(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、
図1及び
図2の回転軸11における上方向側を単に「上方向」と呼び、下方向側を単に「下方向」と呼ぶ。
また、回転軸11に平行な方向を「軸方向」と呼び、回転軸11を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、回転軸11を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
また、本明細書では、
図1及び
図2を直立状態(回転軸が直立の状態)と呼ぶ。また、本明細書では、回転軸11が直立状態に対して直角に配されたときを水平状態(回転軸が水平の状態)と呼ぶ。
なお、上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に説明する。
【0013】
(第1の実施形態例)
まず、本発明の第1の実施形態例の軸受装置1を
図1及び
図2により説明する。
【0014】
軸受装置1は、回転軸11と、含油軸受21と、軸受ホルダ31と、ワッシャ部材22aと、シール部材41aを有する。
【0015】
回転軸11は、金属製であり、上下方向に同一直径を有する円柱状に形成されており、回転力を外部に伝えるものである。回転軸11の外周面には、軸方向の略中央に環状溝11aが形成されている。環状溝11aの断面形状は、径方向外方に開いたV溝に形成されており、下端から上端に進むに伴い回転軸11の外径が小さくなる第1傾斜直線部11a1と、第1傾斜直線部11a1の上方に連続して下端から上端に進むに伴い回転軸11の外径が大きくなる第2傾斜直線部11a2を有する。第1傾斜直線部11a1と第2傾斜直線部11a2との間には、回転軸11の外径が最小となる最小径部11a3が形成されている。第1傾斜直線部11a1と第2傾斜直線部11a2は、軸方向に対して、45度の傾斜角度に形成されている。
【0016】
含油軸受21は、潤滑油を媒介として回転軸11を径方向に回転自在に軸支するラジアル軸受である。含油軸受21は、多孔質焼結金属材料によって形成された円筒体であり、潤滑油が含浸されている。含油軸受21の内径は、回転軸11の外径より若干大きく形成されている。
【0017】
軸受ホルダ31は、回転軸11と含油軸受21を保持しているものである。軸受ホルダ31は、金属製で、円筒部31aと、円筒部31aの下端を閉塞する底部31bを有する。この円筒部31aは、上端に開口部を有する。
軸受ホルダ31の内径は、含油軸受21の外径とほぼ同じである。
底部31bの上面には、回転軸11の下端を支持するスラスト受材32が配置されている。含油軸受21は、円筒部31aの内周面に保持されて軸受ホルダ31に内包されている。
【0018】
ワッシャ部材22aは、水平状態で、含油軸受21の上面の油が周囲に容易に流れ出ないように、含油軸受21の上面に接して軸受ホルダ31の内側に配されている。
このワッシャ部材22aは、樹脂の硬質材または軟質材からなり、上下面に平坦度の高い平坦面を有し、中央に回転軸11が挿通できる挿入孔を有する。
このワッシャ部材22aの内径は、含油軸受21の内径より若干大きく形成されている。また、ワッシャ部材22aの外径は、軸受ホルダ31の内径より若干小さく形成されている。
なお、このワッシャ部材22aは、金属材でもよい。
【0019】
シール部材41aは、軸受ホルダ31の開口部を閉塞するように、円筒部31aの上部に固定され、含油軸受21の油が、軸受ホルダ31の外部に漏れないようにするものである。
このシール部材41aは、金属の硬質材からなる円筒体であり、回転軸11が挿通できる貫通孔を有する。
シール部材41aは、シール部材41aの最上面と円筒部31aの上端
が軸方向に面一となるように、円筒部31aの内周面に圧入により固定されている。
なお、ワッシャ部材22aの最上面とシール部材41aの最下面との間には隙間が設けられ、ワッシャ部材22aとシール部材41aは、互い
に軸方向に非接触な状態で配されている。
【0020】
また、シール部材41aの内径(貫通孔径)は、回転軸11の外径より若干大きく形成されている。つまり、回転軸11とシール部材41aが非接触に近接して配されている。このシール部材41aの全表面に撥油処理が施されている。
また、シール部材41aと径方向で対向する回転軸11の外周面には、撥油処理が施されている。
すると、シール部材41aの内周面と回転軸11の外周面は、径方向の閉塞隙間である第1隙間S1を有する。この第1隙間S1には油が入らない。
このシール部材41aは、例えば、撥油剤を添加した焼結含油軸受や、撥油剤を塗布した樹脂により形成されている。
【0021】
回転軸11の環状溝11aは、軸方向において、ワッシャ部材22aとシール部材41aの間に配されている。
具体的には、回転軸11の環状溝11aの全てが、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面とシール部材41aの最下面の間に配されており、径方向外方において、軸受ホルダ31の内周面と対向する。最小径部11a3は、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面とシール部材41aの最下面の中間に配されている。環状溝11aの軸方向における下端から上端までの長さは、ワッシャ部材22aの最上面からシール部材41aの最下面までの軸方向の長さの(1/2)倍となっている。
【0022】
より具体的には、環状溝11aの下端は、ワッシャ部材22aの最上面より軸方向上方に配されている。つまり、環状溝11aの下端は、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面より距離H1だけ上方向に配されている。ワッシャ部材22aの最上面と環状溝11aの下端との回転軸11には、周方向の外周面に下側円周面が形成されている。下側円周面は、径方向外方において、軸受ホルダ31の内周面と対向する。
環状溝11aの上端は、シール部材41aの最下面より軸方向下方に配されている。つまり、環状溝11aの上端は、軸方向において、シール部材41aの最下面より距離H2だけ下方向に配されている。環状溝11aの上端とシール部材41aの最下面との回転軸11には、上側円周面が形成されている。上側円周面は、径方向外方において、軸受ホルダ31の内周面と対向する。
【0023】
このように、軸受装置1は、回転軸11と、回転軸11を軸支する含油軸受21と、上端に開口部を有し、含油軸受21を内側に保持する軸受ホルダ31と、含油軸受21の上面に配されたワッシャ部材22aと、開口部を閉塞するように、軸受ホルダ31の上端に固定されたシール部材41aと、を有する。
また、シール部材41aと、シール部材41aと対向する回転軸11の外周面には、撥油処理が施されている。
また、ワッシャ部材22aとシール部材41aは、互いに軸方向に非接触な状態で配されている。
また、回転軸11は、外周面に環状溝11aを有する。
また、環状溝11aの最小径部は、ワッシャ部材22aの最上面とシール部材41aの最下面の間に配されている。
また、環状溝11aの上端が、シール部材41aの最上面より軸方向下方に配されている。
【0024】
次に、軸受装置1の作用と効果を説明する。
【0025】
まず、直立状態で回転軸11が回転している場合を説明する。
含油軸受21から染み出した油が、回転軸11の上方向に伝わり、環状溝11aの第1傾斜直線部11a1から第2傾斜直線部11a2に到達すると、含油軸受21の油が最小径部11a3に溜まる。含油軸受21の油が所定の量を超えて溜まると、含油軸受21の油が、回転軸11の遠心力により最小径部11a3から径方向外方に飛ばされる。すると、含油軸受21の油が、軸受ホルダ31の内周面に衝突して、軸受ホルダ31の内周面を介して下方向に流れる。そして、含油軸受21の油が、軸受ホルダ31の内周面とワッシャ部材22aの外周面との隙間を介して、含油軸受21の上面に吸収されて、循環される。
本発明では、含油軸受21から染み出した油は、最小径部11a3から、回転軸11の遠心力により径方向外方にほとんど飛ばされるものであり、第2傾斜直線部11a2を超えて、上側円周面にほとんど到達しないものである。
仮に、含油軸受21の油が第2傾斜直線部11a2を超えて上側円周面に付着したり、あるいは、軸受ホルダ31の内周面から跳ね返った油が斜め上方向に飛んで上側円周面に再付着したりしても、シール部材41aと対向する回転軸11の外周面は、撥油処理を施されているため、含油軸受21の油は第1隙間S1に入らず軸受
装置1の外部に漏れない。
【0026】
次に、水平状態で回転軸11が回転している場合を説明する。
含油軸受21から染み出した油が、回転軸11の上方向に伝わり、環状溝11aの第1傾斜直線部11a1から第2傾斜直線部11a2に到達すると、含油軸受21の油が最小径部11a3に溜まる。含油軸受21の油が所定の量を超えて溜まると、含油軸受21の油が、回転軸11の遠心力により最小径部11a3から径方向外方に飛ばされる。すると、含油軸受21の油が、軸受ホルダ31の内周面に衝突して、含油軸受21の油は軸受
装置1の外部に漏れない。
仮に、含油軸受21の油が第2傾斜直線部11a2を超えて上側円周面に付着したり、あるいは、軸受ホルダ31の内周面から跳ね返った油が斜め上方向に飛んで上側円周面に再付着したりしても、シール部材41aと、シール部材41aと対向する回転軸11の外周面は、撥油処理を施されているため、含油軸受21の油は第1隙間S1に入らず軸受
装置1の外部に漏れない。
【0027】
次に、直立状態で回転軸11が停止している場合を説明する。
含油軸受21の油は、下方向に流れるため、軸受
装置1の外部に漏れない。
【0028】
次に、水平状態で回転軸11が停止している場合を説明する。
含油軸受21から染み出した油が、回転軸11の上方向に伝わるが、シール部材41aの内側に配された環状溝11aに保持されるため、環状溝11aの上方向に移動せず、軸受
装置1の外部に漏れない。
仮に、含油軸受21の油が上側円周面に付着していた場合、シール部材41aと、シール部材41aと対向する回転軸11の外周面は、撥油処理を施されているため、含油軸受21の油は第1隙間S1に入らず軸受
装置1の外部に漏れない。
【0029】
このように、直立状態で回転軸11が回転している場合、水平状態で回転軸11が回転している場合、直立状態で回転軸11が停止している場合、水平状態で回転軸11が停止している場合、のいずれの場合でも、含油軸受21の油が軸受
装置1の外部に漏れない。
【0030】
また、回転軸11の最小径部11a3が、ワッシャ部材22aの最上面とシール部材41aの最下面の間に配されているため、特許文献2のような環状溝11aに対向する大径内周面がない構成となり、最小径部11a3が軸受ホルダ31の内周面と対向する。すると、油が衝突するまでの距離が長くなり、径方向外方に飛ばされた含油軸受21の油が、回転軸11に再付着しにくくなり、油の循環がしやすくなる。
【0031】
また、特許文献2のような構成では、シール部材41aが含油軸受21に接触するようにシール部材41aが軸受ホルダ31に圧入されるため、圧入の管理が難しく品質が不安定になる恐れがある。
一方、本例では、ワッシャ部材22aとシール部材41aは互いに非接触な状態で配されており、シール部材41aが含油軸受21に接触せずにシール部材41aが軸受ホルダ31に圧入できるため、圧入工程の作業性が良くなり品質が向上する。
【0032】
また、環状溝11aの上端が、シール部材41aの最下面より軸方向下方に配されているため、直立状態で回転軸11が回転すると、環状溝11aに溜まった油が、シール部材41aの内周面に衝突せず、軸受ホルダ31の内周面にほとんど飛ばされるため、回転軸11に再付着しにくくなり、油の循環が向上する。
【0033】
また、環状溝11aの下端が、ワッシャ部材22aの最上面より軸方向上方に配されているため、直立状態で回転軸11が回転すると、環状溝11aに溜まった油が、ワッシャ部材22aの内周面に衝突せず、軸受ホルダ31の内周面にほとんど飛ばされるため、回転軸11に再付着しにくくなり、油の循環が向上する。
【0034】
また、軸受ホルダ31の内周面とワッシャ部材22aの外周面との間は、径方向に隙間を有するため、径方向外方に飛ばされて軸受ホルダ31の内周面に衝突した油は、軸受ホルダ31の内周面、軸受ホルダ31の内周面とワッシャ部材22aの外周面と隙間、含油軸受21の上面に流れて、油の循環が向上する。
【0035】
また、環状溝11aの上端とシール部材41aの最下面との間の回転軸11には、周方向の外周面に上側円周面が形成されているが、含油軸受の油が軸受
装置1の外部に、より漏れないようにするため、上側円周面には、全周に撥油処理が施されることが好ましい。この場合、上側円周面に撥油処理が施された上端の部分は、シール部材41aと対向する撥油処理された回転軸11の外周面の下端の部分と連続する。また、上側円周面に撥油処理が施された下端の部分は、環状溝11aの上端までとなる。
なお、上側円周面に撥油処理が施された下端の部分は、環状溝11aの上端まで到達しなくてもよく、この場合、撥油量の低減ができる。
【0036】
(第2の実施形態例)
本発明の第2の実施形態例を
図3を用いて説明する。
図3において、
図1及び
図2中の部材と同等の部材には同一の符号を付しており、重複する部分については説明を省略する。
第1の実施形態例の環状溝11aの断面形状は、径方向外方に開いたV溝に形成されているが、これに限定されない。
例えば、環状溝11gの断面形状は、径方向外方に開いたU溝でもよい。環状溝11gは、第1下側直線部11g1と、第1上側直線部11g2と、第1下側直線部11g1と第1上側直線部11g2とを結ぶ湾曲部11g3を有する。この環状溝11gの最小径部11g4は、湾曲部11g3の内側の最底部となる。
この環状溝11gの下端は、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面より距離H1だけ上方向に配されている。環状溝11gの上端は、軸方向において、シール部材41aの最下面より距離H2だけ下方向に配されている。
第2の実施形態例は、第1の実施形態例の同様の作用と効果を有する。
【0037】
(第3の実施形態例)
本発明の第3の実施形態例を
図4を用いて説明する。
図4において、
図1ないし
図3中の部材と同等の部材には同一の符号を付しており、重複する部分については説明を省略する。
第1の実施形態例の環状溝11aの断面形状は、径方向外方に開いたV溝に形成されているが、これに限定されない。
例えば、環状溝11hの断面形状は、径方向外方に開いた凹溝でもよい。環状溝11hは、第2下側直線部11h1と、第2上側直線部11h2と、軸方向直線部11h3と、第2下側直線部11h1と軸方向直線部11h3とを結ぶ下側角部11h4と、第2上側直線部11h2と軸方向直線部11h3とを結ぶ上側角部11h5を有する。この環状溝11hの場合、回転軸11の外径が最小となる部分が上側角部11h5と下側角部11h4の2箇所に形成されているが、含油軸受21の油が径方向外方に飛ばされる最小径部は、軸方向の上側角部11h5のみとなる。
この環状溝11hの下端は、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面より距離H1だけ上方向に配されている。環状溝11hの上端は、軸方向において、シール部材41aの最下面より距離H2だけ下方向に配されている。
第3の実施形態例は、第1の実施形態例の同様の作用と効果を有する。
【0038】
(第4の実施形態例)
本発明の第4の実施形態例を
図5を用いて説明する。図
5において、
図1ないし
図4中の部材と同等の部材には同一の符号を付しており、重複する部分については説明を省略する。
図5は、本発明の第4の実施形態例であるブラシレスモータ101aを示す。
このブラシレスモータ101aは、主に、取付板50と、上記の軸受
装置1と、ステータ60と、ロータ70とを有する。以下、
図5では、上記の軸受構造1をブラシレスモータ101aに適用した形態について説明する。
【0039】
取付板50は、表面に印刷回路を形成したいわゆる鉄基板、あるいは鉄基板に印刷配線板を重ねた基板などが用いられている。取付板50には、後述の駆動用マグネット72と軸方向(
図5の上下方向)で対向するようにホール素子(不図示)が配されており、このホール素子によってロータ70の回転を検出することができるようになっている。取付板50の上面には、上記の軸受
装置1が固定されており、上記の軸受
装置1の軸受ホルダ31の外周には、ステータ60が固定されている。
【0040】
ステータ60は、ステータコア61と、コアカバー62及び
コイル63を備えている。
ステータコア61は、中心に開口を有し複数の突極が形成された板状コアの積層体からなり、その表面を絶縁性樹脂からなるコアカバー62で被覆し、このコアカバー62を介して各突極に
コイル63が巻かれている。
【0041】
ロータ70は、上記の回転軸11と、回転軸11と一体に回転するロータケース71と、ロータケース71の内側に固定された駆動用マグネット72を備えている。
【0042】
ロータケース71は、磁性を有する金属板からなり、回転軸11と同軸で円筒状に形成された円筒部71aと、円筒部71aの上面を覆う平板状の上面部71bを有している。上面部71bの中心には円筒状のバーリング部71cが下方を向くように形成されており、このバーリング部71cに回転軸11の上部が圧入され固定されている。
【0043】
ロータケース71の円筒部71aの内側には、ステータコア61の突極と径方向(
図5の左右方向)で対向するように円筒状の駆動用マグネット72が取り付けられている。この駆動用マグネット72は、周方向にN極とS極が交互に複数着磁されている。
そして、ロータ70の回転軸11が上記の含油軸受21に挿通されて軸支されている。
【0044】
本例のブラシレスモータ101aでは、直立状態で回転軸11が回転している場合、回転軸11が水平状態で回転している場合、直立状態で回転軸11が停止している場合、水平状態で回転軸11が停止している場合、のいずれの場合でも、含油軸受21の油が軸受
装置1の外部に漏れず、ブラシレスモータ101aの品質を高めることが出来る。
【0045】
なお、本発明の実施形態例は上記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
【0046】
第1、第2の実施形態例において、環状溝の下端は、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面より上方向に配されており、環状溝の上端は、軸方向において、シール部材41aの最下面より下方向に配されているが、これに限定されるものではない。環状溝がV溝とU溝の場合、最小径部が、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面とシール部材41aの最下面の間に配されていれば、次のように構成することができる。ここでは第1の実施形態例のみ図示するが、第2の実施形態例も同様である。
【0047】
例えば、
図6のように、最小径部11a3が、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面と同じに配されていてもよい。このとき、環状溝11aの上端は、
軸受ホルダ31の内周面と対向している。仮に、最小径部11a3が、ワッシャ部材22aの最上面より下方向にありワッシャ部材22aの内周面と対向して配されていると、径方向外方に飛ばされて跳ね返った油が回転軸11に再付着しやすく、含油軸受21の油の循環がしにくい。
そこで、
図6のように、最小径部11a3が、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面と同じに配されていると、
図6の形態は、第1の実施形態例より、含油軸受21の油が、径方向外方に少し飛ばされにくくなるものの、第1の実施形態例と同様の作用効果を有する。
【0048】
また、例えば、
図7のように、最小径部11a3が、軸方向において、シール部材41aの最下面と同じに配されてもよい。
仮に、最小径部11a3が、シール部材41aの最下面より上方向にありシール部材41aの内周面と対向して配されていると、径方向外方に飛ばされて跳ね返った油が回転軸11に再付着しやすく、含油軸受21の油の循環がしにくい。
そこで、
図7のように、最小径部11a3が、軸方向において、シール部材41aの最下面と同じに配されていると、
図7の形態は、第
1の実施形態例より、含油軸受21の油が、径方向外方に少し飛ばされにくくなるものの、第
1の実施形態例と同様の作用効果を有する。
ただし、
図7では、回転軸11の環状溝の上端が、軸方向において、シール部材41aの最上面より下方に配されている場合に限る。
仮に、
図7において、回転軸11の環状溝の上端が、軸方向において、シール部材41aの最上面より上方に配されていると、水平状態で回転軸11が停止している場合、環状溝に保持された含油軸受21の油が、シール部材41aの外側に出て軸受
装置の外部に漏れてしまう。
図7では、回転軸11の環状溝の上端が、軸方向において、シール部材41aの最上面より下方に配されているため、水平状態で回転軸11が停止している場合でも、環状溝に保持された含油軸受21の油が第1隙間S1に入らず軸受
装置の外部に漏れない。
【0049】
次に、第3の実施形態例において、回転軸11の環状溝の下端は、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面より上方に配されており、環状溝の上端は、軸方向において、シール部材41aの最下面より下方に配されているが、これに限定されるものではない。環状溝が凹溝の場合、上側角部11h5の最小径部が、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面より僅かに上方向の箇所とシール部材41aの最下面の間に配されていれば、次のように構成することができる。
【0050】
例えば、
図8のように、上側角部11h5の最小径部が、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面より僅かに上方向に配されてもよい。
仮に、上側角部11h5の最小径部が、ワッシャ部材22aの最上面と同一あるいは下方向にありワッシャ部材22aまたは含油軸受21の内周面と対向して配されていると、径方向外方に飛ばされて跳ね返った油が回転軸11に再付着しやすく、含油軸受21の油の循環がしにくい。
そこで、
図8のように、上側角部11h5の最小径部が、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面より僅かに上方向に配されると、
図8の形態は、第3の実施形態例より、含油軸受21の油が、径方向外方に少し飛ばされにくくなるものの、第3の実施形態例と同様の作用効果を有する。
【0051】
また、例えば、
図9のように、上側角部11h5の最小径部が、軸方向において、シール部材41aの最下面と同じに配されてもよい。
仮に、上側角部11h5の最小径部が、シール部材41aの最下面より上方向にありシール部材41aの内周面と対向して配されていると、径方向外方に飛ばされて跳ね返った油が回転軸11に再付着しやすく、含油軸受21の油の循環がしにくい。
そこで、
図9のように、上側角部11h5の最小径部が、軸方向において、シール部材41aの最下面と同じに配されると、
図9の形態は、第3の実施形態例より、含油軸受21の油が、径方向外方に少し飛ばされにくくなるものの、第3の実施形態例と同様の作用効果を有する。
【0052】
また、上記の実施形態例のシール部材41aは、円筒体であり、円筒部31aの開口部の内周面に圧入により固定されているが、シール部材は、円筒部31aの開口部を閉塞するように、開口部に固定される形状であればよく、これに限定されない。例えば、
図10に示すブラシレスモータ101bのように、シール部材41bは、軸受ホルダ34の円筒部34aの開口部に固定されたキャップ形状体でもよい。
【0053】
このシール部材41bは、中央に貫通孔を有し、シール部材41bの貫通孔の内径は、回転軸11の外径より若干大きく形成されている。シール部材41bは、全表面に撥油処理を施されている。このシール部材41bと回転軸11は、上記のような径方向の閉塞隙間を有する。円筒部34aの上端部には、上方に突き出た環状突起34cと、環状突起34cの外周部分に位置する嵌め込み溝34dが形成されている。そして、シール部材41bが嵌め込み溝34dに圧入等によって固定されている。この形態においても、上記の実施形態例と同様の作用効果を有する。
【0054】
また、上記の実施形態例のワッシャ部材22aの外径は、軸受ホルダ31、34の内径より若干小さく形成されており、軸受ホルダ31、34の内周面とワッシャ部材22aの外周面との間は、隙間を有するが、これに限らない。ワッシャ部材の内径が回転軸11の外径より若干大きく形成されているなら、次のような形態が考えられる。
例えば、
図11に示すように、ワッシャ部材22bの外径は、軸受ホルダ31、34の内径と同一に形成されており、このワッシャ部材22bが軸受ホルダ31、34の内周面に圧入されて固定されてもいい。このワッシャ部材22bは含油軸受21に軸方向に互いに非接触に近接されて配されており、ワッシャ部材22bと含油軸受21は軸方向に隙間を有する。この場合、含油軸受21の油の循環が僅かにしにくくなるものの、上記の実施形態例と同様の作用効果を有する。この隙間がある理由としては、ワッシャ部材22bが含油軸受21に接触するように軸受ホルダ31に圧入されると含油軸受21の上面の空孔が潰れてしまうことをなくすためにある。
【0055】
また、第1の実施形態例の第1傾斜直線部11a1と第2傾斜直線部11a2は、軸方向に対して、45度の傾斜角度に形成されているが、この傾斜角度は、適宜、設定出来て、第1傾斜直線部11a1と第2傾斜直線部11a2は、それぞれ例えば30度から60度の範囲にあることが好ましい。傾斜角度が30度未満であると、含油軸受21の油が、最小径部に溜まりにくく、回転軸11の遠心力により最小径部11a3から径方向外方に飛ばされにくくなる可能性がある。傾斜角度が60度を超えると、含油軸受21の油が回転軸11の上方向に伝わる際に、含油軸受21の油が環状溝を飛び越えやすくなる可能性がある。
【0056】
また、第1の実施形態例の第1傾斜直線部11a1と第2傾斜直線部11a2の傾斜角度が45度であり、最小径部11a3が、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面とシール部材41aの最下面の中間に配されており、環状溝11aの下端から上端までの長さは、ワッシャ部材22aの最上面からシール部材41aの最下面までの軸方向の長さの(1/2)倍に形成されているが、これに限らない。
例えば、第1傾斜直線部11a1と第2傾斜直線部11a2の傾斜角度が45度であり、最小径部11a3が、軸方向において、ワッシャ部材22aの最上面とシール部材41aの最下面の中間に配されているなら、環状溝11aの下端から上端までの長さは、ワッシャ部材22aの最上面からシール部材41aの最下面までの軸方向の長さの(1/4〜3/4)倍に形成されてもよい。
環状溝11aの下端から上端までの長さが、ワッシャ部材22aの最上面からシール部材41aの最下面までの軸方向の長さの(1/4)倍未満であると、含油軸受21の油が回転軸11の上方向に伝わる際に、含油軸受21の油が環状溝を飛び越えやすくなる可能性がある。
環状溝11aの下端から上端までの長さが、ワッシャ部材22aの最上面からシール部材41aの最下面までの軸方向の長さの(3/4)倍を超えると、環状溝11aが大きくなり、上側円周面が小さくなり、油が上側円周面を上方向に移動する距離が短くなり、油が第1隙間S1に入りやすくなる可能性がある。