(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放熱部として、前記ステータコアのその軸方向における一方端から突出し、前記冷媒通路形成部材に接触する第1放熱部と、前記ステータコアのその軸方向における他方端から突出し、前記冷媒通路形成部材に接触する第2放熱部とが設けられる、請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータにおいては、モータ回転時の磁界の変化に伴って磁束密度が変化することにより、鉄損が生じ、それが発熱の原因となる。このような発熱がモータ内部に蓄積されると、モータの故障に繋がるため、モータ内部を冷却する必要がある。そこで、従来より、モータ内部に冷却管路を配し、その冷却管路に冷媒を流すことが行なわれている。しかしながら、モータ内部には種々の構成要素が存在するため、冷却管路を配するに際して、十分なスペースを確保することが難しい。
【0005】
一方、上述の特許文献1に開示される外被冷却型回転電機においては、固定子(ステータコア)からの放熱を促進させるために、グラファイトシートからなる熱伝導性部材層が用いられている。しかしながら、グラファイトシート等の熱伝導性シートは非常に高価であるため、熱伝導性シートを効率よく配置しつつ、ステータコアからの効率的な放熱を実現する必要がある。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、ステータコアからの効率的な放熱を実現するモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の1つの局面に従ったモータは、ステータコアと、ステータコアの周りに設けられ、冷媒が流れる冷媒通路を形成する冷媒通路形成部材と、ステータコアに接触して設けられる吸熱部と、冷媒通路形成部材に接触して設けられる放熱部とを有する熱伝導性シートと、径方向においてステータコアと隙間を設けて配置されるロータとを備える。ステータコアは、環状のヨーク部と、ヨーク部からロータに向けて突出し、周方向に間隔を隔てて設けられる複数のティース部とを有し、互いに隣り合うティース部間にスロットを形成する。ステータコアは、径方向においてロータと対向して設けられ、スロットの開口部を塞ぐ蓋部材をさらに有する。吸熱部は、蓋部材に接触して設けられる。
この発明の別の局面に従ったモータは、ステータコアと、ステータコアの周りに設けられ、冷媒が流れる冷媒通路を形成する冷媒通路形成部材と、ステータコアに接触して設けられる吸熱部と、冷媒通路形成部材に接触して設けられる放熱部とを有する熱伝導性シートとを備える。吸熱部に切れ目が設けられる。
この発明
のさらに別の局面に従ったモータは、ステータコアと、ステータコアの周りに設けられ、冷媒が流れる冷媒通路を形成する冷媒通路形成部材と、ステータコアに接触して設けられる吸熱部と、冷媒通路形成部材に接触して設けられる放熱部とを有する熱伝導性シートとを備える。
【0008】
このように構成されたモータによれば、熱伝導性シートにおいて、吸熱部から放熱部に向けての熱伝導が促進されるため、ステータコアからの効率的な放熱を実現することができる。
【0009】
また好ましくは、モータは、径方向においてステータコアと隙間を設けて配置されるロータをさらに備える。ステータコアは、環状のヨーク部と、ヨーク部からロータに向けて突出し、周方向に間隔を隔てて設けられる複数のティース部とを有し、互いに隣り合うティース部間にスロットを形成する。モータは、ティース部に巻回され、スロットに配置されるコイルをさらに備える。吸熱部は、スロット内であって、径方向におけるコイルおよびロータの間でステータコアに接触して設けられる。
【0010】
また好ましくは、モータは、径方向においてステータコアと隙間を設けて配置されるロータをさらに備える。ステータコアは、環状のヨーク部と、ヨーク部からロータに向けて突出し、周方向に間隔を隔てて設けられる複数のティース部とを有する。ティース部は、ロータに向けて突出する先端に先端部を含む。吸熱部は、先端部に接触して設けられる。
【0011】
また好ましくは、モータは、径方向においてステータコアと隙間を設けて配置されるロータをさらに備える。ステータコアは、環状のヨーク部と、ヨーク部からロータに向けて突出し、周方向に間隔を隔てて設けられる複数のティース部とを有し、互いに隣り合うティース部間にスロットを形成する。ステータコアは、径方向においてロータと対向して設けられ、スロットの開口部を塞ぐ蓋部材をさらに有する。吸熱部は、蓋部材に接触して設けられる。
【0012】
このように構成されたモータによれば、吸熱部が、鉄損の集中により発熱が大きくなる傾向があるステータコアの部位に設けられる。このため、熱伝導性シートを効率よく配置しつつ、ステータコアからの放熱を効率的に行なうことができる。
【0013】
また好ましくは、モータは、径方向においてステータコアと隙間を設けて配置されるロータをさらに備える。ステータコアは、環状のヨーク部と、ヨーク部からロータに向けて突出し、周方向に間隔を隔てて設けられる複数のティース部とを有し、互いに隣り合うティース部間にスロットを形成する。モータは、ティース部に巻回され、スロットに配置されるコイルと、コイルを覆うように設けられる絶縁紙とをさらに備える。吸熱部は、スロット内において、ステータコアおよび絶縁紙に接触して設けられる。
【0014】
このように構成されたモータによれば、熱伝導性シートを、コイルからの放熱にも大きく寄与させることができる。
【0015】
また好ましくは、熱伝導性シートは、吸熱部および放熱部の間において熱伝導性シートが折り曲げられる折り曲げ部をさらに有する。
【0016】
このように構成されたモータによれば、吸熱部および放熱部の間における熱伝導性シートの経路の自由度を向上させることができる。
【0017】
また好ましくは、放熱部として、ステータコアのその軸方向における一方端から突出し、冷媒通路形成部材に接触する第1放熱部と、ステータコアのその軸方向における他方端から突出し、冷媒通路形成部材に接触する第2放熱部とが設けられる。
【0018】
このように構成されたモータによれば、吸熱部から、ステータコアのその軸方向における両端に向けて熱伝導するため、ステータコアからの放熱の効率をさらに向上させることができる。
【0019】
また好ましくは、吸熱部に切れ目が設けられる。また好ましくは、切れ目は、ステータコアの軸方向に沿って延びる。また好ましくは、切れ目は、ステータコアの軸方向に直交する方向に沿って延びる。
【0020】
このように構成されたモータによれば、熱伝導性シートにおける渦電流損の発生を抑制することができる。
【0021】
また好ましくは、熱伝導性シートが、熱伝導性シートの厚み方向に積層される。
このように構成されたモータによれば、熱伝導性シートにおける最大の熱移送量を増大させることができる。
【0022】
また好ましくは、熱伝導性シートの積層数が、ステータコアのその軸方向における中央部で相対的に少なく、ステータコアのその軸方向における端部で相対的に多い。
【0023】
このように構成されたモータによれば、熱伝導性シートの積層数が、熱伝導性シートを伝導する熱量が大きくなる位置でより多くに設定される。このため、熱伝導性シートを効率よく配置しつつ、ステータコアからの放熱を効率的に行なうことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上に説明したように、この発明に従えば、ステータコアからの効率的な放熱を実現するモータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるモータを示す断面図である。
図1を参照して、この発明の実施の形態1におけるモータ10は、工作機械用であり、たとえば、マシニングセンタの主軸を回転駆動させるモータとして用いられる。
【0028】
モータ10は、ロータ12と、ロータ12の外周上に隙間(ギャップ)を設けて配置されるステータ20とを有する。ロータ12は、仮想線で示された中心軸101を中心に回転駆動する(なお、
図1中には、モータ10の半分の断面が示されている)。ロータ12の最高回転数は、たとえば、10000rpm以上である。
【0029】
ロータ12は、ロータコア14と、複数の永久磁石16とを有する。ロータコア14は、全体として、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。ロータコア14は、磁性材料から形成されている。複数の永久磁石16は、接着剤を用いて、ロータコア14の外周面に貼り付けられている。複数の永久磁石16は、中心軸101を中心する周方向に互いに間隔を隔てて設けられている。
【0030】
図2は、
図1中のステータコアに熱伝導性シートが設けられる形態を示す上面図である。
図3は、
図1中のステータコアに熱伝導性シートが設けられる形態を示す斜視図である。
図1から
図3を参照して、ステータ20は、ステータコア21を有する。
【0031】
ステータコア21は、全体として、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。ステータコア21は、磁性材料から形成されている。典型的には、ステータコア21は、中心軸101の軸方向に積層される複数枚の電磁鋼板から構成されている。
【0032】
ステータコア21は、端面21aおよび端面21bを有する。端面21aおよび端面21bは、それぞれ、中心軸101の軸方向におけるステータコア21の一方端および他方端に配置されている。端面21aおよび端面21bは、中心軸101に直交する平面内で延在する。
【0033】
ステータコア21は、その構成部位として、ヨーク部22と、複数のティース部23とを有する。ヨーク部22は、中心軸101を中心に環状に周回する形状を有する。ティース部23は、ヨーク部22から径方向内側に向けて突出する形状を有する。ティース部23は、ヨーク部22から突出する先端において、ロータ12と隙間を設けて対向する。複数のティース部23は、中心軸101を中心とする周方向において互いに間隔を隔てて設けられている。周方向において互いに隣り合うティース部23間には、スロット24が形成されている。
【0034】
ステータコア21は、蓋部材26をさらに有する。蓋部材26は、ヨーク部22およびティース部23とは別部材として設けられている。蓋部材26は、径方向においてロータ12と対向して設けられている。蓋部材26は、ヨーク部22から半径方向内側に離れた位置に設けられている。蓋部材26は、スロット24の開口部を塞ぐように設けられている。蓋部材26は、周方向において互いに隣り合うティース部23間に挿入されている。蓋部材26は、中心軸101の軸方向において端面21aおよび端面21bの間に渡って設けられている。
【0035】
図4は、
図1中のステータコアのスロット内を示す断面図である。
図1から
図4を参照して、ステータ20は、コイル31と、樹脂部36と、絶縁紙34とをさらに有する。
【0036】
コイル31は、ティース部23に巻回されている。コイル31は、ティース部23の両側に位置するスロット24と、端面21aおよび端面21b上とを通るように巻回されている。端面21a上を通るコイル31の部分が、コイルエンド部32を構成し、端面21b上を通るコイル31の部分が、コイルエンド部33を構成している。
【0037】
樹脂部36は、端面21a上においてコイルエンド部32を覆い、端面21b上においてコイルエンド部33を覆うように設けられている。ステータ20は、樹脂部36を含めた形態において、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。
【0038】
絶縁紙34は、コイル31を覆うように設けられている。絶縁紙34は、スロット24内において、コイル31と、スロット24を区画形成するステータコア21の内壁27との間に介挿されている。
【0039】
モータ10は、内周側ハウジング41と、外周側ハウジング42とをさらに有する。内周側ハウジング41および外周側ハウジング42は、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。内周側ハウジング41および外周側ハウジング42は、ステータコア21の周りに設けられている。内周側ハウジング41および外周側ハウジング42は、径方向においてステータコア21と隣り合って設けられている。外周側ハウジング42の内側に内周側ハウジング41が嵌合され、さらに、内周側ハウジング41の内側にステータコア21が嵌合されている。
【0040】
中心軸101の軸方向における内周側ハウジング41の長さは、中心軸101の軸方向におけるステータ20の長さよりも大きい。ステータ20(より具体的には、樹脂部36)と、内周側ハウジング41との境界部には、中心軸101の軸方向における段差が存在する。
【0041】
内周側ハウジング41および外周側ハウジング42は、冷却水や冷却油などの冷媒が流通可能な冷媒通路43を形成している。より具体的には、内周側ハウジング41には、その外周面から凹む溝部61が形成されている。溝部61は、中心軸101の軸方向に沿って螺旋状に延びている。内周側ハウジング41の外周上に外周側ハウジング42が配置されることによって、溝部61に冷媒通路43が区画形成されている。
【0042】
冷媒通路43は、主に、ステータコア21をその外周側から冷却する冷却手段として機能する。
【0043】
モータ10は、熱伝導性シート51をさらに有する。熱伝導性シート51は、折り曲げ可能な柔軟性シート材から構成されている。熱伝導性シート51は、熱伝導性に優れた非磁性体から構成されている。熱伝導性シート51の熱伝導率は、銀、銅およびアルミニウムの少なくともいずれか1つの熱伝導率よりも大きいことが好ましい。典型的には、熱伝導性シート51は、グラファイトシートから構成されている。
【0044】
熱伝導性シート51は、その構成部位として、吸熱部56と、放熱部57pおよび放熱部57q(以下、両者を特に区別しない場合には、単に「放熱部57」という)とを有する。
【0045】
吸熱部56は、ステータコア21に接触して設けられている。より具体的には、吸熱部56は、ステータコア21に面接触して設けられている。吸熱部56は、スロット24内に設けられている。吸熱部56は、径方向におけるコイル31およびロータ12の間でステータコア21に接触して設けられている。吸熱部56は、ステータコア21のうちの蓋部材26に接触して設けられている。吸熱部56は、蓋部材26に貼り付けられている。吸熱部56は、径方向において蓋部材26およびコイル31(絶縁紙34)の間に介挿されている。
【0046】
放熱部57は、内周側ハウジング41および外周側ハウジング42に接触して設けられている。放熱部57pは、ステータコア21のその軸方向における一方端(端面21a側)から突出し、内周側ハウジング41および外周側ハウジング42に接触している。放熱部57qは、ステータコア21のその軸方向における他方端(端面21b側)から突出し、内周側ハウジング41および外周側ハウジング42に接触している。
【0047】
なお、放熱部57が、内周側ハウジング41および外周側ハウジング42のうちの内周側ハウジング41にのみ接触する構成としてもよいし、熱伝導性シート51に放熱部57pおよび放熱部57qのうちのいずれか一方のみが設けられる構成としてもよい。熱伝導性シート51は、中心軸101の軸方向におけるステータコア21の中央部で分断された構成を有してもよい。
【0048】
熱伝導性シート51は、複数のスロット24の全てに設けられている。このような構成に限られず、たとえば、周方向に並ぶ複数のスロット24のうちの1つおきのスロット24に、熱伝導性シート51が設けられてもよい。
【0049】
このような構成によれば、吸熱部56が接触するステータコア21と、放熱部57が接触する内周側ハウジング41および外周側ハウジング42との間の温度勾配が高くなるため、熱伝導性シート51における吸熱部56から放熱部57に向けての熱伝導を促進させることができる。これにより、ステータコア21からの放熱を効率よく行なうことができる。
【0050】
図5は、モータにおける鉄損分布を示す図である。
図5を参照して、特にモータの高速回転時、発熱の原因となる鉄損が、ステータコア21の内周側に集中して発生する。本実施の形態では、ステータコア21の内周側における温度上昇を効率的に抑えるため、吸熱部56が、ステータコア21のうちの内周側に配置された蓋部材26に接触して設けられている。
【0051】
このような構成により、高価な熱伝導性シート51を多大に使用することなく、発熱の大きいステータコア21の部位から確実に放熱を行なうことができる。これにより、費用対効果の高いモータ内部の冷却構造を実現することができる。
【0052】
図1を参照して、熱伝導性シート51は、帯状に延びる形状を有する。その帯状に延びる熱伝導性シート51の長手方向において、吸熱部56は、熱伝導性シート51の中央部に位置し、放熱部57pおよび放熱部57qは、熱伝導性シート51の両端部に位置する。
【0053】
熱伝導性シート51は、その構成部位として、折り曲げ部52gおよび折り曲げ部52h(以下、両者を特に区別しない場合には、単に「折り曲げ部52」という)をさらに有する。折り曲げ部52は、吸熱部56および放熱部57の間に設けられている。熱伝導性シート51は、折り曲げ部52において折り曲げられている。
【0054】
より具体的には、熱伝導性シート51は、スロット24内から、中心軸101の軸方向に沿って直線状に延び、端面21aおよび端面21b上の樹脂部36に達している。熱伝導性シート51は、樹脂部36上の折り曲げ部52gにおいて、中心軸101の半径方向外側に向けて折り曲げられている。
【0055】
熱伝導性シート51は、折り曲げ部52gから、樹脂部36と接触しながら中心軸101に半径方向外側に向けて延びている。熱伝導性シート51は、折り曲げ部52hにおいて、樹脂部36と、内周側ハウジング41との境界部にある段差を乗り越えるように折り曲げられている。熱伝導性シート51は、折り曲げ部52hにおいて、内周側ハウジング41と接触している。熱伝導性シート51は、折り曲げ部52hから、さらに中心軸101の半径方向外側に向けて延び、その間、内周側ハウジング41および外周側ハウジング42に接触している。
【0056】
本実施の形態では、熱伝導性シート51が折り曲げ可能な柔軟性シート材から構成されており、熱伝導性シート51を、吸熱部56と放熱部57との間で自在に折り曲げることができる。これにより、熱伝導性シート51を配索する経路の自由度を向上させることができる。また、これによって、熱伝導性シート51の使用量を抑えるという効果も奏される。
【0057】
以上に説明した、この発明の実施の形態1におけるモータ10の構造についてまとめて説明すると、本実施の形態におけるモータ10は、ステータコア21と、ステータコア21の周りに設けられ、冷媒が流れる冷媒通路43を形成する冷媒通路形成部材としての内周側ハウジング41および外周側ハウジング42と、ステータコア21に接触して設けられる吸熱部56と、内周側ハウジング41および外周側ハウジング42に接触して設けられる放熱部57とを有する熱伝導性シート51とを備える。
【0058】
このように構成された、この発明の実施の形態1におけるモータ10によれば、ステータコア21からの効率的な放熱を実現することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、ロータ12がステータ20の内側に配置されるインナーロータ型のモータ10について説明したが、本発明を、ロータがステータの外側に配置されるアウターロータ型のモータに適用することも可能である。アウターロータ型のモータでは、ステータコアの発熱がロータと対向する外周側で大きくなるため、好ましくは、熱伝導性シートがステータコアの外周側に設けられる。
【0060】
また、本実施の形態では、本発明を工作機械用のモータに適用した場合について説明したが、このような場合に限られず、たとえば、本発明を一般的な産業機械に用いられるモータに適用することも可能である。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1において説明した熱伝導性シート51の配置や形態の各種変形例について説明する。
【0062】
図6は、
図4中に示す熱伝導性シートの配置の第1変形例を示す断面図である。
図6を参照して、本変形例では、ステータコア21に
図4中の蓋部材26が設けられていない。
【0063】
熱伝導性シート51の吸熱部56は、スロット24内に設けられている。吸熱部56は、径方向におけるコイル31およびロータ12(
図1を参照)の間でステータコア21に接触して設けられている。吸熱部56は、スロット24を区画形成するステータコア21の内壁27と接触して設けられている。
【0064】
図7は、
図4中に示す熱伝導性シートの配置の第2変形例を示す断面図である。
図7を参照して、ティース部23は、先端部28を有する。先端部28は、径方向においてロータ12(
図1を参照)に向けて突出するティース部23の先端に設けられている。
【0065】
熱伝導性シート51の吸熱部56は、スロット24外に設けられている。吸熱部56は、径方向におけるコイル31およびロータ12の間でステータコア21に接触して設けられている。吸熱部56は、先端部28に接触して設けられている。
【0066】
図6および
図7中に示す変形例によれば、実施の形態1と同様に、ステータコア21の内周側における温度上昇を効率的に抑えることができる。
【0067】
図8は、
図4中に示す熱伝導性シートの配置の第3変形例を示す断面図である。
図8を参照して、熱伝導性シート51の吸熱部56は、スロット24内に設けられている。吸熱部56は、スロット24を区画形成するステータコア21の内壁27と、絶縁紙34とに接触して設けられている。吸熱部56は、蓋部材26が配置される一方を除いた三方からコイル31を覆うように設けられている。
【0068】
図8中に示す変形例によれば、熱伝導性シート51を、ステータコア21に加えてコイル31からの放熱にも大きく寄与させることができる。ここで、絶縁紙34の厚みは一般的に小さいため、コイル31および吸熱部56間の熱伝達が絶縁紙34によって阻害されることを抑制できる。
【0069】
図9および
図10は、
図1中に示す熱伝導性シートの形態の第1変形例を示す図である。
図9および
図10を参照して、本変形例では、熱伝導性シート51に切れ目53が設けられている。切れ目53は、熱伝導性シート51をその厚み方向に貫通するように設けられている。複数の切れ目53が、互いに間隔を隔てて設けられている。
【0070】
図9中に示す変形例では、切れ目53が、ステータコア21の軸方向(中心軸101の軸方向)に沿って延びている。複数の切れ目53が、ステータコア21の軸方向に直交する方向(ステータコア21の周方向)に間隔を隔てて設けられている。ステータコア21の軸方向における一方端側から他方端側に向けて延びる切れ目53と、ステータコア21の軸方向における他方端側から一方端側に向けて延びる切れ目53とが、交互に設けられている。
【0071】
図10中に示す変形例では、切れ目53が、ステータコア21の軸方向に直交する方向(ステータコア21の周方向)に沿って延びている。複数の切れ目53が、ステータコア21の軸方向(中心軸101の軸方向)に間隔を隔てて設けられている。ステータコア21の周方向における一方端側から他方端側に向けて延びる切れ目53と、ステータコア21の周方向における他方端側から一方端側に向けて延びる切れ目53とが、交互に設けられている。
【0072】
このような構成によれば、熱伝導性シート51における渦電流損の発生を抑制することができる。これにより、熱伝導性シート51自身の発熱を抑制することができる。また、
図9中に示す変形例では、切れ目53が、熱伝導性シート51を熱伝導性シート51における熱の伝導方向に分断するような形態で設けられていない。このため、切れ目53によって熱伝導性シート51における熱伝導の効率が損なわれることを防止できる。
【0073】
図11は、
図1中に示す熱伝導性シートの形態の第2変形例を示す断面図である。
図11を参照して、本変形例では、熱伝導性シート51が、熱伝導性シート51の厚み方向に積層されている。より具体的には、3枚の熱伝導性シート51p,51q,51rが、熱伝導性シート51の厚み方向に積層されている。
【0074】
このような構成によれば、熱伝導性シート51を、熱伝導性シート51における熱の伝導方向に直交する平面により切断した場合の断面積が増大するため、熱伝導性シート51における最大の熱移送量を増大させることができる。
【0075】
なお、1枚の熱伝導性シート51が折り畳まれることによって、熱伝導性シート51の積層状態が得られてもよい。
【0076】
熱伝導性シート51の積層数は、ステータコア21のその軸方向における中央部で相対的に少なく、ステータコア21のその軸方向における端部(両端部)で相対的に多い。より具体的には、ステータコア21のその軸方向における中央部において、熱伝導性シート51の積層数が1であり、ステータコア21のその軸方向における両端部において、熱伝導性シート51の積層数が3であり、ステータコア21のその軸方向における中央部と、両端部との間において、熱伝導性シート51の積層数が2である。
【0077】
このような構成によれば、ステータコア21のその軸方向における各位置において熱が発生し、その発生した熱は、ステータコア21のその軸方向における両端部に向けて伝導するため、熱伝導性シート51において伝導する熱量は、ステータコア21のその軸方向における中央部よりも両端部で大きくなる。このため、ステータコア21のその軸方向における両端部において、熱伝導性シート51における最大の熱移送量をより大きく増大させることによって、熱伝導性シート51の使用量を抑えつつ、ステータコア21からの放熱を効率的に行なうことができる。
【0078】
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるモータによれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0079】
(実施の形態3)
図12は、この発明の実施の形態3におけるモータを示す断面図である。本実施の形態におけるモータは、実施の形態1におけるモータ10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については、その説明を繰り返さない。
【0080】
図12を参照して、本実施の形態におけるモータは、冷媒通路形成部材として、実施の形態1において説明した内周側ハウジング41および外周側ハウジング42に加えて、第1リング部材47、第2リング部材48およびフランジ部材46を有する。
【0081】
第1リング部材47および第2リング部材48は、中心軸101を中心とするリング形状を有する。第1リング部材47は、中心軸101の軸方向における他方端側からステータ20に重ね合わされ、第2リング部材48は、さらにその第1リング部材47に重ね合わされている。フランジ部材46は、中心軸101の軸方向における他方端側から、ステータ20、内周側ハウジング41および外周側ハウジング42に重ね合わされている。フランジ部材46は、第1リング部材47および第2リング部材48の半径方向外側に配置されている。
【0082】
第1リング部材47、第2リング部材48およびフランジ部材46は、冷却水や冷却油などの冷媒が流通可能な冷媒通路49を形成している。冷媒通路49は、ステータコア21の軸方向における他方側においてステータコア21と対向する領域に設けられ、ステータコア21の中心軸を中心とする環状通路をなしている。
【0083】
冷媒通路49は、主に、ステータコア21をその軸方向における端面側から冷却する冷却手段として機能する。
【0084】
本実施の形態では、放熱部57pが、内周側ハウジング41および外周側ハウジング42に接触して設けられ、放熱部57qが、第1リング部材47およびフランジ部材46に接触して設けられている。
【0085】
このように構成された、この発明の実施の形態3におけるモータによれば、実施の形態1に記載の効果を同様に奏することができる。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。