特許第6761857号(P6761857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6761857抗癌療法の安全性および有効性を改善する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761857
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】抗癌療法の安全性および有効性を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20200917BHJP
   A61P 39/00 20060101ALI20200917BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   A61K38/46
   A61P39/00
   A61P35/00
【請求項の数】18
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-519282(P2018-519282)
(86)(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公表番号】特表2018-534281(P2018-534281A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】RU2015000721
(87)【国際公開番号】WO2017074211
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2018年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】518124472
【氏名又は名称】シーエルエス セラピューティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CLS Therapeutics Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】ゲンキン,ドミートリー ドミートリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】テツ,ゲオルギー ヴィクトロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】テツ,ヴィクトル ヴェニアミノヴィッチ
【審査官】 春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01666055(EP,A1)
【文献】 特開2000−229881(JP,A)
【文献】 Mittal BB et al.,Effect of Recombinant Human Deoxyribonuclease (rhDNase) on Oropharyngeal Secretions in Patients with Head-and-Neck Cancers Treated With Chemoradiation Therapy,International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics,2012年,Vol.84, No.3S Supplement,DOI: https://doi.org/10.1016/j.ijrobp.2012.07.271
【文献】 Kanyshkova TG et al.,Multiple enzymic activities of human milk lactoferrin,European Journal of Biochemistry,2003年,Vol.270, No.16,p.3353-3361
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 51/00−51/12
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
BIOSIS/CAplus/EMBASE/MEDLINE/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNase酵素を含む、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する副作用を、がんに罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善するための組成物であって、前記DNase酵素は、DNase I、DNase γまたはDNase IIであり、かつ前記化学療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効な量で前記対象に投与され、前記化学療法の副作用は、骨髄毒性、血液生化学における異化変化、心臓毒性、消化管のびらんまたは潰瘍、免疫抑制および好中球減少症からなる群より選択される、組成物。
【請求項2】
前記量のDNase酵素は、前記対象において細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法の有効性を高めるのに有効である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記心臓毒性は心筋壊死である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記化学療法は、代謝拮抗物質、アルキル化剤、抗がん抗生物質、微小管標的薬、トポイソメラーゼ阻害剤、アルカロイド類および標的治療薬からなる群より選択される1種以上の化合物の投与を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記化学療法は、アントラサイクリン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル(5−FU)、エトポシド、タキサンおよびシクロホスファミドからなる群より選択される1種以上の化合物の投与を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記DNase酵素は、前記化学療法の1サイクル中または1サイクル後に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
DNase酵素を含む、放射線療法に関連する副作用を、がんに罹患しかつ放射線療法を受けている対象において予防または改善するための組成物であって、前記DNase酵素は、DNase I、DNase γまたはDNase IIであり、かつ前記放射線療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効な量で前記対象に投与され、前記放射線療法の副作用は体重減少である、組成物。
【請求項8】
前記量のDNase酵素は、前記対象において放射線療法の有効性を高めるのに有効である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記放射線療法は、外照射療法または全身性ラジオアイソトープ療法である、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記DNase酵素は、前記放射線療法の1サイクル中または1サイクル後に投与される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記DNase Iはヒト組換えDNase Iである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記DNase酵素は延長された半減期を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記DNase酵素は、0.5〜50mg/kg/日の範囲内の量で投与される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記DNase酵素は、1.5〜50mg/kg/日の範囲内の量で投与される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記DNase酵素は、10〜50mg/kg/日の範囲内の量で投与される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記DNase酵素は、静脈内、腹腔内または経腸投与される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記DNase酵素は経口投与される、請求項1〜15のいずれ一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記対象はヒトである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2014年6月19日に出願され、その内容が参照により本明細書に全体として組み込まれる米国仮特許出願第62/014,341号に対する優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、様々な細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法化合物および放射線療法に関連する毒性を予防または改善するためのデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は、ヒトにおける極めて重要な死因の1つである。現時点で主要な癌療法は、手術、放射線療法ならびに細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法である。化学療法治療の分野における進歩にもかかわらず、大多数の公知の化学療法には、脊髄症、血液障害、消化系障害(例えば、悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、便秘)、肺機能不全症、皮膚障害、神経系障害、内分泌障害、生殖器障害、心血管疾患、肝障害、膵臓疾患、腎症、膀胱の不調、高尿酸血症、免疫能力の低下、感染症、光線過敏症、脱毛などを含む重篤な副作用が関連している(2〜5)。これらの副作用は、生命を脅かす、または重篤に消耗性であり、化学療法に関連する重大な病的状態や死亡を引き起こす。
【0004】
癌化学療法の主要な合併症の1つは、骨髄細胞の損傷または骨髄細胞機能の抑制である。詳細には、化学療法は、主として骨髄や脾臓において見いだされる造血前駆細胞を損傷または破壊し、新生血球(顆粒球、リンパ球、赤血球、単核白血球、血小板など)の産生を妨げる。多くの癌患者は、化学療法に続発する感染症または他の造血不全の結果のために死亡する。化学療法薬は、さらにまた血小板の標準に満たない形成を生じさせることがあり、これは出血傾向を生じさせる。赤血球産生の阻害は結果として貧血を生じさせることがある。さらに近年には、より広範囲の悪性腫瘍に対するはるかに強力な細胞傷害性療法やはるかに効果的な化学療法レジメンの開発が、腫瘍崩壊症候群(TLS)と称される重篤な毒性有害事象の発生頻度を大きく高めることも認識されてきた(16)。TLSは、リンパ腫および白血病に対する化学療法の状況において最も頻回に発生する、細胞増殖抑制性療法の投与の結果として起こる可能性があり、瀕死の細胞の分解生成物によって誘発される1群の代謝性合併症である。
【0005】
化学療法が極めて消耗性であり、症状が極めて重篤である主要な理由は、化学療法薬が正常な健常細胞とそれらが標的とするべく設計されている腫瘍細胞とをしばしば識別できないことにある。化学療法に関連する毒性の原因となるもう一つの機序は、化学療法誘導性細胞死の結果としての壊死またはアポトーシスに陥っている細胞から遊離される細胞成分の毒性作用である。
【0006】
化学療法薬に関連する副作用は、そのような薬物を投与できる頻度および用量を制限するので、有効性をより低下させる。
【0007】
全身性細胞傷害性化学療法の概念が進化するにつれて、化学療法に関連する毒性を弱毒化することが可能なアプローチを同定するため、化学療法薬への患者の曝露の中断を回避するために数多くの研究努力が重ねられてきた。低毒性投与様式の開発を導く化学療法薬の投与およびスケジュール調整は、1つの可能性である(6)。他の研究者らは、例えば化学療法中および化学療法後の絶食または特定栄養素の制限など(7);および患者の食事への数種の特定食事性アミノ酸の補足などの食事性アプローチを提案してきた(8)。例えば、ピリミジンヌクレオシドアナログによって誘導される毒性を予防するための特定の薬物特異的代謝性解毒剤、特にウリジンもしくはシチジンのアシル化誘導体の使用は、特許文献1に開示されている。アルキル化剤によって誘発される毒性を予防するためのクロマノールグリコシドの使用は、特許文献2に開示されている。アントラサイクリン誘導性心臓毒性を予防するための酸化防止剤の使用もまた提案されてきた(9)。化学療法薬の組織特異的毒性の弱毒化、特にα−インターフェロンもしくはβ−インターフェロンの局所投与を使用した粘膜炎の予防(特許文献3);選択的グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)アナログを使用する胃および腸副作用の予防(特許文献4);A2Bアデノシン受容体アンタゴニストを使用する肝損傷の予防(特許文献5)およびIGFBP−1成長因子の阻害剤を使用する前立腺損傷の予防(特許文献6)もまた開示されている。化学療法の全身性毒性を改善するため、および化学療法を受けている哺乳動物における健常な筋組織および脂肪組織を維持するためのアルカリホスファターゼ酵素の使用は、特許文献7に開示されている。
【0008】
化学療法に関連する毒性を予防または改善するための新規な組成物および方法の開発は、高度に望ましい。
【0009】
癌を治療するための現行の放射線療法は、早期癌および放射線感受性癌を有する患者には大きな利益を提供するが、これらの利益は放射線抵抗性腫瘍(例えば、脳腫瘍または膵臓癌)を有する患者および末期癌の患者にとってはそれほど有意ではない。これらの患者にとっては、腫瘍を根絶するために必要とされる放射線は、非忍容性または致死性の放射線損傷を誘発する可能性がある。これは特に、急速に発達する正常組織が彼らの腫瘍よりもはるかに放射線感受性であることが多く、このため同一疾患を有する成人にとっては治癒的であろう照射療法を忍容することができない小児科患者に当てはまる。正常組織への損傷は、幼齢の癌患者、中枢神経系癌、放射線抵抗性の癌および大きな腫瘍を有する末期癌の患者に対する照射療法による治療の使用を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,776,838号明細書
【特許文献2】米国特許第7,462,601号明細書
【特許文献3】米国特許第5,017,371号明細書
【特許文献4】米国特許第8,642,727号明細書
【特許文献5】米国特許第8,188,099号明細書
【特許文献6】米国特許第8,211,700号明細書
【特許文献7】米国特許第8,460,654号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
照射療法に関連する毒性を予防または改善するための新規な組成物および方法の開発が高度に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の背景に記載したように、当分野においては、化学療法および照射療法に関連する毒性を予防または改善するための新規な組成物および方法を開発するという大きな課題がある。本発明は、これやその他の課題をDNase酵素に基づく組成物および方法を提供することにより解決する。
【0013】
詳細には、1つの態様では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する毒性を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は、前記化学療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効である方法を提供する。また別の態様では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法の有効性を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において高める方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効であり、DNaseの投与は前記化学療法に関連する毒性の予防または改善をもたらす方法を提供する。
【0014】
上記の方法の1つの特定実施形態では、前記化学療法の副作用は、体重減少、骨髄毒性、血液生化学における異化変化、心筋壊死、消化管毒性、免疫抑制および好中球減少症からなる群より選択される。
【0015】
また別の態様では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する体重減少をもたらす異化状態を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する体重減少をもたらす異化状態を予防または改善するのに有効である方法を提供する。1つの特定の実施形態では、化学療法は、アントラサイクリン含有療法である。
【0016】
さらにまた別の態様では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する骨髄毒性および/または血液生化学における異化変化を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する骨髄毒性および/または血液生化学における異化変化を予防または改善するのに有効である方法を提供する。1つの特定の実施形態では、化学療法は、アントラサイクリン含有療法である。
【0017】
また別の態様では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する心臓毒性を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する心臓毒性を予防または改善するのに有効である方法を提供する。1つの特定の実施形態では、心臓毒性は、心筋壊死である。1つの特定の実施形態では、化学療法は、アントラサイクリン含有療法である。
【0018】
また別の態様では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する消化管毒性を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する消化管毒性を予防または改善するのに有効である方法を提供する。1つの特定の実施形態では、化学療法は、5−フルオロウラシル含有療法および/またはエトポシド含有療法である。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する免疫抑制を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する免疫抑制を予防または改善するのに有効である方法を提供する。1つの特定の実施形態では、化学療法は、タキサン含有療法である。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する好中球減少症を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する好中球減少症を予防または改善するのに有効である方法を提供する。1つの特定の実施形態では、化学療法は、シクロホスファミド含有療法である。
【0021】
本発明の上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、化学療法は、代謝拮抗物質、アルキル化剤、抗癌抗生物質、微小管標的薬、トポイソメラーゼ阻害剤、アルカロイド類および標的治療薬からなる群より選択される1種以上の化合物の投与を含む。
【0022】
本発明の上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、化学療法は、アントラサイクリン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル(5−FU)、エトポシド、タキサンおよびシクロホスファミドからなる群より選択される1種以上の化合物の投与を含む。
【0023】
本発明の上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、DNase酵素は化学療法の1サイクル中に投与される。本発明の上記の方法のいずれかまた別の実施形態では、DNase酵素は化学療法の1サイクル後に投与される。
【0024】
また別の態様では、本発明は、放射線療法に関連する毒性を、癌に罹患しかつ前記放射線療法を受けている対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記放射線療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0025】
また別の態様では、本発明は、放射線療法の有効性を、癌に罹患しかつ前記放射線療法を受けている対象において高める方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記放射線療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効であり、DNaseの投与は前記放射線療法に関連する毒性の予防または改善をもたらす方法を提供する。
【0026】
上記の2つの方法の1つの実施形態では、放射線療法の副作用は、皮膚の刺激もしくは損傷、疲労、悪心、嘔吐、線維症、腸損傷、記憶喪失、不妊症および二次癌からなる群より選択される。
【0027】
さらにまた別の態様では、本発明は、放射線療法に関連する体重減少を、癌に罹患しかつ前記放射線療法を受けている対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記放射線療法に関連する体重減少を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0028】
上記の3つの方法の1つの実施形態では、放射線療法は、外照射療法または全身性ラジオアイソトープ療法である。
【0029】
上記の3つの方法の1つの実施形態では、DNase酵素は、放射線療法の1サイクル中に投与される。また別の実施形態では、DNase酵素は放射線療法の1サイクル後に投与される。
【0030】
本発明の上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、DNase酵素は、DNase I(例えば、ヒトDNase Iもしくはウシ膵DNase I)またはそれらのアナログ(例えば、DNase X、DNase γもしくはDNAS1L2)である。本発明の上記の方法のいずれかのまた別の実施形態では、DNase酵素は、DNase IIである。1つの実施形態では、DNase酵素は、延長された半減期を有する(例えば、ポリシアル酸と共役する、またはアクチン結合部位の修飾によってアクチンへの結合から保護される)。
【0031】
本発明の上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、DNase酵素の治療有効量は、少なくとも0.5mg/kg/日もしくは少なくとも1,000クニッツ単位(Kunitz units:KU)/kg/日、好ましくは少なくとも1.5mg/kg/日もしくは少なくとも3,000KU/kg/日である。本発明の上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、DNase酵素の治療有効量は、0.5〜100mg/kg/日もしくは1,000〜200,000KU/kg/日、好ましくは0.5〜50mg/kg/日もしくは1,000〜100,000KU/kg/日、より好ましくは1.5〜50mg/kg/日もしくは3,000〜100,000KU/kg/日、最も好ましくは10〜50mg/kg/日もしくは20,000〜100,000KU/kg/日である。
【0032】
本発明の上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、DNase酵素は、静脈内または腹腔内投与される。本発明の上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、DNase酵素は、腸内(例えば、経口)投与される。
【0033】
本発明の上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0034】
本発明のこれらやその他の態様は、当業者には下記の説明、特許請求項および図面から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】ドキソルビシン(7.5mg/kg)の亜致死性IV投与、およびヒト組換えDNase I(15mg/kg)の連日IP注射(黒色の棒)またはプラセボ(WFI)の連日IP注射(斜線の棒)のいずれかを負荷投与された、死亡ラットにおける心筋壊死領域を示す棒グラフである。各心臓からの連続心筋顕微鏡検査サンプルは、壊死領域を定量するために自動ビデオアナライザを使用して分析した。壊死領域の総計(Sna;nm)は、各個別剖検心臓からの連続スライド30枚中の壊死領域の総計として計算した(n=3、DNase I処置ラット(黒色棒);n=5、プラセボ処置ラット(斜線棒))。
図2】エトポシド(200mg/kg)および5−フルオロウラシル(5−FU;400mg/kg)の経口投与、その後に(A)ヒト組換えDNase I(50mg/kg)によるIV処置、または(B)プラセボ(WFI)によるIV処置を受けたラットの染色した胃の写真を示す。パネル(B)の胃には多数のびらんおよび潰瘍が見られるが、パネル(A)の胃は肉眼的異常を全く有していない。
図3】シクロホスファミド(200mg/kg)の単回IP注射により好中球減少症が誘導され、その後に無処置(第I群)、あるいはヒト組換えDNase I(25mg/kg)でのIV処置(第II群)またはヒト組換えGM−CSF(200μg/kg)でのSC処置(第III群)を受けた、3つの実験群における白血球数(WBC)の動態をまとめたグラフである。垂直軸は、10WBC/Lの単位を用いてWBCを表す。水平軸は、シクロホスファミド注射後の日数を表す。その図は、例えばシクロホスファミドなどのアルキル化剤により誘導される好中球減少症に対するDNase処置の改善効果を示す。
図4】癌を誘導するためにL1210白血病細胞が移植され、その後にシトシンアラビノシド(AraC)および/またはDNase IIにより処置された動物についての生存試験データの概要を示す棒グラフである。6つの実験群が水平軸上に表示されている。第1群:陰性コントロール;第2群:AraC(陽性コントロール);第3群:AraC+DNase II(15mg/kg);第4群:AraC+DNase II(45mg/kg);第5群:DNase II(15mg/kg);第6群:DNase II(45mg/kg)。この図は、白血病のマウスの生存率に対するDNaseおよびAraC処置の相乗効果を証明している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明者らは、以前に、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素が癌を治療するための有用な物質であることを証明したが(例えば、米国特許出願公開第2010/0150903号明細書および米国特許第7,612,032号明細書を参照されたい)、これは数人の著者らによって近年確証されている特性である(10〜12)。しかし、DNaseには抗増殖性化学療法の忍容性への有意な影響が欠如すること(15)、および化学療法の毒性増加の重大な一因になることさえあること(17)も報告されてきた。
【0037】
本発明は、DNase酵素が細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法の有効性を高めるだけではなく、さらに化学療法関連毒性も有意に低下させるという本発明者らによる予想外の発見に基づく。この発見は、化学療法の忍容性へのDNaseの影響の欠如(15)および化学療法の腎毒性の増加へのDNaseの寄与(17)に関する以前の報告に照らすと、特に驚くべきことである。DNaseの化学療法関連毒性を予防および/または改善する能力は、様々なタイプのDNase酵素が共有しており、薬物および組織とは無関係に、DNaseを化学療法補助療法のための高度に望ましく強力な候補にしている。実際に、下記の実施例のセクションにおいて証明するように、様々なタイプのDNase酵素(例えば、DNase I、DNase γおよびDNase II)を使用すると、ドキソルビシン(DNAを挿入することによって作用する代謝拮抗物質)、5−FU(チミジル酸シンターゼの阻害を通して作用する代謝拮抗物質)、エトポシド(トポイソメラーゼ阻害剤)、タキサン(微小管崩壊物質)およびシクロホスファミド(アルキル化剤)などの化学療法薬の毒性を改善することができる。
【0038】
用語の定義
用語「細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法」および「化学療法」は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性薬を投与する工程を含む療法を意味するために本明細書では互換的に使用される。
【0039】
用語「抗癌剤」および「抗癌化学療法薬」は、本明細書では癌を治療するために使用されるあらゆる化学的化合物を意味するために使用される。抗癌化学療法薬は、当分野において周知である(例えば、Gilman A.G.,et al.,The Pharmacological Basis of Therapeutics,8th Ed.,Sec 12:1202−1263(1990)を参照されたい)。化学療法薬の特定の例は、本明細書を通して提供される。
【0040】
本明細書で使用する用語「化学療法の副作用」は、化学療法の必ずしも予想外ではないが望ましくなく故意ではない結果を意味する。
【0041】
本明細書で使用する用語「照射療法」、「放射線療法」および「RT」は、直接的、またはDNAを損傷させる罹患細胞内の荷電粒子を作り出すことによってのいずれかで悪性腫瘍のDNAを損傷させるための癌治療の一部としての電離放射線の医学的使用を意味するために互換的に使用される。本発明により含まれる放射線療法の一般に使用されるタイプには、例えば、外照射療法(EBRTもしくはXRT)、近接照射療法/密封線源放射線療法および全身性ラジオアイソトープ療法/非密封線源照射療法が含まれる。
【0042】
本明細書で使用する用語「照射療法の副作用」または「放射線療法の副作用」は、本明細書では、放射線療法の必ずしも予想外ではないが望ましくなく故意ではない結果を意味する。どのような副作用が発生するのかは、治療される身体の領域、1日当たり投与される用量、投与される総量、患者の一般病状および同時に実施される他の治療に依存し、例えば、皮膚の刺激もしくは損傷、疲労、悪心、嘔吐、線維症、腸損傷、記憶喪失、不妊症または二次癌を含む場合がある。
【0043】
本明細書で使用する用語「異化状態」は、化学療法または化学放射線療法を背景にして発生する場合がある急速な体重減少ならびに脂肪および骨格筋質量の減少を特徴とする状態を意味する。関連する臨床事象には、例えば、免疫抑制、筋衰弱、肺塞栓症に罹患する傾向、血栓性静脈炎およびストレス応答の変化が含まれる。
【0044】
本明細書で使用する用語「デオキシリボヌクレアーゼ」および「DNase」は、DNA骨格内のホスホジエステル結合の加水開裂を触媒するあらゆる酵素を意味するために使用される。極めて種類豊富なデオキシリボヌクレアーゼが公知であり、本発明の方法において使用できる。本発明の方法において有用なDNaseの非限定的な例には、例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼが含まれる。さらに本発明に含まれるのは、延長された半減期を有するDNase酵素である(例えば、ポリシアル酸と共役する、またはアクチン結合部位の修飾によってアクチンへの結合から保護されるDNase酵素;例えば、Gibson et al.,(1992)J.Immunol.Methods,155,249−256を参照されたい)。DNase Iは、ピリミジンヌクレオチドに隣接するホスホジエステル結合で優先的にDNAを開裂し、3’位に遊離ヒドロキシル基を備える5’5’−ホスフェート末端ポリヌクレオチドを産生し、平均するとテトラヌクレオチドを産生する。DNase Iは、一本鎖DNA、二本鎖DNAおよびクロマチンに作用する。
【0045】
用語「約」は、一部にはその数値がどのように測定または決定されるのか、すなわち測定系の限度に依存する、当業者であれば決定できる特定値に対する許容される誤差範囲内にあることを意味する。例えば「約」は、当分野における実践によって許容できる標準偏差内にあることを意味することができる。または、「約」は、所定の数値の±20%まで、好ましくは±10%まで、より好ましくは±5%まで、およびより好ましくは±1%までさえの範囲を意味することができる。または、特に生物学系もしくはプロセスに関して、この用語は数値の1桁分内、好ましくは2倍内の範囲内にあることを意味することができる。特定の数値が本出願および特許請求項に記載されている場合、他に特に記載されない限り、用語「約」は黙示的であり、この状況では特定の数値に対して許容される誤差範囲内にあることを意味する。
【0046】
本発明の状況では、本明細書で言及した疾患状態のいずれかに関連する限りにおいて、用語「治療する」、「治療」などは、そのような状態に関連する少なくとも1つの症状を軽減もしくは緩和すること、またはそのような状態の進行を緩徐化もしくは逆転させることを意味する。本発明の意味において、用語「治療する」は、さらに発症を停止させる、遅延させる(すなわち、疾患の臨床発現前の期間)および/または疾患を発生もしくは悪化させるリスクを低下させることも意味する。例えば、癌に関連して、用語「治療する」は、患者の腫瘍負荷を排除もしくは減少させる、または転移などを予防、遅延もしくは阻害することを意味する場合がある。
【0047】
本明細書で使用する、用量もしくは量に適用される用語「治療有効」は、それを必要とする対象への投与後の望ましい活性を生じさせるのに十分な化合物もしくは医薬組成物の量を意味する。本発明の文脈において、用語「治療有効」が細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法の副作用を改善または予防するためのデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)の使用に関連して使用される場合、この用語はそのような細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法の少なくとも1つの副作用を改善または予防するのに有効であるDNaseまたはDNaseを含有する医薬組成物の量を意味する。有効成分の組合せ(例えば、化学療法の副作用を改善または予防するのに有効なDNaseと他の化合物の組合せ)が投与される場合、この組合せの有効量は、別個に投与された場合に有効であったであろう各成分の量を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0048】
本発明の組成物と関連して使用される語句「医薬上許容される」は、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与された場合に生理学的に忍容される、および典型的に厄介な反応を生じさせないそのような組成物の分子的実体および他の成分を意味する。好ましくは、本明細書で使用する用語「医薬上許容される」は、連邦政府もしくは州政府の規制官庁によって承認されたこと、または哺乳動物、およびより詳細にはヒトにおいて使用するための米国薬局方もしくは一般に認識された他の薬局方に列挙されていることを意味する。
【0049】
用語「標的治療薬」は、癌が特定の分子標的を有する患者において有効な可能性があるが、そのような標的の非存在下では有効ではない可能性がある1クラスの化学的および生物学的化合物を意味するために使用される(18)。
【0050】
本明細書で使用する用語「対象」は、あらゆる哺乳動物を意味する。1つの好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。
【0051】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用するように、名詞は、状況が明白に他のことを指示していない限り、複数の対象を指す。
【0052】
本発明によると、当分野の技術の範囲内に含まれる慣習的薬理学技術および分子生物学技術が使用されてよい。そのような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、特に、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(本明細書では“Sambrook et al.,1989”);DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Oligonucleotide Synthesis(MJ.Gait ed.1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985));Transcription and Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984));Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986);Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,(1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照されたい。
【0053】
発明の治療方法
1つの態様では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する毒性を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0054】
また別の態様では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法の有効性を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において高める方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効であり、DNaseの投与は前記化学療法に関連する毒性の予防または改善をもたらす方法を提供する。
【0055】
本発明によると、DNase酵素を使用すると、広範囲の様々な化学療法薬の毒性を改善することができる。そのような薬剤の非限定的な例には、代謝拮抗物質、例えばピリミジンアナログ(例えば、5−フルオロウラシル[5−FU]、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)およびプリンアナログ、葉酸アンタゴニストおよび関連阻害剤(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));ビンカアルカノイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン)などの天然生成物を含む増殖抑制剤/有糸分裂阻害薬、微小管崩壊物質、例えばタキサン系(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビン、エピポドフィロトキシン類(例えば、エトポシド、テニポシド)、DNA損傷剤(例えば、アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン類、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、ネダプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、アクラルビシン、プラルビシン(purarubicin)、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イフォスファミド、メルファラン、メクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、ニムスチン、ラニムスチン、エストラムスチン、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびエトポシド(VP16));抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン類、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、プレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシン類(例えば、マイトマイシンC)、アクチノマイシン類(例えば、アクチノマイシンD)、ジノスタチンスチマラマー);酵素類(例えば、L−アスパラギナーゼ);ネオカルジノスタチン;抗血小板薬;抗増殖性/抗有糸分裂アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード類(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミドおよびアナログ、イミダゾールカルボキサミド、メルファラン、クロラムブシル、ナイトロジェンマスタード−N−オキシドヒドロクロライド、イフォスファミド)、エチレンイミン類およびメチルメラミン類(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、カルボコン、トリエチレンチオホスファラミド)、アルキルスルホネート類(例えば、ブスルファン、イソプロスルファントシレート)、ニトロソウレア類(例えば、カルムスチン(BCNU)およびアナログ類、ストレプトゾシン)、トラゼネス−ダカルバジン(DTIC);エポキシド型の化合物(例えば、ミトブロニトール);抗増殖性/抗有糸分裂性代謝拮抗物質、例えば葉酸アナログ類(例えば、メトトレキセート);白金配位錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトテン、アミノグルテチミド;ホルモン類、ホルモンアナログ類(例えば、エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール、アナストロゾール);抗分泌薬(例えば、ブレフェルジン;免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管形成化合物(例えば、TNP−470、ゲニステイン、ベバシズマブ)および成長因子阻害剤(例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体ブロッカー類;一酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド類;抗体類(例えば、トラスツズマブ);細胞周期阻害剤および分化誘導剤(例えば、トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン);成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能障害誘導剤;クロマチン崩壊剤;ソブゾキサン;トレチノイン;ペントスタチン;フラタミド;ポルフィマーナトリウム;ファドロゾール;プロカルバジン;アセグラトン;放射免疫療法(RIT)化合物(例えば、イブリツモマブチウキセタン、ヨウ素(131I)トシツモマブ);および標的放射性核種療法(TRT)化合物(例えば、サマリウム−153−EDTMP、ストロンチウム−89−クロライド)が含まれる。
【0056】
本発明の方法によるDNase酵素を投与する工程により予防または改善できる細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法の副作用の非限定的な例には、例えば、骨髄毒性、好中球減少症、脊髄症(例えば、白血球減少症、顆粒球減少症、リンパ球減少症、血小板減少症、赤血球減少症);血球減少症(例えば、血漿フィブリノゲン減少症);血液生化学における異化変化;消化管障害(例えば、悪心、嘔吐、食欲不振、体重減少、胃の重圧感、下痢、便秘、口内炎、食道炎);肺動脈弁閉鎖不全症(例えば、慢性肺炎、肺線維症、ARDS、ALS、肺塞栓症);皮膚障害(例えば、角質化、皮膚肥厚、色素沈着症、脱毛、皮疹、爪の変化、癌誘導性脱毛症);神経系障害(例えば、感覚異常症、うつ病、深部反射消失、神経麻痺、聴覚障害、錯話症、見当識障害、精神症状、小脳性運動失調、傾眠、昏睡、眩暈、尿意頻数、便意頻数);内分泌障害(例えば、下垂体障害、副腎機能障害、高血糖症、低血糖症);生殖器障害(例えば、性欲減退症、精子過少症、女性化乳房症、月経障害);心血管障害(例えば、心筋壊死、心筋症、不整脈、低血圧、頻拍、心不全);肝障害、膵臓障害、腎症、膀胱の不調、高尿酸血症、免疫能力の低下および感染症が含まれる。
【0057】
また別の態様では、本発明は、放射線療法に関連する毒性を、癌に罹患しかつ前記放射線療法を受けている対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記放射線療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0058】
さらに別の態様では、本発明は、放射線療法の有効性を、癌に罹患しかつ前記放射線療法を受けている対象において高める方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記放射線療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効であり、DNaseの投与は前記放射線療法に関連する毒性の予防または改善をもたらす方法を提供する。
【0059】
本発明によると、DNase酵素を使用すると、例えば外照射療法(EBRTもしくはXRT)、近接照射療法/密封線源放射線療法および全身性ラジオアイソトープ療法/非密封線源照射療法を含む様々なタイプの放射線療法の毒性を改善し、有効性を高めることができる。
【0060】
本発明の方法によるDNase酵素を投与する工程によって予防または改善できる照射療法の副作用の非限定的な例には、例えば、皮膚の刺激もしくは損傷、疲労、悪心、嘔吐、線維症、腸損傷、記憶喪失、不妊症および二次癌が含まれる。
【0061】
本発明の方法は、有害な副作用を生じさせる抗癌化学療法治療を受けている、広範囲の癌に罹患している対象において使用できる。関連する癌の非限定的な例には、例えば、乳癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、移行上皮癌、肺癌(例えば、非小細胞性肺癌(NSCLC))、腎臓癌、甲状腺癌、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病)、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、膵臓癌、肝臓癌、胆管癌、胆嚢癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膣癌、子宮頸癌、膀胱癌、神経芽腫、肉腫、骨肉腫、悪性黒色腫、扁平上皮癌、原発性骨肉腫(例えば、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、アダマンチノーム、巨細胞腫および脊索腫)および続発性(転移性)骨肉腫の両方を含む骨肉腫、軟組織肉腫、基底細胞癌、血管肉腫、血管内皮種、粘液肉腫、脂肪肉腫、骨原性肉腫、血管肉腫、血管内皮種、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜種、精巣癌、子宮癌、消化管癌、中皮腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、ワルデンストレーム・マクログロブリン血症、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、上皮癌、神経膠腫、膠芽細胞腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏枝神経膠腫、髄膜腫、網膜芽細胞腫、髄様癌、胸腺腫、肉腫などが含まれる。
【0062】
1つの実施形態では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法(例えば、ドキソルビシン療法)に関連する体重減少をもたらす異化状態を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する体重減少をもたらす異化状態を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0063】
また別の実施形態では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法(例えば、ドキソルビシン療法)に関連する骨髄毒性および/または血液生化学における異化変化を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する骨髄毒性および/または血液生化学における異化変化を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0064】
さらに別の実施形態では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法(例えば、ドキソルビシン療法)に関連する心臓毒性(例えば、心臓壊死)を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する心臓毒性を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0065】
また別の実施形態では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法(例えば、5−フルオロウラシル/エトポシド併用化学療法)に関連する消化管毒性を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する消化管毒性を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0066】
また別の実施形態では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法(例えば、タキサン療法)に関連する免疫抑制を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する免疫抑制を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0067】
さらに別の実施形態では、本発明は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法(例えば、シクロホスファミド療法)に関連する好中球減少症を、癌に罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記化学療法に関連する好中球減少症を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0068】
さらにまた別の態様では、本発明は、放射線療法に関連する体重減少を、癌に罹患しかつ前記放射線療法を受けている対象において予防または改善する方法において、対象に治療有効量のDNase酵素(例えば、DNase I(例えば、ヒト組換えDNase Iもしくはウシ膵DNase I)、DNase Iのアナログ(例えば、DNase X、DNase γおよびDNAS1L2)、DNase II、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリンならびにアセチルコリンエステラーゼ)を投与する工程を含み、前記の量のDNase酵素は前記放射線療法に関連する体重減少を予防または改善するのに有効である方法を提供する。
【0069】
上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、DNase酵素の治療有効量は、少なくとも0.5mg/kg/日もしくは少なくとも1,000KU/kg/日、好ましくは少なくとも1.5mg/kg/日もしくは少なくとも3,000KU/kg/日である。上記の方法のいずれかの1つの実施形態では、DNase酵素の治療有効量は、0.5〜100mg/kg/日もしくは1,000〜200,000KU/kg/日、好ましくは0.5〜50mg/kg/日もしくは1,000〜100,000KU/kg/日、より好ましくは1.5〜50mg/kg/日もしくは3,000〜100,000KU/kg/日、最も好ましくは10〜50mg/kg/日もしくは20,000〜100,000KU/kg/日である。
【0070】
本発明の方法のいずれかの1つの実施形態では、対象はヒトである。
【0071】
DNaseおよびDNase組成物を投与する方法
本発明の方法では、DNase酵素は、化学療法薬の投与前、投与中および/または投与後に、または放射線療法の投与前、投与中または投与後に投与することができる。好ましくは、(i)DNase酵素および化学療法薬(もしくは放射線療法)は同時に投与される、および/または(ii)DNase酵素は、化学療法薬(もしくは放射線療法)の投与の直後に投与される。DNaseは、患者に1回または一連の治療を通して、1日1回または数回投与することができる。
【0072】
本発明の方法において有用なDNase用量は、治療対象の化学療法もしくは放射線療法の副作用のタイプ、これらの副作用の重症度および経過、以前の療法、患者の臨床歴および化学療法(もしくは放射線療法)およびDNaseへの応答ならびに主治医の裁量に依存する。有用な用量範囲の非限定的な例には、0.5〜100mg/kg/日もしくは1,000〜200,000KU/kg/日、好ましくは0.5〜50mg/kg/日もしくは1,000〜100,000Kunitz units(KU)/kg/日、より好ましくは1.5〜50mg/kg/日もしくは3,000〜100,000KU/kg/日、最も好ましくは10〜50mg/kg/日もしくは20,000〜100,000KU/kg/日が含まれる。
【0073】
本発明の方法によるDNase酵素の投与は、全身性投与ならびに疾患の部位(例えば、原発性腫瘍)への直接的投与を含む任意の好適な経路によって実施できる。有用な投与経路の特定の非限定的な例には、静脈内(IV)、皮下(SC)、腹腔内(IP)、経口または吸入が含まれる。
【0074】
特定の実施形態では、DNase酵素は、医薬上許容される担体または賦形剤を用いて医薬組成物に処方される。
【0075】
本発明の方法において使用する調製物は、便宜的にも単一剤形で提示されてよく、当分野において公知の方法によって調製することができる。単一剤形を生成するために担体物質と組み合わせることのできる有効成分の量は、治療される宿主および特定の投与方式に依存して変動するであろう。単一剤形を生成するために担体物質と組み合わせることのできる有効成分の量は、一般には治療効果を生じる化合物の量であろう。
【0076】
一般に、調製物は液体担体もしくは微粒固体担体またはその両方を用いて調製することができ、その後、必要であれば製品をシェーピングすることができる。
【0077】
非経口投与のために好適な医薬組成物は、酸化防止剤、バッファー、静菌剤、調製物を予定されるレシピエントの血液と等張性にさせる溶質を含有していてよい、使用直前に無菌注射溶液もしくは分散液に再建できる1種以上の医薬上許容される無菌等張性水溶液もしくは非水溶液、分散剤、懸濁もしくはエマルジョンまたは無菌粉末と組み合わせて、1種以上の有効成分(DNaseおよび任意選択的に細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法の副作用または放射線療法の副作用を改善または予防するのに有効な他の化合物)を含むことができる。本開示の医薬組成物中に使用できる好適な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール類(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)ならびにそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルが含まれる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を使用することによって、分散剤の場合は必要とされる粒径を維持することによって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0078】
これらの組成物は、さらに保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含有することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを包含することによって保証できる。さらに、例えば糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることが望ましい場合がある。さらに、注射用医薬形の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅延させる物質の包含によって引き起こすことができる。
【0079】
注射用デポー形は、ポリラクチド−ポリグリコライドなどの生分解性ポリマー中の1種以上の有効成分のマイクロカプセル型マトリックスを形成することによって作成できる。有効成分対ポリマーの比率および使用される特定ポリマーの性質に依存して、有効成分の遊離速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)類およびポリ(アンヒドライド)類が含まれる。注射用デポー調製物は、さらに身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に有効成分を封入する工程によっても調製される。
【0080】
経口投与のための調製物は、カプセル剤、カシェ剤、ピル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、または水性もしくは非水性液体(例えば、マウスウォッシュ、嚥下すべき組成物または浣腸剤として)中の液剤もしくは懸濁剤として、または各々が規定量の1種以上の有効成分を含有している水中油型もしくは油液中水型エマルジョンとしての形態にあってよい。
【0081】
経口投与のための固体剤形(カプセル剤、錠剤、ピル剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)では、1種以上の有効成分は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどの1種以上の医薬上許容される担体および/または以下:(1)充填剤もしくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはシリル酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア;(3)保湿剤、例えばグリセロール;(4)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯もしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート類および炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えばパラフィン;(6)吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート;(8)吸着剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土;(9)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物ならびに(10)着色剤のいずれかと混合することができる。カプセル剤、錠剤およびピル剤の場合、医薬組成物は緩衝剤をさらに含むことができる。類似タイプの固体組成物もまた、例えばラクトースもしくは乳糖などの賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用することができる。
【0082】
懸濁剤は、1種以上の有効成分に加えて、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル類、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカントならびにそれらの混合物を含有することができる。
【0083】
散剤およびスプレー剤は、1種以上の有効成分に加えて、ラクトース、タルク、シリル酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物を含有することができる。スプレー剤は、追加して慣習的噴射促進剤、例えばクロロフルオロ炭化水素類および揮発性未置換炭化水素類、例えばブタンおよびプロパンを含有することができる。
【実施例】
【0084】
本発明を下記の実施例によってさらに説明して具体的に示す。しかし、本明細書のいずれかの場所でのこれらやその他の実施例の使用は、単に例示するためであり、決して本発明またはいずれか例示した用語の範囲および意味を限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書に記載したいずれか特定の好ましい実施形態には限定されない。実際に、本発明の多数の修飾および変形は、本明細書を読めば当業者には明白であり、そのような変形は本発明の精神および範囲から逸脱せずに作成することができる。このため本発明は、本発明の特許請求項が権利を与えられている同等物の全範囲に沿って添付の特許請求項によってのみ限定される。
【0085】
実施例1:ラットにおける急性ドキソルビシン毒性の改善
材料および方法
この実験では、42匹のWistar系雄性ラット(180〜200g)(Stolbovaya nursery of Russian Academy of Medical Sciencesから入手)を使用した。動物は、自由に飼料と飲料水を摂取できる標準条件下で維持した。下記のように動物を7群(各群6匹)に無作為割り付けした:
1.第I群:コントロール群(ドキソルビシンなし、DNaseなし);
2.第II群:5日間にわたる3.75mg/kg/日の用量でのドキソルビシン(LENS)の連日静脈内(IV)注射+15mg/kg/日(30,000KU/kg/日)の用量でのヒト組換えDNase I(Pharmsynthez OJSC)の連日腹腔内(IP)注射によって処置した動物;ドキソルビシンとDNase I注射は同時に投与した;
3.第III群:5日間にわたる3.75mg/kg/日の用量でのドキソルビシン(LENS)の連日IV注射+プラセボ(注射用水[WFI])の連日IP注射によって処置した動物;
4.第IV群:5日間にわたる7.5mg/kg/日の用量でのドキソルビシン(LENS)の連日IV注射+15mg/kg/日(30,000KU/kg/日)の用量でのヒト組換えDNase I(Pharmsynthez OJSC)の連日IP注射によって処置した動物;ドキソルビシンとDNase I注射は同時に投与した;
5.第V群:5日間にわたる7.5mg/kg/日の用量でのドキソルビシン(LENS)の連日IV注射+プラセボ(WFI)の連日IP注射によって処置した動物;
6.第VI群:5日間にわたる10.0mg/kg/日の用量でのドキソルビシン(LENS)の連日IV注射+15mg/kg/日(30,000KU/kg/日)の用量でのヒト組換えDNase I(Pharmsynthez OJSC)の連日IP注射によって処置した動物;ドキソルビシンとDNase I注射は同時に投与した;
7.第VII群:5日間にわたる10.0mg/kg/日の用量でのドキソルビシン(LENS)の連日IV注射+プラセボ(WFI)の連日IP注射によって処置した動物。
【0086】
実験開始から2週間にわたり生存および体重について動物を監視した。
【0087】
結果
【表1】
【0088】
表1に要約した結果は、DNaseが、ドキソルビシンの致死性を抑制し、亜致死用量のドキソルビシンが負荷投与されたラットの寿命を延ばすことを証明している。生存している動物数によって測定した致死性の抑制は、用量依存的な様式で生じた。
【0089】
【表2】
【0090】
表2に要約した結果は、DNase処置が、3.75mg/kgのLD50用量での急性ドキソルビシン負荷投与を生残したラットにおける体重減少を改善することを証明している。
【0091】
【表3】
【0092】
表3に要約した結果は、DNase処置が、3.75mg/kgのLD50用量での急性ドキソルビシン負荷投与を生残したラットにおける骨髄毒性および血液生化学における異化変化を改善することを示している。
【0093】
(第IV群および第V群)からの亜致死用量のドキソルビシン(7.5mg/kg)を負荷投与された心臓死したラットを剖検した。各心臓からの連続心筋顕微鏡検査サンプルを、壊死領域(面積)を定量するために自動ビデオアナライザを使用して分析した。壊死領域の総計(Sna;nm)は、各個別剖検心臓からの連続スライド30枚中の壊死領域の総計として計算した(n=3、第IV群に関して(図1、黒色棒);n=5、第V群に関して(図1、斜線棒))。第IV群は15mg/kg用量でヒト組換えDNase Iの連日IP注射を受けたが、第V群はプラセボ(WFI)の連日IP注射を受けた。
【0094】
図1に提示した結果は、DNase処置が、亜致死用量のドキソルビシンを負荷投与されたラットにおける心筋壊死を減少させることを証明している。
【0095】
実施例2:5−フルオロウラシル/エトポシド併用化学療法の消化管毒性の改善
材料および方法
この実験では、64匹のWistar系雄性ラット(170〜200g)(Stolbovaya nursery of Russian Academy of Medical Sciencesから入手)を使用した。動物は、自由に飼料と飲料水を摂取できる標準条件下で維持した。1日目に、エトポシド(LANCE)200mg/kgおよび5−フルオロウラシル(5−FU;EBEWE)400mg/kgを500μLの9%グルコース溶液中において、供給用ニードルを介して経口投与した。動物を各群16匹のラットごとの4群に分けた。エトポシド/5−FU負荷投与の2時間後に、ラットを以下のように処置した:
1.第I群:IVプラセボ(WFI);
2.第II群:1.5mg/kg(3,000KU/kg)用量のIVでのヒト組換えDNase I(Pharmsynthez OJSC);
3.第III群:50mg/kg(100,000KU/kg)用量のIVでのヒト組換えDNase I(Pharmsynthez OJSC);
4.第IV群:50mg/kg用量のIVでのシメチジン溶液(Gedeon Richter)。
【0096】
36時間後、全動物を安楽死させ、胃を切除し、自動ビデオアナライザシステムを使用してびらんおよび出血の存在について分析した。
【0097】
結果
【表4】
【0098】
表4に要約した結果は、DNaseが、エトポシドおよび5−FUで処置した動物において用量依存的な様式で化学療法誘導性潰瘍を抑制し、消化管びらんを示さない動物数を増加させることを証明している。50mg/kgのDNase I用量は、1.5mg/kgのDNase I用量および50mg/kg用量のシメチジンの両方と比較して、達成される保護に関して有意に優れていた。
【0099】
図2は、第III群からのラット(A)および第I群からのラット(B)の染色した胃を示している。第I群動物からの胃には多数のびらんおよび潰瘍が見られるが、第III群の動物からの胃は肉眼的異常を全く有していない。
【0100】
実施例3:タキサン誘導性免疫抑制の改善
材料および方法
10匹の6週齢の雄性(CBAxC57Bl6)F1マウス(Rappolovo animal houseから入手)に単回の20mg/kg用量のパクリタキセル(Paclitaxel−Teva)をIV投与した。1時間後に、1群5匹のパクリタキセル処置マウスに、2mg/kg用量IPで組換えマウスDNase γ(USCN Life Science Inc.)をIP注射した。1群5匹の非処置マウスには、コントロールとして機能させるために1mlのプラセボ(WFI)を同時にIP注射した。全マウスを、頸椎脱臼によって24時間後に致死させた。各群からの胸腺を収集し、セパレータ内の10%ウシ胎児血清添加RPMI 1640培地中でホモジナイズした。胸腺細胞の懸濁液を濾過し、2分間にわたり400×gで遠心機内で沈殿させ、次に同一培地を用いて再懸濁させた。胸腺細胞を、96ウエルプレートに播種し(1ウエル当たり、200μLの10%ウシ胎児血清(FCS))添加RPMI 1640中の900,000cells)、37℃、湿度100%および5% CO雰囲気下で32時間にわたりインキュベートした。次に各ウエルにHチミジン(1μC/10μl/ウエル)およびコンカナバリンA(Con A;50μL;1.25μg/mL)を添加した。さらに24時間のインキュベーション後、胸腺細胞を採取して乾燥させた。標識Hチミジン取込みを、ベックマン(Beckman)シンチレーションカウンタを使用して測定した。Con A誘導性リンパ球幼若化に関するデータを下記の表5に要約した。
【0101】
結果
【表5】
【0102】
表5に要約した結果は、DNaseが、胸腺細胞の増殖活性のタキサン誘導性抑制を改善することを証明している。
【0103】
実施例4:シクロホスファミド誘導性好中球減少症の改善
材料および方法
この実験では、30匹の10〜12週齢の雌性BALB/Cマウス(Rappolovo animal houseから入手)を使用した。動物は、自由に飼料と飲料水を摂取できる標準条件下で維持した。1日目に、200μLのWFI中の200mg/kgのシクロホスファミド(Cyclophosphanum−LANS)の単回IP注射によって好中球減少症を誘導した。2日目に開始して、その後以下のように処置した:
1.第I群(n=10):コントロール(処置なし);
2.第II群(n=10):2〜5日目に25mg/kg/日(50,000KU/kg/日)の用量でヒト組換えDNase I(Pharmsynthez OJSC)をIV注射して動物を処置した;
3.第III群(n=10):2〜5日目に200μg/kg/日の用量でヒト組換えGM−CSF(Neostim、Pharmsynthez OJSC)を皮下(SC)注射して動物を処置した。
【0104】
各動物における白血球数(WBC)を、血球計数装置を使用して10日間の実験の間毎日監視した。
【0105】
結果
図3のグラフは、3つの実験群における白血球数(WBC)の動態を要約している。垂直軸は、10WBC/Lの単位を用いてWBCを表す。水平軸は、シクロホスファミド注射後の日数を表す。
【0106】
図3に示した結果は、DNaseが、例えばシクロホスファミドなどのアルキル化剤により誘導された好中球減少症を改善することを証明している。特に重要なのは、DNase処置はWBC数の典型的な初期減少を防止するが、GM−CSF処置は初期減少を防止できないことである。
【0107】
実施例5:DNase処置と抗癌化学療法との相乗作用
材料および方法
DNaseとヌクレオシドアナログ化学療法薬であるシトシンアラビノシド(AraC)とを併用した場合に起こりうる相乗作用を評価するために、DBA2マウス(8〜10週齢;24〜26g;Rappolovo animal houseから入手)に、癌を誘導するために0日目にL1210白血病細胞(1x10cells/マウス;Petrov Institite of Oncology collectionから入手した細胞)をIP移植した。DNaseおよびAraCによる処置は、実験1日目に開始した。シトシンアラビノシド(AraC;Cytosar;Pfizer)は、2、5および8日目に1,000mg/kgの用量でIP注射した。注射した用量は、以前の実験(13〜14)に基づき、そのモデルおよび注射経路に関して適切であると考えられた。DNase II(Wornington)は、1、3、5、8、10、12、15、17および19日目に15mg/kg/日および45mg/kg/日の用量でIP注射した。
【0108】
下記のように動物を6群(各群6匹)に無作為割り付けした:
1.第I群:陰性コントロール(処置なし);
2.第II群:陽性コントロール(AraCにより処置した動物);
3.第III群:AraCおよび15mg/kgのDNaseにより処置した動物;
4.第IV群:AraCおよび45mg/kgのDNaseにより処置した動物;
5.第V群:AraCを使用せずに15mg/kgのDNaseにより処置した動物;
6.第VI群:AraCを使用せずに45mg/kgのDNaseにより処置した動物
【0109】
結果
生存データを図4に要約した。図4の垂直軸は、L1210白血病細胞の移植後の日数で測定した生存性を表している。6つの実験群が水平軸上に示されている:第1群−陰性コントロール;第2群−AraC(陽性コントロール);第3群−AraC+DNase II(15mg/kg);第4群−AraC+DNase II(45mg/kg);第5群−DNase II(15mg/kg);第6群−DNase II(45mg/kg)。
【0110】
図4に要約した結果は、AraC単独(第II群)およびDNase II単独(第V群および第VI群)による処置がいずれも、非処置マウス(第I群)と比較して優れた生存率を生じさせることを示している。しかしながら、AraCとDNaseの併用は、いずれかの処置単独と比較して明白な生存率の利点を生じさせる。生存率に対するこの併用処置の相乗作用は、DNaseの用量増加に対して用量依存性であった。
【0111】
実施例6:DNase処置は有効性を増加させ、癌照射療法の毒性を低下させる
材料および方法
DNaseと放射線療法を併用した場合に起こりうる相乗作用を評価するために、60匹のSHRマウス(12〜14週齢;28〜32g;Rappolovo animal houseから入手)に、腹水腫瘍増殖を誘導するために0日目にエールリヒ(Erlich)癌細胞(1x10cells/マウス;Petrov Institite of Oncology collectionから入手した細胞)をIP移植した。照射療法は、コバルト60遠隔治療装置を使用して実施した。マウスの腹部領域を外部照射によって処置した。分割照射線量は、5日間にわたり1日当たり200cGyであった。動物を、以下のように処置した6群に分けた:第1群:照射療法単独(5日間にわたり、1日当たり外部照射200cGy);第2群:1日2回20mg/kg/日での組換えヒトDNAse 1(Pharmsynthez)の筋肉内投与;第3群:1日2回40mg/kg/日での組換えヒトDNAse 1(Pharmsynthez)の筋肉内投与;第4群:照射療法(5日間にわたる外部照射で1日当たり200cGy)+1日2回20mg/kg/日での組換えヒトDNAse I(Pharmsynthez)の筋肉内投与;第5群:照射療法(5日間にわたる外部照射で1日当たり200cGy)+1日2回40mg/kg/日での組換えヒトDNAse I(Pharmsynthez)の筋肉内投与。第6群は、プラセボ(注射用水)を摂取したコントロール群であった。
【0112】
結果
エールリヒ癌の移植後16日目の動物の生存率および体重の動態を表6に要約した。
【表6】
【0113】
表6に要約した結果は、放射線療法単独(第1群)およびDNase I単独(第2群および第3群)での処置がいずれも、非処置マウス(第6群)と比較して優れた生存率を生じさせることを示している。しかしながら、放射線療法とDNaseの併用は、いずれかの処置単独と比較して明白な生存率の利点を生じさせる。生存率に対するこの併用処置の相乗作用は、DNaseの用量増加に対して用量依存性であった。DNase処置は、放射線療法により誘導される体重減少も明白に防止する。
【0114】
参考文献
1. Joshi et al.,2007,J.Neurosci.Res.85:497−503.
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18. Gerber D.,Am Fam Physician,2008;77(3):311−319
【0115】
本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態により範囲を限定することは意図されていない。実際に、本明細書に記載した形態に加えた本発明の様々な修飾は、上述の説明から当業者には明白になるであろう。そのような修飾は、添付の特許請求項の範囲内に含まれることが意図されている。
【0116】
本明細書で言及した全ての特許、出願、刊行物、試験方法、文献およびその他の物質は、あたかも本明細書に物理的に存在するかのように、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
他の実施形態
1.細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する毒性を、がんに罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は、前記化学療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効である、方法。
2.細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法の有効性を、がんに罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において高める方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は、前記化学療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効であり、前記DNaseの投与は前記化学療法に関連する毒性の予防または改善をもたらす、方法。
3.前記化学療法の副作用は、体重減少、骨髄毒性、血液生化学における異化変化、心筋壊死、消化管毒性、免疫抑制および好中球減少症からなる群より選択される、実施形態1または2に記載の方法。
4.細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する体重減少をもたらす異化状態を、がんに罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は、前記化学療法に関連する体重減少をもたらす異化状態を予防または改善するのに有効である、方法。
5.細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する骨髄毒性および/または血液生化学における異化変化を、がんに罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は、前記化学療法に関連する骨髄毒性および/または血液生化学における異化変化を予防または改善するのに有効である、方法。
6.細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する心臓毒性を、がんに罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は、前記化学療法に関連する心臓毒性を予防または改善するのに有効である、方法。
7.前記心臓毒性は心筋壊死である、実施形態6に記載の方法。
8.細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する消化管毒性を、がんに罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は、前記化学療法に関連する消化管毒性を予防または改善するのに有効である、方法。
9.細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する免疫抑制を、がんに罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は、前記化学療法に関連する免疫抑制を予防または改善するのに有効である、方法。
10.細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性化学療法に関連する好中球減少症を、がんに罹患しかつ前記化学療法を受けているかまたは受けると考えられる対象において予防または改善する方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は、前記化学療法に関連する好中球減少症を予防または改善するのに有効である、方法。
11.前記化学療法は、代謝拮抗物質、アルキル化剤、抗がん抗生物質、微小管標的薬、トポイソメラーゼ阻害剤、アルカロイド類および標的治療薬からなる群より選択される1種以上の化合物の投与を含む、実施形態1〜10のいずれかに記載の方法。
12.前記化学療法は、アントラサイクリン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル(5−FU)、エトポシド、タキサンおよびシクロホスファミドからなる群より選択される1種以上の化合物の投与を含む、実施形態1〜10のいずれかに記載の方法。
13.前記化学療法は、アントラサイクリン含有療法である、実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
14.前記化学療法は、5−フルオロウラシルおよび/またはエトポシド含有療法である、実施形態1〜3および8のいずれかに記載の方法。
15.前記化学療法は、タキサン含有療法である、実施形態1〜3および9のいずれかに記載の方法。
16.前記化学療法は、シクロホスファミド含有療法である、実施形態1〜3および10のいずれかに記載の方法。
17.前記DNase酵素は、前記化学療法の1サイクル中に投与される、実施形態1〜16のいずれかに記載の方法。
18.前記DNase酵素は、前記化学療法の1サイクル後に投与される、実施形態1〜16のいずれかに記載の方法。
19.放射線療法に関連する毒性を、がんに罹患しかつ前記放射線療法を受けている対象において予防または改善する方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は前記放射線療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効である、方法。
20.放射線療法の有効性を、がんに罹患しかつ前記放射線療法を受けている対象において高める方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は前記放射線療法の少なくとも1つの副作用を予防または改善するのに有効であり、前記DNaseの投与は前記放射線療法に関連する毒性の予防または改善をもたらす、方法。
21.前記放射線療法の副作用は、皮膚の刺激もしくは損傷、疲労、悪心、嘔吐、線維症、腸損傷、記憶喪失、不妊症および二次がんからなる群より選択される、実施形態19または20に記載の方法。
22.放射線療法に関連する体重減少を、がんに罹患しかつ前記放射線療法を受けている対象において予防または改善する方法であって、前記対象に治療有効量のDNase酵素を投与する工程を含み、前記量のDNase酵素は、前記放射線療法に関連する体重減少を予防または改善するのに有効である、方法。
23.前記放射線療法は、外照射療法または全身性ラジオアイソトープ療法である、実施形態19〜22のいずれかに記載の方法。
24.前記DNase酵素は、前記放射線療法の1サイクル中に投与される、実施形態19〜23のいずれかに記載の方法。
25.前記DNase酵素は、前記放射線療法の1サイクル後に投与される、実施形態19〜23のいずれかに記載の方法。
26.前記DNase酵素は、DNase Iまたはそのアナログである、実施形態1〜25のいずれかに記載の方法。
27.前記DNase I酵素アナログは、DNase γである、実施形態26に記載の方法。
28.前記DNase I酵素は、ヒト組換えDNase Iである、実施形態26に記載の方法。
29.前記DNase酵素は、DNase IIである、実施形態1〜26のいずれかに記載の方法。
30.前記DNase酵素は、延長された半減期を有する、実施形態1〜26のいずれかに記載の方法。
31.前記DNase酵素の治療有効量は、0.5〜50mg/kg/日の範囲内にある、実施形態1〜30のいずれかに記載の方法。
32.前記DNase酵素の治療有効量は、1.5〜50mg/kg/日の範囲内にある、実施形態1〜30のいずれかに記載の方法。
33.前記DNase酵素の治療有効量は、10〜50mg/kg/日の範囲内にある、実施形態1〜30のいずれかに記載の方法。
34.前記DNase酵素は、静脈内または腹腔内投与される、実施形態1〜33のいずれかに記載の方法。
35.前記DNase酵素は、経腸投与される、実施形態1〜33のいずれかに記載の方法。
36.前記DNase酵素は、経口投与される、実施形態35に記載の方法。
37.前記対象はヒトである、実施形態1〜36のいずれかに記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3
図4