【文献】
Diplatinum(II)-coordinated polyoxotungstate: synthesis, molecular structure, and photocatalytic performance for hydrogen evolution from water under visible-light irradiation,Dalton Transactions,2012年,41,pp.10021-10027
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
一実施形態に係る、ポリオキソメタレート化合物の焼成体は、ポリオキソメタレート化合物を焼成することによって生成する。焼成体を得るために用いられるポリオキソメタレート化合物は、置換型ポリオキソメタレート及びその対イオンから構成される。置換型ポリオキソメタレートがアニオンであることから、対イオンは一般にカチオンである。対イオンは、例えば、Cs
+、K
+、Na
+、Li
+、及びH
+から選ぶことができる。
【0013】
置換型ポリオキソメタレートは、欠損サイトを有するポリオキソメタレートと、欠損サイトに配位した置換構造部とを含む。置換構造部は、白金原子及び該白金原子に結合した配位子から構成される。
【0014】
ポリオキソメタレートは、ヘテロ原子と、複数の遷移金属原子と、ヘテロ原子又は遷移金属原子に結合した複数の酸素原子と、を含む。このポリオキソメタレートにおいて、一般に、複数の遷移金属原子が、酸素原子を介してヘテロ原子に結合している。1分子のポリオキソメタレート化合物に含まれるヘテロ原子は、通常、1個である。焼成前のポリオキソメタレート化合物は、水和物を形成していてもよい。
【0015】
例えば、ケギン(Keggin)型、ドーソン(Dawson)型、アンダーソン(Anderson)型、又はウォー(Waugh)型であることができるが、本実施形態においてポリオキソメタレートは最も典型的にはケギン型である。ケギン型の置換型ポリオキソメタレートは、例えば、式:
[XM
11O
39{Pt(L)
2}
2]
n−
で表すことができる。式中、Xはヘテロ原子を示し、Mは遷移金属元素を示し、LはPtに結合した配位子を示し、nは1〜10の整数を示す。Mがタングステン原子(W)である場合、nは通常4又は5である。例えば、Xがケイ素原子又はゲルマニウム原子である場合、nは4であり、Xがホウ素原子又はアルミニウム原子である場合、nは5である。
【0016】
ヘテロ原子は、ケイ素原子(Si)、ゲルマニウム原子(Ge)、アルミニウム原子(Al)及びホウ素原子(B)から選択することができる。これらの中でも、ヘテロ原子がケイ素原子又はゲルマニウム原子であるとき、焼成体が反応触媒としてより一層高い活性を発揮し易い傾向がある。ヘテロ原子がケイ素原子であってもよい。
【0017】
遷移金属原子としては、タングステン原子(W)、及びモリブデン原子(Mo)が挙げられる。これらの中でも、遷移金属原子がタングステン原子であるとき、焼成体が反応触媒としてより一層高い光触媒としての活性を発揮し易い傾向がある。
【0018】
図1は、ポリオキソメタレート化合物を構成する置換型ポリオキソメタレートの一実施形態を示す模式図である。
図1に示す置換型ポリオキソメタレート1は、欠損サイト10を有するポリオキソメタレート2と、欠損サイト10に配位した置換構造部7とを有している。
【0019】
ポリオキソメタレート2は、ヘテロ原子及び酸素原子によって形成された1個の基本単位3と、基本単位3の周囲に配置され、遷移金属原子及び酸素原子によって形成された11個の基本単位5とから構成される、ケギン型のポリオキソメタレートである。基本単位3は、XO
4(Xはヘテロ原子を示す。)で表される酸化物であり、四面体の構造を有する。基本単位5は、MO
6(Mは遷移金属原子を示す。)で表される金属酸化物であり、八面体の構造を有する。
【0020】
置換構造部7は、白金原子Pt、及び1個の白金原子に結合した2個の配位子Lを有する。置換構造部7の白金原子が、欠損サイト10に隣接する基本単位5の酸素原子と結合している。白金原子に配位する配位子Lの例としては、NH
3(アンミン)、及びピリジンが挙げられる。2個の配位子Lが、1分子内に2個の窒素原子を含む1個の2座配位子から構成されていてもよい。2座配位子の例としては、1,10−フェナントロリン、及びビピリジルが挙げられる。配位子20としてのNH
3は、焼成によって特に容易に脱離することができる。
【0021】
ポリオキソメタレート化合物を焼成することにより、焼成体が得られる。ポリオキソメタレート化合物の焼成は、空気雰囲気又は不活性ガス雰囲気で行ってもよいし、大気圧、減圧、又は加圧の雰囲気下で行ってもよい。本明細書において、「ポリオキソメタレート化合物を焼成する」とは、ポリオキソメタレート化合物を、何らかの化学的な性質が不可逆的に変化する程度に加熱することを意味する。例えば、ポリオキソメタレート化合物を200℃以上に加熱することは、通常、ポリオキソメタレート化合物を焼成することに該当する。
【0022】
ポリオキソメタレート化合物を、白金原子に結合した配位子のうち少なくとも一部が脱離するように、焼成することができる。配位子が脱離した後のポリオキソメタレート化合物は、反応触媒として高い活性を発揮することができる。係る観点から、配位子が実質的に含まれなくなるまで、ポリオキソメタレート化合物を焼成してもよい。焼成の際、ポリオキソメタレート化合物を200℃以上に加熱することにより、配位子を容易に脱離させることができる。同様の観点から、焼成のための加熱温度は、250℃以上であってもよい。焼成のための加熱時間は、焼成体の触媒活性が高められるように適宜調整すればよいが、例えば1〜20時間であってもよい。
【0023】
焼成体が配位子を実質的に含まないことは、例えば、焼成体の
1H NMRスペクトル、又は赤外吸収スペクトルにおいて、配位子に由来するシグナル又は吸収ピークに基づいて確認することができる。
1H NMRスペクトル又は赤外吸収スペクトルのうち少なくともいずれか一方で以下の条件が満たされる場合、焼成体が配位子を実質的に含まないとみることができる。
【0024】
1H NMRスペクトルの場合、1.2〜1.5mMの焼成体と、内部標準物質としての29mMの3−(トリメチルシリル)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(以下、「DSS」という)と、重溶媒のジメチルスルホキシド-d
6とを含む試料液を用いて測定した
1H NMRスペクトルにおいて、DSSのメチル基に由来するシグナル(このシグナルを0ppmとする)の積分値が「a」で、配位子に由来するシグナルの積分値が「b」であるとき、比b/aが0.01未満であれば、配位子が実質的に含まれないとみなすことができる。ここで、積分値bは、配位子中の水素原子に由来する全てのシグナルの合計の積分値である。例えば、配位子Lがアンモニア(NH
3)で、ヘテロ原子がケイ素原子で、遷移金属原子がタングステンである焼成前のケギン型のポリオキソメタレートの場合、通常、アンモニアに由来する4.34ppm及び4.37ppmの2本のシグナルが観測されるため、これら2本のシグナルの積分値の和が積分値bである。配位子Lがアンモニア(NH
3)で、ヘテロ原子がゲルマニウム原子で、遷移金属原子がタングステンである焼成前のケギン型のポリオキソメタレートの場合、通常、アンモニアに由来するブロードなシグナルが4.41ppmに1本観測されるため、このブロードなシグナルの積分値が積分値bである。なお、焼成後に配位子に由来するシグナルが識別できない程度まで消失した場合も、配位子が実質的に含まれないとみなすことができる。
【0025】
赤外吸収スペクトルの場合、波長600〜1100cm
−1の範囲において、強度がある程度大きく、焼成前後で同じ由来の吸収ピークと識別できるピークを参照ピークとして選択し、この参照ピークのピーク強度P
0と、波長1100cm
−1以上の範囲において配位子に由来する吸収ピークのうち最大の吸収ピークのピーク強度P
Lとを比較する。ピーク強度の比P
L/P
0が0.1未満であれば、配位子が実質的に含まれないとみなすことができる。ここでのピーク強度は、ベースラインからピーク先端までの距離を意味する。例えば、配位子Lがアンモニア(NH
3)で、ヘテロ原子がケイ素原子で、遷移金属原子がタングステンであるケギン型のポリオキソメタレートの場合、焼成前の赤外吸収スペクトルにおいて891cm
−1又はその近傍の吸収ピークを参照ピークとし、そのピーク強度P
0と、1320〜1360cm
−1の範囲に観測されるアンモニアに由来する吸収帯のピーク強度P
L(最大ピークの強度)とを比較することができる。配位子Lがアンモニア(NH
3)で、ヘテロ原子がゲルマニウム原子で、遷移金属原子がタングステンであるケギン型のポリオキソメタレートの場合、焼成前の赤外吸収スペクトルにおいて947cm
−1又はその近傍の吸収ピークを参照ピークとして選択することができる。なお、焼成後に配位子に由来する吸収ピークが識別できない程度まで消失した場合も、配位子が実質的に含まれないとみなすことができる。
【0026】
ポリオキソメタレート化合物をより高温で焼成することにより、水に不溶な焼成体を得ることができる。水に不溶な焼成体は、高い耐熱性を有する不均一系触媒として利用することができる。ここで、「水に不溶」とは、25℃の水に対する溶解度が、0.01[g/1000g−H
2O]未満であることを意味する。
【0027】
ポリオキソメタレート化合物を、例えば600℃以上、650℃以上、又は700℃以上に加熱することで、水に不溶な焼成体を得ることができる。焼成のための加熱時間は、水に不溶な焼成体が得られるように適宜調整すればよいが、例えば1〜20時間であってもよい。
【0028】
ポリオキソメタレート化合物は、高温での焼成により、水に不溶になるとともに、何らかの構造的な変化を生じる。これは、後述するように、赤外吸収スペクトル、X線回析パターンの変化等から確認される。この構造的な変化によって、触媒活性を発揮する白金原子が高度に分散された状態が、高温でも維持され易くなると考えられる。一般に、金属触媒を高温で長時間を加熱すると、シンタリングによって触媒の表面積が減少し、触媒活性が低下する傾向がある。ところが、本実施形態に係る焼成体の触媒活性は、高温での焼成後に、焼成前と比較してむしろ向上する傾向がある。このような高温の焼成で得られ、水に不溶な焼成体は、高い耐熱性を有する不均一系触媒として有用性が非常に高いといえる。
【0029】
焼成のための加熱温度の上限は、特に制限されないが、通常、1000℃以下程度である。水に可溶な焼成体を製造する場合の加熱温度の上限は、例えば550℃以下程度であってもよい。
【0030】
焼成体は、通常、粒子状の状態で得られる。この粒子を、そのままで、又は他の材料と組み合わせて、各種の化学反応のための反応触媒として用いることができる。例えば、本実施形態の反応触媒は、可視光照射により光反応を進行させるための光触媒として用いることができる。光反応の例としては、水から水素を生成させる反応がある。本明細書において、「光触媒」は、光反応に直接関与する触媒だけでなく、光増感剤も含む用語として使用される。本実施形態に係る反応触媒は、他の光増感剤が存在しない場合であっても、光触媒及び光増感剤として機能して光反応を進行させることができる場合がある。
【0031】
本実施形態の反応触媒が用いられ得る、光反応以外の反応としては、例えば、酸化反応及び水素化反応がある。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
1.ポリオキソメタレート化合物の合成
1−1.Cs
4[SiW
11O
39{cis−Pt(NH
3)
2}
2]・nH
2O(以下「Cs−Si」という場合がある。)
cis−Pt(NH
3)
2Cl
2(分子量:300.05,0.40mmol)0.120gを水200mLに溶解させて、薄黄色の透明溶液を得た。そこに、K
8[SiW
11O
39]・9H
2O(分子量:3239.302,0.20mmol)0.648gを加えた。その後、溶液を90℃の湯浴中で2時間撹拌したところ、溶液中に懸濁物が析出した。溶液を、室温まで放冷してからメンブランフィルターでろ過して、黄色透明の濾液を得た。この濾液にCsCl(分子量:168.36,9mmol)1.523gを加えたところ、懸濁物が析出した。懸濁物を含む溶液を室温で一晩撹拌した後、メンブランフィルターを用いたろ過によって黄色粉体を回収した。回収した粉体をエタノールで洗浄後、1時間かけて吸引乾燥させて、粗生成物を得た。粗生成物を、100mgあたり70℃の蒸留水6mLに溶かした。未溶解物をメンブランフィルターを用いたろ過により取り除いて、黄色の透明溶液を得た。この溶液を室温で静置して、黄色粉体を析出させた。析出した粉体をメンブランフィルターを用いたろ過によって回収し、3時間の吸引乾燥、及び2時間の凍結乾燥によって乾燥させて、ポリオキソメタレート化合物(Cs−Si)の黄色粉体を得た。得られた粉体は、水及びジメチルスルホキシドに対して可溶であった。
【0034】
1−2.Cs
4[GeW
11O
39{cis−Pt(NH
3)
2}
2]・nH
2O(以下「Cs−Ge」という場合がある。)
cis−Pt(NH
3)
2Cl
2(分子量:300.05,0.40mmol)0.120gを蒸留水200mLに溶解させて、薄黄色の透明溶液を得た。そこに、K
6Na
2[GeW
11O
39]・11H
2O(分子量:3197.564,0.2mmol)0.640gを加えた。その後、溶液を90℃の湯浴中で1時間撹拌した。溶液を室温まで放冷後、メンブランフィルターによってろ過して、黄色透明の濾液を得た。この濾液に(分子量:168.36,9mmol)1.523gを加えたところ、懸濁物が析出した。懸濁物を含む溶液を室温で一晩撹拌した後、メンブランフィルターを用いたろ過によって黄色粉体を回収した。回収した粉体をエタノールで洗浄後、1時間かけて吸引乾燥させて、粗生成物を得た。粗生成物を、100mgあたり70℃の蒸留水6mLに溶かした。未溶解物をメンブランフィルターを用いたろ過により取り除いて、黄色の透明溶液を得た。この溶液を室温で静置して、黄色粉体を析出させた。析出した粉体をメンブランフィルターを用いたろ過によって回収し、4時間の吸引乾燥、及び3時間の凍結乾燥によって乾燥させて、ポリオキソメタレート化合物(Cs−Ge)の黄色粉体を得た。得られた粉体は、水及びジメチルスルホキシドに可溶であった。
【0035】
2.焼成
Cs−Si又はCs−Geの粉末を、るつぼ中で250〜800℃の範囲の所定の温度で加熱することにより、焼成した。Cs−Siの粉末は250℃〜550℃の焼成で黄色から茶色に変化し、焼成後の粉末は水に可溶であった。600〜800℃の焼成後のCs−Siの粉末は、灰色で水に不溶であった。
【0036】
3.評価
3−1.紫外可視分光分析
焼成前、及び焼成後のCs−Siを、紫外可視分光によって分析した。測定用試料の濃度は、4.0mg/10mL(溶媒:水)とした。
図2は、焼成前、及び300℃で1時間の焼成後のCs−Siの紫外可視分光スペクトルである。
図3は、焼成前、及び350℃で2時間の焼成後のCs−Geの紫外可視分光スペクトルである。両者とも、焼成によって可視光域の吸光度が上昇した。
【0037】
3−2.
1H NMR
焼成前、及び焼成後のCs−Siを、
1H NMR(溶媒:ジメチルスルホキシド−d
6)によって分析した。
図4は、焼成前、及び300℃で5時間の焼成後の
1H NMRスペクトルである。焼成前に観測された、アンモニア(NH
3)に由来する4.24ppm及び4.41ppmのシグナルが、300℃の焼成後に消失した。これは、白金原子に配位していたNH
3が焼成により脱離したことを示す。Cs−Geの場合も同様に、NH
3に由来するシグナルが300℃の焼成後に消失した。
【0038】
3−3.赤外分光分析、粉末X線回析
焼成前、及び焼成後のCs−Siを、赤外分光及び粉末X線回析によって分析した。
図5及び
図6は、それぞれ、焼成前、及び焼成後のCs−Si及びCs−Geの赤外分光スペクトル及びX線回析パターンを示す。赤外分光スペクトルにおいて、焼成前に観測されたNH
3に由来する1300cm
−1付近の吸収ピークが、250℃以上の焼成によって消失した。
【0039】
更に、600℃以上の焼成により、赤外分光スペクトルの500〜1100cm
−1の領域の吸収ピークの形状が大きく変化するとともに、X線回析パターンにおいて焼成前に観測されなかった多数のピークが出現した。これは、600℃以上の焼成によって、何らかの大きな構造的変化が生じたことを明確に示唆する。
【0040】
3−4.光触媒活性
250℃で5時間の焼成後のCs−Si又はCs−Ge、2.5μmolのエオシンY、2.5μmolのK
5[SiW
11{Al(OH
2)}O
39]・nH
2O(以下、「K−Al」という。)、0.050gのTiO
2粒子、10mLの水、及び100mMのトリエタノールアミン(TEA)を混合して、水から水素を生成する光触媒反応のための反応液を調製した。Cs−Si又はCs−Geの量は、0.2μmolの白金原子に相当する量に調整した。この反応液に、25℃の環境下で、440nm以上の光を照射し、光触媒反応によって生成した水素の量を定量した。比較のため、焼成後のCs−Si及びCs−Geに代えて、焼成前のCs
3[PW
11O
39{cis−Pt(NH
3)
2}
2]・nH
2O(以下「Cs−P」という。)を用いて同様に光触媒反応を行い、水素の生成量を定量した。
【0041】
図7は、水素の生成量と反応時間との関係を示すグラフである。表1は、6時間後の触媒回転数(TON、2×(H
2生成量(mol)/Pt原子量(mol))を示す。250℃の焼成によって水素の生成量が大きく増大しており、250℃の焼成後のCs−Si及びCs−Geが、光触媒として焼成前のCs−Pと比較して更に高い活性を有していることが確認された。
【0042】
【表1】
【0043】
250℃で13時間の焼成後のCs−Si又はCs−Ge、0.200gのTiO
2粒子、10mLの水、及び30mMのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)を混合して、水から水素を生成する光触媒反応のための反応液を調製した。Cs−Si又はCs−Geの量は、0.8μmolの白金原子に相当する量に調整した。この反応液に、25℃の環境下で、400nm以上の光を照射し、光触媒反応によって生成した水素の量を定量した。比較のため、焼成後のCs−Si及びCs−Geに代えて、焼成前のCs−Pを用いて同様に光触媒反応を行い、水素の生成量を定量した。
【0044】
図8は、水素の生成量と反応時間との関係を示すグラフである。表2は、6時間後の触媒回転数を示す。250℃の焼成によって水素の生成量が大きく増大しており、250℃の焼成後のCs−Si及びCs−Geが、光触媒として焼成前のCs−Pと比較して更に高い活性を有していることが確認された。
【0045】
【表2】
【0046】
800℃で5時間の焼成後のCs−Si又はCs−Ge、2.5μmolのエオシンY、2.5μmolのK−Al、0.050gのTiO
2粒子、10mLの水、及び100mMのTEAを混合して、水から水素を生成する光触媒反応のための反応液を調製した。Cs−Siの量は、0.2μmolの白金原子に相当する量に調整した。この反応液に、25℃の環境下で、400nm以上の光を照射し、光触媒反応によって生成した水素の量を定量した。比較のため、焼成後のCs−Siに代えて、焼成前の[(CH
3)
4N]
4[SiW
11O
39{cis−Pt(NH
3)
2}
2]・nH
2O(焼成前、以下「TMA−Si」という。)及び、[(CH
3)
4N]
4[GeW
11O
39{cis−Pt(NH
3)
2}
2]・nH
2O(焼成前、以下「TMA−Ge」という。)及び、Cs−Pを用いて同様に光触媒反応を行い、水素の生成量を定量した。
【0047】
図9は、水素の生成量と反応時間との関係を示すグラフである。表3は、6時間後の触媒回転数を示す。800℃の焼成によって水素の生成量が増大しており、800℃の焼成後のCs−Si及びCs−Geが、光触媒として焼成前のTMA−Si、TMA−Ge、Cs−Pと比較して更に高い活性を有していることが確認された。焼成前のTMA−Si及びTMA−Geは、通常、ポリオキソメタレートの部分の組成が共通である焼成前のCs−Si及びCs−Geと同等の触媒活性を示す。したがって、
図9の結果から、焼成後のCs−Si及びCs−Geの触媒活性が、焼成前のCs−Si及びCs−Geと比較しても向上したといえる。
【0048】
【表3】