特許第6762072号(P6762072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762072
(24)【登録日】2020年9月10日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】配管構造および工法および管工事方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/105 20060101AFI20200917BHJP
   F16L 41/06 20060101ALI20200917BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   F16L55/105
   F16L41/06
   F16L55/00
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-502934(P2020-502934)
(86)(22)【出願日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】JP2019005324
(87)【国際公開番号】WO2019167646
(87)【国際公開日】20190906
【審査請求日】2020年6月16日
(31)【優先権主張番号】特願2018-37422(P2018-37422)
(32)【優先日】2018年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-103553(P2018-103553)
(32)【優先日】2018年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-195620(P2018-195620)
(32)【優先日】2018年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399130348
【氏名又は名称】株式会社水研
(73)【特許権者】
【識別番号】000231877
【氏名又は名称】日本鋳鉄管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏之
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 西独国特許出願公開第2159518(DE,A)
【文献】 特開2000−266273(JP,A)
【文献】 特開2001−146983(JP,A)
【文献】 特開2016−75312(JP,A)
【文献】 特開2009−168199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/105
F16L 41/06
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管1に開口を形成する工法であって、
ケース20で前記管1の一部を囲繞する工程と、前記囲繞する工程において、前記ケース20には切削工具3としてのミリング状の工具を持つカッター32が取り付けられ、
前記ケース20内に配置した前記切削工具3で前記管1の外表面13を切削して、薄皮1Sで形成された有底の溝Gを前記管1に形成する薄皮形成工程と、
前記切削により生成された切り粉Tを除去する除去工程と、
前記薄皮形成工程と前記除去工程の実行後に、前記薄皮1Sを破って開口10を形成する工程とを備える、工法。
【請求項2】
請求項1の工法において、
前記ミリング状の切削工具3を工具の中心軸30のまわりに回転させながら、前記切削工具3を前記ケース20と共に前記管1の周方向Rに旋回させることで、前記周方向Rに長い前記有底の溝Gを形成することにより前記薄皮形成工程が実行される、工法。
【請求項3】
請求項2の工法において、
前記開口10から仕切弁体4を前記管1内に挿入する挿入工程を更に備える、工法。
【請求項4】
管1に開口を形成する工法であって、
管1の周方向Rに回転可能な回転体2を前記管1のまわりに装着する工程と、前記装着する工程において、前記回転体にはミリング状の切削工具3を持つカッター32が取り付けられ、
前記ミリング状の切削工具3を前記工具の中心軸30のまわりに回転させながら、前記切削工具3を前記回転体2と共に前記管1の周方向Rに旋回させることで、前記管1の外表面13を切削して、薄皮1Sで形成され前記周方向Rに長い有底の溝Gを前記管1に形成する薄皮形成工程と、
前記切削により生成された切り粉Tを除去する除去工程と、
前記薄皮形成工程と前記除去工程の実行後に、前記薄皮1Sを突き破って開口10を形成する工程とを備える、工法。
【請求項5】
請求項1もしくは4の工法において、
前記薄皮形成工程および前記除去工程の実行後、前記開口10を形成する工程の前に、
前記管1の前記溝Gの表面に塗膜6を形成する工程を更に備える、工法。
【請求項6】
請求項4の工法において、前記回転体は前記管1の周方向Rに分割されたケース20を含み、
前記装着する工程において、前記ケース20で前記管1の一部を囲繞し、
前記開口10を形成する工程に先立って、前記工具3に代えて前記薄皮1Sを突き破る平板状の仕切弁体4を前記ケース20に組み付ける組付工程と、
前記開口を形成する工程において前記開口10から仕切弁体4を前記管1内に挿入する挿入工程とを更に備える、工法。
【請求項7】
請求項6の工法において、前記仕切弁体4は、
前記管1の内部に入り込む円形状の弁本体40と前記弁本体40の先端側に設けられ前記薄皮1Sを破って前記開口10を形成する刃41と、
前記先端側の反対の基端側に設けられ前記開口10の周囲の管1の部位に接して前記開口10を閉塞するシール部42とを備え、
前記仕切弁体4の刃41が前記薄皮1Sを突き破って前記開口10を形成する工程が実行され、
前記仕切弁体の弁本体40が前記管1内に侵入し、前記シール部42が前記開口10の周囲の管1の部位に接すると共に、前記弁本体40の先端側が前記管1の内周面14に接して前記挿入工程が実行される、工法。
【請求項8】
請求項7の工法において、前記溝Gは前記管1の前記周方向Rに延び、
前記薄皮1Sは管軸方向Sの中央部の厚さが管軸方向Sの両側よりも薄く形成され、
前記厚さの薄い中央部を前記刃41が破ることで前記開口10を形成する工程が実行される、工法。
【請求項9】
請求項1の工法において、
前記ミリング状の切削工具3を工具の中心軸30のまわりに回転させながら、前記切削工具3を前記管1の周方向Rに旋回させることと前記管1の管軸方向Sに移動させることで、前記有底の溝Gをループに形成することにより前記薄皮形成工程が実行される、工法。
【請求項10】
請求項9の工法において、
前記開口10を形成する工程において、前記ループの有底の溝Gに合致するループの刃41で前記薄皮1Sを突き破って、前記管1に分岐口となる前記開口10を形成し、
前記ループの刃を撤去する工程を更に備える、工法。
【請求項11】
配管構造を得るための管工事方法であって、
前記配管構造は管1に仕切弁体4を組み込んだ配管構造であって、
周方向Rに延び薄皮1Sで形成された有底の溝Gを定義する管1と、
前記有底の溝Gを含む管1の一部を囲繞するケース20と、
前記ケース20内に配置された仕切弁体4と、
前記溝Gに向かって前記仕切弁体4を接近させ更に前記有底の溝Gの薄皮1Sを突き破って開口10を形成するように前記仕切弁体4を移動させる弁棒43とを備え、
前記仕切弁体4は、
前記管1の内部に入り込む円形状の弁本体40と、
前記弁本体40の先端側に設けられ前記薄皮1Sを破って前記開口10を形成するための刃41と、
前記先端側の反対の基端側に設けられ前記開口10の周囲の前記管1の部位に接して前記開口10を閉塞するシール部42とを備え、
前記管工事方法は前記管1の周方向Rに回転可能な回転体2を前記管1のまわりに装着する工程と、前記装着する工程において、前記回転体にはミリング状の切削工具3を持つカッター32が取り付けられ、
前記ミリング状の切削工具3を前記工具の中心軸30のまわりに回転させながら、前記切削工具3を前記回転体と共に前記管1の周方向Rに旋回させることで、前記管1の外表面13を切削して、薄皮1Sで形成され前記周方向Rに長い有底の溝Gを前記管1に形成する薄皮形成工程と、
前記切削により生成された切り粉Tを除去する除去工程と、
前記回転体および前記カッター32を前記管1から取り外す工程と、
前記仕切弁体4を内蔵した前記ケース20が前記有底の溝Gを含む前記管1の一部を囲繞するように前記ケース20を前記管1に装着する工程と、を備える管工事方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記弁本体40の刃41が金属製で、
閉弁状態の前記弁本体40は、前記金属製の刃41が前記管1の内周面14に接し、前記シール部42が前記開口10の周囲の前記管1の部位に接する、配管構造を得るための管工事方法。
【請求項13】
請求項4の工法において、前記回転体2および前記カッター32を取り外す工程と、
前記開口10を形成する工程に先立って、前記薄皮1Sを突き破る平板状の仕切弁体4を収容したケース20で前記管1の有底の溝Gを囲繞するように前記ケース20を前記管1に組付ける組付工程と、
前記開口を形成する工程において前記開口10から仕切弁体4を前記管1内に挿入する挿入工程とを更に備える、工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配管構造および工法および管工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、既設管内の流体の流れを止めずに切削工具で既設管を切削して開口を形成し、前記開口から既設管のラインに仕切弁体を挿入する工法は周知である(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JP2000−179779 A(要約書)
【特許文献2】JP2004−69059 A(要約書)
【特許文献3】WO2011/099398 A(フロントページ)
【0004】
エンドミルやホールソーなどの切削工具で既設管の管壁を切削する際には切り粉が生じる。そのため、ケースに排水口を設け、既設管内の流体と共に切り粉の排出を行っている。
【発明の概要】
【0005】
しかし、従来の工法では切削工具で開口を形成する際に生じた細かい切り粉が既設管内に侵入するのは避けられない。かかる切り粉は水道管の内部において夾雑物となる上、錆の発生する原因となる。
【0006】
したがって、本発明の目的は切削時に生じた切り粉が管内に侵入することなく、管に開口を形成し得る配管構造および工法および管工事方法(工法)を提供することである。
【0007】
本発明方法は第1の局面において、管1に開口を形成する工法であって、
ケース20で前記管1の一部を囲繞する工程と、前記囲繞する工程において、前記ケース20には切削工具3としてのミリング状の工具を持つカッター32が取り付けられ、
前記ケース20内に配置した前記切削工具3で前記管1の外表面13を切削して、薄皮1Sで形成された有底の溝Gを前記管1に形成する薄皮形成工程と、
前記切削により生成された切り粉Tを除去する除去工程と、
前記薄皮形成工程と前記除去工程の実行後に、前記薄皮1Sを破って開口10を形成する工程とを備える。
【0008】
本発明方法は第2の局面において、管1に開口を形成する工法であって、
管1の周方向Rに回転可能な回転体2を前記管1のまわりに装着する工程と、前記装着する工程において、前記回転体2にはミリング状の切削工具3を持つカッター32が取り付けられ、
前記ミリング状の切削工具3を前記工具の中心軸30のまわりに回転させながら、前記切削工具3を前記回転体と共に前記管1の周方向Rに旋回させることで、前記管1の外表面13を切削して、薄皮1Sで形成され前記周方向Rに長い有底の溝Gを前記管1に形成する薄皮形成工程と、
前記切削により生成された切り粉Tを除去する除去工程と、
前記薄皮形成工程と前記除去工程の実行後に、前記薄皮1Sを突き破って開口10を形成する工程とを備える。
【0009】
本発明方法によれば、切削工具3により管1に開口を形成するのではなく、有底の溝Gを形成する。そのため、切削工具3で管1を切削した際に生じた切り粉Tが管1内に侵入するおそれはない。
【0010】
一方、前記溝Gの底は薄皮1Sで形成されている。そのため、前記薄皮1Sを突き破ることで、切り粉Tが発生することなく、開口10を形成することができる。
【0011】
一方、本発明の配管構造は管1に仕切弁体4を組み込んだ配管構造であって、
周方向Rに延び薄皮1Sで形成された有底の溝Gを定義する管1と、
前記有底の溝Gを含む管1の一部を囲繞するケース20と、
前記ケース20内に配置された仕切弁体4と、
前記溝Gに向かって前記仕切弁体4を接近させ更に前記有底の溝Gの薄皮1Sを突き破って開口10を形成するように前記仕切弁体4を移動させる弁棒43とを備え、
前記仕切弁体4は、
前記管1の内部に入り込む円形状の弁本体40と、
前記弁本体40の先端側に設けられ前記薄皮1Sを破って前記開口10を形成するための刃41と、
前記先端側の反対の基端側に設けられ前記開口10の周囲の前記管1の部位に接して前記開口10を閉塞するシール部42とを備える。
【0012】
本発明構造によれば、薄皮1Sを突き破った刃41が管1の内周面に接し、シール部42が溝Gの周囲の管1の部位に接して、管1内の上流側と下流側とをシールする。
【0013】
管1がプラストマー製やエラストマー製である場合、前記シール部は金属製であってもよい。一方、既設管1が鋼管等である場合、前記シール部はエラストマーで形成されていてもよい。前記エラストマーとしては、加硫ゴムの他に熱可塑性樹脂やラテックスなどを採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1Aおよび図1Bは、それぞれ、実施例1にかかる不断流工法の囲繞工程を示す横断面図および縦断面図である。
図2図2Aおよび図2Bは、それぞれ、実施例1にかかる不断流工法の薄皮形成工程を示す横断面図および縦断面図である。
図3図3Aおよび図3Bは、それぞれ、実施例1にかかる不断流工法の薄皮形成工程を示す横断面図および縦断面図である。
図4図4Aおよび図4Bは、それぞれ、切り粉を回収する他の方法を示す横断面図および縦断面図である。
図5図5Aおよび図5Bは、それぞれ、実施例1にかかる不断流工法の組付工程を示す横断面図および縦断面図である。
図6図6Aおよび図6Bは、それぞれ、実施例1にかかる不断流工法の開口を形成する工程を示す横断面図および縦断面図である。
図7図7Aおよび図7Bは、それぞれ、実施例1にかかる不断流工法の開口を形成する工程を示す横断面図および縦断面図である。
図8図8Aおよび図8Bは、それぞれ、実施例1にかかる不断流工法の挿入工程を示す横断面図および縦断面図である。
図9図9は同実施例1にかかる切削工具および仕切弁体を既設管と共に拡大して示す縦断面図である。
図10図10は同実施例1にかかる不断流工法の工程を示す概略斜視図である。
図11図11は同実施例1にかかる不断流工法の工程を示す概略斜視図である。
【0015】
なお、図10および図11において、構造を明確にするために、薄皮部分はグレーで示している。
【0016】
図12図12は実施例1にかかる仕切弁の構造を示す概略斜視図、正面図、側面図、横断面図および縦断面図である。
図13図13(a)は実施例1の変形例にかかる刃および仕切弁を示す斜視図、図13(b)〜(e)は同変形例にかかる仕切弁の構造を示す図である。
図14図14Aおよび図14Bは、それぞれ、実施例2にかかる切削工具およびカッターを示す縦断面図および横断面図である。
図15図15Aおよび図15Bは、それぞれ、実施例2の薄皮形成工程を示す縦断面図および横断面図である。
図16図16Aおよび図16Bは、それぞれ、同実施例2の組み付け工程を示す縦断面図および横断面図である。
図17図17Aおよび図17Bは、それぞれ、同実施例2の挿入工程を示す縦断面図および横断面図である。
図18図18A図18Bおよび図18Cは、それぞれ、実施例3にかかるケースの平面図、正面図および側面図である。
図19図19は実施例2および3にかかる仕切弁の構造を示す概略斜視図、正面図、側面図、横断面図および縦断面図である。
図20図20は実施例4にかかる不断流工法の工程を示す概略斜視図である。
図21図21は同実施例4にかかる不断流工法の工程を示す概略斜視図である。なお、図21および図22において、構造を明確にするために、鉄管の薄皮部分はグレーで示し、モルタルライニングの部分はドット模様で示している。
図22図22は同実施例4にかかる工程を既設管と共に拡大して示す縦断面図である。
図23図23(a)は実施例5にかかる刃を示す斜視図、図23(b)〜(d)は実施例7にかかる工法を示す横断面図である。
図24図24は実施例6にかかる不断流工法の工程を示す既設管の斜視図である。
図25図25Aおよび図25Bは、それぞれ、同既設管の横断面図および側面図である。
図26図26(a)は同実施例6にかかる刃を示す斜視図、図26(b)〜(d)は実施例6にかかる工法を示す横断面図である。
図27図27は実施例7にかかる不断流工法の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい工法においては、前記囲繞する工程において、前記ケース20には前記切削工具3としてのミリング状の工具を持つカッター32が取り付けられている。
この場合、ミリング状の切削工具3により有底の溝を精度良く形成することができる。
【0018】
好ましい工法においては、前記ミリング状の切削工具3を工具の中心軸30のまわりに回転させながら、前記切削工具3を前記ケース20と共に前記管1の周方向Rに旋回させることで、前記周方向Rに長い前記有底の溝Gを形成する。
【0019】
ケース20と共に切削工具3を旋回させることで、ミリング状の切削工具3は有底の溝Gを精度良く形成することができる。そのため、薄皮1sを適宜の厚さに設定でき、管1内に流体を密封できると共に、刃により薄皮1sを容易に破ることができる。
【0020】
好ましい工法においては、前記開口10から仕切弁体4を前記管1内に挿入する挿入工程を更に備える。この場合、仕切弁体4を管1内に挿入することができる。
【0021】
好ましい工法においては、前記薄皮形成工程および前記除去工程の実行後、前記開口10を形成する工程の前に、前記管1の前記溝Gの表面に塗膜6を形成する工程を更に備える。
【0022】
開口を形成する前に管1の表面に塗膜を形成することで、容易に防錆を行うことができる。
【0023】
更に好ましい工法においては、前記仕切弁体4は、
前記管1の内部に入り込む円形状の弁本体40と前記弁本体40の先端側に設けられ前記薄皮1Sを破って前記開口10を形成する刃41と、
前記先端側の反対の基端側に設けられ前記開口10の周囲の管1の部位に接して前記開口10を閉塞するシール部42とを備え、
前記仕切弁体4の刃41が前記薄皮1Sを突き破って前記開口10を形成する工程が実行され、
前記仕切弁体の弁本体40が前記管1内に侵入し、前記シール部42が前記開口10の周囲の管1の部位に接すると共に、前記弁本体40の先端側が前記管1の内周面14に接して前記挿入工程が実行される。
【0024】
この場合、仕切弁体4に設けた刃41で薄皮1sを突き破り、仕切弁体4の弁本体40が管1の内周面14に接して、仕切弁体4が管1に挿入される。したがって、作業用のバルブを設けなくても弁挿入が可能となる。
【0025】
更に好ましい工法においては、前記溝Gは前記管1の周方向Rに延び、
前記薄皮1Sは管軸方向Sの中央部の厚さが管軸方向Sの両側よりも薄く形成され、
前記厚さの薄い中央部を前記刃41が破ることで前記開口10を形成する工程が実行される。
【0026】
中央部が両側よりも薄い薄皮1Sは、先端が山型のエンドミルや段付のエンドミルにより、容易に形成することができる。
また、両側よりも薄い中央部に仕切弁体4の刃41を押し当てることにより中央部が容易に破断し、再現性が高くなり、止水の信頼性が向上する。
【0027】
好ましい配管構造においては、前記弁本体40の刃41が金属製で、
閉弁状態の前記弁本体40は、前記金属製の刃41が前記管1の内周面14に接し、シール部42が前記溝Gの周囲の管1の部位に接する。
【0028】
管1が例えば鋼管である場合、金属製の刃41は前記薄皮1sを突き破ると共に、管1内に侵入した後は、管1の内周面14に接して、管1の上流側と下流側とをシールするであろう。
一方、シール部42は管1の溝Gの周囲に接し付近をシールするであろう。
【0029】
好ましい管工事方法においては、管1の周方向Rに回転可能な回転体を前記管1のまわりに装着する工程と、前記装着する工程において、前記回転体にはミリング状の切削工具3を持つカッター32が取り付けられ、
前記ミリング状の切削工具3を前記工具の中心軸30のまわりに回転させながら、前記切削工具3を前記回転体と共に前記管1の周方向Rに旋回させることで、前記管1の外表面13を切削して、薄皮1Sで形成され前記周方向Rに長い有底の溝Gを前記管1に形成する薄皮形成工程と、
前記切削により生成された切り粉Tを除去する除去工程と、
前記回転体および前記カッター32を前記管1から取り外す工程と、
前記仕切弁体4を内蔵した前記ケース20が前記有底の溝Gを含む前記管1の一部を囲繞するように前記ケース20を前記管1に装着する。
【0030】
この場合、ケース20とは別の回転体を用いることで、管1のまわりをスムースに回転する構造を採用することができる。
回転体としては、管の表面に転がり接触する複数のローラを有していてもよい。
【0031】
前記溝Gの形成後は回転体とカッターを取り外し、回転体とは別のケースを管1に装着する。装着されるケースは管の周方向に分割されていてもよいし、溝Gを覆い囲うようなネックフランジ形式でもよい。また、ケースは管1に溶着されてもよい。
【0032】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【実施例】
【0033】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0034】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
まず、本装置の全体構成について説明する。
【0035】
不断流装置2:
図1A図5Bに示す本装置2は、既設管1の管内に流体(たとえば、水等)が流れている状態で既設管1を囲繞し、図9図11に示すように、不断流下で弁体の挿入等を行うためのものである。
【0036】
分割ケース21,22:
図1Aおよび図1Bに示すように、本装置2は密閉ケース(回転体の一例)20を備えている。密閉ケース20は、既設管1の一部を囲繞する2個の分割ケース21,22を備える。
【0037】
前記第1および第2分割ケース21,22は、枝管部27に略直交する仮想平面に沿って分割されている。一対の前記分割ケース21,22は、既設管1に対して既設管1の管径方向に外嵌装着され、結合部25が組立ボルトナット26により互いに締結されて組み立てられる。なお、結合部25において各分割ケース21,22は互いにメタルタッチで接触しているのが好ましい。
【0038】
図1Aに示すように、前記各分割ケース21,22は、既設管1の外表面13に概ね沿って湾曲した内周面24をそれぞれ備えている。図1Aに示す前記複数の分割ケース21,22のうち、第1分割ケース21には、既設管1の径方向に突出して延びる分岐状の分岐孔23を有する前記枝管部27が一体に形成されている。
【0039】
枝管部27:
前記枝管部27には、たとえば板状フランジのようなフランジ28が一体に形成されており、該フランジ28には図1Aに示すカッター32や、図5Bに示す弁蓋44等が取り付けられる。
【0040】
ゴムパッキン60:
図1Aおよび図1Bにおいて、ゴムパッキン60にはハッチングを施してある。
【0041】
図1Aおよび図1Bに示すように、分割ケース21(22)の内面には、溝からなる前記パッキン装着部61が形成されている。前記パッキン装着部61には、図1Bに示すゴムパッキン60が装着され、図1Aおよび図1Bに示すように、前記ゴムパッキン60により既設管1と密閉ケース20との間がシールされる。
【0042】
前記分割ケース21のフランジ28には切削用ベース31が締結されている。前記切削用ベース31にはカッター32が取り付けられている。前記カッター32の先端にはエンドミル状の切削工具3が装着されている。
【0043】
前記カッター32は切削工具3を中心軸(線)30のまわりに回転駆動させる。また、切削工具3は送り装置33により既設管1の径方向に進退される。
【0044】
一方、図2Aおよび図3Aのように、切削工具3およびカッター32はケース20と共に既設管1の周方向Rに回転可能である。したがって、図3Aのように、切削工具3は既設管1の周方向Rに長い溝Gを切削することができる。
【0045】
本例においては、図10のグレーで示すように、溝Gが薄皮1sで形成された底部を持つように管が切削される。図9(a)に拡大して示すように、切削工具3の先端は円錐状に尖っていてもよい。先端の角度は170°〜150°程度が好ましいかもしれない。
【0046】
図9(a)において、前記溝Gの薄皮1Sは管軸方向Sの中央部の厚さが管軸方向Sの両側よりも薄く形成される。例えば鋼管の場合、薄皮1Sの中央部の厚さは0.2−0.4mm程度で、薄皮1Sの両側の厚さは0.4−0.6mm程度であってもよい。なお、本例の各図においては薄皮1Sの厚さの変化が誇張して描かれている。
【0047】
図3Bに示すように、前記ケース20内の空間は、吸引管50を介して負圧源5に連通していてもよい。負圧源5は吸引管50を介してケース20内の空気と共にエンドミルの切削により生じた切り粉Tをケース20内から吸い出す。
【0048】
図5A図8Bは配管構造を示す。
【0049】
図10に示すように、本配管構造は、既設管1に仕切弁体4を組み込んだ配管構造である。前記既設管1は溝Gを有する。溝Gは周方向Rに延び薄皮1Sで形成された底を有する。この溝Gは前述のエンドミル状の切削工具3で形成することができる。なお、前記溝Gを含む既設管1の一部は図5Aのケース20に囲繞されている。
【0050】
図5Aの本配管構造は、前記既設管1、前記ケース20、仕切弁体4および弁棒43を備える。本配管構造のケース20は前記第1および第2分割ケース21,22に加え、弁蓋44を備える。
【0051】
図5Aに示す開弁状態において、前記弁蓋44は仕切弁体4の一部を収容する。すなわち、弁蓋44はケース20の一部を構成し、前記弁蓋44、第1分割ケース21および第2分割ケース22は仕切弁体4を収容する。なお、前記弁蓋44はフランジ28を介して第1分割ケース21に結合されている。
【0052】
前記弁棒43は回転操作されることにより、前記溝Gに向かって前記仕切弁体4を接近させ更に前記溝Gの薄皮1Sを突き破って図7Bの開口10を形成するように前記仕切弁体4を管径方向Dに移動させる。
【0053】
前記仕切弁体4は弁本体40、刃41およびシール部42を備える。
【0054】
図10の前記弁本体40は前記既設管1の内部に入り込む円形状の部分である。前記刃41は金属製で前記弁本体40の先端側に設けられ前記薄皮1Sを破って前記開口10を形成するためのものである。
図8Bの前記シール部42はゴム製で、前記先端側の反対の基端側に設けられ前記溝Gの周囲の既設管1の部位に接して前記開口10を閉塞する。
【0055】
閉弁状態の前記仕切弁体4は、前記金属製の刃41が前記既設管1の内周面14に接し、前記ゴム製のシール部42が前記溝Gの周囲の既設管1の部位に接する。
【0056】
弁本体40の上端部分には、つまり、溝Gに接するシール部42には、シール用のゴムが配置されていてもよい。これらのシール用のゴムは弁本体40を包むように焼付けで、金属板に一体とされていてもよい、。
【0057】
不断流工法:
つぎに、既設管1内に流体が流れている状態で、前記既設管1に開口10を形成し、仕切弁体4を既設管1内に挿入する不断流工法について説明する。
【0058】
組立工程;
まず、図1Aおよび図1Bに示すように、既設管1の一部を前記密閉ケース20によって気密状態で囲繞すると共に、前記フランジ28および切削用ベース31を介して前記カッター32を第1分割ケース21に取り付ける。
なお、予め、前記両分割ケース21,22の結合部25を前記ボルトナット26で締結することで、既設管1の一部を密閉ケース20によって気密状態で囲繞する。
【0059】
薄皮形成工程;
その後、図2Aのように、ケース20と共にカッター32を所定角度に設定した後に、切削工具3を既設管1の中心に向って移動させて切削工具3で既設管1の管壁12の一部を削る。この状態で、つまり切削工具3で管1を削りながら、図3Aの本装置2全体を周方向Rに回動させることで、図10(a),(b)に示すように既設管1の一部を切削した有底の溝Gが略半周にわたって形成される。
【0060】
すなわち、図2A図3Bの薄皮形成工程においては、前記ケース20内に配置した切削工具3で前記既設管1の外表面13を切削して、既設管1の内表面で形成された薄皮1sの底を持つ溝Gを前記既設管1に形成する。
【0061】
本例の場合、まず、図2Aに示すように、切削工具3を中心軸30のまわりに回転させながら、切削工具3が既設管1を貫通しないように切削工具3を既設管1の中心に向かって送る。ついで、図3Aのミリング状の前記切削工具3を工具の中心軸30のまわりに回転させながら、前記切削工具3を前記ケース20と共に前記既設管1の周方向Rに旋回させることで、前記周方向Rに長い、例えば周方向Rに約半周にわたる有底の前記溝Gを形成することにより前記薄皮形成工程が実行される。
なお、薄皮形成工程において、溝Gが有底となるように、切削工具3により切削する深さは既設管1の厚さよりも小さくする必要がある。
【0062】
吸引工程:(除去工程)
吸引工程においては、図2Bおよび図3Bに示すように、前記切削により生成された切り粉Tを除去するために、負圧源5が吸引管50を介して前記ケース20内の気体(空気)と共に前記切り粉Tを吸引する。なお、切り粉Tの吸引中に切り粉Tを空気と共に吸引し易くするために、エアの導入孔51がケース20に設けられていてもよい。
【0063】
吸引工程は図2Bおよび図3Bのように前記薄皮形成工程と同時に実行されてもよいし、図4Aおよび図4Bのように、薄皮形成後に実行されてもよい。前記負圧源5としては市販の電気掃除機を用いてもよく、その場合、吸引管50はケース20に固定される必要もない。
【0064】
交換工程;
次に、図3Aおよび図3Bの前記薄皮形成工程後にカッター32および切削工具3を密閉ケース20から取り外す。ここで、前記薄皮1sは既設管1内に流体を閉じ込めている。そのため、既設管1の管路内を流れる水が既設管1から噴出するおそれがない。
【0065】
図3Bの前記カッター32の取り外し後、前記開口を形成する前に、図9(b)のように、既設管1の溝Gの表面に塗膜6を形成する。塗膜6は防錆用のエポキシ樹脂の他、液体ゴムを塗布してシールにも役立つゴムの皮膜であってもよい。塗布方法はハケ塗又はスプレーで塗布してもよい。更にケース20を回転させながら塗布してもよい。その後、図5Aに示すように、第1分割ケース21のフランジ28に弁蓋44を装着する。前記弁蓋44内には、既設管1内に侵入可能な仕切弁体4が内蔵されている。
【0066】
開口形成工程:
前記交換工程、前記薄皮形成工程および前記吸引工程の実行後に、図6A図8Bのように、前記薄皮1Sを破って開口10を形成する開口形成工程が実行される。本例の場合、前記仕切弁体4の刃41が前記薄皮1Sを突き破って前記開口10を形成し、更に、弁本体40が前記開口10を押し拡げる。
【0067】
図10の本例において、前記溝Gは前記既設管1の周方向R(図10(b)参照)に延び、図9(c)のように、前記薄皮1Sは管軸方向Sの中央部19の厚さが管軸方向Sの両側よりも薄く形成されている。前記厚さの薄い中央部19を前記刃41が破ることで前記開口10を形成する工程が実行される。
【0068】
開口形成工程において、図5Aおよび図5Bの弁棒43を回転操作すると、まず、図6Bおよび図6Aの刃41は既設管1の薄皮1Sのトップの部分に当接して、当該部分を切り開く。続いて、図7Bおよび図7Aの刃41は前記薄皮1Sを更に切り開き、図8Aおよび図8Bのように、刃41が既設管1の内周面14に接するまで、刃41が既設管1の両サイドを切り開く。
【0069】
挿入工程:
図9(c)〜(e)に示すように、前記開口形成工程において、刃41が薄皮1Sを切り開くと共に刃41が薄皮1Sを押し開いて破り、弁本体40は刃41と共に既設管1内に侵入する。すなわち、本例の場合、開口形成工程と共に仕切弁体4を既設管1内に挿入する挿入工程が実行される。
【0070】
続いて、図8Aおよび図8Bの前記弁棒43を更にねじ込むと、既に内周面14に当接した刃41は進まず、一方、図9(e)の刃41が既設管1の内周面14にメタルタッチで接してシールする。
【0071】
同時に、図9(e)の弁本体40の基端側のシール部42が開口10内に入り込み開口10の周囲の既設管1の部位に接して、当該開口10の部分のシールがなされる。
【0072】
こうして、前記仕切弁体の弁本体40が前記既設管1内に侵入し、前記シール部42が前記開口10の周囲の既設管1の部位に接すると共に、前記弁本体40の先端側が前記既設管1の内周面14に接して前記挿入工程が実行される。
【0073】
この挿入工程により仕切弁体4が挿入されて、図8Aおよび図8Bに示すように、既設管1の管路が塞がれ止水される。この止水後、既設管1の下流側の作業を行う。その後、必要に応じて弁棒43の操作部を逆回転させると、図5Aのように、仕切弁体4が既設管1内から退避する。
【0074】
図12は実施例2の仕切弁体4を示す。
本例の場合、弁本体40と仕切弁体4とが一体に形成されている。
【0075】
図12において、金属板状の弁本体40には先端側に略半周にわたって鋭利な刃41が形成されている。図12(d),(e)に示すように、前記刃41は閉弁時に既設管1の内周面14に圧接し、既設管1の内周面14と弁本体40との間をシールする。
【0076】
一方、図12(a)〜(c)に示すように、弁本体40の2つの面にはシール部42となるゴムパッキンが固着されている。このシール部42は図12(b)の弁本体40の基端側の略半周にわたって設けられている。図12(e)に示すように、前記シール部42は溝Gおよび溝Gの周囲の既設管1の部位に接して、既設管1と弁本体40との間をシールする。
【0077】
図13は別の仕切弁体4を示す。
本例は図12の実施例2に近似した構造である。図13の本例はシール部42の構造および機能が図13の実施例2と異なる。
【0078】
図13のシール部42は薄肉で、図13(e)のように、既設管1の開口10において、弁本体40と既設管1との間の隙間に入り込むように構成されている。
【0079】
すなわち、図12(b)に示すシール部42は弁本体40の基端側に略半周にわたって、弁本体40の表面にコーティングされている。このシール部42は刃41が薄皮1Sを突き破った際に生じた小さな隙間を埋めるだろう。これにより、開口10において、シール部42は弁本体40と薄皮1Sとの間をシールする。
【0080】
図14A図15Bは、実施例2にかかる切削工具3およびカッター32を示す。この実施例2においては、前記薄皮形成工程等において、ケース20とは異なる回転体2を用いる。また、既設管1となる新設管1を配管する場合にも好的に採用することができる。例えば連続的で長いポリエチレン管に新設の弁を設置する場合に好的に採用できる。
【0081】
本例において、回転体2は切削用ベース2B、2本のローラチェーン2C、4本の連結具2Dおよび4個のローラ2Rを有する。前記ベース2Bには前述のカッター32が取り付けられている。
【0082】
図14Bに示すように、ローラチェーン2Cおよびローラ2Rは既設管1となる新設管1の外周に接しており、回転体2が新設管1または既設管1の周方向Rに回転可能である。連結具2Dはローラチェーン2Cとベース2Bとを連結している。
【0083】
本構造は、新設管1または既設管1の外径の大小にかかわらず、1種類の回転体2で多数のサイズに適用できる。
【0084】
つぎに、回転体2を用いた工法について説明する。
【0085】
まず、図14Bのように、既設管1となる新設管1の周方向Rに回転可能な回転体2を前記管1のまわりに装着する。前記装着する際に、前記回転体2のベース2Bにはミリング状の切削工具3を持つカッター32が取り付けられている。
【0086】
ついで、切削工具3を中心軸30のまわりに回転させながら切削工具3を管1の中心に向かって送る。この後、図15Bの前記ミリング状の切削工具3を前記工具の中心軸30のまわりに回転させながら、前記切削工具3を前記回転体2と共に前記管1の周方向Rに旋回させることで、前記管1の外表面13を切削して、薄皮1Sで形成され前記周方向Rに長い有底の溝Gを前記管1に形成する薄皮形成工程が実行される。
【0087】
前記回転体2およびカッター32を新設管1から取り外し、管1の表面を布等で拭き、前記切削により生成された切り粉Tを拭き取って除去する。図15Bの回転体2を取り外し後、代わりに、図5Aおよび図5Bと同様に、ケース20、弁蓋44および仕切弁体4を新設管1に組み付ける。こうして、仕切弁体4を内蔵したケース20が溝Gを含む新設管1を囲繞するようにケース20が管1に装着される。
【0088】
前記装着工程の実行後に、前記薄皮1Sを突き破って開口10を形成する工程を必要に応じて実行する。すなわち、止水が必要となった時に、図6A図9(c)〜(e)と同様に、仕切弁体4を既設管1に向って押し進め、開口10を形成すると共に仕切弁体4を既設管1内に挿入する。
【0089】
図16A図17Bは実施例2にかかる別のケース20を示す。
これらの図において、ケース20はポリエチレン製でポリエチレン製の管1に溶着される。この例において、ケース20は管1の前記溝Gを含む略半周部分を覆う。なお、周知のように、ケース20には加熱用の電熱線70が埋設されている。
【0090】
図18A図18Cは実施例3にかかるケース20を示す。
この例においても前記実施例2と同様にケース20はポリエチレン製で、電熱線70が埋設されている。
なお、本例ではケース20は管1の全周を覆う。また、弁蓋に接続される金属製フランジ28Aが設けられている。
【0091】
図19は実施例2および3にかかる仕切弁体4を示す。
本例において、工事の対称となる管1は、例えばポリエチレン(ポリオレフィン系樹脂)管や塩ビ(塩化ビニル)管などのプラストマー製またはエラストマー製の管である。
【0092】
本例の場合、仕切弁体4のシール部42にはエラストマーを必要としない。すなわち、図19(e)のように、弁本体40が既設管1内に侵入すると、弁本体40に既設管1の薄皮1Sが接触する。前記薄皮1Sはプラストマーであるから金属製の弁本体40との間がシールされるであろう。
【0093】
本例において、薄皮1Sには既設管1内の水圧が作用する。したがって、薄皮1Sの肉厚は3mm〜5mm程度が好ましいかもしれない。また、切削工具3の先端の角度を120°〜160°程度とするのが好ましいかもしれない。
【0094】
図19(a)〜(d)に示すように、仕切弁体4の刃41は既設管1の内周面14に接する円周部分だけでなく、既設管1の開口10の両端において既設管1に接する両端部45において仕切弁体4が既設管1に食い込むように、刃41を形成するのが好ましいだろう。
【0095】
なお、前記図19の例の場合、切削工具による切削後、既設管1に組み付けられた密閉ケース20はポリエチレン製の既設管1に溶着されてもよい(例えばJP2004−245397A参照)。
【0096】
つぎに、実施例2のケース20を用いた弁挿入の方法について説明する。
【0097】
まず、弁挿入に先立って図14A図15Bに図示したように既設管1となる新設管1に有底の溝Gを形成する。前記溝Gの形成後、以下のように、図16Aおよび図16Bのケース20を管1に溶着する。
【0098】
まず、管1の前記溝Gに弁本体40の刃41が一致するように、ケース20を管1に装着する。なお、ケース20には弁本体40が収容されている。ついで、電熱線70に電力を供給し、ケース20と管1の接触部分を融解させ、その後、冷却させて両者を溶着する。
【0099】
前記溶着後通水し、必要に応じて、図17Aおよび図17Bのように、弁本体40を管1内に侵入させて、管路を止水する。
【0100】
図20図22は実施例4を示す。
これらの図において、既設管1はモルタルライニング100の内層を有する鋳鉄管である。
【0101】
これらの例においては、図22(a)の切削工具3として、段付エンドミルを用いる。このエンドミルは大径部3と小径部3とを有し、外表面にダイヤモンドなどの粒子が固着されている。
【0102】
本切削工具3で既設管1を切断する場合、大径部3で既設管1の表層の鋳鉄の部分のみを切削し、一方、小径部3で既設管1のモルタルライニング100を切削する。切削された既設管1の溝Gには、図20のように、浅く幅の大きい部分と深く幅の小さい部分とが形成される。
【0103】
なお、切削後、図22(b)のように、鋳鉄の切削面に塗装が施されて塗膜6が形成されてもよい。
【0104】
前記段付の溝Gを形成した後、図21および図22(c)〜(e)のように、前記モルタルライニング100の内層が露出した部分に弁本体40の刃41を押し当てる。モルタルライニング100は脆弱であるため、刃41により割れて弁本体40が既設管1内に侵入する。
【0105】
本例において、好ましくは、弁本体40の刃41の部分にはゴムライニングを施す。これにより、モルタルライニング管であってもシールが可能となる。
【0106】
また、図22(e)および図21(a)に示すように、シール部42にはシール用のゴムパッキンを固着しておくのが好ましい。
【0107】
図23は実施例5を示す。本例は既設管1がプラストマーである場合に好的に適用できる。
この例では、トムソン式の刃41が薄皮1Sを切り抜く。この場合、挿入される仕切弁体を厚くすることができる。したがって、サイズの大きい既設管にも適用できるかもしれない。
【0108】
この場合、開口10の形成後に、刃41に代えて仕切弁体および弁蓋をケース20に装着して、仕切弁体を既設管1に組み込む。そのため、周知のようにケース20にオペレーションバルブ200が必要になる。
なお、本例の場合、薄皮1sは一定の均一な厚さであるのが好ましいだろう。
【0109】
図24図27は実施例6,7を示す。
これらの例は既設管1に仕切弁体4を挿入するのではなく、既設管1から分岐配管を取り出す場合に用いられる。
【0110】
図24図26は実施例6を示す。
図24に示す工法において、前記ミリング状の切削工具3を工具の中心軸30(図1A参照)のまわりに回転させながら、前記切削工具3を前記ケース20(図1A参照)と共に前記既設管1の周方向Rに旋回させることと前記既設管1の管軸方向Sに移動させることで、前記有底の溝Gをループに形成することにより前記薄皮形成工程が実行される。
【0111】
より詳しくは、前記ケースと共に前記切削工具3を図24(a)の第1の周方向R1に角θ(図25A)旋回させて第1溝G1を形成する。つづいて、ケースと共に切削工具3を図24(b)の第1の軸方向S1に若干移動させて第2溝G2を形成する。その後、ケースと共に切削工具3を前記周方向R1とは反対の第2の周方向R2に角θ旋回させて第3溝G3が形成される。最後に、ケースと共に切削工具3を前記第1の軸方向S1とは反対の第2の軸方向S2に若干移動させて第4溝G4が形成される。
【0112】
こうして、図24(d)および図25Bに示す方形ループ状の有底の溝Gが形成される。なお、図25Aに示す中心角θは60°〜90°程度であってもよい。また、切削工具3をケースと共に軸方向Sに移動させる方法としては特許第4422242号に開示された方法が採用されてもよい。
【0113】
この工法においては、図26(b)〜(d)に示すように、前記開口10を形成する工程において、前記ループ状の有底の溝Gに合致するループの刃41で前記薄皮1Sを突き破って、前記既設管1に分岐口となる前記開口10を形成する。
すなわち、図26(a)の方形筒状のトムソン式の刃41が図25Aの薄皮1Sを切り抜く。この場合、刃41の内側に返りを設けておいて、切片15を刃41と共に回収できるようにしておくのが好ましい。
【0114】
前記切り抜き後、図26(d)の刃41を図26(b)のバルブ100を開閉してケース20から撤去する。前記撤去後、前記バルブ200が閉じた状態でケース20に分岐配管を接続する。
【0115】
なお、切削工具3を周方向Rに旋回させると同時に管軸方向Sに移動させることで円形ループ状の有底の溝が形成されてもよい。
【0116】
図27の実施例7において、切削工具3はホールソーである。ホールソーの内面には切片15を回収するための返りを設けてもよい。
本例においては、図27(a)および(b)に示すように、ホールソー3を回転させながら、既設管1の外表面13を切り進む。この際、ホールソー3の背面からエアと共に切り粉Tを吸い出す。
【0117】
図27(b)のように、ホールソー3が既設管1を切削して既設管1に薄皮1Sが形成されると、図27(c)のように、ホールソー3の回転を停止する。この停止後、ホールソー3を管径方向、つまり既設管1の中心に向かって押し込むと、前記薄皮1Sが突き破られて、図27(d)のように、ホールソー3に切片15が嵌りこむ。
なお、ホールソー3の撤去後、分岐配管を接続する。
【0118】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、エンドミルの先端は山型ではなく、エンドミルで一定の深さの溝を形成してもよい。また、管内を流れる流体は水や油の他、ガスであってもよい。
したがって、以上のような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の不断流工法および配管構造は、水道やガスなどの既設管および新設管のラインに仕切弁体を挿入し、この挿入した仕切弁体により流体の流れを止めるのに用いることができる。
また、本発明の不断流工法は、いわゆる不断水穿孔後に分岐配管を設ける場合にも採用することができる。
【符号の説明】
【0120】
1:既設管 10:開口 12:管壁 13:外表面 14:内周面 15:切片
19:中央部
2:回転体 2B:ベース 2C:ローラチェーン 2D:連結具 2R:ローラ
20:ケース 21:第1分割ケース 22:第2分割ケース 23:分岐孔 24:内周面 25:結合部 26:組立ボルトナット 27:枝管部 28:フランジ
29:栓
3:切削工具 30:中心軸 31:切削用ベース 32:カッター 33:送り装置
:大径部 3:小径部
4:仕切弁体 40:弁本体 41:刃 42:シール部 43:弁棒 44:弁蓋 45:両端部 5:負圧源 50:吸引管 51:導入孔
6:塗膜 70:電熱線 100:モルタルライニング
D:管径方向 G:溝 G1〜G4:第1〜第4溝
R,R1,R2:周方向 S,S1,S2:軸方向 T:切り粉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27