【実施例】
【0026】
(実施例1−1〜1−3、比較例1−1,1−2)
実施例1−1〜1−3として、半解凍したブロック状のカツオ肉を切断してスライス状とし(ステップS101)、イノシン酸ナトリウム、アスコルビン酸、グルタミン酸ナトリウム、及び、糖を混合した添加剤を水に溶解又は分散させて添加した(ステップS102)。イノシン酸ナトリウムは呈味性ヌクレオチドであり、アスコルビン酸は酸化防止剤であり、グルタミン酸ナトリウム及び糖はその他の調味料である。すなわち、実施例1−1〜1−3は、アルカリ性の添加剤を添加せず、酸性を示すようにしたものである。
【0027】
イノシン酸ナトリウムの添加量は、実施例1−1〜1−3で変化させ、カツオ肉100質量部に対して、実施例1−1は0.3質量部、実施例1−2は0.5質量部、実施例1−3は1質量部とした。アスコルビン酸、グルタミン酸ナトリウム、及び、糖の添加量は、実施例1−1〜1−3で同一であり、これらの合計で、カツオ肉100質量部に対して1.5質量部とした。水の添加量は、実施例1−1〜1−3で同一であり、カツオ肉100質量部に対して、3質量部とした。これらの添加量及び添加剤の性質を表1に示す。そののち、添加剤を添加したカツオ肉を−30℃以下になるように急速冷凍処理し(ステップS103)、生食用カツオ加工食品を得た。
【0028】
【表1】
【0029】
なお、コントロールとして、スライス状のカツオ肉に添加剤を添加せず、水のみを添加したことを除き、他は実施例1−1〜1−3と同様にして生食用カツオ加工食品を製造した。水の添加量は実施例1−1〜1−3と同様である。コントロールにおける添加量についても表1に合わせて示す。
【0030】
また、比較例1−1として、添加剤にイノシン酸ナトリウムを混合しなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−3と同様にして生食用カツオ加工食品を製造した。すなわち、比較例1−1は、スライス状のカツオ肉にアスコルビン酸、グルタミン酸ナトリウム、及び、糖を混合した添加剤を水に溶解又は分散させて添加したものであり、比較例1−1も酸性である。これら添加剤及び水の添加量は実施例1−1〜1−3と同様である。比較例1−1における添加量及び添加剤の性質についても表1に合わせて示す。
【0031】
比較例1−2として、スライス状のカツオ肉に炭酸塩とアスコルビン酸ナトリウムとを混合した添加剤を水に溶解又は分散させて添加したことを除き、他は実施例1−1〜1−3と同様にして生食用カツオ加工食品を製造した。すなわち、比較例1−2は、実施例1−1〜1−3とは添加剤の種類が異なるものであり、アルカリ性の添加剤である炭酸塩を添加してアルカリ性としたものである。比較例1−2における添加剤の添加量は、炭酸塩とアスコルビン酸ナトリウムとの合計で、カツオ肉100質量部に対して0.5質量部とした。水の添加量は、カツオ肉100質量部に対して3質量部とした。比較例1−2の添加量及び添加剤の性質についても表1に合わせて示す。
【0032】
実施例1−1〜1−3、コントロール、及び、比較例1−1,1−2の各生食用カツオ加工食品について、−30℃以下で2週間保存した後、解凍し、試食した。試食は5人で行い、カツオ肉の酸味について、下記の基準に基づき1点、3点、又は、5点の点数を付けた。酸味評価の結果を
図2に示す。
図2は5人による評価の平均点である。なお、
図2において、カツオ肉が酸性の状態の実施例1−1〜1−3、比較例1−1は白地で示し、カツオ肉がアルカリ性の状態の比較例1−2は梨地で示した。
【0033】
酸味の評価基準
5点:酸味がかなり改善されている。
3点:酸味を感じるが、抑えられており、喫食に耐える。
1点:コントロールと同様の酸味がする。
【0034】
図2に示したように、実施例1−1〜1−3によれば、呈味性ヌクレオチドを添加していない比較例1−1に比べて、酸味を抑えることができた。また、呈味性ヌクレオチドを0.5質量部添加した実施例1−2によれば、アルカリ性の添加剤を添加した比較例1−2と同程度まで酸味を抑制することができ、呈味性ヌクレオチドを1.0質量部添加した実施例1−3によれば、比較例1−2よりも高い酸味抑制効果を得ることができた。
【0035】
また、実施例1−1〜1−3、コントロール、及び、比較例1−2の各生食用カツオ加工食品について、−30℃以下で2週間保存した後、解凍し、10℃において1日放置した後、色の変化を観察した。その結果、コントロールではカツオ肉が黒ずんで退色し、アルカリ性とした比較例1−2ではカツオ肉が白く赤みが抜けて退色してしまったのに対して、酸性とした実施例1−1〜1−3では、赤みがあり、コントロールや比較例1−2に比べて退色の程度が著しく小さかった。
【0036】
すなわち、酸性とし、かつ、呈味性ヌクレオチドを添加するようにすれば、カツオ肉の退色を抑制しつつ、カツオ肉の酸味を抑えることができることが分かった。
【0037】
(実施例2−1,2−2、比較例2−1)
実施例2−1,2−2として、半解凍したブロック状のカツオ肉を細かく刻んでミンチ状とし(ステップS101)、イノシン酸ナトリウム、アスコルビン酸、グルタミン酸ナトリウム、及び、糖を混合した添加剤を水に溶解又は分散させて添加すると共に、植物油脂を添加した(ステップS102)。すなわち、実施例2−1,2−2は、アルカリ性の添加剤を添加せず、酸性を示すようにしたものである。
【0038】
イノシン酸ナトリウムの添加量は、カツオ肉100質量部に対して、実施例2−1は0.3質量部、実施例2−2は1質量部とした。アスコルビン酸、グルタミン酸ナトリウム、及び、糖の添加量は、実施例2−1,2−2で同一であり、これらの合計で、1.5質量部とした。水の添加量は、実施例2−1,2−2で同一であり、カツオ肉100質量部に対して、3質量部とした。植物油脂の添加量は、実施例2−1,2−2で同一であり、カツオ肉100質量部に対して、7質量部とした。これらの添加量及び添加剤の性質を表2に示す。そののち、添加剤を添加したカツオ肉を−30℃以下になるように急速冷凍処理し(ステップS103)、生食用カツオ加工食品を得た。
【0039】
【表2】
【0040】
なお、コントロールとして、ミンチ状のカツオ肉に添加剤を添加せず、水及び植物油脂を添加したことを除き、他は実施例2−1,2−2と同様にして生食用カツオ加工食品を製造した。水及び植物油脂の添加量は実施例2−1,2−2と同様である。コントロールにおける添加量についても表2に合わせて示す。
【0041】
また、比較例2−1として、添加剤にイノシン酸ナトリウムを混合しなかったことを除き、他は実施例2−1,2−2と同様にして生食用カツオ加工食品を製造した。すなわち、比較例2−1は、ミンチ状のカツオ肉にアスコルビン酸、グルタミン酸ナトリウム、及び、糖を混合した添加剤を水に溶解又は分散させて添加すると共に、植物油脂を添加したものであり、比較例2−1も酸性である。これら添加剤、水及び植物油脂の添加量は実施例2−1,2−2と同様である。比較例2−1における添加量及び添加剤の性質についても表2に合わせて示す。
【0042】
実施例2−1,2−2、コントロール、及び、比較例2−2の各生食用カツオ加工食品について、−30℃以下で2週間保存した後、解凍し、試食した。試食は3人で行い、カツオ肉の酸味について、下記の基準に基づき1点、3点、又は、5点の点数を付けた。酸味評価の結果を
図3に示す。
図3は3人による評価の平均点である。
【0043】
酸味の評価基準
5点:酸味がかなり改善されている。
3点:酸味を感じるが、抑えられており、喫食に耐える。
1点:コントロールと同様の酸味がする。
【0044】
図3に示したように、実施例2−1,2−2によれば、呈味性ヌクレオチドを添加していない比較例2−1に比べて、酸味を抑えることができた。すなわち、ミンチ状についても、スライス状と同様の効果を得られることが分かった。
【0045】
以上、実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。