特許第6762545号(P6762545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6762545
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】断熱材の施工方法、及び断熱材
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/18 20060101AFI20200917BHJP
   F16L 59/22 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   F16L59/18
   F16L59/22
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-69613(P2019-69613)
(22)【出願日】2019年4月1日
【審査請求日】2019年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】516202604
【氏名又は名称】株式会社冨士パーライト
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】嵐 香信
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−222691(JP,A)
【文献】 特開昭58−034292(JP,A)
【文献】 特公昭47−047142(JP,B1)
【文献】 特開昭48−065521(JP,A)
【文献】 特公昭46−010990(JP,B1)
【文献】 特開平03−041298(JP,A)
【文献】 特開平07−110099(JP,A)
【文献】 特公昭46−006029(JP,B1)
【文献】 米国特許第04484386(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/18
F16L 59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材の施工方法であって、
樹脂製の被覆部材であって、複数の直管をそれぞれ覆う直管用断熱部材の端部を嵌め込むための複数の開口を有し、各前記開口に各前記直管用断熱部材が嵌め込まれた状態において、各前記直管を接続するエルボ継手を内部空間に収容することが可能な被覆部材を準備する工程と、
各前記直管を、半円筒形状の一対の前記直管用断熱部材によってそれぞれ覆う工程と、
各前記直管用断熱部材に前記被覆部材を取り付ける工程と、
前記被覆部材に、前記被覆部材の内部空間と外部とを連通する連通孔を形成する工程と、
前記連通孔から、前記被覆部材の内部空間へと発泡液を注入する工程と、
を備え
前記覆う工程では、一の前記直管に取り付ける一方の前記直管用断熱部材と、他の前記直管に取り付ける一方の前記直管用断熱部材との間に、各前記直管用断熱部材を架橋する板状又は膜状の架橋部材であって、前記被覆部材の内部空間を区切る架橋部材を設け施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の施工方法であって、
前記連通孔を形成する工程では、
各前記直管用断熱部材に取り付けられた前記被覆部材に対して、前記被覆部材と前記直管用断熱部材とが重畳していない範囲内の一部分に、前記連通孔を形成する、施工方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の施工方法であって、
前記連通孔を形成する工程では、
各前記直管用断熱部材に取り付けられた前記被覆部材に対して、前記被覆部材の軸線方向に沿って延び、前記被覆部材を鉛直方向に切断する仮想面の上端を基準として、±45度の範囲内の一部分に、前記連通孔を形成する、施工方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の施工方法であって、さらに、
前記被覆部材を取り付ける工程では、
前記被覆部材の端部と、各前記直管用断熱部材の外表面とを、防湿テープで固定する、施工方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の施工方法であって、さらに、
前記注入する工程の後に、前記被覆部材の内部空間が前記発泡液により形成された発泡体で充填されているか否かを確認する工程と、
充填されていない場合、前記連通孔を形成する工程と、前記注入する工程と、前記確認する工程と、を順次繰り返す、施工方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の施工方法であって、さらに、
前記注入する工程の後に、前記連通孔を封止する工程を備える、施工方法。
【請求項7】
断熱材であって、
樹脂製の被覆部材であって、複数の直管をそれぞれ覆う直管用断熱部材の端部を嵌め込むための複数の開口を有し、各前記開口に各前記直管用断熱部材が嵌め込まれた状態において、各前記直管を接続するエルボ継手を内部空間に収容することが可能な被覆部材と、
前記被覆部材の内部空間に充填されている発泡体と、
一の前記直管に取り付ける一方の前記直管用断熱部材と、他の前記直管に取り付ける一方の前記直管用断熱部材との間に設けられ、各前記直管用断熱部材を架橋する板状又は膜状の架橋部材であって、前記被覆部材の内部空間及び前記発泡体を区切る架橋部材と、
を備える、断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材の施工方法、及び断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物やプラントなどに設置される各種の配管を被覆して、配管を外部から断熱する断熱材が知られている。このような断熱材の材料としては、発泡プラスチック材料(硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォーム等)が知られている。配管を外部から断熱する断熱材には、配管径、配管形状、断熱条件など、配管仕様に応じた形状が求められる。特許文献1,2には、直管同士の間を屈曲した形状で接続するエルボ継手を断熱する配管カバー部材、及び保温構造について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−301993号公報
【特許文献2】実開昭56−84190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の配管カバー部材では、配管仕様に応じて、予め複数種類の配管カバーを準備しておく必要があり、在庫管理の手間やコストが掛かるという課題があった。特許文献2に記載の保温構造では、複数の分割片を配管形状に合わせて作成し、組み立てる必要があり、施工に手間がかかり、施工のために熟練工を要するという課題があった。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、手早く、簡単に、かつ低コストで断熱材を施工することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、断熱材の施工方法が提供される。この断熱材の施工方法は、樹脂製の被覆部材であって、複数の直管をそれぞれ覆う直管用断熱部材の端部を嵌め込むための複数の開口を有し、各前記開口に各前記直管用断熱部材が嵌め込まれた状態において、各前記直管を接続するエルボ継手を内部空間に収容することが可能な被覆部材を準備する工程と、各前記直管用断熱部材に前記被覆部材を取り付ける工程と、前記被覆部材に、前記被覆部材の内部空間と外部とを連通する連通孔を形成する工程と、前記連通孔から、前記被覆部材の内部空間へと発泡液を注入する工程と、を備える。
【0008】
この構成によれば、エルボ継手が収容された被覆部材の内部空間へと発泡液を注入し、発泡させることで、エルボ継手の周囲に断熱材(発泡体)を形成する。このため、配管径、配管形状、断熱条件などの配管仕様に応じた複数種類の配管カバーを予め準備しておく必要がなく、在庫管理の手間やコストを削減できると共に、エルボ継手がどのような形状であっても、エルボ継手の形状に適合した断熱材を形成できる。また、エルボ継手の形状に合わせた分割片を作成して組み立てる必要がないため、施工が簡単であり、施工のために熟練工を必要とせず、断熱板等から分割片を切り出す際に生じる廃材のロスを無くすことができる。さらに、直管用断熱部材が嵌め込まれた状態において各直管を接続するエルボ継手を内部空間に収容することが可能な被覆部材を用いるため、直管用断熱部材に対する被覆部材の取り付けと、被覆部材の内部における発泡液注入のための空間(内部空間)の形成とを、手早く、容易に実施できる。さらに、この被覆部材はそのまま発泡体の外装として使用できるため、発泡体の劣化を抑制できると共に、美観を向上できる。これらの結果、本構成によれば、手早く、簡単に、かつ低コスト(人件費、在庫管理コスト、廃材コスト)で断熱材を施工することが可能となる。
【0009】
(2)上記形態の施工方法において、前記連通孔を形成する工程では、各前記直管用断熱部材に取り付けられた前記被覆部材に対して、前記被覆部材と前記直管用断熱部材とが重畳していない範囲内の一部分に、前記連通孔を形成してもよい。
この構成によれば、連通孔を形成する工程では、被覆部材と直管用断熱部材とが重畳していない範囲内の一部分に連通孔を形成するため、直管用断熱部材側への発泡液の漏れを抑制し、かつ、エルボ継手の周囲に容易に断熱材(発泡体)を形成できる。
【0010】
(3)上記形態の施工方法において、前記連通孔を形成する工程では、各前記直管用断熱部材に取り付けられた前記被覆部材に対して、前記被覆部材の軸線方向に沿って延び、前記被覆部材を鉛直方向に切断する仮想面の上端を基準として、±45度の範囲内の一部分に、前記連通孔を形成してもよい。
この構成によれば、連通孔を形成する工程では、被覆部材の軸線方向に沿って延び、被覆部材を鉛直方向に切断する仮想面の上端を基準として、±45度の範囲内の一部分に連通孔を形成するため、重力の作用を以って発泡液を被覆部材の内部空間内に行き渡らせることができる。
【0011】
(4)上記形態の施工方法において、前記被覆部材を取り付ける工程では、前記被覆部材の端部と、各前記直管用断熱部材の外表面とを、防湿テープで固定してもよい。
この構成によれば、被覆部材を取り付ける工程では、被覆部材の端部と、直管用断熱部材の外表面とを防湿テープで固定するため、直管用断熱部材側への発泡液の漏れを抑制できる。また、被覆部材の内部を防滴することができ、施工後の断熱材の耐久性を向上できる。
【0012】
(5)上記形態の施工方法では、さらに、前記注入する工程の後に、前記被覆部材の内部空間が前記発泡液により形成された発泡体で充填されているか否かを確認する工程と、充填されていない場合、前記連通孔を形成する工程と、前記注入する工程と、前記確認する工程と、を順次繰り返してもよい。
この構成によれば、さらに、被覆部材の内部空間が発泡液により形成された発泡体で充填されているか否かを確認する工程を備え、充填されていない場合に、再び連通孔を形成し、発泡液を注入し、確認する工程を繰り返すため、被覆部材の内部空間に確実に断熱材(発泡体)を形成できる。
【0013】
(6)上記形態の施工方法では、さらに、前記注入する工程の後に、前記連通孔を封止する工程を備えていてもよい。
この構成によれば、さらに、注入する工程の後に、連通孔を封止する工程を備えるため、被覆部材の内部を防滴することができ、施工後の断熱材の耐久性を向上できる。
【0014】
(7)上記形態の施工方法では、さらに、前記取り付ける工程の前に、各前記直管を、半円筒形状の一対の前記直管用断熱部材によってそれぞれ覆う工程を備え、前記覆う工程では、一の前記直管に取り付ける一方の前記直管用断熱部材と、他の前記直管に取り付ける一方の前記直管用断熱部材との間に、各前記直管用断熱部材を架橋する架橋部材であって、前記被覆部材の内部空間を区切る架橋部材を設けてもよい。
この構成によれば、さらに、直管を一対の直管用断熱部材によって覆う工程において、被覆部材の内部空間を区切る架橋部材を設けるため、施工後の断熱材(発泡体)を、この架橋部材を境界として一方と他方とに分解しやすくできる。この結果、施工後の断熱材の取り外しを容易にできる。
【0015】
(8)本発明の一形態によれば、断熱材が提供される。この断熱材は、樹脂製の被覆部材であって、複数の直管をそれぞれ覆う直管用断熱部材の端部を嵌め込むための複数の開口を有し、各前記開口に各前記直管用断熱部材が嵌め込まれた状態において、各前記直管を接続するエルボ継手を内部空間に収容することが可能な被覆部材と、前記被覆部材の内部空間に充填されている発泡体と、を備える。
【0016】
本発明は、断熱材の施工方法や、断熱材以外の種々の形態で実現できる。本発明は、例えば、断熱材を含む配管の施工方法、断熱材により被覆された配管などの形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における断熱材の施工方法を例示した説明図である。
図2】配管を例示した説明図である。
図3】工程S12の様子を例示した説明図である。
図4】工程S12の様子を例示した説明図である。
図5】被覆部材を例示した説明図である。
図6】工程S14の様子を例示した説明図である。
図7】工程S16の様子を例示した説明図である。
図8】工程S18の様子を例示した説明図である。
図9】連通孔の好ましい形成範囲を例示した説明図である。
図10図9のA−A線における断面を例示した説明図である。
図11】工程S20の様子を例示した説明図である。
図12】工程S22,S24の様子を例示した説明図である。
図13】第2実施形態における断熱材の施工方法を例示した説明図である。
図14】被覆部材のA−A線(図9)における断面を例示した説明図である。
図15】第3実施形態の断熱材の施工方法について説明する図である。
図16】第4実施形態の断熱材の施工方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態における断熱材の施工方法を例示した説明図である。図2は、配管を例示した説明図である。図1では、建築物やプラントなどに設置される各種の配管に対して、配管を被覆して外部から断熱する断熱材を施工する方法を説明する。ここで、「断熱」とは、保温と、保冷との両方を含む。配管には、直線状に延びる直管と、直管同士を屈曲した形状で接続するエルボ継手とが含まれる。
【0019】
図2には、第1の直管10及び第2の直管20からなる2本の直管と、第1の直管10と第2の直管20とを接続するエルボ継手30とを図示する。図2に示す第1の直管10、第2の直管20、及びエルボ継手30は、略同一の径を有している。エルボ継手30の曲がり角度は、直角(90度)である。なお、直管の本数は3本以上であってもよく、エルボ継手30は三又以上であってもよい。第1の直管10、第2の直管20、及びエルボ継手30の各径は相違していてもよい。エルボ継手30の曲がり角度は、直角でなくてもよい。図2では、第1の直管10、第2の直管20、及びエルボ継手30の中心を通る軸(以降、軸線Oとも呼ぶ)を一点鎖線で表す。以降、第1の直管10、第2の直管20、及びエルボ継手30を総称して「配管」とも呼ぶ。
【0020】
図1を用いて、配管に断熱材を施工する方法について説明する。まず、工程S10では、エルボ継手30に離型剤を塗布する。離型剤は、エルボ継手30から断熱材を取り外す際に、エルボ継手30に対する断熱材の固着を抑制し、断熱材をスムーズに取り外すために塗布する。離型剤としては、流動パラフィン、植物性ワックス等の任意の離型剤を使用できる。なお、工程S10では、エルボ継手30だけでなく、エルボ継手30に接続されている側の第1の直管10及び第2の直管20の端部近傍にも、離型剤を塗布してよい。工程S10では、離経済を塗布することに代えて、エルボ継手30の外表面をシートで覆ってもよい。
【0021】
図3及び図4は、工程S12の様子を例示した説明図である。工程S12では、直管に断熱部材を取り付ける。具体的には、第1の直管10を、それぞれ半円筒形状を有する一対の直管用断熱部材11,12(図3,4)で覆った後、直管用断熱部材11,12を固定する。直管用断熱部材11,12の固定は、例えば、周方向を、図示しないステンレス製の針金等で固縛した上で、直管用断熱部材11と直管用断熱部材12とが隣接する外表面に、図示しない防湿テープを貼付することで実施できる。なお、針金等による固縛と、防湿テープの貼付とはいずれか一方を省略してもよい。同様に、第2の直管20を、それぞれ半円筒形状を有する一対の直管用断熱部材21,22(図3,4)で覆った後、直管用断熱部材21,22を固定する。なお、図3及び図4では、直管用断熱部材11,12の角部と、直管用断熱部材21,22の角部とが接触しているが、両角部の配置は任意に定めることができ、例えば離れた位置に配置されてもよい。図3以降の各図において、軸線Oは、第1の直管10、第2の直管20、エルボ継手30、直管用断熱部材11,12、及び直管用断熱部材21,22の中心を通る軸とする。
【0022】
図5は、被覆部材31を例示した説明図である。図6は、工程S14の様子を例示した説明図である。工程S14では、直管用断熱部材11,12と、直管用断熱部材21,22とに対して、被覆部材31を取り付ける。被覆部材31は、樹脂により形成されており、図5に示すように、複数(図5の例では2つ)の開口31oと、一対の合わせ端部31eとを有する屈曲形状のカバーである。各開口31oは、被覆部材31の両端部に設けられており、直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22の端部を、それぞれ嵌め込むための開口である。合わせ端部31eは、屈曲の内周部分に設けられたベロであり、一方のベロ31eと他方のベロ31eとの合わせ幅(重畳幅)を変更することにより、開口31oの径を可変とできる。被覆部材31は、耐熱性、耐寒冷性、及び柔軟性を有する樹脂材料により形成されることが好ましく、樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、高密度ポリエチレンポリカーボネート等を使用できる。
【0023】
図5及び図6を参照しつつ、被覆部材31の取り付けについて説明する。まず、一方のベロ31eと他方のベロ31eとを把持して、図5の上下方向に引っ張ることにより、被覆部材31を開放状態とする。その状態で、エルボ継手30の屈曲の外周部分から被覆部材31を挿入した後、被覆部材31の開放状態を解除して、被覆部材31を図5の形状に戻す。これにより、被覆部材31両端の開口31oに、直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22が嵌め込まれる。図6において破線で示すように、各開口31oに直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22が嵌め込まれた状態において、エルボ継手30は、被覆部材31の内部空間に収容された状態となる。なお、被覆部材31が、直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22を覆っている部分の軸線O方向における長さは、3mm以上であることが好ましく、5mmであることがより好ましい。この後、被覆部材31の合わせ端部31eを、防湿テープ等で固定、封止する。
【0024】
図7は、工程S16の様子を例示した説明図である。工程S16では、被覆部材31を固定する。具体的には、被覆部材31の端部(開口31oの端部)と、直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22の各外表面とに対して、防湿テープ32を巻回する。これにより、被覆部材31と、直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22とが固定される。
【0025】
図8は、工程S18の様子を例示した説明図である。工程S18では、被覆部材31に連通孔31hを形成する。連通孔31hは、被覆部材31においてエルボ継手30が収容されている内部空間と、外部とを連通する貫通孔である。連通孔31hは、被覆部材31の一部分をカッターで切り取ることで形成できる。連通孔31hの形成には、ドリル、熱溶融等の手段を用いてもよい。連通孔31hの形状は任意に決定でき、図8に示す円形形状のほか、スリット形状、矩形形状、多角形形状等を採用できる。
【0026】
図9は、連通孔31hの好ましい形成範囲を例示した説明図である。工程S18において形成する連通孔31hは、施工現場において実際に取り付けられた被覆部材31に対して、被覆部材31と、直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22とが重複していない範囲(図9:斜線で示す範囲)の一部分に形成されることが好ましい。
【0027】
図10は、図9のA−A線における断面を例示した説明図である。施工現場において実際に取り付けられた被覆部材31について、被覆部材31の中心線(軸線31O)に沿って延び、被覆部材31を鉛直方向に切断する仮想面L(図10:破線)を設定する。このとき、工程S18において形成する連通孔31hは、仮想面Lの上端を基準として、±θ1度の範囲内に形成されることが好ましく、±θ2度の範囲内に形成されることがより好ましい。θ1,2は任意に決定することができるが、θ1は例えば45度とでき、θ2は例えば30度とできる。「+」は周方向の時計回り側を意味し、「−」は周方向の反時計回り側を意味する。
【0028】
図11は、工程S20の様子を例示した説明図である。工程S20では、発泡液としてのポリウレタンフォーム液を注入する。具体的には、ポリオール原液とポリイソシアネート原液とをビーカー等を用いて量り込み、攪拌混合することでポリウレタンフォーム液を準備する。この際、必要に応じて、発泡剤、整泡剤、触媒、着色剤などを添加してもよい。次に、準備したポリウレタンフォーム液を、被覆部材31の連通孔31hから、被覆部材31の内部空間へと注入する。注入されたポリウレタンフォーム液は、時間と共に発泡し、エルボ継手30の周囲を取り囲む発泡体40を形成する(図11:ドットハッチング)。図11の例では、被覆部材31の内部空間の全て、具体的には、エルボ継手30の周囲の空間と、被覆部材31の内表面と直管用断熱部材11,12の外表面との間の空間と、被覆部材31の内表面と直管用断熱部材21,22の外表面との間の空間との全てに発泡体40が形成されている。しかし、工程S20では、エルボ継手30の周囲の空間に発泡体40が形成されれば足りる。なお、発泡液としては、ポリウレタンフォーム液に限られず、断熱性を有する発泡体40を形成するための任意の液体を使用できる。
【0029】
図12は、工程S22,S24の様子を例示した説明図である。工程S22では、充填・硬化の確認を行う。具体的には、工程S20で注入されたポリウレタンフォーム液が、被覆部材31の内部空間に充填されたかを、目視により確認する。また、工程S20で注入されたポリウレタンフォーム液が、発泡を終えて硬化したか(発泡体40の形成が完了したか)を、目視により確認する。硬化の確認ができた後、工程S24では、被覆部材31の連通孔31hを封止する。具体的には、被覆部材31の外表面から、連通孔31hの周囲を覆うように防湿テープ33を貼付することで、被覆部材31の連通孔31hを封止する。このように、図1で説明した施工方法では、被覆部材31と、被覆部材31の内部空間に形成された発泡体40とからなる断熱材を、簡単に施工できる。
【0030】
なお、図1のうち、工程S14,S18,S20が「断熱材の施工方法」に相当する。また、工程S12は「覆う工程」に相当し、工程S14と工程S16は「被覆部材を取り付ける工程」に相当し、工程S18は「連通孔を形成する工程」に相当し、工程S20は「発泡液を注入する工程」に相当し、工程S22は「確認する工程」に相当し、工程S24は「連通孔を封止する工程」に相当する。工程S14,S18,S20以外の他の工程は、省略してもよい。被覆部材31と、被覆部材31の内部空間に形成された発泡体40とは、「断熱材」に相当する。
【0031】
以上のように、第1実施形態の断熱材の施工方法によれば、エルボ継手30が収容された被覆部材31の内部空間へとポリウレタンフォーム液(発泡液)を注入し、発泡させることで、エルボ継手の周囲に断熱材(発泡体40)を形成する。このため、第1の直管10、第2の直管20、及びエルボ継手30の径といった配管径、第1の直管10、第2の直管20、及びエルボ継手30の形状といった配管形状、断熱条件などの配管仕様に応じた複数種類の配管カバーを予め準備しておく必要がなく、在庫管理の手間やコストを削減できると共に、エルボ継手30がどのような形状であっても(例示したL字状でなく、T字状や十字状であっても)、エルボ継手30の形状に適合した断熱材を形成できる。また、エルボ継手30の形状に合わせた分割片を作成して組み立てる必要がないため、施工が簡単であり、施工のために熟練工を必要とせず、断熱板等から分割片を切り出す際に生じる廃材のロスを無くすことができる。
【0032】
さらに、第1実施形態の断熱材の施工方法によれば、直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22が嵌め込まれた状態において第1の直管10と第2の直管20とを接続するエルボ継手30を内部空間に収容することが可能な被覆部材31(図5)を用いるため、直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22に対する被覆部材31の取り付けと、被覆部材31の内部におけるポリウレタンフォーム液(発泡液)注入のための空間(内部空間)の形成とを、手早く、容易に実施できる。さらに、この被覆部材31はそのまま発泡体40の外装として使用できるため、発泡体40の劣化を抑制できると共に、美観を向上できる。これらの結果、本実施形態の断熱材の施工方法によれば、手早く、簡単に、かつ低コスト(人件費、在庫管理コスト、廃材コスト)で、断熱材を施工することが可能となる。
【0033】
さらに、第1実施形態の断熱材の施工方法において、連通孔31hを形成する工程S18では、施工現場において実際に取り付けられた被覆部材31について、被覆部材31と直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22とが重畳していない範囲内(図9:斜線ハッチング)の一部分に連通孔31hを形成するため、直管用断熱部材11〜22側へのポリウレタンフォーム液(発泡液)の漏れを抑制し、かつ、エルボ継手30の周囲に容易に断熱材(発泡体40)を形成できる。
【0034】
さらに、第1実施形態の断熱材の施工方法において、連通孔31hを形成する工程S18では、施工現場において実際に取り付けられた被覆部材31について、被覆部材31の中心線(軸線31O)に沿って延び、被覆部材31を鉛直方向に切断する仮想面L(図10:破線)の上端を基準として、±45(±θ1)度の範囲内の一部分に連通孔31hを形成するため、重力の作用を以って、ポリウレタンフォーム液(発泡液)を被覆部材31の内部空間内に行き渡らせることができる。
【0035】
さらに、第1実施形態の断熱材の施工方法において、被覆部材31を取り付ける工程S16では、被覆部材31の端部と、直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22の外表面とを防湿テープ32で固定するため、直管用断熱部材11,12及び直管用断熱部材21,22の側へのポリウレタンフォーム液(発泡液)の漏れを抑制できる(図7図11)。また、被覆部材31の内部を防滴することができ、施工後の断熱材の耐久性を向上できる。さらに、注入する工程S20の後に、連通孔31hを封止する工程S24を備えるため、被覆部材31の内部を防滴することができ、施工後の断熱材の耐久性を向上できる。
【0036】
<第2実施形態>
図13は、第2実施形態における断熱材の施工方法を例示した説明図である。第2実施形態の施工方法では、工程S22において被覆部材31の内部空間にポリウレタンフォーム液(発泡液)又は発泡体40が充填されていないと判定された場合に、工程S18〜S24を繰り返して実施する。
【0037】
図14は、被覆部材31のA−A線(図9)における断面を例示した説明図である。図14(A)は、1回目の工程S18〜S22を終えた時点の断面図を示し、図14(B)は、2回目の工程S18〜S22を終えた時点の断面図を示す。例えば、図14(A)に示すように、1回目のポリウレタンフォーム液の注入及び発泡によって、被覆部材31の内部空間の全てに、発泡体40が形成されない場合がある。特に、ポリウレタンフォーム液は粘度が高いため、最初に形成した連通孔31hの位置、配管の傾き、大きさ等によっては、図14(A)に示すように均一に発泡体40が形成されない場合がある。このような場合、図14(B)に示すように、1回目の工程S18で形成した連通孔31hを防湿テープ33で封止して、他の箇所に他の連通孔31hを形成する。他の連通孔31hの位置は、発泡体40が未形成の内部空間に連通する位置、かつ、図9及び図10で説明した範囲内であることが好ましい。他の連通孔31hを形成後、この連通孔31hからポリウレタンフォーム液を再度注入する。このように、1回目の工程S18〜S22と、2回目の工程S18〜S22とにおいて、異なる位置に形成された連通孔31hを用いることで、発泡体40が未形成の内部空間に対して、容易に発泡体40を形成できる。
【0038】
このように、上述した断熱材の施工方法においては、被覆部材31の内部空間に発泡体40が充填されていない場合、工程S18〜S24を複数回(2回以上でもよい)繰り返して実施してもよい。このとき、1回目のポリウレタンフォーム液の注入のための連通孔31hと、2回目のポリウレタンフォーム液の注入のための連通孔31hとを、個別に設けてもよい。一方、2回目の工程S18を省略して、1回目と2回目のポリウレタンフォーム液の注入に、同じ連通孔31hを用いてもよい。このようにしても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第2実施形態の施工方法によれば、被覆部材31の内部空間に確実に断熱材(発泡体40)を形成できる。
【0039】
<第3実施形態>
図15は、第3実施形態の断熱材の施工方法について説明する図である。第3実施形態の施工方法では、被覆部材31の連通孔31hを封止する工程S24(図1)において、封止部材50を用いて連通孔31hを封止する。封止部材50は、被覆部材31に嵌合する凸部を有する部材であり、例えば弾性を有するゴムや合成樹脂により形成されている。第3実施形態の工程S24では、連通孔31hに封止部材50を嵌合させた後、防湿テープ33を用いて封止部材50と被覆部材31の外表面とを固定している。このようにしても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第3実施形態の施工方法によれば、より緊密に連通孔31hを封止できる。
【0040】
<第4実施形態>
図16は、第4実施形態の断熱材の施工方法について説明する図である。第4実施形態の施工方法では、直管に断熱部材を取り付ける工程(覆う工程)S12(図1)において、第1の直管10に取り付ける直管用断熱部材11と、第2の直管20に取り付ける直管用断熱部材21との間に、両者を架橋する架橋部材60を設ける。
【0041】
架橋部材60は、エルボ継手30の形状に沿った(図16の例ではL字状)の板状又は膜状の部材であり、例えば樹脂材料により形成されている。なお、架橋部材60の表面には、予め離型剤が塗布されていてもよい。架橋部材60は、略同一形状の2枚の薄膜により構成されてもよい。第4実施形態の工程S12では、まず、第1の直管10に直管用断熱部材11を設置し、第2の直管20に直管用断熱部材21を設置する。次に、架橋部材60の一端を直管用断熱部材11の上に配置し、他端を直管用断熱部材21の上に配置した状態で、架橋部材60を設置する。図16の例では、エルボ継手30の屈曲の内周側に小さな架橋部材60を設置し、エルボ継手30の屈曲の外周側に大きな架橋部材60を設置しているが、いずれか一方は省略してもよい。最後に、直管用断熱部材11の上から直管用断熱部材12を被せ、直管用断熱部材21の上から直管用断熱部材22を被せる。
【0042】
このようにすれば、被覆部材31を取り付ける工程S14を終了した後において、被覆部材31の内部空間が、架橋部材60によって仕切られた状態となる。なお、架橋部材60を設けた場合であっても、ポリウレタンフォーム液は液体状であるため、架橋部材60とエルボ継手30との隙間から、被覆部材31の内部空間内に充填可能である。このようにしても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第4実施形態の施工方法によれば、直管を一対の直管用断熱部材によって覆う工程S12において、被覆部材31の内部空間を区切る架橋部材60を設けるため、施工後の断熱材の取り外し時において、断熱材(発泡体40)を、この架橋部材60を境界として一方と他方とに分解しやすくできる。この結果、施工後の断熱材の取り外しを容易にできる。
【0043】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0044】
上記第1〜4実施形態では、断熱材の施工方法について、作業手順及び作業内容の一例を説明した。しかし、断熱材の施工方法は種々の作業手順で実施できる。また、各手順における作業内容についても種々の変更が可能である。例えば、ポリウレタンフォーム液を注入する工程S20に先立って(例えば、工程10よりも前の段階で)、ポリウレタンフォーム液を予め準備しておいてもよい。例えば、連通孔31hを形成する工程18では、被覆部材31に対して、一時に複数の連通孔31hを形成してもよい。例えば、充填・硬化の確認をする工程S22では、ポリウレタンフォーム液の発泡に伴う温度変化を感知するサーモグラフィーを用いて確認を行ってもよい。また、工程S22では、被覆部材31を叩いた際の音によって確認を行ってもよい。例えば、工程S24の後に、さらに、被覆部材31、直管用断熱部材11,12、及び直管用断熱部材21,22の少なくとも一部分を外装材により保護してもよい。また、防湿テープ32,33に代えて任意の接合剤(シーリング材)を用いてもよい。
【0045】
上記第1〜4実施形態の構成、及び上記変形例の構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態の施工方法において、第3実施形態で説明した工程24を採用してもよく、第4実施形態で説明した工程S12を採用してもよい。上述した発泡体40の材料は、日本工業規格JIS A 9501:2014、JIS A 9510:2009、JIS A 9511:2009およびJIS A 9504:2011に規定される材料が好ましく、例えば、発泡プラスチック材料(硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームなど)を採用できる。
【0046】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0047】
10…第1の直管
11,12…直管用断熱部材
20…第2の直管
21,22…直管用断熱部材
30…エルボ継手
31…被覆部材
31h…連通孔
31o…開口
32,33…防湿テープ
40…発泡体
50…封止部材
60…架橋部材
【要約】
【課題】手早く、簡単に、かつ低コストで断熱材を施工することが可能な技術を提供する。
【解決手段】断熱材の施工方法は、樹脂製の被覆部材であって、複数の直管をそれぞれ覆う直管用断熱部材の端部を嵌め込むための複数の開口を有し、各開口に各直管用断熱部材が嵌め込まれた状態において、各直管を接続するエルボ継手を内部空間に収容することが可能な被覆部材を準備する工程と、各直管用断熱部材に被覆部材を取り付ける工程と、被覆部材に、被覆部材の内部空間と外部とを連通する連通孔を形成する工程と、連通孔から、被覆部材の内部空間へと発泡液を注入する工程と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図15
図16