(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明を想到するまでの間に行った基礎的な検討内容から説明する。
【0013】
図1(a)、(b)は、従来の吐水装置310を示す側面断面図、平面断面図であり、(c)は吐水装置310から吐き出される膜状水Wを概略的に示す正面図である。
【0014】
吐水装置310は吐水部材313を備える。吐水部材313にはスリット状の吐出口311と、吐出口311に水を供給するための吐出通路333とが形成され、吐出通路333の内面には流入口349が形成される。吐水部材313では流入口349から吐出通路333内に水が送り込まれると、吐出口311から幅広の膜状水Wが吐き出される。以下の説明では吐出口311が延びる方向を左右方向Xとい、これに直交する水平方向を前後方向Yといい、鉛直方向を上下方向Zという。
【0015】
ここで、吐出通路333内に供給される水流には、流入口349から流入したときに、急激な流路断面の変化により乱れが生じる。吐出口311から吐き出される水流は、この流入口349から流入したときの乱れの影響を受けて流速がばらつき、膜状水Wの形状が乱れ易くなる。
【0016】
また、幅広な膜状水Wを吐き出すうえで、吐出通路333は、その通路幅が広く、かつ、その通路高さが低い幅広扁平な形状となるため、その内部を流れる水流も同様に厚さが薄くなる。よって、吐出口311から吐き出される水流は、吐出通路333内での乱流や異物の引っかかり等の影響を受け易く、この点からも流速がばらつき易い。
【0017】
さらに、流入口349から吐出口311までの距離は吐出口311の幅方向位置によって変化し、膜状水Wの幅寸法が大きくなるほど、最小距離と最大距離との差が大きくなりやすい。よって、吐出口311から吐き出される水流は、膜状水Wの幅寸法が大きくなるほど幅方向位置によって流速にばらつきが生じ易く、膜状水Wの形状が乱れ易くなる。
【0018】
また、吐出口311から吐き出される膜状水Wには表面張力が作用している。よって、膜状水Wは、吐出口311から離れるほど表面張力により幅寸法を狭めるようにすぼまり易い。
【0019】
そこで、本発明者は、第一の工夫として、上流側から流入する水を貯溜水として溜めるための貯溜室と、貯溜室内の貯溜水を吐出口に送り出すための絞り流路とを吐出通路に形成した。これにより、上流側から貯溜室に流入する水は、吐出通路の通路高さを一定にする場合よりも流速が低下し、吐出通路の幅方向で流速が均一となるように効果的に整流される。この結果、吐出口から吐き出される水流の流速を幅方向で均一にし易くなり、膜状水の形状の乱れを抑えられる。
【0020】
また、本発明者は、第二の工夫として、貯溜室側から吐出口側に近づくにつれて吐出通路の通路幅が広がるような形状にした。これにより、吐出通路の側面に沿って水流が流れ、吐出口の幅方向両端部から吐き出される水流に幅方向外側に向かう速度成分を含めることができる。この結果、膜状水が表面張力によりすぼまり始めるタイミングを遅らせることができ、吐出口から吐き出されてから着水するまでの間にかけての広い範囲で膜状水のすぼまりを抑えられる。
【0021】
ここで、本発明者は、上述の工夫をした吐水装置を用いて実験的検討を進めた結果、更なる課題として、吐出通路の通路幅の広がる程度があまりに大きいと、吐出口から吐き出される膜状水が幅方向に分断されてしまう場合があるという知見を得た。これは、吐出口の幅方向両端部から吐き出される水流の幅方向外側に向かう速度成分が大きくなりすぎ、幅方向両端部から吐き出される水流が幅方向中央部から吐き出される水流より離れ易くなるためと考えられる。
【0022】
この問題を解決するうえで、本発明者は、吐出通路の幅方向両側の側面がなす角度について所定の範囲とすれば、膜状水のすぼまりを抑えつつ、膜状水の分断を抑え易くなり、膜状水の形状の乱れを抑えられるという知見を得た。以下、本発明に係る実施形態の詳細を説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
図2は第1実施形態に係る吐水装置10の使用状態を示す斜視図である。吐水装置10は浴槽装置100に用いられる。浴槽装置100は、吐水装置10の他に、浴槽110を備える。浴槽110は、上部が開口する箱状に形成され、内部には浴槽水111が貯溜される。浴槽110の内側面には、入浴者が入浴姿勢をとるときに、その背中が接触する背側面113が設けられる。浴槽110には、その背側面113の上側にあるリム部115上に設置面117が設けられ、設置面117に吐水装置10が設置される。
【0024】
図3は吐水装置10に用いられる給水系120を示す構成図である。給水系120は、吐水装置10の上流側に設けられる給水ポンプ121を備える。給水ポンプ121は、吐水装置10の導水部41(後述する)に吐出側導管123を介して接続され、給水源となる浴槽110に吸引側導管125を介して接続される。給水ポンプ121は、その駆動時において、吸引側導管125を通して浴槽110内の浴槽水111を吸引し、吐出側導管123を通して吐水装置10の導水部41に水を圧送する。吐水装置10は導水部41に水が圧送されると本体部39(後述する)から膜状水Wを吐き出す。
【0025】
図4は吐水装置10の正面図である。吐水装置10はスリット状の吐出口11が形成される吐水部材13を備え、吐出口11から前方に膜状水が吐き出される。以下の説明では吐出口11が延びる方向を左右方向Xとい、これに直交する水平方向を前後方向Yといい、鉛直方向を上下方向Zという。
【0026】
図5は吐水装置10の分解斜視図である。吐水装置10は吐水部材13と外装カバー15を備える。吐水部材13は、下側分割部材17と、上側分割部材19を組み付けて構成される。各分割部材17、19は吐水部材13を上下方向Zに分割した形状を有する。
【0027】
図6は吐水装置10の使用状態を示す側面断面図である。本図は
図4のA−A線断面図でもある。本図では後述する柱状部59を省略する。下側分割部材17は、
図5、
図6に示すように、下壁部21と、一対の側壁部23と、後壁部25を有する。下壁部21は、設置面117に載せられる。各側壁部23は下壁部21の左右両側部から立ち上がり、後壁部25は下壁部21の後部から立ち上がる。
【0028】
上側分割部材19は、
図6に示すように、第1上壁部27と、第2上壁部29とを有する。第1上壁部27は下壁部21の上方に配置され、各側壁部23及び後壁部25に上方から当接される。第2上壁部29は第1上壁部27の上方に配置され、各上壁部27、29の間には中空空間35が設けられる。
【0029】
上側分割部材19の前部には照明装置37が取り付けられる。照明装置37は所定の波長の有色光や白色光を前方に投光する。これら有色光等は膜状水や入浴者等に投光され、良好な視覚効果が得られる。外装カバー15は照明装置37を上方から覆うとともに、吐水部材13の一部を前方から覆うように上側分割部材19に取り付けられる。
【0030】
下側分割部材17と上側分割部材19は図示しないねじ等の留め具により脱着可能に組み付けられる。留め具は、
図5に示すように、下側分割部材17の側壁部23、後壁部25や、下壁部21から上側分割部材19に向けて突き出る柱状部59に形成される挿通孔61に挿通され、上側分割部材19に先端部が取り付けられる。
【0031】
吐水部材13は、
図6に示すように、本体部39と、導水部41と、を備える。本体部39は、下側分割部材17の各壁部21、23、25と上側分割部材19の第1上壁部27により構成される。本体部39は、設置面117上に載せられ、左右方向Xに延びるように扁平に形成される。導水部41は、本体部39から下方に突出し、左右方向Xに間隔を空けて複数設けられる(
図4参照)。
【0032】
導水部41は、浴槽110の設置面117に形成される貫通孔119に挿通される。導水部41には下流側に給水するための導水路43が内部に形成され、その先端部には吐出側導管123が接続される。導水部41の設置面117と反対側に突き出た部位にはナット等の固定部材131がねじ込み等により取り付けられる。吐水装置10は、本体部39と固定部材131の間に浴槽110が挟み込まれることにより浴槽110に固定される。なお、固定部材131と浴槽110の間にはパッキン等のシール部材133が介装される。
【0033】
本体部39には、その前部に開口する吐出口11と、吐出口11に水を供給するための吐出通路33とが形成される。吐出口11と吐出通路33は下側分割部材17と上側分割部材19の間に形成される。より詳細には、下側分割部材17の各壁部21、23、25と、上側分割部材19の第1上壁部27とにより囲まれて形成される。
【0034】
図7(a)は吐出口11や吐出通路33を示す平面図である。本図は下側分割部材17の平面図でもある。吐出口11は、平面視において、左右方向Xに直線状に延びるように形成される。吐出通路33は、平面視において、左右方向Xに延びるように扁平に形成される。
【0035】
吐出通路33は、導水路43から水が送り込まれる流入口49と吐出口11とを連通する。吐出通路33には、
図6、
図7に示すように、貯溜室45と、絞り流路47が形成される。貯溜室45の内壁面である下面45aには流入口49が複数形成される。貯溜室45には上流側である導水路43から流入口49を通して水が流入し、その水が貯溜水として一時的に溜められる。
【0036】
絞り流路47は貯溜室45の下流側に設けられ、貯溜室45と吐出口11を連通する。絞り流路47は、その通路高さが貯溜室45より小さくなるように形成される。貯溜室45内の貯溜水は絞り流路47を通して吐出口11に送り出される。貯溜水は絞り流路47を通るときに絞られることで流速が高まり、吐出口11から勢いよく吐き出される。
【0037】
吐出通路33の幅方向両側の側面33aは、
図7(a)に示すように、貯溜室45側から吐出口11側に近づくにつれて、吐出通路33の通路幅が広がるように形成される。より詳細には、各側面33aは、吐出口11より奥側にある吐出通路33の奥面33bから吐出口11にかけての範囲において、吐出通路33の通路幅が連続的に広がるように形成される。
【0038】
図7(b)は吐出通路33の幅方向両側の側面33aの一部を示す図である。吐出口11の幅方向と平行な仮想線をL1とし、吐出通路33の側面33aにおいて吐出口11の開口縁51を通る接線をL2とする。この仮想線L1は、吐出口11の幅方向である左右方向Xと平行であって、吐出口11の幅方向両側の開口縁51を通る線である。このとき、吐出通路33の側面33aは、仮想線L1と接線L2とがなす鋭角での角度θ1が45°以上90°未満となるように形成される。この理由を説明する。
【0039】
図8(a)、(b)は吐出口11から吐き出される膜状水Wを概略的に示す正面図である。角度θ1を90°未満にすると、貯溜室45内の貯溜水が絞り流路47を通して吐出口11から吐き出されるとき、吐出通路33の側面33aに沿って水流が流れ、吐出口11の幅方向両端部11aから吐き出される水流に幅方向外側に向かう速度成分を含められる。この結果、
図8(a)に示すように、膜状水Wが表面張力によりすぼまり始めるタイミングを遅らせることができ、吐出口11から吐き出されてから着水するまでの間にかけての広い範囲で膜状水Wのすぼまりを抑え易くなる。
【0040】
一方、角度θ1が45°未満であると、本発明者が実験的検討をした結果、
図8(b)に示すように、吐出口11から吐き出される膜状水Wが幅方向に分断されてしまう場合があった。これは、吐出口11の幅方向両端部11aから吐き出される水流の幅方向外側に向かう速度成分が大きくなりすぎ、吐出口11の幅方向両端部11aから流れる水流が幅方向中間部11bから流れる水流より離れ易くなるためと考えられる。この角度θ1が45°以上であると、膜状水Wの幅方向の分断を抑え易くなるという知見を得たため、このように定めた。
【0041】
図7に戻り、吐出通路33の両側面33aは、吐出通路33の奥面33bから吐出口11に近づくにつれて幅方向内側に寄るように湾曲する円弧部53により形成される。この奥面33bは吐出通路33の貯溜室45を区画する壁面として設けられる。円弧部53は、吐出通路33の奥面33bに連なる位置から吐出口11にかけての範囲に設けられる。この理由を説明する。
【0042】
図9(a)は吐出通路33の側面33aが直線部55により形成される場合の水の流れの一部を示す図である。本図は本発明の変形例として示す。直線部55は吐出通路33の奥面33bから吐出口11に向けて直線状に形成される。なお、本図に示す形態でも、吐出通路33の側面33aのなす角度θ1が45°以上90°未満となるように形成されるため、膜状水Wのすぼまりを抑えつつ、膜状水Wの分断を抑え易くなる。
【0043】
流入口49から流入する水流の一部は吐出通路33の奥側を左右方向Xに流れる。ここで、
図9(a)に示す形状の場合、この水流は、吐出通路33の側面33aに対して比較的に大きい角度θ2で衝突する。
【0044】
図9(b)は、吐出通路33の側面33aが円弧部53により形成される場合の水の流れの一部を示す図である。この場合、吐出通路33の奥側を左右方向Xに流れる水流は、吐出通路33の側面33aが直線状に形成される場合(
図9(a)参照)と比較して、吐出通路33の奥側を流れるものほど、吐出通路33の側面33aに対して衝突するときの角度θ2が小さくなる。このため、吐出通路33の奥側を左右方向Xに流れる水流は、吐出通路33の側面33aに衝突しても流速が低下し難く、勢いを保ったまま吐出通路33の側面33aに沿って案内され易くなる。この結果、吐出口11の幅方向端部11aから接線L2に沿って水流が吐き出され易くなり、そこから幅方向外側に向かう速度成分を含む水流を吐き出し易くなる。よって、吐出通路33の側面33aが直線部55により形成される場合より、吐出口11の幅方向端部11aから接線L2に沿った水流を吐き出し易くなり、膜状水のすぼまりを安定して抑え易くなる。
【0045】
以上の実施形態に係る吐水部材13では、給水ポンプ121(
図3参照)から圧送される水が導水路43を通して流入口49から貯溜室45内に流入し、貯溜室45内に一時的に貯溜水として溜められる。貯溜室45内に貯溜水が溜められた状態で流入口49から水が送り込まれることにより、貯溜室45内の貯溜水が加圧され、その水圧により絞り流路47を通して貯溜水が吐出口11に送り出され、吐出口11から膜状水が吐き出される。
【0046】
ここで、上流側である流入口49から流入する水は、流入口49から絞り流路47の入口47aに向けて広がるように流れる。この水流は貯溜室45を通るときに流速が低下し、流入口49から絞り流路47の入口47a(
図6参照)に到達するまでの間に、吐出通路33の幅方向で流速が均一となるように効果的に整流される。この結果、吐出口11から吐き出される水流の流速を幅方向で均一にし易くなり、膜状水の形状の乱れを抑えられる。
【0047】
また、吐出口11の奥側から吐出口11側に向かうにつれて吐出通路33の通路幅が広がるような形状であるため、膜状水のすぼまりを抑え易くなる。特に、吐出通路33の側面33aがなす角度θ1を45°以上90°未満としているため、膜状水のすぼまりを抑えつつ、膜状水の分断を抑えられる。これにより吐出口11から吐き出される膜状水の形状の乱れを抑えられ、美観に優れた膜状水を吐き出すことが可能となる。
【0048】
なお、吐出口11の幅寸法は、特に限られない。本発明者の知見によると、従来の吐水装置では、たとえば、幅寸法が150mm以上になると膜状水の形状が乱れ易くなる。よって、吐出口11の幅寸法が150mm以上のものに本発明を適用すれば、特に効果的に膜状水の形状の乱れを抑えられる。
【0049】
[第2の実施の形態]
図10(a)は第2実施形態に係る吐水装置10の吐出口11や吐出通路33を示す平面図であり、(b)は吐出通路33の側面33aと吐出口11の一部を示す図である。以下の説明では第1実施形態と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
吐出口11は、平面視において、吐出口11から奥側に向かう方向に凹むように湾曲する円弧状に形成される。吐出通路33の幅方向両側の側面33aは、本実施形態においても、仮想線L1と接線L2とがなす鋭角での角度θ1が45°以上90°未満となるように形成される。本実施形態でも、第1実施形態と同様に、吐出口11から吐き出される膜状水の形状の乱れを抑え易くなる。このように、吐出口11はスリット状に形成されていればよく、その形状は特に限られない。
【0051】
[第3の実施の形態]
図11(a)は第3実施形態に係る吐水装置10の吐出口11や吐出通路33を示す平面図であり、(b)は吐出通路33の側面33aの一部を示す図である。吐出通路33の幅方向両側の側面33aは入側面部63と奥側面部65により形成される。入側面部63は吐出通路33の吐出口11側にて開口縁51に連なるように設けられる。奥側面部65は入側面部63より吐出通路33の奥側に設けられる。各面部63、65は吐出口11から吐出通路33の奥面33bに近づくにつれて通路幅を狭めるように直線状に形成される。各面部63、65は、それらの境界部分57が幅方向外側に向けて凸となるように形成される。各面部63、65は、入側面部63を通る接線L2と仮想線L1とがなす角度θ1より、奥側面部65を通る接線L3と仮想線L1とがなす角度θ3が小さくなるように形成される。
【0052】
吐出通路33の幅方向両側の側面33aは、本実施形態においても、仮想線L1と接線L2とがなす鋭角での角度θ1が45°以上90°未満となるように形成される。よって、本実施形態でも、吐出口11から吐き出される膜状水の形状の乱れを抑え易くなる。
【0053】
また、本実施形態に係る吐水装置10でも、吐出通路33の奥側を左右方向Xに流れる水流は、吐出通路33の側面33aが単に直線状に形成される場合(
図9(a)参照)と比較して、吐出通路33の側面33aである奥側面部65に対して衝突するときの角度が小さくなる。このため、吐出通路33の奥側を左右方向Xに流れる水流は、吐出通路33の側面33aに衝突しても流速が低下し難く、勢いを保ったまま吐出通路33の側面33aに沿って案内され易くなる。この結果、吐出口11の幅方向端部11aから接線L2に沿った水流を吐き出し易くなり、膜状水のすぼまりを安定して抑え易くなる。
【0054】
なお、同様の作用効果を発揮するうえで、以下のような構造としてもよい。吐出通路33の側面33aは、第3実施形態では単数の奥側面部65を有したが、
図12(a)に示すように、複数の奥側面部65を有してもよい。奥側面部65は、入側面部63より奥側に設けられる第1奥側面部65Aと、第1奥側面部65Aより奥側に設けられる第2奥側面部65Bを有する。各奥側面部65A、65Bは、第1奥側面部65Aを通る接線L3と仮想線L1とがなす角度θ3より、第2奥側面部65Bを通る接線L4と仮想線L1とがなす角度θ4が小さくなるように形成される。いずれの場合でも、入側面部63及び奥側面部65は、吐出口11側にあるものより吐出口11より奥側にあるものの方が、各面部63、65を通る接線と仮想線L1とがなす角度が小さくなるように形成されていればよい。
【0055】
また、吐出通路33の奥側面部65は、第3実施形態では直線状に形成されたが、
図12(b)に示すように、吐出口11から吐出通路33の奥面33bに近づくにつれて通路幅を狭めるように湾曲する円弧状に形成されてもよい。この場合も、入側面部63を通る接線L2と仮想線L1とがなす角度θ1より、奥側面部65を通る接線L3と仮想線L1とがなす角度θ3が小さくなるように形成される。なお、入側面部63が奥側面部65のように円弧状に形成されてもよい。
【0056】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0057】
吐水装置10は、その設置対象となる基体が浴槽110である例を説明したが、基体の具体的構成はこれに限られない。吐水装置10は、この他にも洗面所の洗面台や、キッチンの流し台等を基体として設置されてもよい。いずれの場合でも、基体に設置面117を設け、その設置面117に吐水装置10を設置してよい。また、設置面117は浴槽110のリム部115上に設けられる例を説明したが、その位置はこれに限られない。
【0058】
下側分割部材17と上側分割部材19は留め具により脱着可能に組み付けられたが、これに限られず、スナップフィット等により組み付けられてもよい。流入口49は貯溜室45の下面45aに形成されたが、貯溜室45の内壁面に形成されていればよく、その奥面33bや側面に形成されていてもよい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の効果を実施例により更に説明する。本実施例では以下に説明する比較例1〜3、発明例1〜3の吐水装置を用いて、膜状水の形状を確認することとした。
【0060】
図7に示すような形状の吐水部材13をもとに角度θ1の異なる吐水部材を作成し、これを発明例1〜3、比較例1、2として用いた。発明例1〜3では、それぞれ吐出通路33の両側面33aは、その角度θ1を69°、50°、80°とした。比較例1、2では、それぞれ吐出通路33の側面33aは、その角度θ1を90、40°とした。
【0061】
この他に、
図13に示すような形状の吐出通路33を有する吐水部材13を作成し、これを比較例3として用いた。比較例3では、吐出通路33の側面33aは、吐出口11の開口縁51に連なる直線状の入側面部63と、吐出通路33の奥側に設けられる円弧状の奥側面部65とを有する。比較例3では、吐出通路33の入側面部63は、その角度θ1を90°とした。
【0062】
いずれの例においても、吐出口11は幅寸法が435[mm]であり、上下方向高さを1[mm]としたうえで、流入口49には給水ポンプ121から供給速度33[l/min]の条件で水を送り込んだ。
【0063】
この結果、発明例1〜3では膜状水にすぼまりや分断が見られず、膜状水の形状の乱れを抑えられることを確認した。一方、比較例1、3では角度θ1が90°であったため、膜状水が大きくすぼまった。また、比較例2では角度θ1が45°未満の40°であったため、膜状水が幅方向に分断されてしまった。