(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762617
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】管端封止プラグ
(51)【国際特許分類】
F16L 55/11 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
F16L55/11
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-124940(P2017-124940)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-7583(P2019-7583A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】592259820
【氏名又は名称】ゼンシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】服部 貴司
【審査官】
八木 敬太
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−054094(JP,A)
【文献】
実公昭44−012956(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/11−55/136
B65D 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管端部に挿入して流体の流出を阻止する管端封止プラグであって、管内面に密着して封止するシール部と、管内面に接触して摩擦力を得るグリップ部とを備え、管端部を封止するシール部に流体圧が作用して管端の外方に押し出された後、その流体圧を逃がしつつ前記グリップ部を管端部に残すよう、前記グリップ部は、流体を通過させる流体通路を有すると共に、管端側から見て流路方向で前記シール部よりも奥側に配置されることを特徴とする管端封止プラグ。
【請求項2】
前記シール部及びグリップ部を有するゴムリングと、該ゴムリングを流路方向に狭圧して径方向に膨らませる一対の狭圧部材とが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の管端封止プラグ。
【請求項3】
前記グリップ部は、その外周部を、管内面に接触する突出部と前記流体通路とを周方向に交互に配置してなる歯車状に形成され、前記突出部が前記シール部よりも径方向外側に突出する大きさに設定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の管端封止プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管端部に挿入して流体の流出を阻止するための管端封止プラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の各種配管の漏水等の有無を検査する際、管端封止プラグを用いて蛇口などの各種設備につながる管端を封止した状態で、配管内に水や空気を供給して、配管からの水や空気の漏れがあるか否かを確認するようにしている。
【0003】
管端封止プラグとして、例えば特許文献1は、軸長ボルト101の軸に、パイプ102よりも小径の弾性円筒103と圧縮用円筒104とを挿通し、軸長ボルト101にナット105を螺合した構造の止水栓を開示している。この止水栓は、ナット105を回転させて弾性円筒103を圧縮することにより、弾性円筒103を外方に膨張させてパイプ102の内壁に固定するようにしている。
【0004】
さらに、特許文献1の止水栓は、鎖106を介して軸長ボルト101に金属環107を連結し、この金属環107をパイプ102に外挿したものである。これにより、軸長ボルト101及び鎖106を介して金属環107を引っ張ったとき、金属環107をパイプ102の外壁に係止するようになっており、止水栓がパイプ102の水圧によって飛び出すのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−54094号公報(段落0008、0010、0011、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の止水栓は、水圧によって飛び出そうとする際に、金属環が傾いてパイプに引っ掛かるものの、その金属環は、単に、パイプに緩やかに外挿しただけのものである。このような構造の止水栓は、自力で水圧に耐えている状態では、金属環を強く傾ける力が作用せず、金属環が直に外力を受けるなどしてパイプから容易に外れることが考えられる。
【0007】
これにより、特許文献1の止水栓では、金属環がパイプから外れた後に、止水栓に過度の水圧が作用することにより、あるいは、金属環がパイプに外挿されたままであったとしても、止水栓の抜け出しが数回に分けて生じて、金属環がパイプから徐々に外れることにより、止水栓の飛び出しを生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、流体圧による管端からの飛び出しを確実に防止することのできる管端封止プラグの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る管端封止プラグは、管端部に挿入して流体の流出を阻止するものであり、管内面に密着して封止するシール部と、管内面に接触して摩擦力を得るグリップ部とを備え、
管端部を封止するシール部に流体圧が作用して管端の外方に押し出された後、その流体圧を逃がしつつグリップ部を管端部に残すよう、そのグリップ部が、流体を通過させる流体通路を有すると共に、管端側から見て流路方向でシール部よりも奥側に配置されるものである。
【0010】
上記構成によれば、シール部とは別に、流体通路を有するグリップ部を備えるので、このグリップ部が、管内の流体圧によって押されることなく、管内面に接触して摩擦力を得ることができ、管端封止プラグの抜け出しに対する抵抗を高めることができる。しかも、グリップ部をシール部よりも奥側に配置するので、シール部に作用する流体圧によって管端封止プラグが押し動かされたとしても、シール部が管端の外方に押し出された後は、グリップ部の流体通路から流体圧を逃がすことができ、グリップ部を管端部に残して、管端封止プラグの飛び出しを防止することができる。
【0011】
また、シール部及びグリップ部を有するゴムリングと、このゴムリングを流路方向に狭圧して径方向に膨らませる一対の狭圧部材とを設けた構成としてもよい。
【0012】
この構成によると、シール部及びグリップ部をゴムリングとして一体に形成するので、これを狭圧部材で狭圧することにより、シール部を管内面に密着させて封止すると共に、グリップ部を管内面に接触させて摩擦力を得ることができる。しかも、シール部及びグリップ部を共通の狭圧操作で膨らませるので、シール部及びグリップ部を所定の形状に設定しておくだけで、シール部に求められる密着性と、グリップ部に求められる摩擦力とを好適なバランスに設定することができる。
【0013】
なお、ゴムリングを流路方向に狭圧して膨らませるだけでなく、楔の原理を用いるなどして、ゴムリングを直接に径方向外向きに押し広げるようにしてもよく、さらに、シール部及びグリップ部を別体に形成して、それぞれを個別の操作によって膨らませるようにしてもよい。
【0014】
また、グリップ部は、その外周部を、管内面に接触する突出部と流体通路とを周方向に交互に配置してなる歯車状に形成し、突出部をシール部よりも径方向外側に突出する大きさに設定したものであってもよい。
【0015】
この構成によると、グリップ部を歯車状として、突出部と流体通路とを交互に配置するので、管内面に対して全体として均一に接触させつつ、その接触圧を突出部に集中させることができ、接触圧による突出部の変形量を増大させて、安定した接触状態を得ることができる。しかも、突出部をシール部よりも径方向外側に突出する大きさに設定するので、グリップ部に作用する摩擦力を高めて、管端封止プラグの飛び出しをより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によると、各種配管に挿入して流体の流出を阻止する管端封止プラグに、シール部とは別に、流体通路を有するグリップ部を設けて、このグリップ部をシール部よりも流路方向で奥側に配置している。これにより、流体圧を受ける管端封止プラグが押し動かされたとしても、シール部が管端の外方に押し出された後は、グリップ部の流体通路から流体圧を逃がすことができ、管端部に残ったグリップ部により、管端封止プラグの飛び出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】上半分は管端部を封止する管端封止プラグの側面図、下半分は管端部を封止する管端封止プラグの断面図
【
図4】上半分はシール部を押し出された管端封止プラグの側面図、下半分はシール部を押し出された管端封止プラグの断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る管端封止プラグを実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、管端封止プラグ1は、例えば、建物の水道管や排水管などの各種配管に水や空気を供給して、その漏れがあるか否かを確認して配管の漏水検査をする際に、蛇口などの各種設備につながる管端を封止するためのものであり、ゴムリング2の外周部にシール部3及びグリップ部4を形成し、そのゴムリング2と一対の狭圧部材5、6とをボルト7及び蝶ナット8を介して一体化した構造とされる。
【0020】
この管端封止プラグ1は、シール部3よりもグリップ部4を奥側に位置させるように管端部9に挿入した後、蝶ナット8を締めて、狭圧部材5、6でゴムリング2を流路方向に狭圧することにより、ゴムリング2を径方向に膨らませて、シール部3を管端部9の内面に密着させてシールすると共に、グリップ部4を管端部9の内面に接触させて抜け出しに抵抗する摩擦力を得て、管端部9からの流体の流出を阻止して封止するようになっている。
【0021】
ゴムリング2は、その外径が管端部9の内径よりもわずかに小径で、内縁側が頂点で外縁側が底辺の断面略三角形のリング状とされ、その中央穴が狭圧部材5、6によって閉塞される。ゴムリング2の奥側及び手前側のテーパー面10、11が狭圧部材5、6で流路方向に押圧されることにより、径方向に作用する分力を受けると共に、流路方向への圧縮に伴う径方向の伸びを生じて、ゴムリング2が径方向に膨らむ。
【0022】
シール部3は、断面略半円状でゴムリング2の周方向に連続する突条とされ、その頂部が管端部9の内面に密着することにより、抜け出しに抵抗する摩擦力を得つつ、管内面との間をシールして管端部9を封止する。
【0023】
グリップ部4は、断面略長方形で、管端部9の内面に接触する突出部12と管内の流体を通過させる流体通路13とを周方向に交互に配置してなる歯車状とされ、管端側から見て流路方向でシール部3よりも奥側に間隔をあけて形成される。このグリップ4は、突出部12をシール部3よりも径方向外側に突出する大きさに設定され、その頂部が管端部9の内面に圧接されることにより、流体通路13から流体圧を逃がしつつ、管内面との間に摩擦力を得て管端部9からの抜け出しに抵抗する。
【0024】
狭圧部材5、6は、中央にボルト孔14、15を有する例えば金属製の円盤状とされて、ゴムリング2を介在させつつボルト7及び蝶ナット8によって一体化され、手前側から蝶ナット8を締めることにより、周方向に連続するテーパー部16、17でゴムリング2のテーパー面10、11を押圧するようになっている。
【0025】
奥側の狭圧部材5は、管端部9の内径よりもわずかに小径とされ、その周縁部にテーパー部16が形成されている。手前側の狭圧部材6は、管端部9の外径とほぼ同じ外径に設定され、その周縁部に管端部9の端面に当接させる鍔部18が形成されると共に、その内側にテーパー部17が形成されている。なお、図中、19、20はワッシャーであり、21はボルト7の狭圧部材5に対する回り止め部である。
【0026】
上記構成によれば、
図3に示すように、ボルト7及び蝶ナット8を用いてゴムリング2を介在させつつ狭圧部材5、6を一体化して管端封止プラグ1を構成するので、管端部9に挿入した後、蝶ナット8を締めることにより、ゴムリング2を狭圧部材5、6で狭圧して径方向に膨らませることができる。これにより、シール部3を管端部9の内面に密着させてシールすると共に、グリップ部4を管端部9の内面に圧接させて抜け出しに抵抗する摩擦力を得ることができ、管内の流体圧22に抵抗して、管端部9からの流体の流出を阻止して封止することができる。
【0027】
さらに、
図4に示すように、シール部3よりもグリップ部4を奥側に配置するので、流体圧22によって管端封止プラグ1が押し動かされて、そのシール部3が管端から押し出されたとしても、管端部9に残ったグリップ部4により、管端封止プラグ1の抜け出しに抵抗することができる。しかも、シール部3が管端から押し出された後は、グリップ部4の流体通路13から流体圧22を逃がして、その後の移動を阻止することができ、管端封止プラグ1の飛び出しを防止することができる。
【0028】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、グリップ部は、突出部12と流体通路13とを交互に配置して歯車状に形成する代わりに、外周縁よりも内側に孔を形成して、これを流体通路とすることもできる。また、ゴムリング2を狭圧するには、蝶ナット8を締める代わりに、狭圧部材5、6の間隔を狭めるレバーなどを設けてもよい。また、ゴムリング2は、流路方向に狭圧することなく、直接に径方向に力を加えて押し広げるようにしてもよい。また、シール部3及びグリップ部4を有するゴムリング2を設ける代わりに、シール部とグリップ部とを別体に形成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 管端封止プラグ
2 ゴムリング
3 シール部
4 グリップ部
5、6 狭圧部材
7 ボルト
8 蝶ナット
9 管端部
10、11 テーパー面
12 突出部
13 流体通路
14、15 ボルト孔
16、17 テーパー部
18 鍔部
19、20 ワッシャー
21 回り止め部
22 流体圧