(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガイドは、水平面を基準としたときに、前記スピンドル本体の傾斜角度が大きくなるにつれて、前記軸受けが圧延機に近接するように案内する部分を有する、請求項1に記載のスピンドル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
厚さの異なる種々の鋼板を圧延する圧延機の操業を継続して行うため、圧延ロール駆動装置は、長期間安定的にロール駆動を行うことが求められる。近年、圧下量を一層大きくするためにミルモータの容量が大きくなっており、これに伴って圧延に必要なトルクも高くなりつつある。このため、圧延ロール駆動装置に備えられるスリッパメタル方式のカップリングにかかる負荷も大きくなりつつあり、カップリングの耐久性を向上する技術を確立することが求められている。
【0006】
スリッパメタル方式のカップリングでは、傾斜角度が大きくなると荷重中心がカップリングの端部側にずれてモーメントアームが長くなり、カップリングに生じる曲げモーメントが大きくなる。また、カップリングからスリッパメタルがはみ出しやすくなってスリッパメタルの面圧が増大し、スリッパメタルの摩耗が促進される傾向にある。
【0007】
そこで、本発明は、スリッパメタルの摩耗を抑制することが可能なスピンドル、及びこのようなスピンドルを備える圧延ロール駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一つの側面において、スリッパメタル方式のカップリングを備える圧延機駆動用のスピンドルであって、カップリングに接続される軸体と、軸体が挿入されるスリーブ部を有し、当該スリーブ部に軸体の少なくとも一部が挿入された状態で軸体とともに回転する回転体と、軸体をその先端部において回転可能に支持するとともに軸体の軸方向の移動を規制し、上昇又は下降してスリーブ部への軸体の挿入長さを変えてスピンドル本体を伸縮する軸受けと、軸受けの上昇又は下降を案内するガイドと、を備えるスピンドルを提供する。
【0009】
上述のスピンドルは、軸体をその先端部において回転可能に支持するとともに軸体の軸方向の移動を規制し、上昇又は下降してスリーブ部への軸体の挿入長さを変えてスピンドル本体を伸縮する軸受を備える。このようなスピンドルは、スピンドル本体の傾斜角度が変わった場合に、軸受けがガイドに案内されて上昇又は下降する。これに伴って、回転体のスリーブ部への軸体の挿入長さが変わって、スピンドル本体が伸縮される。その結果、スピンドル本体の傾斜角度の変化に伴ってカップリングを構成する2つの継手部の距離が変動することを抑制できる。
【0010】
したがって、カップリングにおける荷重中心の移動が低減され、モーメントアームが短くなってカップリングに生じる曲げモーメントを低減することができる。このため、カップリングのサイズアップをすることなく、カップリングの破損を十分に抑制することができる。また、カップリングからのスリッパメタルのはみ出し部分を低減することができる。これによって、スリッパメタルの面圧を小さくしてスリッパメタルの摩耗を抑制することができる。
【0011】
上記ガイドは、水平面を基準としたときに、スピンドル本体の傾斜角度が大きくなるにつれて、軸受けが圧延機に近接するように案内する部分を有することが好ましい。これによって、傾斜角度が大きくなる場合にスピンドル本体の長さを十分に長くして、カップリングを構成する2つの継手部同士が離れることを十分に抑制できる。このように傾斜角度が大きい場合であっても、モーメントアームを十分に短くしてカップリングに生じる曲げモーメントを十分に小さくするとともに、スリッパメタルの摩耗を十分に抑制することができる。
【0012】
上記スリーブ部は一つ又は複数のキー溝を有し、軸体はキー溝に対応するキーを有しており、軸体と回転体は、キー結合又はスプライン結合されていることが好ましい。これによって、スピンドル本体の回転トルクが大きくなっても、滑り等の発生が十分に抑制され、圧延ロールに回転トルクを一層確実に伝達することができる。
【0013】
上述のスピンドルは、軸受けをガイドに対して揺動可能に保持する接続部材を有していてもよい。このような接続部材を有することによって、シンプルな構造を維持しつつ、ガイドに沿った軸受けの移動を円滑にすることができる。
【0014】
上記軸受けは、レール状のガイドの上を転動する転動部材を介して案内されることが好ましい。これによって、軸受けの上昇又は下降の移動が円滑になり、カップリングの上下方向の移動に対するスピンドル本体の追従性を一層向上することができる。
【0015】
本発明は、別の側面において、回転駆動するミルモータと、圧延ロールを有し、鋼板を圧延する圧延機と、ミルモータの動力を圧延ロールに伝達する上述のスピンドルと、スピンドルと圧延ロールとを接続するスリッパメタル方式のカップリングと、を備える、圧延ロール駆動装置を提供する。
【0016】
上述の圧延ロール駆動装置は、上述のスピンドルを備えることから、カップリングにおける荷重中心の移動が低減され、モーメントアームが短くなってカップリングに生じる曲げモーメントを低減することができる。このため、カップリングのサイズアップをすることなく、カップリングの破損を十分に抑制することができる。また、カップリングからのスリッパメタルのはみ出し部分を低減することができる。これによって、スリッパメタルの面圧を小さくしてスリッパメタルの摩耗を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スリッパメタルの摩耗を抑制することが可能なスピンドル、及びこのようなスピンドルを備える圧延ロール駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、場合により図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
図1は、一実施形態に係る圧延ロール駆動装置の概要を示す図である。
図1の圧延ロール駆動装置150は、鋼板65を上下方向に挟むように回転可能に支持される一対の圧延ロール62を備え、鋼板65を圧延する圧延機60と、圧延ロール62を回転駆動するための回転軸72を有するミルモータ70と、ミルモータ70の動力を圧延ロール62に伝達するスピンドル50と、スピンドル50のスピンドル本体51と圧延ロール62、及び、スピンドル本体51とミルモータ70の回転軸72とをそれぞれ連結するカップリング100,100aを備える。
【0021】
図1に示される圧延機60は、鋼板65の流通方向の下流側から上流側に向かってみたときの図である。鋼板65を上下から挟む一対の圧延ロール62は、対向方向に圧下することによって鋼板65を圧延する。圧延機60は、一対の圧延ロール62を上下から挟むように一対のバックアップロール63を備える。このような対をなす圧延ロール62及びバックアップロール63は、鋼板65の流通方向に沿って、複数並んで配置される。
【0022】
鋼板65の厚さは、仕様に応じて変わるため、圧延ロール62及びバックアップロール63は、上下に移動可能に支持される。また、圧延ロール62は摩耗によって経時的にロール径が減少する。一方、ミルモータ70は、地上に固定されている。このため、鋼板65の厚さ及び圧延ロール62の摩耗に応じて、スピンドル50の傾斜角度θが変化する。傾斜角度θは、水平方向とスピンドル本体51の軸方向とがなす角度(絶対値)である。カップリング100,100aが、自在継手であることによって、鋼板65の厚さが変化しても鋼板65の圧延を継続して行うことができる。
【0023】
スピンドル50は、スリッパメタル方式のカップリング100を備える圧延機駆動用のスピンドルである。スピンドル50は、一対のカップリング100,100a間を接続するスピンドル本体51と、スピンドル本体51を回転可能に支持する軸受け16と、軸受け16の上昇及び下降を案内するレール状のガイド20とを備える。ガイド20は、スピンドル50を挟むように対をなして鉛直方向に延在する。スピンドル本体51は、一対のガイド20の間に配置される。
図1では、ガイド20は床面に固定されているが、これに限定されず、例えば建屋の天井に固定されてもよい。
【0024】
スピンドル本体51は、カップリング100に接続される軸体54と、軸体54が挿入されるスリーブ部55を有する回転体52を備える。回転体52は、スリーブ部55に軸体54の少なくとも一部が挿入された状態で軸体54とともに回転する。回転体52と軸体54は、回転軸回りの相対的な移動が規制されている。回転体52の基端は、カップリング100aを介してミルモータ70の回転軸72に接続されている。ミルモータ70の動力は、カップリング100a、スピンドル50のスピンドル本体51及びカップリング100によって圧延ロール62に伝達される。
【0025】
図1では、一つの圧延ロール62が、カップリング100、スピンドル50、カップリング100a及びミルモータ70がこの順に接続されていることを示している。
図1では、説明のため、別の圧延ロール62に接続されるカップリング、スピンドル及びミルモータを図示することを省略している。別の圧延ロール62にも、図示されているものと同一又は同様のカップリング、スピンドル及びミルモータが接続される。
【0026】
圧延ロール駆動装置150は、カップリング100,100aに生じる曲げモーメントを低減することができる。これによって、カップリング100,100aの負荷を低減して、長寿命化を図ることができる。また、カップリング100,100aを小型化することが可能となり、圧延ロール62のロール径を十分に小さくして、上下に配置される圧延ロール62の芯間距離を小さくすることができる。
【0027】
回転体52と軸体54は、回転方向に沿った相対的な移動を規制するため、キー結合又はスプライン結合されていることが好ましい。この場合、例えば、回転体52のスリーブ部55に一つ又は複数のキー溝が形成され、軸体54にキー溝とは相補的な形状を有するキーが形成される。回転体52と軸体54とが、キー結合又はスプライン結合されることによって、スピンドル本体51の回転トルクが大きくなっても、軸回りに沿った滑り等の発生を十分に抑制し、回転トルクが大きくなっても圧延ロール62に回転トルクを十分確実に伝達することができる。
【0028】
図2は、カップリング100の分解斜視図である。カップリング100は、第1継手部10と第2継手部40とジョイント30とを備え、ジョイント30を介して、第1継手部10と第2継手部40が連結される。スピンドルカップリング用であるジョイント30は、支持ピン32と、その両端(
図2では上下端)に取り付けられている一対のスリッパメタル34を有する。
【0029】
一対のスリッパメタル34は、アーチ状の摺動面34aをそれぞれ有している。一方のスリッパメタル34は、他方のスリッパメタル34側とは反対側に突出するようにアーチが形成されている。一方のスリッパメタル34の摺動面34aは、他方のスリッパメタル34の摺動面34aとは反対方向を向いている。スリッパメタル34は、摺動面34aの反対側に平坦面34bを有する。一対のスリッパメタル34の平坦面34bは、互いに対向している。
【0030】
スリッパメタル34は、アーチ状の摺動面34aを中央部において2つに区画する突起35を有する。突起35は、支持ピン32の端部が嵌合する穴を有する。すなわち、スリッパメタル34は、スリッパメタル34の中央部に設けられた突起35の穴に支持ピン32を嵌合することによって、支持ピン32に取り付けられている。
【0031】
第1継手部10は、ジョイント30を収容する収容部11を有し、メスカップリングともいわれる。第1継手部10は、いわゆる鰐口形状を有する、スピンドル側カップリングである。収容部11は、上顎部10Aと下顎部10Bとで形成されている。収容部11は、上顎部10Aと下顎部10Bのそれぞれに、スリッパメタル34を摺動可能に保持する一対の凹部12と、一対の凹部12のそれぞれを中央部において区画し、突起35に係合する溝14を有する。すなわち、上顎部10Aと下顎部10Bには、凹部12と凹部12を中央部において2つに区画する溝14とがそれぞれ形成されている。
【0032】
第2継手部40は、円柱状の支持ピン32を挟むとともに一対のスリッパメタル34の間に挿入された状態で収容部11に収容されるフォーク42を有する。第2継手部40は、オスカップリングともいわれる。フォーク42は、スリッパメタル34のアーチ状の摺動面34aの底面をなす平坦面34bに当接する。第2継手部40におけるフォーク42は、U字溝によって形成されている。
【0033】
このようにスリッパメタル34を有するジョイントを介して継手部同士が接続されているカップリングを、本明細書では「スリッパメタル方式のカップリング」という。第1継手部10と第2継手部40がジョイント30を介して連結された状態において、第2継手部40とジョイント30は、支持ピン32の円周方向に沿って相対的に揺動可能である。第1継手部10とジョイント30は、スリッパメタル34の摺動面34aのアーチに沿って相対的に揺動可能である。したがって、第1継手部10と第2継手部40は、相対的に揺動可能であり、
図1における傾斜角度θが変わっても、圧延ロール62を継続して駆動することができる。
【0034】
スピンドル本体51の傾斜角度θが0°である場合、すなわち、スピンドル本体51の軸方向が水平面に平行である場合、通常、ジョイント30は、第1継手部10の収容部11からはみ出ることなく収容される。このため、スリッパメタル34の平坦面34bの全体が第2継手部40のフォーク42に当接する。また、スリッパメタル34の摺動面34aの全体が凹部12に当接する。このように、スリッパメタル34の平坦面34b及び摺動面34aの全体がフォーク42及び凹部12にそれぞれ当接していれば、平坦面34b及び摺動面34aの面圧を小さく維持することができる。
【0035】
一方、ジョイント30の一部が、第1継手部10の収容部11からはみ出ると、スリッパメタル34の平坦面34b及び摺動面34aの一部の面が、フォーク42及び凹部12に当接しなくなる。このため、平坦面34bのフォーク42に当接する部分、及び摺動面34aの凹部12に当接する部分の面圧が高くなり、スリッパメタル34の摩耗が促進されることとなる。
【0036】
圧延ロール駆動装置150は、スピンドル本体51の傾斜角度θが大きくなっても、スリッパメタル34の、第1継手部10の収容部11からのはみ出し部分を小さくすることができる。これによって、平坦面34b及び摺動面34aの面圧を低く維持することが可能となり、スリッパメタル34の摩耗を抑制することができる。
【0037】
次に、本実施形態によるスリッパメタルの摩耗抑制の作用を、従来技術と対比して説明する。
図12(A)及び
図12(B)は、従来のスピンドル本体251及びカップリング100,100aの側面図である。
図12(A)と
図12(B)を参照して、スピンドル本体251の傾斜角度θが変化した場合のカップリング100における荷重中心の移動を説明する。
図12(A)は、スピンドル本体251の軸方向が水平面に平行である場合を示し、
図12(B)は、スピンドル本体251の軸方向が水平面に対して傾斜角度θで傾斜している場合を示している(θ>0°)。θは、例えば10〜20°である。
【0038】
スピンドル本体251の基端側、すなわちミルモータ側に接続されているカップリング100aの第1継手部10aと第2継手部40aは、スリッパメタル方式ではなくピンで(不図示)接続されているため、傾斜角度θが変化してもカップリング100aにおける荷重中心p1は移動しない。すなわち、
図12(A)の状態から、
図12(B)の状態にまでスピンドル本体251が傾斜しても、荷重中心p1の位置は変わらない。ここで、荷重中心p1は、スピンドル本体251の中心軸線Cと、第1継手部10aと第2継手部40aとを連結するピンの中心軸線Rとの交点である。
【0039】
図12(A)及び
図12(B)では、説明のため、カップリング100aにおけるピン、及びカップリング100におけるジョイント30を示していない。カップリング100は、
図2に示す構造を有しており、第1継手部10と第2継手部40とは、ジョイント30を介して接続されている。カップリング100は、スリッパメタル方式であるため、傾斜角度θが大きくなると、第1継手部10と第2継手部40の間隔が拡がる。したがって、
図12(B)でみたときに、傾斜角度θが大きくなるにつれて、カップリング100における荷重中心p2は高さ方向に上昇する(高さ:H)とともに右側に移動する。ここで、荷重中心p2は、スピンドル本体251の中心軸線Cと、ジョイント30の支持ピン32(
図2参照)の中心軸線Sとの交点である。
【0040】
図12(A)及び
図12(B)を対比すると、スピンドル本体251が0°からθ°に傾斜すると、スリッパメタル方式のカップリング100の荷重中心p2は、水平方向に沿ってΔL
0の距離を移動している。この距離ΔL
0は、傾斜角度θが大きくなるにつれて長くなる傾向にある。距離ΔL
0が長くなると、スリッパメタル34の収容部11からのはみ出し部分が大きくなる。これによって、スリッパメタル34の平坦面34b及び摺動面34aの面圧が高くなり、スリッパメタル34の摩耗が促進される。なお、
図12(B)では、スピンドル本体251の先端が上昇した場合を説明したが、スピンドル本体251の先端が下降した場合も、スリッパメタル34の収容部11からのはみ出し部分が大きくなり、スリッパメタル34の摩耗が促進される。
【0041】
次に、本実施形態のスピンドル50について説明する。
図3(A)及び
図3(B)は、本実施形態のスピンドル50及びカップリング100,100aの側面図である。
図3(A)と
図3(B)を参照して、スピンドル50のスピンドル本体51の傾斜角度θが変化した場合のカップリング100における荷重中心の移動を説明する。
図3(A)は、スピンドル本体51の軸方向が水平面に平行である場合を示し、
図3(B)は、スピンドル本体51の軸方向が、傾斜角度θで傾斜している場合を示している(θ>0°)。θは、例えば10〜20°である。
【0042】
回転体52の基端側、すなわちミルモータ側に接続されているカップリング100aの第1継手部10aと第2継手部40aは、スリッパメタル方式ではなくピンで接続されているため、傾斜角度θが変化してもカップリング100aにおける荷重中心p1は移動しない。すなわち、
図3(A)の状態から、
図3(B)の状態にまでスピンドル本体51が傾斜しても、荷重中心p1の位置は変わらない。ここで、荷重中心p1は、スピンドル本体51の中心軸線Cと、第1継手部10aと第2継手部40aとを連結するピンの中心軸線Rとの交点である。
【0043】
図3(A)及び
図3(B)では、説明のため、カップリング100aにおけるピン、及びカップリング100におけるジョイント30を示していない。カップリング100は、
図2に示す構造を有しており、第1継手部10と第2継手部40とは、一対のスリッパメタル34を有するジョイント30を介して接続されている。また、
図3(A)及び
図3(B)では、説明のためガイド20の図示も省略している。
【0044】
スピンドル本体51の傾斜角度θが大きくなるにつれて、カップリング100における荷重中心p2は高さ方向に上昇する。
図3(B)では、
図12(B)と同様に、荷重中心p2は高さHの位置にある。スピンドル本体51では、傾斜角度θが大きくなるにつれて、軸体54の先端部を支持する軸受け16によって、回転体52のスリーブ部55から軸体54がカップリング100側に引き出される。これによって、スピンドル本体51が延伸する。すなわち、回転体52のスリーブ部55への軸体54の挿入長さは短くなり、スピンドル本体51の長さが長くなる。これによって、スピンドル本体51が傾斜したときに、第1継手部10と第2継手部40との間隔が拡がることを抑制できる。
【0045】
図3(A)及び
図3(B)における荷重中心p2は、スピンドル本体51の中心軸線Cと、ジョイント30の支持ピン32(
図2参照)の中心軸線Sとの交点である。
図3(A)及び
図3(B)では、スピンドル本体51が0°からθ°に傾斜すると、スリッパメタル方式のカップリング100の荷重中心p2は、水平方向に沿ってΔL
1の距離を移動している。この距離ΔL
1は、
図12(A)及び
図12(B)に示す距離△L
0よりも十分に小さくになっている。これは、傾斜角度θに応じてスピンドル本体51が伸縮することによるものである。
【0046】
距離ΔL
1が距離ΔL
0よりも短いことから、カップリング100(第1継手部10の上顎部10A及び下顎部10B)に生じる曲げモーメントを低減することができる。このため、カップリングを長寿命化及び小型化することができる。また、第1継手部10と第2継手部40とを接続するスリッパメタル34の収容部11からのはみ出し部分を低減することができる。これによって、スリッパメタル34の平坦面34b及び摺動面34aの面圧を低く維持することが可能となり、スリッパメタル34の摩耗を十分に低減できる。ΔL
0に対するΔL
1の比(ΔL
1/ΔL
0)は、例えば、0.7以下であってもよく、0.5以下であってもよい。
【0047】
図3(A)及び
図3(B)では、カップリング100がカップリング100aに対して上昇する場合を示して説明したが、カップリング100がカップリング100aに対して下降する場合も同様の効果が得られる。すなわち、カップリング100がカップリング100aよりも下方に移動してスピンドル本体51が傾斜した場合もであっても同様である。なお、本明細書における傾斜角度は絶対値である。すなわち、カップリング100がカップリング100aよりも下方に移動した場合も、スピンドル本体51の傾斜角度θは0よりも大きくなる。
【0048】
図4は、
図3(A)におけるIV−IV線断面図である。ただし、
図4では、
図3(A)では図示されていなかったガイド20及び接続部材24が示されている。軸体54は、略直方体の外形を有する軸受け16の貫通孔16bに挿通され、軸体54の中心軸回りに回転可能に支持されている。軸受け16は貫通孔16bに沿って、その外側の部分よりも摩擦係数の小さい材質で構成される内殻部16aを有する。軸体54は、内殻部16aの周面と接し摺動しながら回転する。したがって、内殻部16aを有することによって、軸体54の回転運動を円滑にすることができる。なお、内殻部16aを設けることは必須ではなく。軸受け16全体を同一の材質で構成してもよい。また、軸体54の外形も直方体に限定されない。
【0049】
軸受け16の両側面には、連結部材22がそれぞれ取り付けられている。軸受け16の両側面に対向するように、一対のレール状のガイド20が配置されている。ガイド20は上下方向に沿ってガイド溝20aを有する。ガイド溝20aにはガイド溝20aの幅と同一の幅を有し、ガイド溝20aに沿って上下に摺動しながら移動する接続部材24が嵌められている。接続部材24の中央部には穴が設けられており、当該穴に円柱状の連結部材22が接続部材24に対して円周方向(
図4の矢印方向)に揺動可能に連結されている。
【0050】
接続部材24は、連結部材22の軸受けとして機能する。
図3(B)のように、軸体54が軸受け16によって引き出されると、軸受け16も鉛直方向に対して傾斜角度θで傾斜する。このとき、軸受け16と連結部材22は、連結部材22を中心軸としてガイド20に対して揺動する。このときの揺動角はθである。ガイド20は、連結部材22及びガイド溝20aを摺動する接続部材24を介して、軸受け16の上昇及び下降を案内する。ガイド20によって、軸受け16は所定の軌道に沿って円滑に上昇及び下降することができる。
【0051】
連結部材22及び接続部材24を備えることは必須ではない。例えば、連結部材22をガイド溝20aに直接嵌めて、軸受け16の上昇及び下降がガイド20に案内されるようにしてもよい。また、軸受け16の側部を、ガイド溝20aに嵌るような形状に加工し、軸受け16の上昇及び下降がガイド20に案内されるようにしてもよい。
【0052】
図5は、
図4のV−V線断面図である。すなわち、
図5は、スピンドル50の軸体54における軸方向断面の一部断面図である。軸体54は、軸受け16の両端面にそれぞれ当接する一対の鍔部54aを有する。鍔部54aによって、軸体54と軸受け16は、軸方向に沿って相対的に移動することが規制される。これによって、軸受け16が上昇又は下降したときに、軸体54をスリーブ部55から引き出すか、軸体54をスリーブ部55に挿入して、スピンドル本体51を伸縮することができる。鍔部54aは、軸体54の強度を維持しつつ軸受け16の軸方向に沿った移動を規制することができる。ただし、軸体54と軸受け16の軸方向に沿った相対的な移動を規制する手段は鍔部54aに限定されず、別の手段であってもよい。
【0053】
図6は、
図4のVI−VI線断面図である。円柱状の連結部材22は、接続部材24の貫通孔に嵌合することによって、接続部材24に回転可能に保持されている。接続部材24は、
図6の矢印方向に回転可能に保持されている。軸体54の先端の上昇又は下降に伴って、軸受け16は、連結部材22及び接続部材24を介して、ガイド20に案内されて上昇又は下降する。ガイド20が案内する軌道に応じて、軸体54のスリーブ部55への挿入長さ、すなわちスピンドル本体51の伸縮量が調節される。このように、本実施形態のスピンドル50は、複雑な構造にすることなくスピンドル本体51の伸縮量を調節して、カップリング100の負荷を低減し、スリッパメタル34の摩耗を抑制することができる。
【0054】
図7は、本実施形態の圧延ロール駆動装置150において、スピンドル本体51が所定の傾斜角度に傾いたときのカップリング100を示す図である。
図7では、スリッパメタル34とフォーク42の重なり部分が斜線で示されている。スリッパメタル34の一部分は、フォーク42と重なり合わずにはみ出している。本実施形態の圧延ロール駆動装置では、はみ出し部分34Aが十分に小さいことから、スリッパメタル34の平坦面34b及び摺動面34aにおける面圧を十分に小さくすることができる。また、荷重中心p2から第2継手部40のフォーク42の付け根までの距離M
1(モーメントアームM
1)を十分に短くして第2継手部40に作用する曲げモーメントを十分に小さくすることができる。同様に、第1継手部10に生じる曲げモーメントも十分に小さくすることができる。したがって、カップリング100の負荷が低減され、長寿命化及び小型化を図ることができる。
【0055】
図13は、従来の圧延ロール駆動装置において、スピンドル本体251が
図7のスピンドル本体51と同じ傾斜角度に傾いたときのカップリング100を示す図である。
図13でも、
図7と同様に、スリッパメタル34とフォーク42の重なり部分が斜線で示されている。スリッパメタル34の一部分は、フォーク42と重なり合わずにはみ出している。はみ出し部分34Bは、
図7のはみ出し部分34Aよりも大きくなっている。はみ出し部分34Bが大きいことから、スリッパメタル34の平坦面34b及び摺動面34aにおける面圧が
図7よりも大きくなる。
【0056】
また、荷重中心p2から第2継手部40のフォーク42の付け根までの距離M
0(モーメントアームM
0)が、
図7のモーメントアームM
1よりも大きくなっている(M
0>M
1)。したがって、第2継手部40に作用する曲げモーメントが
図7の場合よりも大きくなる。また、第1継手部10に生じる曲げモーメントも
図7の場合よりも大きくなる。このように、カップリング100の負荷が増大するため、長寿命化及び小型化を図ることができない。
【0057】
図8は、別の実施形態に係る圧延ロール駆動装置の概要を示す図である。
図8の圧延ロール駆動装置152は、軸受け16の上昇又は下降を案内するガイド20Aが曲がっている点で、圧延ロール駆動装置152と異なっている。その他の構成は、圧延ロール駆動装置150と同一又は同様である。ガイド20Aは、
図8に示すような側面図において、弓なりに曲がっている。
【0058】
ガイド20Aは、水平面を基準(θ=0°)としたときに、スピンドル本体51の傾斜角度θが大きくなるにつれて、軸受け16が圧延機60に近接するように曲がっている。このようにガイド20Aが傾斜部20bを有することによって、傾斜角度θが大きくなっても、スピンドル本体51の長さを十分に長くして、カップリング100を構成する第1継手部10及び第2継手部40の間隔が拡がることを十分に抑制できる。これによって、モーメントアームM
1を十分に短くしてカップリング100における曲げモーメントを十分に小さくするとともに、スリッパメタル34の摩耗を十分に抑制することができる。傾斜部20bは直線状に延在していてもよいし、カップリング100の上下方向の移動に対するスピンドル本体51の追従性を向上する観点から円弧状に曲がっていてもよい。
【0059】
図9は、さらに別の実施形態に係る圧延ロール駆動装置に備えられるスピンドル50Aの径方向断面図である。
図9は、
図4の断面に対応する断面を示している。スピンドル50Aは、接続部材24に代えて、接続部材25及び接続部材25を介して連結部材22に接続される転動部材26を有する点で、スピンドル50と相違する。スピンドル50Aのその他の構成は、
図4に示すスピンドル50と同一又は同様の構成を有する。接続部材25は、連結部材22と転動部材26とを接続しつつ、連結部材22を
図9の矢印方向に揺動可能に保持する軸受けとして機能する部材であれば特に限定されない。
【0060】
図10は、
図9のX−X線断面図である。すなわち、
図10は、スピンドル50Aの軸体54における軸方向断面の一部断面図である。接続部材25を介して連結部材22に接続されている転動部材26は、例えば車輪であり、ガイド20Aのガイド溝20aの側面に当接しながら転動する。軸受け16は、転動部材26を介してガイド20Aに案内されるため、ガイド20Aのガイド溝20aに沿って十分に円滑に移動することができる。したがって、カップリング100の上下方向の移動に対するスピンドル本体51の追従性を一層向上することができる。
【0061】
図11は、
図9のXI−XI線断面図である。
図11中、線Eは鉛直方向を示し、線Fはガイド溝20aの中央線を示している。ガイド20Aの傾斜部20bにおいて、線Fは線Eに対して傾斜している。このようにガイド20A及びガイド溝20aが鉛直方向に対して傾斜していることから、スピンドル本体51の傾斜角度θが大きくなるにつれて、軸受け16が圧延機60に近接するように案内される。ガイド20A及びガイド溝20aは、円弧状に曲がっていてもよいし、傾斜角度θ=0°の位置を始点として直線状に傾斜していてもよい。
【0062】
上述の各実施形態によるスピンドル50,50A、圧延ロール駆動装置150,152、及びこれらのいずれかの組み合わせによれば、長期間に亘って安定的に圧延機60の圧延ロール62の駆動を行うことができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、
図9,
図10及び
図11に示すスピンドル50Aは、圧延ロール駆動装置150,152に備えられていてもよい。カップリング100aは、カップリング100と同様のスリッパメタル方式のカップリングであってもよい。この場合、カップリング100aにおいても、曲げモーメントを小さくしつつスリッパメタルの摩耗を抑制することができる。