(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の圧着技術では、各ダイスの対向位置に設けられた押圧突起を端子に食い込ませて電線との圧着力を高めている。しかし、ダイスを相互に突き合わせて押圧突起を端子に食い込ませることで、電線の導体の一部がダメージを受けるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線の導体へのダメージを極力抑えつつ強固に端子を圧着させることが可能な端子の圧着方法及び圧着構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る端子の圧着方法は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 電線の端部に端子の円筒状の固定筒部を被せ、前記固定筒部に一対のダイスを突き合わせて前記固定筒部を加締めて圧着する端子の圧着方法であって、
前記ダイスに、平面視において一方の軸方向の長さが前記一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状の押圧突起を設け、
前記固定筒部を加締める際に、前記固定筒部に前記押圧突起を食い込ませて圧着凹部を形成
し、
前記圧着凹部の平面形状は、前記一方の軸方向に長い平面視長円形状であり、前記圧着凹部の前記一方の軸方向に沿う断面形状は、両端部が円弧とされ、その円弧からなる両端部を直線状の底部で繋いだ凹状とされ、前記圧着凹部の前記他方の軸方向に沿う断面形状は、半円形状とされている、または、
前記圧着凹部の平面形状は、前記一方の軸方向に長い平面視長方形状であり、前記圧着凹部の前記一方の軸方向に沿う断面形状は、両端部が傾斜面とされ、その傾斜面からなる両端部を直線状の底部で繋いだ凹状とされ、前記圧着凹部の前記他方の軸方向に沿う断面形状は、三角形状とされている
ことを特徴とする端子の圧着方法。
(2) 前記押圧突起の長手方向が、前記端子を圧着させる前記電線の軸線に対して直交方向に沿うように、前記ダイスによって前記固定筒部を加締める
ことを特徴とする(1)に記載の端子の圧着方法。
(3) 前記電線は、編組からなるシールド導体を有し、
前記端子は、前記電線が挿通される圧着筒部を有するとともに、前記固定筒部を有する固定部材を備え、
前記シールド導体を折り返して前記圧着筒部と前記固定部材の前記固定筒部との間に配置させた状態で前記ダイスによって前記固定筒部を加締める
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の端子の圧着方法。
【0007】
上記(1)の構成の端子の圧着方法によれば、加締め部分の圧着力を高めるためにダイスに設けた押圧突起を、平面視において一方の軸方向の長さが一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状としている。これにより、押圧突起の面積を大きくすることができ、押圧突起の突出寸法を小さくしても十分な圧着力を確保できる。したがって、端子の固定筒部を加締める際に押圧突起の食い込み箇所での応力集中を低減させることができ、電線の導体へのダメージを抑制することができる。
上記(2)に記載の端子の圧着方法によれば、押圧突起の長手方向が電線の軸線に対して直交方向に沿うように固定筒部を加締めることで、固定筒部に形成される圧着凹部の長手方向を電線の軸線に対して直交方向に沿わせることができる。これにより、端子の固定筒部の軸線方向への長さを抑えて端子のコンパクト化を図ることができる。
上記(3)に記載の端子の圧着方法によれば、編組からなるシールド導体へのダメージを抑え、良好なシールド効果を得ることができる。
【0008】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る端子の圧着構造は、下記(4)〜(6)を特徴としている。
(4) 電線の端部に端子の円筒状の固定筒部が被せられ、前記固定筒部が加締められて圧着された端子の圧着構造であって、
加締められた前記固定筒部に、平面視において一方の軸方向の長さが前記一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状の圧着凹部が形成され
、
前記圧着凹部の平面形状は、前記一方の軸方向に長い平面視長円形状であり、前記圧着凹部の前記一方の軸方向に沿う断面形状は、両端部が円弧とされ、その円弧からなる両端部を直線状の底部で繋いだ凹状とされ、前記圧着凹部の前記他方の軸方向に沿う断面形状は、半円形状とされている、または、
前記圧着凹部の平面形状は、前記一方の軸方向に長い平面視長方形状であり、前記圧着凹部の前記一方の軸方向に沿う断面形状は、両端部が傾斜面とされ、その傾斜面からなる両端部を直線状の底部で繋いだ凹状とされ、前記圧着凹部の前記他方の軸方向に沿う断面形状は、三角形状とされている
ことを特徴とする端子の圧着構造。
(5) 前記圧着凹部の長手方向が、前記端子が圧着された前記電線の軸線に対して直交方向に沿わされている
ことを特徴とする(4)に記載の端子の圧着構造。
(6) 前記電線は、編組からなるシールド導体を有し、
前記端子は、前記電線が挿通された圧着筒部を有するとともに、前記固定筒部を有する筒状の固定部材を備え、
前記シールド導体が折り返されて前記圧着筒部と前記固定部材の前記固定筒部との間に配置された状態で前記固定筒部が加締められている
ことを特徴とする(4)または(5)に記載の端子の圧着構造。
【0009】
上記(4)の構成の端子の圧着構造によれば、圧着凹部が形成されて加締め部分の圧着力が高められている。この圧着凹部は、平面視において一方の軸方向の長さが一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状とされている。つまり、圧着凹部の面積が大きくされ、圧着凹部の深さ寸法が小さくても十分な圧着力が確保される。したがって、圧着凹部を形成する際の応力集中を低減させることができ、電線の導体へのダメージを抑制することができる。
上記(5)に記載の端子の圧着構造によれば、固定筒部に形成される圧着凹部の長手方向が電線の軸線に対して直交方向に沿わされている。これにより、端子の固定筒部の軸線方向への長さを抑えて端子のコンパクト化を図ることができる。
上記(6)に記載の端子の圧着構造によれば、編組からなるシールド導体へのダメージを抑え、良好なシールド効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電線の導体へのダメージを極力抑えつつ強固に端子を圧着させることが可能な端子の圧着方法及び圧着構造を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0014】
(第一実施形態)
まず、第一実施形態に係る端子の圧着方法及び圧着構造について説明する。
図1は、第一実施形態に係る端子の圧着構造を説明する端子が圧着された電線の端部の斜視図である。
図2は、第一実施形態に係る端子の圧着構造を説明する端子が圧着された電線の軸線に沿う断面図である。
図3は、
図2におけるA−A断面図である。
【0015】
図1〜
図3に示すように、第一実施形態に係る圧着構造は、電線10に端子20を圧着して固定した構造である。端子20は、固定部材30を備えており、この固定部材30を介して電線10に圧着固定される。
【0016】
電線10は、中心導体11と、絶縁体12と、シールド導体13と、外被14とを備えた同軸ケーブルからなるシールド電線である。中心導体11は、例えば、銅または銅合金からなる素線を撚り合わせた撚線からなる。絶縁体12は、絶縁性を有する樹脂材料からなるもので、中心導体11の周囲を覆うように設けられている。シールド導体13は、例えば、銅または銅合金からなる素線を編み組した編組であり、絶縁体12の周囲を覆うように設けられている。外被14は、絶縁性を有する樹脂材料からなるもので、シールド導体13の周囲を覆うように設けられている。
【0017】
電線10は、その端部において、中心導体11及びシールド導体13が露出されている。外被14の端部には、端子20が装着されている。端子20が装着された部分には、外被14から露出されたシールド導体13が折り返されて被せられている。このシールド導体13が折り返された部分には、固定部材30が装着されている。固定部材30は、電線10の先端側から装着されている。
【0018】
端子20は、電線10のシールド導体13に電気的に接続されるシールド端子である。端子20は、例えば、銅または銅合金等の導電性金属板に対して、プレス加工することで形成されたもので、圧着筒部21と、大径筒部22と、段差部25と、板状部23とを有している。圧着筒部21は、挿入された電線10の端部に固定される。大径筒部22は、圧着筒部21よりも大径に形成されており、圧着筒部21の後端側に設けられている。段差部25は、大径筒部22よりも大径に形成されており、大径筒部22の後端側に設けられている。板状部23は、段差部25の後端側で径方向外方へ張り出している。板状部23には、その一部に、挿通孔24を有する固定板部26が設けられている。
【0019】
固定部材30は、例えば、銅または銅合金等の導電性金属板に対して、プレス加工することで形成されたもので、固定筒部31と、フランジ部32とを有している。固定筒部31は、シールド導体13が被せられた端子20の圧着筒部21に固定されている。加締める前の固定部材30は、固定筒部31が円筒状に形成されている。フランジ部32は、円筒状に形成された固定筒部31から径方向外方へ延びるフランジ板部32aと、このフランジ板部32aの外縁から後端側へ延びる係合筒部32bとを有している。フランジ部32の係合筒部32bは、固定筒部31よりも大径に形成されており、端子20の大径筒部22に、先端側から嵌め込まれる。これにより、大径筒部22には、その外周に、段差部25と固定部材30のフランジ部32とから環状凹部35が形成されている。この環状凹部35には、環状に形成されたシール部材(図示略)が収容される。
【0020】
固定部材30は、その固定筒部31が端子20の圧着筒部21とともに断面六角形状に加締められている。これにより、電線10には、その端部の外被14の部分に、端子20の圧着筒部21、シールド導体13及び固定部材30の固定筒部31が圧着されて固定されている。また、断面六角形状に加締められた固定部材30の固定筒部31は、その六面のうちの対向する二面に、圧着凹部33が形成されている。
【0021】
図4は、圧着凹部の形状を示す図であって、
図4(a)は平面図、
図4(b)は電線の軸線に対して直交方向に沿う断面図、
図4(c)は電線の軸線に沿う断面図である。
図4(a)に示すように、圧着凹部33は、平面視において、一方の軸方向の長さが一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状とされている。具体的には、圧着凹部33の平面形状は、電線10の軸線に対して直交方向に長い平面視長円形状に形成されている。また、
図4(b)に示すように、圧着凹部33の電線10の軸線に対して直交方向に沿う断面形状は、両端部33aが円弧とされ、その円弧からなる両端部33aを直線状の底部33bで繋いだ凹状とされている。さらに、
図4(c)に示すように、圧着凹部33の電線10の軸線に沿う断面形状は、半円形状とされている。
【0022】
電線10の端部に設けられた端子20は、インバータ、モータあるいはバッテリなどの導電性金属材料から形成されたケースに接続される。具体的には、端子20は、ケースの取付孔に挿し込まれ、板状部23の固定板部26に形成された挿通孔24へ挿し込んだネジをケースのネジ孔にねじ込むことで、ケースに対して電気的に接続された状態で固定される。
【0023】
このように、ケースに端子20を固定すると、電線10のシールド導体13がケースと電気的に接続され、シールド効果が得られる。したがって、電磁波等の外来ノイズによる影響が抑制され、かつ電線10から電磁波等の輻射ノイズが外部に漏洩するのが抑制される。
【0024】
次に、電線10に端子20を加締めて圧着させる圧着方法について説明する。
図5は、電線の端部への端子の装着手順を説明する図であって、
図5(a)〜
図5(c)は、それぞれ電線の端部の斜視図である。
図6は、電線の端部への端子の圧着工程を説明する図であって、
図6(a)及び
図6(b)は、それぞれ電線の端部の斜視図である。
図7は、電線の端部へ端子を圧着するダイスを説明する図であって、
図7(a)はダイスの斜視図、
図7(b)は、一対のダイスによる電線の圧着箇所の概略構成図である。
【0025】
図5(a)に示すように、電線10の端部に、圧着筒部21が円筒形状とされている端子20を挿通させる。
図5(b)に示すように、電線10を端末処理することで、シールド導体13を露出させる。
図5(c)に示すように、シールド導体13を広げ、端子20の圧着筒部21の外周を覆うように、シールド導体13を折り返す。
【0026】
図6(a)に示すように、電線10の端部から固定筒部31が円筒形状とされている固定部材30を挿嵌し、シールド導体13が被せられた圧着筒部21に固定部材30の固定筒部31を嵌め込む。
図6(b)に示すように、固定部材30の固定筒部31が嵌め込まれた端子20の圧着筒部21を、一対のダイス40を突き合わせて加締める。
【0027】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、ダイス40は、互いの突き合わせ側に、六角形を二等分した台形状の加締め凹部41を有している。つまり、ダイス40を突き合わせることで、各ダイス40の加締め凹部41からなる六角形状の加締め空間部が形成される。
【0028】
それぞれのダイス40の加締め凹部41を形成する底部41aには、突出寸法D1の押圧突起42が形成されている。この押圧突起42は、平面視において一方の軸方向の長さが一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状とされている。具体的には、押圧突起42は、平面形状が圧着する電線10の軸線に対して直交方向に長い平面視長円形状に形成されている。また、押圧突起42の電線10の軸線に対して直交方向に沿う断面形状は、両端部42aが円弧状とされ、その円弧状の両端部42aを直線状の頂部42bで繋いだ凸状とされている。さらに、押圧突起42の電線10の軸線に沿う断面形状は、半円形状とされている。
【0029】
固定部材30の固定筒部31が嵌め込まれた圧着筒部21を介して一対のダイス40を突き合わせると、固定筒部31及び圧着筒部21がシールド導体13を介してダイス40の加締め凹部41によって加締められ、六角形状に形成される。これにより、電線10の端部に端子20が圧着固定され、電線10のシールド導体13が端子20の圧着筒部21と固定筒部31とで挟持され、端子20とシールド導体13とが電気的に接続される。また、それぞれのダイス40の加締め凹部41の底部41aに形成された押圧突起42が固定筒部31に食い込まされて圧着凹部33が形成され、圧着箇所における圧着力が高められる。
【0030】
ここで、参考例1について説明する。
図8は、電線の端部へ端子を圧着する参考例1に係るダイスを説明する図であって、
図8(a)はダイスの斜視図、
図8(b)は、一対のダイスによる電線の圧着箇所の概略構成図である。
【0031】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、参考例1では、一対のダイス40Aを用いて、固定部材30の固定筒部31を嵌め込んだ端子20の圧着筒部21を加締めている。これらのダイス40Aは、加締め凹部41を形成する底部41aに、突出寸法D1よりも大きな突出寸法D2の押圧突起42Aを有している。この押圧突起42Aは、平面円形状に形成されている。この押圧突起42Aは、電線10の軸線に対して直交方向に沿う断面形状及び電線10の軸線に沿う断面形状が円弧状に形成されている。つまり、この押圧突起42Aは、半球状に突出する突起である。
【0032】
これらのダイス40Aを用いて、固定部材30を嵌め込んだ端子20の圧着筒部21を加締めると、押圧突起42Aが固定部材30に食い込まされ、圧着箇所における圧着力が高められる。しかし、このダイス40Aの押圧突起42Aは、その平面形状が小さく、突出寸法D2が大きいため、固定部材30に対して局部的に食い込んでしまう。すると、電線10のシールド導体13に大きな力が付与され、シールド導体13を構成する素線にダメージを与えてしまうおそれがある。
【0033】
これに対して、第一実施形態によれば、加締め部分の圧着力を高めるためにダイス40に設けた押圧突起42を、平面視において一方の軸方向の長さが一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状としている。これにより、押圧突起42の面積を大きくすることができ、押圧突起42の突出寸法を小さくしても十分な圧着力を確保できる。したがって、固定筒部31を加締める際に押圧突起42の食い込み箇所での応力集中を低減させることができる。これにより、電線10の編組からなるシールド導体13へのダメージを抑え、良好なシールド効果を得ることができる。
【0034】
また、押圧突起42の長手方向が電線10の軸線に対して直交方向に沿うように固定筒部31を加締めることで、固定筒部31に形成される圧着凹部33の長手方向を電線10の軸線に対して直交方向に沿わせることができる。これにより、固定筒部31の軸線方向への長さを抑えて端子20のコンパクト化を図ることができる。
【0035】
ここで、ダイス40の押圧突起42によって形成する圧着凹部33の変形例について説明する。
【0036】
(変形例1)
図9は、変形例1に係る圧着凹部の形状を示す図であって、
図9(a)は平面図、
図9(b)は電線の軸線に対して直交方向に沿う断面図、
図9(c)は電線の軸線に沿う断面図である。
図9(a)に示すように、変形例1では、圧着凹部33の平面形状は、電線10の軸線に対して直交方向に長い平面視長方形状に形成されている。また、
図9(b)に示すように、圧着凹部33の電線10の軸線に対して直交方向に沿う断面形状は、両端部33aが傾斜面とされ、その傾斜面からなる両端部33aを直線状の底部33bで繋いだ凹状とされている。さらに、
図9(c)に示すように、圧着凹部33の電線10の軸線に沿う断面形状は、三角形状とされている。
【0037】
(変形例2)
図10は、変形例2に係る圧着凹部の形状を示す図であって、
図10(a)は平面図、
図10(b)は電線の軸線に対して直交方向に沿う断面図、
図10(c)は電線の軸線に沿う断面図である。
図10(a)に示すように、変形例2では、圧着凹部33の平面形状は、電線10の軸線に対して直交方向に長い平面視長方形状に形成されている。また、
図10(b)に示すように、圧着凹部33の電線10の軸線に対して直交方向に沿う断面形状は、両端部33aが傾斜面とされ、その傾斜面からなる両端部33aを直線状の底部33bで繋いだ凹状とされている。さらに、
図10(c)に示すように、圧着凹部33の電線10の軸線に沿う断面形状は、台形状とされている。
【0038】
上記の変形例1,2の場合も、圧着凹部33は、平面視において一方の軸方向の長さが一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状とされている。つまり、圧着凹部33の面積が大きくされ、圧着凹部33の深さ寸法が小さくても十分な圧着力が確保される。したがって、圧着凹部33を形成する際の応力集中を低減させることができ、電線10のシールド導体13へのダメージを抑制することができる。
【0039】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る端子の圧着方法及び圧着構造について説明する。
なお、上記第一実施形態と同一構成部分は同一符号を付して説明を省略する。
図11は、第二実施形態に係る端子の圧着構造を説明する端子が圧着された電線の端部の斜視図である。
図12は、第二実施形態に係る端子の圧着構造を説明する端子が圧着された電線の軸線に沿う断面図である。
【0040】
図11及び
図12に示すように、第二実施形態に係る圧着構造は、電線50に端子60を圧着して固定した構造である。
【0041】
電線50は、導体51と、外被54とを備えている。導体51は、例えば、銅または銅合金からなる素線を撚り合わせた撚線からなる。外被54は、絶縁性を有する樹脂材料からなるもので、導体51の周囲を覆うように設けられている。
【0042】
電線50は、その端部において、導体51が露出されている。露出された導体51には、端子60が装着されている。
【0043】
端子60は、例えば、銅または銅合金等の導電性金属材料から形成されたもので、電気接続部61と、筒状の固定筒部62とを有している。電気接続部61は、相手側端子に接続される部分である。固定筒部62は、電線50の導体51に接続される部分である。
【0044】
端子60の固定筒部62は、断面六角形状に加締められている。これにより、電線50には、外被54から露出された導体51の端部に、端子60の固定筒部62が圧着固定されている。また、断面六角形状に加締められた固定筒部62は、その六面のうちの対向する二面に、圧着凹部63が形成されている。
【0045】
圧着凹部63の平面形状は、平面視において一方の軸方向の長さが一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状とされている。具体的には、圧着凹部63は、平面形状が、電線50の軸線に対して直交方向に長い平面視長方形状に形成されている。また、圧着凹部63の電線50の軸線に対して直交方向に沿う断面形状は、両端部63aが傾斜面とされ、その傾斜面からなる両端部63aを直線状の底部63bで繋いだ凹状とされている。さらに、圧着凹部63の電線50の軸線に沿う断面形状は、台形状とされている。
【0046】
次に、電線50に端子60の固定筒部62を加締めて圧着させる圧着方法について説明する。
図13は、電線の端部への端子の圧着手順を説明する図であって、
図13(a)〜
図13(c)は、それぞれ電線の端部の斜視図である。
【0047】
図13(a)に示すように、電線50を端末処理することで、導体51を露出させる。
図13(b)に示すように、電線50の端部に、端子60の円筒形状に形成されている固定筒部62を挿嵌する。
図13(c)に示すように、端子60の固定筒部62を、一対のダイス80によって加締める。
【0048】
ダイス80は、互いの突き合わせ側に、六角形を二等分した台形状の加締め凹部81を有している。それぞれのダイス80の加締め凹部81を形成する底部81aには、押圧突起82が形成されている。この押圧突起82は、平面視において一方の軸方向の長さが一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状とされている。具体的には、押圧突起82は、平面形状が圧着する電線10の軸線に対して直交方向に長い平面視長円形状に形成され、頂部が直線状とされている。また、押圧突起82の電線50の軸線に沿う断面形状及び電線50の軸線に対して直交方向に沿う断面形状は、台形状に形成されている。
【0049】
電線50の導体51を嵌め込んだ端子60の固定筒部62を介して一対のダイス80を突き合わせると、固定筒部62がダイス80の加締め凹部81によって加締められ、六角形状に形成される。これにより、電線50の端部に端子60が圧着固定され、電線50の導体51と端子60とが電気的に接続される。また、それぞれのダイス80の加締め凹部81の底部81aに形成された押圧突起82が固定筒部62に食い込まされて圧着凹部63が形成され、圧着箇所における圧着力が高められる。
【0050】
このように、第二実施形態によれば、加締め部分の圧着力を高めるためにダイス80に設けた押圧突起82を、平面視において一方の軸方向の長さが一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状としている。これにより、押圧突起82の面積を大きくすることができ、押圧突起82の突出寸法を小さくしても十分な圧着力を確保できる。したがって、固定筒部62を加締める際に押圧突起82の食い込み箇所での応力集中を低減させることができる。これにより、電線50の導体51へのダメージを抑えることができる。
【0051】
ここで、参考例2について説明する。
図14は、参考例2に係る圧着方法及び圧着構造を説明する図であって、
図14(a)及び
図14(b)は、それぞれ電線の端部の斜視図である。
【0052】
図14(a)に示すように、参考例2では、断面六角形状に加締められた固定筒部62の六面のうちの対向する二面に、圧着凹部63Aが形成されている。圧着凹部63Aの平面形状は、電線50の軸線に沿って長い平面視長方形状に形成されている。また、圧着凹部63Aの電線50の軸線に沿う断面形状は、両端部63aが傾斜面とされ、その傾斜面からなる両端部63aを直線状の底部63bで繋いだ凹状とされている。さらに、圧着凹部63Aの電線50の軸線に対して直交方向に沿う断面形状は、台形状とされている。
【0053】
参考例2では、一対のダイス80Aを用いて端子60の固定筒部62を加締める。これらのダイス80Aは、加締め凹部81の底部81aに押圧突起82Aを有している。この押圧突起82Aは、平面形状が圧着する電線50の軸線に沿って長い平面視長円形状に形成されている。また、押圧突起82の電線50の軸線に沿う断面形状及び電線50の軸線に対して直交方向に沿う断面形状は、台形状に形成されている。
【0054】
このダイス80Aによって電線50の導体51を嵌め込んだ端子60の固定筒部62を加締めると、それぞれのダイス80Aの加締め凹部81の底部81aに形成された押圧突起82Aが固定筒部62に食い込まされて圧着凹部63Aが形成され、圧着箇所における圧着力が高められる。
【0055】
しかし、この参考例2では、平面形状が圧着する電線50の軸線に沿って長い平面視長円形状の押圧突起82Aを有するダイス80Aによって端子60の固定筒部62を加締める。そして、端子60の固定筒部62に、電線50の軸線に沿って長い平面視長方形状の圧着凹部63Aを形成する。このため、端子60の固定筒部62の電線50の軸線に沿う長さを長くしなければならず、端子60が大型化してしまう。
【0056】
これに対して、第二実施形態によれば、押圧突起82の長手方向が電線50の軸線に対して直交方向に沿うように固定筒部62を加締めることで、固定筒部62に形成される圧着凹部63の長手方向を電線50の軸線に対して直交方向に沿わせることができる。これにより、固定筒部62の軸線方向への長さを抑えて端子60のコンパクト化を図ることができる。
【0057】
なお、第二実施形態では、断面六角形状に加締められた固定筒部62の六面のうちの対向する二面に圧着凹部63を形成したが、
図15に示すように、固定筒部62の六面全てに圧着凹部63を形成してもよい。この場合、電線50との圧着力をさらに高めることができる。
【0058】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0059】
ここで、上述した本発明に係る端子の圧着方法及び圧着構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 電線(10,50)の端部に端子(20,60)の円筒状の固定筒部(31,62)を被せ、前記固定筒部(31,62)に一対のダイス(40,80)を突き合わせて前記固定筒部(31,62)を加締めて圧着する端子の圧着方法であって、
前記ダイス(40,80)に、平面視において一方の軸方向の長さが前記一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状の押圧突起(42,82)を設け、
前記固定筒部(31,62)を加締める際に、前記固定筒部(31,62)に前記押圧突起(42,82)を食い込ませて圧着凹部(33,63)を形成する
ことを特徴とする端子の圧着方法。
[2] 前記押圧突起(42,82)の長手方向が、前記端子(20,60)を圧着させる前記電線(10,50)の軸線に対して直交方向に沿うように、前記ダイス(40,80)によって前記固定筒部(31,62)を加締める
ことを特徴とする[1]に記載の端子の圧着方法。
[3] 前記電線(10)は、編組からなるシールド導体(13)を有し、
前記端子(20)は、前記電線(10)が挿通される圧着筒部(21)を有するとともに、前記固定筒部(31)を有する固定部材(30)を備え、
前記シールド導体(13)を折り返して前記圧着筒部(21)と前記固定部材(30)の前記固定筒部(31)との間に配置させた状態で前記ダイス(40)によって前記固定筒部(31)を加締める
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の端子の圧着方法。
[4] 電線(10,50)の端部に端子(20,60)の円筒状の固定筒部(31,62)が被せられ、前記固定筒部(31,62)が加締められて圧着された端子の圧着構造であって、
加締められた前記固定筒部(31,62)に、平面視において一方の軸方向の長さが前記一方の軸方向に直交する他方の軸方向の長さよりも長い偏平形状の圧着凹部(33,63)が形成されている
ことを特徴とする端子の圧着構造。
[5] 前記圧着凹部(33,63)の長手方向が、前記端子(20,60)が圧着された前記電線(10,50)の軸線に対して直交方向に沿わされている
ことを特徴とする[4]に記載の端子の圧着構造。
[6] 前記電線(10)は、編組からなるシールド導体(13)を有し、
前記端子(20)は、前記電線(10)が挿通された圧着筒部(21)を有するとともに、前記固定筒部(31)を有する筒状の固定部材(30)を備え、
前記シールド導体(13)が折り返されて前記圧着筒部(21)と前記固定部材(30)の前記固定筒部(31)との間に配置された状態で前記固定筒部(31)が加締められている
ことを特徴とする[4]または[5]に記載の端子の圧着構造。