(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種のヒートポンプを冷凍設備に使用し、蒸発器による冷却効果を高めるためには、コンプレッサーを高速運転する必要があり、高速運転の可能なコンプレッサーであれば蒸発器を−40℃以下の超低温度域まで冷却することは原理的には可能であるが、コンプレッサーを高速運転させれば、蒸発器からコンプレッサーに吸引される冷媒ガスが希薄になって圧力が急激に低下する。その結果、コンプレッサーに十分な潤滑油が戻らなくなって、いわゆるオイル切れ現象が生じ、潤滑と気密性が確保できずに破損してしまうという問題があった。このため、通常の汎用タイプのコンプレッサーを用いた冷凍設備では、−40℃以下の超低温度域まで冷凍させることは不可能とされていた。
【0005】
これに対して本発明は、汎用のコンプレッサーを用いてヒートポンプを構成した場合にも、前記のようなオイル切れの問題がなく、−40℃以下の超低温度域まで冷却できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヒートポンプは、冷媒の循環路として蒸発器と圧縮機と
凝縮器とが管路によって接続され、蒸発器で冷却した熱を凝縮器で放熱させる構成とされたヒートポンプにおいて、前記圧縮機に前記蒸発器から気体の状態で送られて来る冷媒の圧力低下を補償するための調圧・バイパス制御手段が設けられており、前記調圧・バイパス制御手段は、前記蒸発器の出口と前記圧縮機の吸引口との間に設けた圧力調整弁と、前記圧縮機の排気口と前記蒸発器の入口との間に介装された第一の開閉制御弁を設けた管路
と、前記圧縮機の排気口と該圧縮機の吸引口との間に介装された第二の開閉制御弁を設けた管路とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また本発明の液体急速凍結装置は、急速液体凍結装置に、本発明のヒートポンプを組込んだ構成になっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンプレッサーを高速で運転させても、蒸発器から気体となって送られて来る冷媒の圧力低下が、循環する冷媒を用いて抑制されるので、オイル切れを起こすことなく、不凍液を摂氏マイナス40度以下の超低温度域まで冷却できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明によるヒートポンプの基本構成図である。
ヒートポンプAは、摂氏マイナス40〜50度程度まで冷却する液体急速凍結装置や冷凍庫を好適な用途とするものである。
ヒートポンプAは、冷媒の循環路として、蒸発器1と圧縮機2と
凝縮器3とが管路14によって接続されている。すなわち管路14は、蒸発器1の出口と圧縮機2の入口とが接続され、圧縮機2の出口と
凝縮器3の入口とが接続され、
凝縮器3の出口と蒸発器1の入口とが接続された循環路を構成している。
【0011】
また、蒸発器1と
凝縮器3との間には、調圧・バイパス制御手段Bが設けられている。
この調圧制御手段Bは、蒸発器1の出口と圧縮機2の入口との間に圧力調節弁16を設け、更に、圧縮機2の出口と蒸発器1の入口との間にバイパス路15を設けて、このバイパス路15に、電磁弁21と二方弁22を設けている。
【0012】
一方の
凝縮器3は、その出口近傍に乾燥フィルター17が設けられ、乾燥フィルター17と蒸発器1の入口との間には電磁弁18、膨張弁19、合流器20が設けられている。
なお、図中、破線はバイパス路15を通じる冷媒の流れを示している。
【0013】
管路14及びバイパス路15は、銅、スチール或いはアルミ等の金属管又は樹脂管で構成されている。
蒸発器1は、基本的には銅、スチール或いはアルミ等の金属管で形成され、複数のフィン1aを有しており、金属管の壁面を介してその内側の冷媒と外側の気体又は液体とが熱交換できるようになっている。蒸発器1は、冷凍庫内の空間、あるいは凍結装置内の空間に配置されて、その場所で気体又は液体から吸熱する作用をなす。
圧縮機2は、気体状態の冷媒を圧縮するコンプレッサーで構成され、その駆動用に図示しないモーター等の動力源を備えている。圧縮機2の種別に特段の制限はなく、ターボ型、スクリュー型、レスプロ型等を用いることができる。なお冷媒の種別に応じた圧縮圧を得るため圧縮機2は多段構成にする等の構成も可能である。
凝縮器3は、基本的には銅、スチール或いはアルミ等の金属管で形成されており、金属管の壁面を介してその内部の冷媒と外部の空気とが熱交換できるようになっている。更に
凝縮器3には複数のフィン3aが固着されており、フィンに空気を送るためのブロアー3bが付設されている。
凝縮器3は、冷凍庫外の開放空間、あるいは凍結装置外の開放空間に配置されて、外気に対して放熱する作用をなす。
【0014】
圧力調節弁16は、一次側圧力調節弁であり、機械式のものを想定しているが、電磁弁を用いて、図示しないコンピュータによる制御によって所定時間毎に開動作させるようにしてもよい。
乾燥フィルター17は、冷媒に混じっている異物、水分等を捕集するフィルターである。
電磁弁18は、管路14における冷媒の通過量を調節するための弁であって、図示しない制御手段によって開弁率等が制御される。
膨張弁19は、開度調節可能な電磁弁又は機械弁であって、図示しない制御手段によって開度等が制御され、当該部分にオリフィスを形成する。
合流器20は、管路14を通じてきた冷媒とバイパス路15を通じてきた冷媒とを合流させるものである。
【0015】
また電磁弁21は、バイパス路15における冷媒の通過量を調節するための弁であって、コンピュータなどの図示しない制御手段によって弁の開閉度合が制御される。
二方弁22
、25はバイパス路15の接続先を選択するための開閉弁である。
圧力センサー23、24はそれぞれ蒸発器1の入口側の圧力、圧縮機12の入口側の吸引圧を検知するように設けられている。
【0016】
次いでヒートポンプAの基本動作を説明する。冷媒としてはR−404A又はR−410Aを想定している。
圧縮機2及びブロアー3bを作用させると、次のような動作が連続的になされる。なお蒸発器1によって冷却されるべき気体、液体は特に制限されない。
蒸発器1から圧縮機2に送られて来た気体状態の冷媒は、圧縮機2で圧縮されると、高温高圧な状態になって
凝縮器3に送られる。
凝縮器3では内側の冷媒と外側の空気との熱交換が行われ、冷やされた冷媒は
凝縮して高圧な液体状態になる。そして、この高圧な液体状態の冷媒は、膨張弁19を通過したときに圧力損失を受け、蒸発器1の中で断熱膨張して低温低圧な気体状態になる。このとき蒸発器1の内側の冷媒と外側の気体又は液体との熱交換によって不凍液は冷却され、蒸発器1から排出された低温低圧な気体状態の冷媒は圧縮機2に戻る。ヒートポンプAの基本能力は、圧縮機2の回転数、制御弁18の開弁率等によって調節できる。
【0017】
圧縮機2は、圧縮のために容積変化する作動室(図示なし)を備えており、その作動室はオイルによって潤滑され気密維持されるが、このオイルは圧縮された冷媒に混じって圧縮機2から徐々に排出されていく。通常、その排出されたオイル分は、冷媒が圧縮機2によって再吸引されたときに戻ってくるので、圧縮機2のオイルは一定量に保たれて、オイル切れによる不具合を生じない。
【0018】
しかしながら、圧縮機2を高速で連続運転して、蒸発器1の周囲の気体又は液体を非常な低温まで(摂氏マイナス40度以下)冷すと、蒸発器1から排出される冷媒の圧力が低くなり、過剰に希薄化してしまう。その結果、オイルが圧縮機2に戻ってこず、最終的にはオイル切れが起きるという問題があった。
例えば冷媒としてR−404Aを用いた場合、蒸発器1における冷媒の温度を摂氏マイナス45〜46度にすることは原理的に可能であるが、そのとき冷媒の圧力は99.31kPaになり、圧縮機2はオイル切れのため作動不能になってしまう。
【0019】
本発明のヒートポンプAは、圧力・バイパス制御手段Bを設けているので、そのような不具合が生じない。すなわち、圧力・バイパス制御手段Bを構成する圧力調節弁16は、蒸発器1から排出されてくる冷媒の圧力が低下すると閉じて、冷媒を一旦堰き止め、その冷媒の圧力が所定以上になった時点で放出するという動作をなすので、オイル切れが防止できる。この場合、蒸発器1における冷媒の圧力は圧力調節弁16の開閉弁に合わせて上下動を繰り返すことになるが、この冷媒の圧力が低くなっているときは、冷媒の温度が極めて低くなるときであり、強い吸熱が行われ、これによって冷媒のR−404Aが摂氏マイナス45〜46度になる。
【0020】
また例えば冷媒としてR−410Aを用いた場合、蒸発器1における冷媒の温度を摂氏マイナス55〜56度にすると、冷媒の圧力は80.46kPaになるので、前記のような圧力調節弁16の作用だけでは圧縮機2のオイル切れを防止することは難しい。
しかしながら、この問題は、圧力・バイパス調節制御手段Bによって解決される。すなわち、前記した圧力調節弁16を閉じても、急激な圧力低下が解消しないときには、二方弁22を閉じ、二方弁25を開き、電磁弁21を開けば、圧縮機2から排出した高温高圧な気体状態の冷媒を、直接圧縮機2に供給することができるので、蒸発器1から排出される冷媒の圧力低下が補完されることになる。また、二方弁22を開き、二方弁25を閉じ、電磁弁21を開けば、圧縮機2から排出した高温高圧な気体状態の冷媒を、蒸発器1に送り込んで、蒸発器1による急速冷却を緩やかに制御できる。
これらの圧力調節弁16、バイパス路15に設けた二方弁22、25、電磁弁21は、圧力センサー24からの信号に基づいて、コンピュータに実装したプログラムに従って行われ、オイル切れを生じることなく、蒸発器1は冷却される。また、コンピュータで制御を実行せずに、圧力センサーの検知信号に基づいて、電磁弁21の開弁率を制御してもよい。
【0021】
本発明では、このような制御を行っているので、ヒートポンプAは汎用の圧縮機2を用いることが可能であり、かつバイパス路15や圧力調節弁16のために要する費用も僅かなので安価に製造できる。
【0022】
次いで前記ヒートポンプAを用いた凍結設備の例を説明する。
図2は凍結設備の基本構成図である。
図1に共通する要素には同一の参照符号を付けている。
【0023】
凍結装置Cは、ヒートポンプAと、不凍液32によって食肉や鮮魚等の被冷凍物を凍結させる凍結槽31とからなり、蒸発器1は凍結槽31の槽内に配置されている。なお被冷凍物は予め真空パックにしておくとよい。
【0024】
不凍液32は、特段の制限はないが、その液温として摂氏マイナス40度以下の運用を前提とすればエチルアルコールやエチレングリコール等を主成分としたものが適している。
【0025】
凍結槽31は、堅牢な槽であって、ステンレス等の板金と、樹脂板と、樹脂やセラミック等の断熱材とからなる。凍結槽31の容積は特に制限されず、被冷凍物のサイズ等によって数立米〜数百立米が可能である。
【0026】
蒸発器1は、凍結槽31の内周面に接触しないように配置されている。蒸発器1には複数のフィン(図示なし)を固着してもよい。蒸発器1の配置は特に制限されないが、蒸発器1によって冷却された不凍液32が凍結槽31の中で自然対流を生じるような配置が望ましい。
【0027】
前記のようにヒートポンプAを作動させて蒸発器1における冷媒の温度を摂氏マイナス45〜46度にすると、不凍液31の温度は摂氏マイナス40度程になる。また蒸発器1における冷媒の温度を摂氏マイナス55〜56度にすると、不凍液31の温度は摂氏マイナス50度程になる。
不凍液31の温度が摂氏マイナス40〜50度であれば、不凍液31は空気に比べて比熱も熱伝導率も高いので、被冷凍物を急速凍結できる。その所要時間は10〜30分程度になると考えられる。被冷凍物を急速に凍結させればその組織の破壊が抑えられるので、解凍時にドリップがほとんど発生せず、また味覚、食感の劣化もごく僅かになる。
【0028】
更に、前記ヒートポンプを用いた冷凍庫の例を説明する。
図3は、凍結設備の基本構成図である。
図1に共通する要素には同一の参照符号を付けている。
【0029】
冷凍庫Dは、ヒートポンプAと、冷気によって食肉や鮮魚等の被冷凍物を冷凍する収納庫41とからなり、蒸発器1は収納庫41の室内に配置されている。蒸発器1の配置場所は特に制限されない。
【0030】
収納庫は、天井面、床面及び壁面が断熱壁で構成された倉庫であって、開閉自在な扉を有し(図示なし)、外気と同様の空気によって満たされている。
【0031】
蒸発器1は、基本的には銅、スチール或いはアルミ等の金属管で形成されており、金属管の壁面を介してその内部の冷媒と、冷凍庫41内の空気とが熱交換できるようになっている。更に蒸発器1には複数のフィン1aが固着されており、フィン1aに空気を送るためのブロアー1bが付設されている。空気は、フィン1aの間隙を通過している間に熱交換によって冷却されて冷気になる。この冷気によって被冷凍物を急速に冷凍して保存する。
【課題】ヒートポンプ内のオイル切れを起こすことなく、冷凍設備の不凍液を−40℃以下の超低温度域まで急速冷却できる冷凍設備用ヒートポンプと、これを用いた急速液体凍結装置を提供する。
【解決手段】冷凍設備用ヒートポンプは、冷媒の循環路として蒸発器と圧縮機と凝集器とが管路によって接続され、蒸発器で冷却した熱を凝縮器で放熱させる構成とされ、調圧・バイパス制御手段を設けることで、蒸発器から圧縮機に送られる冷媒の圧力が低下したときに、圧力低下を補償する構成にしている。