(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1滑り軸受における前記回転軸の傾斜角度が最大の状態において、前記回転軸が前記第1滑り軸受の内側上端と内側下端に接触することを特徴とする請求項1または2に記載のブラシレスモータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような構造では、回転軸がフレームの中央に固定された焼結含油軸受と、プリント基板に固定された焼結含油軸受にそれぞれ軸支されているため、これらの軸受の芯ずれが生じやすい。2個の軸受の芯ずれが生じると、例えば、軸受と回転軸の異常磨耗やこじりが生じやすくなり、異音が発生したり、ブラシレスモータの耐久性が低下したりする問題がある。
仮に、フレーム側とプリント基板側との組立精度を高くすれば、2個の軸受の芯ずれは抑制できるものの、製造費用が高くなってしまう。
そこで、例えば、どちらか1個の軸受だけで回転軸を軸支する構成にすると、軸受の芯ずれによる問題はなくなる。しかしながら、ブラシレスモータを特に減速機構付きの電動モータなどに適用した場合には、フレーム(カバー部材)から突出した回転軸に径方向から過大な荷重が加わった際に回転軸が変形してしまう恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するブラシレスモータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のブラシレスモータは、
第1円筒部と、前記第1円筒部の下端を閉塞する底部と、を有する軸受ホルダと、
前記第1円筒部の内周面に固定された第1滑り軸受と、
前記第1滑り軸受により、前記第1滑り軸受の中心軸を中心に回転可能に支持された回転軸と、
第2円筒部と前記第2円筒部の上端を閉塞する天板とを有し前記回転軸に固定されたロータケースと、前記第2円筒部の周面に固定されたロータマグネットと、を有するロータと、
前記ロータマグネットに対して径方向で対面するように配されたステータと、
前記底部から径方向外方へと広がる保持板と、
第3円筒部と前記第3円筒部の上端を閉塞する蓋部とを有し、前記ロータと前記ステータを覆うように前記第3円筒部の下端が前記保持板に固定されたカバー部材と、
第2滑り軸受と、
を備えるブラシレスモータであって、
前記カバー部材は、前記蓋部の中央に筒部を有し、
前記第2滑り軸受は、前記筒部に固定されており、
前記回転軸は、前記筒部から上方向に突出し、
前記第1滑り軸受は、主軸受であり、
前記第2滑り軸受は、前記回転軸が径方向から過大な荷重を受けた際に、前記第1滑り軸受と共に前記荷重を受ける補助軸受であり、
前記第1滑り軸受における前記回転軸の傾斜角度が最大でない状態では、前記回転軸は前記第2滑り軸受に非接触であり、
前記回転軸が径方向から過大な荷重を受け、前記回転軸が前記第2滑り軸受に接触し始める際の前記回転軸の変形量が、0から最大弾性変形量の範囲内であることを特徴とする。
【0007】
本発明は、更なる特徴として、
「前記第2滑り軸受の上下方向の長さは、前記第1滑り軸受の上下方向の長さより短いこと」、
「前記第1滑り軸受における前記回転軸の傾斜角度が最大の状態において、前記回転軸が前記第1滑り軸受の内側上端と内側下端に接触すること」、
「前記回転軸が径方向から過大な荷重を受けた際に、前記回転軸が前記第2滑り軸受の内側上端に接触すること」、
「前記天板と前記第2滑り軸受との間の前記回転軸には、平板面を有する硬質材からなる第1ワッシャ部材が固定されており、
前記第1ワッシャ部材は、前記天板と前記第2滑り軸受に非接触な状態で配置されていること」、
「前記第1ワッシャ部材と前記第2滑り軸受の間の前記回転軸には、平板面を有する軟質材からなる第2ワッシャ部材が設けられており、
前記第2ワッシャ部材は、前記第2滑り軸受と非接触に配置されていること」、
「前記ロータマグネットは、前記第2円筒部の内周面に固定されており、
前記ステータは、前記第1円筒部の外周面に固定されたステータコアを有し、
前記ステータコアは、前記ロータマグネットの内周面と径方向に対向して配置されていること」を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のブラシレスモータによれば、第1滑り軸受を主軸受とし、第2滑り軸受を回転軸が過大な径方向荷重を受けた時だけその荷重を受ける補助軸受としたことにより、2個の軸受の芯ずれに起因する軸受と回転軸の異常磨耗やこじりの発生を抑制できるとともに、回転軸の変形を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、第1滑り軸受32の中心軸2を図面の上下方向に一致させ、
図1から
図9の上方向を単に「上方向」と呼び、下方向を単に「下方向」と呼ぶ。なお、上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。また、中心軸2に平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸2を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸2を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るブラシレスモータ1Aの構成を
図1と
図2により説明する。第1実施形態では、カバー部材50を被せたアウターロータ型のブラシレスモータ1Aに関して説明する。
【0013】
本実施形態のブラシレスモータ1Aは、
図1に示すように、主に、ロータ10と、回転軸11と、ステータ20と、軸受31と、軸受ホルダ35と、保持板45と、カバー部材50を備えている。
ロータ10は、ロータケース13と、ロータマグネット17を備えている。
ステータ20は、ステータコア21と、コイル22を備えている。
【0014】
軸受31は、回転軸11の径方向の力を受けるラジアル軸受であり、下側に配された第1滑り軸受32と、上側に配された第2滑り軸受33で構成されている。この第1滑り軸受32と第2滑り軸受33は、互いに非接触に配されている。なお、第1滑り軸受32と第2滑り軸受33としては、含油焼結体や含油樹脂などを用いることができる。
第1滑り軸受32は、この軸受のみで回転軸11を軸支できる主軸受である。すなわち、ブラシレスモータ1Aの例えば定常運転時には、第1滑り軸受32だけで回転軸11に加わる径方向荷重を受けることができる。
第2滑り軸受33は、回転軸11が過大な径方向荷重を受けた際に、第1滑り軸受32と共にその荷重を受ける補助軸受である。具体的には、例えばブラシレスモータ1Aの起動時、停止時もしくは過負荷運転時には、第1滑り軸受32と第2滑り軸受33が回転軸11の径方向荷重を受けることになる。
【0015】
第1滑り軸受32と第2滑り軸受33は、円筒体を成しており、互いに異なる外径、内径、上下方向の長さとなっている。
第2滑り軸受33の外径は第1滑り軸受32の外径より大きい。また、第2滑り軸受33の内径は、第1滑り軸受32の内径より大きい。また、第2滑り軸受33の上下方向の長さは、第1滑り軸受32の上下方向の長さより短い。
また、第1滑り軸受32と第2滑り軸受33の内側の上下端には、それぞれC面が形成されている。
【0016】
軸受ホルダ35は、金属材料で形成されており、円筒状の第1円筒部36と、第1円筒部36の下端を閉塞する底部37を有する。第1円筒部36の内周面には、第1滑り軸受32が固定されている。底部37の上面には、回転軸11を上下方向で軸支するスラスト受材38が配されている。
【0017】
回転軸11は、金属等の硬質材からなり、上端から下端まで連続して同径に形成された細長い円柱部材である。回転軸11の両端は先端R形状に形成されている。この回転軸11は、第1滑り軸受32とスラスト受材38により、第1滑り軸受32の中心軸2を中心に回転可能に支持されている。
この回転軸11の材質と太さは、回転軸11に作用する径方向荷重を考慮し、所定値以上の曲げ弾性係数となるように適宜設計される。
なお、第1滑り軸受32の内径は回転軸11の外径より若干大きく、第1滑り軸受32の内周面と回転軸11の外周面との間には僅かな隙間が形成されている。この隙間により、回転軸11に径方向荷重が加わると、回転軸11は第1滑り軸受32に対して僅かに傾斜する。
【0018】
ロータケース13は、回転軸11と一体に回転するものである。このロータケース13は、円筒状の第2円筒部15と、第2円筒部15の上端を閉塞する天板14と有し、第2円筒部15の内周面には駆動用のロータマグネット17が固定されている。ロータケース13の天板14の中央には、絞り加工によるバーリング部16が上方向に立ち上げられており、回転軸11がバーリング部16に圧入されて固定されている。
【0019】
ステータ20は、ロータマグネット17に対して径方向で対面するように配されている。具体的には、ステータ20は、軸受ホルダ35の第1円筒部36の外周面に固定されたステータコア21を有し、ロータマグネット17の内周面と径方向に対向して配されている。
ステータコア21は、コア板を複数枚積層したものであり、外周に等間隔に複数の突極を有している。各突極には、それぞれコイル22が巻回されている。ステータコア21は、コイル22に通電されたとき磁束を強めるものである。
【0020】
ロータマグネット17は、ロータ10の回転力を発生させるものである。このロータマグネット17は、リング状に形成されており、周方向にN極とS極が交互に着磁されている。
【0021】
保持板45は、金属材で板状に形成されており、軸受ホルダ35の外周面の一部である底部37から径方向外方へと広がって形成されている。保持板45の外形は、ロータケース13の外径より径方向に大きく形成されている。
【0022】
この保持板45の上面には、外部から加えられる電力をコイル22に供給する配線基板42が固定されている。
また、保持板45と配線基板42は、略中央に、軸受ホルダ35の外周面と略同一の円形の貫通孔を有しており、この貫通孔に軸受ホルダ35の底部37が固定されている。
【0023】
カバー部材50は、硬質材で形成されており、ロータ10とステータ20を上方向から覆っている。このカバー部材50は、円筒状の第3円筒部52と、第3円筒部52の上端を閉塞する蓋部51とを有し、第3円筒部52の下端が保持板45の外周に固定されている。カバー部材50が、ロータ10とステータ20を上方向から覆うことにより、モータ内部に塵等の侵入が防止される。
【0024】
カバー部材50の蓋部51の中央には、円筒状部60が設けられている。この円筒状部60は、筒部61と、筒部61の上端に設けられた端板62を有し、蓋部51から上方向に突出してカバー部材50と一体に形成されている。
【0025】
端板62の中央には貫通孔63が形成されている。すなわち、カバー部材50は、蓋部51の中央に貫通孔63を有する。この貫通孔63の径は、第2滑り軸受33の内径より大きく、且つ、第2滑り軸受33の外径より小さく形成されている。なお、貫通孔63と第2滑り軸受33は、同軸上に配置されている。
【0026】
円筒状部60には、第2滑り軸受33の全体が挿入されて固定されている。第2滑り軸受33の上面は端板62の下面に接触しており、第2滑り軸受33の外周面は筒部61の内周面に接触している。
そして、回転軸11は、端板62と第2滑り軸受33に非接触な状態で貫通孔63から上方向に突出している。
【0027】
ロータケース13の天板14と第2滑り軸受33との間の回転軸11には、金属あるいは樹脂等の硬質材からなる第1ワッシャ部材71が固定されている。
この第1ワッシャ部材71は、第2滑り軸受33に非接触に配置されている。つまり、第1ワッシャ部材71は、第2滑り軸受33に対して上下方向に隙間を設けて配置されている。この第1ワッシャ部材71は、スラストガタのバラツキを小さくするために設けられている。本明細書において、スラストガタとは、回転軸11が上方向(軸方向)に移動できる距離を言う。
【0028】
また第1ワッシャ部材71は、バーリング部16の上端に非接触に配置されている。つまり、第1ワッシャ部材71は、ロータケース13に対して上下方向に隙間を設けて配置されている。
【0029】
第1ワッシャ部材71としては、例えば、金属材の薄い平板をプレス加工により外形を円形状に形成し、上下面に平坦度の高い平坦面を有するものが好適に用いられる。
第1ワッシャ部材71の外径は、第2滑り軸受33の内径より大きく、且つ、第2滑り軸受33の外径より小さく形成されている。また、第1ワッシャ部材71の外径は、バーリング部16の外径より大きく形成されている。
【0030】
また、第1ワッシャ部材71の内径は、回転軸11の外径より若干小さく形成されている。第1ワッシャ部材71が回転軸11に圧入されて固定されると、第1ワッシャ部材71は回転軸11と一体に回転する。第1ワッシャ部材71は円筒状部60に内包され、筒部61の内周面と非接触に配置されている。
【0031】
また、第1ワッシャ部材71と第2滑り軸受33の間の回転軸11には、回転軸11と一体に回転する軟質材からなる第2ワッシャ部材72が固定されている。
この第2ワッシャ部材72は、回転軸11が上方向に移動した際の衝突音を抑制するために設けられている。
第2ワッシャ部材72は、樹脂からなる薄い平板をプレス加工により外形を円形状に形成したものであり、上下面に平坦度の高い平坦面を有している。
【0032】
第2ワッシャ部材72の外径は、第1ワッシャ部材71の外径より小さく、且つ、第2滑り軸受33の内径より大きく形成されている。
【0033】
第2ワッシャ部材72の内径は、回転軸11の外径とほぼ同じに形成されている。第2ワッシャ部材72が回転軸11に組み込まれると、第2ワッシャ部材72は第1ワッシャ部材71の上面に接触して配されて、第2ワッシャ部材72は回転軸11と第1ワッシャ部材71と一体に回転する。また、第2ワッシャ部材72は円筒状部60に内包され、筒部61の内周面と非接触に配置されている。また、第2ワッシャ部材72は、第2滑り軸受33に非接触に配置される。つまり、第2ワッシャ部材72は、第2滑り軸受33に対して上下方向に隙間を設けて配置されている。
【0034】
次に、本実施形態のブラシレスモータ1Aの組み立て方法について説明する。
回転軸11と、ロータケース13と、第1ワッシャ部材71と、第2ワッシャ部材72と、ロータマグネット17を用意する。
【0035】
まず、回転軸11がロータケース13のバーリング部16に圧入されて固定される。回転軸11を固定したロータケース13の第2円筒部15の内周面に、下方向から、ロータマグネット17が固定される(回転軸11を有するロータ10となる)。その後、ロータケース13を固定した回転軸11の上方向から、第1ワッシャ部材71が、上面を押圧されてロータケース13のバーリング部16に接触しないように回転軸11に圧入される。さらに、回転軸11の上方向から、第2ワッシャ部材72が、上面を押圧されて、第2ワッシャ部材72は第1ワッシャ部材71の上面に接触する(第1組立体となる)。
【0036】
次に、ステータコア21と、コイル22と、第1滑り軸受32と、軸受ホルダ35と、スラスト受材38と、配線基板42と、保持板45を用意する。
まず、コイル22がステータコア21の突極に巻回される(ステータ20となる)。次に、スラスト受材38が、単体の軸受ホルダ35の底部37に配される。そして、第1滑り軸受32が、軸受ホルダ35の開口に圧入されて軸受ホルダ35の内周面に固定される。次に、軸受ホルダ35の第1円筒部36の外周面には、上方向から、ステータ20が固定される。次に、軸受ホルダ35の底部37には、配線基板42を有する保持板45が固定される(第2組立体となる)。
【0037】
次に、第2滑り軸受33と、カバー部材50を用意する。
カバー部材50の円筒状部60に、下方向から、第2滑り軸受33が固定される(第3組立体となる)。
【0038】
次に、第2組立体の第1滑り軸受32に、上方向から、第1組立体の回転軸11が挿入されて、回転軸11が第1滑り軸受32に軸支されて、第1組立体と第2組立体が組み合わされる。この状態で、第3組立体のカバー部材50が、ロータ10とステータ20を上方から覆い、カバー部材50の第3円筒部52の下端が保持板45の外周に固定される。これにより、回転軸11はカバー部材50から上方向に突出し、ブラシレスモータ1Aとなる。
【0039】
このブラシレスモータ1Aは、配線基板42より電力を供給されると、コイル22が巻回されたステータコア21が励磁されることでロータマグネット17が力を受けてロータ10が回転できる。
【0040】
このブラシレスモータ1Aは、
図3に示すような減速機構付きの電動モータ80に組み込むことができる。なお、この減速機構付きの電動モータ80は、例えば、自動販売機に挿入された紙幣を、紙幣搬送路内に送り込むための装置として使用することができるものである。
【0041】
減速機構付きの電動モータ80は、下ケース81と不図示の上ケースにより略直方体の箱状に形成され、この内部に本例のブラシレスモータ1A、減速歯車列となるウォームギヤ83、第1中間ギヤ(ウォームホイール)84、第2中間ギヤ85、第3中間ギヤ86、および出力軸87aを有する出力ギヤ87が収容されている。なお、
図3には示していないが、このケース内にはモータ駆動回路や減速ギヤの回転を検出するための回路等が搭載された回路基板が収容されている。
【0042】
ウォームギヤ83は、回転軸11に圧入、接着等で取り付けられている。このウォームギヤ83には、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、モータの回転時にウォームホイール84との噛み合い部分に力F(荷重)が作用する。
【0043】
ブラシレスモータ1Aによってウォームホイール84を
図4(a)のように反時計回りに回転させる場合でも、
図4(b)のように時計回りに回転させる場合でも、力Fの径方向の分力である径方向荷重Fxは、ウォームホイール84がウォームギヤ83を
図4の紙面右方向に押圧する力として作用する。
すると、回転軸11は
図4の紙面右方向に若干傾斜し、回転軸11は第1滑り軸受32の中心軸2に対して所定の傾斜角度を成す。
【0044】
本実施形態のブラシレスモータ1Aでは、第1滑り軸受32における回転軸11の傾斜角度が最大でない状態では、回転軸11は第2滑り軸受33の内側に非接触で、回転軸11は第1滑り軸受32にのみ軸支される。このとき、回転軸11は全体的に変形していない。
本明細書において「第1滑り軸受32における回転軸11の傾斜角度」とは、回転軸11の第1滑り軸受内部に位置する部分と、第1滑り軸受32の中心軸2との成す角度を言う。
【0045】
回転軸11に所定の大きさの径方向荷重が加わると、回転軸11が第1滑り軸受32の内側上端と内側下端に接触し、第1滑り軸受32における回転軸11の傾斜角度が最大になる。
そして、回転軸11に所定値を超える過大な径方向荷重が加わると、回転軸11が径方向に若干変形することで第2滑り軸受33の内側に接触し、第1滑り軸受32と第2滑り軸受33によって径方向荷重を受けることになる。このとき、回転軸11の上側は
図1の紙面右側に湾曲するものの、第1滑り軸受32の内径と回転軸11の外径との差は僅かであるため、第1滑り軸受32の内側部分では回転軸11は実質的に変形しない。
【0046】
本例のブラシレスモータ1Aでは、回転軸11が径方向から過大な荷重を受けた際、回転軸11が第2滑り軸受33に接触し始めるときの回転軸11の変形量が0(ゼロ)から最大弾性変形量の範囲内となるように、回転軸11の曲げ弾性係数、径方向荷重の作用点、および各部材の寸法公差や組立公差を考慮しながら、第2滑り軸受33の内径が決定される。
具体的には、第1滑り軸受32の中心軸2から第2滑り軸受33の内周面までの最短距離Xが、以下のX1以上かつX2以下の範囲内に入るように設計されている(
図2参照)。
【0047】
X1:第1滑り軸受32の中心軸2から、変形していない回転軸11の外周面であって第2滑り軸受33の内周面と径方向に対向する回転軸11の外周面までの距離(但し、回転軸11は、第1滑り軸受32における傾斜角度が最大の状態である。)
X2:第1滑り軸受32の中心軸2から、最大弾性変形した回転軸11の外周面であって第2滑り軸受33の内周面と径方向に対向する回転軸11の外周面までの距離(但し、回転軸11は、第1滑り軸受32における傾斜角度が最大の状態である。)
なお、本明細書において「最大弾性変形量」とは、回転軸11の曲げ応力−曲げ歪み曲線において、回転軸11に径方向荷重(曲げ応力)を加えた際の弾性変形領域における最大の変形量を言う。
【0048】
上記最短距離Xが上記X1と等しい場合は、回転軸11が変形していない状態で、回転軸11が第1滑り軸受32の内側上端と内側下端に接触すると共に、第2滑り軸受33の内側に接触し、回転軸11は第1滑り軸受32と第2滑り軸受33によって軸支される。
また、上記最短距離Xが上記X2と等しい場合は、回転軸11が第1滑り軸受32の内側上端と内側下端に接触すると共に、最大弾性変形した状態で、回転軸11が第2滑り軸受33の内側に接触し、回転軸11は第1滑り軸受32と第2滑り軸受33によって軸支される。
したがって、上記最短距離Xが、X1以上かつX2以下の範囲内に入るようにすることにより、回転軸11の変形量が最大弾性変形量を超える前に、回転軸11の上側の部分を第2滑り軸受33によって支持することができるため、回転軸は塑性変形してしまうのを防ぐことができる。
【0049】
一方、上記最短距離Xが上記X1未満である場合は、第1滑り軸受32における回転軸11の傾斜角度が最大でない時でも、回転軸11が第2滑り軸受33の内側に接触することになる。このため、第1滑り軸受32に比べて含油量の少ない第2滑り軸受33に、ブラシレスモータ1Aの定常運転時にも回転軸11が摺接することになり、モータの耐久性が低下しやすくなる。
また、上記最短距離Xが上記X2を超える場合は、回転軸11が最大弾性変形量を超えるほどの過大な径方向荷重を受けた際に、回転軸11が塑性変形してしまい、径方向荷重が除去された後も回転軸11が元の形状に戻らず、ウォームギヤ83からウォームホイール84に効率良く力を伝えられなくなる。
【0050】
図4(a)の紙面反時計回りにウォームホイール84が回転するようにロータ10が逆転する場合には、
図4(a)に示す荷重Fがウォームギヤ83に作用する。この場合、
図5、
図6に示すように、回転軸11の下端はスラスト受材38と接触している。
図5は、
図4(a)の荷重におけるブラシレスモータ1Aの第1説明断面図であり、上記XがX1の場合を示している。つまり、回転軸11が第2滑り軸受33に接触し始める際の回転軸11の変形量が0の場合であり、回転軸11が変形していない状態で回転軸11が第1滑り軸受32と第2滑り軸受33に支持されている。
また、
図6は、
図4(a)の荷重におけるブラシレスモータ1Aの第2説明断面図であり、上記XがX2の場合を示している。つまり、回転軸11が第2滑り軸受33に接触し始める際の回転軸11の変形量が最大弾性変形量の場合であり、回転軸11が最大弾性変形した状態で回転軸11が第1滑り軸受32と第2滑り軸受33に支持されている。
【0051】
次に、
図4(b)の紙面時計回りにウォームホイール84が回転するようにロータ10が正転する場合には、
図4(b)に示す荷重Fがウォームギヤ83に作用する。この場合、
図7、
図8に示すように、第2ワッシャ部材72が第2滑り軸受33と接触し、回転軸11の下端はスラスト受材38と非接触となる。
図7は、
図4(b)の荷重におけるブラシレスモータ1Aの第1説明断面図であり、上記XがX1の場合を示している。つまり、回転軸11が第2滑り軸受33に接触し始める際の回転軸11の変形量が0の場合であり、回転軸11が変形していない状態で回転軸11が第1滑り軸受32と第2滑り軸受33に支持されている。
また、
図8は、
図4(b)の荷重におけるブラシレスモータ1Aの第2説明断面図であり、上記XがX2の場合を示している。つまり、回転軸11が第2滑り軸受33に接触し始める際の回転軸11の変形量が最大弾性変形量の場合であり、回転軸11が最大弾性変形した状態で回転軸11が第1滑り軸受32と第2滑り軸受33に支持されている。
【0052】
このように本実施形態のブラシレスモータ1Aでは、第1滑り軸受32は主軸受として機能し、第2滑り軸受33は補助軸受として機能する。そして、第1滑り軸受32における回転軸11の傾斜角度が最大でない状態では、回転軸11は第2滑り軸受33の内側に非接触で、回転軸11は第1滑り軸受32にのみ軸支される。また、回転軸11が径方向から過大な荷重を受け、回転軸11が第2滑り軸受33に接触し始める際の回転軸11の変形量を、0から最大弾性変形量の範囲内となるように設計されている。
【0053】
このため、本実施形態のブラシレスモータ1Aは、定常運転時には回転軸11が第1滑り軸受32だけに摺接するため、2個の軸受の芯ずれに起因する軸受と回転軸の異常磨耗やこじりの発生を抑制できる。また、回転軸11が過大な径方向荷重を受けた際には、回転軸11の変形量が最大弾性変形量を超える前に、回転軸11の上側の部分が第2滑り軸受33に摺接するため、回転軸の変形を効果的に抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態のブラシレスモータ1Aでは、第2滑り軸受33は補助軸受であるため、第2滑り軸受33の上下方向の長さを、主軸受である第1滑り軸受32の上下方向の長さよりも短くすることができる。通常は、第2滑り軸受33の上下方向の長さを、第1滑り軸受32の上下方向の長さの1/5以下、さらには1/10以下に設定することもでき、回転軸の変形を抑制しつつ、モータ全体の高さを低く抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態のブラシレスモータ1Aでは、第1滑り軸受32における回転軸11の傾斜角度が最大の状態においては、回転軸11が第1滑り軸受32の内側上端と第1滑り軸受32の内側下端に接触する。このため、回転軸11が所定の大きさの径方向荷重を受けた際には、径方向荷重の作用点に近い第1滑り軸受32の上端部分においても回転軸11を軸支できるため、回転軸の変形を効果的に抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態のブラシレスモータ1Aでは、回転軸11が径方向から過大な荷重を受けた際に、回転軸11が第2滑り軸受33の内側上端に接触する。このため、回転軸11が過大な径方向荷重を受けた際には、径方向荷重の作用点により一層近い第2滑り軸受33の上端部分においても回転軸11を軸支できるため、回転軸の変形をより一層効果的に抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態のブラシレスモータ1Aでは、ロータケース13の天板14と第2滑り軸受33との間の回転軸11には、平板面を有する硬質材からなる第1ワッシャ部材71が固定されており、第1ワッシャ部材71は、天板14と第2滑り軸受33に非接触な状態で配置されている。
このため、第1ワッシャ部材71は、回転軸11の下端からロータケース13の天板14までの寸法公差に影響されることなく、回転軸11に固定することができる。さらに、第1ワッシャ部材71は、上面に平坦度が高い平板面を有するため、回転軸11に圧入固定する際、回転軸11の下端から第1ワッシャ部材71の上面までの寸法公差を最小限に抑えることができる。よって、第1ワッシャ部材71と第2滑り軸受33との隙間のバラツキを抑えて、スラストガタのバラツキを小さくすることができる。
【0058】
また、本実施形態のブラシレスモータ1Aでは、第1ワッシャ部材71と第2滑り軸受33の間の回転軸11には、平板面を有する軟質材からなる第2ワッシャ部材72が設けられている。この第2ワッシャ部材72は、第2滑り軸受33と非接触に配置されている。
このため、回転軸11が上方向に移動した際、硬質材の第1ワッシャ部材71が第2滑り軸受33に当接せず、軟質材からなる第2ワッシャ部材72が第2滑り軸受33に当接するため、スラストガタに起因する衝突音を小さくできる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るブラシレスモータ1Bの構成を
図9により説明する。
図9において、
図1ないし
図8の部材と同一の部材には同一の符号を付しており、これらの部材については説明を省略する。
【0060】
第2実施形態では、ロータの構成が第1実施形態と異なる。つまり、第1実施形態では、カバー部材50を被せたアウターロータ型のブラシレスモータであるが、第2実施形態では、カバー部材50を被せたインナーロータ型のブラシレスモータとなる。
【0061】
第1実施形態では、回転軸11に固定されたロータケース13と、ロータケース13の内周面に固定されたロータマグネット17とを有するロータ10と、ロータマグネット17に対して径方向で対面するように配されたステータ20とを備えている。
一方、第2実施形態では、回転軸11に固定されたロータケース113と、ロータケース113の外周面に固定されたロータマグネット117とを有するロータ110と、ロータマグネット117に対して径方向で対面するように配されたステータ120を備えている。
このロータケース113の天板114の中央には、絞り加工によるバーリング部116が上方向に立ち上げられている。
【0062】
次に、ブラシレスモータ1Bの組み立て方法について説明する。
回転軸11と、ロータケース113と、第1ワッシャ部材71と、第2ワッシャ部材72と、ロータマグネット117を用意する。
まず、回転軸11がロータケース113のバーリング部116に圧入されて固定される。回転軸11を固定したロータケース113の第2円筒部115の外周面にロータマグネット117が固定される(回転軸11を有するロータ110となる)。その後、ロータケース113を固定した回転軸11の上方向から、第1ワッシャ部材71がロータケース113のバーリング部116に非接触になるように圧入される。また、このロータケース113を固定した回転軸11の上方向から、第2ワッシャ部材72が回転軸11に挿入されて、第2ワッシャ部材72は第1ワッシャ部材71の上面に接触する(第4組立体となる)。
【0063】
次に、第1滑り軸受32と、軸受ホルダ35と、スラスト受材38と、配線基板142と、保持板45を用意する。
まず、スラスト受材38が、軸受ホルダ35の底部37の上面に配される。そして、第1滑り軸受32が、軸受ホルダ35に圧入されて軸受ホルダ35の内周面に固定される。そして、軸受ホルダ35の底部37に、配線基板142を有する保持板45が固定される(第5組立体となる)。
【0064】
次に、第2滑り軸受33と、ステータコア121と、コイル122と、カバー部材50を用意する。
コイル122がステータコア121の突極に巻回される(ステータ120となる)。カバー部材50の円筒状部60に、第2滑り軸受33が固定される。カバー部材50の第3円筒部52の内周面に、下方向からステータ120が固定される(第6組立体となる)。
【0065】
次に、第5組立体の第1滑り軸受32に、上方向から、第4組立体の回転軸11が挿入されて、回転軸11は第1滑り軸受32に軸支される。この状態で、第6組立体のカバー部材50が、ロータ110とステータ120を上方向から覆い、カバー部材50の第3円筒部52の下端が第5組立体の保持板45の外周に固定されて、ブラシレスモータ1Bとなる。
【0066】
第2実施形態は、第1実施形態と同様の作用効果を有すると共に、インナーロータであるため、アウターロータに比べて、ロータの起動時間を短くできる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0068】
具体的には、上記の説明では、回転軸11は上端から下端まで連続して同径に形成された細長い円柱部材であるがこれに限定されず、第1滑り軸受32の内側と第2滑り軸受33の内側に対面する回転軸11が、少なくとも円柱形状であればよく、第2滑り軸受33から上方に突出した回転軸11はウォームギヤ83を取り付けるために断面非円状(Dカット等)に形成されてもよい。
【0069】
また上記の説明では、第2滑り軸受33は円筒体であり、第1滑り軸受32における回転軸11の傾斜角度が最大になった状態で、回転軸11が第2滑り軸受33の内側上端に支持されるが、これに限らない。第2滑り軸受の内側が、上円が下円より大きい円錐台状に形成されており、第1滑り軸受32における回転軸11の傾斜角度が最大になった状態で、回転軸11がその第2滑り軸受の内側全面に接触するようにしてもよい。
【0070】
また上記の説明では、回転軸11は上端から下端まで連続して同径に形成された細長い円柱部材であり、第2滑り軸受33と回転軸11の径方向の隙間は、第1滑り軸受32と回転軸11の径方向の隙間より大きく形成されているが、これに限定されない。第2滑り軸受33と回転軸11の径方向の隙間は、第1滑り軸受32と回転軸11の径方向の隙間より大きく形成されていればよい。
例えば、第1滑り軸受32の内径と第2滑り軸受33の内径は同じでもよい。この場合、第2滑り軸受33の内側と対面する回転軸の外径は、第1滑り軸受32の内側と対面する回転軸の外径より小さく形成される。すると、上記の実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0071】
また、上記の説明では、カバー部材50の蓋部51の中央には、端板62を有する円筒状部60が形成されているが、第2滑り軸受33を保持できるなら、端板62のない円筒状部でもよい。
【0072】
また、上記の説明では、第1ワッシャ部材71と第2ワッシャ部材72の外径は、円状に形成されているが、これに限定されず、例えば、第1ワッシャ部材71と第2ワッシャ部材72の外形は多角状や楕円状でもよい。
【0073】
また、上記の説明では、第2ワッシャ部材72の内径は回転軸11の外径とほぼ同じに形成されているが、第2ワッシャ部材72の内径は回転軸11の外径より若干大きく形成されており、第2ワッシャ部材72は回転軸11に対して回転可能に配されてもよい。
【0074】
また、上記の説明では、第1ワッシャ部材71と第2滑り軸受33の間の回転軸11には、第2ワッシャ部材72が配されているが、この第2ワッシャ部材72が配されずに、回転軸11が上方向に移動した際、第1ワッシャ部材71が第2滑り軸受33に直接接触してもよい。
【0075】
また、上記の説明では、ロータケース13、113の天板14、114と第2滑り軸受33の間の回転軸11には、第1ワッシャ部材71と第2ワッシャ部材72が配されているが、第1ワッシャ部材71と第2ワッシャ部材72が配されずに、回転軸11が上方向に移動した際に、バーリング部16、116が第2滑り軸受33に直接接触するように構成してもよい。
【0076】
また、上記の説明では、バーリング部16、116が天板14、114の中央から上方向に立ち上げられているが、バーリング部16、116が天板14、114の中央から下方向に立ち下げられるようにしてもよい。
【0077】
なお、カバー部材50の蓋部51は、ブラシレスモータ1A、1Bを、例えば自動販売機内の紙幣搬送装置へ取り付ける際の取り付け面となっており、カバー部材50の蓋部51には取り付け螺子用の孔(不図示)が設けられている。