(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761853
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】自律的かつ冗長なエネルギ供給を行う軌道工事機械
(51)【国際特許分類】
E01B 27/16 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
E01B27/16
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-515214(P2018-515214)
(86)(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公表番号】特表2018-528342(P2018-528342A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】EP2016001444
(87)【国際公開番号】WO2017050414
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】A619/2015
(32)【優先日】2015年9月23日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】514318345
【氏名又は名称】プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Plasser & Theurer, Export von Bahnbaumaschinen, Gesellschaft m.b.H.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー グラインドル
【審査官】
彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第02232476(DE,A1)
【文献】
特開2013−226967(JP,A)
【文献】
特開2010−172192(JP,A)
【文献】
特開2015−151126(JP,A)
【文献】
特開2015−154612(JP,A)
【文献】
独国実用新案第202010014117(DE,U1)
【文献】
特開平08−290770(JP,A)
【文献】
特開平09−025604(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3163449(JP,U)
【文献】
特開2004−262277(JP,A)
【文献】
特開2013−217421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道工事機械(1)であって、
軌道(2)上を走行可能な機械フレーム(3)と、
種々異なる作業ユニット(4)と、
内燃機関(5)と、
を備え、前記内燃機関(5)は、クラッチ(6)を介して分配伝動機構(7)に接続可能であり、前記分配伝動機構(7)の代替的な駆動装置として、電気モータ(13)が設けられており、前記電気モータ(13)には、前記軌道(2)の架線(14)に当接可能な、高さ調節可能な集電装置(15)により、電気的なエネルギが供給可能である、
軌道工事機械(1)において、
a)前記電気モータ(13)は、前記分配伝動機構(7)に接続された複数の液圧ポンプ(8)と、前記液圧ポンプ(8)により液圧が供給される様々な液圧式の駆動装置(9)と、を備える液圧系統(10)への持続的なエネルギ供給用に、代替的な駆動装置として設けられており、
b)前記電気モータに連結される中間回路(12)の代替的なエネルギ供給用に、発電機(16)または電気的なエネルギアキュムレータ(21)が設けられている、
ことを特徴とする軌道工事機械(1)。
【請求項2】
前記内燃機関(5)および前記電気モータ(13)は、運転パラメータを両動力発生装置(5,13)間で調整するように構成された制御装置(17)により制御されていることを特徴とする、請求項1記載の軌道工事機械(1)。
【請求項3】
前記電気モータ(13)は、前記中間回路(12)の代替的なエネルギ供給用に発電機運転で前記内燃機関(5)により駆動可能であることを特徴とする、請求項1または2記載の軌道工事機械(1)。
【請求項4】
前記中間回路に電圧制限器が接続されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の軌道工事機械(1)。
【請求項5】
電気的な架線(14)を有する軌道(2)上を走行可能な軌道工事機械(1)の様々な作業ユニット(4)および駆動装置(9)を駆動するエネルギ供給系統(11)を運転する方法であって、
複数の液圧ポンプ(8)と、前記液圧ポンプ(8)により液圧が供給される様々な液圧式の駆動装置(9)と、を備える液圧系統(10)に、内燃機関(5)により、または中間回路に連結される電気モータ(13)により、エネルギを供給し、
前記中間回路に、前記架線(14)、発電機(16)、または電気的なエネルギアキュムレータ(21)によりエネルギを供給し、かつ
制御装置(17)により、前記内燃機関(5)と前記電気モータ(13)との間の切り換えを、前記液圧系統(10)の前記液圧式の駆動装置(9)に持続的にエネルギを供給する負荷運転中に実施する、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記電気モータ(13)から前記内燃機関(5)へエネルギ供給を切り換えるために、
a)分配伝動機構(7)との連結をクラッチ(6)により解いた状態で、前記内燃機関を、前記負荷運転に必要な回転数に上げ、
b)前記クラッチ(6)の閉鎖とともに、自動的に前記制御装置(17)により、エネルギ供給および動力発生装置運転に必要なすべての運転パラメータの、前記内燃機関(5)に合わせた調整を行い、
c)前記架線(14)から前記電気モータ(13)へのエネルギ供給を遮断する、
ことを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記内燃機関(5)から前記電気モータ(13)へエネルギ供給を切り換えるために、
a)前記架線(14)に当接されている集電装置(15)を用いたエネルギ供給を作動させるべく、メインスイッチ(18)を閉じ、
b)前記メインスイッチの閉鎖とともに、自動的に前記制御装置(17)により、エネルギ供給および動力発生装置運転に必要なすべての運転パラメータの、前記電気モータ(13)に合わせた調整を行い、
c)前記内燃機関(5)をクラッチ(6)により分配伝動機構(7)から切り離す、
ことを特徴とする、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記架線(14)の移行箇所(20)の通過のために、前記制御装置(17)の作動後、自動的に、かつ負荷運転下で、前記電気モータ(13)から前記内燃機関(5)への、エネルギ供給の切り換えを実施し、前記移行箇所(20)の通過後、前記内燃機関(5)から前記電気モータ(13)への、エネルギ供給の切り換えを実施することを特徴とする、請求項5、6または7記載の方法。
【請求項9】
前記電気モータ(13)から前記内燃機関(5)への、エネルギ供給の切り換え後、自動的に、所定の期間が経った後または所定の道程を経た後、前記内燃機関(5)から前記電気モータ(13)への、エネルギ供給の切り換えを行うことを特徴とする、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道工事機械であって、軌道上を走行可能な機械フレームと、種々異なる作業ユニットと、内燃機関と、を備え、内燃機関は、クラッチを介して分配伝動機構に接続可能であり、分配伝動機構には、液圧系統の様々な液圧式の駆動装置に液圧を供給する液圧ポンプが接続されている、軌道工事機械に関する。さらに本発明は、電気的な架線を有する軌道上を走行可能な軌道工事機械の様々な作業ユニットおよび駆動装置を駆動するエネルギ供給系統を運転する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
軌道工事機械は、非電化軌道でもしばしば使用されるため、エネルギ供給は、通常、専ら内燃機関によって実施される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
而るに、本発明の課題は、より多面的な現場投入が可能な冒頭で述べた形態の軌道工事機械および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、本発明により、請求項1あるいは請求項5の特徴部に記載の特徴により解決される。
【0005】
この特徴組み合わせにより、軌道架線が存在する場合は、軌道工事機械の作業能力を損ねることなく、より環境親和性の高いエネルギ供給を利用することができる。純然たる電気的な駆動のこの可能性は、特にトンネル内での作業投入時に極めて有利である。さらに、電気駆動により、騒音発生や消費エネルギを大幅に低減可能である。負荷運転中のエネルギ供給の切り換えにより、作業前進の中断が不要である。これにより、一定の作業品質が保証されている。
【0006】
具体的には、電気モータと内燃機関との間の切り換えが、分配伝動機構の駆動中断なしに行われる。その結果、様々な液圧式の駆動装置および作業ユニットは安定的に稼働し続ける。このことは、特に連続的に作業する軌道工事機械、例えばタンピング機械、クリーニング機械、レベリング機械、または道床を安定化させ、締め固める機械、およびバラストを取り除き、バラストを撒布する機械において有利である。この種の機械の場合、加えて、架線は、作業プロセス中、通電されたままであることを前提とすべきである。架線における作業時、通常は異なる。
【0007】
本発明の別の利点は、従属請求項および図面の説明から看取可能である。
【0008】
有利には、内燃機関および電気モータは、運転パラメータを両動力発生装置間で調整するように構成された制御装置により制御される。これにより、接続される動力発生装置による連続的な出力引き受けが、遮断したい動力発生装置の回転数およびトルクの引き受けによって簡単に行われる。
【0009】
さらに、電気モータを、中間回路の代替的なエネルギ供給用に発電機運転で内燃機関により駆動可能であると、有利である。このことは、一方では、制動期間中、エネルギ余剰の際に、有用な場合がある。他方では、これにより、集電装置が遮断された中間回路に持続的にエネルギを供給する別の可能性も提供される。この場合、本発明により設けられる発電機または電気的なエネルギアキュムレータは、純然たる内燃機関運転の開始時の中間回路の充電用にさえ設計されていればよい。こうして、軌道工事機械の、中間回路を介して給電される搭載電源網が、発電機運転中の電気モータによって維持される。
【0010】
その際、加えて、中間回路に電圧制限器が接続されていると、好適である。電圧制限器は、例えば、架線に給電することができない余剰のブレーキエネルギを熱に変換するのに適している。
【0011】
以下に、本発明について、図面に示した一実施例を参照しながら詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に例えばタンピング機械として示す軌道工事機械1は、軌道2上を走行可能な機械フレーム3を備え、種々異なる作業ユニット4と、内燃機関5とを装備している。
図2に看取可能であるように、内燃機関5は、クラッチ6を介して分配伝動機構7に接続可能である。分配伝動機構7には、複数の液圧ポンプ8が、フランジ固定されており、様々な液圧式の駆動装置9に液圧を供給している。これらの液圧式の駆動装置9は、液圧ポンプ8とともに液圧系統10を形成している。
【0014】
内燃機関5と液圧系統10とにより形成されるエネルギ供給系統11の拡張のために、電気的な中間回路12に連結される電気モータ13が設けられている。この電気モータ13は、分配伝動機構7用の代替的な駆動装置として使用可能であり、エネルギ供給用に、軌道2の架線14に当接可能な、高さ調節可能な集電装置15に連結可能である。電気モータ13は、スリップクラッチ19を介して分配伝動機構7にフランジ固定されている。中間回路12の代替的なエネルギ供給用に、発電機16またはこれに代えて
図2では破線で示す電気的なエネルギアキュムレータ21が設けられている。発電機16は、分配伝動機構7を介して液圧式に駆動可能であるか、または補助内燃機関に連結されている。電気的なエネルギアキュムレータ21には、選択的に発電機運転中の電気モータによってか、または架線14を介してエネルギが蓄積可能である。
【0015】
作業投入のために、液圧系統10には、内燃機関5によって、あるいは架線14が存在するのであれば、架線14より給電される電気モータ13によって、エネルギが供給可能である。内燃機関5と電気モータ13との間での切り換えは、有利には、駆動装置9および作業ユニット4に持続的にエネルギを供給する負荷運転中に実施される。これにより、作業前進の不都合な中断が不要である。
【0016】
好適には、電気モータ13は、インバータを介して中間回路12に接続されている非同期機として形成されている。双方向のインバータは、電気モータ13の発電機運転を可能にする。この運転モードの作動時、非同期機には、励磁電圧がかかっていなければならない。励磁電圧が中間回路電圧から導き出される場合、中間回路12は、まず充電されねばならない。中間回路12の充電は、架線14が利用可能であれば、集電装置15によって行われる。集電装置15は、メインスイッチ18と、図示しない変圧器とを介して中間回路12に連結されている。純然たる内燃機関運転中は、中間回路12は、発電機16または電気的なエネルギアキュムレータ21により予め充電される。
【0017】
軌道工事機械1の制限なしの負荷運転下で電気モータ13から内燃機関5へエネルギ供給を切り換えるために、内燃機関5は、分配伝動機構7との連結をクラッチ6により解いた状態で、この負荷運転に必要な回転数に上げられる。エネルギ供給のこの切り換えは、有利には、相応のスイッチの操作下で、自動的に実施される。次のステップとして、クラッチ6の閉鎖とともに、制御装置17により自動的に、エネルギ供給および動力発生装置運転に必要なすべての運転パラメータの、内燃機関5に合わせた調整が実施される(制御権の移行)。
【0018】
その際、電気モータ13の回転数制御は、非作動状態となり、内燃機関5は、分配伝動機構7を現下必要な出力で駆動する。この中断なしの切り換えを保証すべく、両動力発生装置5,13は、同じ制御装置17により制御される。最後にメインスイッチ18により、架線14から電気モータ13へのエネルギ供給が遮断される。このエネルギ供給の遮断は、好適には、制御装置17によるメインスイッチ18の制御により自動化されて行われる。
【0019】
軌道工事機械1の制限なしの負荷運転下で内燃機関5から電気モータ13へエネルギ供給を切り換えるために、メインスイッチ18は、電気モータ13を、架線14に当接されている集電装置15に電気的に連結すべく、操作される。ゆえに制御装置17により、自動的に、エネルギ供給および動力発生装置運転に必要なすべての運転パラメータの、電気モータ13に合わせた調整が行われる(制御権の引き渡し)。
【0020】
具体的には、中間回路12が予め充電されているとき、電気モータ13の回転数制御が作動され、電気モータ13の所定の回転数およびトルクが、内燃機関5の遮断したい出力に合わせて調整される。続いて内燃機関5は、配設されたクラッチ6の操作により分配伝動機構7から切り離される。
【0021】
切り換え全体は、好適には、制御装置17により自動的に実施される。これにより制御装置17は、両動力発生装置5,13およびメインスイッチ18を制御する中央の要素を形成している。両動力発生装置5,13間の切り換えをトリガすべく、制御装置17は、操作ユニットに接続されている。しかし、トリガは、自動的に、例えば所定の期間が経過した後、行われてもよい。
【0022】
周知のように、架線14の互いに隣接するセクタは、移行箇所20(
図1に略示)により互いに切り離されている。車速が比較的高ければ、存在する運動エネルギの結果として、電気駆動を短時間中断しても問題はなく、これにより、移行箇所20を駆動なしに通過することができる。
【0023】
軌道工事機械1の負荷運転下で架線14の移行箇所20を通過するために、制御装置17の作動後、移行箇所20の手前で、自動的に、電気モータ13から内燃機関5への、エネルギ供給の切り換えが実施され、設定可能な時間が経った後または所定の道程を経た後、内燃機関5から電気モータ13への、エネルギ供給の自動的な切り換えが実施される。その際、移行箇所20を通過し終えたことがセンサにより制御装置17に報知されても、好適な場合がある。このような報知は、その後、自動的に電気モータ13に戻す切り換えをトリガする。