(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762310
(24)【登録日】2020年9月10日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】オフロード実用車用の予測的シャーシ制御のためのシステム
(51)【国際特許分類】
B60G 17/0165 20060101AFI20200917BHJP
B60G 17/015 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
B60G17/0165
B60G17/015 B
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-544696(P2017-544696)
(86)(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公表番号】特表2018-509330(P2018-509330A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2016055852
(87)【国際公開番号】WO2016150820
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年3月14日
(31)【優先権主張番号】102015205210.9
(32)【優先日】2015年3月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005165
【氏名又は名称】ディーア・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】ズワンズガー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ラン,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】フォン・ホルスト,クリスティアン
【審査官】
小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−161018(JP,A)
【文献】
特開2012−224338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/0165
B60G 17/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフロード実用車用の予測的シャーシ制御のためのシステムであって、減衰特性及び/又はサスペンション特性に関して制御可能である車輪ばねデバイス(16)と、走行される地表面(64)の状態により前記車輪ばねデバイス(16)に作用する外乱(66)の力のプロフィル(F(t))を確認するためのセンサ手段(54)と、関連する位置データの形態で前記オフロード実用車の現在のジオポジションを確認するためのナビゲーション手段(60)と、前記外乱(66)によってもたらされた前記力のプロフィル(F(t))又はそこから導出された量をそれに対応する前記位置データを含めて関連するデータ対として制御ユニット(50)が保存する、記憶ユニット(68)とを備え、前記制御ユニット(50)が、前記ナビゲーション手段(60)によって利用可能とされる前記オフロード実用車の現在のジオポジションと保存された位置データとの継続的な照合により前記外乱の新たな横断が差し迫っていることを検出し、前記車輪ばねデバイス(16)に対する前記外乱(66)の影響が少なくとも部分的に補償されるように、前記保存された力のプロフィル(F(t))に基づいて、又は、そこから導出された前記量に基づいて、前記車輪ばねデバイス(16)のパイロット制御により減衰特性及び/又はサスペンション特性を適応させ、
前記制御ユニット(50)が、所定の保存期間の満了に応じて前記記憶ユニット(68)に保存された前記データ対を消去し、
前記保存期間の可変の事前設定が、前記制御ユニット(50)により気象条件に応じて行われる、システム。
【請求項2】
前記導出された量が、前記各外乱(66)に割り当てられたカテゴリであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センサ手段(54)が、前記車輪ばねデバイス(16)の油圧ばねストラット(22)内に存在する作動圧力を捕捉するための圧力センサ(52)、及び/又は、前記車輪ばねデバイス(16)の領域において車両シャーシ(24)上に生じる垂直加速度を計測するための加速度センサであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ナビゲーション手段(60)が、人工衛星支援GPSナビゲーションシステム(58)であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニット(50)が、前記外乱(66)の新たな横断に応じて前記記憶ユニット(68)に保存された前記データ対を更新することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御ユニット(50)が、保存の目的のために前記データ対を中央データベース(72)にさらに送信すること、及び/又は、他のユーザにより前記中央データベース(72)に送信されたデータ対を受信することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記送信が、GSMネットワーク(78)を用いて無線方式で行われることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の予測的シャーシ制御のためのシステム(10)を含む、オフロード実用車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフロード実用車用の予測的シャーシ制御のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなタイプのシステムは、特に自動車部門から知られている。例えば、適応性のあるシャーシを備えた自動車両のハンドリングを最適化するためのシステムが、DE102012017118Aから明らかであり、DE102012017118Aでは、移動方向の前方に位置する車道表面の地形的プロフィルが、自動車両の起こり得る運動挙動を予測する目的のために捕捉され、シャーシの減衰挙動が、起こり得る運動挙動に基づいて、先を見据えて適応される。前方に位置する車道表面の捕捉は、画像センサ、例えばレーザスキャナ又はモノカメラ又はステレオカメラを使用することによって行われる。行われるべき画像処理の理由から、既知のシステムは、比較的大きな技術的努力を伴ってのみ実現され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、オフロード実用車用の予測的シャーシ制御のための簡易化されたシステムを明示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有するシステムによって達成される。
減衰特性及び/又はサスペンション特性に関して制御可能である車輪ばねデバイスに加えて、オフロード実用車用の予測的シャーシ制御のための本発明によるシステムは、走行される地表面の状態により車輪ばねデバイスに作用する外乱の力のプロフィルを確認するためのセンサ手段と、関連する位置データの形態でオフロード実用車の現在のジオポジション(geoposition)を確認するためのナビゲーション手段と、外乱によってもたらされた力のプロフィル又はそこから導出された量をそれに対応する位置データを含めて関連するデータ対として制御ユニットが保存する記憶ユニットと、を含み、制御ユニットは、ナビゲーション手段によって利用可能とされるオフロード実用車の現在のジオポジションと保存された位置データとの継続的な照合により外乱の新たな横断が差し迫っていることを検出し、車輪ばねデバイスに対する外乱の影響が少なくとも部分的に補償されるように、保存された力のプロフィルに基づいて、又は、そこから導出された量に基づいて、車輪ばねデバイスのパイロット制御により減衰特性及び/又はサスペンション特性を適応させる。
【0005】
本発明によるシステムは−例えば、農業部門にありがちな−田畑耕作の場合には多数の連続的な耕作ステップのために田畑又は周辺のアクセス経路及びアクセス領域の同一の地点が比較的短い時間間隔で繰返し通過されるという状況を利用する。したがって、データ対の保存は、外乱のマッピングを実行することを可能にし、かつ、車輪ばねデバイスの適切なパイロット制御により、乗り心地及びオフロード実用車の接地を改善することを可能にする。この場合、マッピングされた外乱は、最終的に、地面の不規則さ、起伏、溝、つぼ穴、などに関して、走行される地表面の状態又は質を表す。
【0006】
オフロード実用車は、例えば、合計2つの車輪ばねデバイスが設けられるように独立ホイールサスペンションを有する前車軸を備えた、農業用トラクタであり得る。2つの車輪ばねデバイスのそれぞれに対して、関連するデータ対の車輪固有の確認及び保存が行われ得る。これとは異なり、農業用トラクタはまた、自在旋回車軸(sprung swing axle)を示してもよく、その場合、データ対の確認は、車輪固有の態様ではなく、車軸本位の態様で行われる。
【0007】
車輪ばねデバイスは、従来の設計のものであって、油圧ばねストラットを含み、この油圧ばねストラットは、車両シャーシ又はスイングアクスルの車軸体に旋回可能に取り付けられたホイールサスペンションリンクと車両シャーシ上に設けられたリンキング点との間に延在する。油圧ピストンが、油圧ばねストラットによって包囲された油圧シリンダを、環状チャンバとピストンチャンバとに分割する。環状チャンバ及びピストンチャンバは、油圧ばねストラットの減衰特性が変更され得るように、その流れ抵抗に関して調整可能である絞り弁を介して、互いに連通する。圧力制御弁が、作動圧力の適応、したがって油圧ばねストラットのサスペンション特性の適応を、さらに可能にする。絞り弁及び圧力弁の両方が、電気的に制御可能な関連する調整要素を示し、この調整要素は、減衰特性及び/又はサスペンション特性を適応させる目的のために、油圧ばねストラットの流れ抵抗及び/又は作動圧力に制御ユニットが影響を与えることを可能にする。
【0008】
この点において、本発明によるシステムの使用は農業部門に制限されていないことが、留意されるべきである。むしろ、このシステムは、道路工事などにも同様に用いられ得る。
【0009】
本発明によるシステムの有利な実施態様は、従属請求項から明らかである。
導出量は、優先的には、それぞれの外乱に割り当てられたカテゴリである。外乱をカテゴリ化することにより、車輪ばねデバイスの駆動に関連するデータ処理のための尽力をさらに減少することが可能になり、これに関して、「不均一な地面での走行」、「起伏のある地面での走行」、「深い溝を越える走行」、「つぼ穴を越える高速走行」、「つぼ穴を越える低速走行」などのカテゴリが考えられる。これに関連して、特定のカテゴリの存在は、捕捉された力のプロフィルの振幅分析及び/周波数分析に基づいて、制御ユニットによって確認され得る。オフロード実用車の移動速度の評価は、関連する車輪速度センサによって捕捉された車輪速度の評価により、既知の態様で行われる。
【0010】
センサ手段は、優先的には、車輪ばねデバイスの油圧ばねストラット内に存在する作動圧力を捕捉するための圧力センサである。センサ手段によって捕捉された作動圧力から、制御ユニットは、油圧ばねストラットの既知のピストン断面積に基づいて、車輪ばねデバイスに作用する力と、その力の経時的なプロフィルとを確認する。
【0011】
この点において、力のプロフィルの確認は、車輪ばねデバイスに割り当てられた加速度センサを使用することによって行われてもよく、その場合、加速度センサは、車輪ばねデバイスの領域において車両シャーシ上に生じる垂直加速度を計測することが、留意されるべきである。
【0012】
さらに、ナビゲーション手段は、人工衛星支援GPSナビゲーションシステムであってもよい。GPSナビゲーションシステムによって利用可能とされる位置データの精度を向上させる目的のために、後者のシステムは、RTK(real−time kinematic、動的干渉測位)法に従って動作する、いわゆるリアルタイムナビゲーションシステムの形態をとることもできる。前述の方法の動作モードは、受信したGPS人工衛星信号のキャリア位相測定に基づき、それによりセンチメートル範囲内での精度を有する補正データが、例えば耕作すべき田畑の端に接地されている定置基準ステーションから、リアルタイムでGPSナビゲーションシステムに送信される。一般規則として、そのようなタイプのGPSナビゲーションシステムは、特に自律的なステアリングを有する農業用トラクタの場合に存在し、その結果、コスト効率の良いそれの併用が可能になる。
【0013】
これに関連して、所定の保存期間の満了に応じて制御ユニットが記憶ユニットに保存されたデータ対を消去する可能性も存在する。この目的のために、データ対には、制御ユニットによりタイムスタンプが与えられてもよく、タイムスタンプの設定により始まる保存期間は、その間に生じた走行される地表面の状態の著しい変化による車輪ばねデバイスの誤った駆動が大方除外され得るように、予め定められている。
【0014】
さらに、気象条件に応じた制御ユニットによる保存期間の可変の事前設定も考えられる。したがって、大雨、嵐、などのために走行される地表面の状態の著しい変化が予想される場合には、保存期間は適切に短縮されるべきである。この目的のために必要とされる気象データは、例えば、オフロード実用車に配置されたVHFラジオによって受信され、制御ユニットに利用可能とされ得る。
【0015】
さらに、又はその代わりに、制御ユニットは、特に、その間に生じた走行される地表面の状態の変化により車輪ばねデバイスに対する外乱の影響が不十分にしか補正されていないことを前述の制御ユニットが確証した場合に、外乱の新たな横断に応じて、記憶ユニットに保存されたデータ対を更新することができる。そのような状況であるかどうかは、外乱の新たな横断に応じてこの点に関して確認された力のプロフィルを評価することにより、制御ユニットによって検出される。
【0016】
制御ユニットは、保存する目的のためにデータ対を中央データベースにさらに送信することができ、その場合、送信されたデータ対は、マッピング化及び匿名化された形態でさらなるユーザに対して利用可能とされ得る。反対に、他のユーザにより中央データベースに送信されたデータ対の受信も考えられる。
【0017】
最も単純な事例では、送信は、制御ユニットがGSMインタフェースを介して中央データベースと通信する目的のために、GSMネットワークを用いて無線方式で行われ得る。
以下において、添付の図面に基づき、本発明によるシステムをより詳細に説明する。ただ1つの図は、オフロード実用車用の予測的シャーシ制御のための本発明によるシステムの例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
システム10は、詳細には示されていないオフロード実用車の一体的な部分であり、この事例では、オフロード実用車は、独立ホイールサスペンションを有する前車軸12を備えた農業用トラクタである。前車軸12は、操舵可能な前車輪14を示し、この前車輪14には、それらの減衰特性及び/又はサスペンション特性に関して制御可能である車輪ばねデバイス16が割り当てられる。明瞭性のために、車輪ばねデバイス16のうちの1つのみが、図に描写されている。このデバイスは、圧縮機18により、農業用トラクタの油圧システムの中央リザーバ20から油圧油を供給される。
【0019】
車輪ばねデバイス16は、従来の設計のものであって、油圧ばねストラット22を示し、この油圧ばねストラット22は、車両シャーシ24に旋回可能に取り付けられたホイールサスペンションリンク26と車両シャーシ24上に設けられたリンキング点28との間に延在する。
【0020】
油圧ピストン30が、油圧ばねストラット22によって包囲された油圧シリンダ32を、環状チャンバ34と、膜リザーバ36に接続されたピストンチャンバ38とに分割する。環状チャンバ34及びピストンチャンバ38は、その流れ抵抗に関して調整可能である絞り弁40を介して、互いに連通する。遮断中央位置を有する、4/3ウェイバルブ42の形態をとる圧力制御弁44が、作動圧力の適応をさらに可能にする。油圧ばねストラット22の流れ抵抗及び/又は作動圧力、したがって車輪ばねデバイス16の減衰特性及び/又はサスペンション特性が、制御ユニット50に影響され得るように、絞り弁40及び圧力制御弁44の両方が、電気的に制御可能な関連する調整要素46、48を示す。
【0021】
圧力センサ52の形態をとるセンサ手段54が、油圧ばねストラット22のピストンチャンバ38内に存在する作動圧力を捕捉するために機能する。センサ手段によって捕捉された動作圧力(operating pressure)から、制御ユニット50は、油圧ばねストラット22の既知のピストン断面積に基づいて、車輪ばねデバイス16に作用する力と、時間tにわたってのその力のプロフィルF(t)とを確認する。
【0022】
さらに、又はその代わりに、力のプロフィルF(t)の確認は、車輪ばねデバイス16に割り当てられた加速度センサ56を使用することによって行われ、その場合、加速度センサ56は、車輪ばねデバイス16の領域において車両シャーシ24上に生じる垂直加速度を計測する。
【0023】
さらに、人工衛星支援GPSナビゲーションシステム58の形態をとるナビゲーション手段60が存在する。このナビゲーション手段は、関連する位置データの形態で農業用トラクタの現在のジオポジションを確認するように機能する。
【0024】
GPSナビゲーションシステム58によって利用可能とされる位置データの精度を向上させる目的のために、前述のシステムは、RTK(動的干渉測位)法に従って動作する、いわゆるリアルタイムナビゲーションシステムの形態をとる。前述の方法の動作モードは、受信したGPS人工衛星信号のキャリア位相測定に基づき、それにより、センチメートル範囲内での精度を有する補正データが、例えば耕作すべき田畑の端に設置されている定置基準ステーション62から、リアルタイムでGPSナビゲーションシステム58に送信される。
【0025】
走行中の地表面64の状態に応じて関連する前車輪14を介して車輪ばねデバイス16に作用する外乱66により、油圧ばねストラット22のピストンチャンバ38内に存在する作動圧力の対応する一時的な変化、又は、車輪ばねデバイス16の領域において車両シャーシ24に生じる垂直加速度の対応する一時的な変化がもたらされる。そのようにして外乱66によってもたらされた力のプロフィルF(t)は、それに対応する位置データを含めて、制御ユニット50によりデータ対として記憶ユニット68に保存される。データ対の確認及び記憶は、これに関連して、2つの車輪ばねデバイス16のそれぞれに対して、車輪固有の態様で行われる。
【0026】
農業用トラクタが、独立ホイールサスペンションを有する前車軸12の代わりに自在旋回車軸を示す事例では、データ対の確認は、車輪固有の態様ではなく、車軸本位の態様で行われる。
【0027】
システム10の任意選択の構成によれば、確認された力のプロフィルF(t)の代わりに、制御ユニット50は、そこから導出された量を記憶ユニット68に保存する。導出量は、外乱66に割り当てられたカテゴリであり、これに関して、特に、「不均一な地面での走行」、「起伏のある地面での走行」、「深い溝を越える高速走行」、「つぼ穴を越える高速走行」、「つぼ穴を越える低速走行」のカテゴリが提供される。これに関連して、特定のカテゴリの存在は、確認された力のプロフィルF(t)の振幅分析及び/又は周波数分析に基づいて、制御ユニット50によって判定される。農業用トラクタの移動速度の評価は、関連する車輪速度センサ70によって捕捉された車輪速度の評価により、既知の態様で行われる。
【0028】
制御ユニット50が−GPSナビゲーションシステム58によって利用可能とされる農業用トラクタの現在のジオポジションと記憶ユニット68に保存された位置データとの継続的な照合により−外乱66の新たな横断が差し迫っていることを検出した場合、前述の制御ユニットは、車輪ばねデバイス16に対する外乱66の影響が少なくとも部分的に補償されるように、記憶ユニット68に保存された力のプロフィルF(t)に基づいて、又は、それに割り当てられたカテゴリに基づいて、2つの調整要素46、48のうちの少なくとも1つのパイロット制御により、車輪ばねデバイス16の減衰特性及び/又はサスペンション特性を適応させる。
【0029】
さらに、制御ユニット50は、前述のデータ対がマッピング化及び匿名化された形態でさらなるユーザ74、76に対して利用可能にされ得るように、保存する目的のためにデータ対を中央データベース72に送信する。送信は、制御ユニット50がGSMインタフェース80を介して中央データベース72と通信する目的のために、GSMネットワーク78を用いて無線方式で行われる。それと同時に、前述のデータベースは、他のユーザ74、76により中央データベース72に送信されたデータ対の受信を許容する。
【0030】
制御ユニット50は、所定の保存期間の満了に応じて、記憶ユニット68に保存されたデータ対を消去する。この目的のために、データ対には、制御ユニット50によりタイムスタンプが与えられる。タイムスタンプの設定により始まる保存期間は、その間に生じた走行される地表面64の状態の著しい変化による車輪ばねデバイス16の誤った駆動が大方除外され得るように、制御ユニット50によって予め定められる。これに関連して、保存期間は、数日の範囲内である。
【0031】
制御ユニット50による保存期間の事前設定は、可変的に行われる。したがって、保存期間は、大雨、嵐、などのために走行する地表面64の状態の著しい変化が予想される場合には、適切に短縮される。この目的のために必要とされる気象データは、農業用トラクタに配置されたVHFラジオ82によって受信され、制御ユニット50に利用可能とされる。
【0032】
さらに、制御ユニット50は、その間に生じた走行される地表面64の状態の変化のために車輪ばねデバイス16に対する外乱66の影響が不十分にしか補正されていないことを前述の制御ユニットが確証した場合に、外乱66の新たな横断に応じて、データ対を更新する。そのような状況であるかどうかは、外乱66の新たな横断に応じてこの点に関して確認された力のプロフィルF(t)を評価することにより、制御ユニット50によって検出される。それと同時に、そのようにして更新されたデータ対には、制御ユニット50により新たなタイムスタンプが与えられる。