特許第6761821号(P6761821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6761821代謝性グルタミン酸受容体モジュレーターとしてのエチニル誘導体
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  • 特許6761821-代謝性グルタミン酸受容体モジュレーターとしてのエチニル誘導体 図000056
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761821
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】代謝性グルタミン酸受容体モジュレーターとしてのエチニル誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/10 20060101AFI20200917BHJP
   C07D 471/10 20060101ALI20200917BHJP
   C07D 487/10 20060101ALI20200917BHJP
   C07D 491/107 20060101ALI20200917BHJP
   C07D 491/20 20060101ALI20200917BHJP
   A61K 31/527 20060101ALI20200917BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20200917BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20200917BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20200917BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20200917BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20200917BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20200917BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200917BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   C07D401/10CSP
   C07D471/10 102
   C07D487/10
   C07D491/107
   C07D491/20
   A61K31/527
   A61P1/08
   A61P3/10
   A61P25/00
   A61P25/16
   A61P25/22
   A61P25/24
   A61P35/00
   A61P43/00 111
【請求項の数】17
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-564709(P2017-564709)
(86)(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公表番号】特表2018-524305(P2018-524305A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】EP2016066393
(87)【国際公開番号】WO2017009275
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】15176854.6
(32)【優先日】2015年7月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ビーマンス,バルバラ
(72)【発明者】
【氏名】グーバ,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ヤーシュケ,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン,ローター
(72)【発明者】
【氏名】オハラ,フィオン
(72)【発明者】
【氏名】リッチ,アントーニオ
(72)【発明者】
【氏名】リュエル,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フィエイラ,エリック
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/128307(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/104271(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/044075(WO,A1)
【文献】 特表2013−523854(JP,A)
【文献】 Synthesis,2004年,No.11,pp.1864-1868
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化35】

[式中、
は、1〜7個の炭素原子を含有しているアルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
nは、0、1又は2であり;
V/Uは、互いに独立して、O又はCHであり、ここで、V及びUは、同時にOであってはならず;
Lは、下記:
【化36】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体。
【請求項2】
請求項1記載の式IA:
【化37】

[式中、
は、1〜7個の炭素原子を含有しているアルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
Lは、下記:
【化38】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体。
【請求項3】
化合物が、下記:
(8S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−イソキノリン−8,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,1’−テトラリン]−2,4−ジオン
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−キノリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−イソキノリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−キナゾリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(8S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−エチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−イソキノリン−8,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[1,5,6,7−テトラヒドロインダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’,2−ジメチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−インダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン、又は
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1,1’−ジメチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−インダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
である、請求項1及び2記載の式IAの化合物。
【請求項4】
請求項1記載の式IB:
【化39】

[式中、
は、1〜7個の炭素原子を含有しているアルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
Lは、下記:
【化40】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体。
【請求項5】
化合物が、下記:
(6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,1’−インダン]−2,4−ジオン、又は
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[6,7−ジヒドロシクロペンタ[b]ピリジン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
である、請求項1及び4記載の式IBの化合物。
【請求項6】
請求項1記載の式IC:
【化41】

[式中、
は、1〜7個の炭素原子を含有しているアルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
Lは、下記:
【化42】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体。
【請求項7】
化合物が、下記:
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1’−メチル−スピロ[クロマン−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン、又は
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[2,3−ジヒドロピラノ[2,3−b]ピリジン−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
である、請求項1及び6記載の式ICの化合物。
【請求項8】
請求項1記載の式ID:
【化43】

[式中、
は、1〜7個の炭素原子を含有しているアルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
Lは、下記:
【化44】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体。
【請求項9】
化合物が、下記:
(6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,4’−イソクロマン]−2,4−ジオン
である、請求項1及び8記載の式IDの化合物。
【請求項10】
請求項1記載の式IE:
【化45】

[式中、
は、1〜7個の炭素原子を含有しているアルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
Lは、下記:
【化46】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体。
【請求項11】
化合物が、下記:
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロ−1H−シクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1,1’−ジメチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン、又は
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’,2−ジメチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
である、請求項1及び10記載の式IEの化合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に定義されているとおりの式Iの化合物の製造プロセスであって、以下:
b)式:
【化47】

で示される化合物を、DMF中、NaH又はCsCOの存在下、R−Iでアルキル化して、式:
【化48】

[式中、Rは、1〜7個の炭素原子を含有しているアルキルであり、そして残りの置換基は、先に記載されている]で示される化合物にする工程、又は
所望であれば、得られた化合物を薬学的に許容し得る酸付加塩に変換する工程
を含む、方法。
【請求項13】
治療上活性な物質としての使用のための、請求項1〜11のいずれか一項記載の式Iの化合物。
【請求項14】
パーキンソン病、不安症、嘔吐、強迫性障害、自閉症、神経保護、癌、うつ病及び2型糖尿病の処置における使用のための、請求項1〜11のいずれか一項記載の式Iの化合物。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項記載の式Iの化合物及び薬学的に許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項16】
パーキンソン病、不安症、嘔吐、強迫性障害、自閉症、神経保護、癌、うつ病及び2型糖尿病の処置用の医薬の製造のための、請求項1〜11のいずれか一項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項17】
パーキンソン病、不安症、嘔吐、強迫性障害、自閉症、神経保護、癌、うつ病及び2型糖尿病の処置のための、請求項15記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I:
【化1】

[式中、
は、低級アルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
nは、0、1又は2であり;
V/Uは、互いに独立して、O又はCHであり、ここで、V及びUは、同時にOであってはならず;
Lは、下記:
【化2】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物に、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩に、ラセミ混合物に、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体に関する。
【0002】
驚くべきことに、一般式Iの化合物が、代謝型グルタミン酸受容体4(mGluR4)の陽性アロステリックモジュレーター(PAM)であることが見出された。
【0003】
代謝型グルタミン酸受容体4は、ヒトにおいて、GRM4遺伝子によってコードされるタンパク質である。
【0004】
GRM6、GRM7及びGRM8と共に、それは、代謝型グルタミン酸受容体ファミリーのグループIIIに属し、かつGαi/oタンパク質の活性化を介してアデニル酸シクラーゼに負の共役をしている。それは、主にシナプス前終末上で発現され、自己受容体又はヘテロ受容体として機能し、そして、その活性化は、シナプス前終末からの伝達物質の放出の減少を導く。現在、mGluR4は、主に、その固有の分布及びこの受容体の活性化が多くのCNS及び非CNS経路において重要な調節的役割を果たしているという最新の知見に基づいて大きな関心を集めている(Celanire S, Campo B, Expert Opinion in Drug Discovery, 2012)。
【0005】
グループIIIのmGluRのリガンド結合ドメインにおける類似性は、この受容体の選択的なオルソステリックアゴニストを同定する課題を生み出している(この領域においていくらかの進展が成し遂げられてはいるが)。しかしながら、オルソステリックアゴニストよりむしろ陽性アロステリックモジュレーター(PAM)をターゲットとすることは、mGluR間で排他的に選択的である分子を同定するためのより広範な機会を提供する。
【0006】
mGluR4 PAMは、非ドーパミン作動性アプローチを介して、パーキンソン病における運動(及び非運動)症状の処置のための有望な治療薬として及び疾患修飾薬として浮上しつつある。
【0007】
パーキンソン病は、黒質(SN)におけるドーパミン作動性ニューロンの喪失をもたらす進行性の神経変性疾患である。この疾患におけるドーパミンの枯渇の一つの結果は、動作緩徐、失動症、震え、歩行障害及び平衡障害を含む一連の運動障害である。PDに関連する多くの他の非運動症状があるが、これらの運動障害は、この疾患の特徴を形成する。この疾患の過程の早期に、PD症状は、ドーパミンD2受容体アゴニストのレボドパ(levodopa)又はモノアミン酸化酵素B阻害剤を使用したドーパミン置換又は増強によって効果的に処置される。しかしながら、疾患が進行するにつれて、これらの薬剤は、運動症状を制御する効果が弱くなる。加えて、それらの使用は、ドーパミンアゴニスト誘発ジスキネジアを含む有害作用の出現によって制限される。その結果、運動症状の制御の有効性を改善する、PDの処置のための新たなアプローチが依然として必要とされている。
【0008】
代謝型グルタミン酸受容体4(mGluR4)の活性化は、パーキンソン病への潜在的な治療アプローチとして提唱されてきた。グループIIIのmGluRのメンバーであるmGluR4は、主として、運動を制御する基底核回路のいくつかの重要な位置において発現されるシナプス前グルタミン酸受容体である。グループIIIを選好するアゴニストを用いたmGluR4の活性化は、おそらくGABA及びグルタマートのそれぞれの放出を減少させることによって、阻害性及び興奮性シナプス後電位を減少させる。
【0009】
黒質線条体ニューロンの進行中の変性を軽減しながらパーキンソニズムの運動症状を緩和する新規な薬物の探究について特に関心が高い。オルソステリックmGluR4アゴニストL−AP4は、PDの6−OHDA齧歯類モデルにおいて神経保護作用を示し、そして、最初の陽性アロステリックモジュレーター(−)−PHCCCは、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)で処理したマウスにおいて黒質線条体の変性を低下させた。これらの研究は、mGluR4活性化剤が、PDの対症療法のためだけでなく、潜在的にこの適応症のための疾患修飾剤としての有効なアプローチを構成することを示唆する、説得力のある前臨床的知見を提供する。
【0010】
選択的mGluR4モジュレーターの神経保護作用はまた、Neuroreport, 19(4), 475-8, 2008, Proc.Natl. Acad. Sci, USA, 100(23), 13668-73, 2003 及び J.Neurosci. 26(27), 7222-9, 2006 及び Mol. Pharmacol. 74(5), 1345-58, 2008 にも記載されていた。
【0011】
不安障害は、世界で最も一般的な精神疾患であり、これはパーキンソン病の併存症である(Prediger R, et al. Neuropharmacology 2012;62:115-24)。過剰なグルタミン酸神経伝達は、不安の病態生理学の1つの重要な特徴である。不安及び気分障害ならびに過剰な脳興奮性の抑圧に関与する脳内領域のmGluR4のシナプス前局在に基づいて、mGluR4活性化剤は、新世代の抗不安治療薬の代表となり得る(Eur. J. Pharmacol., 498(1-3), 153-6, 2004)。
【0012】
Addexは、2010年に、ADX88178が不安症の2種の前臨床齧歯類モデル:マウスのビー玉埋め試験とマウス及びラットのEPMとにおいて活性であったことを報告した。また、ADX88178はまた、経口投与後に、ラットEPM試験において抗不安様プロファイルを呈した。
【0013】
mGluR4モジュレーターはまた、抗うつ作用を発揮することも示された(Neuropharmacology, 46(2), 151-9, 2004)。
【0014】
加えて、mGluR4モジュレーターはまた、グルカゴン分泌阻害に関与することも示された(Diabetes, 53(4), 998-1006, 2004)。それゆえ、mGluR4のオルソステリック又は陽性アロステリックモジュレーターは、その血糖低下作用を通して、2型糖尿病の処置に対して可能性を有する。
【0015】
さらに、mGluR4は、前立腺癌細胞株(Anticancer Res. 29(1), 371-7, 2009)又は結腸直腸癌(Cli. Cancer Research, 11(9)3288-95, 2005)において発現されることが示された。mGluR4モジュレーターは、それゆえ、癌の処置に対しても潜在的役割を有し得る。
【0016】
mGluR4 PAMの他の提唱されている効果は、嘔吐、強迫性障害、拒食症及び自閉症の処置のために期待できる。
【0017】
式Iの化合物は、有益な治療特性を有することによって区別される。これらは、GluR4受容体のアロステリックモジュレーターが関わる障害の治療又は予防において使用することができる。
【0018】
mGluR4受容体のアロステリックモジュレーターである化合物に対する最も好ましい適応症は、パーキンソン病、不安症、嘔吐、強迫性障害、拒食症、自閉症、神経保護、癌、うつ病及び2型糖尿病である。
【0019】
本発明は、式Iの化合物に及びそれらの薬学的に許容し得る塩に、薬学的に活性な物質としてのこれらの化合物に、それらの製造プロセスに、ならびにパーキンソン病、不安症、嘔吐、強迫性障害、自閉症、神経保護、癌、うつ病及び2型糖尿病のようなmGluR4受容体のアロステリックモジュレーターが関わる障害の治療又は予防におけるそれらの使用に、さらに式Iの化合物を含有する医薬組成物に関する。
【0020】
本発明のさらなる目的は、パーキンソン病、不安症、嘔吐、強迫性障害、拒食症、自閉症、神経保護、癌、うつ病及び2型糖尿病の治療又は予防のための方法であって、それを必要とする哺乳動物に有効量の式Iの化合物を投与することを含む方法である。
【0021】
よりさらに、本発明は、すべてのラセミ混合物、すべてのそれらの対応するエナンチオマー及び/もしくは光学異性体、又は水素、フッ素、炭素、酸素もしくは窒素の同位体を含有している類似体を含む。
【0022】
本明細書において使用される一般用語の以下の定義は、問題となっている用語が単独で現れるか又は組み合わせで現れるかにかかわらず適用される。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「低級アルキル」は、1〜7個の炭素原子を含有している飽和直鎖又は分岐鎖基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、2−ブチル、t−ブチルなどを表す。好ましいアルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する基である。
【0024】
用語「5員又は6員ヘテロアリール基」は、下記:
【化3】

より選択され、ここで、これらのヘテロアリール基は、スピロ基の右側部分に結合している。
【0025】
以下の式I:
【化4】

で示される化合物は、上記の定義に従って提供され得る。
【0026】
用語「薬学的に許容し得る酸付加塩」は、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタン−スルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのような無機酸及び有機酸との塩を包含する。
【0027】
本発明の1つの実施態様は、式IA:
【化5】

[式中、
は、低級アルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
Lは、下記:
【化6】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体、例えば、以下の化合物:
(8S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−イソキノリン−8,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,1’−テトラリン]−2,4−ジオン
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−キノリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−イソキノリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−キナゾリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(8S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−エチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−イソキノリン−8,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[1,5,6,7−テトラヒドロインダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’,2−ジメチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−インダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン、又は
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1,1’−ジメチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−インダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオンである。
【0028】
本発明の1つのさらなる実施態様は、式IB:
【化7】

[式中、
は、低級アルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
Lは、下記:
【化8】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体、例えば、以下の化合物:
(6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,1’−インダン]−2,4−ジオン、又は
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[6,7−ジヒドロシクロペンタ[b]ピリジン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオンである。
【0029】
本発明の1つのさらなる実施態様は、式IC:
【化9】

[式中、
は、低級アルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
Lは、下記:
【化10】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体、例えば、以下の化合物:
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1’−メチル−スピロ[クロマン−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン、又は
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[2,3−ジヒドロピラノ[2,3−b]ピリジン−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオンである。
【0030】
本発明の1つのさらなる実施態様は、式ID:
【化11】

[式中、
は、低級アルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
Lは、下記:
【化12】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体、例えば、以下の化合物:
(6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,4’−イソクロマン]−2,4−ジオンである。
【0031】
本発明の1つのさらなる実施態様は、式IE:
【化13】

[式中、
は、低級アルキルであり;
は、フェニル又はピリジニルであり、ここで、該ピリジニル基中のN原子は、異なる位置にあってもよく;
Lは、下記:
【化14】

より選択される5員又は6員ヘテロアリール基である]で示される化合物、又はその薬学的に許容し得る塩もしくは酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応するエナンチオマー及び/もしくはその光学異性体及び/もしくは立体異性体、例えば、以下の化合物:
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロ−1H−シクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1,1’−ジメチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン、又は
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’,2−ジメチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオンである。
【0032】
本発明の式Iの化合物の調製は、逐次又は収束合成経路で実施され得る。本発明の化合物の合成を以下のスキーム1に示す。本反応及び生じた生成物の精製を実施するために必要な技能は、当業者に公知である。以下のプロセスの説明において使用される置換基及び指数は、本明細書に先に示した意味を有する。
【0033】
式Iの化合物は、以下に示す方法によって、実施例に示す方法によって、又は同様の方法によって製造されることができる。個別の反応工程についての適切な反応条件は、当業者に公知である。反応順序は、スキームに表示したものに限定されないが、出発物質及びそれらのそれぞれの反応性に応じて、反応工程の順序は自由に変更されることができる。出発物質は、市販されているか、あるいは以下に示す方法と同様の方法によって、本記載もしくは実施例で引用した参考文献に記載されている方法によって、又は当技術分野において公知の方法によって調製されることができるかのいずれかである。
【0034】
式Iの本化合物及びそれらの薬学的に許容し得る塩は、当技術分野において公知の方法、例えば、以下に記載のプロセス変法によって調製され得、該プロセスは、以下:
a)式:
【化15】

で示される化合物を、DMF中、NaH又はCsCOの存在下、R−Iでアルキル化して、式:
【化16】

[式中、Rは、低級アルキルであり、そして残りの置換基は、先に記載されている]で示される化合物にする工程、又は
所望であれば、得られた化合物を薬学的に許容し得る酸付加塩に変換する工程を含む。
【0035】
式Iの化合物の調製はさらに、スキーム1及び実施例1〜17においてより詳細に記載されている。
【0036】
【化17】
【0037】
一般式Iの化合物は、例えば、適切に置換されたアニリン又はアミノピリジン1と適切に置換されたアリールアセチレン2とのSonogashiraカップリングによって、式3の所望のエチニル化合物を生成して得ることができる。式3のエチニル化合物と式4の適切に置換されたアミノエステルとを、ホスゲン又はホスゲン等価体(例えば、トリホスゲン)又はカルボニルジイミダゾール(CDI)を用いて、塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下又は非存在下、溶媒(例えば、DMF、トルエン又はジオキサン)中、反応させて、式5の所望の尿素類似体を形成する。溶媒(例えば、THF又はDMF)中、強塩基(例えば、NaH又はKOtBu)を用いる5の閉環は、所望の式I−1のピリミジン−2,4−ジオン化合物を形成する。アルキル化を介したR置換基(R=低級アルキル)の導入は、所望の一般式Iのエチニル−フェニル、エチニル−ピリジル又はエチニル−イソチアゾリル置換ピリミジン−2,4−ジオン化合物を形成する(スキーム1)。
【0038】
一般的に、式Iの化合物を合成するために使用する工程の順序は、特定の場合、変更することもできる。
【0039】
生物学的アッセイ及びデータ:
HEK293細胞において発現される組み換えヒトmGlu4に対するCa2+動員インビトロアッセイを使用したEC50値の決定:
ヒトmGlu4受容体をコードするcDNAで安定的にトランスフェクトされたモノクローナルHEK−293細胞株を生成した;mGlu4陽性アロステリックモジュレーター(PAM)を用いる処理のために、低い受容体発現レベル及び低い恒常的受容体活性を有する細胞株を選択して、アゴニスト活性とPAM活性との差別化を可能にした。細胞は、標準的なプロトコール(Freshney, 2000)に従って、1mM グルタミン、10%(vol/vol)加熱不活性化ウシ胎児血清、ペニシリン/ストレプトマイシン、50μg/mLハイグロマイシン及び15μg/mLブラストサイジンを補充した高グルコースダルベッコ変法イーグル培地中で培養した(すべての細胞培養試薬及び抗生物質は、Invitrogen, Basel, Switzerlandから)。
【0040】
実験の約24時間前に、ポリ−D−リジンでコーティングした黒色/透明底の96ウェルプレート中に、5×10個の細胞/ウェルを播種した。細胞に、37℃で1時間、ローディングバッファー(1×HBSS、20mM HEPES)中の2.5μM Fluo−4AMをロードし、ローディングバッファーで5回洗浄した。細胞をFunctional Drug Screening System 7000(Hamamatsu, Paris, France)内に移し、試験化合物の11種の半対数段階希釈液を37℃で加え、蛍光をオンラインで記録しながら、細胞を10〜30分間インキュベートした。このプレインキュベーション工程に続いて、蛍光をオンラインで記録しながら、アゴニスト(2S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸(L−AP4)をEC20に対応する濃度で細胞に加えた;細胞の応答性の日毎の変動を説明するために、L−AP4の完全用量反応曲線の記録によって、L−AP4のEC20を各実験の直前に決定した。
【0041】
応答は、L−AP4の飽和濃度で得られた最大刺激効果に対して正規化された、蛍光のピーク増加から基底値(すなわち、L−AP4の添加なしの蛍光)を引いたものとして測定した。グラフは、Levenburg Marquardtアルゴリズムを使用してデータを繰り返しプロットする曲線当て嵌めプログラムであるXLfitを使用して、最大刺激%でプロットされた。使用したシングルサイト競合分析方程式は、y=A+((B−A)/(1+((x/C)D)))であった[式中、yは、最大刺激効果%であり、Aは、最小のyであり、Bは、最大のyであり、Cは、EC50であり、xは、競合化合物の濃度のlog10であり、そして、Dは、曲線の傾斜(ヒル係数)である]。これらの曲線から、EC50(最大受容体活性化の50%が達成された薬物濃度)、ヒル係数ならびにL−AP4の飽和濃度で得た最大刺激効果における最大応答%を計算した(図1を参照)。
【0042】
PAM試験化合物を用いたプレインキュベーションの間(すなわち、EC20濃度のL−AP4の適用前)に得られた陽性シグナルは、アゴニスト活性を表し、そのようなシグナルの非存在は、アゴニスト活性の欠如を示していた。EC20濃度のL−AP4の添加後に観察されたシグナルの低下は、試験化合物の阻害活性を表していた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】mGlu4 PAM Ca2+動員スクリーニングアッセイについての実験概要ならびにEC50及び最大E値%の決定の説明
【0044】
【表1】


【0045】
式(I)の化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、医薬として、例えば、医薬製剤の形態で使用されることができる。医薬製剤は、例えば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の剤形で、経口投与されることができる。しかしながら、投与はまた、例えば坐剤の剤形で直腸内にも、又は例えば注射液の剤形で非経口的にも実行されることができる。
【0046】
式(I)の化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、医薬製剤の製造のため、薬学的に不活性な無機又は有機の担体と共に加工されることができる。乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などを、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤のためのそのような担体として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤のための好適な担体は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体及び液体ポリオール類などである;しかしながら、活性物質の性質に応じて、軟ゼラチンカプセル剤の場合は、通常担体を必要としない。液剤及びシロップ剤の製造に好適な担体は、例えば、水、ポリオール、ショ糖、転化糖、グルコースなどである。アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などの佐剤は、式(I)の化合物の水溶性塩の水性注射液に使用されることができるが、原則として必要ではない。坐剤のための好適な担体は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、半液体又は液体ポリオールなどである。
【0047】
加えて、医薬製剤は、保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、浸透圧を変動させるための塩、緩衝剤、マスキング剤又は酸化防止剤を含有することができる。これらはまた、さらに他の治療有用物質を含有することができる。
【0048】
前述のように、式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と治療上不活性な賦形剤とを含有する医薬も本発明の目的であり、1つ以上の式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、所望により、1つ以上の他の治療有用物質とを、1つ以上の治療上不活性な担体と共にガレヌス製剤の投与形態にすることを含む、そのような医薬の製造プロセスも、本発明の目的である。
【0049】
さらに前述のように、上に列挙した疾患の予防及び/又は治療に有用な医薬の調製のための式(I)の化合物の使用もまた、本発明の目的である。
【0050】
用量は、広い範囲内で変更されることができ、当然ながら、各々の特定の症例における個別の要件に適合されるだろう。一般に、経口又は非経口投与のための有効用量は、0.01〜20mg/kg/日の間であり、記載したすべての適応症に対して0.1〜10mg/kg/日の用量が好ましい。したがって、体重70kgの成人のための1日用量は、1日当たり0.7〜1400mgの間、好ましくは1日当たり7〜700mgの間である。
【0051】
本発明の化合物を含む医薬組成物の調製:
以下の組成の錠剤を常法により製造する:
【表2】
【0052】
製造手順
1.成分1、2、3及び4を混合し、精製水で造粒する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる。
3.顆粒を好適な微粉砕装置に通す。
4.成分5を加え、3分間混合し;好適な成形機で圧縮する。
【0053】
以下の組成のカプセル剤を製造する:
【表3】
【0054】
製造手順
1.成分1、2及び3を好適なミキサー中で30分間混合する。
2.成分4及び5を加え、3分間混合する。
3.好適なカプセルに充填する。
【0055】
式Iの化合物、乳糖及びトウモロコシデンプンを、最初にミキサーで、次に微粉砕機で混合する。混合物をミキサーに戻し;そこにタルクを加え、十分に混合する。混合物を、機械によって、適切なカプセルに、例えば硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0056】
以下の組成の注射液を製造する:
【0057】
【表4】
【0058】
製造手順
式Iの化合物を、ポリエチレングリコール400と注射用水(一部)の混合物に溶解する。酢酸でpHを5.0に調整する。水の残量を加えることにより、容量を1.0mlに調整する。溶液を濾過し、適切な過剰量を使用してバイアルに充填し、滅菌する。
【0059】
実験の部
実施例1
(8S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−イソキノリン−8,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化18】
【0060】
工程1: 2,6−ジフルオロ−4−フェニルエチニル−フェニルアミン
ビス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(II)ジクロリド(826mg、1.18mmol、0.02当量)を、THF 100mLに溶解した。2,6−ジフルオロ−4−ヨードアニリン(15g、58.8mmol)及びフェニルアセチレン(7.2g、7.8mL、70.6mmol、1.2当量)を室温で加えた。トリエチルアミン(29.8g、41mL、0.29mol、5当量)、トリフェニルホスフィン(617mg、2.35mmol、0.04当量)及びヨウ化銅(I)(112mg、0.58mmol、0.01当量)を加え、混合物を60℃で1時間撹拌した。反応混合物を冷まし、飽和NaHCO溶液及び2回の酢酸エチルで抽出した。有機層を水で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。粗生成物を、酢酸エチル:ヘプタン 0:100〜40:60の勾配で溶離するシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の2,6−ジフルオロ−4−フェニルエチニル−フェニルアミン(12.6g、収率93%)を黄色の固体として得た。 MS: m/e = 230.1 (M+H+).
【0061】
工程2: (R,E)−N−(6,7−ジヒドロイソキノリン−8(5H)−イリデン)−2−メチルプロパン−2−スルフィンアミド
6,7−ジヒドロイソキノリン−8(5H)−オン(1g、6.79mmol)をTHF 10mLに溶解した。(R)−2−メチルプロパン−2−スルフィンアミド(CAS 196929-78-9)(1.24g、10.2mmol、1.5当量)及びチタン(IV)エトキシド(4.65g、4.23mL、20.4mmol、3.0当量)を加え、混合物を65℃で3時間撹拌した。反応混合物を冷まし、飽和NaHCO溶液及び酢酸エチルを加えた。形成した懸濁液を、Celiteを通して濾過し、濾液を酢酸エチルで2回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。粗生成物を、酢酸エチル:ヘプタン 10:90〜100:0の勾配で溶離するシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の(R,E)−N−(6,7−ジヒドロイソキノリン−8(5H)−イリデン)−2−メチルプロパン−2−スルフィンアミド(1.02g、収率60%)を黄色の固体として得た。 MS: m/e = 251.2 (M+H+).
【0062】
工程3: メチル 2−((S)−8−((R)−1,1−ジメチルエチルスルフィンアミド)−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−8−イル)アセタート
酢酸メチル(0.6g、0.375mL、8.15mmol、2当量)を乾燥THF 10mLに溶解し、溶液を−70℃に冷却した。LDA(THF/ヘプタン/エチルベンゼン中2.0M )(4.07mL、8.15mmol、2当量)を−75℃〜−65℃で滴下し、混合物を−70℃で30分間撹拌した。乾燥THF 10mLに溶解したクロロチタントリイソプロポキシド(4.25g、16.3mmol、4当量)を、−75℃〜−65℃で滴下し、混合物を−70℃で30分間撹拌した。乾燥THF 10mLに溶解した(R,E)−N−(6,7−ジヒドロイソキノリン−8(5H)−イリデン)−2−メチルプロパン−2−スルフィンアミド(実施例1、工程2)(1.02g、4.07mmol)を、−75℃〜−65℃で滴下し、混合物を−70℃で1時間撹拌した。飽和NaHCO溶液を加え、混合物を10分間撹拌した。酢酸エチルを形成した懸濁液に加え、混合物を10分間撹拌した。形成した懸濁液を、Celiteを通して濾過し、濾液を酢酸エチルで2回抽出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。粗生成物を、ジクロロメタン:メタノール 100:0〜90:10の勾配で溶離するシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望のメチル 2−((S)−8−((R)−1,1−ジメチルエチルスルフィンアミド)−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−8−イル)アセタート(0.92g、収率70%)を黄色の油状物として得た。 MS: m/e = 325.2 (M+H+).
【0063】
工程4: (S)−メチル 2−(8−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−8−イル)アセタート
メチル 2−((S)−8−((R)−1,1−ジメチルエチルスルフィンアミド)−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−8−イル)アセタート(実施例1、工程3)(920mg、2.84mmol)を、MeOH 10mLに溶解し、HCl(ジオキサン中4N )(7.1mL、28.4mmol、10当量)を加えた。混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を蒸発させ、飽和NaHCO溶液及び2回のジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。粗生成物を、メタノール:ジクロロメタン 0:100〜20:80の勾配で溶離するシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の(S)−メチル 2−(8−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−8−イル)アセタート(340mg、収率54%)を黄色の油状物として得た。 MS: m/e = 221.2 (M+H+).
【0064】
工程5: (S)−メチル 2−(8−(3−(2,6−ジフルオロ−4−(フェニルエチニル)フェニル)ウレイド)−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−8−イル)アセタート
2,6−ジフルオロ−4−フェニルエチニル−フェニルアミン(実施例1、工程1)(360mg、1.57mmol、1.0当量)をDMF(4.0mL)に溶解し、CDI(255mg、1.57mmol、1.0当量)を室温で加えた。混合物を100℃で1時間撹拌した。混合物に、(S)−メチル 2−(8−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−8−イル)アセタート(実施例1、工程4)(100mg、0.50mmol、1.0当量)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物を、isolute(登録商標)を用いて蒸発させた。粗生成物を、酢酸エチル:ヘプタン 20:80〜100:0の勾配で溶離するフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の(S)−メチル 2−(8−(3−(2,6−ジフルオロ−4−(フェニルエチニル)フェニル)ウレイド)−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−8−イル)アセタート(300mg、収率40%)を白色の固体として得た。 MS: m/e = 476.3 (M+H+).
【0065】
工程6: (S)−1’−(2,6−ジフルオロ−4−(フェニルエチニル)フェニル)−6,7−ジヒドロ−1’H,5H−スピロ[イソキノリン−8,4’−ピリミジン]−2’,6’(3’H,5’H)−ジオン
(S)−メチル 2−(8−(3−(2,6−ジフルオロ−4−(フェニルエチニル)フェニル)ウレイド)−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−8−イル)アセタート(実施例1、工程5)(300mg、0.63mmol)をTHF(3mL)に溶解し、水素化ナトリウム(鉱油中60%)(38mg、0.946mmol、1.5当量)を室温で加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を、飽和NaHCO溶液及び2回の酢酸エチルで抽出した。有機層を水及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。所望の(S)−1’−(2,6−ジフルオロ−4−(フェニルエチニル)フェニル)−6,7−ジヒドロ−1’H,5H−スピロ[イソキノリン−8,4’−ピリミジン]−2’,6’(3’H,5’H)−ジオン(240mg、収率86%)を明黄色の固体として得た。 MS: m/e = 444.2 (M+H+).
【0066】
工程7: (8S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−イソキノリン−8,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
(S)−1’−(2,6−ジフルオロ−4−(フェニルエチニル)フェニル)−6,7−ジヒドロ−1’H,5H−スピロ[イソキノリン−8,4’−ピリミジン]−2’,6’(3’H,5’H)−ジオン(実施例1、工程6)(240mg、0.54mmol)をDMF(2mL)に溶解し、炭酸セシウム(265mg、0.81mmol、1.5当量)及びヨードメタン(115mg、51ul、0.81mmol、1.5当量)を室温で加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を、isolute(登録商標)を用いて蒸発させた。粗生成物を、酢酸エチル:ヘプタン 30:70〜100:0の勾配で溶離するシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の(8S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−イソキノリン−8,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン(37mg、収率15%)を明黄色の油状物として得た。 MS: m/e = 458.3 (M+H+).
【0067】
実施例2
(6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,1’−テトラリン]−2,4−ジオン
【化19】
【0068】
工程1: (S)−メチル 2−(1−アミノ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)アセタート
標記化合物を、実施例1、工程2、3及び4に記載されたものと同様の化学を用い、3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オンから出発して、黄色の液体として得た。 MS: m/e = 220.1 (M+H+).
【0069】
工程2: 2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]アニリン
標記化合物を、実施例1、工程1に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−ヨードアニリン及び3−エチニルピリジンから、明褐色の固体として得た。 MS: m/e = 231.1 (M+H+).
【0070】
工程3: (6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,1’−テトラリン]−2,4−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程5、6及び7に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]アニリン(実施例2、工程2)及び(S)−メチル 2−(1−アミノ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)アセタート(実施例2、工程1)から出発して、明黄色の固体として得た。 MS: m/e = 458.2 (M+H+).
【0071】
実施例3
(6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,1’−インダン]−2,4−ジオン
【化20】
【0072】
工程1: (S)−メチル 2−(1−アミノ−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル)アセタート
標記化合物を、実施例1、工程2、3及び4に記載されたものと同様の化学を用い、2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−オンから出発して、黄色の液体として得た。 MS: m/e = 206.1 (M+H+).
【0073】
工程2: (6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,1’−インダン]−2,4−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程5、6及び7に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]アニリン(実施例2、工程2)及び(S)−メチル 2−(1−アミノ−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル)アセタート(実施例3、工程1)から出発して、明黄色の固体として得た。 MS: m/e = 444.2 (M+H+).
【0074】
実施例4
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[6,7−ジヒドロシクロペンタ[b]ピリジン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化21】
【0075】
工程1: (S)−メチル 2−(5−アミノ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン−5−イル)アセタート
標記化合物を、実施例1、工程2、3及び4に記載されたものと同様の化学を用い、6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン−5−オンから出発して、褐色の油状物として得た。 MS: m/e = 207.1 (M+H+).
【0076】
工程2: (5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[6,7−ジヒドロシクロペンタ[b]ピリジン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程5、6及び7に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−フェニルエチニル−フェニルアミン(実施例1、工程1)及び(S)−メチル 2−(5−アミノ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[b]ピリジン−5−イル)アセタート(実施例4、工程1)から出発して、明褐色の固体として得た。 MS: m/e = 444.2 (M+H+).
【0077】
実施例5
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−キノリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化22】
【0078】
工程1: (S)−メチル 2−(5−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−5−イル)アセタート
標記化合物を、実施例1、工程2、3及び4に記載されたものと同様の化学を用い、7,8−ジヒドロキノリン−5(6H)−オンから出発して、黄色の油状物として得た。 MS: m/e = 221.2 (M+H+).
【0079】
工程2: (5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−キノリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程5、6及び7に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−フェニルエチニル−フェニルアミン(実施例1、工程1)及び(S)−メチル 2−(5−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−5−イル)アセタート(実施例5、工程1)から出発して、白色の固体として得た。 MS: m/e = 458.3 (M+H+).
【0080】
実施例6
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−イソキノリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化23】
【0081】
工程1: (S)−メチル 2−(5−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)アセタート
標記化合物を、実施例1、工程2、3及び4に記載されたものと同様の化学を用い、7,8−ジヒドロイソキノリン−5(6H)−オンから出発して、黄色の油状物として得た。 MS: m/e = 221.2 (M+H+).
【0082】
工程2: (5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−イソキノリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程5、6及び7に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−フェニルエチニル−フェニルアミン(実施例1、工程1)及び(S)−メチル 2−(5−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン−5−イル)アセタート(実施例6、工程1)から出発して、褐色の泡状物として得た。 MS: m/e = 458.3 (M+H+).
【0083】
実施例7
(5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−キナゾリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化24】
【0084】
工程1: (S)−メチル 2−(5−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−5−イル)アセタート
標記化合物を、実施例1、工程2、3及び4に記載されたものと同様の化学を用い、7,8−ジヒドロ−6H−キナゾリン−5−オンから出発して、黄色の固体として得た。 MS: m/e = 222.2 (M+H+).
【0085】
工程2: (5S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[7,8−ジヒドロ−6H−キナゾリン−5,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程5、6及び7に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−フェニルエチニル−フェニルアミン(実施例1、工程1)及び(S)−メチル 2−(5−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−5−イル)アセタート(実施例7、工程1)から出発して、白色の固体として得た。 MS: m/e = 459.3 (M+H+).
【0086】
実施例8
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1’−メチル−スピロ[クロマン−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化25】
【0087】
工程1: (S)−メチル 2−(4−アミノクロマン−4−イル)アセタート
標記化合物を、実施例1、工程2、3及び4に記載されたものと同様の化学を用い、クロマン−4−オンから出発して、明黄色の油状物として得た。 MS: m/e = 205.1 (M+H+).
【0088】
工程2: (S)−1’−(2,6−ジフルオロ−4−ヨードフェニル)−3’−メチル−1’H−スピロ[クロマン−4,4’−ピリミジン]−2’,6’(3’H,5’H)−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程5、6及び7に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−ヨードアニリン及び(S)−メチル 2−(4−アミノクロマン−4−イル)アセタート(実施例8、工程1)から出発して、明褐色の固体として得た。 MS: m/e = 485.2 (M+H+).
【0089】
工程2: (4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1’−メチル−スピロ[クロマン−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程1に記載されたものと同様の化学を用い、(S)−1’−(2,6−ジフルオロ−4−ヨードフェニル)−3’−メチル−1’H−スピロ[クロマン−4,4’−ピリミジン]−2’,6’(3’H,5’H)−ジオン(実施例8、工程2)及び3−エチニルピリジンから出発して、黄色の固体として得た。 MS: m/e = 460.3 (M+H+).
【0090】
実施例9
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[2,3−ジヒドロピラノ[2,3−b]ピリジン−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化26】
【0091】
工程1: (S)−メチル 2−(4−アミノ−3,4−ジヒドロ−2H−ピラノ[2,3−b]ピリジン−4−イル)アセタート
標記化合物を、実施例1、工程2、3及び4に記載されたものと同様の化学を用い、2H−ピラノ[2,3−b]ピリジン−4(3H)−オンから出発して、明黄色の油状物として得た。 MS: m/e = 223.2 (M+H+).
【0092】
工程2: (4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[2,3−ジヒドロピラノ[2,3−b]ピリジン−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程5、6及び7に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−フェニルエチニル−フェニルアミン(実施例1、工程1)及び(S)−メチル 2−(4−アミノ−3,4−ジヒドロ−2H−ピラノ[2,3−b]ピリジン−4−イル)アセタート(実施例9、工程1)から出発して、白色の固体として得た。 MS: m/e = 460.3 (M+H+).
【0093】
実施例10
(6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,4’−イソクロマン]−2,4−ジオン
【化27】
【0094】
工程1: (S)−メチル 2−(4−アミノイソクロマン−4−イル)アセタート
標記化合物を、実施例1、工程2、3及び4に記載されたものと同様の化学を用い、イソクロマン−4−オンから出発して、明黄色の油状物として得た。 MS: m/e = 222.2 (M+H+).
【0095】
工程2: (6S)−3−[2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]フェニル]−1−メチル−スピロ[ヘキサヒドロピリミジン−6,4’−イソクロマン]−2,4−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程5、6及び7に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−[2−(3−ピリジル)エチニル]アニリン(実施例2、工程2)及び(S)−メチル 2−(4−アミノイソクロマン−4−イル)アセタート(実施例10、工程1)から出発して、白色の固体として得た。 MS: m/e = 460.3 (M+H+).
【0096】
実施例11
(8S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−エチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−イソキノリン−8,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化28】

標記化合物を、実施例1、工程7に記載されたものと同様の化学を用い、(S)−1’−(2,6−ジフルオロ−4−(フェニルエチニル)フェニル)−6,7−ジヒドロ−1’H,5H−スピロ[イソキノリン−8,4’−ピリミジン]−2’,6’(3’H,5’H)−ジオン(実施例1、工程6)及びヨードエタンから出発して、黄色の油状物として得た。 MS: m/e = 472.3 (M+H+).
【0097】
実施例12
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[1,5,6,7−テトラヒドロインダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化29】
【0098】
工程1: 2−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−6,7−ジヒドロ−2H−インダゾール−4(5H)−オン
6,7−ジヒドロ−2H−インダゾール−4(5H)−オン(CAS 912259-10-0)(1.46g、10.7mmol)をTHF(15mL)に溶解し、0〜5℃に冷却した。水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液)(450mg、11.3mmol、1.05当量)を少しずつ注意深く加え、混合物を室温で60分間撹拌した。反応混合物を再び0〜5℃に冷却し、(2−(クロロメトキシ)エチル)トリメチルシラン(2.28mL、2.15g、12.9mmol、1.2当量)を加え、混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を、飽和NaHCO溶液及び2回の酢酸エチルで注意深く抽出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。所望の2−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−6,7−ジヒドロ−2H−インダゾール−4(5H)−オン(定量的収率)を黄色の油状物として得た。MS: m/e = 267.2 (M+H+).
【0099】
工程2: (S)−メチル 2−(4−アミノ−2−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−2H−インダゾール−4−イル)アセタート
標記化合物を、実施例1、工程2、3及び4に記載されたものと同様の化学を用い、2−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−6,7−ジヒドロ−2H−インダゾール−4(5H)−オン(実施例12、工程1)から出発して、HClでの開裂工程を1時間の代わりに僅か10分間撹拌することにより、黄色の油状物として得た。 MS: m/e = 341.2 (M+H+).
【0100】
工程3: (S)−1’−(2,6−ジフルオロ−4−(フェニルエチニル)フェニル)−3’−メチル−2−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−2,5,6,7−テトラヒドロ−1’H−スピロ[インダゾール−4,4’−ピリミジン]−2’,6’(3’H,5’H)−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程5、6及び7に記載されたものと同様の化学を用い、2,6−ジフルオロ−4−フェニルエチニル−フェニルアミン(実施例1、工程1)及び(S)−メチル 2−(4−アミノ−2−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−2H−インダゾール−4−イル)アセタート(実施例12、工程2)から出発して、白色の泡状物として得た。 MS: m/e = 577.2 (M+H+).
【0101】
工程4: (4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[1,5,6,7−テトラヒドロインダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
標記化合物を、実施例1、工程4に記載されたものと同様の化学を用い、(S)−1’−(2,6−ジフルオロ−4−(フェニルエチニル)フェニル)−3’−メチル−2−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)−2,5,6,7−テトラヒドロ−1’H−スピロ[インダゾール−4,4’−ピリミジン]−2’,6’(3’H,5’H)−ジオン(実施例12、工程3)から出発して、反応物を室温で16時間撹拌することにより、白色の泡状物として得た。 MS: m/e = 447.2 (M+H+).
【0102】
実施例13
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’,2−ジメチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−インダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化30】

標記化合物を、実施例1、工程7に記載されたものと同様の化学を用い、(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[1,5,6,7−テトラヒドロインダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン(実施例12)及びヨードメタンから出発して、2つの形成された異性体の分離のために溶媒としてヘプタン:エタノール 60:40を用いるReprosil Chiral NR(登録商標)カラムを使用して、黄色の固体として得た。 MS: m/e = 461.2 (M+H+).
【0103】
実施例14
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1,1’−ジメチル−スピロ[6,7−ジヒドロ−5H−インダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化31】

標記化合物を、実施例1、工程7に記載されたものと同様の化学を用い、(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[1,5,6,7−テトラヒドロインダゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン(実施例12)及びヨードメタンから出発して、2つの形成された異性体の分離のために溶媒としてヘプタン:エタノール 60:40を用いるReprosil Chiral NR(登録商標)カラムを使用して、明黄色の固体として得た。 MS: m/e = 461.2 (M+H+).
【0104】
実施例15
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロ−1H−シクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化32】

標記化合物を、実施例12に記載されたものと同様の化学を用い、6,7−ジヒドロ−2H−インダゾール−4(5H)−オンの代わりに、5,6,7,8−テトラヒドロ−1H−シクロヘプタ[c]ピラゾール−4−オン(CAS 115215-89-9)から出発して、白色の固体として得た。 MS: m/e = 461.3 (M+H+),
【0105】
実施例16
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1,1’−ジメチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化33】

標記化合物を、実施例1、工程7に記載されたものと同様の化学を用い、(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロ−1H−シクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン(実施例15)及びヨードメタンから出発して、2つの形成された異性体の分離のためにキラルカラム(溶媒としてヘプタン:エタノール 60:40を用いるReprosil Chiral NR)を使用して、白色の固体として得た。 MS: m/e = 475.2 (M+H+).
【0106】
実施例17
(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’,2−ジメチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロシクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン
【化34】

標記化合物を、実施例1、工程7に記載されたものと同様の化学を用い、(4S)−3’−[2,6−ジフルオロ−4−(2−フェニルエチニル)フェニル]−1’−メチル−スピロ[5,6,7,8−テトラヒドロ−1H−シクロヘプタ[c]ピラゾール−4,6’−ヘキサヒドロピリミジン]−2’,4’−ジオン(実施例15)及びヨードメタンから出発して、2つの形成された異性体の分離のためにキラルカラム(溶媒としてヘプタン:エタノール 60:40を用いるReprosil Chiral NR)を使用して、白色の泡状物として得た。 MS: m/e = 475.2 (M+H+).
図1