【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)一般社団法人 日本機械学会 第21回動力・エネルギー技術シンポジウム、ウェブサイト(平成28年06月06日に公開)。 (2)一般社団法人 日本機械学会 第21回動力・エネルギー技術シンポジウム、講演論文集(USB論文集) (平成28年06月16日に頒布)。 (3)一般社団法人 日本機械学会 第21回動力・エネルギー技術シンポジウム、平成28年06月16−17日開催(平成28年06月16日に口頭発表)。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流量算出部は、前記三つ以上の受信センサーのうち前記軸方向の両端に位置する二つの受信センサーの少なくとも一方の温度から前記所定の基準温度を設定し、該二つの受信センサーに挟まれた前記受信センサーの検出値を補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の流量計測装置。
前記補正ステップにおいては、前記三つ以上の受信センサーのうち前記軸方向の両端に位置する二つの受信センサーの少なくとも一方の温度から前記所定の基準温度を設定し、該二つの受信センサーに挟まれた前記受信センサーの検出値を補正する
ことを特徴とする請求項9に記載の流量計測方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術において、超音波の検出に用いるセンサー素子は高温になると感度低下を引き起こすおそれがあった。そのため、配管内を蒸気等の高温流体が流れる場合、温度によるセンサー素子の感度低下によって超音波を良好に検出できず、高温流体の流量を精度良く計測することは難しかった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、高温流体の流量を精度良く計測できる、流量計測装置および流量計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に従えば、タフト法を用いて配管の内部を流れる高温流体の流量を計測する流量計測装置であって、前記配管の表面に設置され、前記配管の内部に向けて超音波を発振する超音波発振部と、前記超音波を受信する超音波受信部と、を有する超音波トランスデューサと、前記超音波受信部の受信結果に基づいて、前記高温流体の流量を算出する流量算出部と、を備え、前記超音波受信部は、前記配管の軸方向に沿って並ぶ三つ以上の受信センサーを含み、前記流量算出部は、少なくとも一つの前記受信センサーの検出値を、所定の基準温度に対応した値に補正し、補正後の検出値を用いて前記高温流体の流量を算出する流量計測装置が提供される。
【0007】
上記第1態様においては、前記三つ以上の受信センサーの温度を検出する温度検出部をさらに備え、前記流量算出部は、前記温度検出部の検出結果に基づいて前記所定の基準温度を設定する構成としてもよい。
【0008】
上記第1態様においては、前記流量算出部は、前記三つ以上の受信センサーのうち前記軸方向の両端に位置する二つの受信センサーの少なくとも一方の温度から前記所定の基準温度を設定し、該二つの受信センサーに挟まれた前記受信センサーの検出値を補正する構成としてもよい。
【0009】
上記第1態様においては、前記流量算出部は、前記三つ以上の受信センサーのうち前記所定の基準温度よりも温度が高いセンサーの検出値を補正する構成としてもよい。
【0010】
上記第1態様においては、前記超音波受信部は、前記三つ以上の受信センサーをユニット化した構造からなる構成としてもよい。
【0011】
上記第1態様においては、少なくとも前記超音波発振部が前記超音波を前記配管の中心に収束させる収束手段を有する構成としてもよい。
【0012】
上記第1態様においては、前記収束手段は、前記超音波の発振面が前記配管の外面に対応した曲率を有する構成としてもよい。
【0013】
本発明の第2態様に従えば、タフト法を用いて配管の内部を流れる高温流体の流量を計測する流量計測方法であって、前記配管の内部に向けて超音波を発振する超音波発振部と前記超音波を受信する超音波受信部とを有する超音波トランスデューサを前記配管の表面に設置するとともに、前記超音波受信部の受信結果に基づき、前記高温流体の流量を算出する流量算出工程を備え、前記超音波受信部は、前記配管の軸方向に沿って並ぶ三つ以上の受信センサーを含み、前記流量算出工程は、少なくとも一つの前記受信センサーの検出値を、所定の基準温度に対応した値に補正し、補正後の検出値に基づいて前記高温流体の流量を算出する補正ステップを含む流量計測方法が提供される。
【0014】
上記第2態様においては、前記流量算出工程は、前記三つ以上の受信センサーの温度を検出する温度検出ステップをさらに含み、前記補正ステップにおいては、前記温度検出ステップの検出結果に基づいて前記所定の基準温度を設定してもよい。
【0015】
上記第2態様においては、前記補正ステップにおいては、前記三つ以上の受信センサーのうち前記軸方向の両端に位置する二つの受信センサーの少なくとも一方の温度から前記所定の基準温度を設定し、該二つの受信センサーに挟まれた前記受信センサーの検出値を補正してもよい。
【0016】
上記第2態様においては、前記補正ステップにおいては、前記三つ以上の受信センサーのうち前記所定の基準温度よりも温度が高いセンサーの検出値を補正してもよい。
【0017】
上記第2態様においては、前記超音波受信部として、前記三つ以上の受信センサーをユニット化した構造からなるものを用いてもよい。
【0018】
上記第2態様においては、流量算出工程においては、前記超音波トランスデューサとして、前記超音波発振部が前記超音波を前記配管の中心に収束させる収束手段を有したものを用いてもよい。
【0019】
上記第2態様においては、前記収束手段として、前記超音波の発振面が前記配管の外面に対応した曲率を有するものを用いてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高温流体の流量を精度良く計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る流量計測装置は、例えば、ボイラーなどの蒸気製造装置と負荷設備との間に配設される配管内を流れる高温流体(例えば、蒸気)の流量を計測可能なシステムである。また、本実施形態の流量計測装置は、配管内を流れる高温流体の流量を、超音波を利用して計測する装置である。
【0023】
従来から配管を破壊せずに該配管の内部を流れる流体(液体)の流量を、超音波を用いて外側から計測する計測方法は行われていた。以下、配管を破壊することなく、配管表面に設置した超音波トランスデューサにより外側から配管内部を流れる流体の流量を計測する方式をクランプオン方式と呼ぶことにする。
【0024】
上述のクランプオン方式により配管内の流体の流量を計測する際、超音波の送受信経路は、液体及び配管材料(固体)となる。この場合、固液界面での音波の反射によるエネルギーロスがみられるものの、概ね良好に超音波信号の送受信が可能である。これは、固体と液体とでは、媒質の音速と密度の積である音響インピーダンスの整合が相対的に良好なためである。固体及び液体では、密度比および音速比が数倍から10倍程度となっている。
【0025】
一方、配管の内部を流れる流体(例えば、蒸気)の流量を、超音波を用いて計測する場合、固体および流体(気体)における著しい音響インピーダンスの相違を回避する必要がある。そのため、配管内を流れる流体の流量をクランプオン方式で計測することは困難とされていた。
【0026】
そのため、配管内を流れる高温流体の流量を計測する場合、超音波発振子および受信子を配管内に設置する方式が従来は一般的であった。
このように超音波発振子および受信子を配管内に設置する場合、鋼管に貫通穴を設けた専用のフランジ付測定部を挿入する必要があるため、運転中のプラントを一旦停止させ、配管を切断する作業が必要となる。
【0027】
そこで、汎用性に優れ、異なる計測条件下においても、配管内を流れる高温流体の流量を計測できる新たな技術の提供が望まれている。
発明者らは、配管内を流れる高温流体の流量と該流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量との間に相関関係が存在するとの知見を得た。
【0028】
本発明者らは、タフト法による超音波流量計測手法を用いて上述の相関関係を導き出した。タフト法は、超音波を配管断面に平行、すなわち管軸に対して垂直に発振し、対向する位置に設けたセンサーにより音響強度分布の空間移動量から流量を決定する方式である。そのため、界面での反射、屈折が抑制されるので、配管内部に超音波が良好に入射できる。
【0029】
このような知見に基づき、本発明者らは本実施形態の流量計測装置を完成させた。
本実施形態の流量計測装置では、上記相関関係を規定した複数種類のデータ(グラフ)を予め作成し、測定対象となる配管内で上記空間移動量を実測することで、上記データに基づいて配管内を流れる高温流体の流量を簡便に算出可能とした。以下、本実施形態に係る流量計測装置の構成について説明する。
【0030】
図1は本発明の一実施形態に係る流量計測装置の概略構成を示す図である。
本実施形態に係る流量計測装置100は、
図1に示すように、超音波トランスデューサ1と、制御部2とを備えている。
図1において、配管10は、蒸気製造装置20(ボイラーなど)と負荷設備30との間に配設されている。蒸気製造装置20からの蒸気が配管10を流れ、負荷設備30に送られる。負荷設備30において、蒸気又は蒸気の熱が利用される。負荷設備30から排出された蒸気はドレンとして回収され、還水槽(不図示)に集約された後、蒸気製造装置20に再度給水される。
【0031】
図2は配管10の管軸方向に沿った断面による超音波トランスデューサ1の概略構成を示す図である。
図3は配管10の管軸方向から視た断面による超音波トランスデューサ1の概略構成を示す図である。
【0032】
図2に示すように、超音波トランスデューサ1は、配管10の表面10aに接触した状態で設置される(クランプオン方式)。超音波トランスデューサ1は、超音波発振センサー21と超音波受信センサー26とを有する。
【0033】
本実施形態において、超音波発振センサー21は、配管10の内部に向けて超音波Pを発振する超音波発振部として機能する。超音波受信センサー26は、超音波発振センサーが発振した超音波Pを受信する超音波受信部として機能する。
なお、以下、
図2において、配管10内に蒸気の流れが生じていない場合に配管10の内部を伝搬する超音波Pを超音波P1と示し、配管10内に蒸気の流れが生じている場合に配管10の内部を伝搬する超音波Pを超音波P2と示す。
【0034】
超音波トランスデューサ1において、その中心周波数は数十KHz〜数MHzであることが好ましい。中心周波数が数十KHz以上、例えば数百KHz以上とすると、環境雑音の影響を低下できるという利点がある。中心周波数を数MHz以下とすると、超音波の空気中での減衰率を低下できるという利点がある。本実施形態では、中心周波数を100KHz〜1MHz、例えば、500KHzとした。
【0035】
本実施形態の超音波発振センサー21および超音波受信センサー26は、配管10の内部に超音波Pを効率良く導くために、配管10の表面10aに対応した曲率を有した曲面センサーから構成されている。
【0036】
本実施形態において、例えば、超音波発振センサー21は、
図3に示すように、超音波を発振する発振面21aが配管10の表面10aに対応した曲面(断面形状が円)となっている。すなわち、発振面21aは発振した超音波を配管10の中心に収束させることが可能となっている。本実施形態において、発振面21aは配管10の中心に超音波を集束させる収束手段を構成する。
【0037】
本実施形態において、超音波受信センサー26は、配管10の軸方向に沿って並ぶ三つ以上の受信センサーを含む。超音波受信センサー26は、第1受信センサー23、第2受信センサー24および第3受信センサー25(以下、各センサー23〜25と称す場合もある)をユニット化した構造からなる。ここで、ユニット化とは、例えば、所定のピッチで配置した各センサー23〜25を共通の筐体内に収容した構造である。このようにユニット化することで超音波受信センサー26を配管10の表面10aに配置する際、各センサー23〜25間のアライメントが不要となる。そのため、超音波受信センサー26と超音波発振センサー21との位置合わせが容易となるとともに、超音波受信センサー26による超音波の検出を精度良く行うことができる。
【0038】
各センサー23〜25は、蒸気の流れの上流から下流に向かうように配管10の表面10aに順に設置されている。本実施形態において、各センサー23〜25として、例えば圧電素子から構成されたものを用いた。
【0039】
本実施形態において、超音波トランスデューサ1は温度検出部27をさらに備えている。
温度検出部27は、各センサー23〜25の温度を検出可能である。温度検出部27は制御部2に電気的に接続されており、検出結果を制御部2に送信する。
【0040】
第1受信センサー23、第2受信センサー24および第3受信センサー25は、それぞれ同一構造を有し、
図3に示すように、超音波を受信する受信面23a、24a、25a(以下、これらを総称して受信面26aと称すこともある)がそれぞれ配管10の表面10aに対応した曲面(断面が円形)となっている。これにより、配管10を透過した超音波は受信面26aに良好に入射することとなる。
【0041】
本実施形態では、
図2、3に示したように、配管10の一部を制振材11で覆うようにしている。制振材11は、超音波トランスデューサ1(超音波発振センサー21および超音波受信センサー26)の設置部分を除くように配管10の管軸方向に亘って設置される。
【0042】
上記制振材11としては、音響減衰効果が高い部材であればよく、例えば、粘土状またはペースト状材料、吸音材(パンチングメタル)、高分子材料等を例示することができる。また、内部に蒸気が流れることで配管10の表面温度が高くなる場合においては、制振材11としては音響減衰効果に加え、耐熱性を備えた材料を用いるのが望ましい。
【0043】
制振材11を使用することで配管10内を伝搬する音波が減少し、曲面センサー(超音波受信センサー26)に到達するノイズ成分がより減少する。したがって、本実施形態の流量計測装置100によれば、超音波信号をより精度良く計測可能である。
【0044】
まず、第1受信センサー23、第2受信センサー24および第3受信センサー25が熱の影響を受けない理想的な状態について説明する。
【0045】
図2に示したように、配管10内に蒸気の流れが生じていない場合、超音波発振センサー21が発信した超音波P1は蒸気の影響を受けずに配管10の内部を略まっすぐ進んで超音波受信センサー26に受信される。
【0046】
超音波受信センサー26において、第2受信センサー24の受信した信号の強度は最も高く、第1受信センサー23および第3受信センサー25の受信した信号の強度は略同等となる。
【0047】
一方、配管10内に蒸気が流れている場合、超音波発振センサー21から発信された超音波P2は、配管10の内部の蒸気の流れにより斜めに進みながら超音波受信センサー26に受信される。そのため、超音波受信センサー26においては、蒸気の流れが存在する場合に比べ、第1受信センサー23および第2受信センサー24によって受信される信号強度が下がり、第3受信センサー25によって受信される信号強度が上がる。
超音波受信センサー26の受信結果は制御部2に送信される。
【0048】
図4は、制御部2の構成を示す模式図である。
図4に示すように、制御部2は、計算装置40に加え、入力装置41、及び表示装置(出力装置)42を有する。計算装置40は、A/D変換器等の変換器43、CPU(演算処理手段)44、及びメモリ45等を有する。流量計測装置100の超音波トランスデューサ1から送信されるデータが、必要に応じて変換器43等で変換され、CPU44に取り込まれる。また、初期設定値、及び仮データなどが入力装置41などを介して計算装置40に取り込まれる。表示装置42は、入力されたデータに関する情報、及び計算に関する情報などを表示することができる。
【0049】
制御部2のメモリ45は、第1受信センサー23、第2受信センサー24および第3受信センサー25が受信した超音波信号を補間することで予め算出した基準信号強度曲線(音響強度分布)Paを記憶している(
図2参照)。なお、基準信号強度曲線Paは、第2受信センサー24に対応した位置において信号強度のピーク(最大値)を持っている。
【0050】
制御部2のCPU44は、各センサーが受信した超音波信号を補間して信号強度曲線(音響強度分布)Pbを算出する。信号強度曲線Pbは、基準信号強度曲線Paに比べて、信号強度のピーク位置(
図2中横方向の座標)が配管10の下流側に移動している。
【0051】
本実施形態において、CPU44は、信号強度曲線Pbの基準信号強度曲線Paに対する信号強度のピーク位置の移動量(超音波の音響強度分布の空間移動量ΔX)を計測する(
図2参照)。この計測値(空間移動量ΔX)は、後述のように蒸気流量を算出するデータとして利用される。
【0052】
ここで、信号強度のピーク位置の移動量(空間移動量ΔX)は、配管10の内部における蒸気流量に応じて変化する。すなわち、信号強度のピーク位置の移動量は、蒸気流量との間に所定の相関性を有している。
【0053】
CPU44は、上記空間移動量ΔX及び後述のようにメモリ45に保持されたデータ(空間移動量ΔXと蒸気流量との相関性を規定したグラフ)に基づいて、配管10の内部を流れる蒸気の流量を算出する。すなわち、制御部2は、配管10の内部を流れる蒸気の流量を算出する特許請求の範囲に記載の「流量算出部」を構成する。
【0054】
メモリ45は、配管内部を流れる蒸気の流量と、該流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量ΔXとの関係を規定したデータを保持するデータ保持部を構成する。
【0055】
以下、メモリ45に保持される、配管内部を流れる蒸気流量と蒸気流量に対応した超音波の音響強度分布の空間移動量との関係を規定したデータについて説明する。
【0056】
図5はメモリ45に保持されるデータの一例としてのグラフを示す図である。
図5に示すグラフにおいて、横軸は蒸気流量(単位:m
3/h)を示し、縦軸は超音波の音響強度分布(超音波の信号強度のピーク値)の空間移動量ΔX(単位:μm)を示す。
【0057】
本実施形態において、蒸気流量と空間移動量との関係は、
図5に示すように線形性を示すグラフで規定される。
【0058】
図5に示したグラフは、所定サイズの配管(例えば、配管10と同じ材質、外径、内径のもの)内を流れる蒸気を、超音波流量計および渦流量計で同時に計測することで作成される。超音波流量計は、タフト法により、蒸気の流れによる超音波の音響強度分布の空間移動量に関するデータを取得する(
図2参照)。渦流量計は、配管内の蒸気流量に関するデータを取得する。このようにして取得したデータをそれぞれプロットすることで上記グラフを作成することができる。
【0059】
メモリ45には、サイズの異なる配管に対応して作成された、蒸気流量と空間移動量との相関関係を規定するデータ(グラフ)が多数保持されている。
【0060】
なお、上記グラフを作成する際、超音波トランスデューサ1(曲面センサー)を有した超音波流量計を用いるのが好ましい。超音波トランスデューサ1を構成する超音波発振センサー21が曲面センサーから構成されるため、超音波を配管の中心で収束させることができる。
よって、配管の曲率に影響される屈折や反射が抑えるので、信号強度を向上させることができる。また、超音波受信センサー26が曲面センサーから構成されるため、配管の中心に収束した超音波を良好に受信することができる。これにより、信頼性の高いグラフを作成可能となる。
【0061】
また、上記グラフを作成する際、測定対象の配管に制振材を設置するのが好ましい。このようにすれば、配管内を伝搬する音波が減少するため、受信される超音波信号の強度が向上して信頼性の高い計測を行うことができる。よって、信頼性の高いグラフを作成可能となる。
【0062】
ところで、上記説明において、各センサー23〜25は熱の影響を受けないものとした。しかしながら、実際、配管10の表面10aの温度は、内部を流れる蒸気の影響を受けて非常に高温となる。各センサー23〜25には配管10を介して熱が伝達される。
【0063】
本実施形態において、超音波受信センサー26は、各センサー23〜25をユニット化した構造からなるため、各センサー23〜25は近接した状態に配置される。ここで、第2受信センサー24は二つのセンサー(第1受信センサー23及び第3受信センサー25)に挟まれるため、熱が籠ることで温度が上昇し易い。一方、第1受信センサー23及び第3受信センサー25は配管10の軸方向の一方側から放熱するので熱が籠り難く、第2受信センサー24に比べて低温となる。
【0064】
すなわち、超音波受信センサー26において、各センサー23〜25間の温度に差が生じている。なお、各センサー23〜25を構成する圧電素子は、動作温度に応じて検出感度が変化する。そのため、比較的低温となる第1受信センサー23及び第3受信センサー25は所望の検出感度を実現できるものの、比較的高温となる第2受信センサー24は検出感度の低下を招く。すなわち、超音波受信センサー26において、第1受信センサー23及び第3受信センサー25と第2受信センサー24と間の検出感度に差が生じる。
【0065】
図6は配管10による熱の影響を考慮した場合に超音波受信センサー26によって算出される信号強度曲線を示す図である。なお、
図6には、基準信号強度曲線Paも図示している。
【0066】
図6に示すように、超音波受信センサー26は、各センサー23〜25の検出結果(超音波信号)を補間して信号強度曲線Pcを算出する。上述のように超音波受信センサー26では、第2受信センサー24の検出感度が相対的に低下しているため、信号強度曲線Pcは下方に凸の曲線となる。すなわち、信号強度曲線Pcは、基準信号強度曲線Paの信号強度のピーク位置を配管10の下流側に移動させた信号強度曲線Pb(
図2参照)とは異なったものとなる。
【0067】
したがって、信号強度曲線Pcを用いた場合、該信号強度曲線Pcにおける基準信号強度曲線Paに対する信号強度のピーク位置の移動量(空間移動量ΔX)を精度良く計測することは難しい。このように各センサー23〜25間に温度差が生じると、配管10内を流れる蒸気の流量を良好に計測できないおそれがある。
なお、後述する信号強度曲線Pdは、第2受信センサー24の検出感度が低下していない場合、すなわち、各センサー間に温度差が生じていない場合の信号強度曲線に相当する。
【0068】
そこで、本実施形態の流量計測装置100では、各センサー23〜25のうち最も高温となる第2受信センサー24の検出値を基準温度に対応した値に補正することで空間移動量ΔXを算出するようにした。
【0069】
ここで、基準温度に対応した検出値とは、基準温度に対応した検出感度のセンサーを用いた場合に取得される値である。なお、基準温度は、センサーの検出感度に影響を及ぼさない温度に設定される。すなわち、センサーの温度が基準温度以下であれば、超音波を良好に検出可能であることを意味する。
【0070】
CPU44は、温度検出部27から送信される各センサー23〜25の検出結果(温度情報)に基づいて、上記基準温度を設定する。本実施形態において、第1受信センサー23及び第3受信センサー25の温度は略同一とみなせる。そのため、CPU44は、例えば、第1受信センサー23の温度を基準温度として設定する。なお、CPU44は、第1受信センサー23及び第3受信センサー25の両方の平均値を上記基準温度として設定しても良い。
【0071】
CPU44は、第2受信センサー24の温度と該温度に対応した検出値との関係を規定したデータに基づいて、第2受信センサー24の検出値を補正する。このような第2受信センサー24の温度と該温度に対応した検出値との関係を規定したデータは、上記メモリ45に保持されている。このように、メモリ45に保持されたデータを参照することで、第2受信センサー24の検出値を基準温度に対応した検出感度にて取得される値に補正できる。
【0072】
このように本実施形態の流量計測装置100によれば、熱の影響により検出感度が低下した第2受信センサー24による検出値を検出感度が低下していない場合に取得可能な値に補正することで所望の形状の信号強度曲線を算出できる。これにより、各センサー23〜25間において検出感度に差が生じていない場合と同様の信号強度曲線Pdを算出することができる。すなわち、信頼性の高い信号強度曲線Pdを算出することができる。
【0073】
したがって、蒸気等の高温流体が配管10内を流れる場合であっても、上記のような信頼性の高い信号強度曲線Pdを用いることで空間移動量ΔXを算出できるので、流量計測を精度良く行うことができる。
【0074】
続いて、流量計測装置100による流量計測方法について説明する。
はじめに、制御部2は蒸気製造装置20から配管10を介して負荷設備30への蒸気の供給を開始する。
【0075】
続いて、制御部2は超音波トランスデューサ1を駆動し、超音波発振センサー21の発振面21aから配管10の内部に向けて超音波を発振する。本実施形態では、超音波発振センサー21が配管10の表面10aに対応した曲率の発振面21aを有するため、超音波が配管10の中心に収束する。よって、配管10の曲率に影響される屈折や反射を抑えることができる。
【0076】
配管10の中心で収束された超音波は、配管10の対向面側に設置された超音波受信センサー26により受信される。このとき、超音波受信センサー26は、該超音波受信センサー26の検出結果を制御部2に送信する。また、温度検出部27は、該温度検出部27の検出結果を制御部2に送信する。
【0077】
制御部2は、必要に応じて上記検出結果をA/D変換機等の変換器43(
図4参照)によりデジタル変換し、CPU44(
図4参照)に取り込む。
【0078】
CPU44は、各センサー23〜25が受信した超音波信号を補間して信号強度曲線を算出する。このとき、CPU44は、信号強度曲線を算出するに先立ち、各センサー23〜25のうち、二つのセンサー23,25に挟まれた第2受信センサー24の検出値を基準温度に対応した値に補正する。
【0079】
CPU44は、各センサー23〜25のうち、基準温度(第1受信センサー23の温度)よりも高い温度となる第2受信センサー24の検出値を補正する。
CPU44は、メモリ45に保持されたデータ(第2受信センサー24の温度と該温度に対応した検出値との関係を規定したデータ)の中から基準温度に対応する値を読み出し、第2受信センサー24の検出値を読み出した値に変更(補正)する(補正ステップ)。
【0080】
これにより、CPU44は、各センサー23〜25間において検出感度に差が生じていない場合において算出される信号強度曲線と同様、信頼性の高い曲線を取得することができる。よって、CPU44は、信頼性の高い信号強度曲線Pd(
図6参照)を用いることで、超音波の音響強度分布の空間移動量ΔXを精度良く算出できる。
【0081】
CPU44は、上記空間移動量ΔXと、メモリ45に保持されたデータの中から計測対象となる配管10の種類(例えば、外径、内径、材質等)に対応するグラフ(例えば、
図5に示したグラフ)を読み出し、該グラフから空間移動量ΔXの値に対応する蒸気流量を算出する(流量算出工程)。
【0082】
以上述べたように、本実施形態によれば、第2受信センサー24の検出値を補正することで算出した信頼性の高い空間移動量ΔXと、メモリ45に保持されたデータ(空間移動量と蒸気流量との相関性を規定したグラフ)とに基づいて、配管10の内部を流れる蒸気の流量をタフト法によって簡便且つ精度良く求めることができる。
よって、蒸気等の高温流体の流量をタフト法により精度良く計測可能な流量計測装置100および流量計測方法を提供できる。
【0083】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることはなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0084】
例えば、上記実施形態では、各センサー23〜25の温度を温度検出部27で直接検出する場合を例に挙げたが、各センサー23〜25の温度をコンピューター解析によって算出しても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、超音波受信センサー26として、三つの受信センサー23〜25を配管10の軸方向に配置したものを例に挙げたが、センサーの数はこれに限定されず、四つ以上の受信センサーを配置してもよい。この場合において、四つ以上の受信センサーのうち配管10の軸方向の両端に位置する二つの受信センサーの少なくとも一方の温度から所定の基準温度を設定し、該二つの受信センサーに挟まれた受信センサーの検出値を補正する。すなわち、例えば、五つの受信センサーを配置した場合、両端に位置する二つの受信センサーの少なくとも一方の温度から所定の基準温度を設定し、該二つの受信センサーに挟まれた三つの受信センサーの検出値を補正すればよい。
【0086】
また、上記実施形態では、第1受信センサー23の温度を基準温度として設定する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。配管10内を流れる蒸気の温度によっては、例えば、第1受信センサー23及び第3受信センサー25が検出感度の低下を招く温度に到達する状況もあり得る。この場合、第1受信センサー23及び第3受信センサー25のいずれか一方の温度を基準温度に設定すると、信号強度曲線及び空間移動量ΔXを算出することができない。
【0087】
そこで、CPU44は常温(例えば、20℃)を基準温度に設定し、基準温度よりも高い温度の受信センサーの検出値を補正するようにしても良い。このとき、各センサー23〜25の全てが基準温度よりも高い温度となるため、各センサー23〜25の全ての検出値を補正する。これにより、各センサー23〜25の全てにおいて検出感度が低下している場合であっても、信頼性の高い信号強度曲線を算出することで流量計測を精度良く行うことができる。
【0088】
また、上記実施形態では、発振面21aおよび受信面26aが表面10aに対応する態様として、発振面21aおよび受信面26aが表面10aと直接的に接触する態様を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明は、例えば、超音波トランスデューサ1と配管10との隙間に楔状のスペーサー部材が配置されることで、発振面21aおよび受信面26aが表面10aに間接的に接触する態様であってもよい。
【0089】
図7はスペーサー部材の概略構成を示す図である。
図7に示すように、スペーサー部材13は、内径13aが表面10aの曲率に一致し、外径13bが発振面21aおよび受信面26aの曲率に一致している。例えば、内径13aを異ならせた複数のスペーサー部材13を用いれば、1つの超音波トランスデューサ1が表面10aの径が異なる種々の配管10に対して流量計測を行うことが可能となる。よって、配管10の径に依存しない汎用性に優れた流量計測装置100が提供される。また、スペーサー部材13を用いることによって配管10の表面10aからの熱が各センサー23〜25に伝わり難くすることができる。よって、各センサー23〜25の温度上昇が低減されるので、温度上昇に伴う検出感度の低下が抑制される。
【0090】
また、上述のように外径の異なる配管10に対して流量計測を行う際、スペーサー部材13に代えて、超音波トランスデューサ1として可撓性を有したものを用いればよい。このようにすれば、超音波トランスデューサ1は、容易に折り曲げ可能であるので、表面10aの曲率に応じて折り曲げることで配管10の外径によらず表面10aに沿って確実に設置することが可能となる。よって、外径が異なる種々の配管10に対して流量計測を行うことが可能な汎用性に優れたものとなる。
【0091】
例えば、上記実施形態では、配管10の中心に超音波を集束させる収束手段として、超音波を発振する発振面21aを配管10の表面10aに対応した曲面とする態様を例示したが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、収束手段として音響レンズを用い、超音波を配管10の中心に収束させるようにしてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、配管10が制振材11で覆われた構成を例に挙げたが、これに限定されることは無い。例えば、制御部2が配管10を伝搬する音波によるノイズ成分を考慮して超音波トランスデューサ1からの送信結果(空間移動量ΔX)を補正する態様であれば、配管10の表面10aを制振材11で被覆しなくてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、上記超音波トランスデューサ1が曲率センサーから構成される場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されることは無く、超音波トランスデューサ1が平面センサーから構成されていても良い。
【0094】
また、上記実施形態では、高温流体として配管内を流れる蒸気の流量を計測する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されず、配管内を流れる高温の空気の流量を計測する場合にも適用可能である。また、配管内を流れる高温流体が例えば、フロン、アンモニア、LNG(Liquefied Natural Gas)等であってもよく、これら流体の流量を計測する場合にも本発明は適用可能である。