(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、フッ素塗装膜と空洞(空気)との間での境界面における全反射を利用することによって、水面表示部の水中部分における内鍋内の米の写り込みを見えるようにしている。全反射は、スネルの法則により、屈折率の大きなフッ素塗装膜から屈折率の小さな空洞(空気)に光が入射するとき、入射光が境界面を透過することなく、入射光のすべてが境界面で反射する現象である。特許文献1では、全反射の生じる臨界角が61.3°と記載されており、当該臨界角よりも大きな入射角(観察者が見下ろすときの観察角度に対応)では、全反射が起こらない。このように、特許文献1では、観察角度が臨界角(61.3°)よりも大きいと、全反射が起こらず、内鍋内の米の写り込みが生じない。そのため、容器に貯留された液体(水)の液位が、視認できなくなる。全反射を用いる特許文献1では、液位視認の可否が観察角度に依存するため、液位が視認できない場合がある。
【0006】
したがって、この発明の解決すべき技術的課題は、観察角度に依存することなく、液位を明確に視認できる容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために、この発明によれば、以下の容器が提供される。
【0008】
すなわち、この発明に係る容器は、
液体を貯留する容器であって、
前記容器に貯留された前記液体の液面の位置を表示する液位表示部が、前記容器の側面部の高さ方向に延在するように前記側面部に設けられており、
前記液位表示部の色相、明度または彩度が前記液面を境にして変化することによって、前記液面の位置が表示されることを特徴とする。
【0009】
この発明では、液面を境にして、容器の側面部の高さ方向に延在する液位表示部の色相、明度または彩度が変化するので、観察角度に依存することなく、液面の位置すなわち液位を明確に視認できる。
【0010】
前記液位表示部が、入射光を反射する基材と、前記基材を被覆する光透過性のコーティング部とを備える光干渉性発色体を配列した発色部であることが好ましい。このようにすれば、発色部が、基材での反射光とコーティング部での反射光とが干渉することによって発色する。コーティング部の屈折率や厚みを変えることにより、発色する色の色相、明度または彩度を変えることができる。
【0011】
前記光干渉性発色体の前記基材が、扁平した鱗片形状をしていることが好ましい。このようにすれば、発色部において光の反射に寄与する部分の割合が大きくなり、反射効率が高くなるので、液位表示部が鮮やかに発色する。
【0012】
前記発色部の厚みが、前記鱗片形状をした基材の最大長さよりも小さいことが好ましい。このようにすれば、発色部において光干渉性発色体が配向しやすくなり、反射効率が高くなるので、液位表示部が鮮やかに発色する。
【0013】
前記発色部が、トップコート層によって被覆されることが好ましい。このようにすれば、発色部を保護できる。
【0014】
前記発色部が、前記容器を形作る母材または該母材の上に形成されるベースコート層に対して形成され、前記母材または前記ベースコート層の明度が低いことが好ましい。このようにすれば、母材またはベースコート層による光の反射が抑制されて、液位表示部が鮮やかに発色する。
【0015】
前記液位表示部が、塗装物、印刷物、フィルムまたはシール体の形態で前記容器の内面側に設けられることが好ましい。このようにすれば、液位表示部を容器の内面側に容易に設けることができる。
【0016】
前記容器が光透過性を有するとともに、前記液位表示部が、塗装物、印刷物、フィルムまたはシール体の形態で前記容器の外面側に設けられることが好ましい。このようにすれば、液位表示部を容器の外面側に容易に設けることができる。
【0017】
前記容器が、入射光を反射する基材と、前記基材を被覆する光透過性のコーティング部とを備える光干渉性発色体を母材に添加した成形体であり、前記液位表示部が、前記容器の前記側面部であることが好ましい。このようにすれば、容器の側面部を液位表示部として利用でき、液位表示部を別に設ける場合よりも低コスト化できる。
【0018】
前記液位表示部が、前記容器に貯留された前記液体の量を表示する計量目盛りの形態で形成されていることが好ましい。このようにすれば、容器に貯留された液体の量を計量できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の容器では、液面を境にして、容器の側面部の高さ方向に延在する液位表示部の色相、明度または彩度が変化するので、観察角度に依存することなく、液位を明確に視認できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
以下に、第1実施形態に係る容器について、
図1から
図5及び
図8を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(内鍋の構成)
図1は、容器10の一例として、内鍋10を示している。内鍋10は、内鍋10内に適量の液体L(水)及び固形の被加熱物(お米)を入れて炊飯器(図示しない)を用いて炊飯するために使用される。内鍋10は、側面部25および底面部26を有するほぼ有底筒形状をしている。内鍋10の側面部25の内面側には、液位表示部20が設けられている。液位表示部20は、内鍋10に貯留された液体Lの液位を所定の最小貯留レベルから最大貯留レベルまで表示できるように、内鍋10の側面部25の高さ方向に延在している。
【0023】
液位表示部20は、塗装物、印刷物、フィルムまたはシール体の形態で基材12の内面側に設けられる。このようにすれば、液位表示部20を基材12の内面側に容易に設けることができる。
【0024】
図2に示すように、内鍋10の側面部25および底面部26は、側面部25および底面部26の外形を形作る基材12と、基材12の上に形成された積層部13とを備える。積層部13は、基材12の内面側において内鍋10の厚み方向において、例えば、ベースコート層14、発色層(発色部)16及びトップコート層18などの複数の薄層から構成される。
【0025】
基材12は、アルミニウムやステンレスや鉄のような金属材料からなり、有底筒形状をなしている。基材12は、金属材料からなるので、光非透過性である。基材12は、例えば、灰色または緑がかった黒色のように、明度が低くなるように構成されている。発色層16の背景にあたる基材12の明度が低いことによって、基材12における光の反射が抑制されるので、液位表示部20が鮮やかに発色する。
【0026】
ベースコート層14は、プライマー層とも呼ばれ、例えば、ポリエーテルサルフォン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱樹脂や、フッ素樹脂及び顔料で形成される樹脂層であり、厚みが約10μm〜約20μmである。ベースコート層14は、容器10の内側面と発色層16及びトップコート層18との間での接着性を高めるために設けられている。ベースコート層14は、例えば、黒色または黒っぽい灰色のように、明度が低くなるように構成されている。発色層16の背景にあたるベースコート層14の明度が低いことによって、ベースコート層14における光の反射が抑制されるので、液位表示部20が鮮やかに発色する。
【0027】
発色層16は、例えば、ベースコート層14と同様の材料からなる樹脂部22と、樹脂部22に配合される光干渉性発色体30とを有する。発色層16の厚みは、例えば約1μm〜約30μmである。発色層16は、後に詳細に説明するように、発色層16の色相、明度または彩度が液面Sを境にして変化することによって、液面Sの位置すなわち液位Sを表示することができるので、液位表示部20として働く。
【0028】
トップコート層18は、例えば、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、PFA(パーフルオルアルコキシ)などのフッ素樹脂からなる透明な樹脂層である。トップコート層18の厚みは、例えば約30μm〜約50μmである。トップコート層18は、発色層16を保護するとともに、内鍋10の内面側に対して、非粘着性、耐熱性、耐薬品性などの特性を提供するために設けられている。
【0029】
(発色層の構成)
発色層16の樹脂部22には、複数の光干渉性発色体30が発色層16の厚み直交方向に配列されている。光干渉性発色体30は、
図2の拡大部分に示すように、扁平した鱗片形状(フレーク状)の基材32と、基材32を被覆する薄膜のコーティング部34とを備える。したがって、光干渉性発色体30は、基材32の形状が反映されて鱗片形状(フレーク状)をしている。そして、鱗片形状(フレーク状)をした光干渉性発色体30は、厚み直交方向に延びる2つの面(おもて面および裏面)を有し、当該2つの面(おもて面および裏面)が、光の反射に寄与している。
【0030】
基材32は、厚み直交方向に延びる2つの面(おもて面および裏面)を有し、当該2つの面(おもて面および裏面)が、光を反射する。当該2つの面(おもて面および裏面)は、凹凸を有していてもよいが、平坦であることが好ましい。基材32は、例えば、天然または合成の雲母、アルミニウムフレーク、アルミナフレーク、シリカフレーク、ガラスフレークなどからなる粒子である。基材32の厚みは、例えば、約0.1μm〜約1μmであり、長手方向の粒子サイズが約5μm〜約60μmである。基材32は、入射光が透過する光透過性のものや、入射光を反射する光反射性(光非透過性)のものとすることができる。
【0031】
コーティング部34は、内部を光が透過する(光透過性を有する)とともに、表面で光を反射する(光反射性を有する)薄膜である。コーティング部34は、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、二酸化チタン、酸化鉄、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどからなる。コーティング部34は、単一または複数の薄膜からなり、光干渉作用によって所望とする色相が発色されるように、薄膜の材料の屈折率や厚みが決定される。コーティング部34の厚みは、例えば、約20nm〜約200nmである。単一の薄膜よりも複数の薄膜の方が、鮮やかな(高い彩度の)色を呈することができる。
【0032】
(発色の原理)
図2の右側に図示した光干渉性発色体30の拡大図を参照しながら、光干渉性発色体30による発色の原理を簡単に説明する。
【0033】
上述したように、光干渉性発色体30は、光を反射する基材32と、光を透過するとともに反射するコーティング部34とを有する。光干渉性発色体30に対して入射光A1,B1が当たると、入射光B1が、コーティング部34の表面で反射して反射光B1−1となる。入射光A1が、コーティング部34の表面から入射したあと、透過反射光A2として、コーティング部34を屈折しながら透過し、基材32との境界面で反射する。基材32との境界面で反射した透過反射光A2は、コーティング部34を屈折しながら透過したあと、コーティング部34の表面から出射して、反射光A2−1となる。コーティング部34の表面では、コーティング部34での光路長差による光の位相差から、反射光B1−1と反射光A2−1とが干渉して、光干渉作用によって強められた或る波長の干渉光C1が観察者の目Eに届く。そして、コーティング部34の屈折率や厚みによって、コーティング部34での光路長差が異なり、干渉光C1の波長、すなわち観察者によって視認される色相が規定される。
【0034】
したがって、様々な波長の光を含む白色光が、発色層16の光干渉性発色体30に当たると、コーティング部34の表面で反射した反射光B1−1と、基材32の表面で反射した反射光A2−1とが光干渉作用を起こし、強められた波長に対応する干渉光C1すなわち或る色相の色が、観察者に視認される。
【0035】
発色層16では、複数の光干渉性発色体30が樹脂部22において分散して配設されているが、
図2の左側に示すように、大部分の光干渉性発色体30が発色層16の厚み直交方向に配列されている。また、光干渉性発色体30が鱗片形状をしているので、発色層16において光の反射に寄与する部分の割合が大きくなり、反射効率が高くなるので、液位表示部20が鮮やかに発色する。したがって、或る色相の干渉光C1が、効率良く観察者の目Eに届けられ、或る色相の色が鮮やかに(高い彩度で)観察者に視認される。
【0036】
また、
図2に示すように、発色層16の厚みtが、鱗片形状をした光干渉性発色体30の最大長さHよりも小さいように構成されている。当該構成によれば、発色層16において光干渉性発色体30が配向しやすくなり、反射効率が高くなるので、液位表示部20が鮮やかに発色する。
【0037】
(液面の表示原理)
次に、
図3を参照しながら、液位表示部20の色相が液面Sを境にして変化することによって、液位Sが表示される原理について説明する。
図3は、
図1において液位表示部20と液面Sとが交わる部分を拡大したものである。
【0038】
図3において、液面Sは、気体Gと液体Lとの境界面である。Pは液位表示部20での液面Sより上に位置する液上ポイントuからの光、Qは液位表示部20での液面Sより下に位置する液下ポイントwからの光、Rは光Qが液面Sで屈折した屈折光、Kは液下ポイントwの虚像である虚像ポイントjでの光、Xは光Qが液面Sと交わる交点である。また、θ1は液体L中を進む光Qの液体入射角、θ2は気体G中を進む光Pの気体入射角、θ3は屈折光Rの屈折角である。なお、θ1は液下ポイントw(液下部29の側)での観察角度に対応し、θ2は液上ポイントu(液上部28の側)での観察角度に対応する。
【0039】
観察者の目Eは、気体Gの側にあって、内鍋10の内面を見下ろす位置にある。そして、観察者が見下ろすときの観察角度は、気体G中を進む光Pの気体入射角θ2に等しい。なお、通常、液体Lの屈折率が気体Gの屈折率よりも大きいので、液体L中を進む光Qは、液体Lと気体Gとの境界面である液面Sにおいて、スネルの法則に従って屈折して、屈折角θ3で気体G中を進む屈折光Rとなる。なお、液面Sを境にした液位表示部20の色の変化は液体Lでの光の屈折・透過作用を利用するので、容器10に貯留される液体Lは、光透過性を有する必要がある。
【0040】
液上ポイントuからの光Pは、気体入射角(液上部28の側での観察角度)θ2で、気体G中を直進して観察者の目Eによってダイレクトに視認される。
【0041】
液下ポイントwからの光Qは、液体入射角θ1で、液体L中を進み、交点Xを通過する。そのあと、光Qは、スネルの法則に従って屈折し、屈折角(θ3)で、気体G中を進んで、屈折光Rとして観察者の目Eによって視認される。気体Gの側にある観察者の目Eから液下ポイントwを見ると、その像は、虚像として、屈折光Rと一直線上にある光Kの虚像ポイントjにあるように見える。
【0042】
気体Gの側にある観察者の目Eが液位表示部20を見ると、気体Gの側に位置して液面Sよりも上に位置する部分(以下、液上部28という。)に関しては、気体G中だけを直進する光Pを見ることになる。これに対して、観察者の目Eは、液体Lの側に位置して液面Sよりも下に位置する部分(以下、液下部29という。)に関しては、液体L中を進む光Qが液面Sで屈折したあと気体G中を進む屈折光Rを見ることになる。液位表示部20が液体Lに部分的に浸漬されるとき、液位表示部20は、液面Sを境にして、気体G側の液上部28と、液体L側の液下部29との2つの部分に分かれる。
【0043】
図3に示した例では、液体Lの屈折率が気体Gの屈折率より大きいので、液体L中を進む光Qの液体入射角θ1は、スネルの法則により、気体G中を進む光Pの気体入射角θ2よりも小さくなる。入射角が液体入射角θ1<気体入射角θ2として相違することは、液体Lの側にあるコーティング部34を進む光Qの光路長が、気体Gの側にあるコーティング部34を進む光Pの光路長よりも長くなっていることを意味する。すなわち、光干渉性発色体30のコーティング部34が或る一定の厚みであっても、液面Sを境にして、コーティング部34での光の入射角がθ1<θ2のように異なることによって、コーティング部34を進む光の光路長が異なることを意味する。コーティング部34での入射角の相違は、光干渉作用によって発色する液位表示部20においては、コーティング部34の厚みを変化させることと実質的に同じ作用・効果を奏する。
【0044】
気体Gの側にあるコーティング部34と液体Lの側にあるコーティング部34との間での光路長差は、前述した光干渉作用によって強められる干渉光C1の波長すなわち光干渉性発色体30での色相を変化させる。すなわち、液位表示部20の液上部28では或る色相で発色し、液位表示部20の液下部29では、液上部28での或る色相とは異なる別の色相で発色する。光干渉作用によって或る色相に発色した発色層16では、内鍋10内での液面Sを境にして、液面Sよりも上の色相と液面Sよりも下の色相とが異なる。したがって、液面Sを境にして、観察される液位表示部20の色相が異なることによって、気体Gの側にあって、内鍋10の内面を見下ろす位置にある観察者の目Eは、内鍋10に貯留された液体Lの液位Sを明確に視認できる。
【0045】
そして、上記の作用・効果は、液上部28にあるコーティング部34での入射角と、液下部29にあるコーティング部34での入射角とが異なること(液上部28と液下部29との間での相対的な入射角度差)に基づいているので、入射角(液上部28の側での観察角度θ2)それ自身(入射角の絶対値)に依存することはない。したがって、液位表示部20の色相が、液面Sを境にして変化することは、液上部28の側での観察角度θ2に依存しない。
【0046】
要するに、光干渉性発色体30を有する液位表示部20を容器10の側面部25に設けると、液面Sよりも下に位置する液下部29の側に液体Lの屈折作用が加わることによって、あたかも液上部28の側での観察角度θ2を液下部29の側での観察角度θ1に変化させたのと同じ作用・効果を奏する。その結果、液面Sを境にして、観察される液位表示部20の色相が異なり、液体Lの液位Sを明確に視認できるようになる。そして、観察される液位表示部20での色相の変化は、液上部28での観察角度θ2に依存しない。
【0047】
(液位目盛の構成)
例えば、
図4に示すように、液位表示部20は、内鍋10の内側面において、液位目盛40の形態で設けられている。液位目盛40は、被加熱物(お米)の量(合数)に応じた液体L(水)の液位Sを示す目盛りである。液位目盛40は、内鍋10の側面部25の高さ方向に延在して、最小炊飯容量から最大炊飯容量までの間に位置する。
【0048】
液位目盛40は、目盛り線42と、縦線44と、数値部46とを有する。目盛り線42は、水平方向に延在するとともに、垂直方向に離間した複数の線分からなり、液位Sを定量的に知らしめる。縦線44は、複数の目盛り線42をつなぐように垂直方向に延在する線分であり、液位Sを定性的に知らしめる。数値部46は、目盛り線42の近傍に位置して内鍋10に貯留された液体Lの量を表示する数値であり、液体Lの量を定量的かつ具体的に知らしめる。したがって、液位目盛40は、内鍋10に貯留された液体L(水)の量を計量する計量目盛りとして働く。
【0049】
液位目盛40において、縦線44の線幅が、各目盛り線42の線幅よりも太いように構成されている。垂直方向に延在する縦線44の線幅が太いので、液位Sの視認性が向上する。
【0050】
液位目盛40は、光干渉作用によって或る色相に発色する発色層16を有するので、内鍋10内での液面Sを境にして、液位目盛40での発色する色相が異なる。そのため、
図5に模式的に示すように、液位目盛40は、液面Sよりも上に位置する液上部28と、液面Sよりも下に位置する液下部29との間で、前者が白抜きで表示されるとともに後者がクロスハッチングで表示されるように、発色する色相が異なる。
【0051】
図8では、水およびお米を入れた内鍋10での液位目盛40の色相変化を、グレースケールの写真で示している。グレースケールのため、液位目盛40での色相の変化が見づらいが、
図8の中央部において、液面S(水面)よりも下に位置する縦方向に延びる3本の白っぽい太線と、液面S(水面)よりも上に位置して白っぽい太線から縦方向の上方に延びる3本の黒っぽい太線とが示されている。3本の白っぽい太線および3本の黒っぽい太線は、液位目盛40に対応するものである。
図8の写真からも、液位目盛40に対応する太線の色相が、液面S(水面)を境にして、明瞭に異なって視認されることが分かる。なお、実際の色相は、
図8で白っぽく示されている太線が黄緑色であり、
図8で黒っぽく示されている太線が橙色である。実際に示された液位目盛40の色相が、黄緑色および橙色であるというのはあくまでも例示であり、他の色相であってもよい。
【0052】
液面S(水面)を境にして色相が変化する液位目盛40を内鍋10に設けることにより、液位目盛40での色相変化を見ながら、内鍋10での液体L(水)の貯留具合を容易に決めることができる。
【0053】
したがって、第1実施形態では、内鍋10の側面部25の高さ方向に延在する液位表示部20の色相が、液面Sを境にして変化するので、観察角度θ2に依存することなく、液位Sを明確に視認できる。
【0054】
なお、
図4および
図5に示すように、液位目盛40は、「白米」や「玄米」などの米の種類に応じた複数種類のものとすることができる。液位目盛40は、「おかゆ」などの炊飯メニューに応じた複数種類のものとすることができる。液位目盛40の具体的な形状や表示は、
図4および
図5に図示したものに限定されるものではない。例えば、液位目盛40は、液位Sを定性的に示す目印として使用するために、側面部25の下端から上端まで垂直方向に延在する縦線44の形態で設けられてもよい。
【0055】
〔第2実施形態〕
図6は、第2実施形態としての光透過性容器60の模式図である。第2実施形態の光透過性容器60は、その側面部65が光透過性を有するとともに、液位表示部20が、側面部65の外面側に設けられていることを特徴とする。
【0056】
図6に示すように、光透過性容器60は、側面部65および底面部66を有するほぼ有底筒形状をしている。側面部65が、光透過性の母材62で構成されている。側面部65の外面側には、液位表示部20が設けられている。光透過性の母材62は、例えば、樹脂材料やガラス材料)からなる。側面部65は、少なくとも、液位表示部20が設けられる部分において光透過性を有する。なお、側面部65は、液位表示部20が設けられる部分以外の部分、または母材62の全体が、光透過性を有してもよい。
【0057】
液位表示部20は、塗装物、印刷物、フィルムまたはシール体の形態で、光透過性容器60の外面側に設けられる。このようにすれば、液位表示部20を基材12の外面側に容易に設けることができる。
【0058】
観察者の目Eは、気体Gの側にあって、光透過性容器60の内面を見下ろす位置にある。気体Gの側にある観察者の目Eは、光透過性容器60の内面側から、光透過性の母材62を介して、側面部65の外面側に設けられた液位表示部20を見ることになる。気体Gの側にある観察者の目Eが液位表示部20を見ると、液位表示部20の液上部28に関しては、光透過性の母材62で屈折したあと気体Gを進む光を見ることになる。これに対して、観察者の目Eは、液位表示部20の液下部29に関しては、光透過性の母材62で屈折するとともに液体Lで屈折したあと気体Gを進む光を見ることになる。
【0059】
図3に示した異なる色相での発色原理と同様に、第2実施形態においても、液面Sを境にして液位表示部20が異なる色相で発色する。すなわち、第2実施形態では、
図3に示した構成との比較で、液位表示部20からの光が、光透過性の母材62を屈折しながら透過することが追加されることになる。しかしながら、光が、光透過性の母材62を屈折しながら透過することは、液位表示部20の液上部28および液下部29で共通しているので、液上部28および液下部29の間で、光透過性の母材62に基づく光路長に差がない。したがって、
図3と同様に、液体Lによる屈折作用により、液下部29におけるコーティング部34の光路長が、液上部28におけるコーティング部34の光路長よりも長くなり、前者の液体入射角θ1が後者の気体入射角θ2よりも小さくなる。
【0060】
第1実施形態と同様に、光干渉性発色体30のコーティング部34の膜厚が或る一定の厚みであっても、液面Sを境にして、コーティング部34での光の入射角が異なることは、コーティング部34の厚みが液上部28と液下部29との間で異なることに相当する。そのため、液位表示部20では、液上部28の色相と液下部29の色相とが異なる。このように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、液面Sを境にして液位表示部20が異なる色相で発色するので、観察角度θ2(
図3に図示)に依存することなく、液面Sを明確に視認できる。
【0061】
〔第3実施形態〕
図7は、第3実施形態としての光透過性容器70の模式図である。第3実施形態の光透過性容器70は、側面部75が光透過性を有するとともに、液位表示部20が、側面部75に内在していることを特徴とする。
【0062】
図7に示すように、光透過性容器70は、側面部75および底面部76を有するほぼ有底筒形状をしている。側面部75が、光透過性の母材72で構成されている。母材72の中には、光干渉性発色体30が内在している。母材72は、光透過性を有する材料(例えば樹脂材料やガラス材料)からなる。母材72は、側面部75のうち、少なくとも、液位表示部20として働く部分において光透過性を有するが、母材72は、液位表示部20として働く部分以外の部分、または母材72の全体において、光透過性を有してもよい。
【0063】
光透過性容器70は、光干渉性発色体30を含む被成形体を成形した成形体からなる。すなわち、光透過性容器70は、光干渉性発色体30を光透過性の母材72の材料に添加した被成形体を金型で成形することによって得られる。光干渉性発色体30は、入射光を反射する基材32と、基材32を被覆する光透過性のコーティング部34とを備える。光透過性容器70の全体を成形で作成する場合、光透過性容器70の全体にわたって光干渉性発色体30が内在している。光干渉性発色体30が内在した側面部72は、液位表示部20として機能するので、液位表示部20を側面部75に設けることと同じである。したがって、光透過性容器70のうち、側面部75が、液位表示部20として利用される。
【0064】
液位表示部20のためには、底面部76に光干渉性発色体30が内在することは本来的に必要としないが、光透過性容器70の全体を成形によって作成するため、光干渉性発色体30が必然的に底面部76に内在してしまう。なお、光透過性容器70のうち、液位表示部20に対応する側面部75を成形で予め作成しておき、側面部75とその他の部分とを一体に組み合わせて光透過性容器70を作成してもよい。
【0065】
側面部75において、側面部75に内在した光干渉性発色体30のうちのいくらかが、側面部75の厚み直交方向に配列している。側面部75において側面部75の厚み直交方向に配列された光干渉性発色体30によって、側面部75が、或る色相で発色する。したがって、上記実施形態と同様に、側面部75が、発色部として働く。
【0066】
側面部75での光干渉性発色体30の配向性が低くなっているため、光干渉性発色体30から発色される色の彩度が低くなるものの、或る色相の干渉光が観察者の目Eに届けられるので、或る色相の色が観察者に視認される。そして、液位表示部20では液上部28の色相と液下部29の色相とが異なり、液面Sを境にして液位表示部20が異なる色相で発色するので、観察角度θ2(
図3に図示)に依存することなく、液位Sを明確に視認できる。側面部75が液位表示部20として働くので、液位表示部20が光透過性容器70の一部分として光透過性容器70と一体的に設けられている。
【0067】
したがって、第3実施形態では、光干渉性発色体30を含む光透過性容器70の側面部75を液位表示部20として利用でき、液位表示部20を別に設ける場合よりも低コスト化できる。
【0068】
なお、この発明の理解を容易にするために、具体的な構成や数字を用いて説明したが、この発明は、上述した各実施形態の具体的な構成や数字に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱しない範囲で考えられる各種の変形例を含むことができる。
【0069】
例えば、光干渉性発色体30は、鱗片形状に限られず、平面視で、円状、楕円状、三角形状、四角形状または多角形状をした構造発色体とすることもできる。
【0070】
液面Sを境にして液位表示部20の色相が変化することによって、液位Sが明確に表示されることを説明したが、液位表示部20の明度または彩度が変化することによっても、液位Sの表示が可能である。コーティング部34の屈折率を大きくすると、コーティング部34を入射した光の光路長差が小さくなるため、液位表示部20での色相の変化幅が小さくなり、いわゆるカラーフロップ性が小さくなる。その代わりに、液位表示部20において、或る色での明度または彩度が変化しているように視認される。したがって、液面Sを境にして液位表示部20の明度または彩度が変化することによっても、液位Sを明確に視認できる。
【0071】
色は、色相と明度と彩度との三つの要素で規定される。例えば、色合いを規定する色相として赤や緑や青があり、色相の変化として、例えば、第1実施形態で説明したような、橙色および黄緑色がある。色の明るさの度合いを規定する明度の変化として、例えば、明るい青(水色)および暗い青(紺色)などがあり、色の鮮やかさを規定する彩度の変化として、例えば、鮮やかな赤およびくすんだ赤などがある。
【0072】
さらに、光干渉性発色体30として、光学波長程度の周期を持ったらせん構造を有するコレステリック液晶ポリマーなどを使用することもできる。コレステリック液晶ポリマーは、らせん状の周期構造を有する分子配列による反射光に基づいて、発色しており、らせんピッチ長に対応する或る色相の光が選択的に反射され、反射光の角度によって色の明度または彩度が変化するという特性を有する。気体Gと液体Lとの間での屈折率の差で、液体Lから気体Gに進む光が屈折するので、反射光の角度が異なる。したがって、反射光の角度が異なることによって、コレステリック液晶ポリマーを含む光干渉性発色体30の発色の明度または彩度が異なるので、液位表示部20での液上部28と液下部29との間で明度または彩度が異なって発色する。なお、コレステリック液晶ポリマーは、光重合によって、或るらせんピッチ長を持つように固定化される。固定化されたコレステリック液晶ポリマーは、当該らせんピッチ長に対応する或る色相で発色する。
【0073】
また、コレステリック液晶ポリマーを光透過性のマイクロカプセルなどに封入して光干渉性発色体30として使用することもできる。この場合、コレステリック液晶ポリマーが温度のわずかな違いで異なる色相で発色するという特性と、容器10中での液体Lの温度と気体Gと温度とがわずかに異なることとにより、液位表示部20は、液上部28と液下部29との間で異なる色相で発色する。特に、容器10に液体L(例えば水道水)を注いだ直後は、液体Lと気体Gとの温度差が大きくなる場合があり、その場合、コレステリック液晶ポリマーを用いた液位表示部20は、液面Sを境にして、より明瞭に異なる色相で発色する。
【0074】
この発明の一態様の容器は、少なくとも液体Lを貯留する容器であり、固形物および液体Lを貯留してもよい。容器は、上記実施形態のように側面部および底面部を有するが、例えば漏斗のように側面部だけで構成される逆円錐形状であってもよい。
【0075】
このような容器は、例えば、電気ケトルや電気ポット、加湿器や除湿機での水タンク、アイロンでの水タンク、コーヒーメーカーやミキサーやジューサーなどの水分を入れるタンク、製パン機や餅つき機のように水および固形の被加熱物を入れて加熱調理するための容器、水炊きや寄せ鍋やおでんなどの鍋料理をするための鍋、薬剤タンクなど水以外の薬剤やジェルなどの液状物を入れる容器、計量カップ、ビーカー、メスシリンダーなど計量容器、あるいは、カップやコップやボウルなどの一般容器などに適用可能である。
【0076】
液位表示部20は、塗装物、印刷物、フィルムまたはシール体の形態で設けることができる。