(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載したグリップセンサに関し、以下の課題が生じることを見出した。
【0012】
ステアリングホイールを装飾するために取り付けられるフィニッシャまたはガーニッシュと呼ばれる部品(以下、取付部品という)は、例えば合成樹脂製であって、リムの芯材に嵌め込まれて固定される。このように嵌め込まれた取付部品は、リムの表層(例えば革など)から露出した状態になる。
【0013】
したがって、グリップセンサの基材をこのようなリムの芯材に巻き付ける場合には、その基材は、その取付部品の嵌め込み部分を除く範囲に巻き付けられる。その結果、リムの表層の上面から、基材に配置されたセンサ線までの距離が短くても、取付部品の露出している表面からセンサ線までの距離は遠い。そのため、リムの表層上面では検出感度が高くても、取付部品での検出感度は低下してしまう。言い換えれば、リムの各部位における検出感度が均一化されていない。その結果、乗員の手がリムの表層上面に触れた場合には、グリップセンサはその手の接触を検出することができても、その手が取付部品に触れた場合には、その手の接触を検出することができない場合がある。
【0014】
このような課題を解決するために、本発明の一態様に係るステアリングホイール用乗員情報検出センサは、ステアリングホイールに配置されるステアリングホイール用乗員情報検出センサであって、前記ステアリングホイールのリムは、リム本体と、前記リム本体の一部から露出するように前記リム本体に取り付けられる取付部品とを有し、前記ステアリングホイール用乗員情報検出センサは、前記リム本体に配置されるセンサ電極と、前記取付部品における少なくとも表面側に位置し、前記センサ電極の一部と電気的に接続、または容量結合される導電性部材とを備える。例えば、前記センサ電極および前記導電性部材は、前記センサ電極および前記導電性部材における静電容量の変化を検出するための電極であってもよい。また、例えば、センサ電極は、線状の電極であるセンサ線であってもよい。
【0015】
これにより、例えばガーニッシュまたはフィニッシャなどの取付部品がリム本体に取り付けられる場合であっても、その取付部品の少なくとも表面側には、センサ電極の一部と電気的に接続される導電性部材がある。したがって、ステアリングホイールを有する車両の乗員がリムの取付部品に手を触れる場合であっても、その手の接触を導電性部材およびセンサ電極を介して電気的に検出することができる。その結果、乗員によるステアリングホイールのリムに対する接触または把持の検出感度の低下を抑えることができる。言い換えれば、ステアリングホイールのリムの各部位における検出感度を均一化することができる。
【0016】
なお、上述の取付部品の表面は、リム本体から露出している面(すなわち上面)であってもよく、リム本体に埋設されている面(すなわち背面)であってもよい。
【0017】
また、前記導電性部材は、前記取付部品における表面に形成された印刷膜、塗膜またはめっき膜であってもよい。
【0018】
または、前記導電性部材は、前記取付部品における少なくとも表面側の一部からなっていてもよい。つまり、取付部品の一部または全体が導電性部材であってもよい。この場合には、ステアリングホイールの構成を簡略化することができる。
【0019】
また、前記導電性部材は、前記センサ電極の一部と接触することによって前記センサ電極の一部と電気的に接続されていてもよい。
【0020】
または、前記センサ電極の一部と前記導電性部材とが容量結合する場合には、前記センサ電極の一部と前記導電性部材の一部とは、互いに対向し、略同一の形状を有していてもよい。これにより、センサ電極の一部と導電性部材の一部とにおいて容量結合に有効な面積を広げることができ、それらの間の静電容量を大きくすることができる。その結果、検出感度を大きくすることができる。
【0021】
また、前記センサ電極の一部と前記導電性部材とが容量結合する場合には、前記センサ電極の一部と前記導電性部材の一部とは、互いに対向し、前記センサ電極の一部と前記導電性部材の一部との間の対向方向の距離は、前記取付部品の前記対向方向の厚みよりも短くてもよい。
【0022】
これにより、センサ電極の一部と導電性部材の一部との間の距離が短いため、それらの間の静電容量を大きくすることができる。その結果、検出感度を大きくすることができる。
【0023】
また、前記センサ電極の一部と前記導電性部材とが容量結合する場合には、前記センサ電極の一部と前記導電性部材の一部とは、互いに対向し、ベタ状であってもよい。
【0024】
これにより、センサ電極の一部と導電性部材の一部とにおいて容量結合に有効な面積を広げることができ、それらの間の静電容量を大きくすることができる。その結果、検出感度を大きくすることができる。
【0025】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0026】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0027】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。また、以下の実施の形態において、略中央又は略一定幅などの表現を用いている。例えば、略同じは、完全に同じであることを意味するだけでなく、実質的に同じである、すなわち、例えば数%程度の誤差を含むことも意味する。他の「略」を用いた表現についても同様である。
【0028】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態におけるステアリングホイール用乗員情報検出センサが配置された車両の車室の一例を示す図である。
【0029】
車両1は、ステアリングホイール200、スピーカ301、および液晶ディスプレイ等の表示装置302を備えている。スピーカ301および表示装置302は例えば注意喚起装置として構成される。
【0030】
ステアリングホイール200は、車両1を操舵するためのものである。ステアリングホイール200は、リング形状を有するリム210と、リム210の内周面に一体的に形成された略T字状のスポーク202と、スポーク202の中央部に配置されたホーンスイッチ(図示せず)を覆うホーンスイッチカバー203とを有している。
【0031】
ステアリングホイール用乗員情報検出センサ100は、ステアリングホイール200を有する車両1の乗員の情報を検出するセンサである。本実施の形態では、ステアリングホイール用乗員情報検出センサ100は、乗員である運転者の手によるステアリングホイール200のリム210に対する接触または把持を、その乗員の情報として検出する。このようなステアリングホイール用乗員情報検出センサ100は、
図1に示すように、車両1のステアリングホイール200に配置されている。具体的には、ステアリングホイール用乗員情報検出センサ100は、複数のセンサ部からなるセンサ群110と、制御回路部120と、ハーネス130とを備えている。
【0032】
センサ群110は、ステアリングホイール200のリム210に埋設されている。センサ群110に含まれる各センサ部では、車両1の乗員(例えば運転者)がステアリングホイール200のリム210を把持しているか否かに応じて、またはリム210に触れているか否かに応じて計測される静電容量が変化する。
【0033】
ハーネス130は、センサ群110の各センサ部と制御回路部120とを電気的に接続する。
【0034】
制御回路部120は、例えばスポーク202に埋設され、センサ群110の各センサ部からの出力信号に基づいて接触または把持を検出する。具体的には、制御回路部120は、各センサ部に対して、そのセンサ部の静電容量、またはその静電容量に応じた値(変化量)を計測し、その値に基づいて、運転者の手によるリム210の把持などを検出する。そして、制御回路部120は、車両1が運転されているにもかかわらず、把持を検出していない場合には、運転者への注意喚起を注意喚起装置に実行させる。例えば、注意喚起装置のスピーカ301は、警告音または音声によって、運転者に注意を喚起する。表示装置302は、運転者にステアリングホイール200をしっかり握るように促す注意喚起のメッセージを表示する。これにより、交通事故を減少させることができる。
【0035】
図2は、本実施の形態におけるステアリングホイール200の正面図である。
【0036】
本実施の形態におけるステアリングホイール200は、2つの取付部品240を備える。これらの取付部品240は、例えば合成樹脂材料などからなり、例えばリム210に沿うように細長い板状に成型されている。そして、これらの取付部品240の上面には、例えば装飾用の模様(例えば木目調の模様)などが施されている。
【0037】
このような取付部品240は、上述の模様などが施された上面と反対側の背面をリム210の内部にある芯材側に向けて、その芯材に嵌め込まれる。リム210における取付部品240以外の部分であるリム本体は、表層212によって覆われている。したがって、2つの取付部品240のそれぞれは、その上面が表層212から露出するように、リム210の内部にある芯材に嵌め込まれている。
【0038】
このように、本実施の形態では、ステアリングホイール200のリム210は、芯材および表層212からなるリム本体と、リム本体の一部から露出するようにそのリム本体に取り付けられる取付部品240とを有する。
【0039】
図3は、本実施の形態における取付部品240の側面および背面を示す図である。具体的には、
図3の(a)は、取付部品240の側面図であり、
図3の(b)は、2つの取付部品240のそれぞれの背面図である。
【0040】
図3の(a)に示すように、2つの取付部品240のそれぞれは、略板状の部品本体242と、部品本体242の背面242Bから突出する2つの突起部241とを有する。また、部品本体242の背面242Bには、導電性部材113が形成されている。なお、本実施の形態における取付部品240は、2つの突起部241を有するが、この突起部241の数は2つに限定されるものではなく、1つでもよく、3つ以上であってもよい。
【0041】
図3の(b)に示すように、部品本体242の背面242Bに形成された導電性部材113は、メッシュ状の主部113cと、2つの被接続部113aおよび113bとを有する。この2つの被接続部113aおよび113bはそれぞれ、導電性部材113を後述のセンサ線に電気的に接続するための部分であって、センサ線の一部と略同一のパターンを有する。
【0042】
このような本実施の形態における導電性部材113は、取付部品240における表面のうちの背面242Bに形成された印刷膜、塗膜またはめっき膜である。つまり、導電性部材113は、取付部品240の背面242Bに対する印刷、コーティング、塗装またはめっきなどによって形成される。また、導電性部材113は、例えば、金属またはカーボンなどからなる。なお、印刷膜、塗膜またはめっき膜は、合成樹脂材料による表面保護が施されていても良い。
【0043】
図4は、本実施の形態におけるステアリングホイール用乗員情報検出センサ100の構成例を示す図である。
【0044】
ステアリングホイール用乗員情報検出センサ100は、センサ群110と、制御回路部120と、ハーネス130とを備える。本実施の形態では、センサ群110は、第1のセンサ部110aと第2のセンサ部110bからなる。第1のセンサ部110aおよび第2のセンサ部110bのそれぞれは、基材111と、センサ電極であるセンサ線112と、上述の取付部品240に形成された導電性部材113とを備える。なお、本実施の形態では、第1のセンサ部110aおよび第2のセンサ部110bは、Y軸方向に沿う直線を対称軸として線対称に形成され、実質的に同一の構成を有する。
【0045】
基材111は、例えば不織布からなり長尺状に形成され、センサ線112を保持する。この基材111は、ステアリングホイール200のリム210に取り付けられる。なお、本実施の形態では、その基材111の長手方向をX軸方向と称し、基材111に平行な面においてX軸方向と垂直な方向をY軸方向と称す。また、Y軸方向における、基材111の一端側(
図4の下端側)を負側と称し、他端側(
図4の上端側)を正側と称す。同様に、X軸方向における、基材111の一端側(
図4の左端側)を負側と称し、他端側(
図4の右端側)を正側と称す。
【0046】
センサ線112は、このセンサ線112における静電容量の変化を検出するための電極である。また、センサ線112は、導電線からなり、センサ線112の一端(すなわち端a)と他端(すなわち端b)とは、ハーネス130を介して制御回路部120に接続される。ここで、センサ線112は、ジグザグ状に基材111に配置されている。具体的には、センサ線112は、金属線(例えば銅線)であって、ジグザグ形状のパターンが形成されるように、基材111の表面に図示しない糸により縫い付けられている。
【0047】
なお、本実施の形態におけるセンサ線112は、図示しない糸により基材111の表面に縫い付けられているが、熱圧着などによって基材111に固定されていてもよい。さらに、センサ線112は、導体や抵抗体による面状の構造であってもよい。また、本実施の形態では、センサ線112は、導電線からなるが、導電性を有する部材であれば、どのような形態であってもよい。
【0048】
つまり、本実施の形態におけるステアリングホイール用乗員情報検出センサ100は、センサ線112をセンサ電極として備えるが、センサ電極は、センサ線112のように線状に形成されていなくてもよい。
【0049】
ここで、本実施の形態におけるセンサ線112は、取付部品240に形成された導電性部材113の2つの被接続部113aおよび113bとそれぞれ容量結合するための接続部112aおよび112bを有する。具体的には、導電性部材113の被接続部113aは、センサ線112の接続部112aに容量結合され、導電性部材113の被接続部113bは、センサ線112の接続部112bに容量結合される。したがって、導電性部材113は、この導電性部材113における静電容量の変化を検出するための電極である。
【0050】
このように、本実施の形態におけるステアリングホイール用乗員情報検出センサ100は、リム本体に配置されるセンサ電極であるセンサ線112と、取付部品240における少なくとも表面側に位置し、センサ線112の一部と容量結合される導電性部材113とを備える。
【0051】
なお、センサ線112と導電性部材113との配置関係の詳細については後述する。
【0052】
制御回路部120は、電源部121とセンサ回路122とを備える。なお、センサ線112の一端である端aは、センサ回路122に接続され、センサ線112の他端である端bは、電源部121に接続される。
【0053】
電源部121は、第1のセンサ部110aおよび第2のセンサ部110bのそれぞれのセンサ線112の端bにハーネス130を介して電気的に接続される。また、電源部121は、センサ線112に電流を流すことによって、そのセンサ線112を加熱する。これにより、ステアリングホイール200のリム210を温めることができる。なお、電源部121からセンサ線112に電流が流れるように、制御回路部120において、センサ線112の端aからセンサ回路122に至る配線の途中がインダクタ(図示せず)を介してグラウンドに接続される。
【0054】
センサ回路122は、第1のセンサ部110aおよび第2のセンサ部110bのそれぞれで、センサ線112および導電性部材113を用いて、ステアリングホイール200の接触状態を検出する。つまり、センサ回路122は、ハーネス130を介してセンサ線112に交流の電流を流す。そして、センサ回路122は、そのセンサ線112を流れる電流の電流値に基づいて、センサ線112および導電性部材113における静電容量の変化を検出する。
【0055】
図5は、リム210の断面の一例と、取付部品240がリム210の芯材に取り付けられる状態の一例を示す図である。なお、
図5に示す例では、基材111およびセンサ線112を見え易くするために、表層212を省略している。
【0056】
リム210は、芯材を有し、その芯材は、金属製の円環状の芯である芯金210bと、その芯金210bを覆うウレタン樹脂などからなる樹脂層210aとからなる。樹脂層210aには、取付部品240を嵌め込むための凹部211が形成されている。また、この凹部211の底面には、その取付部品240を固定するための2つの固定穴213が形成されている。
【0057】
センサ線112を有する基材111は、樹脂層210aに巻き付けられる。このとき、基材111においてセンサ線112の接続部112aおよび112bが縫い付けられた部分のみが、樹脂層210aの凹部211に配置される。そして、基材111の残りの部分は、樹脂層210aの表面における凹部211を除く全周に巻き付けられる。
【0058】
具体的には、
図5に示すように、センサ線112が縫い付けられた基材111は、そのセンサ線112と反対側の面が樹脂層210a側に向くように、樹脂層210aに巻き付けられる。なお、このように巻き付けられた基材111におけるセンサ線112側の面は、革、木材、または樹脂等からなる表層212によって覆われる。また、本実施の形態では、基材111は、そのセンサ線112と反対側の面が樹脂層210a側に向くように、樹脂層210aに巻き付けられるが、基材111のセンサ線112の面が樹脂層210a側に向くように、樹脂層210aに巻き付けられてもよい。
【0059】
リム210に配置されるセンサ線112は、芯金210bとの間に静電容量を形成する。ここで、リム210においてセンサ線112が配置されている部位が、運転者の手によって把持されると、センサ線112とその手との間にも静電容量が形成される。したがって、制御回路部120のセンサ回路122は、その静電容量の絶対値や変化量に応じて、手によるリム210の把持を検出することができる。なお、センサ線112と芯金210bとの間に静電容量が形成される構成に限定されるものではなく、例えばセンサ線112と芯金210bとの間に導電性シートなどからなる接地層を設け、センサ線112と接地層との間に静電容量が形成される構成としてもよい。
【0060】
ここで、樹脂層210aの凹部211には、取付部品240が嵌め込まれる。上述のように、取付部品240の背面242Bには、その背面242Bから突出する2つの突起部241が形成されている。取付部品240は、この背面242Bを樹脂層210aに向けて樹脂層210aの凹部211に嵌め込まれる。このとき、取付部品240の2つの突起部241のそれぞれは、凹部211の固定穴213に挿入される。例えば、固定穴213の内径は、突起部241の外径よりも小さい。したがって、突起部241が固定穴213に挿入されるときには、突起部241は、樹脂層210aの固定穴213周辺を歪ませて固定穴213を押し広げながらその固定穴213に挿入される。したがって、突起部241は、樹脂層210aの弾性力によって固定される。その結果、取付部品240が凹部211に嵌め込まれた状態で固定される。
【0061】
取付部品240が凹部211に嵌め込まれると、取付部品240に形成された導電性部材113の被接続部113aおよび113bのそれぞれは、基材111に縫い付けられたセンサ線112の接続部112aおよび112bに近接した状態で対向する。これにより、本実施の形態では、導電性部材113は、センサ線112の接続部112aおよび112bと容量結合する。
【0062】
図6は、センサ線112の接続部112aと、導電性部材113の被接続部113aとの位置関係を示す図である。
【0063】
センサ線112の接続部112aと、導電性部材113の被接続部113aとは、
図6に示すように、互いに対向し、略同一の形状を有する。これにより、センサ線112の接続部112aと導電性部材113の被接続部113aとにおいて容量結合に有効な面積を広げることができ、それらの間の静電容量を大きくすることができる。その結果、検出感度を大きくすることができる。
【0064】
例えば、センサ線112の接続部112aと導電性部材113の被接続部113aとは、距離d
0だけ離れて対向する。同様に、センサ線112の接続部112bと導電性部材113の被接続部113bとも、距離d
0だけ離れて対向する。したがって、導電性部材113とセンサ線112との間の静電容量は、C
0=ε×2S/d
0として表される。εは、被接続部113aと接続部112aとの間を満たす材質の誘電率である。また、2Sは、被接続部113aと接続部112aとが互いに対向する面積Sと、被接続部113bと接続部112bとが互いに対向する面積Sとの和である。
【0065】
このように、取付部品240とセンサ線112とは、静電結合または容量結合によって電気的に接続される。そして、センサ線112の接続部112aおよび112bと、導電性部材113の被接続部113aおよび113bとは、略同一の形状を有するため、上述の面積Sを大きくすることできる。その結果、導電性部材113とセンサ線112との間の静電容量C
0を大きくすることができる。
【0066】
図7は、リム210の取付部品240における静電容量Cを示す図である。
【0067】
例えば、
図7に示すように、センサ線112と導電性部材113との間には、容量結合によって静電容量C
0が生じる。また、手が取付部品240の上面242Fに触れると、その手と導電性部材113との間にも、容量結合によって静電容量C
1が生じる。したがって、取付部品240に触れた手とセンサ線112との間の静電容量Cは、C=C
0・C
1/(C
0+C
1)として表される。この静電容量Cは、静電容量C
1が一定であれば、静電容量C
0を大きくすれば静電容量C
1に近づく。例えば、C
0≧5×C
1であれば、取付部品240に触れた手とセンサ線112との間の静電容量Cは、静電容量C
1の約80%以上になる。
【0068】
静電容量C
1は、取付部品240の誘電率および厚みd
1によって、リム210の取付部品240が配置されていない部分の静電容量に一致させることができる。したがって、C
0≧5×C
1が満たされれば、リム210の全周の検出感度を均一にすることができる。
【0069】
また、C
0≧5×C
1を満たすためには、少なくとも、センサ線112の接続部112aおよび112bと導電性部材113の被接続部113aおよび113bとの間の対向方向の距離d
0は、取付部品240のその対向方向の厚みd
1よりも短いことが望ましい。
【0070】
図8は、取付部品240が凹部211に嵌め込まれた状態のリム210の断面を示す図である。
【0071】
取付部品240の突起部241は、
図8に示すように、樹脂層210aの固定穴213に挿入される。このとき、突起部241の先端側は芯金210bに近づく。しかし、導電性部材113は、取付部品240の部品本体242の背面242Bに形成され、突起部241には形成されていない。したがって、突起部241が芯金210bに近づいても、導電性部材113が芯金210bに近づき過ぎることはない。ここで、芯金210bは、電気的にグラウンドに相当し、その芯金210bに導電性部材113が近づき過ぎると、手の接触の検出感度が低下してしまう。しかし、本実施の形態では、上述のように、導電性部材113が芯金210bに近づき過ぎることはないため、その検出感度の低下を抑えることができる。
【0072】
また、
図8に示すように、リム210の全体は、基材111のセンサ線112と、取付部品240の導電性部材113に覆われる。したがって、運転者などの乗員がリム210の何れの位置に触れても、その接触を正しく検出することができる。
【0073】
(まとめ)
以上のように、本実施の形態におけるステアリングホイール用乗員情報検出センサ100は、リム本体に配置されるセンサ線112と、取付部品240における少なくとも表面側に位置し、センサ線112の一部と電気的に接続される導電性部材113とを備える。
【0074】
これにより、例えばガーニッシュまたはフィニッシャなどの取付部品240がリム本体に取り付けられる場合であっても、その取付部品240の少なくとも表面側には、センサ線112の一部と電気的に接続される導電性部材113がある。したがって、ステアリングホイール200を有する車両1の乗員がリム210の取付部品240に手を触れる場合であっても、その手の接触を導電性部材113およびセンサ線112を介して電気的に検出することができる。その結果、乗員によるステアリングホイール200に対する接触の検出感度の低下を抑えることができる。
【0075】
(変形例)
上記実施の形態では、ステアリングホイール用乗員情報検出センサ100の制御回路部120は電源部121を備えているが、その電源部121を備えていなくてもよい。また、センサ線112の接続部112aおよび112bと、導電性部材113の被接続部113aおよび113bとは、それぞれジグザグのパターンを有する線状であるが、ベタ状であってもよい。
【0076】
図9は、本変形例に係るステアリングホイール用乗員情報検出センサの構成例を示す図である。
【0077】
本変形例に係るステアリングホイール用乗員情報検出センサ100aは、制御回路部120の代わりに、制御回路部120aを備えている。制御回路部120aは、電源部121を備えていない。
【0078】
この場合には、ステアリングホイール用乗員情報検出センサ100aは、センサ線112を加熱して、ステアリングホイール200のリム210を温めるヒータとしての機能を持たない。しかし、このようなステアリングホイール用乗員情報検出センサ100aであっても、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0079】
また、センサ線112の接続部112aと、導電性部材113の被接続部113aとは、互いに対向し、ベタ状である。同様に、センサ線112の接続部112bと、導電性部材113の被接続部113bとも、互いに対向し、ベタ状である。したがって、センサ線112の一部と導電性部材113の一部とにおいて容量結合に有効な面積を広げることができ、それらの間の静電容量を大きくすることができる。その結果、検出感度を大きくすることができる。
【0080】
また、上記実施の形態では、導電性部材113は、取付部品240における表面に形成された印刷膜、塗膜またはめっき膜であるが、取付部品240の一部または全体が導電性部材113として構成されていてもよい。つまり、導電性部材113は、取付部品240における少なくとも表面側の一部からなっていてもよい。例えば、取付部品240は、金属、カーボン、または導電性樹脂などからなる。この場合には、取付部品240に対して印刷、塗装またはめっきなどによって導電性部材113を形成する必要がないため、ステアリングホイール200の構成を簡略化することができる。また、ステアリングホイール200の製造工程を簡略化することができる。
【0081】
また、上記実施の形態では、導電性部材113はセンサ線112と容量結合するが、センサ線112と接触してもよい。つまり、導電性部材113は、センサ線112の接続部112aおよび112bと接触することによって、そのセンサ線112の接続部112aおよび112bと電気的に接続されてもよい。この場合には、導電性部材113は、センサ線112の一部として扱われるため、乗員が取付部品240に触れた場合であっても、ステアリングホイール用乗員情報検出センサ100は、その取付部品240に対する接触を正しく検出することができる。
【0082】
(その他の変形例)
以上、一つまたは複数の態様に係るステアリングホイール用乗員情報検出センサについて、実施の形態およびその変形例に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態およびその変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態またはその変形例に施したものや、異なる変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれてもよい。
【0083】
例えば、上記実施の形態およびその変形例では、センサ線112は金属線からなるが、センサ線112は略一定幅を有する金属箔や導電性シートなどから構成されていてもよい。また、センサ線112は、導電性を有する素材によって形成されていればよく、その素材は金属に限定されない。導電性部材113も、センサ線112と同様に、金属箔や導電性シートなどから構成されていてもよく、その素材は金属に限定されない。また、導電性部材113は、取付部品240の背面242Bに貼り付けられるフレキシブルプリント基板であってもよい。
【0084】
上記実施の形態およびその変形例では、センサ線112は、ジグザグ状に形成されているが、その形状に限定されることなく、どのような形状に形成されてもよい。また、導電性部材113は、メッシュ状の主部113cを有するが、その主部113cの形状は、メッシュ状に限らず、どのような形状であってもよい。また、上記実施の形態では、導電性部材113の被接続部113aおよび113bは、ジグザグ状のパターンを有するが、主部113cと同様にメッシュ状であってもよい。この場合、被接続部113aおよび113bは、主部113cよりも密度の高いメッシュ状であってもよい。
【0085】
また、上記実施の形態およびその変形例では、センサ群110は、第1のセンサ部110aおよび第2のセンサ部110bの2つの分離されたユニットからなるが、一体に構成されていてもよい。また、本実施の形態およびその変形例では、第1のセンサ部110aと第2のセンサ部110bとは実質的に同一の構成を有するが、互いに異なる構成を有していてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態およびその変形例では、2つの取付部品240のそれぞれに導電性部材113が形成されているが、リム210が1つだけ取付部品240を有する場合には、その1つの取付部品240にのみに導電性部材113が形成されていてもよい。また、リム210が3つ以上の取付部品240を有する場合には、それらの取付部品240のそれぞれに導電性部材113が形成されていてもよい。なお、本実施の形態では、取付部品240は、ステアリングホイール200の舵角が0度の中立状態、すなわち車両1が直進方向に向かう状態において、リム210の鉛直下側にあるが、リム210のどのような位置にあってもよい。
【0087】
また、上記実施の形態およびその変形例では、
図1のスポーク202の下側にハーネス130と制御回路部120が埋設されているが、この構成に限定されるものではなく、ハーネス130と制御回路部120は、スポーク202の右側または左側に埋設されていてもよい。さらに、ハーネス130は、1ヶ所のスポーク202に埋設される構成に限定されるものではなく、例えば第1のセンサ部110aと第2のセンサ部110bのハーネス130がそれぞれスポーク202の別の部位に埋設されていてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態およびその変形例では、センサ電極であるセンサ線112は、そのセンサ線112における静電容量の変化を検出するための電極であるが、感圧センサに用いられる電極であってもよい。