特許第6761808号(P6761808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761808
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】血管再生用材料
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/44 20060101AFI20200917BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20200917BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20200917BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20200917BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20200917BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20200917BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   A61L27/44
   A61L27/50 300
   A61L27/18
   A61L27/22
   A61L27/24
   A61L27/56
   A61L27/58
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-547833(P2017-547833)
(86)(22)【出願日】2016年10月26日
(86)【国際出願番号】JP2016081746
(87)【国際公開番号】WO2017073624
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年5月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-214595(P2015-214595)
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518147013
【氏名又は名称】萩原 明郎
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】萩原 明郎
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−017163(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/116646(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0125330(US,A1)
【文献】 特開平04−146745(JP,A)
【文献】 特開2005−261867(JP,A)
【文献】 特開平05−269196(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0085563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/18
A61F 2/00− 4/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート形状、管形状、又はこれらを組み合わせた形状をしていて、体内の循環器系における血管の欠損部位に吻合して血管全層の再生に使用するための血管再生材料であって、
生体吸収性ポリマーからなる内層と、
前記内層より外側に配置されるとともに、ステレオコンプレックスポリ乳酸を少なくとも含む材料からなる外層と、
を少なくとも備える複層構造をしており、
前記外層が、栄養血管が前記内層に達するように又は前記内層近傍まで入り込めるように、多孔質形状に形成されている血管再生材料
【請求項2】
前記外層が、ステレオコンプレックスポリ乳酸を50重量%以上含む繊維素材からなる布によって構成されている請求項1に記載の血管再生材料
【請求項3】
前記布が、織物又は編物である請求項2に記載の血管再生材料
【請求項4】
前記内層が、ポリグリコール酸、乳酸とカプロラクトンの共重合体、L-ポリ乳酸、D-ポリ乳酸、グリコール酸と乳酸の共重合体、ゼラチン、コラーゲン、エラスチンからなる群より選ばれた少なくとも1種の材料によって構成されている請求項1〜請求項3の何れかに記載の血管再生材料
【請求項5】
前記内層が、繊維素材からなる易生体親和性布によって構成されている請求項4に記載の血管再生材料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管再生材料に関し、特に体内の循環器系における血管の欠損部位に吻合して血管全層の再生に使用するための血管再生用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会の高齢化や食文化の洋風化に伴って、生活習慣病の患者が増加している。動脈硬化も生活習慣病の一種であり、症状が進行すれば、大動脈瘤などの人命に掛かる病気になることもある。そして、大動脈瘤の症状が進行すると、その破裂を防ぐため、病変部を含む大動脈を、手術によって人工血管と交換する人工血管置換術が行われる。
【0003】
人工血管は、血球はもちろん血漿を漏出しないことは当然であり、これに加えて、人体との適合性、耐久性、安全性が必要であり、手術によって血管と容易に吻合できなければならない。
【0004】
そこで、従来から様々な人工血管が開発されている。例えば、ポリエステル繊維をメリヤス編みや平織りしてなる布製人工血管、ポリ四フッ化エチレンを筒状にし、急速に引き延ばして、無数の亀裂を生じさせてなるPTFE製人工血管、が一般的に使用されている(非特許文献1を参照。)。
【0005】
また、エレクトロスピニング法によって形成された径が10μm以下の極細繊維の不織布層から構成された内層と、その外側に配置されたカバー材とを備え、この不織布層とカバー材とが固着されている人工血管が開発されている(特許文献1を参照。)。
【0006】
ただ、これらの人工血管は移植後も生体に吸収されることはない。そのため、歯科治療などによって人工血管が感染した場合、治療は非常に困難であり、人工血管を入れ替える手術が必要になる場合もあった。また、人工血管中には栄養血管が入り込めないので、人工血管の内腔に生着した内膜細胞が壊死してしまう場合もあった。
【0007】
そこで、近年では、移植後に体内に吸収される生体吸収性繊維を使用した人工血管も開発されている。ただ、従来からある生体吸収性人工血管は、移植後速やかに分解・吸収されるように、乳酸とカプロラクトンの共重合体等の生体分解・吸収速度が速い生体吸収性繊維から構成されている(特許文献2を参照。)。
【0008】
そのため、人工血管の強度の低下も速く、内腔からの高い圧力に常に曝される動脈のような循環器系には使用できなかった。また、仮にこれらの人工血管を動脈等に使用しても、動脈等が瘢痕組織、石灰化や動脈瘤などの病的組織に置き換わってしまうため、完全な再生・治療はできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−031595号公報
【特許文献2】特開2016−158765号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】"人工血管"、日本人工臓器学会、[online]、[平成27年10月22日検索]、インターネット<URL:http://www.jsao.org/public/7.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、動脈のように内腔からの高い圧力に曝されている循環器系における血管の欠損部位に吻合して血管全層の再生に使用するための血管再生用材料であって、移植後に生体吸収される血管再生材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は、下記の(1)〜(4)の知見に基づいて、前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を考え出した。
【0013】
(1)形成外科分野において外傷を治療する際には、分解・吸収されるまでに十分に長い時間をかけて徐々に強度劣化して生体で吸収される生体吸収性糸で真皮部分を縫合するのが一般的であり、もし、吸収が速い生体吸収性糸を使用すれば、傷部の生体組織は元の様な皮膚には再生・治癒せず、瘢痕組織などの病的組織に置き換わってしまうこと。
【0014】
(2)小児心臓外科分野において、例えば、生まれつき異常な位置に繋がれた奇形の大動脈を適正な位置に外科手術で繋ぎなおす際には、手術後の成長と血圧とを考えて分解・吸収されるまでに十分に長い時間をかけて徐々に強度劣化して生体で吸収される生体吸収性糸などで縫合する必要があり、もし、吸収が速い縫合糸を使用すれば、動脈は元の様には再生・治癒せず、瘢痕組織、石灰化や動脈瘤などの病的組織に置き換わってしまうこと。
【0015】
(3)内腔からの高い圧力に曝されている動脈などで使用するには、ポリジオキサノンの様に従来から使用されている生体吸収性縫合糸の内では比較的分解吸収速度が遅いとされているポリマーであっても、吸収速度が速すぎること。
【0016】
(4)ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリジオキサノン等よりも十分に長い時間を掛けて徐々に強度劣化したのち吸収されること。
【0017】
すなわち、本発明の血管再生材料は、シート形状、管形状、又はこれらを組み合わせた形状をしていて、体内の循環器系における血管の欠損部位に吻合して血管全層の再生に使用するための血管再生材料であって、生体吸収性ポリマーからなる内層と、前記内層より外側に配置されるとともに、ステレオコンプレックスポリ乳酸を少なくとも含む材料からなる外層と、を少なくとも備える複層構造をしており、前記外層が、栄養血管が前記内層に達するように又は前記内層近傍まで入り込めるように、多孔質形状に形成されているものである。
以下、「本発明の血管再生用材料」を「本発明の医療用基材」などと称する場合がある。
【0018】
本発明の医療用基材の外層は、ステレオコンプレックスポリ乳酸を50重量%以上含む繊維素材からなる布によって構成されていてもよい。なお、外層を構成する布は、栄養血管が入り込む孔の径、配置、分布をできるだけ均一としたい場合には、織物又は編物とすることが好ましい。
【0019】
本発明の医療用基材の内層は、ポリグリコール酸、乳酸とカプロラクトンの共重合体、L-ポリ乳酸、D-ポリ乳酸、グリコール酸と乳酸の共重合体、ゼラチン、コラーゲン、エラスチンからなる群より選ばれた少なくとも1種の材料によって構成されていてもよい。なお、内層は繊維素材からなる布によって構成されていてもよい。また、内層を構成する布は、不織布、織物又は編物であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の医療用基材は、外層が長期間に渡って血液等の圧力に抗して形状を保持している間に、循環器系の外膜側から栄養血管が入り込み、循環器系の内膜側に内膜細胞が生着したのち、生体に吸収される。そのため、本発明の医療用基材を、例えば人工血管等に使用すれば、常に内腔からの高い圧力に曝されている大動脈などを良好に再生でき、後日、再移植による入れ替えなどの必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る医療用基材の外観斜視図(a)及び断面図(b) である。
図2図2は、本発明に係る別の医療用基材の外観斜視図(a)及び断面図(b)である。
図3図3は、本発明に係る医療用基材を構成する布をラットの背中に埋植し、布への細胞の浸潤状況を調べた結果を示す図面代用写真である。
図4図4は、本発明に係る医療用基材を構成する布をイヌの腸骨動脈に堅く巻いて、布により補強層が形成されるか否か、を調べた結果を示す図面代用写真である。
図5図5は、本発明に係る医療用基材を構成する布を半周まで切開されたイヌの大動脈に巻いて、布によって形成された補強層が動脈壁断端縫合部を補強できるか否か、を調べた結果を示す図面代用写真である。
図6図6は、本発明に係る医療用基材を構成する布を完全に切離されたイヌの大動脈に巻いて、布が再生足場として利用可能か否か、を調べた結果を示す図面代用写真である。
図7図7は、本発明に係る医療用基材(実施例1)をイヌに移植した結果を示す図面代用写真である。
図8図8は、本発明に係る医療用基材(実施例2)をイヌに移植した結果を示す図面代用写真である。
図9図9は、本発明に係る医療用基材(実施例3)をイヌに移植した結果を示す図面代用写真である。
図10図10は、本発明に係る医療用基材(実施例5)をイヌに移植した結果を示す図面代用写真である。
図11図11は、従来からある医療用基材(比較例)をイヌに移植した結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.医療用基材
本発明の医療用基材は、シート形状、管形状、又はこれらを組み合わせた形状をしていて、人工血管、血管内ステントや血管内ステントグラフト等のように外科手術などの処置によって、体内に移植して循環器系の再生に使用されるものである。
【0023】
本発明の医療用基材は、動脈、静脈等の血管、心臓、リンパ管などの循環器系の再生に使用でき、再生に長期間を要するとともに血圧が掛かる動脈を安定して再生でき、高い動脈血圧が掛かる大動脈についても安定して再生できる。
【0024】
そこで、本発明の医療用基材を人工血管として使用する場合について、以下に図面に基づいて説明する。なお、本発明の医療用基材の用途は人工血管に限定されない。
【0025】
図1は、本発明に係る医療用基材1の外観斜視図(a)及び断面図(b)である。この図に示すように、医療用基材1は外層11とその内側に配置された内層12を備えている。ここで、内層12は、外層11と一体化してもよく、多層に重層して設置されていてもよい。なお、このような医療用基材1は、例えば、各層を別々に製造したのち、手や公知の機械により嵌め合わせることによって製造できる。
【0026】
2.外層
本発明の医療用基材1を構成する外層11は、ステレオコンプレックスポリ乳酸を含む繊維からなる中空筒状の布である。外層11は、内層12が生体に吸収されるまでの一定期間は、血管内腔からの圧力に耐えて血管の機能を維持できる強度を備えていればよい(以下、強度条件と省略する。)。例えば、移植対象の個体差にもよるが、外層11は移植後少なくとも8ヶ月間は強度を維持できることが好ましい。その後、外層11は、組織再生の過程の進行に伴って十分な時間をかけて強度が徐々に劣化し、再生終了後には遅滞なく生体に吸収される。
【0027】
(1)ステレオコンプレックスポリ乳酸
本明細書において、ステレオコンプレックスポリ乳酸とは、L-乳酸のみからなるL-ポリ乳酸(PLLA)とD-乳酸のみからなるD-ポリ乳酸(PDLA)とを混合して、それぞれが形成する螺旋構造を絡み合わせたもの、及びL-乳酸とD-乳酸とがそれぞれブロック状につながったブロック共重合体同士を混合し、共重合体のL-乳酸連鎖部分とD-乳酸連鎖部分の螺旋構造を部分的に絡み合わせたもの、を含む。なお、L-乳酸とD-乳酸の比は1:1のみに限定されず、70/30などの偏組成型も含まれる。
【0028】
このようなステレオコンプレックスポリ乳酸は、生体内で物理的強度の明確な劣化(すなわち再生させている生体の構造に影響が出る程度)の始まる時期が、内層12よりも遅い。
【0029】
ステレオコンプレックスポリ乳酸は、例えば、特許5957885号公報、特許5821021号公報、特許5731207号公報、特許5728851号公報、特許5679411号公報等に記載された方法で製造できる。なお、ステレオコンプレックスポリ乳酸の分子量は、外層11が強度条件を維持できるのであれば、特に限定されない。
【0030】
(2)布
本明細書において布とは、多数の繊維を薄く広い板状に加工したもののことであり、布は織物、編物、不織布の何れかに分けられる。外層11を構成する繊維は、ステレオコンプレックスポリ乳酸を単独で使用してもよく、生体内で分解吸収される他の材料とブレンドして使用してもよい。ただ、布のステレオコンプレックスポリ乳酸の含有量が、50重量%以上であるのが好ましい。強度条件を確実に満たすためである。
【0031】
上記布を構成する繊維としては、モノフィラメント、撚糸、ロービング糸でもよいが、撚糸が好ましい。また、上記繊維としては、ステレオコンプレックスポリ乳酸からなる繊維、ステレオコンプレックスポリ乳酸と他の材料とをブレンドしたものからなる繊維、ステレオコンプレックスポリ乳酸からなる繊維と他の材料からなる繊維との混紡繊維等が挙げられる。
【0032】
ステレオコンプレックスポリ乳酸以外の材料としては、例えば、ポリグリコール酸(以下、場合によりPGAと省略する。)、乳酸とカプロラクトン(以下、場合によりCLと省略する。)の共重合体、L-ポリ乳酸、D-ポリ乳酸、グリコール酸と乳酸の共重合体、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン等の公知の生体吸収性ポリマーが挙げられる。
【0033】
なお、生体吸収性ポリマーを構成するモノマーの重量比は、強度条件を満たすのであれば、特に限定されない。また、強度条件を満たすのであれば、1種類の生体吸収性ポリマーを単独で使用してもよく、2種以上の生体吸収性ポリマーを混合して使用してもよい。
【0034】
外層11を構成する布は、特に限定することなく、ステレオコンプレックスポリ乳酸等から公知の方法により製造できる。具体的には、公知の織機、編機によって織布や編物(網状のものも含む。以下、特別に記載しなければ同じ。)として製造してもよく、エレクトロスピニング法やメルトブロー法等の公知の方法によって不織布として製造してもよい。
【0035】
外層11を構成する布が、織布、編布、不織布など繊維素材からなる布である場合、それを構成する繊維の繊維長、繊維径、繊維径と長さの比率は、強度条件を満たせば、特に限定する必要はない。ただ、強度条件を考慮すると、繊維径は、中央値で示すと0.1〜40μmが好ましく、0.5〜20μmがより好ましい。
【0036】
布断面に認める繊維断端の任意の一本から隣り合う繊維の断端までの距離(以下、繊維間隔と省略する。)は、布の構造によって異なる。具体的には、不織布の場合、中央値で示すと5μm〜1000μmが好ましく、15μm〜500μmがより好ましい。5μmよりも小さいと、細胞や特に栄養血管の浸入・定着し難くなり、布が血管を含む自己組織化して大動脈の再生をすることが困難であるからである。また、1000μmよりも大きいと、血圧等の内圧によって血液等が医療用基材1から漏れ出る可能性があるからである。同じ理由から、織布や編布の場合、繊維間隔は15μm〜2000μmが好ましく、30μm〜1500μmがより好ましい。
【0037】
なお、外層を内層の周りに複数回重層する場合、医療用基材が後述する中間層を備えている場合には、外層を構成する繊維の繊維間隔が1mm〜4mmであってもよい。
【0038】
布を構成する繊維の繊維長、繊維径、繊維径と長さの比率、繊維間隔は、単一であってもよいが、バラツキがある方が好ましい。これは、(a)生体内で細胞外構造を構成する繊維に倣うことによって、細胞増殖や組織再生に有利であり、(b)バラツキに応じて劣化速度が異なれば、再生組織の強度変化が徐々変化するので、再生組織の形状異常(異常拡張、破裂、狭窄、閉塞)や構成成分異常(瘢痕化、石灰化など)の危険が少なくなるため、である。
【0039】
(4)測定方法
(3)に示した布を構成する繊維の繊維径、繊維間隔は次のようにして測定した値の中央値である。なお、中央値とは、代表値の一つで、有限個のデータを大きさの順に並べたとき中央に位置する値である。また、データが偶数個の場合は、中央に近い2つの値の算術平均値である。
【0040】
1)編布、織布の場合
(a)繊維径
編布、織布の繊維径は、以下のようにして求める。まず、布を切断し、その切断面を光学顕微鏡(20倍〜100倍)で撮影する。つぎに、撮影した画像をコンピュータ画像システムに取り込み、距離測定ソフト(理論上は0.01μmまで測定可能)を使用して繊維径を測定する。
【0041】
なお、織布及び編布は、複数本のモノフィラメントファイバーを束ねて1本の織糸又は編糸としている。そこで、無作為に選ばれた断面が真円形のモノフィラメント50個の繊維径を測定し、その中央値を布の繊維径とする。
【0042】
(b)繊維間隔
編布、織布の繊維間隔は、以下のようにして求める。まず、布の表面を実体顕微鏡(倍率10倍以下、表側と裏側の両側から光源照射)で撮影する。撮影した画像をコンピュータ画像システムに取り込み、取り込んだ画像を、距離測定ソフト(理論上は0.01μmまで測定可能)を使用して繊維間隔を測定する。
【0043】
なお、織布及び編布は、複数本のモノフィラメントファイバーを束ねて1本の織糸又は編糸としている。そこで、繊維間隔は、隣接する織糸(又は編糸)と織糸(又は編糸)の縁と縁の間で形作られる織目(編目)の大きさに基づいて定める。この織目(編目)は、略三角形状、四角形状、又は疑似円形状があるので、それぞれの場合の繊維間隔の求め方を以下に説明する。なお、織目(編目)の形や大きさが複数ある複雑な場合は、それぞれ記載について記載する。
【0044】
織目(編目)が略三角形状の場合は、これを三角形とみなし、三角形の3つの高さの平均値をこの三角形の繊維間隔とする。そして、無作為に選んだ三角形30個の繊維間隔の中央値を布の繊維間隔とする。
【0045】
織目(編目)が略四角形状の場合は、対向する一対の二辺間の距離の最大値と最小値の平均値、及び対向する別の一対の二辺間の距離の最大値と最小値の平均値を求める。そして、これらの4つの数値の加重平均をこの四角形の繊維間隔とする。そして、無作為に選んだ四角形30個の繊維間隔の中央値を布の繊維間隔とする。
【0046】
織目(編目)が疑似円形状の場合は、これを円とみなし、円の直径をこの円の繊維間隔とする。そして、無作為に選んだ疑似円形30個の繊維間隔の中央値を布の繊維間隔とする。
【0047】
2) 不織布の場合
(a)繊維径
不織布の繊維径は、以下のようにして求める。まず、被測定不織布を液体窒素で凍結・硬化したのち、切断する。つぎに、不織布の切断面を走査型電子顕微鏡で撮影する。そして、不織布の切断面に露出した多くの繊維断面の中から無作為に50本を選定し、繊維断端直径を測定する。測定した繊維径の中央値を不織布の繊維径とする。
【0048】
(b)繊維間隔
不織布の繊維間隔は、次のようにして求める。まず、被測定不織布を液体窒素で凍結・硬化したのち、切断する。つぎに、不織布の切断面を走査型電子顕微鏡で撮影する。そして、不織布の切断面に露出した多くの繊維断面の中から無作為に一つの繊維を選定し、選定した繊維から距離が近い順番に他の繊維を30個選び、選定した繊維との繊維間隔を測定し、測定した繊維間隔の中央値を計算する。同様にして一つの不織布について3つの中央値を求め、求めた3つの中央値の中央値をその不織布の繊維間隔とする。
【0049】
3.内層
本発明の医療用基材1を構成する内層12は、易生体親和性布によって構成されており、医療用基材1の外形形状を維持するのではなく、内皮細胞などの生着を促進して大動脈などの循環器系の自己再生を促進し、最終的には血管内皮細胞等に置換される。なお、易生体親和性とは、外層11の材料と比べて親和性に富んでいるという意味である。そのため、内層12は、外層11よりも生体吸収が速く、例えば、1ヶ月から12ヶ月程度で生体に吸収されることが好ましい。
【0050】
(1)易生体親和性布
内層12を構成する易生体親和性布の材料には、外層11の材料に比べて生体親和性に富むもので、特に限定することなく、例えば、ポリグリコール酸、乳酸とカプロラクトンの共重合体、L-ポリ乳酸、D-ポリ乳酸、グリコール酸と乳酸の共重合体、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン等の公知の生体吸収性ポリマーが挙げられる。
【0051】
なお、生体吸収性ポリマーを構成するモノマーの重量比は、易生体親和性を満たすのであれば、特に限定されない。また、易生体親和性を満たすのであれば、1種類の生体吸収性ポリマーを単独で使用してもよく、2種以上の生体吸収性ポリマーを混合して使用してもよい。
【0052】
内層12を構成する易生体親和性布は、易生体親和性を満たすのであれば、特に限定することなく、公知の方法により製造できる。具体的には、公知の織機、編機によって織布や編物として製造してもよく、エレクトロスピニング法やメルトブロー法等の公知の方法によって不織布として製造してもよい。
【0053】
内層12を構成する布が、織布、編布、不織布など繊維素材からなるものである場合、それを構成する繊維の繊維長、繊維径、及び繊維径と長さの比率は、易生体親和性を満たせば、特に限定する必要はない。ただ、繊維径は、その中央値で示すと、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。その理由は、余り太い繊維径では、血液の乱流などを引き起こし易く、血栓形成による血管内腔の閉鎖の危険が高くなるためである。
【0054】
内層22を構成する易生体親和性布の繊維の繊維間隔は、その中央値で示すと、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。また、内層22が多孔体の場合、繊維間隔(孔直径)は、その中央値で示すと200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。繊維間隔(孔直径)が大きいと、血管再生に使用した場合、血管が血栓形成によって閉塞するリスクが高くなり、血管壁からの血液等の液体が漏出するのを防げなくなる。
【0055】
易生体親和性布を構成する繊維の繊維長、繊維径、繊維径と長さの比率、繊維間隔は、単一であってもよいが、バラツキがある方が好ましい。その理由は、外層11と同じである。また、易生体親和性布を構成する繊維の繊維径、繊維間隔の測定方法は、外層11と同じである。
【0056】
4.中間層
本発明の医療用基材は、内層と外層との間に中間層を設けてもよい。図2は、本発明に係る別の医療用基材2の外観斜視図(a)及び断面図(b)である。この図に示すように、医療用基材2は外層21と、内層22と、外層と内層の間に配置される中間層23とを備えている。
【0057】
なお、このような医療用基材2は、例えば、各層を別々に製造したのち、手や公知の機械で嵌め合わせることによって製造できる。また、外層21及び内層22は、それぞれ医療用基材1の外層11及び内層12と同じ構成であるので、記載を省略する。
【0058】
中間層23は、生分解性の布によって構成されており、外層21とともに医療用基材2の外形形状を維持しつつ、栄養血管や中膜の再生を助け、最終的には生体吸収される(以下、吸収条件と省略する。)。
【0059】
中間層23を構成する布の材料には、吸収条件を満たすのであれば、特に限定することなく、公知のものが使用できる。具体的には、ポリグリコール酸、乳酸とカプロラクトンの共重合体、L-ポリ乳酸、D-ポリ乳酸、グリコール酸と乳酸の共重合体、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン等の公知の生体吸収性ポリマーが挙げられる。
【0060】
なお、生体吸収性ポリマーを構成するモノマーの重量比は、吸収条件を満たすのであれば、特に限定されない。また、吸収条件を満たすのであれば、1種類の生体吸収性ポリマーを単独で使用してもよく、2種以上の生体吸収性ポリマーを混合して使用してもよい。
【0061】
中間層23を構成する布は、吸収条件を満たすのであれば、特に限定することなく、公知の方法により製造できる。具体的には、公知の織機、編機によって織布や編物として製造してもよく、エレクトロスピニング法やメルトブロー法等の公知の方法によって不織布として製造してもよい。
【0062】
中間層23を構成する布が、織布、編布、不織布など繊維素材からなるものである場合、それを構成する繊維の繊維長、繊維径、及び繊維径と長さの比率は、吸収条件を満たせば、特に限定する必要はない。ただ、中間層23を構成する布を構成する繊維の繊維径は、その中央値で示すと50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。
【0063】
中間層23を構成する布の繊維間隔は、不織布の場合には、その中央値で示すと3〜300μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。織布や編布の場合には、中央値で示すと15μm〜1000μmが好ましく、30μm〜300μmがより好ましい。
【0064】
中間層23を構成する布の繊維の繊維長、繊維径、繊維径と長さの比率、繊維間隔は、単一であってもよいが、バラツキがある方が好ましい。その理由は、先述の外層11と同じである。また、布を構成する繊維の繊維径、繊維間隔の測定方法は、外層11と同じである。
【0065】
本願発明について、実施例等に基づいて、以下より詳細に説明する。なお、本願発明は、如何なる意味においても、以下の実施例等により限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
<実験例1>布の製造
原料と製造方法の異なる以下の(1)〜(4)の4種類の布を製造した。具体的には、以下のとおりに製造した。なお、布は、製造したのち、エチレンオキサイドガスで滅菌して使用した。
【0067】
(1)ESD(LA/CL)布:乳酸とカプロラクトンの共重合体(乳酸:50重量%、カプロラクトン:50重量%)から、エレクトロスピニング法で製造した不織布である。その繊維間隔は、平均6μmであり、比較的小さかった。
(2)ESD-B(LA/CL)布:乳酸とカプロラクトンの共重合体(乳酸:75重量%、カプロラクトン:25重量%)から、エレクトロスピニング法で製造した不織布である。その繊維間隔は、中間値が40μm以上であり、比較的大きかった。
(3)ESD(PGA)布:ポリグリコール酸から、エレクトロスピニング法で製造した不織布である。その繊維間隔は、中間値は40μm以上であり、比較的大きかった。
(4)K(PLA)布:ステレオコンプレックスポリ乳酸(L-ポリ乳酸:50重量%、D-ポリ乳酸:50重量%、分子量:約9万)の繊維からなる編布である。その編目は30〜1500μmの各サイズのものと、単一の布に複数の編目サイズを持つものを使用した。
【0068】
<実験例2>細胞浸潤の確認
実験例1で製造した布をラットの皮膚に埋植して、細胞の布への浸潤状況を調べた。具体的には以下のように実験した。
【0069】
(1)実験動物とその馴化
清水実験動物会社から購入した体重150gのWister系メスのラットを、実験動物として使用した。すべてのラットは、標準条件(日夜サイクル12時間、平均気温23℃、平均湿度50%)で飼育し、標準飼料と水は自由に摂取させた。実験前の1週間はこの条件で飼育した。
【0070】
(2)実験方法
以下のすべての外科的処置は、単一の外科医により、無菌条件下で行った。イソフルラン吸入と30mg/kgのペントバルビタール(ソムノペンチル(登録商標)、共立製薬株式会社)腹腔内注射による全身麻酔下に、ラットを腹臥位に固定した。脊中を剃毛した。5%クロルヘキシジンを含む80%エタノール液で皮膚を清浄化し、10%ポビドンヨード液で消毒した。
【0071】
ラットの脊中に10mmの皮膚切開を置き、皮下組織を鈍的に剥離して皮膚ポケットを作成した。「1種類の布/1つの皮膚ポケット」となるように布を皮膚ポケットに入れ、皮膚ポケットを5-0ナイロン単糸の単結節縫合で縫合閉鎖した。
【0072】
手術後14日と21日目に、ラットを100mg/kgのペントバルビタール腹腔内注射により安楽死させた。U字切開を皮膚ポケット周囲に置いて、再生足場の布を含む布を一塊に外科的切除し、切除標本とした。この切除標本を10%中性ホルマリン液中で固定し、標準的手法によりヘマトキシリン・エオジン(以下、HEと省略する。)染色の顕微鏡的薄切標本(4μm)とした。この薄切標本を光学顕微鏡で観察した。
【0073】
(3)実験結果
その結果を図3に示す。なお、図3(a)はESD(LA/CL)布を埋植してから21日後に切除した切除標本の顕微鏡写真を示し、図3(b)はESD-B(LA/CL)布を埋植してから14日後に切除した切除標本の顕微鏡写真を示し、図3(c)はESD(PGA)布を埋植してから14日後に切除した切除標本の顕微鏡写真を示し、図3(d)はK(PLA)布を埋植してから14日後に切除した切除標本の顕微鏡写真を示している。
【0074】
図3(a)に示すように、埋植してから21日たっても、細胞はESD(LA/CL)布の内側に浸潤していなかった。これに対して、図3(b)、図3(c)及び図3(d)に示すように、埋植してから14日目にもかかわらず、無数の細胞がESD-B(LA/CL)布、ESD(PGA)布及びK(PLA)布の全層に渡って浸潤していることが分かった
【0075】
<実験例3>補強層形成の確認
実験例1で製造した布の内部に間質細胞が浸潤して補強層(自己組織化した補強層)を形成するか否かを、イヌの腸骨動脈に堅く巻いた布への細胞の浸潤状況を調べることによって、調べた。具体的には以下のように実験した。
【0076】
(1)実験動物とその馴化
清水実験動物社から購入した体重が10kgの妊娠していない1歳のメスのビーグル犬を実験動物として使用した。実験期間中、イヌは個別に飼育し、実験前1週間以上は標準条件で飼育し、標準イヌ飼料と水を自由に摂取させた。
【0077】
(2)実験方法
以下のすべての外科的処置は、単一の外科チームにより無菌的条件で実施した。イヌを34mg/kgのペントバルビタール静脈内麻酔により基礎麻酔した。イヌにS字状の気管内挿管し、40%酸素とセボフルラン又はイソフルランの吸入麻酔で全身麻酔した。この全身麻酔下に、イヌを仰臥位に固定し、腹部体毛を剃毛した。5%クロルヘキシジンを含む80%エタノール液で皮膚を清浄化し、10%ポビドンヨード液で消毒した。
【0078】
腹部正中に15cmの開腹創を置いた。総腸骨動脈上の腹膜を切開し、腸骨動脈を露出した。動脈周囲の結合組織を除いたのち、ESD-B(LA/CL)布、ESD(PGA)布又はK(PLA)布を動脈周囲に堅く巻いた。腹膜切開縁を縫い合わせて、開腹創を2層縫合で閉鎖した。術後3〜7日間、2種類の抗生剤を術創の状態に合せて投与した。
【0079】
手術後4週目に、イヌを100mg/kgのペントバルビタール静脈内注射により安楽死させた。再開腹して、移植した再生足場を腸骨動脈の周囲組織と一塊の状態で外科的切除し、切除標本とした。この切除標本を10%中性ホルマリン液中で固定して、標準的手法によりHE染色し、薄切標本(4μm)とした。この薄切標本を光学顕微鏡で観察した。
【0080】
(3)実験結果
その結果を図4に示す。なお、図4(a)はESD-B(LA/CL)布を巻きつけてから4週後に切除した切除標本の顕微鏡写真を示し、図4(b)はESD(PGA)布を巻きつけてから4週後に切除した切除標本の顕微鏡写真を示している。図4(c)は、K(PLA)布を巻きつけてから4週後に切除した切除標本の顕微鏡写真を示している。
【0081】
図4(a)に示すように、無数の間質細胞がESD-B(LA/CL)布の全層に渡って浸潤していた。また、図4(b)に示すように、無数の間質細胞がESD(PGA)布の全層に渡って浸潤していた。さらに、図4(c)に示すように、無数の間質細胞がK(PLA)布の全層に渡って浸潤していた。
【0082】
この実験の結果から、実験例1で製造した布は、大動脈周囲に巻けばその壁の補強に有用であることが分かった。
【0083】
<実験例4>動脈壁断端縫合部の血管補強効果の確認
実験例1で製造した布によって形成した補強層が動脈壁断端の縫合部の動脈血圧に対する補強効果を有するか否かを、イヌの半周まで切開された大動脈周囲に巻いた布への細胞の浸潤状況を調べることによって、調べた。具体的には以下のように実験した。
【0084】
(1)実験動物とその馴化
実験例3と同様にイヌを馴化して使用した。
【0085】
(2)実験方法
実験例3と同様にしてイヌを開腹し、大動脈上の腹膜を切開した。大動脈は、腎動脈分岐部から総腸骨動脈分岐部までを露出して周囲組織から剥離した。この剥離の間、腰動脈は結紮切離した。
【0086】
低分子へパリン2000単位を静脈内注射したのち、大動脈を2つの鉗子で閉鎖し、その間で大動脈壁の半周を切開した。大動脈内腔をヘパリン生食で洗浄し、大動脈壁切開縁を6-0ポリプロピレンによる3つの単結節縫合で縫合した。
【0087】
縫合した壁を補強する目的で、K(PLA)布をこの縫合線上に沿って大動脈壁周囲に3重に強く巻き付け、止血のために指で5分間圧迫した。腹膜の切開縁を縫い合わせ、開腹創を2層に縫合閉鎖した。術後は、1日当たり2000単位の低分子へパリンと100mgアスピリンあるいは1mgワーファリンの抗凝固療法を行った。
【0088】
手術後4週目に、イヌを100mg/kgのペントバルビタール静脈内注射により安楽死させた。再開腹して、移植した再生足場を大動脈の周囲組織と一塊の状態で外科的に切除し、切除標本とした。この切除標本を肉眼で評価したのち、10%中性ホルマリン液中で固定して、標準的手法によりHE染色し、薄切標本(4μm)とした。この薄切標本を光学顕微鏡で観察した。
【0089】
(3)実験結果
肉眼観察による結果、大動脈の切開創の周囲からは出血は確認できなかった。すなわち、大動脈壁を半周まで切開し、3つの単結紮で縫い合わせたのち、K(PLA)布をその切開創周囲に巻いた場合には、4週間の間にK(PLA)布は切開創部分を補強して、切開縁を良好に修復し、血圧に抗して大動脈からの出血を防止できることが確認できた。なお、3つの単結紮で縫い合わせただけで、血圧に抗して切開創部分からの大量出血を防止できないことは以前から分かっている。
【0090】
また、顕微鏡観察の結果を図5に示す。なお、図5(a)はK(PLA)布を巻きつけてから4週後に切除した切除標本の切開創縁部分の顕微鏡写真を示し、図5(b)はその部分拡大図を示している。
【0091】
図5(a)と図5(b)に示すように、内膜と中膜は再生され、切開創縁は平坦で動脈瘤は見られないことから、大動脈壁切開創縁は良好に修復されていた。
【0092】
これらの結果から、実験例1で製造したK(PLA)布を大動脈壁切開創縁の周囲に巻くことによって、大動脈の血圧に抗して4週間の間に大動脈切開創縁を補強し、良好に修復できることが分かった。
【0093】
<実験例5>再生足場への利用可能性の確認
実験例1で製造した布が、イヌの大動脈の再生足場として使用できるか否かを、イヌの大動脈周囲壁全周に沿って完全に切離された部分に布を巻き、布への細胞の浸潤状況を調べることによって、調べた。具体的には以下のように実験した。
【0094】
(1)実験動物とその馴化
実験例3と同様にイヌを馴化して使用した。
【0095】
(2)実験方法
実験例4と同様に大動脈を周囲組織から剥離し、大動脈を2つの鉗子で把持した。この2つの鉗子の間で大動脈の壁全周に沿って完全に切離した。大動脈の2つの断端をヘパリン生食で洗浄し、長さ4cm、径8mmのESD(LA/CL)布のチューブ(内層)を大動脈の2つの断端の間に間置し、大動脈とチューブを端々に吻合した。すなわち、チューブ断端と大動脈壁断端を6-0ポリプロピレン単糸縫合糸の12針縫合で縫い合わせた。
【0096】
チューブ上と吻合部分上を幅6cmで長さ5〜15cmのK(PLA)布の筒状体(外層)で巻いて補強した。さらに、吻合部を幅3cmのESD(PGA)布で2重に巻いて保護した(保護層)。最後に、腹膜切開縁を縫い合わせて、開腹創を2層縫合で閉鎖した。術後は、1日当たり2000単位の低分子へパリンと100mgアスピリン又は1mgワーファリンの抗凝固療法を行った。
【0097】
イヌは手術後10ヶ月後に100mg/kgのペントバルビタール静脈内注射により安楽死させた。再開腹して、移植した再生足場を大動脈の周囲組織と一塊となる状態で外科的切除し、肉眼的、顕微鏡的に検査する切除標本とした。
【0098】
肉眼的評価の後、この切除標本を10%中性ホルマリン液中で固定して、標準的手法によりHE染色又はエラスチカ・ワンギーソン(Elastica-van Gieson、以下、EGと省略する。)染色し、顕微鏡的薄切標本(4μm)とした。この薄切標本を光学顕微鏡で観察した。
【0099】
(3)実験結果
肉眼観察による結果、再生された大動脈は大動脈の機能を果たしていること、すなわち、再生大動脈は、大動脈血が流れ、血栓のない内腔を持っていることが確認できた。
【0100】
また、顕微鏡観察の結果を図6に示す。なお、図6(a)〜(c)は再生大動脈壁の顕微鏡写真であり、図6(a)はHE染色したもの、図6(b)はEG染色したもの、図6(c)は図6(b)の部分拡大図である。また、図6(d)〜(f)は、自然の大動脈壁の顕微鏡写真であり、図6(d)はHE染色したもの、図6(e)はEG染色したもの、図6(f)は図6(e)の部分拡大図である。さらに、図6(c)及び(f)の矢印は、大動脈の中膜層を示している。加えて、図6(g)は、同じ再生大動脈壁の他の部分の拡大図(HE染色)である。
【0101】
図6(a)に示すように、再生大動脈は内膜、中膜、外膜から構成されており、図6(d)に示す自然の大動脈の構造と非常に類似していた。また、図6(b)及び図6(c)に示すように、再生された中膜は、自然の中膜と同様に、弾性繊維や平滑筋細胞に富んでいた。さらに、図6(g)に示すように、少量のポリマーが残存していても、動脈壁の再生は良好であった。
【0102】
これらの結果から、実験例1で製造したESD(LA/CL)布を内層とし、K(PLA)布を外層とする大動脈が全管状の形態で再生できることが分かった。なお、実験例2及び実験例3の結果から、外層を構成するK(PLA)布が数週間以内に自己生体組織化した補強層となり、この自己組織化した補強層が劣化するまでの長期に渡って内層であるESD(LA/CL)布を大動脈血圧に対して補強し、補強層が補強しているうちに、大動脈血圧に対して十分な強度を持つ中膜(これは再生に非常に長期を要する。)が再生されたと考えられる。
【0103】
<実験例6>性能比較
医療用基材の外層を構成する材料の違いがその性能に与える影響を、人工血管を作製してイヌの動脈に移植することによって、調べた。具体的には以下のように実験した。
【0104】
(1)実験動物とその馴化
清水実験動物社から購入したビーグル犬(体重7kg〜14kgの成犬)を実験動物として使用した。実験期間中、イヌは個別に飼育し、実験前1週間以上は標準条件で飼育し、標準イヌ飼料と水を自由に摂取させた。
【0105】
(2)人工血管の作製
外層にステレオコンプレックスポリ乳酸を使用した実施例1〜実施例5と、ステレオコンプレックスポリ乳酸以外のポリ乳酸を使用した比較例とを作製し、その性能を比較した。なお、作製した人工血管はエチレンオキサイドガスで滅菌して実験に使用した。以下に、その詳細を説明する。
【0106】
1)実施例1
内層、中間層、外層となる布をそれぞれ筒状に丸めて、その端部を6-0ポリプロピレン単糸縫合糸の12針縫合で縫い合わせてチューブを作製した。これらチューブを手で嵌め合わせて、人工血管サンプル(長さ30mm、内径7.5mm)を作製した。
【0107】
外層:
ステレオコンプレックスポリ乳酸繊維の編布
ステレオコンプレックスポリ乳酸の分子量:約20万、
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点:200〜230℃
モノフィラメントの直径:18〜22μm(22μmが多い)
モノフィラメント数/撚糸:60本
撚糸の繊維間隔:50〜2000μm
布の巻数:3回
【0108】
中間層:
PLA/CL(75%/25%)共重合体繊維のエレクトロスピニング不織布
繊維間隔:55μm(繊維間隔を拡張するポリマー=スペーサーを使用)
布の厚さ:180μm
布の巻数:2回
【0109】
内層:
PLA/CL(75%/25%)繊維50重量%とコラーゲン繊維50重量%とのエレクトロスピニング不織布
繊維径:0.7μm
繊維間隔:11μm
布の厚さ:480μm
【0110】
2)実施例2
実施例1と同様にして、人工血管サンプル(長さ35mm、内径5.5mm)を作製した。
【0111】
外層:
ステレオコンプレックスポリ乳酸繊維の編布
ステレオコンプレックスポリ乳酸の分子量:約20万
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点:200〜230℃
モノフィラメントの直径:16.5μm
モノフィラメント数/撚糸:48本
撚糸の間隔:240μm
布の巻数:3回
【0112】
中間層:
PLA/CL(75%/25%)のエレクトロスピニング不織布
繊維間隔:55μm(スペーサーを使用)
布の厚さ:180μm
布の巻数:2回
【0113】
内層:
PLA/CL(75%/25%)繊維50重量%+コラーゲン繊維50重量%のエレクトロスピニング混合不織布
繊維径:0.7μm
繊維間隔:11μm
布の厚さ:330μm
【0114】
3)実施例3
実施例1と同様にして、人工血管サンプル(長さ40mm、内径7.0mm)を作製した。
【0115】
外層:
ステレオコンプレックスポリ乳酸繊維の編布
ステレオコンプレックスポリ乳酸の分子量:約20万
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点:200〜230℃
モノフィラメント直径:12.5μm
モノフィラメント数/撚糸:12本
撚糸の繊維間隔:1500μm
布の巻数:3回
【0116】
中間層:
PLA/CL(75%/25%)共重合体繊維のエレクトロスピニング不織布
繊維間隔:55μm(スペーサーを使用)
布の厚さ:180μm
布の巻数:2回
【0117】
内層:
PLA/CL(75%/25%)繊維50重量%+コラーゲン繊維50重量%のエレクトロスピニング混合不織布
繊維径:0.8μm
繊維間隔:6.5μm
布の厚さ:240μm
【0118】
4)実施例4
実施例1と同様にして、人工血管サンプル(長さ30mm、内径5.0mm)を作製した。
【0119】
外層:
ステレオコンプレックスポリ乳酸繊維の編布
ステレオコンプレックスポリ乳酸の分子量:約20万
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点:200〜230℃
モノフィラメント直径:12.5μm
モノフィラメント数/撚糸:12本
撚糸の間隔:360μm
布の巻数:3回
【0120】
中間層:
PLA/CL(75%/25%)共重合体繊維のエレクトロスピニング不織布
繊維間隔:42μm(繊維間隔を拡張するポリマー=スペーサーを使用)
布の厚さ:170μm
布の巻数:3回
【0121】
内層:
PLA/CL(75%/25%)繊維50重量%+コラーゲン繊維50重量%のエレクトロスピニング不織布
繊維径:4.7μm
繊維間隔:35μm(スペーサーを使用)
布の厚さ:120μm
【0122】
5)実施例5
実施例1と同様にして、人工血管サンプル(長さ30mm、内径5.0mm)を作製した。
【0123】
外層:
ステレオコンプレックスポリ乳酸繊維の編布
ステレオコンプレックスポリ乳酸の分子量:約15万
ステレオコンプレックスポリ乳酸の結晶融点:200〜230℃
モノフィラメント直径:16.5μm
モノフィラメント数/撚糸:36本
撚糸の繊維間隔:240μm
布の巻数:1回
【0124】
中間層:
なし
【0125】
内層:
PLA/CL(50%/50%)溶液を真空乾燥して作製した多孔体
孔の直径:90%が直径250μm以下
布の厚さ:580μm(外層を含む。)
【0126】
6)比較例
実施例1と同様にして、人工血管サンプル(長さ30mm、内径6.0mm)を作製した。
【0127】
外層:
L-ポリ乳酸繊維の編布
L-ポリ乳酸繊維の分子量:約20万
L-ポリ乳酸繊維の結晶融点:約170〜180℃
モノフィラメント直径:16.5μm
モノフィラメント数/撚糸:12本
撚糸の繊維間隔:360μm
布の巻数:3回
【0128】
中間層:
PLA/CL(75%/25%)共重合体繊維のエレクトロスピニング不織布
繊維間隔:42μm(繊維間隔を拡張するポリマー=スペーサーを使用)
布の厚さ:170μm
布の巻数:3回
【0129】
内層:
PLA/CL(75%/25%)共重合体繊維のエレクトロスピニング不織布
繊維径:4.7μm
繊維間隔:35μm(スペーサーを使用)
布の厚さ:360μm
【0130】
(3)実験方法
実験例4と同様に、腹部大動脈(以下、大動脈と省略する。)を周囲組織から剥離し、大動脈を2つの鉗子で把持した。この2つの鉗子の間で大動脈の壁全周に沿って完全に切離した。大動脈の2つの断端をヘパリン生食で洗浄し、人工血管を大動脈の2つの断端の間に間置し、大動脈と人工血管を端々に吻合した。すなわち、人工血管断端と大動脈壁断端を6-0ポリプロピレン単糸縫合糸の12針縫合で縫い合わせた。最後に、腹膜切開縁を縫い合わせて、開腹創を2層縫合で閉鎖した。術後は、1日当たり2000単位の低分子へパリンと100mgアスピリン又は1mgワーファリンの抗凝固療法を行った。
【0131】
手術10ヶ月後に、イヌを100mg/kgのペントバルビタール静脈内注射により安楽死させた。安楽死させたイヌを再開腹して、移植した人工血管をその周囲組織と一塊となる状態で外科的に切除し顕微鏡的に検査する切除標本とした。
【0132】
切除標本を10%中性ホルマリン液中で固定して、標準的手法によりHE染色又はエラスチカ・ワンギーソン(Elastica-van Gieson、以下、EGと省略する。)染色し、顕微鏡的薄切標本(4μm)とした。この薄切標本を光学顕微鏡で観察した。
【0133】
(4)実験結果
イヌから採取した実施例1〜実施例5及び比較例の人工血管を移植した部分を、肉眼観察した結果、及び切除標本を顕微鏡で観察した結果を以下に略記する。
【0134】
1)実施例1の結果
肉眼観察では、動脈瘤や狭窄などの異常所見は認められなかった。また、顕微鏡観察の結果(HE染色)を図7に示す。図7に示すように、顕微鏡観察では、外層を構成するステレオコンプレックスポリ乳酸繊維はその多くが残存した。一方、内層や中間層を構成するPLA/CL繊維はほとんど残存しなかった。
【0135】
外層は、繊維間隔が広く、編糸(モノフィラメントを60本集めた撚糸)が太いからか、内腔面の凹凸がやや大きかった。そのため、血管壁に血栓が出来るリスクが高いはずだが、通常の人工血管の蛇腹よりはよかった。内層は適切な厚さで、比較的縫い易かった。全体評価はよかった。
【0136】
2)実施例2の結果
肉眼観察では、動脈瘤や狭窄などの異常所見は認められなかった。また、顕微鏡観察の結果(HE染色)を図8に示す。図8に示すように、顕微鏡観察では、外層を構成するステレオコンプレックスポリ乳酸繊維はその多くが残存した。一方、内層や中間層を構成するPLA/CL繊維はほとんど残存しなかった。
【0137】
外層は、その重なり具合により斑ができ、栄養血管が外側から侵入し易い部分とし難い部分に分かれた。内層は比較的縫い易かった。全体評価はよかった。
【0138】
3)実施例3の結果
肉眼観察では、動脈瘤や狭窄などの異常所見は認められなかった。また、顕微鏡観察の結果(HE染色)を図9示す。図9に示すように、顕微鏡観察では、外層を構成するステレオコンプレックスポリ乳酸繊維はその多くが残存した。一方、内層や中間層を構成するPLA/CL繊維はほとんど残存しなかった。
【0139】
外層を構成する布の繊維間隔が十分に広かったため、栄養血管の外側からの侵入もよかった。一部層の重なり具合による斑が認められたが、無視できる範囲であった。全体評価はよかった。
【0140】
4)実施例4の結果
肉眼観察では、動脈瘤や狭窄などの異常所見は認められなかった。顕微鏡観察(図示せず。)では、外層を構成するステレオコンプレックスポリ乳酸繊維はその多くが残存した。一方、内層や中間層を構成するPLA/CL繊維はほとんど残存しなかった。
【0141】
外層を構成する布の繊維間隔が十分に広かったため、栄養血管の外側からの侵入もよかった。一部層の重なり具合による斑が認められたが、無視できる範囲であった。内層の繊維間隔や太さはよかった。また、内層の厚さも適切な範囲に収まっていた。全体評価はよかった。
【0142】
5)実施例5の結果
肉眼観察では、動脈瘤や狭窄などの異常所見は認められなかった。また、顕微鏡観察の結果(EG染色)を図10に示す。図10に示すように、顕微鏡観察では、弾性繊維と平滑筋細胞が再生され、動脈壁の再生は良好であることが分かった。なお、手術的に縫合する場合は自然の動脈に近かった。外層を構成する布の繊維間隔が十分に広かったためか、栄養血管の外側からの侵入もよかった。総合評価は、実施例の中で最もよかった。
【0143】
6)比較例の結果
肉眼観察では、全体に動脈瘤の形成が認められ、血管壁には血栓が認められた。また、顕微鏡観察の結果を図11に示す。なお、図11(a)はHE染色の結果であり、図11(b)EG染色の結果である。図11に示すように、顕微鏡観察では、血管壁に新旧の血栓、瘢痕化と一部に炎症が認められた。そのため、全体評価は悪かった。その原因として、外層強度の早期劣化が考えられる。
【0144】
なお、実施例1〜実施例5、比較例のほか、表1に記載の外層の布、表2に記載の中間層の布、表3に記載の内層の易生体親和性布を組み合わせて様々な構成のサンプルを作製して、イヌに移植し、6ヶ月以上(最長は18ヶ月後)に渡って超音波診断装置により経時変化を観察した。そして、その観察結果を表4にまとめて示した。表1にある実施例の欄にはその内の成功例の外層の構成、モノフィラメント直径、モノフィラメント数/撚糸、作製方法、各撚糸の間隔、厚さ、巻き数を示した。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】
【0149】
表4に示すように、ステレオコンプレックスポリ乳酸を外層に使用した人工血管(合計26個)は、観察期間である6〜16ヶ月の間に、動脈硬化、狭窄・閉塞、破裂、動脈瘤化などの異常な経過の動脈再生が全く認められなかった。反対に、ステレオコンプレックスポリ乳酸以外のポリ乳酸を使用した人工血管(合計24個)は、いずれも観察期間内に異常が認められた(このうち、22匹は6ヶ月以内に異常が認められた。)。
【0150】
このように、ステレオコンプレックスポリ乳酸からなる外層を有する人工血管を移植することによって、大動脈を完全に再生することができた。これに対して、同じ乳酸を原料とする他のポリ乳酸からなる外層を有する人工血管は、大動脈をほとんど再生できなかった。すなわち、外層を構成するポリ乳酸の違いが、大動脈の再生と関係していることが分かった。
【0151】
なお、本発明の医療用基材は、上記実施の形態に限定されない。例えば、図1及び図2に示す管形状のほか、例えば、シート状のものであってもよい。シート状の医療用基材は、例えば、患部に巻きつけて、その再生に使用する。この医療用基材の場合、最も患部の内側に配置された内層(最内層)は、内皮細胞等が生着することによって、患部の再生を促進する。一方、最内層の外側の層、すなわち循環器系の外膜側に配置される層は、患部が再生するまで医療用基材の強度を維持するとともに、栄養血管を最内層に達する又は最内層近傍まで入り込むように多孔質形状に形成されているため、栄養血管の成長と生着した内皮細胞等の生育を助け、患部の再生を促進する。
【0152】
また、本発明の医療用基材は、図1及び図2に示す外層、内層及び中間層を備えたもののほか、必要に応じて他の層を備えていてもよい。例えば、医療用基材を大動脈に吻合した際に、吻合部を保護するための保護層を設けてもよい。また、内層の周りに外層を複数回重ね合せてもよい。
【0153】
さらに、外層、内層、中間層は布以外の薄い多孔体であってもよく、多孔体である場合には、特に限定することなく、公知の方法により製造できる。
【0154】
上記の実施の形態では、布を縫製して筒状にしていたが、エレクトロスピニング等の製造方法や横編機等により、予め筒状に製造してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の医療用基材は、血液によって圧力が掛かる循環器系の再生に適しており、中でも高い血圧が掛かる太い動脈の再生に特に適している。
【符号の説明】
【0156】
1、2 医療用基材
11、21 外層
12、22 内層
23 中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11