特許第6762011号(P6762011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6762011磁気光学イメージングプレートを用いて磁場分布を定量的に色表示するイメージング装置及びイメージング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762011
(24)【登録日】2020年9月10日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】磁気光学イメージングプレートを用いて磁場分布を定量的に色表示するイメージング装置及びイメージング方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20200917BHJP
   G01N 21/21 20060101ALI20200917BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20200917BHJP
   H01F 10/24 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   G01R33/02 Z
   G01N21/21 A
   G01R33/02 X
   G01R35/00 M
   H01F10/24
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-161481(P2016-161481)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2018-28519(P2018-28519A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100140394
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 康次
(72)【発明者】
【氏名】石橋 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】長久保 洋介
(72)【発明者】
【氏名】馬場 勇至
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−288585(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0146328(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01N 21/21
G01R 35/00
H01F 10/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の波長スペクトルを持つ可視光を照射可能な光源と、
前記光源から照射された前記可視光を透過する偏光子と、
前記偏光子から透過した前記可視光が入射し、これを反射するMOイメージングプレートと、
前記プレートから反射した光を透過する検光子と、
を備えた被測定物の磁場分布を定量的に色表示するイメージング装置であって、
前記プレートの光入射面とは反対の面に前記被測定物が配置され、
前記プレートには、前記可視光のスペクトルの少なくとも一つに対して、高い磁場依存性を示す磁気転写膜が設けられており、かつ、
前記イメージング装置は、
前記プレート周囲の磁場強度と当該磁場強度に対応したRGB値との校正曲線を取得する校正装置と、
前記校正装置で得られた前記校正曲線から色−磁場強度対応表示を作成・表示する装置と、をさらに備え、かつ、
前記検光子を介した前記反射光によって前記被測定物の色画像が観測可能であるとともに、該色画像と前記色−磁場強度対応表示とを用いて前記被測定物の磁場強度を定量的に表示又は測定できることを特徴とするイメージング装置。
【請求項2】
前記検光子を透過した前記色画像を撮像可能な撮像部と、
前記撮像部から得られた前記色画像を表示する表示部と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のイメージング装置。
【請求項3】
前記色−磁場強度対応表示が、前記磁場強度の複数の代表値と該代表値に対応する色とで表現されるカラーバーであり、該カラーバーは前記表示部又は別の表示手段にて表示されることを特徴とする請求項2に記載のイメージング装置。
【請求項4】
前記色−磁場強度対応表示が磁場強度表示ポインタであり、かつ、
磁場強度表示ポインタは、
操作者の求めに応じて、前記表示部に表示された前記色画像上を自由に移動できるポインタ部と、
前記ポインタ部を前記色画像上の所望の位置に配置すると、当該位置での局所的なRGB値を読み取り、該RGB値を上記校正曲線に基づく関係式に代入して、該RGB値に対応した磁場強度を算出する対応磁場強度算出部と、を備え、かつ、
前記対応磁場強度算出部で得られた前記磁場強度又は前記磁場強度及び前記RGB値を前記表示部又は別の表示手段にて表示することを特徴とする請求項2又は3に記載のイメージング装置。
【請求項5】
前記光源が複数の単色光源を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のイメージング装置。
【請求項6】
前記光源が少なくとも単一の白色光源を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のイメージング装置。
【請求項7】
被測定物の磁場分布を定量的に色表示するイメージング方法であって、
光源から照射される可視光の異なる複数のスペクトルを選択するステップと、
前記スペクトルの少なくとも一つに対して、残りのスペクトルに対するよりも、高い磁場依存性を示す磁気転写膜が設けられたMOイメージングプレートを用意するステップと、
前記可視光を前記光源から偏光子を通して前記プレートへ入反射させて、前記プレートからの反射光を検光子に透過させるステップと、
前記プレートにおける磁場強度と、前記反射光から得られるRGB値との間の校正曲線を取得するステップと、
前記プレートの光入射面とは反対の面に前記被測定物を配置するステップと、
前記校正曲線から色−磁場強度対応表示を作成・表示するステップと、
を含み、かつ、
前記検光子を介した前記反射光によって前記被測定物の色画像が観測可能であるとともに、該色画像と前記色−磁場強度対応表示とを用いて前記被測定物の磁場強度を定量的に表示又は測定できることを特徴とするイメージング方法。
【請求項8】
前記検光子に通して前記プレート側からの前記被測定物を撮像するステップと、
撮像された前記被測定物の前記色画像を表示部に表示させるステップと、
を特徴とする請求項7に記載のイメージング方法。
【請求項9】
前記色−磁場強度対応表示が、前記磁場強度の複数の代表値と該代表値に対応する色とで表現されるカラーバーであり、かつ、該カラーバーを前記表示部又は別の表示手段にて表示するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のイメージング方法。
【請求項10】
前記色−磁場強度対応表示が磁場強度表示ポインタであり、かつ、
該磁場強度表示ポインタは、操作者の求めに応じて、前記表示部に表示された前記色画像上を自由に移動できるポインタ部を備え、かつ、
前記ポインタ部を前記色画像上の所望の位置に配置すると、当該位置での局所的なRGB値を読み取り、該RGB値を上記校正曲線に基づく関係式に代入して、かつ、該RGB値に対応した磁場強度を算出する磁場強度算出ステップと、
前記磁場強度算出ステップで得られた前記磁場強度又は前記磁場強度及び前記RGB値を前記表示部又は別の表示手段にて表示するステップを含むことを特徴とする請求項8又は9に記載のイメージング方法。
【請求項11】
請求項1〜6に記載のイメージング装置又は請求項7〜10のイメージング方法のいずれかに使用可能なMOイメージングプレートであって、
前記プレートは、磁性ガーネット製の磁気転写膜を備えることを特徴とするMOイメージングプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性転写膜を含む磁気光学イメージング技術を用いて磁場分布を定量的に色表示するイメージング装置及びイメージング方法に関し、特に、磁場分布をその強度に対応した色で表示(可視化)する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(目では見えない磁場)
磁場は、磁気記録媒体(例えば、ハードディスクやビデオテープ)や電磁ヒーターなど、様々な工業分野で利用されている。磁場そのものは目で直接見ることができないが、磁石のまわりに砂鉄を撒いたとき、砂鉄の粒子が磁力線に沿って並んだ模様を見ることができる。
【0003】
(磁気転写膜を利用した磁場分布の可視化)
このように磁場分布を観察するためには、磁場を何か目に見えるもの(前述の例では、砂鉄)に置き換えればよい。既に開発された磁気光学顕微鏡を利用した方法も、磁場分布を磁気転写膜とよばれる磁気光学効果の大きな膜(例えば、ビスマス置換ガーネット膜(特許文献1))に磁気的に転写し、偏光像として可視化する方法である(例えば、非特許文献1〜3を参照)。この方法は、簡便に、高い空間分解能でかつリアルタイムで計測が可能な優れた方法として期待されている。
【0004】
(磁場分布の定量的計測)
また、磁気光学効果を定量的に計測することによって磁場分布を定量的に測定することも可能である(非特許文献1)。これらの方法では、偏光子と検光子とをほぼ90度ずらして磁性膜を観察する「直交検光子法」と呼ばれる方法が代表的である。光強度Iを持っていた入射光が磁性膜と検光子を通り過ぎると、その光の強度Iは、ファラデー回転角θと偏光子の角度θおよび検光子の角度θによって、以下の数式で表される。
【0005】
【数1】
【0006】
このように.磁気転写膜は磁場分布に応じて磁化されるため、ファラデー効果によって磁場分布が光強度に変換される。ただし、直交検光子法では光強度Iが、上記数式(数1)で示されるようにファラデー回転角θに対してcosineの二乗に比例する(つまり、非線形となる)ため、この方法で取得した画像のコントラスト(例えば、画像上の白黒のグレースケールで示された明るさ)がそのまま磁場の強さを表している訳ではない。
【0007】
(磁場分布の定量的計測に関する先行技術)
このため、定量的な磁場分布の画像を得るには、光強度Iと磁場Hの関係を使って白黒画像を校正するか(非特許文献2,3)、本発明者らが既に提案した「円偏光変調法」などの公知の磁気光学イメージング法を用いる必要がある(非特許文献1)。
【0008】
先ず、前者の対処法(光強度Iと磁場Hの関係を用いた白黒画像の校正)では、Jooseらの校正曲線(以下の数式2)が知られている(非特許文献3)。なお、数式2中のcはフィッティングパラメーター、Mは飽和磁化である。
【0009】
【数2】
【0010】
しかしながら、この数式2を利用して校正する場合、入射光強度I、バックグラウンド画像I、およびフィッティングパラメーターcなどの情報も必要となる。なお、画像上の全ての点(x,y)においてこの校正曲線を適用して磁場を算出するのは、膨大な計算量と時間が必要となり、非現実的である。そのため、実際にはある一点(例えば、(x,y))のみについて得られたパラメータ(前述のフィッティングパラメータc)を使って測定した画像上の全ての磁場を求めるしかない。そのため、照射光にむら(斑)があったり、測定中に光強度Iが変わってしまったりすると、正しい値が得られない。また、数式2から明らかなように、光強度Iをバックグラウンド画像Iで引算したり、入射光強度Iで除算したりする演算が必要となるため、演算後の磁場強度には無視できない程のノイズがのってしまう(つまり、演算後の磁場強度(信号)のSN比が悪くなる)。
【0011】
また、後者の対処法(本発明者らが提案した円偏光変調法)では、通常の磁気光学顕微鏡に偏光変調用の液晶素子を組み込んだ装置を利用する。電圧印加により、この液晶素子への電圧を変化させ、右円偏光(RCP)、直線偏光(LP)、左円偏光(LCP)の3枚の光学像を測定する。次に、画像上の全ての点において、同じ位置のピクセルの光強度IRCP、ILP、ILCPから得られた回転角θと楕円率ηで「再構成」した1枚の画像を得る。なお、この再構成の際の回転角θと楕円率ηとの演算は、以下の数式3,4により実行される。
【0012】
【数3】
【0013】
【数4】
【0014】
しかしながら、再構成した画像情報には、回転角θと楕円率ηとの上記演算によって、通常の光学像に比べて不要なノイズが多くなってしまう。このノイズを低減するためには、3枚からなる偏光画像を何度(数十回〜100回程度)も撮影する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3743440号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】石橋隆幸、「磁気光学顕微鏡における磁場分布の定量観察とその高感度化」、光学、一般社団法人日本光学会、42巻1号 (2013)、p.13−19
【非特許文献2】町 敬人、「磁気光学顕微鏡による超電導線材の磁束観察」、応用物理、公益社団法人応用物理学会、第82巻第2号 (2013)、p.117−122
【非特許文献3】Ch. Joose、他、“Thickness and roughness dependence of magnetic flux penetration and critical current densities in YBa2Cu307−d thin films,“ Physica C, 266(1996) p.235―252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、校正段階で膨大な演算・時間やノイズ低減処理を要せず、簡素かつ簡便に磁場分布の定量的な計測・表示を行うイメージング装置及びイメージング方法を提供することを目的とする。別言すれば、磁性転写膜を備えたMOイメージングプレートを用いて磁場分布を定量的に色表示する装置及び方法を提供することを目的とする。
【0018】
本発明者らは、鋭意検討の末、これまでの先行技術で最終的に処理された磁場分布を示す偏光像が光の明るさ(光の強弱、言い換えれば、白黒のグレースケールの画像)のみで表現されていたに留まっていたことに着目し、この偏光像を色(カラー)で何とか表示できないかと考えた。そうすれば、カラー表示は偏光像の僅かな状態変化を表現でき、これと磁場強度とを適宜対応させることができると考えた。そして、具体的には、磁場依存性の異なる複数のスペクトルを持つ光を、選択的に光源から磁気転写膜を含んだ磁場イメージングプレートへ入射させる手段及び工程を見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0019】
すなわち本発明は、例えば、以下の構成・特徴を備えるものである。
(態様1)
異なる複数の波長スペクトルを持つ可視光を照射可能な光源と、
前記光源から照射された前記可視光を透過する偏光子と、
前記偏光子から透過した前記可視光が入射し、これを反射するMOイメージングプレートと、
前記プレートから反射した光を透過する検光子と、
を備えた被測定物の磁場分布を定量的に色表示するイメージング装置であって、
前記プレートの光入射面とは反対の面に前記被測定物が配置され、
前記プレートには、前記可視光のスペクトルの少なくとも一つに対して、高い磁場依存性を示す磁気転写膜が設けられており、かつ、
前記イメージング装置は、
前記プレート周囲の磁場強度と当該磁場強度に対応したRGB値との校正曲線を取得する校正装置と、
前記校正装置で得られた前記校正曲線から色−磁場強度対応表示を作成・表示する装置と、をさらに備え、かつ、
前記検光子を介した前記反射光によって前記被測定物の色画像が観測可能であるとともに、該色画像と前記色−磁場強度対応表示とを用いて前記被測定物の磁場強度を定量的に表示又は測定できることを特徴とするイメージング装置。
(態様2)
前記検光子を透過した前記色画像を撮像可能な撮像部と、
前記撮像部から得られた前記色画像を表示する表示部と、
をさらに含むことを特徴とする態様1に記載のイメージング装置。
(態様3)
前記色−磁場強度対応表示が、前記磁場強度の複数の代表値と該代表値に対応する色とで表現されるカラーバーであり、該カラーバーは前記表示部又は別の表示手段にて表示されることを特徴とする態様2に記載のイメージング装置。
(態様4)
前記色−磁場強度対応表示が磁場強度表示ポインタであり、かつ、
磁場強度表示ポインタは、
操作者の求めに応じて、前記表示部に表示された前記色画像上を自由に移動できるポインタ部と、
前記ポインタ部を前記色画像上の所望の位置に配置すると、当該位置での局所的なRGB値を読み取り、該RGB値を上記校正曲線に基づく関係式に代入して、該RGB値に対応した磁場強度を算出する対応磁場強度算出部と、を備え、かつ、
前記対応磁場強度算出部で得られた前記磁場強度又は前記磁場強度及び前記RGB値を前記表示部又は別の表示手段にて表示することを特徴とする態様2又は3に記載のイメージング装置。
(態様5)
前記光源が複数の単色光源を備えることを特徴とする態様1〜4のいずれかに記載のイメージング装置。
(態様6)
前記光源が少なくとも単一の白色光源を備えることを特徴とする態様1〜4のいずれかに記載のイメージング装置。
(態様7)
被測定物の磁場分布を定量的に色表示するイメージング方法であって、
光源から照射される可視光の異なる複数のスペクトルを選択するステップと、
前記スペクトルの少なくとも一つに対して、残りのスペクトルに対するよりも、高い磁場依存性を示す磁気転写膜が設けられたMOイメージングプレートを用意するステップと、
前記可視光を前記光源から偏光子を通して前記プレートへ入反射させて、前記プレートからの反射光を検光子に透過させるステップと、
前記プレートにおける磁場強度と、前記反射光から得られるRGB値との間の校正曲線を取得するステップと、
前記プレートの光入射面とは反対の面に前記被測定物を配置するステップと、
前記校正曲線から色−磁場強度対応表示を作成・表示するステップと、
を含み、かつ、
前記検光子を介した前記反射光によって前記被測定物の色画像が観測可能であるとともに、該色画像と前記色−磁場強度対応表示とを用いて前記被測定物の磁場強度を定量的に表示又は測定できることを特徴とするイメージング方法。
(態様8)
前記検光子に通して前記プレート側からの前記被測定物を撮像するステップと、
撮像された前記被測定物の前記色画像を表示部に表示させるステップと、
を特徴とする態様7に記載のイメージング方法。
(態様9)
前記色−磁場強度対応表示が、前記磁場強度の複数の代表値と該代表値に対応する色とで表現されるカラーバーであり、かつ、該カラーバーを前記表示部又は別の表示手段にて表示するステップをさらに含むことを特徴とする態様8に記載のイメージング方法。
(態様10)
前記色−磁場強度対応表示が磁場強度表示ポインタであり、かつ、
該磁場強度表示ポインタは、操作者の求めに応じて、前記表示部に表示された前記色画像上を自由に移動できるポインタ部を備え、かつ、
前記ポインタ部を前記色画像上の所望の位置に配置すると、当該位置での局所的なRGB値を読み取り、該RGB値を上記校正曲線に基づく関係式に代入して、かつ、該RGB値に対応した磁場強度を算出する磁場強度算出ステップと、
前記磁場強度算出ステップで得られた前記磁場強度又は前記磁場強度及び前記RGB値を前記表示部又は別の表示手段にて表示するステップを含むことを特徴とする態様8又は9に記載のイメージング方法。
(態様11)
態様1〜6に記載のイメージング装置又は態様7〜10のイメージング方法のいずれかに使用可能なMOイメージングプレートであって、
前記プレートは、磁性ガーネット製の磁気転写膜を備えることを特徴とするMOイメージングプレート。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、最終的に得られる磁場分布の画像が、2つ以上の色(色グラデーション)によって表示されるとともに、色と磁場強度との対応関係(カラーバー)も併せて示すことができるので、肉眼で簡単かつ直感的に磁場の符号及び大きさを判断することができる。また、本発明の方法では、磁場の強度と色(RGB値)との関係を校正するだけで良い(つまり、先行技術の校正処理での上述したような引算や除算が必要無い)ので処理は簡単である。言い換えれば、本発明の方法では、先行技術で必要とされていた磁場の強度と光の強度(光の強弱、白黒の明るさ)との関係を校正する必要が無いので、校正段階での膨大な処理やノイズ等の問題も生じない。
【0021】
なお、例えば、最も解像度の低い撮像装置(8ビットのカメラ)を用いて、先行技術の方法により被測定物の磁場状態(磁場強度)を表そうとすると、最大で白黒256階調でしか表現できないが、本発明の方法で同一解像度の撮像装置を使用しても最大で約1700万(つまり、256の三乗)階調のカラーグラデーションで被測定物の状態を表現することができる。言い換えれば、本発明では、最も低い分解能を持つカメラを使用しても、被測定物を示す磁性膜からの反射光のスペクトルの微小な変化・差異を確実に捉えて表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るイメージング装置を示した概略図である(実施例1)。
図2】MOイメージングプレートの断面構造の一例を示した図である。
図3】校正データのプロット点とその校正曲線を示した色度分布図である。
図4】本発明によって作成・表示されたカラーバーの一例を示した図である。
図5】本発明のイメージング方法の各ステップを説明したフローチャートである(実施例3)。
図6】実施例3のイメージング方法の校正ステップの詳細を説明したフローチャートである。
図7】実施例5のイメージング装置(白色光源)を用いて表示した被測定物の磁場分布の様子を示した図である。
図8】MOイメージングプレートの変形例とその磁気光学特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施態様に何等限定されるものではない。なお、各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
【実施例1】
【0024】
(本発明の装置の概要)
図1は、本発明のイメージング装置(以下、単に「装置」とも呼ぶ。)10の一例を示した概略図である。本実施例では、光源として、第1・第2光源1,2の2つの光源が設けられている。第1光源1は、ある第1色(例えば、青色)の波長スペクトルを有した第1光を放つ単色光源(例えば、青色LED)である。一方、第2光源2は、第1色とは異なる第2色(例えば、黄色)の波長スペクトルを有した第2光を放つ単色光源(例えば、黄色LED)である。
【0025】
(互いに異なる色成分を持つ複数の光の同時入射)
図1に示す例では、第2光源2は、この光源2から照射される光が、第1光源1の光照射方向と直交方向に進むように配置されており、両光源1,2から放たれた光はビームスプリッタ3に入射する。より具体的には、一方の光源(例えば、第1光源1)からの光は、ビームスプリッタ3の第1面(外面)3aに入射して透過光と反射光との成分に分かれるが、このうち第1光(青色光)の透過光成分は、第2面(内面)3bから出射してディフューザ4、レンズ5、及び偏光子6の順に通過していく。
【0026】
これに対して、他方の光源(例えば、第2光源2)は、当該光源2から放出された第2光が、先ずビームスプリッタ3の第2面(内面)3bへ入射するように配向されているため、第2面3bで反射された第2光(黄色光)の反射光成分も、第1光の透過光成分と同様に、ディフューザ4、レンズ5、及び偏光子6の順に通過していき、後述するMOイメージングプレート7に入射することになる。
【0027】
(磁気光学(MO)イメージングプレート)
第1光の透過光成分及び第2光の反射光成分は、偏光子6を通過した際に直線偏光されたうえで、MO(magneto−optcal、「磁気光学」の意味)イメージングプレート7(以下、単に「MOプレート」とも呼ぶ。)の一方の側面7aに入射する。なお、本発明の装置10を使用する際には、MOプレート7の一方の側面7b(光源1,2からの複合光が入射する面7aとは反対の面)には、磁場分布を有した被測定物8(磁性体)が接続(接触又は近接)され、MOプレート7及びこのMOプレート7へ入射・反射した光も、後述するように、局所的な磁場の影響を受ける。その反射光は検光子9を通過した光及び当該光の周辺の物体(被測定物8を含む。)を示す色画像が、カメラなどの撮像部11によって取得される。
【0028】
(検光子)
なお、検光子9は、上述の撮像部11にて反射光(のファラデー回転による)の信号を高いコントラストで取得できるよう、偏光子6に対してほぼ直交した状態で配置されており、このような測定法は直交検光子法と呼ばれている。
【0029】
(MOイメージングプレートの断面構造)
ここで、図2に、MOプレート7の断面構造の一例を示す。MOプレート7は、基板71の上に、ビスマス置換ガーネットからなる磁気転写膜73と、この基板71に膜73の形成を助ける下地層72と、反射膜74が配置されている。この反射膜74の側が被測定物8に向き合い、基板71側が光源1,2からの入射光に向くようにMOプレート7を被測定物8に接触又は近接させる。
【0030】
(MOイメージングプレートの組成の一例)
実施例1で採用した基板71、下地層72、磁気転写膜73及び反射膜74の各組成は、図2に示すように、それぞれ、ガラス板、NdBie4Ga12、NdBiFe12、及びAgであるが、必ずしもこれらの組成に限定されない。本発明者らの経験から、基板71の厚みは50μm〜3mmが好ましい。さらに、下地層72は、30〜300nmが好ましく、100〜150nmがさらに好ましい。磁気転写膜73の厚みは、100nm〜10μmが好ましく、600〜800nmがさらに好ましい。磁気転写膜73は、後述するように、特定の色に対して磁場依存性や波長依存性が高くなる素材を選択することが好ましい。この観点からは上述のNdBiFe12(Bi2NIG)の他、RE3−xBiFe12(但し、xは0<x<3(より好ましくは、1<x<3))を選択することが好ましい。ここで、REは、Nd、Y、Luのいずれか又はこれらの希土類元素の組み合わせを意味する。
【0031】
(MOイメージングプレートの組成の変形例)
なお、基板71を、上述のガラス基板に代えて、例えば、GGG(Gadolinium Gallium Garnet)製の基板やその他の材料からなる基板を使用しても良い。また、反射膜74の金属は、比較的傷つき易いので、TiNなどの保護膜(図示せず)を追加形成しても良い。
【0032】
撮像部11にて取得された被測定物8の色画像の情報は、撮像部11からこれに接続されたパーソナルコンピュータ12内のCPU13によってメモリ14に格納されるとともに、ディスプレイ15aなどを備えた表示部15によって、被測定物8(磁性体)の一部又は全部を覆うMOプレート7(に反射した色彩)の様子を(例えば、図1中の枠18内に)表示することが可能となる。なお、表示部15は、USB等のインターフェイス12bを介してパーソナルコンピュータ12に接続されている。
【0033】
なお、以上の説明した構成要素だけでは、MOプレート7を通した被測定物8の磁場強度(分布)に対応した様子(色画像19)を観察できるに過ぎず、磁場分布の定量的な観察や定量測定を行うことはできない。
【0034】
そこで、本発明の一例では、上述の本発明の目的を達成するため、被測定物8の磁場分布に対応した(色画像19に加えて、この色画像19に対応した磁場強度と表示色との対応関係を視覚的に表示する)色−磁場強度対応表示16,17(以下、「カラーバー16」や「ポインタ17」とも呼ぶ。)も併せて表示部15(例えば、そのディスプレイ15a上)に表示できるようにしてある。
【0035】
(カラーバー)
先ず一例として、カラーバー16を表示させるための手段や処理について詳しく述べる。
【0036】
(校正用機器の構成)
図1に示すように、本発明の装置10には、校正用電磁石21とこの電磁石21に電圧Vを付与する電圧印加部22と磁場強度測定部23と光強度測定部24とが更に設けられている。電圧印加部22には、電圧調節部25が内蔵又は接続されており、この電圧調節部25によって、電磁石21に印加される電圧値Vを変更することが可能になる。
【0037】
より具体的な構成例として、電磁石21は、その中央に、鉄心21aが設けられ、その周囲にコイル21bが螺旋状に巻きつけられ、コイル21bの両端が電圧印加部22に接続されるようにしても良い。電圧印加部22及び電圧調節部25として、市販の直流安定化電源を使用しても良い。電圧調節部25によってコイル21bに流れる電流を変更することで、電磁石21に付与する電圧値Vを任意に変更することができる。なお、電圧印加部22とパーソナルコンピュータ12とを接続し、上述のように設定・印加された電圧値VのデータをCPU13の命令によってメモリ14へ格納するようにしても良い。なお、電圧印加部22とパーソナルコンピュータ12との接続は、USB等のインターフェイス12aを介して行うことが可能であり、後述する磁場強度測定部23又は光強度測定部24とパーソナルコンピュータ12との接続も同様の手段・方法であってもよい。
【0038】
また、磁場強度測定部23としては、例えば、非接触式のガウスメータを利用して良く、上述の如く電磁石21に電圧Vが印加された際に電磁石21付近に発生する磁場強度Hを測定することができる。なお、電圧印加部22とパーソナルコンピュータ12とを接続し、上述のように測定された磁場強度HのデータをCPU13の命令によってメモリ14へ格納するようにしても良い。
【0039】
また、光強度測定部24は、市販の光学分光器を利用しても良いし、上述の撮像部11の機能を併せた測定器であっても良い。なお、光強度測定部24とパーソナルコンピュータ12とを接続し、上述のように測定された波長スペクトルI(λ)をCPU13の命令によってメモリ14へ格納するようにしても良い。
【0040】
これらの上記構成は、本発明の装置10を使用する前(実際の被測定物8の観察前)の校正段階で利用される。すなわち、被測定物8の代わりに、校正用電磁石21をMOプレート7に接触又は近接させる。磁場強度測定部23は、ある電圧値Vで印加された電磁石21の磁場強度Hを測定する。光強度測定部24は、該電磁石21に接触又は近接したMOプレート7から反射して検光子9を通過した光の光学特性データ(例えば、波長スペクトルI(λ))を取得する。
【0041】
以上のように光強度測定部24、磁場強度測定部23、及び電圧印加部22で取得された波長スペクトルI(λ)、磁場強度H、設定電圧値Vの各データは、CPU13の命令によってメモリ14に保管される。その後も、電圧調節部25によって電磁石21への印加する電圧値Vを変更して、その際の電圧値Vに対応した波長スペクトルI(λ)、磁場強度H、及び電圧値Vの各データが上記校正用の装置22〜25によって取得され、CPU13の命令によってメモリ14に送信・保管される。この測定作業を複数回(カラーバー16の精度を高めるには、好ましくは5回以上、更に好ましくは10回以上)、繰り返す。
【0042】
また、本発明の装置10には、RGB算出部26が更に設けられており、RGB算出部26はメモリ14に保管された各磁場強度Hにおける波長スペクトルI(λ)を呼び出し、この波長スペクトルI(λ)に対応したRGB値を算出して、メモリ14に格納する。つまり、校正時の各磁場強度Hにおいて観察されたMOプレート7の色情報がRGB値として得られる。
【0043】
また、本発明の装置10には、校正曲線算出部27も設けられており、RGB算出部26で得られたRGB値と磁場強度Hとの対応関係から、後述する色度分布図(xy色度図)上で、校正の際に得られた各データ(つまり、磁場強度Hとこれに対応するRGB値(より詳しくは、当該RGB値から得られるxとyの値))をプロットする(図3を参照)。
【0044】
なお、図3中の幾つかのプロット点の隣に磁場強度(例えば、+1、+0.5、0、−0.5、−1、単位は全て〔kOe〕)も併せて示す。また、図3に示す色度分布図(CIE1931)の横軸xと縦軸yは、三刺激値(三原刺激の混色量)の比率(三原刺激の混色比)により、算出される。これらのプロットから、磁場強度HとRGB値(より具体的にはxとyの値)との校正曲線(例えば、フィッティングカーブ)を算出することができる。得られた校正曲線の数式情報もメモリ14に保管される。
【0045】
さらに、本発明の装置10では、カラーバー作成部28も設けられている。このカラーバー作成部28は、メモリ14に保管された校正曲線に係る数式情報を利用してカラーバー16を表示するための基本情報を作成・計算する。例えば、カラーバー表示部16では、表示するための最大及び最小の磁場強度Hmax,Hmin(例えば、+1 kOe及び−1 kOe)を決定するとともに、この最大値Hmaxと最小値Hminとの範囲を分割する領域の数n(例えば、n=11)を決定する。n=11の場合、最大値Hmaxの領域と最小値Hminの領域の他に、これらの間を均等に区切った9点(9つの仕切り用領域)の磁場強度Hが取得される(合計11点(11領域)の磁場強度Hが得られる)。
【0046】
なお、カラーバー16内側の9点(9つの領域)は、カラーバー16の表示の見易さ及び精度の面から、最大値Hmaxと最小値Hminとを均等に区分するように取得されることが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。例えば、実際に観察されやすい磁場強度Hの付近を細かく不均等に分割してもよい。得られた各磁場強度Hと上述の校正曲線とを利用して、各磁場強度Hに対応したRGB値(色情報)を算出する。このように計算することで、カラーバー16の各分割領域を示すバー代表値(各磁場強度Hとこれに対応したRGB値との対応関係)が得られる。
【0047】
カラーバー16は、カラーバー作成部28で得られ、その後メモリ14に保管されたバー代表値の各データを読み出しすることで、表示部15のディスプレイ15a上の所定箇所にカラーバー16を表示することができるのである。以上のように作成・表示されたカラーバー16の一例を図4に示す。尚、このカラーバー16は、表示部15のディスプレイ15a上に表示させる構成(図1参照)だけでなく、当該表示部15とは別の表示手段(例えば、図示しない別個の表示装置やディスプレイ)に表示させるようにしてもよい。この別の表示手段には、印刷により表示される紙等も挙げられ、検光子9上で肉眼で観測できる色(色画像)と、この紙に印刷されたカラーバー16とを比較することで、磁場強度Hを目測することもできるようになる。
【実施例2】
【0048】
(磁場強度表示ポインタ)
また、本発明の別の実施例(実施例2)に係る装置10では、上述のカラーバー16に代えて(又は上述のカラーバー16に加えて)、磁場強度表示ポインタ17(図1を参照)を利用できるようにしてもよい。磁場強度表示ポインタ17は、操作者の求め(図示しないマウス等の手段の操作)に応じて、表示部15で表示されたMOプレート7の色画像19上を自由に移動できるポインタ部(例えば、矢印)17aを備えるようにしてもよい。
【0049】
このポインタ部17aを色画像19上の所望の位置に配置又はクリックすると、CPU13の命令により、対応磁場強度算出部29が、該所望の位置での局所的なRGB値を読み取り、このRGB値を上述の校正曲線に基づく関係式(校正曲線を形成する情報はメモリ14に蓄積されている)に代入して、このRGB値に対応した磁場強度Hを算出することができる。さらに、磁場強度Hを後述のように表示部15に表示させたり、メモリ14に保管したりすることができる。
【0050】
そして、対応磁場強度算出部29にて算出された磁場強度Hは、そのポインタ部17a付近の枠17b(又は、ディスプレイ15a上のその他の所望の場所)に定量的に表示するようにしても良い。また、ポインタ部17aを配置(又はクリック)した位置での磁場強度Hとともに、その位置でのRGB値も表示する枠17cを併せて設けるようにしてもよい。この実施例2の場合には、先の実施例1のカラーバー16のみの場合に比べ、MOプレート7の色画像19上の任意の位置での局所的な磁場強度Hを、より定量的かつ明確に表示できるようになる。
【実施例3】
【0051】
(本発明のイメージング方法)
次に、本発明の装置10を用いて被測定物8の磁場分布を定量的に色表示する方法を図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0052】
先ず、本発明の装置10の光学系のセッティングを以下のように行う(ステップS1,S2)。
【0053】
ステップS1では、カラーバー16の色調を決定するために、光源1,2からMOプレート7及び被測定物8へ向けて照射される第1光・第2光のそれぞれの波長スペクトルを選択する。言い換えれば、光源1,2からターゲット7,8に入射させる光が複数(少なくとも2つ以上)の異なる色成分(波長スペクトル成分)を持つように設定する(ステップS1)。
【0054】
次に、ステップS1で設定された入射光の色成分の少なくとも一つに対して、磁場依存性(外部磁場の影響)を感度良く示す組成を有したMOプレート7を用意(選択)する(ステップS2)。
【0055】
上記ステップS1で設定された色成分を持つ光を、上記ステップS2で用意されたMOプレート7へレンズ5や偏光子6を通して入射させる(ステップS3)。なお、このステップS3では、後述の校正ステップS4や撮像ステップS6にてMOプレート7からの反射光を、検光子9を通過して取得できるよう、検光子9をMOプレート7と撮像部11や光強度測定部24との間に配置しておく。ここで、撮像部11にて反射光のスペクトル信号を感度良く(高いコントラストで)得られるように、検光子9を偏光子6に対して90度付近で角度や位置を調整(つまり、偏光子6に略直交するように配向)することが好ましい。
【0056】
(本発明の校正処理)
光学系のセッティング(ステップS1〜S3)後、実際の被測定物8の定量的観測前に、以下の校正作業を行う(ステップS4)。
【0057】
MOプレート7付近の磁場強度Hを徐々に変化させ、MOプレート7における磁場強度Hと反射光のRGB値との校正曲線を得る(ステップS4)。
【0058】
ステップS4の具体的な処理を、図6を参照しながら説明する。校正用電磁石21をMOプレート7に接続(接触又は近接)させる(ステップS41)。電圧印加部22を用いて、この電磁石21に電圧Vを印加することにより電磁石21及びこの隣のMOプレート7に発生する磁場強度Hを測定する(ステップS42)。さらに、この磁場強度Hに応じて磁気光学効果が変化したMOプレート7から反射する光の波長スペクトルI(λ)を、検光子9を通して測定する(ステップS43)。
【0059】
次に、電磁石21への印加電圧Vを変化させてMOプレート7付近の磁場強度Hを変化させて(ステップS44)、MOプレート7周囲の磁場強度Hと反射光の波長スペクトルI(λ)を測定する(ステップS42、S43)。この操作を、所望の回数(例えば、N回)繰り返す。
【0060】
この繰り返し処理の後、測定データによるMOプレート7付近の磁場強度Hとこれに応じた反射光の波長スペクトルI(λ)との対応関係が得られる。波長スペクトルI(λ)は、このスペクトルI(λ)に対応したRGB値に変換することができる(ステップS45)。このステップS45で得られたRGB値を基に色度分布図上に校正データをプロットし、フィッティングカーブを得ることで、校正曲線(磁場強度H−RGB値)を算出することができる(ステップS46)。
【0061】
以上のように光源(での入射光)の設定(ステップS1〜S3)とカラーバー16を表示するための校正(ステップS4)が実行されれば、任意の被測定物8に対する実際の観察に入ることができる(後述のステップS5〜S9)。
【0062】
先ず、ステップS4で用いた校正用電磁石21をMOプレート7から離して、実際に観察を希望する被測定物8をMOプレート7に接続(接触又は近接)するように本発明の装置10内にセットする(ステップS5)。具体的には、被測定物8の一面をMOプレート7の面7bに面接触(又は近接)させる。
【0063】
次に、カメラなどの撮像部11の電源を入れ、MOプレート7の反射光(つまり被測定物8の色画像)を、検光子9を通して撮像し、撮像した色画像データをパーソナルコンピュータ12へ送信する(ステップS6)。
【0064】
その後、パーソナルコンピュータ12のCPU13では、撮像部11から受信した色画像データを表示部15のディスプレイ15a上の所定の枠18に表示する(ステップS7)。必要に応じて、またはオペレータの入力操作により、撮像データがメモリ14に格納される。
【0065】
次に、ステップS4で得られた校正曲線を用いてディスプレイ15a上にカラーバー16を表示する(ステップS8)。具体的には、メモリ14に保管された校正曲線(数式)にオペレータが希望するカラーバー16の表示を構成する情報(上限に相当する最大値Hmax、下限に相当する最小値Hmin、及び各目盛に相当するバー代表値)を入力することで、各バー領域の色情報(RGB値)を算出することができる。各バー代表値とこれに対応して算出された各RGB値と対応情報(行列データ)から、ディスプレイ15a上の枠に所望の範囲や目盛を有したカラーバー16を表示させることができる。
【0066】
これにより、オペレータは、例えば、被測定物8(より具体的には、この上に覆い被さったMOプレート7)の色画像19と、カラーバー16とを同じディスプレイ15a上に表示させることができるため、例えば、随時(リアルタイム)に取得された被測定物8の色画像19を、色と磁場強度Hとが対応して示されたカラーバー16に比較対照させながら、定量的に観察することが可能となる。
【0067】
また、上述のカラーバー16の表示処理(ステップS8)に代えて(又は、当該処理と併せて)、ディスプレイ15a上に、実施例2にて説明した磁場強度表示ポインタ17を表示し、これを操作しながら任意の位置にて磁場強度Hをより定量的に取得・表示するようにしてもよい(ステップS9)。
【0068】
ステップS9では、先ず、オペレータの操作(図示しないキーボードどの入力手段への入力操作)により、ディスプレイ15a上にポインタ17を表示させる。オペレータは、図示しないマウス等の操作手段を操作することで、ポインタ部17aをディスプレイ15a上の被測定物8の色画像19上の所望の測定位置にポインタ部17aを移動させる。確定したポインタ部17aの位置でマウスをクリックしたりすることで(必ずしもクリック動作の必要は無く、例えば、画像19上にポインタ部17aを配置するだけでもよい)、CPU13は、当該位置での色画像19のRGB値の情報を取得するよう対応磁場強度算出部29に命令する。
【0069】
対応磁場強度算出部29では、取得したRGB値を校正曲線に基づく関係式に代入し、このRGB値に対応した磁場強度Hを算出する。このように取得・算出されたRGB値と磁場強度Hとをディスプレイ15a上の枠17b又は枠17c上に表示されるようにしてもよい。この他、操作者の求めに応じて、色画像19の所望の各選択位置にて、以上のように算出・表示されたRGB値と磁場強度Hとのデータをメモリ14に保管させるようにしてもよい。
【実施例4】
【0070】
(その他の変形例(単色光源の数))
上述の実施例1では、単色光源1,2を2つ用意して、異なる色成分(波長スペクトル、例えば、青色成分と黄色成分)を持つ入射光を同時に2つ与えることを前提としたが、必ずしも上記実施例に限定されず、3つ以上の光源(図示せず)を用意して異なる色成分(波長スペクトル)を持つ入射光を同時に3つ以上与えるようにしてもよい。これにより、撮像部11により撮像され、表示部15により表示される被測定物8の色画像19は、これらの単色光源の設定に対応して、3色以上の色彩分布(グラデーション)が得られ、カラーバー16の表示も最小値Hminから最大値Hmaxまでの領域が3色以上の色を用いたグラデーションで、よりカラフルに示すことができる。
【実施例5】
【0071】
(白色光源を利用した変形例)
なお、上述の実施例1では、2つ以上の異なる色成分を持つ入射光を得るために、これらの色成分に対応した単色光源1,2(例えば、青色LEDと黄色LED)を2つ以上用意したが、単一の白色光源を利用してもよい。これにより、装置構成がより簡素、小型かつ安価にすることができる。
【0072】
但し、白色光源に含まれる2つ以上の色成分(波長スペクトル)に対してだけ、極めて感度よく反応する波長依存性の高い特性を示すMOプレート7(特に、磁気転写膜73)の構造・組成を選択あるいは製造しなくてはならない。
【0073】
本発明者らが今まで製造したMOプレート7の一つを用いた場合、青色と黄色の2色に相当する波長依存性があり、磁場強度Hを変化させた場合にそのうちの黄色の波長スペクトルだけが、残りの青色の波長スペクトルに対するよりも、感度良く磁場光学特性が変化する。従って、MOプレート7の磁場強度Hを徐々に変化させると、検光子9を通して撮像されたMOプレート7の色画像19は磁場強度Hに応じて青色から黄色に変化して見える。
【0074】
図7に、実施例5の装置10を用いて表示した被測定物8の磁場分布の様子を示す。被測定物8としてフェライト磁石(画像右)を用い、これをMOプレート7の下に置いて撮像した色画像19を画像左に示す。図7中の幾つかの領域が拡大されており、この拡大領域とこれに対応するカラーバー16のバーとその代表値を示している。
【0075】
以上説明したような実施例5の場合、光源は白色光源であり、入射させる光の色成分(波長スペクトル)を選択・調整することはできないため、カラーバー16の色等を変更するには、光源側ではなく、光が照射されるMOプレート7側の組成・構造を積極的に調整・改良する必要がある。実際には、現在のところ、MOプレート7の磁気転写膜73(ガーネット膜)の構造を新規に作り出していくのは困難であるため、白色光源を使用した場合でのカラーバー16の色表示の選択肢は、複数の単色光源の組み合わせを用いた場合に比べて、狭まることが予想される。
【実施例6】
【0076】
本発明者らは、磁気転写膜73や基板71の組成を変更して数種類のMOプレート7(試験例1〜5)を製造し、磁気光学特性を評価した。図8は、その評価結果の一例を示す。図8は、横軸に波長を取り、縦軸にカー回転角を示す。なお、試験例1では、NdBi2.5Fe12(Bi2.5NIG)製の磁気転写膜73とGGG製の基板71を有したMOプレート7使用した。
【0077】
同様に、試験例2では、Nd0.5Bi2.5e4.5Ga0.512(Bi2.5NIG0.5G)製の磁気転写膜73とGGG製の基板71を有したMOプレート7使用した。試験例3では、Nd0.5Bi2.5e512(Bi2.5NIG)製の磁気転写膜73とGGG製の基板71を有したMOプレート7使用した。試験例4では、Nd0.5Bi2.5e4.0Ga1.012(Bi2.5NIGG)製の磁気転写膜73とガラス基板71を有したMOプレート7使用した。試験例5では、Y0.5Bi2.5e512(Bi2.5YIG)製の磁気転写膜73とガラス基板71を有したMOプレート7使用した。
【0078】
この結果から、ガラス基板71を用いた試験例4,5の場合には、MOプレート7の反射光には約500nmと約550nmの付近で大きなカー回転角のピークが発現するのに対し、GGG単結晶基板を試験例1〜3の場合には、約500nmから約650nmの広範囲に亘ってよりブロードなカー回転角のピークが発現することが判った。
【0079】
つまり、この図8から、単色光源から照射する光の色成分(波長スペクトル)と、MOプレート7の磁気光学特性(回転角スペクトル)とを夫々調節し組み合わせることで、様々な色の組み合わせで被測定物8の磁場分布やカラーバー16を色表示させることができることが判った。より具体的には、この図8の結果からは、複数の単色光源(LED)と試験例1〜5の何れかを使用する場合、少なくとも青色(450nm)、緑色(530nm)、黄色(590nm)、赤色(650nm)等の色の組合せで被測定物8の磁場分布及びカラーバー16を表示することができることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0080】
上述のとおり、磁場は、ハードディスク等の磁気記録媒体や電磁ヒーターなど、様々な工業分野で利用されている。また、電流によって磁場(電磁波)が生じる工業製品は数多く存在し、これらの製品から発生する磁場を簡易かつ定量的に観測したいとの要望は高い。
【0081】
本発明によれば、最終的に得られる磁場分布の画像が、2つ以上の色(グラデーション)によって表示されるとともに、色と磁場強度との対応関係(カラーバー)も併せて示すことができるので、肉眼で簡単かつ直感的に磁場の符号及び大きさを判断することができる。また、本発明の方法では、磁場の強度と色(RGB値)との関係性を校正するだけ良いので処理は簡単である。言い換えれば、本発明での方法では、先行技術で必要とされていた磁場の強度と光の強度との関係を校正する必要が無いので、校正段階の膨大な処理やノイズ等の問題も生じない。
【0082】
このように、本発明は、産業上の利用価値及び産業上の利用可能性が非常に高い。
【符号の説明】
【0083】
1 光源(第1光源)
2 光源(第2光源)
3 ビームスプリッタ
4 ディフューザ
5 レンズ
6 偏光子
7 MOイメージングプレート
8 被測定物
9 検光子
10 イメージング装置
11 撮像部
12 パーソナルコンピュータ
13 CPU
14 メモリ
15 表示部
15a ディスプレイ
16 色−磁場強度対応表示(カラーバー表示部、カラーバー)
17 色−磁場強度対応表示(磁場強度表示ポインタ)
17a ポインタ部
17b、17c,18 枠
19 色画像
21 校正用電磁石
22 電圧印加部
23 磁場強度測定部
24 光強度測定部
25 電圧調節部
26 RGB算出部
27 校正曲線算出部
28 カラーバー作成部
29 対応磁場強度算出部
71 基板
72 下地層
73 磁気転写膜(磁気転写膜層)
74 反射膜
H 磁場強度
I(λ) 波長スペクトル
V 電圧値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8