(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単一の通路部材内に開弁圧力の異なる複数個の差圧弁が流体の流れ方向に対して垂直方向に並列に設けられ、各差圧弁の弁体が弁口を下流側から閉じるようにされていることを特徴とする複合弁。
通路部材と、該通路部材内に配設される主弁本体とを備え、該主弁本体に、固定絞り孔と開弁圧力の異なる複数個の差圧弁とが流体の流れ方向に対して垂直方向に並列に設けられ、各差圧弁の弁体が弁口を下流側から閉じるようにされていることを特徴とする複合弁。
通路部材と、該通路部材内に対向して配設された一対の主弁本体とを備え、該一対の主弁本体にそれぞれ、開弁圧力の異なる複数個の差圧弁と貫通弁口とが流体の流れ方向に対して垂直方向に並列に設けられ、各差圧弁の弁体が弁口を下流側から閉じるようにされ、前記一対の主弁本体における前記貫通弁口を選択的に開閉すべく、前記一対の主弁本体の間に差圧駆動式の逆止弁体が移動自在に配在されていることを特徴とする複合弁。
前記弁体の底部側に、前記主弁本体に設けられた弁室に摺動自在に内接する平面視円弧状の内接部が2箇所以上設けられた角筒状の胴部が設けられ、該胴部における前記内接部以外の部分に開口が形成されるとともに、前記内接部以外の部分と前記弁室の内周面との間には流通路が形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の複合弁。
前記貫通弁口の実効通路断面積は、前記通路部材を通じて流すべき最大要求流量が得られる実効通路断面積より大きくされていることを特徴とする請求項3に記載の複合弁。
前記逆止弁体は、両端部に円錐状部が設けられるとともに、前記円錐状部の間に、前記通路部材に摺動自在に内接する平面視円弧状の内接部が2箇所以上設けられ、前記内接部以外の部分と前記通路部材の内周面との間には流通路が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の複合弁。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な冷房専用エアコンは、通常、圧縮機、室外熱交換器(凝縮器)、室内熱交換器(蒸発器)、及び固定絞りとしてのキャピラリーチューブを備え、各機器間は導管(パイプ)等で形成される冷媒通路で接続されており、運転時には、圧縮機から高温高圧の冷媒が室外熱交換器に導かれ、ここで室外空気と熱交換して凝縮し、高圧の二相冷媒となってキャピラリーチューブに導入され、このキャピラリーチューブにより高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、室内熱交換器に導入され、ここで室内空気と熱交換(冷房)して蒸発し、室内熱交換器からは低温低圧の冷媒が圧縮機の吸入側に戻されるようになっている。
【0003】
かかる冷房専用エアコンは、冷暖両用エアコンに比べて構成が簡素であり、低価格で提供できるという利点を持つが、最近、この冷房専用エアコンについて、省エネ等を図るべく、外気温に応じて冷媒流量を変化させたい、つまり、外気温が高くなるに従って高圧側(室外熱交換器)から低圧側(室内熱交換器)に向かう冷媒流量を増加させたいとの要望がある。
【0004】
この場合、構成が簡素、低価格という冷房専用エアコンの利点が損なわれないようにするため、外気温に応じて冷媒流量をリニアに変化させることまでは要求されず、外気温に応じて冷媒流量を段階的に(3段階程度に)変化させることができれば良いと考えられている。
【0005】
かかる要望に応えるべく、従来技術として、外気温と高圧側の圧力とは相関がある(外気温上昇≒高圧側圧力上昇)ことに着目して、例えば、キャピラリーチューブを迂回するようにバイパス通路を設け、このバイパス通路に、弁前後(入口側と出口側)の差圧が所定圧より大きくなると開弁する差圧弁を組み込むこと、言い換えれば、キャピラリーチューブに並列に差圧弁を設けることが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにキャピラリーチューブに並列に差圧弁を設けることにより、前記差圧が所定圧以下、つまり、外気温が比較的低いときには、冷媒がキャピラリーチューブのみを通じて流され、前記差圧が所定圧より大きいとき、つまり、外気温が比較的高いときには、差圧弁が開弁して冷媒はキャピラリーチューブに加えて差圧弁を通じても流される。そのため、外気温に応じて冷媒流量を2段階に変化させることができる。
【0008】
しかしながら、このような従来技術では、冷媒流量を2段階にしか変化させることができず、しかも、キャピラリーチューブを迂回するバイパス通路を別途に設けることが要求されるとともに、そのバイパス通路に差圧弁を組み込む必要があるので、配管系が複雑になり、組み立てコスト、部品コスト等が嵩んでしまう。
【0009】
上記従来技術において、外気温に応じて冷媒流量を多段階(例えば3段階以上)に変化させるためには、キャピラリーチューブを迂回するバイパス通路を2本以上設けるとともに、各バイパス通路にそれぞれ開弁圧力の異なる差圧弁を組み込む必要があるので、配管系が一層複雑になり、組み立てコスト、部品コスト等がさらに嵩むという問題がある。
【0010】
なお、上記特許文献1には、キャピラリーチューブに並列に差圧弁が設けられた冷房専用エアコン(局所冷房機)が記載されているが、この局所冷房機における差圧弁は、高圧側の圧力が過度に高くなったとき、高圧側の圧力を低圧側に逃がすリリーフ弁として機能するもので、外気温に応じて冷媒流量を変化させるためのものではない。
【0011】
以上、冷房専用エアコンについて説明したが、冷房運転と暖房運転とを切り換えることのできる冷暖両用エアコンについても、外気温に応じて冷媒流量を多段階に変化させようとする場合、上記と同様のコスト等に関する問題が生じることは避けられない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、エアコン等の冷凍サイクル装置において、配管系を簡素に構成するとともに、組み立てコスト、部品コスト等を低く抑えながら、外気温に応じて冷媒流量を多段階に変化させることのできる複合弁及びそれを備えた冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明に係る複合弁の第1態様は、単一の通路部材内に開弁圧力の異なる複数個の差圧弁が
流体の流れ方向に対して垂直方向に並列に設けられ
、各差圧弁の弁体が弁口を下流側から閉じるようにされていることを特徴としている。
【0014】
本発明に係る複合弁の第2態様は、通路部材と、該通路部材内に配設された主弁本体とを備え、該主弁本体に、固定絞り孔と開弁圧力の異なる複数個の差圧弁とが
流体の流れ方向に対して垂直方向に並列に設けられ
、各差圧弁の弁体が弁口を下流側から閉じるようにされていることを特徴としている。
【0015】
本発明に係る複合弁の第3態様は、通路部材と、該通路部材内に対向して配設された一対の主弁本体とを備え、該一対の主弁本体にそれぞれ、開弁圧力の異なる複数個の差圧弁と貫通弁口とが
流体の流れ方向に対して垂直方向に並列に設けられ、
各差圧弁の弁体が弁口を下流側から閉じるようにされ、前記一対の主弁本体における前記貫通弁口を選択的に開閉すべく、前記一対の主弁本体の間に差圧駆動式の逆止弁体が移動自在に配在されていることを特徴としている。
【0016】
一方、本発明に係る冷房専用の冷凍サイクル装置は、室外熱交換器と室内熱交換器とを結ぶ冷媒通路に第1態様又は第2態様の複合弁が介装されていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る冷暖両用の冷凍サイクル装置は、室外熱交換器と室内熱交換器とを結ぶ冷媒通路に第3態様の複合弁が介装されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る第1態様の複合弁は、単一の通路部材内に開弁圧力の異なる複数個の差圧弁が並列に設けられるので、該複合弁を通過する冷媒流量を、差圧弁が2個の場合は2段階、3個の場合は3段階というように、差圧弁の個数に応じて段階的に変化させることができる。
【0019】
ここで、前述したように外気温と高圧側の圧力とは相関があるので、本第1態様の複合弁を、例えば、冷房専用エアコンにおける室外熱交換器と室内熱交換器とを結ぶ冷媒通路に、キャピラリーチューブに代えて介装することにより、外気温に応じて冷媒流量を段階的に変化させることが可能となる。
【0020】
このように、本第1態様の複合弁をキャピラリーチューブに代えて、例えば冷房専用エアコンに用いることにより、従来技術のようにキャピラリーチューブを迂回するバイパス通路を設けてそのバイパス通路に差圧弁を組み込む方策に比べて、特に、外気温に応じて冷媒流量を多段階(例えば3段階以上)に変化させるようにする場合には、配管系を簡素に構成でき、組み立てコスト、部品コスト等を効果的に抑えることができる。
【0021】
本発明に係る第2態様の複合弁は、通路部材内に配設される主弁本体に固定絞り孔と開弁圧力の異なる複数個の差圧弁とが並列に設けられるので、第1態様の複合弁と略同様の作用効果が得られることに加えて、差圧弁の個数を第1態様の複合弁より1個減らすことができる(例えば冷媒流量を3段階で変化させたい場合、差圧弁は2個で済む)上、複数個の差圧弁が共通の主弁本体に設けられるので、各差圧弁には、入口、出口、弁室等を形成するケース部分等が不要となる。このため、第1態様の複合弁に比べて、部品点数を少なくすることができ、組み立てコスト、部品コスト等を一層抑えることができる。
【0022】
本発明に係る第3態様の複合弁は、開弁圧力の異なる複数個の差圧弁と貫通弁口とが並列に設けられた一対の主弁本体を備え、この一対の主弁本体における貫通弁口を、該一対の主弁本体間に移動自在に配在された逆止弁体により選択的に開閉するようにされるので、本第3態様の複合弁は、両流れに対応、つまり、流れ方向が切り換えられる冷媒通路に介装することができ、流れ方向がいずれの場合も、第1態様及び第2態様の複合弁と同様に、冷媒流量を段階的に変えることができる。
【0023】
したがって、本第3態様の複合弁は、例えば冷暖両用エアコンにおいて、室外熱交換器と室内熱交換器とを結ぶ冷媒通路に、両流れに対応した膨張弁に代えて介装することができる。この場合、冷房運転時には外気温に応じて冷媒流量を段階的に変えることができ、また、暖房運転時にも、弁前後(入口と出口)の差圧に応じて冷媒流量を段階的に変えることができるので、省エネ等を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0026】
なお、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、誇張して描かれている場合がある。また、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際の使用状態での位置、方向を指すとは限らない。
【0027】
[第1実施例]
図1は、本発明に係る複合弁の第1実施例を示し、(A)は、縦断面図、(B)は、(A)のX−X矢視断面図である。
【0028】
本実施例の複合弁1は、
図4に示される如くの、圧縮機110、室外熱交換器120、及び室内熱交換器130を備えた冷房専用エアコン100において、室外熱交換器120と室内熱交換器130とを結ぶ冷媒通路105に介装されるもので、該冷媒通路105の一部を構成する通路部材7と、この通路部材7内を気密的に仕切るように配設された主弁本体10とを備える。
【0029】
通路部材7は、例えば銅製の所定長のパイプからなり、その両端部には冷媒通路105を構成する配管が接続されるようになっている。
【0030】
主弁本体10は、
図1を参照すればよくわかるように、例えば真鍮製で、通路部材7の内径と略同じ外径を有する短円柱状とされており、その外周中央には断面矩形の環状溝16が形成されている。この主弁本体10の通路部材7への組み付けは、かしめ加工(例えば、ロールかしめ加工)によって通路部材7の外周の一部を窄めるようにかしめて(かしめ部9)、その内周の一部を前記環状溝16内に押し込み、主弁本体10の外周面と通路部材7の内周面とを強く密着させることによりなされる。
【0031】
主弁本体10には、その中央(通路部材7の中心線O上)に、従前の冷房専用エアコンで用いられているキャピラリーチューブとして働く固定絞り孔17が設けられ、この固定絞り孔17より外周側の同心円上に180°の角度間隔をあけて2個の差圧弁20A、20Bが固定絞り孔17と平行に設けられている。言い換えれば、主弁本体10に、固定絞り孔17と2個の差圧弁20A、20Bとが並列に設けられている。なお、固定絞り孔17は内径が2段階で変化する段付きの貫通孔として形成されているが、内径が変化しない貫通孔でもよいことは勿論である。
【0032】
二つの差圧弁20A、20Bは、開弁圧力が異なる(後で詳述)だけで、基本構成はほぼ同じであり、
図2に差圧弁20Aが代表して拡大図示されているように、主弁本体10に、左側(高圧側)から順次、弁口(入口)21、弁体25が摺動自在に嵌挿される弁室23、四つ葉ないし十字状のばね受け部材27が圧入、締結、かしめ等により装着固定される環状装着溝24Aが段付きで設けられている。ばね受け部材27の中央には、弁口21と略同径の出口22が設けられている。
【0033】
弁室23に摺動自在に嵌挿された弁体25は、
図2(A)〜(E)を参照すればよくわかるように、先端部(左端部)の円錐状部25aと、この円錐状部25aの底部側に連設された、弁室23に摺動自在に内接する平面視円弧状の内接部25cを四隅に持つ角筒状の胴部25bとで構成され、胴部25bを形成する平板状の4面(内接部25c以外の平坦面部)のうちの対向する2面には、冷媒を円滑に流通させるための円形開口25dが形成されている。円錐状部25aの底部側には、胴部25bにおける内接部25c以外の平坦面部と面一の弓形状平坦面部25eが形成されている。したがって、弁体25における内接部25c以外の部分(25a、25b、25e)と弁室23の内周面との間には、流通路が形成されている。
【0034】
なお、本例では、主弁本体10に設けられた弁室23に摺動自在に内接する平面視円弧状の内接部25cが、弁体25の底部側に設けられた胴部25bに4箇所設けられているが、2箇所以上、好ましくは3箇所以上であれば良いことは当然である。
【0035】
弁体25(における胴部25b内の円錐状部25a側の端面)とばね受け部材27との間には、弁体25を閉弁方向(弁口21方向)に付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね26が縮装されている。
【0036】
かかる構成の差圧弁20A、20Bにおいては、圧縮コイルばね26のセット荷重(付勢力)に応じて開弁圧力が変わるようにされている。圧縮コイルばね26のセット荷重は、本例では、ばね受け部材27が圧入等により装着固定される環状装着溝24A、24Bの深さ、すなわち、
図1(A)に示される如くに、閉弁状態における圧縮コイルばね26の長さ(全高)La、Lbにより決まる。本例では、差圧弁20Bの環状装着溝24Bは、差圧弁20Aの環状装着溝24Aよりh分だけ深くされており、このため、圧縮コイルばね26の長さ(全高)は、差圧弁20B(Lb)の方が差圧弁20A(La)より(h分だけ)短くなる。そのため、差圧弁20Bの圧縮コイルばね26のセット荷重は、差圧弁20Aの圧縮コイルばね26のセット荷重より大きくなるので、開弁圧力は、差圧弁20Aより差圧弁20Bの方が大きくなる。
【0037】
上記のように、本例の複合弁1においては、共通の部品(弁体25、圧縮コイルばね26、ばね受け部材27)を用いて、環状装着溝24A、24Bの深さを変えるだけで差圧弁20A、20Bの開弁圧力を変えられるようになっているので、部品コストや組立コストを相当抑えることができる。
【0038】
なお、差圧弁20A、20Bの開弁圧力は、例えば、各差圧弁20A、20Bの圧縮コイルばね26のばね係数を変えることで調整しても良いし、弁体25やばね受け部材27の形状を変更することで調整しても良い。
【0039】
このような構成とされたもとでは、弁前後の差圧に対して冷媒流量は、
図3に示される如くに変化するものとなる。すなわち、
(i)高圧側圧力が低圧の低負荷時には、各差圧弁20A、20Bが閉じられたままで(
図2(D)参照)、冷媒は固定絞り孔17のみを通じて流され、冷媒流量は差圧に応じて漸増する。
(ii)高圧側圧力が低圧から中圧に上昇する(つまり、低負荷状態から中負荷状態になる)と、開弁圧力が小さい差圧弁20Aが開弁するので、冷媒は、固定絞り孔17に加えて、差圧弁20A側の弁口21→弁体25における内接部25c以外の部分(25a、25b、25e)と弁室23の内周面との間の流通路→円形開口25d及び弁体25(の胴部25bの底端部)とばね受け部材27の間の隙間(弁体25(の胴部25bの底端部)がばね受け部材27に当接する場合には、円形開口25d)→ばね受け部材27の出口22を通じて流され(
図2(E)参照)、冷媒流量は急激に上昇する。
(iii)高圧側圧力が中圧の中負荷時には、冷媒は固定絞り孔17に加えて差圧弁20Aを通じても流されるので、冷媒流量は差圧に応じて漸増する。
(iv)高圧側圧力が中圧から高圧に上昇する(つまり、中負荷状態から高負荷状態になる)と、差圧弁20Aに加えて開弁圧力が大きい差圧弁20Bが開弁するので、冷媒は、固定絞り孔17及び差圧弁20Aに加えて、差圧弁20Bにも前記した差圧弁20Aと同様に流され、冷媒流量は急激に上昇する。
(v)高圧側圧力が高圧の高負荷時には、冷媒は固定絞り孔17と差圧弁20Aに加えて差圧弁20Bを通じても流されるので、冷媒流量は差圧に応じて漸増する。
【0040】
このように、本実施例の複合弁1では、高圧側圧力に応じて、言い換えれば、外気温に応じて、通路部材7(冷媒通路105)を流れる冷媒流量を3段階に変化させることができるので、該複合弁1が用いられた冷房専用エアコン100において省エネ等を図ることができる。
【0041】
また、本実施例の複合弁1をキャピラリーチューブに代えて冷房専用エアコン100に用いることにより、従来技術のようにキャピラリーチューブを迂回するバイパス通路を設けてそのバイパス通路に差圧弁を組み込む方策に比べて、配管系を簡素に構成でき、組み立てコスト、部品コスト等を効果的に抑えることができる。
【0042】
また、主弁本体10に固定絞り孔17を設けることにより、差圧弁の必要個数を1個減らすことができる(冷媒流量を3段階で変化させたい場合、差圧弁は2個で済む)上、2個の差圧弁20A、20Bが共通の主弁本体10に設けられるので、各差圧弁20A、20Bには、入口、出口、弁室等を形成するケース部分等が不要となる。このため、部品点数を少なくすることができ、組み立てコスト、部品コスト等を一層抑えることができる。
【0043】
なお、上記第1実施例では、主弁本体10に固定絞り孔17と2個の差圧弁20A、20Bを並列に設けて、冷媒流量を3段階に変化させるようにされているが、これに限られるわけではなく、例えば、
図5(A)に示される如くに、開弁圧力の異なる差圧弁20を3個(図示例では、同心円上に120°の角度間隔をあけて3個)に増やして冷媒流量を4段階に変化させるようにしたり、あるいは、
図5(B)に示される如くに、開弁圧力の異なる差圧弁20を4個(図示例では、同心円上に90°の角度間隔をあけて4個)に増やして冷媒流量を5段階に変化させるようにすることもできる。
【0044】
また、差圧弁としては、上記実施例のような先端部が円錐状の弁体に代えて、
図6に示される如くの、球状のボール弁体28を用いたものでも良い。なお、このボール弁体28を用いた差圧弁20Eのばね受け部材27には、圧縮コイルばね26の外れ止め27aが(圧縮コイルばね26の外周を囲むように)突設されている。
【0045】
また、主弁本体10の固定絞り孔17を省略しても良い。この場合、上記実施例のように差圧弁の必要個数を1個減らすことはできないが、複合弁を通過する冷媒流量を、差圧弁が2個の場合は2段階、3個の場合は3段階というように、差圧弁の個数に応じて段階的に変化させることができる。
【0046】
[第2実施例]
図7は、本発明に係る複合弁の第2実施例を示し、(A)は、左→右流れ時の、(B)は、右→左流れ時の、それぞれの縦断面図である。なお、
図7において、主弁本体11、12部分は
図8(A)のZ−Z矢視断面図、逆止弁体30部分は
図8(A)のZ−Z’矢視断面図である。
【0047】
この第2実施例の複合弁2において、第1実施例の複合弁1の各部に対応する部分には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0048】
図示第2実施例の複合弁2は、後述する
図9に示される如くの冷暖両用エアコン200において、室外熱交換器220と室内熱交換器230とを結ぶ冷媒通路205に膨張弁に代えて介装されるもので、第1実施例の通路部材7に相当する通路部材8と、この通路部材8内を気密的に仕切るように対向して配設された一対の主弁本体11、12とを備える。一対の主弁本体11、12にはそれぞれ、
図7に加えて
図8を参照すればよくわかるように、第1実施例のものと同様な固定絞り孔17と、開弁圧力の異なる2個の差圧弁20A、20Bとが並列に設けられるとともに、それらに対して、さらに貫通弁口15が並列に設けられている。
【0049】
本例では、固定絞り孔17と2個の差圧弁20A、20Bとが同心円上に相互に略120°の角度間隔をあけて設けられるとともに、前記貫通弁口15は、主弁本体11、12の中央(通路部材8の中心線O上)に設けられており(
図8(A)参照)、この貫通弁口15の実効通路断面積は、通路部材8を通じて流すべき最大要求流量が得られる実効通路断面積より大きくされている。
【0050】
通路部材8内において、対向配置された一対の主弁本体11−12間には、該一対の主弁本体11、12における貫通弁口15、15を選択的に開閉(主弁本体11の貫通弁口15が開かれているときは主弁本体12の貫通弁口15は閉じられ、逆に、主弁本体11の貫通弁口15が閉じられているときは主弁本体12の貫通弁口15は開かれるように)すべく、差圧駆動式の逆止弁体30が中心線Oに沿う方向に摺動自在に配在されている。
【0051】
逆止弁体30は、
図8(B)、(C)を参照すればよくわかるように、(左右)両端部に設けられた円錐状部30aと、この円錐状部30aの間に設けられた、通路部材8の内周面に摺動自在に内接する平面視円弧状の内接部30cを四隅に持つ比較的長い角柱状の胴部30bとで構成され、円錐状部30aの胴部30b側には、胴部30bにおける内接部30c以外の平坦面部30dと面一の弓形状平坦面部30eが形成されている。したがって、逆止弁体30における内接部30c以外の部分(30a、30d、30e)と通路部材8の内周面との間には、流通路が形成されている。
【0052】
なお、本例では、通路部材8に摺動自在に内接する平面視円弧状の内接部30cが、胴部30bに4箇所設けられているが、実施例1における弁体25と同様、2箇所以上、好ましくは3箇所以上であれば良いことは当然である。
【0053】
本例の複合弁2では、
図7(A)に示される如くの左→右流れ時(冷房運転時)においては、逆止弁体30が冷媒により右向きに押されて、主弁本体12の貫通弁口15を開くとともに、主弁本体11の貫通弁口15を閉じる。
【0054】
この左→右流れ時においては、左側の主弁本体12に設けられた各差圧弁20A、20Bは常時閉じられ、第1実施例のものと同様に、右側の主弁本体11に設けられた固定絞り孔17、差圧弁20A、20Bにより、弁前後の差圧に対して冷媒流量(左側の主弁本体12に設けられた貫通弁口15及び固定絞り孔17→逆止弁体30における内接部30c以外の部分(30a、30d、30e)と通路部材8の内周面との間の流通路を通じて流された冷媒の流量)は、
図3に示される如くに3段階に変化するものとなる(
図8(D)も併せて参照)。
【0055】
一方、
図7(B)に示される如くの右→左流れ時(暖房運転時)においては、逆止弁体30が冷媒により左向きに押されて、主弁本体11の貫通弁口15を開くとともに、主弁本体12の貫通弁口15を閉じる。
【0056】
この右→左流れ時においては、右側の主弁本体11に設けられた各差圧弁20A、20Bは常時閉じられ、左側の主弁本体12に設けられた固定絞り孔17、差圧弁20A、20Bにより、弁前後の差圧に対して冷媒流量(右側の主弁本体11に設けられた貫通弁口15及び固定絞り孔17→逆止弁体30における内接部30c以外の部分(30a、30d、30e)と通路部材8の内周面との間の流通路を通じて流された冷媒の流量)は、
図3に示される如くに3段階に変化するものとなる。
【0057】
上記した如くの構成を有する本実施例の複合弁2は、
図9に示される如くの、圧縮機210、室外熱交換器220、室内熱交換器230、及び四方切換弁240を備えた冷暖両用エアコン200において、室外熱交換器220と室内熱交換器230とを結ぶ冷媒通路205に、膨張弁に代えて介装される。
【0058】
この複合弁2が用いられた冷暖両用エアコン200では、冷房運転時には、
図9(A)に示される如くに、四方切換弁240の吐出側高圧ポートDが室外側入出ポートCに、また、室内側入出ポートEが吸入側低圧ポートSにそれぞれ連通せしめられる。これにより、冷媒が圧縮機210に吸入されるとともに、圧縮機210から高温高圧の冷媒が四方切換弁240を介して室外熱交換器220に導かれ、ここで室外空気と熱交換して凝縮し、高圧の二相冷媒となって複合弁2に導入される。この複合弁2により高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、室内熱交換器230に導入され、ここで室内空気と熱交換(冷房)して蒸発し、室内熱交換器230からは低温低圧の冷媒が四方切換弁240を介して圧縮機210の吸入側に戻される。
【0059】
それに対し、暖房運転時には、
図9(B)に示される如くに、四方切換弁240の吐出側高圧ポートDが室内側入出ポートEに、また、室外側入出ポートCが吸入側低圧ポートSにそれぞれ連通せしめられ、圧縮機210から高温高圧の冷媒が室内熱交換器230に導かれ、ここで室内空気と熱交換(暖房)して蒸発し、高圧の二相冷媒となって複合弁2に導入される。この複合弁2により高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、室外熱交換器220に導入され、ここで室外空気と熱交換して凝縮し、室外熱交換器220からは低温低圧の冷媒が四方切換弁240を介して圧縮機210の吸入側に戻される。
【0060】
このように、本第2実施例の複合弁2は、両流れに対応、つまり、流れ方向が切り換えられる冷媒通路に介装することができ、流れ方向がいずれの場合も、上記第1実施例の複合弁1と同様に、冷媒流量を段階的に変えることができる。
【0061】
したがって、本第2実施例の複合弁2は、冷暖両用エアコン200において、室外熱交換器220と室内熱交換器230とを結ぶ冷媒通路205に、従前の膨張弁に代えて介装することができる。この場合、冷房運転時には外気温に応じて冷媒流量を段階的(3段階)に変えることができ、また、暖房運転時にも、弁前後の差圧に応じて冷媒流量を段階的に変えることができるので、省エネ等を図ることができる。
【0062】
なお、本第1、2実施例の複合弁1、2を、エアコン以外の冷凍サイクル装置(例えば、冷蔵や冷凍または冷蔵暖蔵のショーケース)に用いた場合にも、省エネ等の効果が得られることは勿論である。