(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761757
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】印刷機械において物品を固定するための真空システム
(51)【国際特許分類】
B41F 15/20 20060101AFI20200917BHJP
B41F 15/24 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
B41F15/20
B41F15/24 F
B41F15/24 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-557885(P2016-557885)
(86)(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公表番号】特表2017-507819(P2017-507819A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】ES2015070171
(87)【国際公開番号】WO2015136137
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2018年2月27日
(31)【優先権主張番号】P201430353
(32)【優先日】2014年3月14日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】516277439
【氏名又は名称】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
【審査官】
村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−341561(JP,A)
【文献】
特開2006−089223(JP,A)
【文献】
特開2012−176584(JP,A)
【文献】
特開2004−135726(JP,A)
【文献】
米国特許第08157369(US,B2)
【文献】
特開2008−024515(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0213666(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0186613(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00−15/46
B41J 2/01−2/215
B41J 11/00−11/70
B41J 15/00−15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機械に物品を固定するための真空システムであって、孔が開けられた表面を有する印刷テーブル(2)を含み、印刷される物品(1)を前記印刷テーブル(2)上に固定するための真空システムを備え、該真空システムは箱構造(8)を含み、該箱構造(8)はその横幅の中間領域でノズル(9)によって吸気システムと連結され、前記箱構造(8)は、前記印刷テーブル(2)の前記孔が開けられた表面に対向する孔が開けられた上壁を有し、前記箱構造(8)の内部には、密封して前記箱構造(8)の内部を垂直方向に閉じる複数の側方のパネル(10)が配置され、該側方のパネル(10)は、前記箱構造(8)の内部で互いに近づけられたり遠ざけられたりして横方向に動かされることができ、前記側方のパネルにはそれらを動かすための作動システムが連結され、前記箱構造(8)の長手方向が、前記印刷される物品(1)を固定するために異なる真空圧力が適用される独立した連続する複数のチャンバーに分割され、前記物品が前記印刷テーブル(2)に配置される入口領域では、印刷領域より大きな力が加えられ、印刷された前記物品(1)が取り外される領域では、前記印刷領域より小さな力が加えられる、印刷機械に物品を固定するための真空システム。
【請求項2】
前記側方のパネル(10)を動かすための前記作動システムは、前記側方のパネル(10)を動かすねじ棒(14)と連結器(13)によって連結された伝達シャフト(12)を駆動するモーター(11)を含む、請求項1に記載の印刷機械に物品を固定するための真空システム。
【請求項3】
前記側方のパネル(10)を動かすための前記作動システムの駆動は、前記物品(1)が前記印刷テーブル(2)に配置された際に前記物品(1)が通過する検知システム(16)によって与えられる座標によって、前記印刷される物品(1)の寸法に応じて自動で制御される、請求項1又は2に記載の印刷機械に物品を固定するための真空システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを押し出すことによる硬質及び半硬質表面への印刷工程に関し、真空が、印刷のために押し出されるインクに影響を与えず、異なる大きさの印刷される物品への自動的な適用を可能にした、印刷される物品を印刷機械のテーブルに固定するための真空適用システムを提案する。
【背景技術】
【0002】
印刷ローラーによる接触技術及びインク押し出しヘッドによる非接触技術が、硬質及び半硬質表面での印刷について知られている。非接触技術は、印刷する色が個々に押し出されたインクを組み合わせることによって得られるので、より優れた精度及び品質、並びにより大きな適用可能性を提供する。
【0003】
固定されたテーブル又はコンベヤーベルトであり得るテーブル自体に真空を適用することによって、印刷機械のテーブルに印刷される物品を固定することの実務もまた知られている。その目的で、そのような実務は、物品を固定するために孔を通して真空を適用するために、印刷機械のテーブルが物品を支持するための孔の開いた支持表面を有することになる。
【0004】
しかし、印刷される物品は、支持テーブルの表面より小さな幅を有し得る。これにより、適用物品によって覆われない横方向の領域では真空による吸引作用が起こり、それは印刷される物品に押し出されるインクの進路を変え、物品での印刷の欠陥及び押し出された一部のインクの喪失をもたらし得る。
【0005】
例えば特許文献1など、その問題を防ぐための解決方法が開発されている。特許文献1は、印刷される物品が配置されるテーブルの孔の開いた表面の横方向の領域の下に、テーブルの孔用の栓を配置することによって、印刷機械のテーブル上の印刷される物品によって覆われない領域での真空の作動を中止する。それにより、真空の作動はテーブルに配置された物品の下だけに集中されて、吸気によって引き起こされる有害な作用が防止される。この解決方法は有効であるが、印刷される物品の幅が変わるたびに栓の位置を調節することを必要とし、それは操作者の介入を必要とし、印刷工程を遅くて高価なものにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】スペイン国特許第2310490号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、印刷される物品によって覆われない横方向の領域での真空の作動を自動的に中止する構成を備えた、印刷機械のテーブルでの真空適用システムを提案する。それは、印刷のための真空の有害な作用及び無駄なインクの喪失を防止する。加えて、異なる幅を有する物品へ印刷する際の移行を速やかかつ簡単にする。
【0008】
本発明によれば、印刷される物品の支持テーブルの孔の開いた表面の下に真空システムを備える。真空システムは、吸気ノズルによって吸気システムに接続された箱構造を含む。箱構造の内部は、箱構造内で横方向に動くためのスライドアセンブリに配置された、その箱を垂直方向に閉じる側方のパネルを有する。そのパネル用の駆動システムが備えられ、駆動システムは、箱構造を垂直方向に閉じる側方のパネルを互いに近づけたり遠ざけたりして動かす一連のねじ棒を作動させる伝達シャフトに連結されたモーターを含む。更に、印刷機械での支持テーブルに印刷される物品を配置するための入口領域には、物品の長さの先端及び後端の通過並びに物品の幅を測定するための検知システムを備える。
【0009】
したがって、全ての印刷される物品は、供給システムから入って印刷機械のテーブルに配置され、その物品が検知システムを通過した際に、物品での印刷用インクの押し出しを正確に制御すること及び物品の幅に対応する位置で真空の箱構造を垂直方向に閉じるように側方のパネルを配置するために駆動を制御することを可能にする座標を伝送するために、検知システムは、その物品の先端の通過から、物品の長さ及び幅を測定するようにされる。それによって、孔の開いたテーブルを通しての真空の作用は、物品が支持される領域に限定される。
【0010】
したがって、このシステムで、印刷される物品を固定するための真空適用領域は、物品が印刷機械への入口で検知システムを通過した際の物品の寸法管理に依存して自動で調節される。それによって、印刷される物品の大きさが変わるたびに手動で操作することを防ぎ、印刷される物品の支持テーブルでの真空適用領域を調節するための待ち時間が必要とされないので、印刷工程の作業時間を低減する。これは、手動で調節される時よりも非常に信頼できる調節精度を提供することに加えて、コスト削減をもたらす。
【発明の効果】
【0011】
したがって、本発明の対象の真空適用システムは、同じ用途を有する他の既知の真空適用システムに対して、新規かつ好ましい有利な特徴を明確に有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の真空システムを備えた印刷機の実施形態の概略側面図である。
【
図3】物品について真空の適用を調節している位置での本発明の真空システムの箱構造の概略平面図である。
【
図4】異なる幅を有する物品について真空の適用を調節している位置での本発明の真空システムの箱構造の概略平面図である。
【
図5】本発明の真空システムを備えた印刷テーブルの実施形態の斜視図である。
【
図6】
図5の印刷テーブルの実施形態の縦断面の斜視図である。
【
図7】吸引システムのノズルの領域に対応する断面での、同じ印刷テーブルの拡大断面図である。
【
図8】真空箱構造を垂直方向に閉じる側方の仕切り壁を動かすためのねじ棒に対応する領域での印刷テーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、印刷機において物品(1)を固定するための真空システムに関する。その例示は、駆動モーター(4)によって作動され、印刷される物品(1)を支持するために孔が開けられた支持表面を定めるコンベヤーベルト(3)によって形成された印刷テーブル(2)を含む。印刷テーブル(2)の上方には、印刷インク押し出しシステム(5)が配置される。そこでは、真空システムが、印刷される物品(1)を支持するための孔が開けられた支持表面の下に配置される。独立した物品又は連続したシートであり得る印刷される物品(1)を供給するための供給システム(6)が、印刷テーブル(2)の前に配置される。印刷された物品(1)を送るための運搬システムが、印刷テーブル(2)の後に配置される。
【0014】
真空システムは箱構造(8)を含み、箱構造(8)は、その横幅の中間領域において、ノズル(9)によって吸気システムと連結される。箱構造(8)は、印刷するための物品(1)が配置される印刷テーブル(2)の孔が開けられた表面の下に位置する、孔が開けられた上面を有する。それにより、その箱構造(8)で吸気システムによって生じる真空は、その上面、及び物品(1)を支持する支持表面を通じて吸気をもたらし、支持表面上に物品(1)をしっかりと固定して、印刷工程の間にそれを所定の位置に維持する。
【0015】
箱構造(8)の内側には、密封された方法で箱構造(8)内部を垂直方向に閉じる側方のパネル(10)が配置される。側方のパネル(10)は、作動システムによって横方向に箱構造(8)の位置を変えるためのスライドアセンブリに組み込まれ、それにより側方のパネル(10)は、互いに近づけられたり遠ざけられたりして動かされることができる。
【0016】
箱構造(8)を垂直方向に閉じる移動する側方のパネル(10)を作動させる作動システムは、箱構造(8)に沿って一方の側面に配置された伝達シャフト(12)を駆動するモーター(11)を含む。伝達シャフト(12)は、連結器(13)によって、箱構造(8)内部の側方のパネル(10)と結合している横向きのねじ棒(14)と連結される。側方のパネル(10)に対してねじ棒(14)は正反対の結合関係をもたらし、ねじ棒(14)は一方に回転された時に側方のパネル(10)を互いに近づけるように動かし、反対方向の回転によって、側方のパネル(10)を互いに離れるように動かす。そのためにねじ棒(14)は、反対のねじの向きを有する複数のねじ結合(15)によって側方のパネル(10)と連結される。
【0017】
したがって、印刷される物品(1)の幅に従って印刷テーブル(2)において真空システムを適応させるために、ねじ棒(14)は伝達シャフト(12)を介してモーター(11)によって駆動され、ねじ棒(14)は、印刷テーブル(2)に配置された物品(1)の幅と対応する位置へ箱構造(8)の内部で側方のパネル(10)を横方向に動かす。それによって、真空の作用が印刷される物品(1)によって覆われる領域のみに影響することを定め、印刷テーブル(2)の表面の横方向領域は、そこに真空が適用されないならば、物品(1)によって覆われない。
【0018】
印刷テーブル(2)に印刷される物品(1)を配置するための入口領域には検知システム(16)が配置され、そこを通過した時に物品(1)の長さ、幅及び配置を測定して、行われる印刷のためのインクの押し出しを正確に制御すること、及び印刷テーブル(2)に配置された印刷される物品(1)の幅に真空システムを調節するために、箱構造(8)の内部において側方のパネル(10)の位置を自動的に制御することを可能にする座標を作成する。
【0019】
実施形態によれば、物品(1)が印刷テーブル(2)に配置された時に完全な位置決めを確保するために、そして物品(1)が印刷領域を通過する際に物品(1)を固定するための的確な状態及び物品(1)が運搬領域で解放される時の的確な状態を定めるために、箱構造(8)の長手方向が3つの独立した連続するチャンバーに分割されることが考えられる。それぞれのチャンバーは、1つ以上のノズル(9)によって吸気システムと接続され、吸気システムを調節するための制御によって連続するチャンバーにおいて物品(1)を固定するための異なる真空圧力を定める。物品が印刷テーブル(2)に配置される入口領域では印刷領域より大きな力が加えられ、印刷された物品(1)が取り外される領域では、印刷領域より小さな力が加えられる。
【符号の説明】
【0020】
1 印刷される物品
2 印刷テーブル
3 コンベヤーベルト
4 駆動モーター
5 印刷インク押し出しシステム
6 供給システム
8 箱構造
9 ノズル
10 側方のパネル
12 伝達シャフト
13 連結器
14 ねじ棒
15 ねじ結合
16 検知システム