部13b側から入射した光を内部全反射させることで再帰反射させる。複数の再帰反射素子13aは、入射した光を再帰反射させるのに適した反射面を有している限り特に限定されるものではない。例えば、三角錐などの多面体が再帰反射素子13aとされて最密充填状に配置されることが好ましい。
【0028】
このような再帰反射層13を構成する材料としては、光学的特性に優れたものがよい。例えば、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。特に、フッ化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0029】
フッ化ビニリデン系樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(メチルビニルエーテル)共重合体などが挙げられる。
【0030】
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸2エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0031】
再帰反射層13の耐候性及び柔軟性を向上させる観点からは、再帰反射層13はフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂とを含有する樹脂組成物で構成されることが好ましい。耐候性に優れるフッ化ビニリデン系樹脂と柔軟性に優れるアクリル系樹脂とを含む樹脂組成物により再帰反射層13を形成することで、再帰反射層13に優れた耐候性及び柔軟性を備えさせ得る。なお、保持体部13b及び複数の再帰反射素子13aは、一体成型されても良く、別々に形成された後に一体化されても良い。
【0032】
空間形成層12は、再帰反射層13の再帰反射素子13a側の面に対向して配置される層であって、基板本体部16の表面と平行に延在する板状の板状部12a、及び、板状部12aから再帰反射層13側に突出して形成される複数の結合部12bを有する。空間形成層12は、複数の結合部12bが再帰反射層13と結合することにより、複数の再帰反射素子13aと板状部12aとの間に空間を形成する。すなわち、空間形成層12は、複数の再帰反射素子13aの一部と接触すると共に他の一部と非接触であることによって、複数の再帰反射素子13aの基板10側に空間を形成する。
【0033】
このような空間形成層12を構成する材料としては、例えば、再帰反射層13と同様の樹脂などが挙げられる。再帰反射層13との密着性をより高める場合、空間形成層12は、再帰反射層13に含まれる樹脂と同様の樹脂を含む樹脂組成物より形成されることが好ましい。空間形成層12には、さらに着色剤、改質剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0034】
着色層14は、樹脂層15の最表面に形成され、標識板1の用途に応じた青色や緑色等の法令に則った色に着色されたり、再帰反射部材20によって標示される文字や図形を見やすくするための地色として適切な色に着色されたりする。また、着色層14は、表面側から入射する光の少なくとも一部が再帰反射層13に到達すると共に再帰反射層13で再帰反射されて出射するように、光を透過する。このような着色層14を構成する材料としては、例えば、再帰反射層13を構成する樹脂と同様の樹脂に着色剤が混合されてなる樹脂組成物や塗料等が挙げられる。
【0035】
再帰反射部材20は、基板10の貫通孔10Hの表面側の開口及び当該開口の縁と重なるように基板10の表面側から重ねられる。再帰反射部材20の幅d2に対する貫通孔10Hの表面側の開口の幅d1の割合(d1/d2)は、例えば、0.2以上0.9以下とすることができ、0.4以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。また、本実施形態の再帰反射部材20は、粘着剤層21、空間形成層22、再帰反射層23、表面保護層24、着色物質25を有する。
【0036】
粘着剤層21は、再帰反射部材20のうち最も基板10側に設けられ、再帰反射部材20を基板10に貼り付けるための層である。このような粘着剤層21を構成する材料としては、上記粘着剤層11と同様の材料を挙げることができる。
【0037】
再帰反射層23は、板状の保持体部23bと保持体部23b上に設けられる複数の再帰反射素子23aを有する。複数の再帰反射素子23aは、保持体部23bのうち標識板1の背面側に形成される。また、本実施形態の再帰反射層23では、複数の再帰反射素子23aのうち一部の再帰反射素子23aが貫通孔10H側に露出することで空気と接し、他の一部は後述する空間形成層12によって形成される空間において空気と接する。この再帰反射層23は、再帰反射素子23aと空気との界面において、保持体部23b側から入射した光を内部全反射させることで再帰反射させる。複数の再帰反射素子23aは、入射した光を再帰反射させるのに適した反射面を有している限り特に限定されるものではない。例えば、三角錐などの多面体が再帰反射素子23aとされて最密充填状に配置されることが好ましい。このような再帰反射層23を構成する材料としては、上記再帰反射層13と同様の材料を挙げることができる。
【0038】
空間形成層22は、再帰反射層23の再帰反射素子23a側の面に対向して配置される層であって、再帰反射部材20のうち貫通孔10Hの開口の縁と重なる部位に形成される。空間形成層22は、基板本体部16の表面と平行に延在する板状の板状部22a、及び、板状部22aから再帰反射層23側に突出して形成される複数の結合部22bを有する。空間形成層22は、複数の結合部22bが再帰反射層23と結合することにより、複数の再帰反射素子23aと板状部22aとの間に空間を形成する。すなわち、空間形成層22は、複数の再帰反射素子23aの一部と接触すると共に他の一部と非接触であることによって、複数の再帰反射素子23aの基板10側に空間を形成する。このような空間形成層22を形成する材料としては、上記空間形成層12と同様の材料を挙げることができる。ただし、本実施形態の空間形成層22は、再帰反射部材20による標示に適した色に着色される。例えば、空間形成層22は白色に着色される。
【0039】
表面保護層24は、再帰反射部材20の最表面を覆って保護する層である。本実施形態の表面保護層24は、再帰反射層23の保持体部23bの表面を覆う。表面保護層24は光を透過する材料で構成され、表面保護層24を構成する材料としては、例えば、上記再帰反射層13と同様のものが挙げられる。
【0040】
着色物質25は、再帰反射部材20の貫通孔10Hと重なる部位において、複数の再帰反射素子23aの一部に付着している、着色された物質である。着色物質25は、後述するように結合部22bの一部によって構成することができる。
【0041】
背面保護層30は、基板10の背面を保護する層である。背面保護層30を構成する材料としては、例えば、上記表面保護層24と同様のものが挙げられる。
【0042】
本実施形態の標識板1は、例えば、以下に説明するようにして製造される。まず、貫通孔10Hが形成されていない基板10を用意した後に、標示したい図形や文字に合わせた形状の開口となる貫通孔10Hを形成する。次に、粘着剤層21、空間形成層22、再帰反射層23、及び表面保護層24が積層された積層シートを用意し、粘着剤層21を基板10に貼り付ける。その後、当該積層シートのうち貫通孔10Hと重なる部位の粘着剤層21及び空間形成層22を取り除くことによって、上記再帰反射部材20が形成される。このように空間形成層22を取り除くときに再帰反射層23に付着して残る結合部22bの一部を着色物質25とすることができる。
【0043】
次に、本実施形態の標識板1の作用及び効果について説明する。
【0044】
本実施形態の標識板1では、昼間に太陽光等が順光線として照射される場合、再帰反射部材20が備えられる部位を標示として視認することができる。このように再帰反射部材20による標示を視認し易くする観点から、標示となる部位とその部位の周囲とで色または材質が異なることが好ましい。例えば、再帰反射部材20と基板10の表面のうち貫通孔10Hの開口の縁とで色または材質が異なることが好ましい。
【0045】
また、夜間にヘッドライト等の光が標識板1の表面に照射される場合は、再帰反射部材20が当該光を再帰反射することによって、再帰反射部材20が備えられる部位を標示として視認することができる。さらに、太陽光等が逆光線として基板10の背面側から照射される場合、当該光が基板10に形成された貫通孔10Hを通って貫通孔10Hに重ねられた再帰反射部材20を透過することにより、標示を視認することができる。このとき、貫通孔10Hを通り抜ける光は基板10の表面側で回折するため、標識板1を表面側から見たときに基板10に設けられた貫通孔10Hの開口より少し広い範囲が明るく見える。このように、標識板1では、どのような方向から光が照射される場合であっても標示が視認され易く、照射される光の違いによって生じる標示の視認性の悪化が抑制され得る。
【0046】
また、標識板1では、基板10の表面側から再帰反射部材20が貼り付けられることによって、貫通孔10Hによる影で標示の視認性が低下することが抑制され得る。再帰反射部材20が基板10の背面側に貼り付けられる場合、表面側から光が差すときに貫通孔10Hによる影が再帰反射部材20に映るため、当該影によって標示の視認性が低下する場合がある。このような影は、標識板1の表面の法線に対する観察者の視線の角度が大きくなる程目立つと考えられる。よって、例えば、標識板1が道路標識である場合、標識板1に近づくほどに上記影が目立つと考えられる。本実施形態の標識板1では上記のように影ができることが抑制されることによって、標識板1が道路標識である場合に運転者は標識板1に対して遠い位置から近い位置までに長い区間において標示を視認し易くなる。
【0047】
また、標識板1では、複数の再帰反射素子23aの基板10側に空間が形成されることによって、複数の再帰反射素子23aの基板10側の界面での屈折率差が大きくされ易い。このため、複数の再帰反射素子23aは、基板10の背面側から貫通孔10Hを通って照射される光を透過し易くなると共に、表面側から照射される光を反射させ易くなる。
【0048】
また、複数の再帰反射素子23aが貫通孔10H側に露出していることによって、基板10の背面側から照射される光が貫通孔10Hを通って複数の再帰反射素子23aに到達し易くなる。また、複数の再帰反射素子23aが貫通孔10H側に露出していることによって、複数の再帰反射素子23aの貫通孔10H側の界面は空気と接し、当該界面での屈折率差が大きくされ易い。このため、複数の再帰反射素子23aは、基板10の背面側から貫通孔10Hを通って照射される光を透過し易くなると共に、表面側から照射される光を反射させ易くなる。
【0049】
また、着色物質25が複数の再帰反射素子23aに付着することによって、標識板1を表面側から見たときに着色物質25が目立つことにより、再帰反射部材20による標示が視認され易くなる。また、着色物質25が複数の再帰反射素子13aの一部にのみ付着することによって、再帰反射素子23aによる再帰反射が着色物質25によって妨げられることが抑制され得る。
【0050】
また、基板10の表面に着色層14が設けられることにより、再帰反射部材20による標示をより目立たせることが容易になる。また、基板10の表面に複数の再帰反射素子13aを有する再帰反射層13が設けられることにより、夜間にヘッドライトが照射される場合等に標識板1全体が視認され易くなる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図3を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0052】
図3は、本発明の第2実施形態に係る標識板2を図2と同様の視点で示す断面図である。図3に示す標識板2は、再帰反射部材20のうち基板10に形成された貫通孔10Hと重なる部位において粘着剤層21及び空間形成層22が取り除かれていない点で上記第1実施形態の標識板1と異なる。
【0053】
標識板2は、粘着剤層21及び空間形成層22の一部を取り除く工程を経なくても製造され得るため、標識板1より容易に製造される。ただし、本実施形態の標識板2では、粘着剤層21及び空間形成層22が貫通孔10Hと重なるため、基板10の背面側から照射されて貫通孔10Hを通り抜ける光が再帰反射部材20を透過し易くなるように、粘着剤層21及び空間形成層22の光の透過率が高いことが好ましい。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図4を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0055】
図4は、本発明の第3実施形態に係る標識板3を図2と同様の視点で示す断面図である。図4に示す標識板3は、再帰反射部材20にかえて再帰反射部材20aを備える点で上記第1実施形態の標識板1と異なる。再帰反射部材20aは、着色物質25を備えず、粘着剤層21、空間形成層22、再帰反射層23、表面保護層24に加えて再帰反射層26、粘着剤層27、表面保護層28を備える点で上記再帰反射部材20と異なる。
【0056】
表面保護層28は再帰反射部材20aの最表面を保護する層であり、表面保護層24と同様の層とされる。また、粘着剤層27は表面保護層28を表面保護層24に貼り付けるための層であり、粘着剤層21と同様の層とされる。本実施形態の再帰反射部材20aでは、貫通孔10Hと重なる部位において再帰反射層23及び表面保護層24が取り除かれ、粘着剤層27に再帰反射層26が貼り付けられている。再帰反射層26は再帰反射層23と同様の層であり、板状の保持体部26bと保持体部26b上に設けられる複数の再帰反射素子26aとを有する。本実施形態の再帰反射部材20aでは、再帰反射層26に着色物質25が付着していないことによって、基板10の背面側から照射されて貫通孔10Hを通り抜ける光が、再帰反射部材20aを透過し易くなる。
【0057】
このような再帰反射部材20aは、例えば、以下に説明するようにして製造される。図5(A)から図5(C)は、図4に示す再帰反射部材20aの製造過程を説明する断面図である。まず、図5(A)に示すように、粘着剤層21、空間形成層22、再帰反射層23、表面保護層24、粘着剤層27、表面保護層28が積層された積層体を用意する。次に、図5(B)に示すように、上記積層体うち貫通孔10Hと重なる部位において、粘着剤層21、空間形成層22、再帰反射層23、表面保護層24を取り除く。その後、図5(C)に示すように、露出した粘着剤層27に再帰反射層26を貼り付けることによって、再帰反射部材20aが得られる。
【0058】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図6を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0059】
図6は、本発明の第4実施形態に係る標識板4を図2と同様の視点で示す断面図である。図4に示す標識板4では、貫通孔10Hの表面側の開口が樹脂層15によって狭められている。より具体的には、基板10に形成される貫通孔10Hのうち再帰反射層13及び着色層14に形成される部位の幅が、基板本体部16に形成される部位の幅よりも狭くなっている。このため、再帰反射部材20は、貫通孔10Hの表面側の開口の縁と重なる部位において、再帰反射層13及び着色層14と重なり、基板本体部16とは重なっていない。このように構成されることによって、基板10の背面側から照射される光は、再帰反射部材20全体を透過し易くなる。
【0060】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
例えば、上記実施形態では、基板10の背面側から太陽光が照射される場合を例示して作用及び効果を説明したが、基板10の背面側から照射される光は蛍光灯の光等の他の光でも同様の作用及び効果を奏する。したがって、本発明の標識板は、内照式標識板にも適用可能である。
【0062】
また、空間形成層12,22、粘着剤層11,21,27、着色層14、背面保護層30、表面保護層24,28、着色物質25は必須の構成要素ではなく、適宜備えられるものである。例えば着色層14が備えられない場合は、樹脂層15に備えられる他の層が着色されることで当該他の層が着色層14の役割を兼ねても良い。また、上記実施形態では空間形成層22が着色される例を挙げて説明したが、再帰反射部材20に備えられる他の層が着色されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明によれば、照射される光によって生じる標示の視認性の差異が低減され得る標識板が提供される。当該標識板は、道路標識等の分野において利用される。
【符号の説明】
【0064】
1,2,3,4・・・標識板
10・・・基板
10H・・・貫通孔
11,21,27・・・粘着剤層
12,22・・・空間形成層
13,23,26・・・再帰反射層
13a,23a,26a・・・再帰反射素子
14・・・着色層
15・・・樹脂層
16・・・基板本体部
20・・・再帰反射部材
24・・・表面保護層
25・・・着色物質
30・・・背面保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6