(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした従来技術は全て加工面を撮影した画像データに基づく評価であり、加工後の加工面の良否を判定することは可能とはなるが、加工面の形状とヒトの視覚による見た目との関係は明らかにされていないため、ヒトの視覚による見た目の物体表面(加工面)の形状を正確に事前に予測し、所望の見た目となるような物体の表面形状を得ることができない。
【0007】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、ヒトの視覚による見た目の物体表面(加工面)の形状を正確に事前に予測して物体表面の形状を修正する方法およびワークの加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、物体表面の形状をヒトの視覚に認識可能かを予測して、該予測に基づき物体表面を修正する表面形状修正方法において、
試験片を準備し、前記試験片の表面について、加工形状、表面粗さ曲線、視点位置、試験片表面への入射光の方向、強度、試験片表面上における波長毎の反射率および散乱特性を実測し、実測した加工形状、表面粗さ曲線、視点位置、試験片表面への入射光の方向、強度、試験片表面上における波長毎の反射率および散乱特性に関連したデータに基づいて、入射光の角度分布を変更しながら試験片の表面の形状予測、表示を繰返し、表示された試験片の表面形状と、観察者の視覚により知覚された試験片表面形状とが一致するように、試験片表面への入射光の角度分布を校正することによって得られた、物体の形状、表面粗さ曲線、視点位置、入射光および反射光に関連したデータを準備し、
物体の形状と表面粗さ曲線に関連したデータに基づいて、物体表面の形状をシミュレートし、
物体表面に複数のメッシュを定義し、
前記物体表面上の複数のメッシュの各々について、前記データに基づいて視点位置から物体表面を観察したときの物体表面の輝度を計算し、
前記物体表面上の複数のメッシュの各々について、計算された輝度に基づいて、前記物体表面の形状がヒトの視覚で認識可能かを予測し、
予測した物体表面の形状に基づき、所望の物体表面の見た目が得られるように前記物体の形状または表面粗さ曲線の少なくとも1つに関連したデータを修正するようにした物体表面修正方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、所望のワークの形状を得るためのCAM装置で生成した加工プログラムに基づいて工作機械を駆動しワークを加工するワークの加工方法において、
試験片を準備し、前記試験片の表面について、加工形状、表面粗さ曲線、視点位置、試験片表面への入射光の方向、強度、試験片表面上における波長毎の反射率および散乱特性を実測し、実測した加工形状、表面粗さ曲線、視点位置、試験片表面への入射光の方向、強度、試験片表面上における波長毎の反射率および散乱特性に関連したデータに基づいて、入射光の角度分布を変更しながら試験片の表面の形状予測、表示を繰返し、表示された試験片の表面形状と、観察者の視覚により知覚された試験片表面形状とが一致するように、試験片表面への入射光の角度分布を校正することによって得られた、物体の形状、表面の表面粗さ曲線、視点位置、入射光および反射光に関連したデータ
と、ワークの加工形状に関連したデータとを準備し、
ワークの加工形状、物体の形状と表面粗さ曲線に関連したデータに基づいて、
ワークの加工表面の形状をシミュレートし、
ワークの加工表面に複数のメッシュを定義し、
前記
ワークの加工表面上の複数のメッシュの各々について、前記データに基づいて視点位置から物体表面を観察したときの
ワークの加工表面の輝度を計算し、
前記
ワークの加工表面上の複数のメッシュの各々について、計算された輝度に基づいて、前記
ワークの加工表面の形状がヒトの視覚で認識可能かを予測し、
予測した
ワークの加工表面の形状に基づき、所望の
ワークの加工表面の見た目が得られるように前記
ワークの加工形状または表面粗さ曲線の少なくとも1つに関連したデータを変更し、
前記変更したデータに基づいて工作機械を駆動してワークを加工するようにしたワークの加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態によれば、物体表面の形状を実際に製作した場合に、観察者によってどのように視覚的に認識されるかを事前に予測することが可能となり、例えば、数値制御工作機械によってワークを切削加工する場合に、CAD/CAM装置上で加工面の形状、工具経路、加工条件の変更を行ったり、NC装置の加減速時定数、ゲイン定数その他の補正パラメータの設定値の変更を行い望ましい加工面を創成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による物体表面の予測表示装置のブロック図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態による物体表面の予測表示方法を示すフローチャートである。
【
図3】物体表面上における入射光、正反射光、散乱光、吸収される光を説明するための模式図である。
【
図4】物体表面の反射特性の測定結果の一例を示すグラフである。
【
図5】表面粗さによる乱反射を説明するための模式図である。
【
図6A】表面粗さが大きな表面における表面粗さと反射光の角度分布との関係を表すグラフである。
【
図6B】表面粗さが小さな表面における表面粗さと反射光の角度分布との関係を表すグラフである。
【
図7】物体表面の特性を考慮した輝度計算方法を説明するための模式図である。
【
図8】入射光の角度分布と反射光の角度分布を説明するための模式図である。
【
図9】入射光の角度分布の一例を表すグラフである。
【
図10A】表面粗さが大きい場合について本発明の実施形態による物体表面の予測表示結果を示す写真である。
【
図10B】表面粗さが小さい場合について本発明の実施形態による物体表面の予測表示結果を示す写真である。
【
図11】
図1の物体表面の予測表示装置をCAD/CAM装置と組み合わせた実施形態を示すブロック図である。
【
図12】本発明の好ましい実施形態による物体表面修正方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、
図3〜
図6Bを参照して、本願発明における物体表面の視認性について説明する。
一般的に、ヒトは物体表面から反射された光の強弱(輝度)を感じることによって、物体の形状や質感を認識している。物体表面に光が照射される場合の反射と散乱を模式的に示した
図3を参照すると、物体を構成する材料の特性によって、入射光の一部は吸収され、また、材料の特性に加えて入射光の波長よりも微細な表面形状の変化によって散乱する。散乱光は物体表面のマクロ的な方向によらず全方位に概ね均等に伝播する。入射光の波長よりも大きな表面形状の変化による正反射光は、入射光と物体表面の向きとの関係で方向が決定される。
【0013】
今、入射光の全てが散乱光として反射(再放射)されると、その反射光は物体表面の向きや形状によらず全方位に伝播するので、物体表面の向きや形状を視覚的に認識することはできない、つまり視認性が悪くなる。反対に散乱光として反射される成分が小さく、正反射光成分が大きくなると、物体表面の向きや形状を視覚的に認識し易くなり、視認性がよくなる。
【0014】
また、波長ごとに反射率が異なれば、物体表面の色の変化として認識されることとなる。
図4は、2種類の金属材料について波長に対する反射特性の測定結果を示している。
図4において、正反射光と散乱光を合計した反射率を実線で、散乱光のみの反射率を破線で示す。実線で示す反射率が100%となっていないことは、物体表面への吸収を示している。第1の材料では、散乱光の割合が小さく、全ての波長で略同じ反射率となっているため、光沢のある白っぽい表面となる。第2の材料では、散乱光の割合が大きく、短波長での反射率が低くなっているので、光沢のない赤みがかった表面となる。
【0015】
切削加工など機械加工された表面では、その表面粗さ曲線の振幅および/または波長が、入射光の波長よりも大きくなっていることが多い。そのような場合、物体表面への入射光は、
図5に示すように、表面の凹凸により乱反射する。一定の方向から光が入射した場合でも、物体表面の方向が変化すると、反射光の方向は様々に変化し、完全な平面光が入射した場合の反射光の方向に対して角度分布をもって反射することとなる。こうした場合であっても、散乱光の割合が大きい場合と同様に、物体表面の形状変化は明確に視認されず、視認性が悪くなる。
【0016】
反射光の角度分布は、物体の表面粗さ曲線から幾何学的に計算することが可能である。
図6A、6Bは、切削加工された金属表面の粗さ曲線を測定に求め、それに基づいて反射光の角度分布を計算により求めた一例を示している。表面粗さが大きい場合(
図6A)には、反射光の角度分布が広がって、加工面の形状変化は視認し難くなり、視認性が悪くなる。表面粗さが小さくなると(
図6B)、反射光の角度分布が狭まり、加工面の形状変化が視認し易くなり、視認性がよくなる。
【0017】
例えば、非特許文献1では、250mmの距離から金属表面を観察したとき、ヒトの視覚の解像度は約0.25mmとされている、つまり、表面粗さの曲線の波長が0.25mm以上になると、それは表面粗さとしてではなく、形状変化として視覚的に認識されることとなる。ヒトの視覚、つまり裸眼による観察を前提とすると、加工面からの反射光は、概ね加工面の表面粗さの波長が数百nm以下の場合散乱光として認識され、数百nm〜数百μmの場合乱反射光として認識され、数百μm以上の場合形状変化として認識されると言える。なお、本願では、形状変化は物体表面に意図的に設けた形状または局所的に発生した段差や形状誤差を意味し、表面粗さは物体表面の全体またはある範囲を以って部分的に広がる数百μm以下の周期的な凹凸を意味する。
【0018】
そこで、物体(製品)表面がヒトの視覚によってどのように見えるのか予測することが、製品を製造する上で重要となる。例えば、ワークをフライス盤のような加工機によって加工する場合、ワークの加工面がヒトの視覚によってどのように見えるのか、視認性を考慮してワークを設計したりワークの加工を条件を決定することが重要となる。
【0019】
図1を参照すると、ヒトの視覚によって物体表面がどのように見えるかを予測表示する物体表面の予測表示装置の本発明の好ましい実施形態が図示されている。物体表面の予測表示装置10(以下、単に予測表示装置10と記載する)は、入力部12、データ記憶部14、輝度計算部16、RGB分配部18、出力部20を主要な構成要素として備えており、RAM、ROM、CPU、ハードドライブ、SSD、出入力ポートおよびこれらを相互接続する双方向バスを備えた、例えばコンピューターのような電子機器によって構成することができる。
【0020】
入力部12は、データ記憶部14に種々のデータを入力するキーボード、タッチパネル、LAN等のコンピューターネットワークのような通信手段を介して予測表示装置10に接続されたサーバーやパーソナルコンピューター、或いは、予測表示装置10の出入力ポートに装着可能な不揮発性メモリ、例えばUSBメモリ等によって構成することができる。
【0021】
データ記憶部14は、ハードドライブやSSDのような記憶装置から形成することでき、物体の形状またはワークの加工形状に関連したデータを記憶する形状データ記憶領域、物体表面の表面粗さ曲線に関連したデータを記憶する表面粗さ曲線記憶領域、物体表面に対する観察者の視点位置に関連したデータ、例えば座標位置を記憶する視点位置記憶領域、入射光の方向、角度分布および強度等の入射光に関連したデータを記憶する入射光記憶領域、および、物体表面における波長毎の反射率および散乱特性等に関連したデータを記憶する反射光記憶領域を有している。
【0022】
輝度計算部16は、後述するように、データ記憶部14に記憶されているデータに基づいて、物体表面の反射光および散乱光の輝度を計算する。RGB分配部18は、後述するように、データ記憶部14に記憶されている物体表面の波長毎の反射率に基づいて、輝度計算部16で求めた物体表面の反射光および散乱光の輝度をR(赤)G(緑)B(青)の輝度に変換する。出力部20は、液晶パネルのような表示装置や、カラープリンターによって形成することができ、RGB分配部18で求めたR(赤)G(緑)B(青)の各々の輝度に基づいて、操作者が視覚的に認識できるように、物体表面を表示または印刷する。
【0023】
次に、
図2に示すフローチャートを参照しつつ、予測表示装置10の作用を説明する。
先ず、入力部12から、データ記憶部14に物体の形状データ(ワークの加工形状)、表面粗さ曲線に関連したデータ、視点位置に関連したデータ、入射光に関連したデータ、反射光に関連したデータが入力される。これらのデータは、測定結果に基づくデータとしたり、数学モデルによるシミュレーション結果に基づくデータ、データベースによる予測に基づくデータ、或いは、これらの組合せとすることができる。実際の測定結果と予測結果とを組合せて用いる場合、例えば形状データに予測結果を用いた場合、その形状を実際に製作した場合に、観察者によってどのように視覚的に認識されるかを事前に予測することが可能となる。
【0024】
輝度計算部16は、これらのデータをデータ記憶部14から読み込み、視点位置から物体表面を観察したときの物体表面上の各点の輝度を計算する(ステップS10)。ある視点から観察したときの物体表面のある点の輝度は、物体表面上のある点から視点へ入射する光の総量である。
図7を参照すると、物体表面上の点Aの輝度は、点Aからの散乱光と、点Aからの反射光のうち、点Aと視点とを結ぶ直線に平行な成分の総和として求められる。同様に、点Aとは異なる点Bの輝度は、点Bからの散乱光と点Bからの反射光のうち、点Bと視点とを結ぶ直線に平行な成分の総和となる。
【0025】
ここで、入射光として、例えば太陽光線は一方向からの平行光線と見做すことができるが、実際には周囲環境からの反射光や散乱光も含まれており、完全に一方向からの平行光線とはならない。同様に、室内においても、入射光は完全に一方向からの平行光線とならず、
図8に模式的に示すように角度分布を有している。このように、入射光の角度分布が存在する場合においても、各方向からの入射光に対する反射光を計算して重ね合わせることによって、反射光の角度分布を求めることができる。入射光の角度分布は、例えば
図9に示すように、各方向からの入射光の強度を測定または仮定して、最大となる方向を入射光の中心とし、入射光の中心からの角度の変化に対する強度の変化として表現することができる。
図9では、各方向からの入射光の強度を中心の入射光の強度で規格化して示されている。
【0026】
物体表面から視点へ入射する光の輝度Irの計算には、例えば米国計算機学会論文集の1982年1月号のVol. 1, No. 1,第7〜24頁(ACM Transactions on Graphics, Vol. 1, No. 1, January 1982, Pages 7-24)に掲載の「コンピューターグラフィックスのための反射率モデル(A Reflectance Model for Computer Graphics)」に記載されている以下の式を用いることができる。
【数1】
である。
【0027】
輝度計算部16において計算された輝度は、RGB分配部18において、物体表面における波長毎の反射率の違いを考慮して、R(赤)G(緑)B(青)の各々の輝度に分配される(ステップS12)。より詳細には、分光光度計により測定された波長ごとの反射率Rr(赤,700nm)、Rg(緑、546nm)、Rb(青、436nm)を用い、各波長の輝度の合計が輝度計算部16において計算された輝度Irとなるよう輝度R、輝度G、輝度Bに分配される。
【数2】
【0028】
以上の処理を物体表面を矩形または三角形のような適当なメッシュに分割して、各メッシュについて上記の処理を行うことによって、物体表面の表面粗さ、反射率、散乱といった特性(表面特性)を考慮して、出力部20において物体表面が例えば液晶パネル上に表示したり、或いは、カラープリンタによって印刷することによって、表示される(ステップS14)。
【0029】
なお、メッシュの形状は、矩形または三角形に限定されるものではなく、物体表面が適当な形状に分割できればよい。また、隣接するメッシュ間でその形状が異なっていてもよい。
【0030】
本実施形態の予測表示装置10により、実際に物体表面のヒトの視覚による見え方を予測した結果を
図10A、10Bに示す。
図10A、10Bにおいて、上側の画像が予測した結果を印刷したものであり、下側の画像は実際に製作した物体の表面を撮影した写真である。
図10Aは表面粗さが
図10Bに比べて大きな場合を示している。
図10A、10Bにおいて、物体表面の中心付近に比較的明確な筋が観察されるが、これは中心付近で物体表面の法線方向が変化しているためである。
図10A、10Bからは、本実施形態の予測表示装置10によれば、予測結果と実際の物体表面の撮影結果の双方において、表面粗さが小さく乱反射が少ない場合には、中心付近の形状変化が一層明確に観察され、表面粗さが大きい場合には形状変化が視認し難くなっていることが分かる。このように、本実施形態による予測表示装置10によれば、物体表面の表面粗さを考慮して物体表面がヒトの視覚によってどのように見えるか予測することが可能となる。
【0031】
但し、データ記憶部14に記憶される形状データ、表面粗さ曲線に関連したデータ、視点位置に関連したデータは、例えば仕様として予め決定したり、実際に測定したり、或いは、数学モデルによって比較的正確なデータを入力可能とである。然しながら、入射光に関連したデータ(入射光の方向、角度分布および強度)と、反射光に関連したデータ(波長毎の反射率、散乱特性)は、その正確な値を測定できない場合があるほか、予測も困難であることが多く、それが予測結果に影響することがある。更には、出力部20を構成するディスプレイやプリンターの特性によっても、結果が異なる場合があり得る。
【0032】
そこで、実際に製作した物体表面(ワークの加工面)の観察結果と、予測表示装置10による予測結果とを比較し、ヒトの視覚による実際の見え方と、予測結果とが異なる場合には、入射光に関連したデータ(入射光の方向、角度分布および強度等)と、反射光に関連したデータ(波長毎の反射率、散乱特性等)を修正した物体表面(ワークの加工面)の予測をやり直す。入射光の方向、角度分布および強度や散乱特性を変更すると、物体表面の明るさや形状変化の視認性が変化し、物体表面(ワーク加工面)における波長毎の反射率を変更すると物体表面の色が変化する。こうしたデータの修正を実際の見え方と予測結果とが一致するまで繰り返して、これらのデータを校正することにより一層正確な予測が可能となる。
【0033】
こうして構成した入射光に関連したデータ(入射光の方向、角度分布および強度等)と、反射光に関連したデータ(波長毎の反射率、散乱特性等)とを保存しておくことで、形状データ、表面粗さ曲線に関連したデータおよび視点位置に関連したデータを変更した場合に、物体表面がヒトの視覚によってどのように視認されるかを予測することが可能となり、例えば、数値制御工作機械によってワークを切削加工する場合に、CAD/CAM装置上で加工面の形状、工具経路、加工条件の変更を行ったり、NC装置の加減速時定数、ゲイン定数その他の補正パラメータの設定値の変更を行い望ましい加工面を創成することが可能となる。
【0034】
図11を参照すると、本発明の予測表示装置10を工作機械100を支援するCAD/CAM装置と組み合わせた実施形態が示されている。
図11において、CAD装置102にて生成されたワークの設計データが、CAM装置104に送出されると共に、ワークの加工形状データとしてデータ記憶部14に入力される。CAM装置104は、CAD装置102からの設計データに基づいて、工作機械100によりワークを加工するための加工プログラムを生成する。CAM装置104により生成された加工プログラムは、工作機械100のNC装置108に出力される。NC装置108は、加工プログラムに基づいて、工作機械100の各送り軸(図示せず)のサーボモータを駆動するための電流を出力する。
【0035】
CAM装置104が生成する加工プログラムには、ワークに対する工具の相対的な経路(工具経路)に関する情報が含まれている。また、CAM装置104には、工具条件や加工条件その他のパラメータ108が入力される。工具条件には、工具の種類、工具径および最適の切削速度等が含まれる。加工条件には、ピックフィード量、送り速度および主軸の回転速度等が含まれる。
【0036】
こうした工具経路や加工条件、パラメータは、CAM装置104から加工シミュレータ110にも出力される。加工シミュレータ110は、CAM装置104からの工具経路や加工条件、パラメータに基づいて、工作機械100による加工を計算機にて模擬する。加工シミュレータ110は、加工後のワークの加工面の表面粗さ曲線に関連したデータをデータ記憶部14に出力する。ワークの加工面の表面粗さ曲線は、ピックフィード量および工具径からカスプ高さを計算することによって求めることができる。カスプ高さは、以下の式から計算することができる。
【数3】
但し、
xはピックフィード量
Rは工具径
である。
【0037】
図12は、本発明の好ましい実施形態による物体表面修正方法を示すフローチャートある。
図12において、輝度計算部16は、これらのデータをデータ記憶部14から読み込み、視点位置からワークの加工面を観察したときのワーク加工面上の各点の輝度を計算する(ステップS20)。輝度計算部16において計算された輝度は、RGB分配部18において、ワーク加工面における波長毎の反射率の違いを考慮して、R(赤)G(緑)B(青)の各々の輝度に分配される(ステップS22)。ワーク加工面の表面粗さ、反射率、散乱といった特性(表面特性)を考慮して、出力部20においてワーク加工面が例えば液晶パネル上に表示したり、或いは、カラープリンタによって印刷することによって表示される(ステップS24)。
【0038】
次いで、例えば、工作機械のオペレータのようなユーザが、表示された加工面が意図したように見えるか、或いは、所望の加工面の見た目が得られるかどうかを目視により判定する(ステップS26)。表示された加工面が意図したものでない場合(ステップS26のNoの場合)、ワークの形状(加工面の形状)および/または表示粗さ曲線を変更し(ステップS28)、再びワークの加工面を表示し、加工面が意図した見え方になる(ステップS26でYesとなる)まで繰り返す。
【0039】
表示された加工面が意図した見え方のものであると判定されると(ステップS26のYes)、最終的なワークの形状データおよび/または表面粗さ曲線を実現する加工プログラムや加工条件、パラメータが演算される(ステップS30)。
【0040】
本実施形態によれば、上述したように、実際にワークをする前に、CAD装置102およびCAM装置104でワークの形状(加工面の形状)、工具経路、加工条件の変更を行ったり、NC装置の加減速時定数、ゲイン定数その他の補正パラメータの設定値の変更を行うことができる。例えば、工具径を変更することによって、加工面の表面粗さ曲線の波長を保持しつつ振幅を変更するこができる。或いは、工具径とピックフィード量とを変更することによって、加工面の表面粗さ曲線の振幅を保持しつつ波長を変更するこができる。
【0041】
このように、加工面の形状、工具経路、加工条件の変更を行ったり、NC装置の加減速時定数、ゲイン定数その他の補正パラメータの設定値の変更を行いつつ、ワークの加工面形状を予測することによって、効率的に所望の加工面を創成することが可能となる。