特許第6762330号(P6762330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762330
(24)【登録日】2020年9月10日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】通信制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20200917BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20200917BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20200917BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20200917BHJP
   H04L 12/853 20130101ALI20200917BHJP
【FI】
   H04M11/00 302
   H04N7/18 D
   B66B3/00 U
   B66B3/00 T
   B66B5/00 E
   B66B5/00 G
   H04L12/853
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-36378(P2018-36378)
(22)【出願日】2018年3月1日
(65)【公開番号】特開2019-153868(P2019-153868A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2020年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魚谷 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】薛 祺
【審査官】 大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−197154(JP,A)
【文献】 特開2009−284254(JP,A)
【文献】 特開2008−105851(JP,A)
【文献】 特開2014−155150(JP,A)
【文献】 特開2015−46046(JP,A)
【文献】 特開2009−177441(JP,A)
【文献】 特開2005−94459(JP,A)
【文献】 特開平11−150711(JP,A)
【文献】 特開2005−162435(JP,A)
【文献】 特開2007−217138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 11/00
B66B 3/00
B66B 5/00
H04L 12/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網を介した昇降機と管制センターとの間の直話通信を、音声データによる通信とするか音声データと撮像データとによる通信とするかを制御する通信制御装置であって、
通信網の通信速度を計測する測定部と、
前記測定部によって測定される通信速度と、当該計測を行った日時の情報とを対応付けて保存する保存部と、
前記保存部に既に保存されている通信速度および日時の情報を取得し、当該通信速度と規定値とを比較し、前記通信速度が前記規定値以下である場合、前記日時の情報の属する時間区間では音声データによる直話通信となるよう指令する判定部と、
前記判定部からの前記指令に基づき、直話通信が発生した際の日時に応じて、音声データによる直話通信、もしくは音声データと撮像データとによる直話通信のいずれかを行う直話部と、
を有する通信制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信制御装置であって、
前記判定部は、前記通信速度が前記規定値を超える場合、前記日時の情報の属する時間区間では音声データと撮像データとによる直話通信となるように前記直話部に指令することを特徴とする通信制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信制御装置であって、
前記測定部は、前記昇降機と前記管制センターとの間で行われる他の通信を計測することで、前記通信網の通信速度を計測することを特徴とする通信制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の通信制御装置であって、
前記測定部は、前記昇降機が表示するコンテンツデータの通信、前記昇降機の稼働データの通信、前記昇降機と前記管制センターとの間の疎通を確認するデータの通信のいずれかを、前記他の通信として計測することを特徴とする通信制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の通信制御装置であって、
前記判定部は、同じ時間区間で継続して前記通信速度が前記規定値以下である場合、当該時間区間では音声データによる直話通信となるよう指令することを特徴とする通信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機と管制センターとの間の直話通信を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
施設内に設置されているエレベーターには、エレベーターを監視し、異常を検出するエレベーター監視装置が備えられている。このエレベーター監視装置が、異常による乗客の閉じ込めなどを検出すると、通信回線を経由して監視センター内に設置された監視センター装置に異常発報を行う。
【0003】
また異常が発生した際に、音声通話とともに、乗りかご内を撮像した撮像データおよびオペレータを撮像した撮像データを双方で送信し合い、乗りかご内に設置された液晶画面やオペレータが操作する端末のディスプレイに、相手方の状況を映像で表示するシステムもある。
【0004】
一方、昇降機と管制センターとの間の広域通信網は、回線の状況により通信速度が変化するため、通信が集中する時間帯では通信速度が低下し、音声の途切れが生じる可能性がある。そのため、通信速度が遅くなった場合、音声データの通信を優先的に行う必要がある。
【0005】
従来技術として、例えば特許文献1に記載のシステムがある。このシステムは、受信した音声パケットの受信間隔から遅延時間を求める。そしてこのシステムは、遅延時間が大きくて音声が途切れないように修復できないとき、その旨を相手端末に通知する。通知された相手端末は、音声以外のデータパケットの送信データ量を所定の割合減少させる。これにより、インターネット電話として接続されるエレベーターかご内のインターホンと監視センターの電話機との通信品質を良好に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−197154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のシステムでは、受信した音声パケットの受信間隔から遅延時間を求めていることから、一旦音声通信を開始し、その後の帯域計測結果に従って音声以外のデータパケットに対して帯域制御を行っている。すなわち特許文献1に記載のシステムでは、音声通信が開始された後に測定を行っているため、音声通信開始の時点での通信が不安定となる可能性がある。
【0008】
本発明は、回線混雑が生じている場合、音声データによる通話の途切れを低減させるとともに、音声通信開始の時点においても良好な音声通話を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、代表的な本発明の通信制御装置は、通信網を介した昇降機と管制センターとの間の直話通信を、音声データによる通信とするか音声データと撮像データとによる通信とするかを制御する通信制御装置であって、通信網の通信速度を計測する測定部と、前記測定部によって測定される通信速度と、当該計測を行った日時の情報とを対応付けて保存する保存部と、前記保存部に既に保存されている通信速度および日時の情報を取得し、当該通信速度と規定値とを比較し、前記通信速度が前記規定値以下である場合、前記日時の情報の属する時間区間では音声データによる直話通信となるよう指令する判定部と、前記判定部からの前記指令に基づき、直話通信が発生した際の日時に応じて、音声データによる直話通信、もしくは音声データと撮像データとによる直話通信のいずれかを行う直話部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
回線混雑が生じている場合において、音声通信開始の時点から音声データによる通話の途切れを低減させることができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るシステムの全体構成例を示す図である。
図2】実施形態に係る監視センター装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】実施形態に係るシステムの構成例を示すブロック図である。
図4】帯域測定結果保存部に保存されるデータ構成の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る動作例を示すフローチャートであり、時間帯ごとに動画を非表示にするかを設定するフローチャートである。
図6】実施形態に係る動作例を示すフローチャートであり、動画の非表示設定から表示設定に戻す際の動作例を示すフローチャートである。
図7】監視センター装置の直話部の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の通信制御装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、実施形態のシステムの全体構成を示す図である。図1において、エレベーター100(昇降機)は、昇降路1と、昇降路1内を上下方向に移動する、エレベーター利用者が乗車する乗りかご6とを有する。
【0014】
乗りかご6には、ニュースや天気予報などのコンテンツデータを表示するかご内液晶画面3と、緊急時に管制センター200と直接通話(以下、直話と称す)を行うための通話ボタン22とが設けられている。尚、かご内液晶画面3は、表示用の画面以外にも、音声を発するスピーカや乗りかご6内で発せられる音声を集音するマイクなども付属している。かご内液晶画面3の表示用画面、スピーカ、マイクは、管制センター200との直話の際にも用いられる。また乗りかご6内には、内部の状況を撮像する監視用カメラ51が設置されている。
【0015】
エレベーター100は、釣合い錘9、任意の位置に設置されるモーター10、モーター10に巻きかけられ、乗りかご6と釣合い錘9を懸架する主ロープ8を有する。
【0016】
エレベーター100は、制御盤2を有し、制御盤2は、エレベーター100の運行を制御するエレベーター制御装置13と、エレベーター100の異常監視を行うエレベーター監視装置12とを有する。エレベーター監視装置12は、広域通信網500を通して監視センター装置300と通信可能に接続しており、エレベーター100の機器の稼働データを定期的に収集して監視センター装置300に送信する。またエレベーター監視装置12は、エレベーター100で機器の故障を検出した場合や異常を検出した場合、管制センター200内の監視センター装置300までアラート発報の電文を送信する。
【0017】
また1階から4階の各乗り場には、それぞれ乗り場ドア4が設置されており、モーター10を正逆転させることで、乗りかご6が各階床を昇降駆動する。乗りかご6は、行き先階に応じて各階の停止位置を示す着床5で停止し、乗りかごドア7と着床した階の乗り場ドア4が開く。乗りかご6の昇降駆動は、乗りかご6内の図示しないかご呼びボタンで、行き先階を登録する、もしくは各階の乗り場に設けられた図示しない乗り場呼びボタンで、乗りかご6を呼び寄せることで行われる。
【0018】
監視センター装置300(通信制御装置)は、エレベーター100を遠隔から監視、制御する管制センター200内に設置されているコンピュータである。尚、管制センター200は、エレベーター100を遠隔で監視し、管理、制御するための施設であり、監視センター、統括センター、単にセンターなどと呼ばれる場合もある。
【0019】
監視センター装置300は、エレベーター監視装置12から送信される、エレベーター100の機器の稼働データを受信し、これを蓄積する。また監視センター装置300は、アラート情報を受信したり、乗りかご6内の通話ボタン22が押下されると、オペレータなどに通知する。
【0020】
通信装置11A、11Bは、ルータなどの通信機器である。通信装置11Aはエレベーター100の内部と外部との境界に位置し、通信装置11Bは管制センター200の内部と外部との境界に位置する。また広域通信網500は、エレベーター100側の通信装置11Aと管制センター200側の通信装置11Bとを接続した通信網である。
【0021】
図2は、監視センター装置300のハードウェア構成例を示す図である。
【0022】
監視センター装置300は、コントローラ101、入力デバイス110、出力デバイス111、カメラ121、ヘッドセット122を有する。コントローラ101は、監視センター装置300の内部で動作する各ハードウェアを制御する。コントローラ101は、以下の構成を有する。
【0023】
CPU102(CPU:Central Processing Unit)は、ROM104(ROM:Read only memory)やHDD105(HDD:Hard Disk Drive)に記憶されているプログラムを、RAM103(RAM:Random access memory)に展開し、演算実行する処理装置である。CPU102は、プログラムを演算実行することで、コントローラ101内部の各ハードウェアを統括的に制御する。RAM103は、揮発性メモリであり、CPU102が処理する際のワークメモリである。RAM103は、CPU102がプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。
【0024】
ROM104は、不揮発性メモリであり、監視センター装置300の起動の際にCPU102で実行されるBIOS(Basic Input-Output System)や、ファームウェアを記憶している。
【0025】
HDD105は、データを不揮発的に記憶する補助記憶装置である。HDD105は、CPU102が演算実行するプログラムや、制御データを記憶する。本実施形態では、以降に説明する各機能を提供するプログラムや各種データが事前に導入されている。
【0026】
ネットワークI/F106は、外部機器との間で行われるデータ通信の制御を担うインターフェイスボードであり、本実施形態では、エレベーター監視装置12との間のデータ通信の制御を担っている。
【0027】
入力I/F107は、入力デバイス110との間で信号の入出力を制御するインターフェイスである。出力I/F108は、CPU102から指示を受けて、出力デバイス111に画像を描画させる。
【0028】
入力デバイス110は、例えばキーボードやマウスなどであり、出力デバイス111は、平面モニターやディスプレイである。
【0029】
汎用I/F109は、USB(Universal Serial Bus)の規格に準拠したインターフェイスであり、カメラ121、ヘッドセット122と接続する。カメラ121は、周囲画像を撮像するためのイメージセンサを有する撮像部であり、ここではオペレータを撮像するものとする。ヘッドセット122は、オペレータの頭部に装着される、マイクおよびイヤホンが一体となったユニットである。
【0030】
尚、本実施形態の監視センター装置300は、オペレータが操作する操作端末の機能も含むものとして説明するが、操作端末を別途設けるシステム構成であっても構わない。
【0031】
図3は、本実施形態の構成例を示すブロック図である。エレベーター制御装置13は、運転制御部16を有する。エレベーター監視装置12は、故障検出部17、故障発報部18、直話部33、疎通確認送信部19、コンテンツ表示部20、稼働データ送信部21を有する。また監視センター装置300は、帯域測定部40、発報受信部24、帯域測定結果保存部25、動画表示判定部26、直話部28、疎通確認受信部29、コンテンツ送信部30、稼働データ収集部31を有する。
【0032】
運転制御部16は、乗りかご6を指定階床まで運行するとともに、エレベーター100の運転情報をエレベーター監視装置12内の故障検出部17に送信する。
【0033】
故障検出部17は、受信したエレベーター100の運転情報からエレベーター100の故障を検知する。また故障検出部17は、故障以外にも、地震などによる揺れや従来技術を用いた乗りかご6内での異常状況(悲鳴の発生や利用者が倒れているなど)も検出する。故障発報部18は、故障検出部17により故障や揺れ、乗りかご6内での異常状況など、異常事態が検知された場合、通信装置11A、広域通信網500、通信装置11Bを介して監視センター装置300内の発報受信部24へ発報を行う。
【0034】
発報受信部24が発報を受信した場合、管制センター200内のオペレータは、故障などの場合は当該故障を是正する適切な対応を、各拠点に設けられた営業所の技術者に指示し、営業所は復旧作業を行う技術者を派遣し、異常に対応する。またオペレータは、必要に応じて、直話部28を介して乗りかご6内との直話を行う。
【0035】
エレベーター100側の直話部33は、通話ボタン22と接続している。直話部33は、閉じ込め時などの緊急時に利用者が通話ボタン27を押下することで、広域通信網500を介して監視センター装置300に直話開始電文を送信する。監視センター装置300内の直話部28がこの電文を受信し、オペレータが所定の操作を行うことで、乗りかご6内の利用者と管制センター200内のオペレータとの間での直話が開始される。
【0036】
エレベーター100側の直話部33は、かご内液晶画面3に付属しているマイクで集音された音声をデジタル変換し、IPパケットに分割して監視センター装置300に向けて送信する。また直話部33は、乗りかご6内の監視用カメラ51で撮像されるかご内映像も、IPパケットに分割して監視センター装置300に向けて送信する。監視センター装置300内の直話部28も同様に、ヘッドセット122で集音されるオペレータの発声音をデジタル変換し、IPパケットに分割してエレベーター監視装置12に向けて送信する。また直話部28は、カメラ121で撮像されるオペレータが映し出された撮像データをIPパケットに分割して、エレベーター監視装置12に向けて送信する。
【0037】
疎通確認送信部19は、1日に1回もしくは数回、定刻に、監視センター装置15の疎通確認受信部29からの要求に応じて疎通確認用の電文を送信する。これにより、エレベーター監視装置12と監視センター装置300との間の通信が正常に行えているかを確認することができる。
【0038】
コンテンツ送信部30は、ニュース情報や天気情報、動画広告といったコンテンツを、広域通信網500を介してエレベーター監視装置12内のコンテンツ表示部20に送信する。コンテンツ表示部20は、受信したコンテンツを、かご内液晶画面3などエレベーター100の設備内の画面に表示する。
【0039】
稼働データ収集部31は、エレベーター監視装置12が蓄積した稼働データを収集するため、稼働データ収集指令を1日に数回、定期時間にエレベーター監視装置12内の稼働データ送信部21に送信する。稼働データ送信部21は、稼働データ収集指令を受信すると、エレベーター100のドア開閉回数や走行回数といった蓄積した稼働データを、稼働データ収集部31に返信する。
【0040】
帯域測定部40は、エレベーター監視装置12と監視センター装置300との間で通信が行われる際に、通信速度(帯域)の測定を行う。帯域測定部40は、測定値を、通信内容および通信実施時刻(帯域測定部40が計測を行った日時情報)とともに、帯域測定結果保存部25へ出力する。
【0041】
帯域測定部40は、例えば、疎通確認送信部19により送信される疎通確認用データ、コンテンツ送信部30により送信される各種コンテンツデータ、稼働データ収集部31により収集される稼働データの各通信が発生した場合、これら各通信を流用して、通信速度を測定する。すなわち本実施形態では、通信速度を計測するために改めて通信データを生成して通信を行うことはせずに、既存の通信をそのまま利用して通信速度を計測する。これにより、通信帯域を現状の帯域に維持しながら、通信速度を計測することができる。
【0042】
尚、疎通確認データの通信、コンテンツデータの通信、稼働データの通信は、監視センター装置300からエレベーター監視装置12に送信し、その返信(TCPのACKなどの確認応答も含む)を監視センター装置300が受信する通信となる。帯域測定部40は、これらの通信をスヌーピングし、送信してから受信するまでの時間を計測することで、通信速度を計測する。
【0043】
帯域測定結果保存部25は、帯域測定部40が測定した測定値と通信実施時刻とを対応付けて保存する。
【0044】
動画表示判定部26は、帯域測定結果保存部25に既に保存されている通信実施時刻と測定値とを取得し、これらに基づき、直話の際に撮像データの通信を行うか否かを、時間帯ごとに判定する。動画表示判定部26は、帯域測定結果保存部25に既に保存されている測定値が同時間帯で継続して規定値以下となる場合、当該時間帯では通信速度が低下しているものとみなし、当該時間帯での直話通信を音声データのみとなるように、直話部28に指令する。また動画表示判定部26は、帯域測定結果保存部25に既に保存されている測定値が同時間帯で継続して規定値を超える場合、当該時間帯での通信速度は十分に担保されているものとみなし、当該時間帯での直話通信を音声データと撮像データとで行うように、直話部28に指令する。この制御により、通信速度が低下している時間帯での直話通信は、音声データのみとすることができる。一方、通信速度が低下していない時間帯での直話通信は、音声データに撮像データも含めた通信とすることができる。これにより、直話の際、少なくとも音声データ通信については安定して行うことができる。
【0045】
図4は、帯域測定結果保存部25に保存されるデータ構成の一例を示す図である。帯域測定結果保存部25は、帯域測定部40により得られる通信実施時刻、通信内容、測定値(図4中の帯域測定結果内の数値)を対応付けて保存する。また帯域測定結果保存部25は、動画表示判定部26より得られる、撮像データの通信を停止する時間帯(図4中の制限時間帯)と、測定値と規定値との比較結果(図4中の「OK」、「NG」)とを、対応付けて記憶する。尚、ここでは規定値を100[kbps]とし、測定値がこの規定値以下である場合、NG判定となり、測定値がこの規定値を超える場合、OK判定となる。
【0046】
例えば図4に示すように、通信実施時刻が17:35に天気・ニュース情報のコンテンツを送信した際の帯域測定結果が50.2[kbps](規定値以下)であった場合、動画表示判定部26は、翌日から通信実施時刻(17:35)の前後30分である17:05〜18:05については、制限時間帯として撮像データの通信を停止させる。尚、本実施形態では、疎通確認データの通信、コンテンツデータの通信、稼働データの通信などの既存の通信が発生しない時間帯については、通信速度の測定値を得ることができない。このような時間帯の場合、本実施形態では、通信速度は低下していないものとして、撮像データも含めた通信を行うが、この態様に限定されない。
【0047】
図5は、撮像データの通信を行うか音声データのみとするかを時間帯ごとに設定する動作例を示すフローチャートである。また図6は、音声データのみで直話通信を行っている場合に、撮像データを含めた直話通信に戻す動作例を示すフローチャートである。
【0048】
まずは図5のフローチャートの説明をする。エレベーター監視装置12と監視センター装置15との間で、疎通確認データ、コンテンツデータ、稼働データのいずれかの通信が実施された場合(S001:Yes)、帯域測定部40は、この際の通信速度を測定する(S002)。また、各通信が実施されていない場合(S001:No)、帯域測定部40は通信速度の測定を行わず、ステップS001に戻る。
【0049】
帯域測定結果保存部25は、帯域測定部40が測定した測定値と通信実施時刻とを対応付けて保存する(S003)。
【0050】
帯域測定結果保存部25に保存された同時間帯における通信速度が、連続してN回以上(Nは1または2以上の正数)、規定値以下であった場合(S004:Yes)、動画表示判定部26は、当該時間帯で直話が行われる場合は撮像データの通信を停止するように、直話部28に指令し、また帯域測定結果保存部25にこの旨を保存する(S005)。尚、動画表示判定部26は、当該時間帯と撮像データの通信を停止することを示す値とを対応づけた設定値を、指令として直話部28に出力する。この指令を受けた直話部28は、当該時間帯で直話開始電文を受信すると、撮像データの通信を停止するように、すなわち音声データのみの通信となるように制御する。ステップS005が行われた後は、図6のフローチャートに進む。
【0051】
一方、帯域測定結果保存部25に保存された同時間帯における帯域測定の結果が連続してN回以上、規定値以下ではなかった場合(S004:No)、このまま図6のフローチャートに進む。
【0052】
次に図6を参照して動画非表示のキャンセル方法について説明する。尚、本実施形態では図5に示す動作の後に図6に示す動作に移行するものとして説明するが、図5に示す動作と図6に示す動作とを非同期で行ってもよく、データの不整合が発生しない程度に並列で行ってもよい。
【0053】
ステップS101からステップS103までの動作は、図5に示すステップS001からS003までの動作と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0054】
ステップS104において、通信速度測定の結果が、同時間帯において連続してN回以上規定値を超えた場合(S104:Yes)、動画表示判定部26は、撮像データ通信の停止をキャンセルして元に戻し、帯域測定結果保存部25に保存する(S105)。この際、動画表示判定部26は、当該時間帯では撮像データも合わせて通信するように、直話部28に指令する。この際、動画表示判定部26は、当該時間帯と撮像データの通信を行うことを示す値とを対応づけた設定値を、指令として直話部28に出力する。この指令を受けた直話部28は、当該時間帯において直話開始電文を受信すると、音声データに加えて撮像データも通信するように制御する。
【0055】
一方、ステップS104において、連続N回以上規定値を超えていない場合(S104:No)、このままステップS001に戻る。尚、図5と非同期で実行している場合や並列実行の場合はステップS101に戻る。
【0056】
図7は、直話部28の動作例を示すフローチャートである。直話部28は、エレベーター監視装置12から直話開始電文を入力するまで待機する(S200:Noのループ)。直話開始電文は、上記のとおり乗りかご6内の通話ボタン22が押下されたときに、エレベーター監視装置12から送信されるデータである。尚、故障発報部18から送信されるアラート発報を受信した際も、後述の動作を行ってもよい。すなわち、通話ボタン22が押下される以外に、機器に異常が発生した場合も、後述の動作を行ってもよい。
【0057】
直話開始電文を入力すると(S201:Yes)、直話部28は、現在時刻を取得し(S202)、この現在時刻と同じ時間帯の指令(設定値)を、事前に入力している設定値の中から取得する(S203)。直話部28は、ここで取得した設定値が撮像データの通信を停止する旨の値であるか否かを判定する(S204)。撮像データの通信を停止する旨の値である場合(S204:Yes)、直話部28は、撮像データを停止するように制御し(S205)、直話処理を行う(S207)。ここで直話部28は、音声のみを規定したデータをRTP(Real-time Transport Protocol)のペイロード部に含めて送信することで、撮像データの通信を停止し、音声データのみの直話通信を行う。
【0058】
また、ステップS204の判定で、撮像データの通信を停止する旨の値でない場合(S204:No)、直話部28は、音声データに撮像データを含めた通信となるように制御して(S206)、直話処理を行う(S207)。ここで直話部28は、音声に加えて動画も組み入れたデータをRTPのペイロード部に含めて送信することで、音声データと撮像データとの通信で直話通信を行う。
【0059】
直話部28は、エレベーター利用者とオペレータとの通話が終了するまでステップS207の直話処理を行う。直話処理が終了すると、処理はステップS201に戻る。
【0060】
本実施形態において、直話部28は、動画表示判定部26から指令(設定値)を受けて、この指令(設定値)に従い直話通信の制御を行っている。この動作に替えて、直話部28は、直話通信が発生した際に帯域測定結果保存部25を参照し、現在時刻と同時間帯に応じた比較結果(OKまたはNG)を取得する、との実装でもよい。
【0061】
本実施形態の態様を、通信機器(例えば管制センター200内の通信装置11B)で実装してもよい。
【0062】
本実施形態では、直話通信の開始よりも前に、予め通信速度を計測しておき、記憶部に事前に記憶させておく態様を説明した。このように予め通信速度を計測しておくことで、直話通信開始後に通信速度の計測を行わずに済み、直話開始の時点で通信が不安定となることを低減することができる。
【0063】
また本実施形態では、音声データのみの直話通信とするか撮像データも含めた直話通信とするかを、直話通信の開始よりも前に、予め時間帯ごとに設定しておく態様を説明した。これ以外にも、直話通信が開始されてから、動画表示判定部26が動作を開始する態様でもよい。この場合、直話通信が開始されてから、動画表示判定部26が時間帯の選定および比較処理、比較結果に応じた指令の出力を行う。そしてこの指令に基づき直話部28が音声データによる直話通信、もしくは音声データと撮像データとによる直話通信のいずれかを行う。
【0064】
本実施形態では、時間区間として、1時間を単位とした時間帯を例示しているが、これに限らず、時間区間を日単位、午前/午後の単位、2時間単位、30分単位、1分単位などと、任意に規定してもよい。
【0065】
尚、比較演算において、「以下」と「未満」との違いや、「以上」と「超える」との違いについて、本実施形態においては技術的な差異はなく、差し替えてもよい。すなわちこれらの差異は、少なくとも均等の範囲である。
【0066】
以上に詳説したように、本実施形態によって、回線混雑が生じている場合には動画の表示をカットし、緊急度の高い乗りかご内の利用者とオペレータとの音声データの通信を、優先的に安定させることができる。また、音声通信開始の時点から、音声データによる通話の途切れを低減させることができる。
【0067】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0068】
3:かご内液晶画面
6:乗りかご
11A、11B:通信装置
12:エレベーター監視装置
13:エレベーター制御装置
15:監視センター装置
16:運転制御部
17:故障検出部
18:故障発報部
19:疎通確認送信部
20:コンテンツ表示部
21:稼働データ送信部
22:通話ボタン
24:発報受信部
25:帯域測定結果保存部
26:動画表示判定部
27:通話ボタン
28:直話部
29:疎通確認受信部
30:コンテンツ送信部
31:稼働データ収集部
33:直話部
40:帯域測定部
51:監視用カメラ
100:エレベーター
200:管制センター
300:監視センター装置
500:広域通信網
図1
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図7