【実施例】
【0029】
上記実施形態の欠陥評価方法の実施例について説明する。この実施例のバースト波送信工程では、被検査体1(この実施例では鋼材)に対して超音波探触子3から20MHzのバースト波を送信した。
図2は、欠陥位置特定工程において探傷器5で受信された受信信号の例を示している。
図2の横軸は時間を表しており、欠陥の存在位置の深さに対応している。この
図2に示されるように、第1反射超音波のうち高調波(この実施例では40MHz以上)以外の反射超音波が除去されており(組織反乱ノイズが有効に抑制されており)、欠陥の存在位置が明確に特定される。このことは、バースト波の送信パワーや第1反射超音波の増幅度を向上させることにより、より顕著となる。
図3は、被検査体1の特定の面内(この実施例では10mm×10mmの領域)における欠陥の存在位置の例を示している。
【0030】
一方、
図4は、被検査体1にパルス波を送信した場合の比較例を示している。具体的に、
図4は、被検査体1に対して超音波探触子3から送信したパルス波が被検査体1で反射することにより生成された反射超音波の受信信号の例を示しており、
図5は、被検査体1の特定の面内における欠陥の存在位置の例を示している。特に
図2及び
図4より、被検査体1にバースト波を送信することにより生成される第1反射超音波のうち高調波のみを受信することにより、被検査体1にパルス波を送信することにより生成される反射超音波を受信する場合に比べて欠陥の存在位置を明確に特定できることが確認された。
【0031】
次に、表面から深さ1.8mmの位置に直径0.1mmの人工欠陥を有する被検査体1に対し、超音波探触子3から収束パルス波を送信した。
図6〜
図8は、被検査体1に収束パルス波が送信されたときの第2反射超音波の受信信号を示している。
図6は、焦点位置が被検査体1の表面から1.2mmに設定された収束パルス波の反射超音波の受信信号であり、
図7は、焦点位置が被検査体1の表面から1.4mmに設定された収束パルス波の反射超音波の受信信号であり、
図8は、焦点位置が被検査体1の表面から1.6mmに設定された収束パルス波の反射超音波の受信信号である。
図6〜
図9より、パルス波の焦点位置が人工欠陥の存在位置に近づくにしたがって第2反射超音波の受信信号の振幅が大きくなること、つまり、パルス波の焦点位置が前記欠陥位置特定工程で特定された欠陥の存在位置に設定されることにより、高精度な欠陥の評価が可能となることが確認された。
【0032】
一方、
図9〜
図11は、被検査体1に収束バースト波が送信されたときの第1反射超音波の受信信号を示している。
図9は、焦点位置が被検査体1の表面から1.2mmに設定された収束バースト波の反射超音波の受信信号であり、
図10は、焦点位置が被検査体1の表面から1.4mmに設定された収束バースト波の反射超音波の受信信号であり、
図11は、焦点位置が被検査体1の表面から1.6mmに設定された収束パルス波の反射超音波の受信信号である。これらの
図9〜
図11に見られるように、収束バースト波の焦点位置が人工欠陥の存在位置からある程度離間したとしても、欠陥の存在位置を比較的明確に特定可能であることが分かる。
【0033】
図12は、送信波(20MHzのバースト波又は50MHzのパルス波)の焦点位置と人工欠陥からの反射超音波の強度変化(正規化振幅)との関係を示すグラフである。この
図12には、20MHzのバースト波が被検査体1に送信された場合に生成される第1反射超音波のうちの高調波の受信信号と、50MHzのパルス波が被検査体1に送信された場合に生成される第2反射超音波の基本波の受信信号と、が示されている。なお、縦軸の値は、焦点位置が1.8mmである場合の受信信号の値に対する割合を示す。この
図12から、第1反射超音波の高調波を受信することにより、比較的低い周波数であったとしても微小な人工欠陥の存在位置を明確に特定可能であること、すなわち、被検査体1の広範囲において明確に欠陥の存在位置を検出可能であることが確認された。なお、これは、周波数が低い程、収束域(焦点探度)が広くなるためと考えられる。