(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワイヤハーネスを構成する電線が通過可能な経路を画成する本体部と、前記電線を前記経路の中に保持するための複数のカバー部と、を備えた、ワイヤハーネス用のプロテクタであって、
前記本体部は、
前記経路に沿って延び且つ該本体部への前記ワイヤハーネスの組付方向に窪んだ溝によって前記経路を画成すると共に、前記経路の一端、前記経路の他端、及び、前記一端と前記他端との間の前記経路の中間箇所のうちの一つが、他の二つに比べて前記組付方向において異なる位置に前記溝の底部を有し、前記経路の一端を一端として直線状に延びる第1部分と、前記経路の他端を一端として直線状に延びる第2部分と、前記第2部分の他端から前記第2部分の延在方向と交差する方向に直線状に延びて前記中間箇所を通る第3部分と、前記第1部分の他端と前記第3部分の他端とを直線状に連結し且つ前記第1部分及び前記第3部分の双方の延在方向と交差する方向に延びる第4部分と、を含む、立体的形状を有し、
前記複数のカバー部は、
前記第1部分及び前記第4部分にて前記溝の開口を覆って前記電線を保持する第1カバー部と、前記第2部分にて前記開口を覆って前記電線を保持する第2カバー部と、前記第1カバー部に相対変位可能に繋がると共に前記第3部分にて前記開口を覆って前記電線を保持する第3カバー部と、を有する、
ワイヤハーネス用のプロテクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のプロテクタは、その両端部において電線をプロテクタ本体に対してテープ巻きによって固定し、更にその中央部において電線を押え片によってプロテクタ本体の中に押し込んだ状態にて、プロテクタ本体にカバーを取り付けるようになっている。このような取り付け手順により、従来のプロテクタは、プロテクタ本体が立体的な形状を有する場合であっても、プロテクタ本体から電線が離れた(浮き上がった)状態でカバーが取り付けられてプロテクタ本体とカバーとの間に電線が挟まれることを抑制するようになっている。
【0006】
しかし、実際には、この従来のプロテクタを電線に取り付ける際、電線をプロテクタ本体に対してテープ巻きによって固定する必要があるため、電線にプロテクタを取り付ける作業の効率を向上させにくい。更に、そのように電線にプロテクタを取り付けた後、種々の事情によって電線からプロテクタを取り外すこととなった際、電線とプロテクタとに巻き付けられたテープを取り除く必要があるため、電線からプロテクタを取り外す作業も困難である。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスを構成する電線に対してプロテクタを組み付ける際の作業性に優れたワイヤハーネス用のプロテクタ、及び、ワイヤハーネスの製造方法、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「ワイヤハーネス用のプロテクタ」は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1)
ワイヤハーネスを構成する電線が通過可能な経路を画成する本体部と、前記電線を前記経路の中に保持するための複数のカバー部と、を備えた、ワイヤハーネス用のプロテクタであって、
前記本体部は、
前記経路に沿って延び且つ該本体部への前記ワイヤハーネスの組付方向に窪んだ溝によって前記経路を画成すると共に、前記経路の一端、前記経路の他端、及び、前記一端と前記他端との間の前記経路の中間箇所のうちの一つが、他の二つに比べて前記組付方向において異なる位置に前記溝の底部を有
し、
前記経路の一端を一端として直線状に延びる第1部分と、前記経路の他端を一端として直線状に延びる第2部分と、前記第2部分の他端から前記第2部分の延在方向と交差する方向に直線状に延びて前記中間箇所を通る第3部分と、前記第1部分の他端と前記第3部分の他端とを直線状に連結し且つ前記第1部分及び前記第3部分の双方の延在方向と交差する方向に延びる第4部分と、を含む、立体的形状を有し、
前記複数のカバー部は、
前記第1部分及び前記第4部分にて前記溝の開口を覆って前記電線を保持する第1カバー部と、
前記第2部分にて前記開口を覆って前記電線を保持する第2カバー部と、前記第1カバー部
に相対変位可能に繋がると共に
前記第3部分にて前記開口を覆って前記電線を保持する第3カバー部と、を有する、
ワイヤハーネス用のプロテクタであること。
(2)
上記(1)に記載のプロテクタにおいて、
前記第1カバー部は、
前記本体部の
前記第1部分に相対変位可能に繋がり、
前記第2カバー部は、
前記本体部の
前記第2部分に相対変位可能に繋がる、
ワイヤハーネス用のプロテクタであること。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のプロテクタにおいて、
前記本体部は、
前記電線の外周を覆うように装着されるコルゲートチューブを前記経路の軸線方向において相対移動不能に係止する係止突起を、前記経路の少なくとも一部に有する、
ワイヤハーネス用のプロテクタであること。
【0009】
上記(1)の構成のプロテクタによれば、プロテクタが画成する経路(組付方向に窪んだ溝)にワイヤハーネスを構成する電線を収容した後、第1カバー部および第2カバー部によって経路の一端と他端とに対応する部分(溝の開口)を覆うことにより、経路の両端において電線が本体部から離れる(浮き上がる)ことが抑制される。更に、本体部が立体的形状を有することから特に電線の離れが生じ易い経路の中間箇所に対応する部分を、第3カバー部によって覆うことにより、経路の中間箇所においても電線が本体部から離れることが抑制される。
【0010】
ここで、第3カバー部は、第1カバー部および第2カバー部の一方に相対変位可能に(例えば、ヒンジを中心として回動可能に)繋がっているため、第1カバー部および第2カバー部によって経路の両端に対応する部分を覆う作業と、第3カバー部によって経路の中間箇所に対応する部分を覆う作業と、を滞りなく連続して実行できる。例えば、第1カバーに第3カバーが繋がっている場合、作業者は、第1カバー及び第2カバーを本体部に取り付けた後、第1カバーから手を離すことなく速やかに第3カバーを本体部に取り付けることができる。第2カバーに第3カバーが繋がっている場合も同様である。
【0011】
したがって、本構成のプロテクタによれば、上述した従来のプロテクタのようなテープ巻きも押え片による固定も要さないため、ワイヤハーネスを構成する電線に対してプロテクタを組み付ける際の作業性を向上できる。更に、仮に電線からプロテクタを取り外すことになった場合であっても、本体から複数のカバー部を取り外すだけでよいため、従来のプロテクタのようにテープを用いる場合に比べ、電線からプロテクタを取り外す作業も容易である。
【0012】
上記(2)の構成のプロテクタによれば、第1カバー部および第2カバー部が本体部に相対変位可能に(例えば、ヒンジを中心として回動可能に)繋がっている。そのため、例えば、作業者は、本体部の経路に電線を収容した後、本体部から手を離すことなく速やかに第1カバー部および第2カバー部を変位させ(例えば、ヒンジを中心に回動させる)、経路の両端に対応する部分(溝の開口)を覆うことができる。よって、第1カバー部および第2カバー部が本体部から独立した部品である場合に比べ、プロテクタを組み付ける作業性を更に向上できる。
【0013】
上記(3)の構成のプロテクタによれば、電線の外周を覆うようにコルゲートチューブが装着されている場合、本体部に設けた係止突起によってコルゲートチューブを係止することにより、コルゲートチューブ及び電線が経路の軸線方向に移動すること(経路の軸線方向における位置ズレ)を抑制できる。
【0014】
例えば、係止突起を第1カバー部および第2カバー部に対応する位置に設ければ、第1カバー部および第2カバー部によって経路の両端に対応する部分を覆ったとき、それら部分においてコルゲートチューブを固定できる。これにより、経路の両端にて、コルゲートチューブ及び電線の位置ズレを抑制できる。その結果、例えば、第1カバー部および第2カバー部を本体部に取り付けた後、電線が本体部の外部から内部に向けて押し込まれて経路の中間箇所において電線が経路から離れる(浮き上がる)こと等を抑制できる。よって、プロテクタを組み付ける作業性を更に向上できる。
【0015】
更に、前述した目的を達成するために、本発明に係る「ワイヤハーネスの製造方法」は、下記(4)を特徴としている。
(4)
ワイヤハーネスを構成する電線に対してプロテクタが組み付けられたワイヤハーネスの製造方法であって、
前記プロテクタは、
前記電線が通過可能な経路を画成する本体部であって、前記経路に沿って延び且つ該本体部への前記ワイヤハーネスの組付方向に窪んだ溝によって前記経路を画成すると共に、前記経路の一端、前記経路の他端、及び、前記一端と前記他端との間の前記経路の中間箇所のうちの一つが、他の二つに比べて前記組付方向において異なる位置に前記溝の底部を有
し、
前記経路の一端を一端として直線状に延びる第1部分と、前記経路の他端を一端として直線状に延びる第2部分と、前記第2部分の他端から前記第2部分の延在方向と交差する方向に直線状に延びて前記中間箇所を通る第3部分と、前記第1部分の他端と前記第3部分の他端とを直線状に連結し且つ前記第1部分及び前記第3部分の双方の延在方向と交差する方向に延びる第4部分と、を含む、立体的形状を有する、本体部と、
前記電線を前記経路の中に保持するための複数のカバー部であって、
前記第1部分及び前記第4部分にて前記溝の開口を覆って前記電線を保持する第1カバー部と、
前記第2部分にて前記開口を覆って前記電線を保持する第2カバー部と、前記第1カバー部
に相対変位可能に繋がると共に
前記第3部分にて前記開口を覆って前記電線を保持する第3カバー部と、を含む、複数のカバー部と、を有し、
該製造方法は、
前記複数のカバー部によって前記開口が覆われていない状態にて、前記経路の中に前記電線を収容する工程と、
前記第1カバー部によって
前記第1部分及び前記第4部分の前記開口を覆うように、前記第1カバー部を前記本体部に組み付ける工程と、
前記第2カバー部によって
前記第2部分の前記開口を覆うように、前記第2カバー部を前記本体部に組み付ける工程と、
前記第1カバー部及び前記第2カバー部を前記本体部に組み付けた後、前記第3カバー部によって
前記第3部分の前記開口を覆うように、前記第3カバー部を前記本体部に組み付ける工程と、を備えた、
ワイヤハーネスの製造方法であること。
【0016】
上記(4)の構成の製造方法によれば、プロテクタが画成する経路(組付方向に窪んだ溝)にワイヤハーネスを構成する電線を収容する工程の後、第1カバー部および第2カバー部によって経路の一端と他端とに対応する部分(溝の開口)を覆う工程を経て、経路の両端において電線が本体部から離れる(浮き上がる)ことが抑制される。更に、これら工程の後、本体部が立体的形状を有することから特に電線の離れが生じ易い中間箇所に対応する部分を第3カバー部によって覆う工程を経て、経路の中間箇所においても電線が本体部から離れることが抑制される。
【0017】
ここで、第3カバー部は、第1カバー部および第2カバー部の一方に相対変位可能に(例えば、ヒンジを中心として回動可能に)繋がっているため、第1カバー部および第2カバー部によって経路の両端に対応する部分を覆う工程と、第3カバー部によって経路の中間箇所に対応する部分を覆う工程と、を滞りなく連続して実行できる。
【0018】
したがって、本構成のワイヤハーネスの製造方法によれば、ワイヤハーネスを構成する電線に対してプロテクタを組み付ける際の作業性を向上できる。更に、この製造方法によって製造されたワイヤハーネスによれば、仮に電線からプロテクタを取り外すこととなった場合であっても、本体から複数のカバー部を取り外すだけでよいため、従来のプロテクタのようにテープを用いる場合に比べ、電線からプロテクタを取り外す作業も容易である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワイヤハーネスを構成する電線に対してプロテクタを組み付ける際の作業性に優れたワイヤハーネス用のプロテクタ、及び、ワイヤハーネスの製造方法、を提供できる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス用のプロテクタ1、及び、ワイヤハーネスWHの製造方法について説明する。プロテクタ1は、ワイヤハーネスWHを構成する電線束Wの軸線方向の一部に取り付けられ、典型的には、車両の車体フレーム等の所定箇所に固定される。これにより、ワイヤハーネスWHが車体に配索されることになる。
【0023】
図1及び
図2に示すように、プロテクタ1は、本体部2と、カバー部3と、を備える。カバー部3は、第1カバー部4、第2カバー部5、及び、第3カバー部6を含む。本体部2及びカバー部3は、合成樹脂から形成されている。
【0024】
先ず、本体部2について説明する。本体部2は、上方に開口する(一対の上縁部を有する)断面U字状の長尺状の部材であり、ワイヤハーネスWHを構成する電線束W(
図3等を参照)が通過可能な1本の連続した経路11(U字状溝)を画成している(
図2(a)を参照)。このように、経路11は、本体部2へのワイヤハーネスWHの組付方向(上下方向)において窪んだ溝によって画成されている。
【0025】
本体部2は、経路11の一端12、経路11の他端13、及び、一端12と他端13との間の経路11の中間箇所14のうちの一つが、他の二つに比べてプロテクタ1の上下方向(ワイヤハーネスWHの組付方向)において異なる位置にあるような、立体的形状を有している。本例では、上下方向において、他端13と中間箇所14とがほぼ同じ位置にあり、一端12が中間箇所14に対して大きく上方に移動した位置にある。
【0026】
本体部2の一端12側の端部における一対の上縁部のうち一方側には、経路11に沿う方向に延びる第1ヒンジ部15を介して、第1カバー部4が回動可能に連結されている(
図2(a)を参照)。一方、本体部2の他端13側の端部における一対の上縁部のうち一方側には、経路11に沿う方向に延びる第2ヒンジ部16を介して、第2カバー部5が回動可能に連結されている。第1カバー部4及び第2カバー部5のそれぞれは、閉位置(
図1を参照)と開位置(
図2を参照)との間を個別に移動可能となっている。
【0027】
本体部2の第1ヒンジ部15が形成された箇所における一対の上縁部のうち他方側には、幅方向に僅かに突出形成された枠体部にて、上下方向に貫通する係止孔17が設けられている。係止孔17は、第1カバー部4の係止片32を挿入するために設けられている。
【0028】
同様に、本体部2の第2ヒンジ部16が形成された箇所における一対の上縁部のうち他方側には、幅方向に僅かに突出形成された枠体部にて、係止孔18が設けられている(
図1(a)を参照)。係止孔18は、第2カバー部5の係止片41を挿入するために設けられている。
【0029】
本体部2の中間箇所14における一対の上縁部には、幅方向に僅かに突出形成された一対の枠体部にて、上下方向に貫通する一対の係止孔19が設けられている。一対の係止孔19は、第3カバー部6の一対の係止片51を挿入するために設けられている。
【0030】
本体部2の第1ヒンジ部15及び係止孔17が形成された箇所、及び、第2ヒンジ部16及び係止孔18が形成された箇所にはそれぞれ、経路11(U字状溝)の内部に突出する係止突起群21(複数の係止突起22,23)が設けられている(
図2(a)を参照)。係止突起群21は、ワイヤハーネスWHを構成する電線束Wの外周を覆うコルゲートチューブCC(
図3等を参照)を、経路11の軸線方向において相対移動不能に係止するために設けられている。
【0031】
図2(b)に拡大して示すように、係止突起群21としては、一対の係止突起22と、一対の係止突起23とが設けられている。一対の係止突起22は、経路11の軸線方向に間隔をあけて形成され、各係止突起22は、経路11(U字状溝)の底部から両側部に亘って経路11の内部に突出している。一対の係止突起23は、一対の係止突起22の間において経路11の軸線方向に間隔をあけて形成され、各係止突起23は、経路11(U字状溝)の両側部から経路11の内部に突出している。なお、
図2(b)では、経路11の一端12側の係止突起群21が図示されているが、経路11の他端13側の係止突起群21も同様の構造を有している。
【0032】
本体部2の係止孔18(
図1(a)を参照)が形成された箇所の外側面には、プロテクタ1を車両の所定箇所に固定するための固定部24が一体的に設けられている。プロテクタ1をワイヤハーネスWHに組み付けた状態にて固定部24を車両の車体フレーム等の所定箇所に固定することにより、ワイヤハーネスWHが車体に配索されることになる。以上、本体部2について説明した。
【0033】
次いで、カバー部3について、第1カバー部4、第2カバー部5及び第3カバー部6の順に説明していく。
図2に示すように、第1カバー部4は、第1ヒンジ部15を介して本体部2と連結されている。第1カバー部4は、本体部2の一端12側の端部から中間箇所14までの経路11の軸線方向に亘って本体部2の上部開口を塞ぐことで、電線束Wを経路11内に保持するために設けられている。
【0034】
第1カバー部4の中間箇所14側の端部には、第1カバー部4の閉位置にて経路11と直交する方向に延びる第3ヒンジ部31を介し、第3カバー部6が回動可能に連結されている。第3カバー部6は、閉位置(
図1,6を参照)と開位置(
図2,5を参照)との間を移動可能となっている。
【0035】
第1カバー部4の第1ヒンジ部15が設けられた側と対向する側の側端縁には、第1カバー部4の閉位置にて下方に突出する係止片32が設けられている。係止片32の外側面には突起33(
図1(b)を参照)が設けられている。第1カバー部4の閉位置では、係止片32が本体部2の係止孔17に挿入され且つ突起33が係止孔17の縁部と係合することで、第1カバー部4が閉位置に保持されるようになっている。
【0036】
第1カバー部4の内側面(電線束Wと対向する面)の係止片32及び第1ヒンジ部15で挟まれる箇所には、本体部2の一対の係止突起22(
図2(b)を参照)に対応するように、一対の係止突起34が設けられている(
図2(b)も参照)。第1カバー部4の閉位置では、一対の係止突起22と一対の係止突起34とが、コルゲートチューブCCを挟むように保持することで、コルゲートチューブCCを、本体部2の一端12側の端部において、経路11の軸線方向において移動不能に係止するようになっている。
【0037】
次いで、第2カバー部5について説明する。第2カバー部5は、上述のように、第2ヒンジ部16を介して本体部2と連結されている。第2カバー部5は、本体部2の他端13側の端部から中間箇所14までの経路11の軸線方向に亘って本体部2の上部開口を塞ぐことで、電線束Wを経路11内に保持するために設けられている。
【0038】
第2カバー部5の第2ヒンジ部16が設けられた側と対向する側の側端縁には、第2カバー部5の閉位置にて下方に突出する係止片41が設けられている。係止片41の外側面には、上述した突起33と同様の突起(図示省略)が設けられている。第2カバー部5の閉位置では、係止片41が本体部2の係止孔18(
図1(a)を参照)に挿入され且つ突起(図示省略)が係止孔18の縁部と係合することで、第2カバー部5が閉位置に保持されるようになっている。
【0039】
第2カバー部5の内側面(電線束Wと対向する面)の係止片41及び第2ヒンジ部16で挟まれる箇所には、本体部2の一対の係止突起22に対応するように、一対の係止突起42が設けられている(
図2(a)を参照)。第2カバー部5の閉位置では、一対の係止突起22と一対の係止突起42とが、コルゲートチューブCCを挟むように保持することで、コルゲートチューブCCを、本体部2の他端13側の端部において、経路11の軸線方向において相対移動不能に係止するようになっている。
【0040】
次いで、第3カバー部6について説明する。第3カバー部6は、上述のように、第3ヒンジ部31を介して第1カバー部4と連結されている。第3カバー部6は、本体部2の中間箇所14における本体部2の上部開口を塞ぐことで、電線束Wを経路11内に保持するために設けられている。
【0041】
第3カバー部6の両側端縁には、(第1カバー部4の閉位置、且つ)第3カバー部6の閉位置にて下方に突出する一対の係止片51が設けられている。各係止片51の外側面には突起52がそれぞれ設けられている。(第1カバー部4の閉位置、且つ)第3カバー部6の閉位置では、一対の係止片51が本体部2の一対の係止孔19に挿入され且つ一対の突起52が一対の係止孔19の縁部と係合することで、第3カバー部6が閉位置に保持されるようになっている。以上、カバー部3について説明した。
【0042】
次いで、
図3〜
図6を参照しながら、プロテクタ1を電線束Wに組み付ける際の手順について説明する。
図3に示すように、電線束Wには、電線束Wの外周を覆うようにコルゲートチューブCCが取り付けられている。但し、電線束Wの軸線方向の所定範囲に亘ってコルゲートチューブCCが設けられていない領域があり、その領域では電線束Wが露出している。
【0043】
先ず、
図3に白矢印で示すように、カバー部3が開位置にあるプロテクタ1の経路11の全域に亘って、電線束Wを、電線束Wの露出部分が経路11の両端部を除いた部分に位置するように嵌め込む。これにより、
図4に示すように、電線束Wの露出部分の両側に位置するコルゲートチューブCCのそれぞれの端部が、本体部2の一端12側の係止突起群21の上と他端13側の係止突起群21の上とにそれぞれ載置される。
【0044】
次いで、
図5に白矢印で示すように、第1カバー部4及び第2カバー部5を開位置から閉位置まで移動(回動)させる。このとき、第1カバー部4及び第2カバー部5のうち一方を開位置から閉位置まで移動させた後に他方を開位置から閉位置まで移動させてもよいし、第1カバー部4及び第2カバー部5の双方を同時に開位置から閉位置まで移動させてもよい。
【0045】
これにより、第1カバー部4の係止片32が本体部2の係止孔17に挿入され且つ突起33が係止孔17の縁部と係合することで、第1カバー部4が閉位置に保持される。同様に、第2カバー部5の係止片41が本体部2の係止孔18に挿入され且つ係止片41に設けられた突起(図示省略)が係止孔18の縁部と係合することで、第2カバー部5が閉位置に保持される。その結果、第1カバー部4及び第2カバー部5によって経路11の一端12と他端13とに対応する部分(U字状溝の開口)が覆われ、経路11の両端において電線束Wが本体部2から離れる(浮き上がる)ことが抑制される。
【0046】
更に、電線束Wの露出部分の両側に位置するコルゲートチューブCCのうち、一方の端部が本体部2の一端12側の係止突起群21と第1カバー部4の一対の係止突起34とで挟まれ、且つ、他方の端部が本体部2の他端13側の係止突起群21と第2カバー部5の一対の係止突起42とで挟まれることで、双方のコルゲートチューブCCが、経路11の軸線方向において相対移動不能に係止される。
【0047】
その後、
図6に白矢印で示すように、第3カバー部6を開位置から閉位置まで移動させる。これにより、第3カバー部6の一対の係止片51が本体部2の一対の係止孔19に挿入され且つ一対の突起52が一対の係止孔19の縁部と係合することで、第3カバー部6が閉位置に保持される。その結果、本体部2が立体的形状を有することから電線束Wが本体部2から特に離れやすい中間箇所14を、第3カバー部6によって覆うことにより、中間箇所14において電線束Wが本体部2から離れる(浮き上がる)ことが抑制される。更に、このような組み付けの作業にあたり、作業者は、第1カバー部4及び第2カバー部5を本体部2に取り付けた後、第1カバー部4から手を離すことなく速やかに第3カバー部6を本体部2に取り付けることができる。
【0048】
以上により、プロテクタ1の電線束Wへの組み付けが完了し、プロテクタ付きのワイヤハーネスWHが製造される。このように、プロテクタ1の電線束Wへの組み付けが完了した後、本体部2の固定部24を車両の車体フレームの所定箇所に固定することにより、ワイヤハーネスWHが車体に配索される。
【0049】
以上、本発明の実施形態に係るプロテクタ1、及び、ワイヤハーネスWHの製造方法によれば、プロテクタ1が画成する経路11(組付方向に窪んだ溝)にワイヤハーネスWHを構成する電線束Wを収容した後、第1カバー部4および第2カバー部5によって経路11の一端12と他端13とに対応する部分(溝の開口)を覆うことにより、経路11の両端(一端12及び他端13)において電線束Wが本体部2から離れることが抑制される。更に、このような状態にて、本体部2が立体的形状を有することから電線束Wが本体部2から特に離れやすい中間箇所14を、第3カバー部6によって覆うことにより、中間箇所14において電線束Wが本体部2から離れることが抑制される。
【0050】
ここで、第3カバー部6は、第1カバー部4に第1ヒンジ部15を介して回動可能に繋がっているため、第1カバー部4および第2カバー部5によって経路11の両端(一端12及び他端13)に対応する部分を覆う作業と、第3カバー部6によって経路11の中間箇所14に対応する部分を覆う作業と、を滞りなく連続して実行できる。
【0051】
したがって、本構成のプロテクタ1によれば、ワイヤハーネスWHを構成する電線束Wに対してプロテクタ1を組み付ける際の作業性を向上できる。更に、上述した従来のプロテクタのように本体部2と電線束Wとをテープによって巻き束ねることもないため、仮に電線束Wからプロテクタ1を取り外すことになった場合であっても、容易に取り外しを実行できる。
【0052】
更に、第1カバー部4および第2カバー部5が本体部2に、第1ヒンジ部15および第2ヒンジ部16を介してそれぞれ繋がっているため、本体部2の経路11に電線束Wを収容した後、第1カバー部4および第2カバー部5を回動させるだけで、経路11の両端(一端12及び他端13)に対応する部分(溝の開口)を覆うことができる。これにより、プロテクタ1を組み付ける作業性を向上できる。
【0053】
更に、本体部2に設けた係止突起群21によって、電線束Wの外周を覆うコルゲートチューブCCを係止することにより、コルゲートチューブCC及び電線束Wが経路11の軸線方向に移動すること(軸線方向の位置ズレ)を抑制できる。具体的には、係止突起群21が、第1カバー部4および第2カバー部5に対応する位置にそれぞれ設けられている。よって、第1カバー部4および第2カバー部5によって経路11の両端(一端12及び他端13)に対応する部分を覆ったとき、それら箇所においてコルゲートチューブCCの位置ズレを抑制できる。これにより、例えば、経路11の両端(一端12及び他端13)が覆われた後に電線束Wが本体部2の外部から内部に向けて押し込まれ、経路11の中間箇所14において電線束Wが経路11から離れることを抑制できる。よって、プロテクタ1を組み付ける作業性を向上できる。
【0054】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0055】
例えば、上記実施形態では、第3カバー部6が第1カバー部4に相対変位可能に繋がっている。これに対し、第3カバー部6が第2カバー部5に相対変位可能に繋がっていてもよい。また、上記実施形態では、第1カバー部4及び第2カバー部5が本体部2に相対変位可能に繋がっている。これに対し、第1カバー部4及び第2カバー部5が本体部2に繋がっていなくてもよい。
【0056】
更に、上記実施形態では、係止突起群21が、第1カバー部4および第2カバー部5に対応する位置にそれぞれ設けられている。これに対し、係止突起群21が、第1カバー部4および第2カバー部5の何れか一方に対応する位置にのみ設けられていてもよいし、係止突起群21が本体部2に設けられていなくてもよい。
【0057】
ここで、上述した本発明に係るプロテクタ1、及び、ワイヤハーネスWHの製造方法の特徴をそれぞれ以下(1)〜(4)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
ワイヤハーネス(WH)を構成する電線(W)が通過可能な経路(11)を画成する本体部(2)と、前記電線(W)を前記経路(11)の中に保持するための複数のカバー部(3)と、を備えた、ワイヤハーネス用のプロテクタ(1)であって、
前記本体部(2)は、
前記経路(11)に沿って延び且つ該本体部(2)への前記ワイヤハーネス(WH)の組付方向に窪んだ溝によって前記経路(11)を画成すると共に、前記経路(11)の一端(12)、前記経路(11)の他端(13)、及び、前記一端(12)と前記他端(13)との間の前記経路(11)の中間箇所(14)のうちの一つが他の二つに比べて前記組付方向において異なる位置にある立体的形状を有し、
前記複数のカバー部(3)は、
前記一端(12)にて前記溝の開口を覆って前記電線(W)を保持する第1カバー部(4)と、前記他端(13)にて前記開口を覆って前記電線(W)を保持する第2カバー部(5)と、前記第1カバー部(4)及び前記第2カバー部(5)の一方に相対変位可能に繋がると共に前記中間箇所(14)にて前記開口を覆って前記電線(W)を保持する第3カバー部(6)と、を有する、
ワイヤハーネス用のプロテクタ。
(2)
上記(1)に記載のプロテクタにおいて、
前記第1カバー部(4)は、
前記本体部(2)の前記一端(12)に対応する位置に相対変位可能に繋がり、
前記第2カバー部(5)は、
前記本体部(2)の前記他端(13)に対応する位置に相対変位可能に繋がる、
ワイヤハーネス用のプロテクタ。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のプロテクタ(1)において、
前記本体部(2)は、
前記電線(W)の外周を覆うように装着されるコルゲートチューブ(CC)を前記経路(11)の軸線方向において相対移動不能に係止する係止突起(21)を、前記経路(11)の少なくとも一部に有する、
ワイヤハーネス用のプロテクタ(1)。
(4)
ワイヤハーネス(WH)を構成する電線(W)に対してプロテクタ(1)が組み付けられたワイヤハーネスの製造方法であって、
前記プロテクタ(1)は、
前記電線(W)が通過可能な経路(11)を画成する本体部(2)であって、前記経路(11)に沿って延び且つ該本体部(2)への前記ワイヤハーネス(WH)の組付方向に窪んだ溝によって前記経路(11)を画成すると共に、前記経路(11)の一端(12)、前記経路(11)の他端(13)、及び、前記一端(12)と前記他端(13)との間の前記経路(11)の中間箇所(14)のうちの一つが他の二つに比べて前記組付方向において異なる位置にある立体的形状を有する、本体部(2)と、
前記電線(W)を前記経路(11)の中に保持するための複数のカバー部(3)であって前記一端(12)にて前記溝の開口を覆って前記電線(W)を保持する第1カバー部(4)と、前記他端(13)にて前記開口を覆って前記電線(W)を保持する第2カバー部(5)と、前記第1カバー部(4)及び前記第2カバー部(5)の一方に相対変位可能に繋がると共に前記中間箇所(14)にて前記開口を覆って前記電線(W)を保持する第3カバー部(6)と、を含む、複数のカバー部(3)と、を有し
該製造方法は、
前記複数のカバー部(3)によって前記開口が覆われていない状態にて、前記経路(11)の中に前記電線(W)を収容する工程と、
前記第1カバー部(4)によって前記開口の前記一端(12)に対応する部分を覆うように、前記第1カバー部(4)を前記本体部(2)に組み付ける工程と、
前記第2カバー部(5)によって前記開口の前記他端(13)に対応する部分を覆うように、前記第2カバー部(5)を前記本体部(2)に組み付ける工程と、
前記第1カバー部(4)及び前記第2カバー部(5)を前記本体部(2)に組み付けた後、前記第3カバー部(6)によって前記開口の前記中間箇所(14)に対応する部分を覆うように前記第3カバー部(6)を前記本体部(2)に組み付ける工程と、を備えた、
ワイヤハーネスの製造方法。