特許第6762076号(P6762076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762076
(24)【登録日】2020年9月10日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】感圧転写修正テープ
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20200917BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20200917BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20200917BHJP
【FI】
   B43L19/00 H
   C09J7/21
   C09J7/22
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-169905(P2015-169905)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-47528(P2017-47528A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
(74)【代理人】
【識別番号】100115440
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 光子
(72)【発明者】
【氏名】安福 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】青木 一央
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−186444(JP,A)
【文献】 特開2005−089540(JP,A)
【文献】 特開2006−068962(JP,A)
【文献】 特開2000−109507(JP,A)
【文献】 特開昭63−312829(JP,A)
【文献】 特開平10−219202(JP,A)
【文献】 特開平09−003414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
C09J 7/00− 7/50
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙又はプラスチックフィルムよりなる剥離基材の片面に、少なくとも再筆記される修正被覆層と粘着層が順次積層されてなる感圧転写層を有する感圧転写修正テープにおいて、
前記再筆記される修正被覆層が、少なくとも顔料、25重量%以上がシリカ粉末である体質顔料及びエチレン比率が5〜45重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂エマルジョンを含む水性分散液を用いて作製されており、かつ、前記水性分散液全量に対して、前記体質顔料を5〜20重量%含み、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂エマルジョンの乳化剤が、ポリビニルアルコール単独、または、ポリビニルアルコールあるいはヒドロキシエチルセルロースとノニオン系界面活性剤との併用であることを特徴とする感圧転写修正テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙面などに記録された文字などを隠蔽修正するために使用される感圧転写修正テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールペン、万年筆、マーキングペンなどの筆記具による筆記描線やタイプライター、PPCコピーによるコピー描線など、消しゴムなどでは消せないものを消去・修正する際には、一般に修正液や自動巻き取り機構を持ったカセットタイプの感圧転写修正テープが提供されている。しかしながら、修正液でこのような誤字などを修正した際には、修正液の乾燥時間が長いことや修正箇所が平滑になり難いため再筆記・再印字し難いという問題があり、現在では感圧転写修正テープが多く使用されている。
【0003】
また、修正被覆層インクは油性ベースが一般的であり、脱溶剤型の水性ベースの修正被覆層インクの開発も進められているものの、従来の溶剤系と比較して製造面において、離型処理が施された紙やプラスチック基材に対して修正被覆層インクを塗工する際に、修正被覆層インクをはじいてしまい、均一に塗工しにくい問題があった。
【0004】
また、感圧転写修正テープにて文字などを隠蔽した後に経時的に隠蔽した文字が浮き出てしまうブリード現象の発生、あるいは、修正被覆層上にボールペンなどで再筆記した際のボールペンインクの滲みやボールペンインクの乾燥性の悪さなどの問題も挙げられる。特に水性及び水性ゲルボールペンインクで修正被覆層に再筆記した際の乾燥性の悪さが顕著である問題があった。
【0005】
特許文献1には、再筆記時の水性ボールペンインクの乾燥性、筆記直後の滲みや汚れについて言及されており、修正被覆層中のバインダー樹脂としてガラス転移温度が10℃以下の熱可塑性アクリル系合成樹脂エマルジョンを用いることが開示されているが、具体的な乾燥性の向上効果については示されていない。検討結果によれば、修正被覆層中にガラス転移温度が10℃以下の熱可塑性アクリル系合成樹脂エマルジョンを含ませることで、水性インク及び水性ゲルインクで修正被覆層に再筆記した際のはじきを抑制する効果はあるが、水性インク及び水性ゲルインクの乾燥性に対しては効果が十分でないことが判明している。
【0006】
特許文献2には、水性修正被覆層の塗工時のハジキや耐ブリード性について言及されており、修正被覆層中にポリエーテル変性シロキサンを含ませることが開示されているが、具体的な乾燥性の向上効果については示されていない。検討結果によれば、修正被覆層中にポリエーテル変性シロキサンを含ませても、水性インク及び水性ゲルインクで修正被覆層に筆記した際の水性インク及び水性ゲルインクの乾燥性に対しては効果が無いことが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−171078号公報
【特許文献2】特開2006−168164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、脱溶剤型の修正被覆層インクを、離型処理が施された紙やプラスチック基材(以下、剥離基材と称する。)に塗工する際に、修正被覆層インクをはじくことが無く、均一に塗工する事が可能であり、水性及び水性ゲルボールペンインクで修正被覆層に再筆記した際のボールペンインクの乾燥性に優れる感圧転写修正テープを提供することを目的とする。また、本発明は、感圧転写修正テープにて文字などを隠蔽した後の耐ブリード性に優れる感圧転写修正テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、顔料、体質顔料などを含む修正被覆層インクのバインダー樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂エマルジョンを用いることにより、修正被覆層インクをはじくことが無く、均一に塗工する事が可能であり、水性及び水性ゲルボールペンインクで修正被覆層に再筆記した際のボールペンインクの乾燥性に優れる修正被覆層が形成されること、さらには、体質顔料中にシリカ粉末を所定量配合することにより、修正被覆層の耐ブリード性が向上することを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0011】
1)紙又はプラスチックフィルムよりなる剥離基材の片面に、少なくとも再筆記される修正被覆層と粘着層が順次積層されてなる感圧転写層を有する感圧転写修正テープにおいて、
前記再筆記される修正被覆層が、少なくとも顔料、25重量%以上がシリカ粉末である体質顔料及びエチレン比率が5〜45重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂エマルジョンを含む水性分散液を用いて作製されており、かつ、前記水性分散液全量に対して、前記体質顔料を5〜20重量%含み、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂エマルジョンの乳化剤が、ポリビニルアルコール単独、または、ポリビニルアルコールあるいはヒドロキシエチルセルロースとノニオン系界面活性剤との併用であることを特徴とする感圧転写修正テープ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、剥離基材に対して修正被覆層インクを塗工する際に、修正被覆層インクをはじくことが無く修正被覆層インクを均一に塗工する事が可能であり、水性及び水性ゲルボールペンインクで修正被覆層に再筆記した際のボールペンインクの乾燥性、及び感圧転写修正テープにて文字などを隠蔽した後の耐ブリード性に優れる感圧転写修正テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の感圧転写修正テープは、剥離基材の片面に、少なくとも修正被覆層と粘着層が順次積層されてなる感圧転写層を有する感圧転写修正テープにおいて、前記修正被覆層が、少なくとも顔料、体質顔料、及びバインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合(以下、EVAと称する。)系樹脂エマルジョンを含む水性分散液を用いて作製されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明で用いるEVA系樹脂エマルジョンは、乳化剤の存在下で、少なくともエチレンと酢酸ビニルを含有するモノマーを共重合することにより得られる。乳化剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体やポリビニルアルコール(PVA)、変性PVAなどの高分子系乳化剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
この中でも、顔料や体質顔料に対する分散安定性を考慮すると、高分子系乳化剤またはノニオン系もしくはアニオン系界面活性剤を含有するEVA系樹脂エマルジョンが好ましい。EVA系樹脂粒子荷電のイオン性としては、ノニオンまたはアニオンが好ましく、ノニオンがより好ましい。特に、乳化剤として、PVAを単独使用、または、PVAやヒドロキシエチルセルロースとノニオン系界面活性剤とを併用して製造される、EVA系樹脂エマルジョンは、耐凝集性に優れている点で好ましい。
【0015】
バインダー樹脂としてEVA系樹脂エマルジョンを用いた水性分散液は、塗膜形成時に顔料や体質顔料が凝集することなく、剥離基材に塗工する際にはじきがない点で優れている。これにより、隠蔽性が良好な高品質の感圧転写修正テープを得ることができる。
【0016】
EVA系樹脂としては、エチレン比率が5〜45重量%の範囲が好ましく、15〜40重量%の範囲がより好ましい。エチレンが含まれることによって剥離基材の離型層に対する親和性が向上することで、塗工時に均一な塗膜を得ることが出来る。EVA系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、約10℃〜−30℃の範囲にあることが、修正被覆層上にボールペンなどで再筆記した際のボールペンインクの良好な乾燥性が得られる点で好ましい。
【0017】
EVA系樹脂エマルジョンは、市販品を使用することができ、例えば、スミカフレックス400、408、410、510、901HL(以上、住化ケムテックス(株)製)、パンフレックス4000NT、パンフレックス5500NT(以上、(株)クラレ製)、アクアテックスEC−1200、EC−1400、EC−1700、EC−3500(ジャパンケムテックス(株)製)、デンカEVAテックス50、70、77H、90、100(電気化学工業(株)製)などが挙げられる。一般的には、固形分50〜60重量%程度の水性樹脂エマルジョンとして販売されている。EVA系樹脂エマルジョンの中でも、イオン性がカチオン以外のものが好ましい。その他所望に応じ、アクリル系、ロジンエステル系、テルペンフェノール系などの樹脂エマルジョンを本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択して併用することができる。
【0018】
修正被覆層を作製するための水性分散液は、少なくとも顔料、体質顔料及びEVA系樹脂エマルジョンを含む。水性分散液中におけるEVA系樹脂エマルジョンの比率は、当該組成物全量に対して、固形分換算で、30重量%以下が好ましく、より好ましくは15〜5重量%である。30重量%以下であれば、顔料や体質顔料との混和性に優れたものとなる。また、5重量%以上であれば、接着性、柔軟性、強靭性に優れる樹脂となるため、塗膜のひび割れや亀裂を生じにくい良好な塗膜を得ることが出来る。
【0019】
上記の顔料としては、二酸化チタンなどの高隠蔽性白顔料が好ましい。二酸化チタンとしては、高い隠蔽性を示すルチル型/アナターゼ型のいずれも用いることができる。具体的には、チタニックスJR−300、同JR−600A、同JR−800、同JR−801(以上、テイカ(株)製)、タイピュアR−706、同R−900、同R−901、同R−931(以上、デュポン・ジャパン・リミテッド社製)、タイトーンSR−1、同R−310、同R−650、同R−3L、同A−110、同A−150、同R−5N(以上、堺化学工業(株)製)、タイペークR−550、同R−580、同R−615、同R−630、同R−830、同R−930、同A−100、同A−220、同CR−58(以上、石原産業(株)製)、クロノスKR−310、同KR−380、同KR−480、同KA−10、同KA−20、同KA−30(以上、チタン工業(株)製)、バイエルチタンR−FD−1、同R−FD−2、同R−FB−1、同R−FB−3、同R−KB−3、同R−CK−20(以上、独国、バイエル社製)などが挙げられる。これらは単独あるいは複数混合して使用できる。
【0020】
体質顔料としては、シリカ粉末、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミノケイ酸塩、炭酸マグネシウム、タルク、クレーなどを適宜組み合わせて用いることができる。
具体的には、シリカ粉末として、GASILシリカHP560、同HP880、同UV55c、同HP230、同23F、HP270(以上、ウイルバー・エリス(株)製)、MIZUKASIL P−803、同P−50、同P−73、同P−78F、同P−78A、同P−707、同P−70(以上、水澤化学工業(株))、サイリシア350、同380、同430、同450、同550(以上、富士シリシア化学(株)製)、サンスフェアH−122、同H−33、同H−53(以上、AGCエスアイテック(株)製)などが挙げられ、ケイ酸アルミニウムとして、キョーワード700(協和化学工業(株)製)などが挙げられ、アルミノケイ酸塩として、アルミニウムシリケートP−820、同P−820A(以上、独国、デグッサ社製)などが挙げられ、炭酸マグネシウムとして、軽質炭酸マグネシウム(協和化学工業(株)製)、炭酸マグネシウムTT(ナイカイ塩業(株)製)などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して使用できる。
【0021】
顔料及び体質顔料は、水性分散液全量に対して合計で、20重量%以上、好ましくは30〜40重量%含むことが好ましい。顔料及び体質顔料が20重量%で以上あれば、十分な修正被覆層の隠蔽性を得ることができ、40重量%以下であれば、塗膜形成性が良好となる。
【0022】
また、体質顔料は、シリカ粉末を、体質顔料全量の25重量%以上含むことが好ましく、30重量%以上含むことがより好ましく、50重量%以上含むことが特に好ましい。これにより、修正被覆層の耐ブリード性が顕著に向上する。この理由としては、シリカ粉末を含むことによって、多孔質であるシリカ表面中にブリードするインクを取り込むことができるためと推定する。シリカ粉末は、親水性のものが好適であり、粒子径は3〜20μm程度が好ましい。
体質顔料は、水性分散液全量に対して、5〜20重量%含むことが好ましい。体質顔料が5重量%未満の場合は修正被覆層の表面が平滑となりすぎ、基材に順次積層された修正被覆層と粘着層が剥離基材背面に移行する、ブロッキング現象が生じる恐れがあり、20重量%を超える場合は相対的な顔料比率が小さくなるため、修正被覆層の隠蔽性が不十分となる恐れがある。
【0023】
上記の水性分散液は、前記した成分の他に、顔料分散剤を含有していてもよい。顔料分散剤は、二酸化チタンや体質顔料の分散性を向上させるもので、使用する顔料の種類に合わせて公知の水溶性樹脂や各種界面活性剤などを選択し使用する。水溶性樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸又はそのアルキルエステルや、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどのモノマー群より選択して重合した合成高分子や、前記モノマー群より2種以上を選択して共重合した合成高分子を、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩の形態で使用するものなどが挙げられる。
【0024】
その他所望に応じ、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの乾燥促進剤や、ベンゾトリアゾール、エチレンジアミン四酢酸塩などの防錆剤や、尿素、エチレン尿素などの湿潤剤や、ベンゾチアゾリン系、オマジン系などの防腐剤や、シリコ−ン系、アクリル系などの消泡剤や、フッ素系界面活性剤などのレベリング剤など、種々の添加剤やカーボンブラック、酸化鉄、コバルトブルー、群青、クロムグリーン、酸化クロムなどの無機顔料や有機顔料、金属粉顔料、無機蛍光顔料、有機蛍光顔料、着色樹脂粉、着色樹脂球、加工顔料など、種々の着色剤を本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択して使用することができる。
【0025】
水性分散液における樹脂エマルジョン中に含まれる水分量を除いた水の量は、30〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50重量%である。
【0026】
水性分散液を調製する場合は、例えば、顔料、体質顔料、顔料分散剤、水、消泡剤、その他所望に応じて加えられる各種添加剤を、所定の割合で混合して一旦ディスパーザーなどの分散機を用いて分散させ、次いでこれをサンドミルやビーズミルなどの混合分散機を用いてさらに混合分散させた後、EVA系樹脂エマルジョンを添加して調製する。
【0027】
本発明の感圧転写修正テープは剥離基材の片面に、少なくとも水性分散液(修正被覆層インク)と粘着剤を通常の方法により順次塗工・乾燥させて製造することができる。
【0028】
本発明の感圧転写修正テープを構成する剥離基材としては、自動巻取り機構をもつ転写具に適合する曲げ剛性を有するプラスチックフィルムまたは紙が好ましい。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムを挙げることができる。剥離基材の厚さは3〜30μmが好ましい。剥離基材の片面もしくは両面には、所望に応じてシリコーン樹脂や無機あるいは有機顔料を分散させたシリコーン樹脂などの離型層が形成されている。
【0029】
修正被覆層は、前記水性分散液を剥離基材の片面に塗工、乾燥することにより形成される。修正被覆層の厚さは乾燥後において、修正時における隠蔽性を確保するために10〜30μmが好ましい。剥離基材と修正被覆層の厚さの比率は、特に限定されないが、一般的には1:0.4〜1:4.2の範囲に調整することが好ましい。
【0030】
粘着層は、粘着剤を従来公知の方法で塗工することにより形成される。粘着剤としては公知のものを全て使用することができ、例えば、アクリル樹脂系、ロジン系、ゴム系、ビニル系などの粘着剤を挙げることができる。これらの粘着剤は溶剤系でも水性でも何れでも良いが、樹脂エマルジョン系が好ましく、特にアクリル樹脂エマルジョン系粘着剤が好ましい。粘着層の厚さは乾燥後において0.3〜5μm程度が適当である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
なお、下記する実施例2、6、11は、本願発明における参考例である。
【0032】
(実施例1〜14及び比較例1〜2)
下記表1に示す各組成(数値は重量%)に従い、顔料分散剤、消泡剤と水を混合させた後、二酸化チタン、体質顔料を加えて攪拌し、その後ディスパーザーにて10分間分散させ、ミルベースとした。これをビーズミルにて5分間分散させた後、樹脂エマルジョン、表面調整剤を加えて混合攪拌し、感圧転写修正テープの修正被覆層を形成させるための水性分散液(修正被覆層インク)を調製した。
【0033】
得られた水性分散液(修正被覆層インク)を、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離基材上にアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが20〜30μmになるように塗工・乾燥し、得られた修正被覆層に市販のアクリルエマルジョン粘着剤をバーコーターを使用して乾燥後の厚みが0.5〜0.8μmになるように塗工・乾燥し、感圧転写修正テープを得た。
【0034】
得られた感圧転写修正テープを裁断小巻し、5mm幅、10mのロール状に巻きつけ市販の感圧転写修正テープカセット(CT−CC5:トンボ鉛筆社製)に装填した。感圧転写修正テープについて下記の方法で性能を評価した。
【0035】
(1)塗工性の評価
前記「得られた水性分散液(修正被覆層インク)を、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムよりなる剥離基材上にアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが20〜30μmになるように塗工・乾燥」した際の塗膜の状態を目視にて観察し、下記の通り評価した。
○:ムラのない均一な塗膜であった。
△:ムラがあり不均一な塗膜であった。
×:塗膜に抜け(インクがはじかれて塗工されていない箇所)が生じていた。
【0036】
(2)乾燥性の評価
感圧転写修正テープをPPC用紙に転写し、水性ゲルボールペン(G−2:パイロットコーポレーション社製、ボール径0.7、インク色・ブラック)を用いて修正被覆層上に筆記し、3秒後に消しゴムで筆記線表面を擦り、擦った後の筆記線の伸び長さを測定し、その伸び長さから下記の通りに評価した。
○:筆記線の伸び長さが5mm未満。
△:筆記線の伸び長さが5mm以上10mm未満。
×:筆記線の伸び長さが10mm以上。
【0037】
(3)耐ブリード性の評価
筆記具にてPPC用紙に直線を筆記した筆記線の上に、感圧転写修正テープを転写し、常温で2年間保管、またはそれに相当する促進条件にて保管し、下から修正被覆層表面に浮き出た筆記線を目視にて観察し、評価した。前記筆記具は、油性ボールペン(ジェットストリームスタンダード 0.7mm 黒:三菱鉛筆社製)、水性マーキングペン(プレイカラー2:トンボ鉛筆社製)、油性マーキングペン(モノツイン:トンボ鉛筆社製)の3種類(いずれもインク色は黒色)を使用した。
○:いずれの筆記具でも筆記線が浮き出なかった。
△:1〜2種類の筆記具で筆記線が浮き出ていた。
×:3種類の筆記具で筆記線が浮き出ていた。
【0038】
上記試験の結果を表1に示す。表2は配合成分の詳細である。
【0039】
表1の評価結果から、本発明の感圧転写修正テープは、バインダー樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂エマルジョンを用いているため、塗工時に水性分散液が剥離基材にはじくこと無く均一な塗膜を得ることができ、水性及び水性ゲルボールペンインクで修正被覆層に再筆記した際のボールペンインクの乾燥性に優れていることがわかる。また、シリカ粉末を用いることにより、耐ブリード性が向上することがわかる。
一方、バインダー樹脂としてアクリル系樹脂エマルジョンを用いた、比較例1及び比較例2の感圧修正テープは、水性及び水性ゲルボールペンインクで修正被覆層に再筆記した際のボールペンインクの乾燥性が劣っていることがわかる。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】