(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762293
(24)【登録日】2020年9月10日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】光学的バイタルサインセンサ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20200917BHJP
A61B 5/0295 20060101ALI20200917BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20200917BHJP
G01N 21/49 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
A61B5/02 310B
A61B5/0295
A61B5/0245 B
A61B5/0245 100B
G01N21/49 Z
A61B5/02ZDM
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-514855(P2017-514855)
(86)(22)【出願日】2015年9月14日
(65)【公表番号】特表2017-534325(P2017-534325A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2015070911
(87)【国際公開番号】WO2016050486
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年8月31日
(31)【優先権主張番号】14187495.8
(32)【優先日】2014年10月2日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ポーリッセン エルヴィラ ヨハーナ マリア
(72)【発明者】
【氏名】コルネリッセン ヒューゴ ヨハン
【審査官】
亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−192316(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/139030(WO,A1)
【文献】
特開2004−229920(JP,A)
【文献】
特開2011−147746(JP,A)
【文献】
特開2001−061796(JP,A)
【文献】
特開2004−000467(JP,A)
【文献】
特開2006−130208(JP,A)
【文献】
特開2013−000158(JP,A)
【文献】
特開2005−270544(JP,A)
【文献】
特開2009−213833(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0097221(US,A1)
【文献】
米国特許第06745061(US,B1)
【文献】
国際公開第2009/030934(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 − 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザのバイタルサインを測定又は決定する光学的バイタルサインセンサにおいて、前記光学的バイタルサインセンサは、
ユーザの皮膚上に直接的に配置される接触面を持つハウジングと、
入射角の角度範囲を持つ光ビームを生成する少なくとも1つの光源であって、前記光ビームが、前記接触面を介して放射され、前記ユーザの皮膚に向けられる、当該少なくとも1つの光源と、
前記接触面を介して直接的に光を検出する少なくとも1つの光検出器ユニットであって、前記光が、前記ユーザの皮膚内の又はからの前記少なくとも1つの光源からの前記光ビームの反射を示し、前記少なくとも1つの光源及び前記少なくとも1つの光検出器ユニットが、間に距離を空けて前記ハウジング内で互いの近傍に配置される、当該少なくとも1つの光検出器ユニットと、
前記少なくとも1つの光源と前記接触面との間に配置され、前記接触面に対する入射角の角度範囲を−20°と+20°との間に制限することにより前記少なくとも1つの光源の前記光ビームを成形する光成形ユニットと、
を有するフォトプレチスモグラフィセンサを有し、
前記光成形ユニットが、−20°より小さく、+20°より大きい入射角度を持つ光ビームを反射又は方向転換することにより透過させず、−20°と+20°との間の入射角度を持つ光を透過させる光学フィルムを有する、
光学的バイタルサインセンサ。
【請求項2】
前記光成形ユニットが、大きな角度を持つ光をリサイクルする拡散チャンバを有する、請求項1に記載の光学的バイタルサインセンサ。
【請求項3】
前記光成形ユニットが、前記少なくとも1つの光源と前記少なくとも1つの光検出器ユニットとの間に鏡側面を持つ分離壁を有する、請求項1に記載の光学的バイタルサインセンサ。
【請求項4】
前記光成形ユニットが、光屈折ユニットを持つ、請求項1に記載の光学的バイタルサインセンサ。
【請求項5】
前記光成形ユニットが、光コリメーション板を有する、請求項1に記載の光学的バイタルサインセンサ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光源が、側面発光ダイオードを有し、前記少なくとも1つの光検出器ユニットが、第1の端部において前記少なくとも1つの光源に結合された光輸送ユニットを有し、前記光輸送ユニットの遠位端は、前記光輸送ユニットを通る光が前記ユーザの皮膚に向かって反射されるような傾斜を有する、請求項1に記載の光学的バイタルサインセンサ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの光源が、複数の発光ダイオードを有し、前記少なくとも1つの光検出器ユニットが、角度選択フィルム、拡散器フィルム又は方向転換フィルムを有する、請求項1に記載の光学的バイタルサインセンサ。
【請求項8】
前記光学的バイタルサインセンサが、ウェアラブルデバイス又は手首デバイスである、請求項1に記載の光学的バイタルサインセンサ。
【請求項9】
ユーザのバイタルサインを測定又は決定する方法において、
フォトプレチスモグラフィセンサのハウジングの接触面をユーザの皮膚に対して配置するステップと、
前記フォトプレチスモグラフィセンサ内の少なくとも1つの光源により入射角の角度範囲を持つ光ビームを生成するステップと、
前記接触面により前記光ビームを前記ユーザの皮膚に向けるステップと、
前記接触面を介して直接的に光を検出するステップであって、前記光が、前記フォトプレチスモグラフィセンサの前記ハウジング内の少なくとも1つの光検出器ユニットにより前記ユーザの皮膚内の又はからの前記少なくとも1つの光源からの前記光ビームの反射を示し、前記少なくとも1つの光源及び前記少なくとも1つの光検出器ユニットが、間に距離を空けて前記ハウジング内で互いの近傍に配置される、ステップと、
前記少なくとも1つの光源と前記ハウジングの前記接触面との間に配置された光成形ユニットを用いて前記入射角の角度範囲を−20度と+20°との間に制限することにより前記光成形ユニットにおいて前記少なくとも1つの光源の前記光ビームを成形するステップと、
を有し、
前記光成形ユニットが、−20°より小さく、+20°より大きい入射角度を持つ光ビームを反射又は方向転換することにより透過させず、−20°と+20°との間の入射角度を持つ光を透過させる光学フィルムを有する、
方法。
【請求項10】
請求項1に記載の光学的バイタルサインセンサを制御するコンピュータ上で実行される場合に、前記光学的バイタルサインセンサに、請求項9に記載のユーザのバイタルサインを測定又は決定する方法のステップを実行させるコンピュータプログラムコード手段を記憶するコンピュータ可読メモリを有するコンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザのバイタルサインを監視する光学的バイタルサインセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
光学的心拍センサは、ユーザの心拍のようなバイタルサインを監視又は検出することがよく知られている。このような心拍センサは、フォトプレチスモグラフィ(PPG)センサに基づくことができ、容積器官測定値を取得するのに使用されることができる。パルスオキシメータを用いて、人間の皮膚の光吸収の変化が検出され、これらの測定に基づいて、ユーザの心拍又は他のバイタルサインが決定されることができる。PPGセンサは、ユーザの皮膚内に光を放射する発光ダイオード(LED)のような光源を有する。放射された光は、皮膚において散乱され、血液により少なくとも部分的に吸収される。光の一部は、皮膚を出て、フォトダイオードにより捕捉されることができる。フォトダイオードにより捕捉される光の量は、ユーザの皮膚内の血液容積の指標であることができる。PPGセンサは、特定の波長における吸収測定により真皮又は皮膚の皮下組織における血流を監視することができる。血液容積が鼓動する心臓により変化される場合、ユーザの皮膚から戻る散乱光も変化する。したがって、フォトダイオードを用いて検出光信号を監視することにより、皮膚におけるユーザの脈拍、結果として心拍が、決定されることができる。
【0003】
図1は、心拍センサの動作原理の基本的な表現を示す。
図1において、心拍センサが、ユーザの腕に配置されている。心拍センサ100は、光源110及び光検出器120を有する。光源110は、ユーザの皮膚1000上に又は内に光を放射する。前記光の一部は反射され、反射光は、光検出器120により検出されることができる。
【0004】
US2009/033937は、ユーザの皮膚に向けて第1の光を出力する光抽出ユニット及び皮膚から光検出器に向けて光をガイドする光結合パターンを持つ光ガイドパネルを持つ生体情報を測定するセンサを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、減少された組立高さ(building height)を持ちながら、ユーザのバイタルサインを効率的に検出することができる光学的バイタルサインセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、光学的バイタルサインセンサが提供される。前記光学的バイタルサインセンサは、ユーザのバイタルサインを測定又は決定するように構成される。前記光学的バイタルサインセンサは、ハウジングと、ユーザの皮膚上に直接的に配置される接触面と、入射角の角度範囲を持つ光ビームを生成するように構成された少なくとも1つの光源とを有するフォトプレチスモグラフィセンサPPGを有する。前記光ビームは、前記接触面を介してユーザの皮膚に向けられる。更に、少なくとも1つの光検出器ユニットは、前記ユーザの皮膚からの又は前記皮膚内の前記少なくとも1つの光源からの前記光ビームの反射を示す光を検出するように構成される。前記少なくとも1つの光源及び前記少なくとも1つの光検出器ユニットは、前記ハウジング内で互いの近傍に配置される。前記少なくとも1つの光源と前記少なくとも1つの光検出器ユニットとの間に距離が存在する。前記バイタルサインセンサは、更に、前記光源と前記接触面との間に配置され、前記少なくとも1つの光源からの前記光ビームを成形するように構成される少なくとも1つの光成形ユニットを有する。これは、前記入射角の角度範囲を20°以下に制限することにより実行されることができる。前記光成形ユニットは、角度範囲を制限するように前記光ビームを成形、方向付け、制御又は管理するユニットである。
【0007】
本発明の一態様によると、前記光成形ユニットは、大きな角度を持つ光ビームを反射又は方向転換し、小さな入射角を持つ光を透過することができる光学フィルムを有する。
【0008】
本発明の他の態様によると、前記光成形ユニットは、大きな入射角を持つ光をリサイクルするように構成される拡散チャンバを有する。
【0009】
本発明の他の態様によると、前記光成形ユニットは、前記少なくとも1つの光源と前記少なくとも1つの光検出器ユニットとの間に鏡側面を持つ分離壁を有する。
【0010】
本発明の他の態様によると、前記光成形ユニットは、光屈折ユニットを有する。
【0011】
本発明の他の態様によると、前記光成形ユニットは、光コリメーション板を有する。
【0012】
本発明の他の態様によると、前記少なくとも1つの光源は、側面発光LEDを有する。前記少なくとも1つの光成形ユニットは、第1の端部で前記少なくとも1つの光源に結合される光輸送ユニットを有し、遠位端は、前記光輸送ユニットを通る光が前記ユーザの皮膚に向かって反射されるような傾斜を有する。
【0013】
本発明は、ユーザのバイタルサインを測定又は決定する方法にも関する。PPGセンサのハウジングの接触面は、ユーザの皮膚に対して直接的に配置される。入射角の角度範囲を持つ光ビームは、前記PPGセンサ内の少なくとも1つの光源により生成される。前記光ビームは、前記接触面により前記ユーザの皮膚に向けられ、前記ハウジング内の少なくとも1つの光検出器ユニットは、ユーザの皮膚内の又はからの、前記少なくとも1つの光源からの光ビームの反射を示す光を検出するように構成される。
【0014】
光成形ユニットは、前記光源と前記接触面との間に配置され、前記光源からの光を20°より小さい角度範囲に成形する。
【0015】
本発明の一態様によると、前記光学バイタルサインセンサを制御するコンピュータにより実行される場合に、前記光学バイタルサインセンサに、ユーザのバイタルサインを測定又は決定する前記方法のステップを実行させるコンピュータプログラムコード手段を記憶するコンピュータ可読メモリを有するコンピュータプログラムプロダクトが提供される。
【0016】
本発明の一態様によると、前記バイタルサインセンサは、LEDベースのPPGセンサであることができるバイタルサインセンサを有する。LEDの光は、前記ユーザの皮膚を貫通し、その一部は、光検出器に到達することができる。前記光検出器の出力は、血液体積分率並びに酸素化及び脱酸素化ヘモグロビンのような血液化合物を監視するのに使用されることができる。特に、LED光源からの光の吸収又は反射の量は、心拍及び血液体積分率又は血液化合物を決定するのに使用されることができる。心拍は、血液体積分率に関連する。更に、本発明によるPPGセンサは、したがって、ユーザのバイタルサインの非侵襲的測定を可能にする光学センサである。
【0017】
本発明の好適な実施例が、従属請求項又は上記の実施例若しくは態様とそれぞれの独立請求項との組み合わせであることができると理解されたい。
【0018】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例から明らかであり、これらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】バイタルサイン監視システムの動作原理の基本的な表現を示す。
【
図2】異なる入射角に対してシミュレートされた反射率を描くグラフを示す。
【
図3】異なる入射角及び異なる皮膚タイプに対して測定された反射率を描くグラフを示す。
【
図4】2つの異なる入射角におけるユーザの皮膚から反射された光を描くグラフを示す。
【
図5】本発明の一態様によるバイタルサインセンサの概略的な断面を示す。
【
図6】フォトダイオードにおける相対電力とビーム角度との間の関係を示すグラフを示す。
【
図7】光源の異なる距離におけるビーム角度の関数として相対DC電力の関数を描くグラフを示す。
【
図8A】本発明の一態様によるバイタルサインセンサの概略的表現を示す。
【
図8B】本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの概略的表現を示す。
【
図9】光源距離の関数として相対DC電力及びAC/DC信号を示すグラフを示す。
【
図10】入射角の関数として相対DC電力及びAC/DC信号を示すグラフを示す。
【
図11】本発明の一態様によるバイタルサインセンサにおける分離壁なしで入射角の関数として相対DC電力及びAC/DC信号を示すグラフを示す。
【
図12】光源距離の関数として相対DC電力及びAC/DC信号を示すグラフを示す。
【
図13】本発明の一態様によるバイタルサインセンサにおける分離壁あり及びなしで入射角の関数として相対DC電力及びAC/DC信号を示すグラフを示す。
【
図14A】本発明の一態様によるバイタルサインセンサにおけるビームパターンを示すグラフを示す。
【
図14B】負の方向を持つ入射角でバイタルサインセンサにおけるビームパターンを示す。
【
図15】本発明の一態様によるバイタルサインセンサの概略的表現を示す。
【
図16】本発明の一態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。
【
図17】本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。
【
図18】本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。
【
図19】本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。
【
図20】本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。
【
図21】本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一態様によると、フォトプレチスモグラフィPPGセンサに基づく光学的バイタルサインセンサが、提供される。このようなPPGセンサ100は、
図1に描かれ、接触面100aを持つハウジング101を有する。光源110は、ユーザの皮膚1000上に又は内に光を放射し、前記光の一部は反射され、この反射光は、光検出器120により検出されることができる。前記光検出器の出力は、ユーザの心拍又は他のバイタルサインを決定するように分析されることができる。センサ100の接触面100aは、前記ユーザの皮膚1000と直接的に接触して配置される。
【0021】
本発明の一態様によるPPGセンサ又は光学的バイタルサインセンサは、ウェアラブルデバイス又は(スマートウォッチのような)手首デバイスとして実施されることができる。
【0022】
図2は、ユーザの異なる皮膚におけるシミュレートされた反射率を持つグラフを示す。
図2において、異なる入射角αに対する全反射率Rが、3つの異なる皮膚タイプに対して描かれている。このシミュレーションは、450nmの単一波長に対して実行された。特に、3つの異なる皮膚タイプST1−ST3が、描かれている。第1の皮膚タイプST1は、1.3%のメラニン量を持つ明色皮膚である。第2の皮膚タイプST2は、4%のメラニン量を持つ色白の皮膚を示す。第3の皮膚タイプST3は、40%のメラニン量を持つ暗色皮膚を示す。
【0023】
図3は、異なる入射角及び異なる皮膚タイプに応じて測定された反射率を示すグラフを示す。
図3において、%で表される全反射率Rは、5つの異なる皮膚タイプST4−ST8に対して入射角αの関数として示される。前記皮膚タイプは、欧州人明色皮膚タイプST4、アジア人皮膚タイプST5、南欧州人皮膚タイプST6、欧州人皮膚タイプ(黒毛)ST7及びアフリカ人皮膚タイプST8を含む。
図3の測定は、450nmの中心波長で実行された。
図3において、入射角の関数としての測定された反射率は、異なる皮膚タイプ、特にフィッツパトリックスケールにおける皮膚タイプI乃至VIに対して描かれている。
【0024】
図2及び
図3から、反射率が、0°の垂直な入射角と比べて高い入射角(例えば>60°)に対して大幅に増大することが見られることができる。この大幅な増大の理由は、フレネル損失、すなわち皮膚表面における反射損失によるものである。
【0025】
図2によるシミュレートされた反射率及び
図3による測定された反射率に基づいて、光の約20乃至30%が、明色乃至白色皮膚タイプ、特に皮膚タイプI−IIIに対する垂直な入射角において反射されることが、明らかになる。更に、反射光の正反射成分は、70°のような大きな入射角に対して高い。したがって、拡散反射率は、全ての入射角において正反射率より大きい。
【0026】
図4は、2つの異なる入射角における皮膚からの反射光を描くグラフを示す。特に、
図1において、角度A[°]及び反射光の強度Iが、描かれている。
図4において、0°の入射角に対する反射光I0及び70°の入射角に対する反射光I70が、描かれている。
【0027】
図5は、本発明の一態様によるバイタルサインセンサの概略的な断面を示す。前記バイタルサインセンサは、光源110、光検出器120及び分離壁220を有する。オプションとして、前記分離壁は、前記光源を囲むことができる。分離壁220は、光源110を光検出器120から分離するのに使用される。これは、前記光源からの光が、ユーザの皮膚1000と相互作用することなしに前記フォトダイオードに直接的に到達することを防ぐために行われることができる。
図5は、可能なビーム経路を示すいくつかのビームパターンをも示す。
【0028】
図6は、異なるビーム角度に対する前記フォトダイオードにおける相対電力(relative power)の関係を示すグラフを示す。
図6において、ビーム半角BA及びフォトダイオードにおける相対電力RPが、描かれている。
図6から見られることができるように、フォトダイオードにおける電力RPは、20°のビーム半角が考慮される場合に(ガウス分布ビーム形状に対するシミュレーションに基づいて)ビーム半角の10°ごとに約2%減少している。
図4は、入射角ごとの反射率を示す。上で既に述べたように、皮膚におけるフレネル損失のため、前記フォトダイオードのDC電力は、ビーム角度の増大とともに減少する。
【0029】
図7は、皮膚に対する前記光源の異なる距離に対するビーム半角の関数としての相対DC電力を示すグラフを示す。特に、3つの距離D1−D3が描かれ、第1の距離D1は3.2mmに対応し、第2の距離D2は4.05mmに対応し、第3の距離D3は5.5mmに対応する。見られることができるように、前記光源と前記ダイオードとの間の距離は、相対DC電力RDCPに対する主要な影響を持つ。
【0030】
図8Aは、本発明の一態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。ここで、センサ100は、ハウジング101、接触面100a、並びに前記ハウジング内の光源100及びダイオード120を有する。光源110からの光は、前記ユーザの皮膚100に向けられ、反射光は、ダイオード120により検出されることができる。本発明のこの態様によると、光源110とダイオード120との間の距離は、変化されることができる。
【0031】
図8Bは、本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの概略的表現を示す。ここで、光源110からの光のビーム入射角αは、変化される。
【0032】
図9は、前記光源と前記フォトダイオードとの間の距離の関数として相対DC電力RDCPを示すグラフを示す。更に、AC電力とDC電力との間の関係も、前記光源と前記ダイオードとの間の距離Dの関数として描かれている。
【0033】
図10は、入射角の関数として相対DC電力RDCP間の関係並びにAC及びDCの間の関係を示すグラフを示す。
図10は、
図8Bによるビーム入射角の変化の結果を表す。
【0034】
図9及び
図10において、相対DC電力は、2つの異なる皮膚タイプに対して示され、AC/DCは、2つの異なる皮膚タイプに対して示される。
【0035】
図11は、ビーム入射角αに対する相対DC電力とAC/DC比との間の関係を示すグラフを示す。特に、
図11において、
図5に示されるような前記光源と前記フォトダイオードとの間の分離壁が除去される状況が示される。
【0036】
図10及び11のグラフ間の差は、
図10の状況において、分離壁が前記光源と前記光検出器との間に存在するのに対し、
図11において、前記分離壁がなくなっていることである。
図10及び11のグラフの比較により、AC/DC信号におけるビーム角度に対する効果が、見られることができる。
【0037】
図12は、前記光源と前記ダイオードとの間の距離の関数として相対DC電力及びDC/ACを描くグラフを示す。特に、
図12において、分離壁ありのDC信号DCW及び分離壁なしのDC信号DCNWが、描かれている。更に、壁ありのAC/DC信号ACDCW及び壁なしのAC/DC信号ACDCNWが、描かれている。
【0038】
図13は、入射角の関数として相対DC電力及びAC/DC信号を描くグラフを示す。特に、
図13において、相対DC電力は、壁ありDCW及びなしDCNWで示される。AC/DC信号も、壁ありACDCW及び壁なしACDCNWで示される。このグラフの全ての場合に対して、前記光源と前記フォトダイオードとの間の距離は、4.05mmである。
【0039】
図9乃至13に示される測定結果によると、相対DC電力とAC/DC信号との間に関係が存在する。出力信号の1つの重要な特性は、変調信号である。前記変調信号は、DC成分に対するAC成分の比に関する。変調AC/DC信号は、皮膚の固有特性に関連するので、重要である。これは、1回の心拍における血液体積分率の変化のピーク間値をカバーする(AC信号)が、低反射率がLED電力ブーストで補償されることができるので知ることが重要である皮膚依存反射率(DC成分)をもカバーし、同じ変調信号を維持する。
【0040】
特に、AC/DC信号は、DC信号が増大する場合に減少する。分離壁が、前記光源と前記フォトダイオードとの間に存在しない場合、この関係は、>0°のビーム角度に対して有効である。更に、前記光源と前記ダイオードとの間の距離が増大する場合、これは、AC/DC信号の増大をももたらす。前記ビーム角度が増大する場合、前記DC信号は、50°まで増大し、より大きな角度に対して減少し始める。これは、おそらく、皮膚表面におけるフレネル損失によるものである。
図13から見られることができるように、45°より上のビーム入射角及び前記光源と前記フォトダイオードとの間の小さな距離(例えば4mm以下)は、避けられるべきである。
【0041】
更に、上の図面に見られることができるように、最適なAC/DC信号を得るために、ビーム入射角は、適合されることができる。
【0042】
図14A及び14Bは、正の方向における45°の入射角及び負の方向における45°の入射角を示す。
図14A及び14Bから見られるように、2つの完全な異なる変調信号が得られる。
【0043】
更に注意すべきは、前記変調信号、すなわち、前記AC/DC信号は、ビームパターン及び入射角に対して高感度であることである。前記光源と前記フォトダイオードとの間の距離が大きいほど、入射角に関する感度は低くなる。更に、本発明の一態様によると、45°より大きい入射角は、避けられるべきであり、0°周辺の小さなビーム角度及び前記フォトダイオードとは反対方向を指すビーム角度も、使用されることができる。本発明の一態様によると、改良されたPPG信号は、前記光源のビーム角度の大きさが20°より小さい場合に得られることができる。
【0044】
図15は、本発明の一態様によるバイタルサインセンサの概略的表現を示す。バイタルサインセンサ100は、PPG心拍センサとして実施されることができ、ハウジング101と、接触面100aと、少なくとも1つの光源110と、光検出器120とを有することができる。光源110及び少なくとも1つの光検出器120は、共通ベース材料(mutual base material)130上に構成されることができる。光源110は、例えば、発光ダイオードLEDとして実施されることができる。更に、前記バイタルサインセンサは、少なくとも1つの光源110からの光111をガイド、成形又は方向付け若しくは方向転換するように機能する光成形手段200を有する。光成形ユニット200は、少なくとも1つの光源110により放射された光111のビームプロファイルを成形するのに使用されることもできる。特に、前記成形ユニットは、20°より小さい入射角を持つように光又は光ビーム111をガイドするように適合される。有利には、入射角の範囲は、−20°乃至+20°である。これは、改良された変調信号、すなわち、AC/DC信号をもたらす。
【0045】
図15において、成形ユニット200は、上板211を持つ拡散チャンバ210により実施され、上板211は、少なくとも1つの光源110からの光111が小さな入射角を持つ場合には光111を透過するように構成され、より大きな入射角を持つ光は、前記拡散チャンバにより反射又は方向転換される。前記上板は、(小さな角度を透過し、大きな角度を反射する)角度選択フィルム又は方向転換フィルムである。したがって、拡散チャンバ210は、入射角が小さい場合にこのような光ビームが透過される又は通過することのみを可能にする。実際に、拡散チャンバ210は、混合チャンバとして機能することができ、少なくとも1つの光源110からの光111の一部をリサイクルするのに使用される。
【0046】
図16は、本発明の一態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。
図16によるバイタルサインセンサは、実質的に
図15によるバイタルサインセンサに対応する。したがって、前記バイタルサインセンサは、光成形ユニット200をも有する。
図16による本発明の態様において、光成形ユニット200は、分離壁220として実施され、前記分離壁は、光ユニット110に向けた側面である鏡側面221を有する。少なくとも1つのフォトダイオードと少なくとも1つの光源110との間に配置された分離壁220を用いて、前記光源からの光又は光ビーム111は、前記ユーザの皮膚1000に到達する光が−60°乃至+20°、特に−20°乃至+20°の入射角を持つようにガイドされる。分離壁220の鏡側面221を用いて、光111は、負の方向においてフォトダイオード120を指す、すなわち、フォトダイオード120から離れる方向を指すように方向転換される。
【0047】
図17は、本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。
図17による本発明の態様によるバイタルサインセンサは、実質的に
図15又は16によるバイタルサインセンサに対応する。したがって、バイタルサインセンサ100は、少なくとも1つの光源110と、少なくとも1つの光検出器120と、少なくとも1つの光源110からの光11をガイド又は成形する光成形ユニット200とを有する。オプションとして、少なくとも1つの光源110及び少なくとも1つの光検出器120は、共通ベース材料130上に配置されることができる。
図17による態様において、光成形ユニット200は、光屈折ユニット230を有する。このような光屈折ユニット230は、例えば、フレネルレンズであることができる。ここで、大きな角度を持つ少なくとも1つの光源110からのいかなる光111も、屈折され、光屈折ユニット230の特性に基づいて方向転換されることができる。したがって、前記ユーザの皮膚1000に入る少なくとも1つの光源110からの光111の入射角の範囲が、−60°乃至+20°、特に−20°乃至+20°の範囲内であることが、保証されることができる。
【0048】
図18は、本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。
図18の本発明の態様によるバイタルサインセンサは、実質的に
図15、16又は17によるバイタルサインセンサに対応し、したがって、少なくとも1つの光源110及びフォトダイオード120を有する。加えて、光成形ユニット200は、ユーザの皮膚1000に入る光が特定の範囲の入射角、例えば、−60°乃至+20°を持つことを保証するために設けられる。
図18の態様によると、これは、光コリメーション板として実施される光成形ユニット200により達成される。光コリメーション板240は、少なくとも1つの光源110の前に配置され、前記少なくとも1つの光源からの光111は、前記ユーザの皮膚に入る光の入射角が、特定の範囲の入射角、特に−60°乃至+20°内であるように光コリメーション板240において反射される。
【0049】
図19は、本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。コリメーション板240が、混合ボックス241と一緒に使用される。コリメーション板240は、複合放物線集線装置形状(compound parabolic concentrator-shape)243を持つことができる複数の凹部242を有する。
【0050】
図20は、本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。
図20による本発明の態様によるバイタルサインセンサは、少なくとも1つの光源110と、少なくとも1つのフォトダイオード120と、少なくとも1つのライトガイド200とを有する。本発明のこの態様によると、ライトガイド200は、少なくとも1つの光源110と少なくとも1つのフォトダイオード120との間に配置される。ライトガイド200は、前記少なくとも1つの光源(例えば側面発光体として実施されるLED)からの光を少なくとも1つのフォトダイオード120に向けて輸送することができる光輸送ユニットとして実施される。光輸送ユニット250の遠位端は、少なくとも1つの光源110からの光111がユーザの皮膚1000に向けて方向転換されるような傾斜251を持つ。このようなライトガイドユニット200を用いて、フォトダイオード120とライトガイドユニット250の出力端との間の距離は、大幅に減少されることができ、低い組立高さを持つ平坦な設計が可能である。
【0051】
図21は、本発明の他の態様によるバイタルサインセンサの基本的な表現を示す。前記バイタルサインセンサは、少なくとも1つの光源110、光検出器120、及び光源110と前記ユーザの皮膚1000との間に配置される光成形ユニット200を有することができる。光成形ユニット200は、光学的角度選択フォイル260として実施されることができる。角度選択光学フォイル260は、選択された角度範囲内で光が透過することを可能にすることができる。代わりに、前記ライトガイドユニットは、光学ホログラフィック光成形拡散器又は方向転換フィルムDTFを用いて実施されることもできる。
【0052】
光成形ユニット200は、前記光源からの光ビームの角度範囲が限定又は制限されるように前記光ビームを成形、方向付け、方向転換、制御又は管理するのに使用される。したがって、前記光成形ユニットは、光方向付け又は方向転換ユニット、光制御ユニット又は光管理ユニットと見なされることができる。
【0053】
開示された実施例の他の変形例は、図面、開示及び添付の請求項の検討から請求された発明を実施する当業者により理解及び達成されることができる。
【0054】
請求項において、単語「有する」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「ある」は、複数を除外しない。
【0055】
単一のユニット又は装置は、請求項に記載された複数のアイテムの機能を満たしてもよい。特定の方策が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は一部として提供される、光記憶媒体又は半導体媒体のような適切な記憶媒体において記憶/分配されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介するような他の形式で分配されてもよい。
【0056】
請求項内のいかなる参照符号も、範囲を限定すると解釈されるべきではない。