特許第6761939号(P6761939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6761939-金属化フィルムの製造方法 図000002
  • 特許6761939-金属化フィルムの製造方法 図000003
  • 特許6761939-金属化フィルムの製造方法 図000004
  • 特許6761939-金属化フィルムの製造方法 図000005
  • 特許6761939-金属化フィルムの製造方法 図000006
  • 特許6761939-金属化フィルムの製造方法 図000007
  • 特許6761939-金属化フィルムの製造方法 図000008
  • 特許6761939-金属化フィルムの製造方法 図000009
  • 特許6761939-金属化フィルムの製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761939
(24)【登録日】2020年9月10日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】金属化フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   H01G4/32 551A
   H01G4/32 511A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-546395(P2017-546395)
(86)(22)【出願日】2016年10月4日
(86)【国際出願番号】JP2016004466
(87)【国際公開番号】WO2017068758
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-206825(P2015-206825)
(32)【優先日】2015年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】斯波 将希
(72)【発明者】
【氏名】糸井 真介
(72)【発明者】
【氏名】安達 博
(72)【発明者】
【氏名】高本 幸典
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−231389(JP,A)
【文献】 特開平10−303056(JP,A)
【文献】 特開2008−124245(JP,A)
【文献】 特開昭59−103323(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/069211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムと、前記誘電体フィルムの表面に、蒸着金属よりなる互いに抵抗値の異なる複数の部分を有する金属蒸着電極と、前記蒸着金属の存在しない絶縁マージンとを備えた金属化フィルムの製造方法であって、
減圧雰囲気で、前記誘電体フィルムの前記表面の前記金属蒸着電極の前記複数の部分を形成する領域にオイルを付着させた後に、前記オイルを付着させた前記誘電体フィルムの前記表面に金属蒸気を接触させる工程を含み、
前記金属蒸着電極の前記複数の部分の内の相対的に抵抗値の低い金属蒸着電極の部分を形成する前記領域の一部および前記金属蒸着電極の前記複数の部分の内の相対的に抵抗値の高い金属蒸着電極の他の部分を形成する前記領域の他の一部に前記オイルを付着させ、
前記金属蒸着電極の前記複数の部分の内の相対的に抵抗値の低い金属蒸着電極の部分を形成する前記領域の前記一部に付着させる前記オイルの単位面積当たりの量は、前記金属蒸着電極の前記複数の部分の内の相対的に抵抗値の高い金属蒸着電極の他の部分を形成する前記領域の前記他の一部に付着させる前記オイルの単位面積当たりの量よりも少なく、
前記領域の前記他の一部の面積は前記領域の前記一部の面積よりも大きく、
前記領域の前記他の一部に付着させる前記オイルは均一な膜厚になるように形成される、金属化フィルムの製造方法。
【請求項2】
誘電体フィルムと、前記誘電体フィルムの表面に、蒸着金属よりなる互いに抵抗値の異なる複数の部分を有する金属蒸着電極と、前記蒸着金属の存在しない絶縁マージンとを備えた金属化フィルムの製造方法であって、
減圧雰囲気で、前記誘電体フィルムの前記表面の前記金属蒸着電極の前記複数の部分を形成する領域にオイルを付着させた後に、前記オイルを付着させた前記誘電体フィルムの前記表面に金属蒸気を接触させる工程を含み、
前記金属蒸着電極の前記複数の部分の内の相対的に抵抗値の低い金属蒸着電極の部分を形成する前記領域の一部に、前記オイルを付着させず、
前記金属蒸着電極の前記複数の部分の内の相対的に抵抗値の高い金属蒸着電極の他の部分を形成する前記領域の他の一部に、前記オイルを付着させ、
前記領域の前記他の一部の面積は前記領域の前記一部の面積よりも大きく、
前記領域の前記他の一部に付着させる前記オイルは均一な膜厚になるように形成される、金属化フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記金属蒸着電極の前記複数の部分を形成する前記領域に加えて、前記誘電体フィルムの表面の前記絶縁マージンを形成する他の領域にも前記オイルを付着させ、
前記絶縁マージンを形成する前記他の領域に付着させる前記オイルの単位面積当たりの量は、前記金属蒸着電極の前記複数の部分の内の相対的に抵抗値の高い前記金属蒸着電極の前記他の部分を形成する前記領域の前記他の一部に付着させる前記オイルの単位面積当たりの量よりも多い、請求項1または請求項2に記載の金属化フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記オイルがフッ素系オイルである、請求項1〜3いずれか1項に記載の金属化フィルムの製造方法。
【請求項5】
オイルノズルに備えられたノズル開口部の、このノズル開口部が対向する前記誘電体フィルムの走行方向の寸法を増減することによって、前記誘電体フィルムの表面に付着させるオイルの量を制御する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属化フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属化フィルムコンデンサに使用される金属化フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属化フィルムコンデンサは、一般に金属箔を電極に用いるものと、誘電体フィルム上に蒸着により設けられた膜状または塊状の金属(以下、蒸着金属と称する)を電極に用いるものとに大別される。蒸着金属を電極(以下金属蒸着電極と称するに用いる金属化フィルムコンデンサは、以下の理由により従来から広く用いられている。1つは、金属箔を電極に用いるものに比べて電極の占める体積が小さく小形軽量化が図れることである。もう1つは、金属蒸着電極特有の自己回復性能(絶縁欠陥部で短絡が生じた場合に、短絡電流のエネルギーで欠陥部周辺の金属蒸着電極が蒸発または飛散して再び絶縁化することにより、コンデンサの機能が回復する性能)により絶縁破壊に対する信頼性が高いことである
【0003】
ここで、金属化フィルムコンデンサに用いられている金属化フィルムについて、図7を用いて説明する。図7は、金属化フィルムの断面を示す断面図で、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等のプラスチックフィルムからなる誘電体フィルム71の表面に、アルミニウム等の蒸着金属からなる金属蒸着電極76を備えた構成となっている。
【0004】
金属蒸着電極76は、誘電体フィルム71の幅方向(図7では左右方向)における一方の端部付近に設けられた、蒸着金属の存在しない絶縁マージン74の部分を除いて形成され、誘電体フィルム71の幅方向における他方の端部に形成された低抵抗部73と、一方の端部に形成された接続部75と、この接続部75と低抵抗部73とを除いた部分に形成された高抵抗部72とを備えている。低抵抗部73の蒸着金属の膜厚と、接続部75の蒸着金属の膜厚とは略同じで、これらの膜厚は、高抵抗部72の蒸着金属の膜厚よりも厚く、低抵抗部73の蒸着金属の抵抗値と、接続部75の蒸着金属の抵抗値とは、高抵抗部72の蒸着金属の抵抗値よりも低くなっている。
【0005】
そして、このような金属化フィルム70を用いて形成されたコンデンサ素子において、誘電体フィルム71の表面に形成された金属蒸着電極76のなかで、メタリコン電極と接続される、誘電体フィルム71の他方の端部に形成された低抵抗部73の膜厚が厚いので、金属蒸着電極76とメタリコン電極との電気的、機械的な接続強度が高められ、一方、高抵抗部72の膜厚が低抵抗部73の膜厚よりも薄いので、金属を蒸着することによる誘電体フィルム71の耐電圧性の低下が抑えられる。さらに、誘電体フィルム71の一方の端部に形成された接続部75の膜厚が、低抵抗部73と同様に、高抵抗部72の膜厚よりも厚いので、この部分でもメタリコン電極との機械的な接続強度が高められ、これらの作用によって金属化フィルムコンデンサの信頼性を向上させることができるというものである。
【0006】
次に、上記の金属化フィルム70の、従来の製造方法について、図8図9を用いて説明する。
【0007】
図8は、金属化フィルム70を製造するための、従来の真空蒸着装置の内部の主要な構成を示す図である。
【0008】
図8に示すように、真空蒸着装置は、真空に近い減圧状態が保たれ真空槽内に、表面に金属蒸着電極が形成される前の、ロール状の誘電体フィルム71が取り付けられた巻き出し部131、誘電体フィルム71を冷却する冷却ロール132、冷却ロール132の近傍に配置された、金属蒸着電極となる金属を溶融し蒸発させる蒸発源135、誘電体フィルム71への蒸着金属の付着量を制御するマスク134、誘電体フィルム71の表面に金属蒸着電極76が形成された金属化フィルム70をロール状に巻き取る巻き取り部133が備えられている。
【0009】
誘電体フィルム71は、巻き出し部131から巻き出され、矢印方向に走行し、誘電体フィルム71の走行方向と同じ方向に回転する冷却ロール132に支持されるとともに冷却される。この状態で、誘電体フィルム71の表面には、蒸発源135から蒸発し、マスク134のマスク開口部140b、141を通過した金属蒸気144が接触して付着堆積することによって金属蒸着電極76が形成される。誘電体フィルム71の表面に金属蒸着電極76が形成された金属化フィルム70は、巻き取り部133で巻き取られる。
【0010】
次に、誘電体フィルム71の表面に形成される、低抵抗部73、接続部75、高抵抗部72、絶縁マージン74の形成方法について説明する。
【0011】
図9は、蒸発源135と誘電体フィルム71との間に配置されるマスク134を上面から見た図で、図9における左右方向は、冷却ロール132に支持されながら走行する誘電体フィルム71の走行方向(誘電体フィルム71の長手方向)に対応する。
【0012】
図9に示すように、マスク134には、蒸発源135から蒸発した金属蒸気144を、誘電体フィルム71の表面に向かって通過させるマスク開口部140b、141と、金属蒸気144を通過させないマスク遮蔽部140aとが設けられている。
【0013】
マスク開口部140b、141を通過した金属蒸気144は、誘電体フィルム71の表面に付着して堆積し、金属蒸着電極76が形成される。マスク開口部141の誘電体フィルム71の走行方向における開口寸法は、マスク開口部140bの開口寸法よりも長くなっており、開口寸法の長いマスク開口部141に対向する誘電体フィルム71の表面には接続部75と低抵抗部73とが形成され、開口寸法の短いマスク開口部140bに対向する誘電体フィルム71の表面には高抵抗部72が形成され、接続部75と低抵抗部73との膜厚は、高抵抗部72の膜厚よりも厚くなる。
【0014】
マスク遮蔽部140aは、蒸発源135からの金属蒸気144を誘電体フィルム71の表面に向かって通過させないので、このマスク遮蔽部140aに対向する誘電体フィルム71の表面には蒸着金属の存在しない絶縁マージン74が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−44057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のような製造方法で金属化フィルム70を作製することができるが、このような製造方法で得られる金属化フィルム70には、品質面で改善しなければならない課題を有していた。
【0017】
この課題は、誘電体フィルム71の表面に、低抵抗部73、接続部75、高抵抗部72、絶縁マージン74を形成するために、蒸発源135と誘電体フィルム71との間に配置されたマスク134に起因し、発生する。すなわち、上記のような製造方法においては、このマスク134を介して蒸発源135から長尺の誘電体フィルム71に連続的に金属蒸気144を付着させる間に、マスク134の蒸発源135側の壁面や、マスク開口部140b、141の縁に多量の金属が堆積することにより、以下で述べるような課題が発生していたのである。
【0018】
まず、マスク134の蒸発源135側の壁面に多量の金属が堆積すると、堆積した金属が壁面から自然に剥がれ、壁面に付着した金属が剥がれて蒸発源135の溶融金属143中に落下し易くなる。この結果、溶融金属143が飛散して誘電体フィルム71の表面に付着したり、溶融金属143の温度が低下して金属蒸気144の蒸発量が一時的に減少し、形成される低抵抗部73や高抵抗部72を含む金属蒸着電極76の膜厚が変動してしまう虞があった。
【0019】
あるいは、マスク開口部140b、141の縁に多量の金属が堆積すると、マスク開口部が狭くなり、低抵抗部73や高抵抗部72および絶縁マージン74の寸法が変化したり、蒸発金属の通過量が減少して低抵抗部73や高抵抗部72を含む金属蒸着電極76の膜厚が変動してしまう虞があった。
【0020】
そして、これらの金属蒸着電極76の膜厚の変動や絶縁マージン74等の寸法の変動は、金属化フィルムコンデンサの特性に悪影響を及ぼすものであった。
【0021】
また、抵抗値の異なる複数の金属蒸着電極を備えた金属化フィルムの製造方法として、上記の製造方法以外にも、例えば、高抵抗部を形成するための金属を蒸発させる蒸発源と、低抵抗部を形成するための金属を蒸発させる蒸発源と、の複数の蒸発源を配置して、それぞれの蒸発源から蒸発する金属の量を制御して金属蒸着電極を形成する方法が提案されているが、複数の蒸発源から蒸発する金属の蒸気の量をバランスよく制御することが難しく安定した品質の金属化フィルムを提供することが難しいものであった。
【0022】
本発明は、上記のような課題に対してなされたものであり、絶縁マージンの寸法や、金属蒸着電極の膜厚の安定した高品質な金属化フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の金属化フィルムの製造方法は、誘電体フィルムと、誘電体フィルムの表面に、蒸着金属よりなる互いに抵抗値の異なる複数の金属蒸着電極と、蒸着金属の存在しない絶縁マージンとを備えた金属化フィルムの製造方法であって、減圧雰囲気で、誘電体フィルムの表面の複数の金属蒸着電極の部分を形成する領域にオイルを付着させた後に、オイルを付着させた誘電体フィルムの表面に金属蒸気を接触させる程を含む。そして、複数の金属蒸着電極の部分の内の相対的に抵抗値の低い金属蒸着電極の部分を形成する領域の一部に付着させるオイルの単位面積当たりの量複数の金属蒸着電極の部分の内の相対的に抵抗値の高い金属蒸着電極の他の部分を形成する領域の他の一部に付着させるオイルの量よりも少な
【発明の効果】
【0024】
このような構成の製造方法により、信頼性の高い金属化フィルムコンデンサが得られる金属化フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は、本発明の実施の形態に記載の製造方法によって作製された金属化フィルムの構造を示す断面図、(b)は、同金属化フィルムを用いたコンデンサ素子の構造を示す断面図。
図2】本発明の実施の形態における、金属化フィルムを製造するための真空蒸着装置の構成を示す図。
図3】本発明の実施の形態におけるオイルノズルの概要を示す斜視図。
図4】本発明の実施の形態におけるオイルノズルの上面(図3ので示す部分)を示す上面図。
図5】(a)〜(d)本発明の実施の形態における金属化フィルムの製造程を示す図。
図6】(a)は、本発明の実施の形態における製造方法によって作製された、他の金属化フィルムの構造を示す断面図、(b)は、同金属化フィルムを用いたコンデンサ素子の構造を示す断面図。
図7】従来の技術を説明するための金属化フィルムの構造を示す断面図。
図8】金属化フィルムを製造するための、従来の真空蒸着装置の構成を示す図。
図9】従来の真空蒸着装置に配置されたマスクの上面を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図を用いて本発明の実施の形態について説明するが、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態)
図1(a)は、本実施の形態に記載の製造方法によって作製された金属化フィルムの構造を示す断面図、図1(b)は同金属化フィルムを用いたコンデンサ素子の構造を示す断面図である。図2は本実施の形態における、金属化フィルムを製造するための真空蒸着装置の構成を示す図である。また、図3は、本実施の形態における真空蒸着装置のオイルノズル104の概要を示す斜視図であり、図4は、オイルノズル104の上面(図3のAで示す部分)を示す上面図である。
本実施の形態では、図1(a)に示すような、高抵抗部12、低抵抗部13、接続部15を有する金属蒸着電極16と、絶縁マージン14とを誘電体フィルム11の片方の表面に備えた金属化フィルム10の製造方法について説明する。
【0028】
図2に示すように、真空蒸着装置は、真空に近い減圧状態が保たれた真空槽内に、表面に金属蒸着電極が形成される前の、ロール状に巻き取られた誘電体フィルム11を取り付けて、誘電体フィルム11を連続的に巻き出す巻き出し部101、誘電体フィルム11を支持しながら冷却する冷却ロール102、巻き出し部101と冷却ロール102との間に配置され、誘電体フィルム11の表面にオイル20を付着させるオイルノズル104、冷却ロール102の近傍に配置され、金属蒸着電極となる金属を溶融し蒸発させて、オイル20が付着した誘電体フィルム11の表面に金属蒸気を供給する蒸発源105、誘電体フィルム11の表面に金属蒸着電極16が形成された金属化フィルム10をロール状に巻き取る巻き取り部103を備える。
【0029】
そして、フィルムの表面に形成される金属蒸着電極16の抵抗値は、誘電体フィルム11の表面に付着させるオイル20の量で制御する。ここで、オイル20の量は、例えば、オイル20の体積である。
【0030】
誘電体フィルム11の表面に形成する金属蒸着電極16の抵抗値の制御方法について図を用いて説明する。
【0031】
図5(a)〜(d)は、本実施の形態における金属化フィルム10の製造を示す図で、(a)から(d)へ順に製造工程が進むことを示している。
【0032】
図5(a)は、誘電体フィルム11の表面にオイル20を付着させた状態を示しており、誘電体フィルム11の表面に付着させたオイル20のうち、金属蒸着電極16の高抵抗部12を形成する部分に付着させたオイル20bの、誘電体フィルム11表面の単位面積あたりの量は、絶縁マージン14を形成する部分に付着させたオイル20aの量よりも少なくなっている。すなわち、図5(a)にて示すように、誘電体フィルム11の表面の単位面積あたりのオイル20の付着量をオイル20の膜厚にて模式的に示すと、金属蒸着電極16の高抵抗部12を形成する部分に付着させたオイル20bの膜厚は、絶縁マージン14を形成する部分に付着させたオイル20aの膜厚よりも薄くなっている。また、低抵抗部13と接続部15とを形成する部分の誘電体フィルム11の表面22には、オイル20は付着させていない。なお、誘電体フィルム11の表面に付着させるオイル20の量の制御方法については後述する。
【0033】
図5(b)は、オイル20a、20bを付着させた後の誘電体フィルム11の表面に、蒸発源105からの金属蒸気114が接触している状態を示しており、誘電体フィルム11の表面の、絶縁マージン14を形成する部分に付着させたオイル20aと高抵抗部12を形成する部分に付着させたオイル20bの表面には金属蒸着電極は形成されておらず、蒸発源の溶融金属113からの輻射熱や金属蒸気の持つ潜熱によってオイル20の一部が蒸発し付着量が減少している。一方、誘電体フィルム11の、オイル20を付着させていない低抵抗部13と接続部15とを形成する部分の表面22には金属が付着し、低抵抗部13と接続部15が形成され始めている。
【0034】
図5(c)は、図5(b)に示す状態から蒸着が進行している状態を示しており、誘電体フィルム11の表面の、絶縁マージン14を形成する部分に付着させたオイル20aは、その付着量は減少はしているものの、存在はしているので、この部分には金属蒸着電極16は形成されていない。誘電体フィルム11の表面の高抵抗部12を形成する部分に付着させたオイル20bはほとんど無くなり、この部分には金属が付着し、高抵抗部12が形成され始めている。低抵抗部13と接続部15の蒸着金属の膜厚はさらに増加している。
【0035】
図5(d)は、金属蒸着電極16と絶縁マージン14の形成が完了した状態で、誘電体フィルム11の表面には、所望の膜厚の高抵抗部12、低抵抗部13、接続部15が形成されている。低抵抗部13と接続部15の膜厚はほぼ同じで、高抵抗部12の膜厚は、低抵抗部13や接続部15の膜厚よりも薄くなっており、相対的に膜厚の薄い部分の金属蒸着電極16の抵抗値は、膜厚の厚い部分の金属蒸着電極16の抵抗値よりも高くなるので、高抵抗部12の抵抗値は、低抵抗部13や接続部15の抵抗値よりも高くなっている。そして、誘電体フィルム11の表面の、オイル20aが付着していた部分には、電極として機能する程の蒸着金属が存在しない絶縁マージン14が形成されている。
【0036】
次に、誘電体フィルム11の表面に付着させるオイル20の量を制御する方法について図を用いて詳しく説明する。
【0037】
誘電体フィルム11の表面に付着させるオイル20の量は、オイルノズル104を用いることよって制御することができる。
【0039】
オイルノズル104は、その内部に収容したオイル20を約100〜150℃に加熱して気化させる機能を有し、気化したオイル20の蒸気をオイルノズル104の外部に放出するノズル開口部120と、外部への放出を遮蔽するノズル遮蔽部121とを、同一面に備えている。
【0040】
オイルノズル104は、図3に示すように、ノズル開口部120とノズル遮蔽部121とを備えた面が、走行する誘電体フィルム11の一方の面に(図3における下面)に対向するように、誘電体フィルム11に対して至近距離に配置されている。
【0041】
オイルノズル104のノズル開口部120部分と対向する誘電体フィルム11の表面には、ノズル開口部120から噴出したオイル20の蒸気が接触し、その後冷却されて凝縮し、誘電体フィルム11の表面にオイル20が付着する。一方、オイルノズル104のノズル遮蔽部121からはオイル20は噴出しないので、ノズル遮蔽部121部分と対向する誘電体フィルム11の表面にはオイル20は付着しない。
【0042】
誘電体フィルム11の表面に付着させるオイル20の量は、オイルノズル104に備えられたノズル開口部120の、このノズル開口部120が対向する誘電体フィルム11の走行方向(長手方向)の寸法を増減することによって制御する。
【0043】
詳しく説明すると、図4に示すように、オイルノズル104に備えられたノズル開口部120は、このノズル開口部120が対向する誘電体フィルム11の走行方向(図4における左右方向)の寸法が長いノズル開口部(以降、寸法が長いノズル開口部という)120aと、誘電体フィルム11の走行方向の寸法が短いノズル開口部(以降、寸法が短いノズル開口部という)120bとを有しており、誘電体フィルム11の表面の特定の点において、寸法が長いノズル開口部120aに対向する点は、寸法が短いノズル開口部120bに対向する点よりも、寸法が長いノズル開口部120aから噴出するオイル20の蒸気に長い時間接触することになる。その結果、誘電体フィルム11の表面の、オイルノズル104の寸法が長いノズル開口部120aに対向する部分では、寸法が短いノズル開口部120bに対向する部分よりも、誘電体フィルム11の表面に付着するオイル20の誘電体フィルム11表面の単位面積当たりの量を多くすることができる。
【0044】
なお、図4における符号B1および符号B2の領域は、それぞれ一つの金属化フィルムコンデンサに用いる一つの金属化フィルム10の幅に相当し、実際の金属化フィルム10の製造においては、図4に示すように、広幅の誘電体フィルム11を用いて、この広幅の誘電体フィルム11の幅方向に、複数の金属化フィルム10が取れるように金属蒸着電極16と絶縁マージン14とを形成した後、誘電体フィルム11の幅方向に分割するようにスリットすることによって、金属化フィルムコンデンサ一つ分の金属化フィルム10が得られる。
【0045】
なお、オイル20には、フッ素系オイル、パラフィン系オイル等を使用してもよいが、パラフィン系オイル等に比較して耐熱性が高いフッ素系オイルは、蒸着時の熱によって分解し難く、誘電体フィルム11上に残留する分解物が少なくなるので、本発明において金属化フィルム10の品質確保の面で特に有利である。
【0046】
また、誘電体フィルム11の表面に付着させるオイル20の量は、使用するオイル20の種類、金属蒸着電極16に用いる金属および金属蒸着電極16の膜厚、蒸着機の構成および、蒸着時の条件等によって適宜決定すればよい。
【0047】
このように、誘電体フィルム11の表面に付着させるオイル20の量を制御し、相対的に抵抗値の低い金属蒸着電極16を形成する部分に付着させるオイル20の誘電体フィルム11表面の単位面積当たりの量を、相対的に抵抗値の高い金属蒸着電極16を形成する部分に付着させるオイル20の量よりも少なくするか、またはオイル20を付着させないようにすることによって、一度の蒸着機会で、蒸発源の数を増やすことなく、抵抗値の異なる複数の金属蒸着電極16が形成された金属化フィルム10を得ることができる。
【0048】
上記のように、本発明は、従来のような、蒸発源105と冷却ロール102に支持された誘電体フィルム11との間に、蒸発源105から誘電体フィルム11の表面に到達する金属蒸気114の量を制御するマスクを配置する必要がないので、マスク開口部における金属の堆積による弊害も解消し、誘電体フィルム11の表面に形成される金属蒸着電極16の膜厚精度や、絶縁マージン等の寸法精度が高い、高品質な金属化フィルム10を得ることができる。そして、図1(b)に示すように、本発明の製造方法によって作製された金属化フィルム10を巻回、或いは積層した、巻回体、或いは積層体にメタリコン電極17を形成してコンデンサ素子2とすれば、信頼性の高い金属化フィルムコンデンサが得られる。
【0049】
ここで本発明を考察すると、従来は、金属化フィルムの製造において、蒸着金属の存在しない絶縁マージンを形成するために、誘電体フィルムの表面の絶縁マージンを形成する部分に予めオイルを付着させ、その後に金属を蒸着して蒸着金属の存在しない絶縁マージンと金属蒸着電極とを形成するオイルマージン法が利用されていたが、オイルを用いて絶縁マージンを形成すると、蒸着時のオイルの挙動や、蒸着後の金属化フィルムに残るオイルによって、金属蒸着電極の膜質の悪化や、誘電体フィルムへの金属蒸着電極の付着力の低下を引き起こすため、誘電体フィルムの金属蒸着電極を形成する部分に予めオイルを付着させることは、より金属化フィルムの品質を低下させるものと考えられていた。
【0050】
ところが、本発明を実施したところ、誘電体フィルムの表面の、オイルを付着させた部分に形成した金属蒸着電極(実施の形態における高抵抗部)においても、膜質の悪化や、誘電体フィルムへの金属蒸着電極の付着力の低下等の、金属化フィルムの品質の低下は見られなかった。
【0051】
これは、誘電体フィルムに付着させるオイルの量を適切にし、且つ精度よく制御することによって、誘電体フィルムに付着させたオイルが、蒸発源からの輻射熱や金属蒸気の持つ潜熱によって蒸発し、除去された後に金属蒸着電極が形成されることによるものと考えられる。
【0052】
なお、絶縁マージン14のような、誘電体フィルム11の長手方向に連続した帯状の蒸着金属の存在しない部分の形成をテープマージン法で行い、抵抗値の異なる複数の金属蒸着電極16の形成を上記のような誘電体フィルム11の表面にオイルを付着させる方法で行ってもよい。この場合であっても、一度の蒸着機会で抵抗値の異なる複数の金属蒸着電極16が形成された金属化フィルム10を得ることができる。
【0053】
なお、上記実施の形態では、誘電体フィルム11の片面にのみ金属蒸着電極16を形成した金属化フィルム10の製造方法について説明したが、本発明の金属化フィルムの製造方法を用いて、図6(a)に示すような、高抵抗部42、低抵抗部43、接続部45等の金属蒸着電極46と、絶縁マージン44とを誘電体フィルム41の両面に備えた金属化フィルム40を作製してもよい。この金属化フィルム40を用いて図6(b)に示すような、メタリコン電極47が形成されたコンデンサ素子32とすれば、信頼性の高い金属化フィルムコンデンサが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車の電装等に使用される金属化フィルムコンデンサに有用である。
【符号の説明】
【0055】
2、32 コンデンサ素子
10、40 金属化フィルム
11、41 誘電体フィルム
12、42 高抵抗部
13、43 低抵抗部
14、44 絶縁マージン
15、45 接続部
16、46 金属蒸着電極
17、47 メタリコン電極
20、20a、20b オイル
102 冷却ロール
104 オイルノズル
105 蒸発源
113 溶融金属
114 金属蒸気
120、120a、120b ノズル開口部
121 ノズル遮蔽部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9