特許第6762704号(P6762704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧

特許6762704管状領域をマッピング及び焼灼するための柔軟な遠位先端部を有するカテーテル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762704
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】管状領域をマッピング及び焼灼するための柔軟な遠位先端部を有するカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   A61B18/14
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-226366(P2015-226366)
(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公開番号】特開2016-97307(P2016-97307A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2018年11月19日
(31)【優先権主張番号】14/549,438
(32)【優先日】2014年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】トム・アレン・ディッター
【審査官】 吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−013726(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0204692(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0167509(US,A1)
【文献】 特開2014−039791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸線を有する細長い本体と、
前記細長い本体の遠位にある遠位アセンブリであって、前記遠位アセンブリは、近位ループ及び遠位ループを備える螺旋状形態部と、少なくとも前記近位ループを通って延在する形状記憶支持部材と、を有する、遠位アセンブリと、
前記近位ループ上に載置されている少なくとも1つの灌注焼灼リング電極と、
前記細長い本体の近位にある制御ハンドルと、
前記制御ハンドル内にある近位端、及び前記近位ループに取り付けられた遠位端を有する、収縮ワイヤーであって、前記制御ハンドルは、前記収縮ワイヤーを作動させて、前記近位ループを収縮させるように構成されている、第1の制御部材を含む、収縮ワイヤーと、を備え、
前記近位ループは、より低い可撓性を有し、前記遠位ループは、より高い可撓性を有する、カテーテル。
【請求項2】
前記螺旋状形態部は、径方向に少なくとも約720度の範囲を定める、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記螺旋状形態部は、径方向に約765度の範囲を定める、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記近位ループは、径方向に約360度の範囲を定める、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記遠位ループは、径方向に約360度の範囲を定める、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記遠位アセンブリは、前記遠位ループの遠位にある、概ね真っ直ぐな遠位端を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記概ね真っ直ぐな遠位端は、前記カテーテルの長手方向軸線に対して軸上にある、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記近位ループは、より大きな半径を有し、前記遠位ループは、より小さな半径を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記近位ループ及び前記遠位ループは、前記カテーテルの長手方向軸線に対して軸上にある、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記近位ループ及び前記遠位ループは、前記カテーテル長手方向軸線に対してある角度で斜めに配向されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
斜めの前記角度は、約45度〜105度の範囲である、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
斜めの前記角度は、約75〜105度の範囲である、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項13】
斜めの前記角度は、約90度である、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記近位ループは、約8個〜20個の電極を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記近位ループは、約10個の電極を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記近位ループは、径方向に約180度に広がる約6個の電極を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項17】
インピーダンスを測定するように適合された、少なくとも1つのリング電極を更に備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項18】
PV電位を測定するように適合された、少なくとも1つのリング電極を更に備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記収縮ワイヤーは、前記細長い本体及び前記近位ループを通って延在する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記細長い本体を通って延在する偏向ワイヤーを更に備え、前記制御ハンドルは、前記偏向ワイヤーを作動させて、前記細長い本体の一部分を偏向させるように構成されている、第2の制御部材を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記近位ループは、マルチルーメン管材を含み、
前記遠位ループ、及び前記概ね真っ直ぐな遠位端は、ルーメンを備える非導電性の管材を含み、前記ルーメンには、前記遠位ループの前記近位ループへの固定を助けるように前記形状記憶支持部材が延在し、
前記非導電性の管材の近位端は、前記マルチルーメン管材の穴が穿孔された遠位端に受容され、封止剤が、前記マルチルーメン管材の前記ルーメンをその遠位端で封止し、前記非導電性の管材を前記マルチルーメン管材に取り付けている、請求項6または7に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、侵襲的医療処置のための方法及びデバイスに関し、具体的には、カテーテル、特に、選択された解剖学的構造のマッピング及び焼灼に適合された遠位区域を有する、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心筋組織の焼灼は、心不整脈の処置として周知である。ラジオ波(RF)焼灼では、例えばカテーテルを心臓に挿入し、標的位置において組織と接触させる。次いで、カテーテル上の電極を介してRFエネルギーを印加し、組織内の催不整脈性の電流の道筋を破壊することを目的として損傷を作り出す。
【0003】
昨今では、肺静脈口の周方向の焼灼が、心房性不整脈、特に心房細動に関する処置として容認されている。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,064,902号は、肺静脈などの血管内壁上の組織の焼灼のためのカテーテルについて記載している。カテーテルの先端部分は、近位及び遠位区域が実質的に同一線上にある第1の概ね真っ直ぐな構成から、近位及び遠位区域が、その間に実質的に血管の内径に相当する分離距離を持って概ね平行である、第2のJ字形状の構成へと偏向可能である。カテーテルの遠位端部分は、肺静脈の内壁に沿ったカテーテル上の近位及び遠位焼灼電極の周方向の変位を引き起こすようにカテーテルの長手方向軸線の周囲で回転される。このような方法で、電極カテーテルは、各円周位置において1つ又は2つの部位を焼灼することにより、肺静脈の内壁上の円周状に間隔のあいた多数の部位を焼灼するために用いられ得る。
【0004】
その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2005/0033135号は、肺静脈マッピング及び焼灼のためのラッソーについて記載している。肺静脈(PV)を周方向にマッピングするためのカテーテルは、PVの内面の形状と概してぴったり一致するように形作られた湾曲区域を含む。この湾曲区域は、「オンエッジ」の構成の、概ね真っ直ぐな軸方向基部区域によって、カテーテルに連結され、この場合、基部軸方向区域は、湾曲区域の周囲上で、湾曲区域に連結する。湾曲区域は、1つ又は2つ以上の検出電極を備え、その近位端は、カテーテルの基部区域に対して一定の角度又は概して既知の角度で接合される。位置センサーは、カテーテルの湾曲区域及び基部区域の遠位端に固定される。カテーテルは、心臓に挿入され、湾曲区域は、PVの壁と接触するように位置付けられるが、基部区域は、左心房内に、典型的には湾曲区域と共にその接合部が静脈口に位置付けられるようにして残される。3つの位置センサーによって生成される情報を使用して、検出電極の場所及び配向を算定することにより、PVの表面のマッピングが可能になる。検出電極は、加えて、選択された部位の焼灼を行うことが可能であり、また、カテーテルは、焼灼要素を更に備えることができる。
【0005】
その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,008,401号は、複数平面又は複素曲線内でカテーテルの遠位区域を操舵するための、診断用途及び治療用途の双方で使用可能な、複合的操舵アセンブリについて記載している。これらのアセンブリにより、医師は、焼灼及び/又はマッピング電極を、内部身体表面と緊密に接触した状態に、迅速かつ正確に位置付け及び維持することが可能になると述べられている。その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,820,591号は、同様に、この種の複合的操舵アセンブリについて記載している。
【0006】
その開示が参照により本明細書に組み込まれている、2013年12月17日出願の米国特許第8,608,735号は、長手方向軸線を有し、患者の身体内への挿入に適合された遠位端を有する、挿入シャフトを含む、医療デバイスについて記載している。弾性の末端区域は、挿入シャフトの遠位端に固定され、非拘束状態の場合に、軸に対して斜めに配向されて、軸上に曲率中心を有する、弧を画定するように形成される。1つ又は2つ以上の電極は、末端区域に沿ったそれぞれの位置に配設される。
【0007】
しかしながら、ヒトの解剖学的構造は個人間で異なるため、心門の形状及びサイズは一様ではなく、弓状の形状又は概して円形の形状のいずれかを有する末端区域が、具体的な標的心門に常に適し得るとは限らない。更に、右心房は、容積が限定されているため、PV心門への進入は、遠位区域が標的部位に対して常に垂直の角度を呈するとは限らないことから、多くの場合、間接的である。これらの要因のために、電極と心門との接触が、完全なものに至らない場合が多い。電極と心門との接触を改善するために遠位区域に対して軸方向に圧力を加える場合、及び/又はカテーテルを長手方向軸線の周囲で回転させる場合、遠位区域は、心門から抜け落ちてしまう恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、湾曲(又は円形、本明細書において互換可能に使用する)部分が肺静脈などの管状領域に非外傷的に挿入され得る遠位区域を提供することで、肺静脈の心門における電極の定置精度を確保でき、更なる圧力を加える際、又は湾曲部分を心門の周囲で回転させる際、湾曲部分が心門から離れてしまうリスクを最小限に抑えることができる、ラッソータイプのカテーテルに対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、誘導シースに通して、心臓の心房内に配備するのに特に有用である、操舵可能で、マルチ電極を有する、灌注可能な、管腔カテーテルに係る。このカテーテルは、心房の電気生理学的マッピングを容易にし、焼灼を目的として、ラジオ波(RF)電流を、カテーテル電極へ伝送するように構成される。このカテーテルは、弓状かつ弾性の遠位アセンブリを含み、遠位アセンブリは、管状領域における使用に適合された、より大きな近位ループ及びより小さな遠位ループを含む先細りの螺旋状形態部を有する。遠位ループは、より小さな半径と、より高い可撓性を有するより柔軟な構造と、遠位ループを管状領域へと誘導する助けとなる、より柔軟な真っ直ぐな遠位端区域と、を有する一方、近位ループは、より高い剛性構造と、より大きな半径と、を有し、電極と管状領域の心門との接触を確実にする。より柔軟な真っ直ぐな遠位端区域は、特に、ユーザーによって軸方向力が加えられる際、遠位ループを管状領域内に誘導し、近位ループの定置精度を確保する、非外傷的な先導子を提供する。
【0010】
遠位アセンブリの中央にある先細りの螺旋状形態部により、組織接触及び環状運動の改善が見込まれる。螺旋状形態部は、軽い圧力を提供し、遠位アセンブリ内の電極と心門との接触を確実にする、所定のピッチを有する。先細りの螺旋状形態部によって、遠位ループは、確実に管状領域内に嵌入することができ、それにより、近位ループ及び近位ループ上にある焼灼電極の心門における定置精度を確保する。
【0011】
螺旋状形態部のピッチは、螺旋状形態部の長さに沿って変更可能である。例えば、近位ループのピッチは、遠位ループのピッチよりも長くすることができる。あるいは、螺旋状形態部のピッチ及び半径の双方は、螺旋状形態部の長さに沿って変更可能である。
【0012】
一部の実施形態では、カテーテルは、長手方向軸線を有する細長い本体と、細長い本体の遠位にある遠位アセンブリであって、近位ループ及び遠位ループを備える螺旋状形態部を有する遠位アセンブリと、少なくとも近位ループを通って延在する形状記憶支持部材と、を含む。カテーテルはまた、近位ループ上に載置されている少なくとも1つの灌注焼灼リング電極と、細長い本体の近位にある制御ハンドルと、を含み、近位ループは、より低い可撓性を有し、遠位ループは、より高い可撓性を有する。
【0013】
一部の詳細な実施形態では、螺旋状形態部は、径方向に少なくとも約720度の範囲を定めており、近位ループは、径方向に約360度の範囲を定め、遠位ループは、径方向に約360度の範囲を定める。
【0014】
一部の詳細な実施形態では、螺旋状形態部は、カテーテルの長手方向軸線に対して軸上にある。概ね真っ直ぐな遠位端は、遠位ループから遠位に延在しており、その遠位ループもまた、長手方向軸線に対して軸上にある。
【0015】
一部の詳細な実施形態では、螺旋状形態部は、先細りになっており、近位ループは、より大きな半径を有し、遠位ループは、より小さな半径を有する。
【0016】
一部の詳細な実施形態では、近位ループ及び遠位ループは、カテーテルの長手方向軸線に対して、ある角度で斜めに配向される。一部のより詳細な実施形態では、斜角は、約45度〜105度、好ましくは約75〜105度の範囲であり、より好ましくは斜角は、約90度である。
【0017】
一部の実施形態では、近位ループは、約8個〜20個の電極、好ましくは、約10個の電極を含み、それらの電極は、径方向に約360度の範囲を定める。あるいは、近位ループは、約6個の電極を含み、それらの電極は、径方向に約180度の範囲を定める。
【0018】
一部の詳細な実施形態では、遠位ループは、電位を検出するためのリング電極を含む。
【0019】
カテーテルはまた、細長い本体及び遠位アセンブリを通って延在する収縮ワイヤーを含んでいてもよく、制御ハンドルは、収縮ワイヤーを作動させて、螺旋状形態部を収縮させるように構成されている、第1の制御部材を含む。
【0020】
カテーテルはまた、細長い本体を通って延在する偏向ワイヤーを更に含んでいてもよく、制御ハンドルは、偏向ワイヤーを作動させて、細長い本体の一部分を偏向させるように構成されている、第2の制御部材を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明のこれらの特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて考慮することによってより充分な理解がなされるであろう。選択された構造及び特徴は、残りの構造及び特徴のより良好な概観を提供するために、特定の図面には示されていないことが理解されよう。
図1】一部の実施形態に係る、本発明のカテーテルの頂面図である。
図2図1のカテーテルの遠位アセンブリの詳細図である。
図2A】線C−Cに沿って取られた、図2の遠位アセンブリの断面図である。
図3図2の遠位アセンブリの端部図である。
図4A】本発明の一部の実施形態に係る、心門に進入する遠位アセンブリの側面図である。
図4B】心門と接触する、図4Aの遠位アセンブリの側面図である。
図5A】カテーテル本体と中間偏向区域との接合部において、線K−Kに沿って取られた、第1の直径に沿った、図1のカテーテルの側面断面図である。
図5B】第1の直径に概ね垂直な第2の直径に沿った、図5Aの接合部の側面断面図である。
図6】線H−−Hに沿って取られた、図1のカテーテルの端部断面図である。
図7】中間偏向区域と遠位アセンブリとの接合部において、線E−Eに沿って取られた、図1のカテーテルの側面断面図である。
図8図1のカテーテルの遠位アセンブリの、近位ループと遠位ループとの接合部の側面断面図である。
図9】灌注焼灼電極の実施形態の斜視図である。
図10図1のカテーテルの、近位ループ及び近位ループ上に載置されている灌注焼灼電極の一部分の側面断面図である。
図11】本発明の別の実施形態に係る、遠位アセンブリの詳細斜視図である。
図12】線L−−Lに沿って取られた、図1の制御ハンドルの側面断面図である。
図13図12の制御ハンドルの部分詳細図である。
図14】本発明の実施形態に係る、心臓内の組織の焼灼のためのシステムの概略描写図である。
図15】本発明の実施形態に係る、左心房へのカテーテルの挿入を示している、心臓の概略断面図である。
図16】本発明の更に別の実施形態に係る、遠位アセンブリの詳細斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ラッソーカテーテルは、上述の通り、肺静脈口などの解剖学的構造を取り囲む弧又は湾曲に沿って、組織をマッピング及び焼灼するために、使用することができる。ラッソーは、一般的には、操作性を目的として、細く可撓に作製され、電気抵抗を最小限に抑えるための大きいリング電極を備える。本特許出願の出願人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、2013年7月2日発行の「DUAL−PURPOSE LASSO CATHETER WITH IRRIGATION」と題される米国特許第8,475,450号は、ラッソーがより厚く、より剛性である、代替的な設計について記載している。本特許出願の出願人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、2011年6月30日出願の米国特許出願シリアル番号第13/174,742号(現在、米国特許第2013/0006238号として公開されている)は、遠位アセンブリが、制御ハンドルによって作動される収縮ワイヤーにより変更可能な湾曲の構成を有している、ラッソーカテーテルについて記載している。
【0023】
以降で説明される本発明の実施形態は、心臓内での操作及び位置決めを容易にするための、改善されたラッソータイプの構造体を有する、カテーテルなどのプローブを提供する。そのようなカテーテルを使用して、湾曲状、円形状、ループ状、又はその他の方式の閉鎖焼灼経路を作り出すことができるばかりではなく、電位及び解剖学的マッピングのために、湾曲、円形、ループ、又は閉鎖パターンに沿った電気的活動を検出することができる。
【0024】
図1及び図2を参照すると、開示される実施形態に係るカテーテル10は、長手方向軸線を有する挿入シャフト又はカテーテル本体12を含み得る細長い本体と、カテーテル本体の長手方向軸線から、軸外に単方向又は双方向に偏向することができる、カテーテル本体の遠位にある中間区域14と、を含む。リング電極19が非直線又は湾曲遠位部分に沿って配設されている、弾性の3次元遠位アセンブリ17は、細長い本体12又は中間区域14から延在する。本発明の特徴によれば、湾曲遠位部分17は、非拘束状態の場合に、概して螺旋状形態部22を画定する。この螺旋状形態部は、中間区域14から延在しているカテーテル10の長手方向軸線25に対して斜めに配向される。用語「斜めに」は、本発明との関連では、螺旋状形態部に最良に適する空間内の平面Pが、長手方向軸線25に対して角度が付けられていることを意味する。平面Pと軸線25との間の角度θは、約45〜105度、好ましくは約75〜105度の範囲であり、より好ましくは約90度である。更には、遠位アセンブリ17の螺旋状形態部22は、既定方式で螺旋を形成するか、又は範囲が定められる。図3に最も分かりやすく示されるように、遠位アセンブリ17の螺旋状形態部22は、組織接触及び環状運動を改善することを目的として、長手方向軸線25に対して有利に中央にある又は軸上にあり、先細りになっている。
【0025】
遠位アセンブリ17は、電極を担持している近位ループ17Pと、遠位ループ17D及び遠位の真っ直ぐな末端区域17Eを含む、柔軟な「ピッグテール」と、を有しており、遠位ループ17D及び遠位の真っ直ぐな末端区域17Eは、電極を担持している近位ループ17Pの弾力性よりも、より優れた弾力性を有する。遠位アセンブリ17の螺旋状形態部22のピッチは、全てのリング電極19と組織との接触を確実にするために、軽い圧力を提供するように選択される。図4A及び図4Bに示すように、螺旋状形態部22が先細りになっていることにより、より小さな遠位ループ17Dは、管状領域又は肺静脈に確実に嵌入することができ、それにより、より大きな近位ループ17P及びその上に担持されているリング電極19の、肺静脈などの管状領域13の心門11における定置精度を確保する。遠位ループ17D及び遠位の真っ直ぐな末端区域17Eのより高い可撓性により、遠位アセンブリ17を管状領域又は肺静脈内に誘導し、遠位アセンブリの定置精度を確保する、非外傷的な先導子が提供される。
【0026】
カテーテルは、心腔などの体腔内に挿入されている誘導シースを通って、患者の身体内に入る。遠位アセンブリ17の可撓な構成により、螺旋状形態部22は、誘導シース内への挿入のために容易に真っ直ぐに伸びる。遠位アセンブリは、誘導シースの遠位端を通過して移動するまで、心臓内壁などの身体内の組織に向かって誘導シース内を軸方向に前進する。(用語「軸方向」とは、カテーテルの長手方向軸線に沿った方向又は平行な方向を指す)。遠位アセンブリ17は、露出して非拘束状態になると、再び螺旋状形態部22を呈し、この螺旋状形態部22は、図4A及び図4Bに示すように、組織表面と前面で係合して、近位ループ17P上のリング電極19の一部又は全てが、同時に組織表面に接触するように操作される。本発明によれば、真っ直ぐな遠位端区域17Eは、螺旋状形態部22を管状領域内に誘導することによって遠位ループ17Dが管状領域内に入ることを容易にし、その際、遠位ループ17Dは、管状領域内により深く定置され、近位ループ17P及びリング電極19の心門における定置を安定させる。遠位ループ17D及び真っ直ぐな遠位端区域17Eの「柔軟性」又は弾力性が、これらの構造物を非外傷的にしており、これらの構造物が管状領域に入る際、管状領域に対する軸ずれから生じる組織損傷のリスクを最小限に抑えることができる。更には、組織接触をより良くするために、ユーザーがカテーテルに対して軸方向力を加え、心門に対して遠位アセンブリ17を押す際、管状領域内により深く位置付けられている遠位ループ17D及び遠位端区域17Eは、特に、遠位アセンブリ17の進入又は定置がオフ角であり、真っ直ぐに「正面から」ではない場合に、近位ループ17Pが心門から抜け落ちるリスクを最小限に抑える。以下で更に詳細に論じるように、自然な弛緩状態での近位ループ17Pよりも心門の直径が小さい場合には、オペレーターは、制御ハンドルを介して操作される収縮ワイヤーによって、近位ループ17Pを収縮させることができる。
【0027】
図5A及び図5Bに示される実施形態では、カテーテル本体12は、単一の軸方向又は中央ルーメン18を有する細長い管状構造を備える。カテーテル本体12は、可撓である、すなわち、屈曲可能であるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造のものであってよく、任意の好適な材料で作製することもできる。本発明において好ましい構造の1つは、ポリウレタン又はPEBAXで作製された外壁30を備える。外壁30は、カテーテル本体12の捩り剛性を増大させるために、当該技術分野において一般的に既知の、ステンレス鋼などの埋め込み式編組メッシュを備えることにより、制御ハンドル16を回転させると、中間区域14及び遠位アセンブリ17は、対応する方式で回転することになる。
【0028】
カテーテル本体12の外径は、重要ではないが、好ましくは約8フレンチ以下、より好ましくは7フレンチである。同様に、外壁30の厚さも重要ではないが、中央ルーメン18が任意の所望のワイヤー、ケーブル、及び/又は管を収納できるだけの充分な薄さのものである。外壁30の内側表面は、改善された捩り安定性を提供するために、補強管31で裏打ちされる。補強管31の外径は、外壁30の内径とほぼ同一であるか、又は若干それよりも小さい。補強管31は、非常に高い剛性を与えると共に体温で軟化することがない、ポリイミドなどの任意の好適な材料で作製することができる。
【0029】
偏向可能な中間区域14は、複数のルーメンを有する短区域の管材15を備えており、各ルーメンは、中間区域を通って延在する様々な構成要素で占有されている。図6に示される実施形態では、6つのルーメンが存在する。各リング電極のためのリードワイヤー/熱電対の対40、41は、第1のルーメン33を通過する。非導電性の保護シース42が提供され得る。遠位アセンブリ17に灌注流体を供給するための灌注用管材43は、第2のルーメン34を通過する。収縮ワイヤー44は、第3のルーメン35を通過する。遠位アセンブリ17上に位置付けられる複数個の単軸センサー(SAS)を含む、位置センサーアセンブリ48のためのケーブル46は、第4のルーメン36を通過する。遠位アセンブリ17に関しては、非導電性の管材52、例えばポリイミド管材によって囲繞される形状記憶支持部材50は、遠位アセンブリ17から比較的短い距離を、第5のルーメン37内へと近位に延在する。中間区域14を偏向させるための牽引ワイヤー54は、第6のルーメン38を通過する。
【0030】
中間区域14のマルチルーメン管材15は、好ましくはカテーテル本体12よりも可撓性の高い好適な無毒性材料で作製される。好適な材料は、編組ポリウレタン又はPEBAX、すなわち、編組ステンレス鋼などのメッシュが埋め込まれたポリウレタン又はPEBAXである。各ルーメンを通って延在する構成要素を収容するだけの充分な空間があれば、各ルーメンの数及びサイズは重要ではない。各ルーメンの位置もまた重要ではないが、ただし、遠位アセンブリ収縮ワイヤー44のための第3のルーメン35は、好ましくは、ワイヤーの近位移動によって、近位ループ17Pを容易に収縮させることができるように、遠位アセンブリ17の近位ループ17Pの内周に、より整列している。更には、偏向ワイヤー54のための第6のルーメン38は、軸外にあることにより、偏向ワイヤーのカテーテルに対する遠位移動によって、ルーメンが軸外にある側部へ向けた偏向が達成される。好ましくは、第3のルーメン35及び第6のルーメン38は、互いに直径方向に反対側にある。
【0031】
カテーテルの有用な長さ、すなわち、患者の身体内に挿入することができる、遠位アセンブリ17を除く部分は、必要に応じて変化させることができる。好ましくは、この有用な長さは、約110cm〜約120cmの範囲である。中間区域14の長さは、この有用な長さの比較的小さい部分であり、好ましくは約3.5cm〜約10cm、より好ましくは約5cm〜約6.5cmの範囲である。
【0032】
カテーテル本体12を中間区域14に取り付ける手段は、図5A及び図5Bに示されている。中間区域14の近位端は、カテーテル本体12の補強管31の外側表面を受容する、内周ノッチを備える。中間区域14及びカテーテル本体12は、例えばポリウレタンなどの接着剤などによって取り付けられる。必要な場合、カテーテル本体12内の、補強管31の遠位端と中間区域14の近位端との間にスペーサー(図示せず)を提供することによって、カテーテル本体12と中間区域との接合部に可撓性の移行を提供することとなり、接合部は、折れたり又は捻れたりすることなく、滑らかに屈曲することが可能となる。このようなスペーサーの例については、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,964,757号に、より詳細に記載されている。
【0033】
中間区域14の遠位には、遠位アセンブリ17がある。図2及び図3に示すように、遠位アセンブリ17は、中間区域14の遠位端のすぐ遠位にある角度が付けられたエルボ区域20と、螺旋状形態部22の近位部分を形成する横向きの湾曲区域21と、を含む。エルボ区域20は、約90度の角度βを有し、横向きの湾曲区域21は、径方向に約135度の角度αの範囲と、長手方向軸線25から約105度の角度θの範囲と、を定める。これらの構造及び角度により、遠位アセンブリ17の螺旋状形態部22を、軸方向に中央(「軸上」)にすることができ、かつ長手方向軸線25に対して斜めに角度付けることができる。螺旋状形態部22は、それゆえに、カテーテル上に「オフエッジ」の構成で載置され、この場合、中間区域14の長手方向軸線25は、図3に最も分かりやすく示されるように、螺旋状形態部22の周囲と交差することなく、むしろ、螺旋状形態部22の内部を通って延在する。本発明の特徴によれば、遠位アセンブリ17の螺旋状形態部22は、図3に最も分かりやすく示されるように、近位端から遠位端へと半径を小さくしながら内側に螺旋を形成することにより、その長さに沿って先細りになっている。
【0034】
図2及び図3を参照すると、一部の実施形態では、遠位アセンブリ17の螺旋状形態部22は、少なくとも約720度、好ましくは約765度の範囲を定める。近位ループ17Pは、湾曲区域21の遠位端から、少なくとも360度、好ましくは約405度の範囲を定め、遠位ループ17Dは、遠位端17DDが長手方向軸線25に向かって内側に鋭く湾曲し、長手方向軸線25の軸上にある遠位の真っ直ぐな末端区域17Eに接合される前に、近位ループ17Pの遠位端から、少なくとも別の約360度の範囲を定める。
【0035】
螺旋状形態部22は、半径r及びピッチP(その長手方向軸線25に沿った単位長さ当りの360度巻きの数)によって画定することができる。PV心門のマッピング又は焼灼のための好適な直径は、約20mm〜35mmの範囲とすることができる。ピッチは、約1.3cm(0.5”)(1.3cm(0.5インチ)当たり1回の360度巻き)と0.8cm(0.3”)(0.8cm(0.3インチ)当たり1回の360度巻き)との間の範囲とすることができる。近位端から遠位端へと先細りになる螺旋状形態部22により、半径は、RP近位端から遠位端RD(ただし、RP>RD)へと小さくなる。ピッチPは、螺旋状形態部の近位端と遠位端との間で一定のままであってもよいし、ピッチは、必要又は所望される場合、近位ループ17Pにおいてより大きいピッチ、遠位ループ17Dにおいてより小さいピッチ、となるように、又はその逆となるように、近位端と遠位端との間で変化してもよい。螺旋状形態部22は、時計回りの方向又は反時計回りの方向に湾曲又は螺旋を形成してもよいことが理解されよう。一部の実施形態では、近位ループ17Pは、好ましくは約33mm〜約35mmの範囲である外径ODを有する。エルボ区域20は、約4mm〜6mm、好ましくは約5mmの露出長を有する。湾曲した横方向の区域21は、約5mm〜7mm、好ましくは約6mmの露出長を有する。近位ループ17Pの近位端(角度α=0)から真っ直ぐな遠位端区域17Eの遠位端までの螺旋状形態部22は、約18mm〜22mm、好ましくは約20mmの露出長を有する。
【0036】
エルボ区域20、湾曲区域21、及び遠位アセンブリ17の近位ループ17Pは、当業者には理解されるように、螺旋状形態部を含めた所望の形状で予備形成することができる、マルチルーメン管材56で形成される。管材56を中間区域14の管材15に取り付ける手段は、図7に示されている。外周ノッチは、管材15の遠位端において受容される、管材56の近位端において作製される。
【0037】
図2Aに示される実施形態では、管材56は、4つの軸外ルーメン、すなわち、ケーブル46及びSAS 48のための第1のルーメン57と、リング電極ワイヤーの対40、41のための第2のルーメン58と、灌注流体のための第3のルーメン59と、支持部材50及び収縮ワイヤー44のための第4のルーメン60と、を有する。この場合も、ルーメンの位置及びサイズ設定は重要ではないが、ただし、収縮ワイヤー44のための第4のルーメン60は、好ましくは、ワイヤー44の近位移動によって、近位ループを容易に収縮させることができるように、近位ループ17Pの内周上にある。管材56は、任意の好適な材料で作製することができ、好ましくは、ポリウレタン又はPEBAXなどの、生体適合性プラスチックで作製される。
【0038】
図示の実施形態では、遠位アセンブリ17の、予備形成された支持部材又は脊柱部材50は、管材56の第4のルーメン60を通って延在し、螺旋状形態部22の形状を画定する。支持部材50は、形状記憶を有する材料、すなわち、力が行使されると、その本来の形状から離れて真っ直ぐに伸ばすか又は屈曲させることができ、かつ力を取り除くと、実質的に本来の形状に戻ることが可能である材料で、作製される。支持部材50に関して特に好ましい材料は、ニッケル/チタン合金である。そのような合金は、典型的には、約55%のニッケル及び約45%のチタンを含むが、約54%〜約57%のニッケルを含み、残部をチタンとすることができる。好ましいニッケル/チタン合金は、二チノールであり、これは延性、強度、耐腐食性、電気抵抗及び温度安定性と共に、優れた形状記憶性を有する。
【0039】
支持部材50は、既定の形状の断面を有し、この既定の形状は、概して円形、又は正方形を含む、概して長方形であり得る。概して長方形の断面は、同等のサイズの円形の断面と比較して、より高い剛性を提供できることが理解されよう。更には、支持部材は、その長さに沿って変化する厚さを有することができ、例えば、遠位をより細く、近位をより厚くすることにより、遠位部分は、より容易に収縮することができ、近位部分は、遠位アセンブリ17が標的組織と接触する際に加えられる軸方向力からの荷重に、より良好に耐えることができる。
【0040】
一部の実施形態では、支持部材50は、中間区域14とエルボ区域20との接合部のすぐ近位に、例えば、第5のルーメン37内の接合部の近位約2〜3mmに、近位端を有する。あるいは、支持部材50は、必要に応じて又は適宜、中間区域14内へと、中央ルーメン18を介してカテーテル本体12へと、又は更に制御ハンドル16内へと、更に近位に延在することができる。いずれの場合でも、非導電性の保護用管材62(例えば、編組ポリイミド管材)は、支持部材50に、その長さに沿って囲繞する関係で提供される。
【0041】
一部の実施形態では、支持部材50は、近位ループ17Pの遠位端と概して隣接する遠位端を有する。別の実施形態では、以下で更に論じられる通り、支持部材50は、少なくとも遠位ループ17D内に、遠位に延在し、そうでない場合、真っ直ぐな遠位端区域17Eにまで延在し、遠位端区域17Eの遠位先端部と概して隣接する遠位端を有する。
【0042】
収縮ワイヤー44は、近位ループ17Pを収縮させ、その直径を小さくするように提供される。収縮ワイヤー44は、収縮ワイヤーを操作するために使用される制御ハンドル16内に係留されている近位端を有する。収縮ワイヤー44は、カテーテル本体12の中央ルーメン18を通り、中間区域14の第3のルーメン35、エルボ区域20及び湾曲した横方向の区域21の中央ルーメン、並びに近位ループ17Pの第4のルーメン60を通って、その遠位端まで延在する。近位ループ17Pの第4のルーメン60内では、収縮ワイヤー44は、支持部材50と共に、非導電性の保護用管材62を通って延在する。上述のように、近位ループ17Pの第4のルーメン60は、近位ループ17Pの、より中心に近接する側部上に位置付けられる。この配置で、近位ループ17Pの収縮は、収縮ワイヤー44の位置がそのように制御されていない配置よりも、大幅に改善される。
【0043】
一部の実施形態では、非導電性の保護用管材62は、当該技術分野において一般的に既知であるように、その上に編組層が形成されるポリイミドの内部層、編組ステンレス鋼メッシュなどを備える編組層などを含めた、3つの層を含む。編組層は、管材の強度を高め、収縮ワイヤー44が、近位ループ17Pの予備形成された湾曲を真っ直ぐに伸ばす傾向を低減する。編組層を保護するために、ポリテトラフルオロエチレンの薄いプラスチック層が、編組層の上に提供される。このプラスチック管62は、中間区域14の遠位端に係留されている近位端を有する。
【0044】
支持部材50及び収縮ワイヤー44は、保護用管材62を通って延在する。図8に示される実施形態では、支持部材50の遠位端及び収縮ワイヤー44の遠位端(圧着フェルール51内に係留されている)は、接着剤によって管材56の第4のルーメン60の遠位端に固着されている小さいステンレス鋼管63に、ハンダ付けされるか、又は別の方法で取り付けられる。この配置で、収縮ワイヤー44及び支持部材50の相対位置は、上述の通り、収縮ワイヤー44を、近位ループ17Pの中心により近接する、近位ループ17Pの内側上に位置付けできるように、制御することができる。湾曲の内側上にある収縮ワイヤー44は、支持部材50を湾曲の内側に引き寄せ、螺旋状形態部の収縮を増進させる。更に、保護用管材62が編組層を含む場合、この編組層により、収縮ワイヤー44が近位ループ17Pのマルチルーメン管材56を貫通して引き裂くリスクが最小限に抑えられる。
【0045】
図8を参照すると、遠位ループ17D及び遠位の真っ直ぐな末端区域17Eは、非導電性の外装又は管材82を含む。管材は、ルーメン85を提供し、支持部材50は、そのルーメン85を通って、例えば約10mmの少なくとも短い距離を遠位ループ17Dまで遠位に延在し、遠位ループ17Dを近位ループ17Pに固定する助けとなる。他の実施形態では、支持部材50は、遠位ループ17Dまで更に延在し、又は遠位端区域17Eにまで更に延在し、遠位ループ17Dには螺旋形状を、遠位端区域17Eには真っ直ぐな形状を、それぞれ提供してもよい。管材82はまた、例えば加熱によって予備形成されていてもよく、螺旋形状及び真っ直ぐな形状を通って延在する支持部材50を有していない螺旋形状及び真っ直ぐな形状を呈し得ることが理解されよう。図示の実施形態では、管材82は、近位ループ17Pの管材56よりも小さいサイズ又はフレンチを有する。遠位ループ17Dの管材82Dを近位ループ17Pの遠位端に取り付ける手段は、図8に示されている。管材82の近位端は、管材56の穴が穿孔された遠位端において受容され、ポリウレタンなどの封止剤83が遠位端に塗布され、管材56のルーメンを遠位端において封止し、管材82Dを管材56に取り付ける、接合部を形成する。
【0046】
近位ループ17Pの管材56及び遠位ループ17Dの管材82は、ポリウレタン又はPBEXAなどの任意の好適な材料で作製されてもよい。本発明の特徴によれば、管材56の材料は、管材82の材料のデュロメータと同等の又はより大きいデュロメータを有しており、その結果、遠位ループ17Dは、近位ループ17Pを通って延在する支持部材50が遠位ループ17D全体にも延在する場合であっても、近位ループ17Pと比べて、より柔軟であり、より高い弾力性を有する。
【0047】
図5A及び図5Bを参照すると、収縮ワイヤー44を囲繞する圧縮コイル45は、カテーテル本体12の近位端から、中間区域14の第3のルーメン35を通って延在する。圧縮コイルは、中間区域14の遠位端に、又はその付近に、遠位端を有する。圧縮コイル45は、任意の好適な金属、好ましくはステンレス鋼で作製され、可撓性、すなわち屈曲を提供するが、圧縮には抵抗するように、それ自体に対して緊密に巻き付けられる。圧縮コイルの内径は、好ましくは、収縮ワイヤー44の直径よりも若干大きい。圧縮コイルの外側表面は、例えばポリイミド管材で作製される、可撓性の非導電性シースによって被覆される。圧縮コイルは、好ましくは、正方形又は長方形の断面積を有するワイヤーで形成されることにより、円形の断面積を有するワイヤーから形成される圧縮コイルよりも、圧縮性が小さくなる。結果として、圧縮コイル45は、より多くの圧縮を吸収するため、遠位アセンブリ17を収縮させるように収縮ワイヤー44が操作される際に、カテーテル本体12、特に、中間区域14が偏向することを防ぐ。
【0048】
複数のリング電極19は、図2に示すように、近位ループ17P上の既定の場所上に載置される。電極は、白金又は金、好ましくは、白金とイリジウムとの組み合わせ、又は金と白金との組み合わせなどの、任意の好適な固体導電性材料で作製され、接着剤などで、管材上に載置することができる。焼灼及び灌注に適合された電極の好適な実施形態は、図9及び図10に示される。焼灼リザーバ(「AR」)電極は、概して円筒形であり、その直径よりも長い長さを有する。一部の実施形態では、長さは、約3.0mmであり、外径は、約2.8mmであり、内径は、約2.33mmである。
【0049】
図示の実施形態では、AR電極は、径方向に張り出す側壁65(一部の実施形態では、約2.5mmの幅を有する)を備えた、樽に類似し得る側断面を有することにより、中間部分の直径MDは、両末端部分66での末端部の直径EDよりも大きい。湾曲移行領域67は、側壁65と末端部分66との間に提供され、角部又は鋭利縁部を有さない、非外傷性の外形を提供する。
【0050】
特に、この中間部分の直径は、遠位アセンブリの基底となる管材56の外径よりも大きいことから、リザーバ又は環状の間隙Gが、管材56の外面の周囲に存在する。間隙Gは、管材56の外壁内に提供されている開口部68と、AR電極の側壁65内に計画的に形成及び位置付けされている開口69と、を介した、第3のルーメン59からAR電極の外面への流体分配の改善を提供する。管材56内の開口部68のサイズは、近位ループ17Pの長さに沿った位置と共に変化する。最適な流れのために、開口部が螺旋状形態部に沿って遠位になるにつれて、開口部のサイズ若しくは断面積、及び/又は各AR電極の開口部の数が増大する。
【0051】
開口69は、軸方向オフセット列を含む、既定のパターンで、AR電極の側壁65に配置される。これらの開口は、外向きに面し、径方向の流れを促進する。開口はまた、軸方向の流れを促進するために、湾曲移行領域67内、又はその付近にも提供される。更には、これらの開口は、電極の外形の移行による、より高い電流密度から生じる「ホットスポット」となる可能性が高い、湾曲移行領域での、又はその付近での、炭化及び凝固を最小限に抑える点で、特に有効である。その点に関して、開口の数及び/又は断面積は、電極の側壁内よりも、湾曲移行領域で、又はその付近でより大きく、それにより、より多くの冷却作用を、湾曲移行領域内で提供できる。したがって、このカテーテルは、患者に対する全体的な流速及び全体的な流体負荷を増大させることなく、より多くの灌注を供給することができ、その結果として、より多くの冷却作用を供給することができる。
【0052】
一部の実施形態では、各末端部分66上には、約10個の開口があり、側壁65上には、約20個の開口がある。このパターンは、各AR電極からの流量分布を更に改善するように、調整することができる。このパターンは、開口の追加若しくは除去、開口の間隔の修正、リング電極上での開口の場所の修正、及び/又は開口の幾何学的形状の修正によって、調整することができる。他の好適なリング電極は、上記2013年7月2日発行の米国特許第8,475,450号に記載されている。
【0053】
灌注流体は、制御ハンドル16の近位にあるルアーハブ(図示せず)に近位端が取り付けられ、ポンプ(図示せず)によって供給される流体を受容する、灌注用管材43によって、遠位アセンブリ17に供給される。灌注用管材は、制御ハンドル16と、カテーテル本体12の中央ルーメン18と、中間区域14の第2のルーメン34と、移行区域20の中央ルーメンと、を通って、近位ループ17Pの第3のルーメン59へと、例えば約5mmの短い距離を遠位に延在する。流体は、第3のルーメン59に入り、開口部68を介してルーメンからAR電極のリザーバR内へと流出し、開口69を介してリザーバからAR電極の外側へと流出し、炭化を最小限に抑える。
【0054】
近位ループ17P上のAR電極の数は、必要に応じて変化し得る。好ましくは、AR電極の数は、約6個〜約20個、より好ましくは、約8個〜約12個の範囲である。一部の実施形態では、近位ループ17Pは、10個のAR電極を担持する。電極は、図7に示すように、近位ループ17Pの周りに、ほぼ均等に離間させることができる。
【0055】
各ワイヤーの近位端は、電気信号を送信及び/又は受信して焼灼を達成するために、制御ハンドル16の遠位にある好適なコネクター(図示せず)に電気的に接続される。各AR電極は、対応するワイヤー40、41の対に接続される。開示される実施形態では、ワイヤー対のワイヤー40は、銅線、例えば、番手「40」の銅線である。ワイヤー対の他方のワイヤー41は、コンスタンタン線である。各対のワイヤーは、それらが撚り合わされている遠位端を除いて、互いに電気的に絶縁され、近位ループ17Pの第2のルーメン58内に形成された穴を通って送り込まれて、それらの対応するAR電極にハンダ付けされる(図14)。各電極のためのワイヤー対は、制御ハンドル16から、カテーテル本体12の中央ルーメン18、中間区域14の第1のルーメン33、移行区域20の中央ルーメン、及び近位ループ17Pの第2のルーメン58を通って延在する。焼灼エネルギー、例えば、RFエネルギーは、ワイヤー対のワイヤー40を介して、AR電極に供給される。しかしながら、ワイヤー対はまた、それぞれのコンスタンタン線を含めて、各AR電極の温度を検出する温度センサー又は熱電対としても機能することができる。
【0056】
全てのワイヤー対は、それらを囲繞する関係の、任意の好適な材料、例えばポリイミドで作製することができる、1つの非導電性保護シース42(図6参照)を通過する。シース42は、制御ハンドル16から、カテーテル本体12、中間区域14、移行区域20、及び近位ループ17Pの第2のルーメン58内に延在し、移行区域20と遠位アセンブリ17との接合部のすぐ遠位で、例えば、第2のルーメン58内に約5mmで終端する。遠位端は、接着剤、例えばポリウレタン接着剤などによって、第2のルーメン内に係留される。
【0057】
代替的な電極の配置は、図11に示す。この代替的な実施形態では、遠位アセンブリ17’は、5つのAR電極を有し、AR電極よりも幅の狭い追加的リング電極を含む。そのような追加的リング電極は、互いに、かつAR電極から電気的に絶縁され、インピーダンスの記録に適合された、インピーダンス記録(IR)電極とすることができる。IR電極の一部の実施形態では、長さは約0.75mmであり、内径は約2.3mmである。マッピング及び/又は焼灼の成功度は、組織接触によって決定する。それゆえ、組織接触の情報は、マルチ電極焼灼カテーテルでは特に有用である。様々なサイズ及び間隔を有する、少なくとも2つの独立したIR電極の対(「対」は、以降では、任意の2つの電極、又は好ましくは、2つの最も隣接する電極とする)を利用することにより、単一のマルチ電極カテーテルを利用した、異なる周波数/対象領域での、インピーダンスの値及び比率を比較することによる、組織接触の評価が可能になる。
【0058】
インピーダンスは、様々な周波数/対象領域で、更に評価することができる。例えば、IR電極の対とAR電極の対とのインピーダンスの比率を使用して、接触の検証、及び接触の程度若しくは量の観点から、組織接触を評価する。そのような絶縁双極性IR電極を使用して、カテーテルは、焼灼、マッピング(電位図の記録)、及び組織接触の評価を、同時に実行するように適合される。
【0059】
IR電極は、遠位アセンブリ17の幾何学的形状に応じて、AR電極の各対の間に、又はAR電極の選択された対の間に位置し、絶縁された(より小さい)IR電極の対の間のインピーダンスと、(より大きい)AR電極の対の間のインピーダンスと、の比較を介して、正確な組織接触の検証を提供することができる。図11に示される実施形態では、N個の複数のAR電極に対して、合計2(N−1)個の複数のIR電極となるように、AR電極の隣接する対のそれぞれの間に、2つのIR電極が存在する。
【0060】
図7で同様に示されるような、別の代替的な実施形態では、遠位アセンブリ17は、AR電極の間に位置する、電気的に絶縁された双極性記録リング(「RR」)電極を含み、肺静脈(「PV」)電位の可視化の改善を提供する。そのような絶縁双極性RR電極を備えるカテーテルにより、カテーテルを再度位置決めする必要なく、焼灼及び電位図の記録を同時に実行することが可能になる。PV電位のより精密な電位図記録に関して、遠距離場の影響、又はいずれの可視化解像度の減少をも最小限に抑えるために、より幅が狭い双極性RR電極が、遠位アセンブリの幾何学的形状に応じて、AR電極の各対の間に、又はAR電極の選択された対の間に、既定の間隔で位置付けられる。
【0061】
当業者には理解されるように、2つの近接配置されたRR電極により、遠距離場の心房信号に対する、近距離場のPV電位のより正確な検出が可能になり、このことは、心房細動の処置を試みる際に、極めて重要である。具体的には、近距離場のPV電位は、極めて小さい信号であり、一方で心房は、肺静脈の極めて近接に位置し、遙かに大きい信号を提供する。したがって、遠位アセンブリ17が、肺静脈内に定置される場合であっても、信号が小さく、かつ(肺静脈から)近接する電位であるのか、又は信号がより大きく、かつ(心房から)より遠方の電位であるのか、を、医師が判定することは、困難である場合がある。近接配置される双極子により、医師は、近接する信号を検査しているのか、又は遠方の信号を検査しているか、を、より正確に判定することが可能になる。したがって、近接配置される電極を有することによって、PV電位を有する心筋組織の場所を、より良好に標的とすることが可能であるため、臨床医は、特定の組織に治療を施すことが可能になる。更には、近接配置される電極により、医師は、電気信号によって、心門の正確な解剖学的場所を判定することが可能になる。
【0062】
一部の実施形態では、隣接するAR電極の対のそれぞれの間に、AR電極の対が提供される。それゆえ、M個の複数のAR電極に対して、2(M−1)個の複数のRR電極が存在する。図示の実施形態では、遠位アセンブリ17は、隣接するAR電極間に、約4.0mmの間隔を有して、10個のAR電極を担持する。遠位アセンブリ17が、IR電極又はRR電極を担持する場合にも、それらの電極は、相互間に1.0mmの間隔を有し得る。更に、最遠位のAR電極を、他のAR電極とは異なるサイズにすることにより、カテーテルを蛍光透視下で観察している際に、視覚的識別信号をユーザーに提供することができる。具体的には、遠位アセンブリ17は、概して円形であるため、螺旋状形態部22の配向、及びいずれの電極が心臓内の特定の場所に定置されているかを、ユーザーが判定することは、困難である場合がある。最遠位のAR電極などの、1つのAR電極を、より長くすることによって、ユーザーは、カテーテルを蛍光透視下で観察する際の基準点を有する。
【0063】
上述の通り、いずれの追加的なIR電極又はRR電極に関しても、追加的なリードワイヤーの対40、41が、必要に応じて提供される。それらのリードワイヤーの対は、遠位アセンブリ17の第2のルーメン58、コネクター用管材23の中央ルーメン、中間区域14の第1のルーメン33、カテーテル本体12の中央ルーメン18を通って、制御ハンドル16内に延在する。
【0064】
偏向牽引ワイヤー54は、中間シャフト14の偏向のために提供される。偏向ワイヤー54は、カテーテル本体12の中央ルーメン18、及び中間区域14の第6のルーメン38を通って延在する。偏向ワイヤー54は、その近位端で制御ハンドル16内に係留され、その遠位端で好適な材料49、例えばポリウレタンによって管材15の側壁に固着されているT字バー55(図6及び図7)によって、中間区域14の遠位端に、又はその付近に係留される。遠位端は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,371,955号で概して説明されるように、中間区域の管材15の側壁に係留される。牽引ワイヤー54は、ステンレス鋼又はニチノールなどの、任意の好適な金属で作製され、好ましくはTeflon(登録商標)などでコーティングされる。コーティングによって牽引ワイヤーに潤滑性が付与される。牽引ワイヤーは、約0.015〜約0.025cm(0.006〜約0.010インチ)の範囲の直径を有することが好ましい。
【0065】
第2の圧縮コイル53は、牽引ワイヤー54に対して囲繞する関係で、カテーテル本体12の中央ルーメン18内部に置かれる(図5B)。第2の圧縮コイル53は、カテーテル本体12の近位端から、中間区域14の近位端、又はその付近へと延在する。第2の圧縮コイル53は、任意の好適な金属、好ましくはステンレス鋼で作製され、可撓性、すなわち屈曲を提供するが、圧縮には抵抗するように、それ自体に対して緊密に巻き付けられる。第2の圧縮コイル53の内径は、好ましくは、牽引ワイヤー54の直径よりも若干大きい。牽引ワイヤー上のTeflon(登録商標)コーティングにより、牽引ワイヤーは、第2の圧縮コイル内部で自由に摺動することが可能になる。カテーテル本体12内部では、第2の圧縮コイル53の外側表面は、例えばポリイミド管材で作製される、可撓性の非導電性シース61によって被覆される。第2の圧縮コイル53は、その近位端で、近位接着部によってカテーテル本体12の外壁30に係留され、遠位接合部によって、中間区域14に係留される。
【0066】
中間区域14の第6のルーメン38内部では、牽引ワイヤー54は、プラスチックの、好ましくはTeflon(登録商標)の、牽引ワイヤーシースを通って延在し、このシースは、中間区域14が偏向される際に、牽引ワイヤー54が中間区域14の管材15の壁内に切れ込むことを防止する。
【0067】
図1を参照すると、遠位アセンブリ17の近位ループ17Pの収縮を生じさせる、カテーテル本体12に対する収縮ワイヤー44の長手方向の移動は、制御ハンドル16の好適な操作によって達成される。同様に、中間区域14の偏向を生じさせる、カテーテル本体12に対する偏向ワイヤー54の長手方向の移動は、制御ハンドル16の好適な操作によって達成される。2つ以上のワイヤーを操作するための好適な制御ハンドルは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,468,260号、同第6,500,167号、及び同第6,522,933号に記載されている。ラッソータイプのカテーテルを操作するための好適な制御ハンドルは、2009年8月28日出願の米国特許出願第12/550,307号(現在、米国特許第2011/0054287(A1)号として公開されている)、及び2009年8月28日出願の米国特許出願第12/550,204号(現在、米国特許第2011/0054446(A1)号として公開されている)に記載されており、その全開示は参照により本明細書に組み込まれている。
【0068】
一部の実施形態では、カテーテルは、図12及び図13に示すように、制御ハンドル16を含む。制御ハンドル16は、ハンドル本体74を有する偏向制御アセンブリを含み、このハンドル本体74内には、コア76が固定式に載置され、ピストン78がコア76の遠位領域の上に摺動可能に載置される。ピストン78は、ハンドル本体の外側に延在する、遠位部分を有する。親指ノブ80が、遠位部分上に載置されることにより、ユーザーは、コア76及びハンドル本体74に対して、ピストンを長手方向により容易に移動させることができる。カテーテル本体12の近位端は、ピストン78の遠位端に固定式に載置される。軸方向通路79が、ピストンの遠位端に提供されることにより、カテーテル本体12を通って延在する、リードワイヤー40、41、収縮ワイヤー44、偏向ワイヤー54、センサーケーブル46、及び灌注用管材43を含む様々な構成要素は、制御ハンドル内に入り、また必要に応じて、制御ハンドルを通過することができる。例えば、リードワイヤー40、41は、当該技術分野において一般的に既知であるように、制御ハンドル16の近位端から外に延在することができ、又は制御ハンドル内に組み込まれているコネクターに接続することができる。
【0069】
偏向ワイヤー54の近位端は、制御ハンドル16内に入り、滑車82の周りに巻き付けられ、コア76に係留される。ハンドル本体74及びコア76に対する親指ノブ80及びピストン78の遠位への長手方向の移動は、偏向ワイヤー54の近位端を遠位に引き出す。結果として、偏向ワイヤー54は、偏向ワイヤー54が係留されている中間区域14の側部を引っ張ることにより、その方向に中間区域を偏向させる。中間区域14を真っ直ぐに伸ばすためには、親指ノブ80を、近位に移動させることによってピストン78をハンドル本体74及びコア76に対して近位に移動させ、その本来の位置に戻す。
【0070】
制御ハンドル16はまた、回転制御アセンブリによって、収縮ワイヤー44の長手方向の移動のためにも使用される。図示の実施形態では、回転制御アセンブリは、カムハンドル71及びカムレシーバ72を含む。カムハンドルを一方向に回転させることによって、カムレシーバが近位に引き寄せられ、収縮ワイヤー44を引き込む。カムハンドルを、反対方向に回転させることによって、カムレシーバが遠位に前進し、収縮ワイヤーを解放する。例えば、近位ループ17Pが約35mmの本来の外径を有する場合、収縮ワイヤーによって近位ループ17Pを締め付けることにより、外径を約20mmまで低減することができる。収縮ワイヤー44は、カテーテル本体12から、制御ハンドル16内に延在し、ピストン78内の軸方向通路を通り、コア76を通って、調整器75内に係留され、この調整器75によって、収縮ワイヤーの張力を調整することができる。
【0071】
一部の実施形態では、位置センサー48は、遠位アセンブリ17(図2A)の第1のルーメン57を通って延在するケーブル46上に担持されている、複数の単軸センサー(「SAS」)を含み、この場合、各SASは、近位ループ17P上の既知又は既定の位置を占める。ケーブル46は、遠位アセンブリ17から、移行区域20の中央ルーメン、中間区域14の第4のルーメン36(図6)、カテーテル本体12の中央ルーメン18を通って、制御ハンドル16内へと近位に延在する。各SAセンサーは、既知の等しい間隔で、隣接するSASと離隔して位置付けられる。開示される実施形態では、このケーブルは、近位ループ17Pの場所及び/又は位置を検出するために、最遠位のAR電極、最近位のAR電極、及び中間のAR電極の下に位置付けられる、3つのSASを担持する。遠位アセンブリが、10個のAR電極を担持する場合、SASは、AR1、AR5、及びAR10の下にある(図7)。これらのSASによって、CARTO、CARTO XP、及びNOGAマッピングシステムを含む、Biosense Webster,Inc.による製造及び販売のマッピングシステムの下で、近位ループ17Pを観察することが可能になる。好適なSASは、その全開示が参照により本明細書に組み込まれている、2010年12月30日出願の米国特許出願第12/982,765号(現在、米国特許第2012/0172703(A1)号として公開されている)に記載されている。
【0072】
図11に示される、本発明の代替的な実施形態では、遠位アセンブリ17’は、その一部分(例えば、ループ17P’の遠位の半円形部分)にのみAR電極19を担持する、電極を担持している近位ループ17P’を含む。近位ループ17P’は、概して、近位ループ17Pと同一の構造及び構成を有するが、その電極を担持している部分は、約180度以下の角度に範囲が定められる。遠位アセンブリ17’は、患者が、より大きいPV心門を有する場合に、又は2つのPVが、共通の心門を共有するように、互いに極めて接近している場合に、特に有用である。
【0073】
本発明のカテーテル10は、操舵可能で、マルチ電極を有する、灌注ルーメン式のカテーテルである。このカテーテルは、誘導シースに通して、身体の標的領域、例えば心臓の心房内に配備される。このカテーテルは、標的領域、例えば心房の、電気生理学的マッピングを容易にし、焼灼を目的として、エネルギー、例えばラジオ波(RF)電流を、カテーテル電極へ伝送するように設計されている。焼灼に関しては、このカテーテルは、マルチチャネルRF発振器及び灌注ポンプと共に使用される。
【0074】
このカテーテルの構成により、カテーテルは、管状構成物、例えばPV心門の開口部に、組織との一貫した周方向での接触を伴って位置することが可能になる。心内信号は、EP記録システムによって記録され、カテーテルの場所は、蛍光透視法によって可視化される。一旦カテーテルが所望の場所に置かれると、エネルギーが、(複数の電極に、同時に、又は選択的に)単極性モード又は双極性モードで、静脈の心門に供給され、PVの隔離を生じさせる。
【0075】
一部の実施形態では、焼灼は、マルチチャネルRF発振器上の設定ワット数で、実施される。焼灼の間、マルチチャネルRF発振器は、関連するリング電極の温度を監視して、その温度が、ユーザーによって設定された値を超過する場合には、ワット数を低減させる。マルチチャネルRF発振器は、選択されたリング電極を通るようにRF電流を経路指定し、カテーテルの温度情報は、カテーテル上の熱電対から、発振器に送られる。
【0076】
焼灼の間、灌注ポンプを使用して、リング電極に通常ヘパリン添加生理食塩水を供給し、リング電極を冷却して、血液の凝固を防止する。リング電極内の開口は、カテーテルの焼灼範囲の灌注を容易にする。より深い損傷が所望される場合、開口を介した各リング電極のより多い流量分布(より速い流速は伴わない)が、電極/組織の接点に供給される電力の量が増大する場合に通常直面するであろう、焼灼表面上の炭化及び凝血のリスクの増大を低減する。灌注の効率の改善をもたらす、各リング電極からのより多い流量分布は、(1)流体ポンプの流速を増大させることがない、より高い電力の供給、(2)現在利用可能な、流速制限されたポンプを使用する能力、(3)複数のポンプを使用する必要性の排除、及び/又は(4)焼灼処置の間の、患者に対する流体負荷の低減、を含む、有利点を提示する。
【0077】
図16は、本発明の別の実施形態に係る、遠位アセンブリ117を示す。遠位アセンブリ117は、概して、上述の遠位アセンブリ17と同一の構造及び構成を有するが、柔軟な遠位ループ117Dは、カテーテルを再度位置決めする必要なく、電位図を記録するための電位の単極検知及び/又は双極検知のために適合された複数のリング電極120を担持することによって、診断能力を提供する。遠位ループ上にある、適宜間隔を有する幅の狭い記録電極120により、管状領域内部における電位の精密な可視化が可能となる。複数のリング電極120は、約10個〜40個、好ましくは約14個〜30個の範囲であり、より好ましくは約20個である。したがって、遠位アセンブリ117は、例えば、不規則な電気的活動が肺静脈から左心房に入るような心房細動の処置に関して特に有用であり、遠位ループ117Dは、肺静脈の更に内部で安全に位置付けられ、不規則な電気的活動の原因を検出できる一方、近位ループ117Pは、肺静脈口の上に確実に位置付けられ、焼灼を行い、不規則な電気的活動が左心房に入るのを阻止できる。遠位アセンブリ117の管材は、遠位ループ117Dのリング電極120のリードワイヤー専用ルーメンを、少なくとも1つ有する、マルチルーメンであってもよいことが理解されよう。
【0078】
図14は、本発明の実施形態に係る、患者128の心臓126内の組織の焼灼に関するシステムSの概略描写図である。心臓専門医などのオペレーター122は、カテーテルの遠位端が患者の心臓の小室内に入るように、カテーテル10を、患者の脈管系に通して挿入する。オペレーターは、カテーテルの遠位アセンブリ17が所望の場所又は所望の複数の場所にて心内膜組織に係合するように、カテーテルを前進させる。カテーテル10は、その近位端の好適なコネクターによって、コンソール130に接続される。コンソールは、遠位区域によって接触される組織を焼灼するために、カテーテルの末端区域上の電極を通じてRFエネルギーを加えるための、RF発振器を備える。代替的に又は追加的に、カテーテルは、心内電気マッピング又は他のタイプの焼灼治療などの、他の診断機能及び/又は治療機能のために、使用することができる。
【0079】
図示の実施形態では、システムSは、磁気位置検出を使用して、心臓内部のカテーテルの遠位アセンブリの位置座標を判定する。位置座標を判定するために、コンソール130内の駆動回路134は、磁場発生器132を駆動して、患者の身体内部に磁場を生成する。典型的には、磁場発生器は、患者の胴体の下方の、身体外部の既知の位置に配置されるコイルを含む。これらのコイルは、心臓を含む、既定の作業容積内に磁場を生成する。カテーテルの末端区域の内部の1つ又は2つ以上の磁場センサーは、これらの磁場に応答して電気信号を生成する。コンソール130は、以下で説明するように、カテーテルの遠位アセンブリ17の位置(場所及び/又は配向)の座標、及び恐らくは、遠位アセンブリの変形も判定するために、これらの信号を処理する。コンソールは、ディスプレイ138を駆動する際に、その座標を使用して、カテーテルの場所及び状態を示すことができる。この位置検出及び処理の方法は、例えば、その全開示が参照により本明細書に組み込まれている、PCT国際公開第WO 96/05768号に詳細に記載されており、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,California)製のCARTOシステム内に実装されている。
【0080】
代替的に又は追加的に、システムは、患者の身体内部でカテーテルを操作及び動作させるための、自動化機構(図示せず)を含み得る。そのような機構は、典型的には、カテーテルの長手方向の動き(前進/後退)及び回転の双方を制御することが可能である。そのような実施形態では、コンソールは、位置検出システムによって提供される信号に基づいて、カテーテルの動きを制御するための制御入力を生成する。
【0081】
図14は、ある特定のシステム構成を示すものであるが、他のシステム構成を本発明の代替的な実施形態に使用してもよい。例えば、下記に記載する方法は、インピーダンスに基づく又は超音波位置センサーなどの他のタイプの位置変換器を用いて適用されてもよい。用語「位置変換器」は、本明細書で使用するとき、カテーテル上又はカテーテル内に載置される要素であって、その要素の座標を指示する信号を、コンソールに受信させるものを指す。したがって、位置変換器は、変換器が受け取ったエネルギーに基づいて制御ユニットへの位置信号を生成する、カテーテル内の受信機を備えてもよく、又はプローブの外部にある受信機が検出したエネルギーを発する送信機を備えてもよい。更に、以降で説明される方法は、心臓内、並びに他の身体器官及び身体領域内の双方で、カテーテルだけではなく、他のタイプのプローブも使用する、マッピング用途及び測定用途に、同様に適用することができる。
【0082】
図15は、本発明の実施形態に係る、心臓内へのカテーテル10の挿入を示している、心臓126の概略断面図である。図示の実施形態でカテーテルを挿入するために、オペレーターは、最初に、脈管系に誘導シース140を経皮的に通過させ、上行大静脈142を通って、心臓の右心房144内に通す。シースは、典型的には卵円窩を介して、心房中隔148を通り、左心房146内に貫通する。あるいは、他の接近経路を使用してもよい。次いで、カテーテルの遠位アセンブリ17が誘導シース140の遠位端を通過して左心房146内に延在するまで、誘導シースを通してカテーテルを挿入する。
【0083】
オペレーターは、左心房146内部の誘導シース140(及びカテーテル)の長手方向軸線を、肺静脈の1つの軸と整列させる。オペレーターは、遠位アセンブリ17を標的心門に向けて方向付ける際、制御ハンドル16の親指ノブ80を使用して、中間区域14を偏向させることができる。オペレーターは、予め取得した心臓のマップ又は画像と共に、上述の位置検出方法を使用して、この整列を遂行することができる。代替的に又は追加的に、蛍光透視鏡的又は他の可視化手段のもとで、この整列を行ってもよい。オペレーターは、まず柔軟な遠位端17Eが肺静脈に入り、次いで柔軟な遠位ループ17Dが入り、その双方が心門上における電極を担持している近位ループ17Pの位置決め及び定置を誘導するように、標的の管状領域又は肺静脈13に向かってカテーテルを前進させる(図4A)。オペレーターは、軸方向に力Fを加えて、心門上に近位ループ17Pを押圧し、リング電極19と組織との接触を確実にすることができる(図4B)。有利には、管状領域又は肺静脈13の更に内部に位置付けられている柔軟な遠位端17E及び柔軟な遠位ループ17Dは、近位ループ17Pが心門から抜け落ちないように、心門上に保持しておく助けとなる。カムハンドル71を操作することによって、近位ループ17Pは、PV心門に適するように収縮する。開示される実施形態では、収縮ワイヤー44は、カムハンドルを一方向に回転させると、カムレシーバ72によって近位に引き込まれ、近位ループ17Pの直径を締め付けて、小さくする。カムハンドルを反対方向に回転させることによって、カムレシーバは、収縮ワイヤーを解放し、近位ループ17Pは、展開して、その本来の直径に戻ることができる。
【0084】
次いで、オペレーターは、カテーテルをその軸を中心として誘導シース内部で回転させることにより、近位ループ17Pは、静脈の内周の周りの環状経路を辿ることが可能となる。その間に、オペレーターは、RF発振器を作動させて、AR電極と接触する組織を、その経路に沿って焼灼する。同時に、インピーダンス及び/又はPV電位の記録を、IR電極及び/又はRR電極を使用して行なうことができる。1つの肺静脈の周囲でこの処置を完了した後、オペレーターは、シース及びカテーテルを移動させ、1つ又は2つ以上の他の肺静脈の周囲でこの処置を繰り返してもよい。
【0085】
上記の説明文は、現時点における本発明の好ましい実施形態を参照して、提示されたものである。本発明が関係する分野及び技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨及び範囲を著しく逸脱することなく、説明された構造の改変及び変更を実施できることが理解されよう。一部の実施形態に開示される任意の特徴又は構造は、必要に応じて、又は適宜、他の任意の実施形態の他の特徴の代わりに又はそれに加えて組み込むことが可能である。当業者には理解されるように、図面は必ずしも縮尺通りではない。したがって、上記の説明文は、添付図面に記載されかつ例示される厳密な構造のみに関連するものとして読み取るべきではなく、むしろ、以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる「特許請求の範囲」と符合し、かつそれらを補助するものとして読み取るべきである。
【0086】
〔実施の態様〕
(1) 長手方向軸線を有する細長い本体と、
該細長い本体の遠位にある遠位アセンブリであって、該遠位アセンブリは、近位ループ及び遠位ループを備える螺旋状形態部と、少なくとも該近位ループを通って延在する形状記憶支持部材と、を有する、遠位アセンブリと、
該近位ループ上に載置されている少なくとも1つの灌注焼灼リング電極と、
該細長い本体の近位にある制御ハンドルと、を備え、
該近位ループは、より低い可撓性を有し、該遠位ループは、より高い可撓性を有する、カテーテル。
(2) 前記螺旋状ループは、径方向に少なくとも約720度の範囲を定める(substends at least about 720 radial degrees)、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記螺旋状ループは、径方向に約765度の範囲を定める、実施態様1に記載のカテーテル。
(4) 前記近位ループは、径方向に約360度の範囲を定める、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 前記遠位ループは、径方向に約360度の範囲を定める、実施態様1に記載のカテーテル。
【0087】
(6) 前記遠位アセンブリは、前記遠位ループの遠位にある、概ね真っ直ぐな遠位端を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記概ね真っ直ぐな遠位端は、前記カテーテルの長手方向軸線に対して軸上にある、実施態様6に記載のカテーテル。
(8) 前記近位ループは、より大きな半径を有し、前記遠位ループは、より小さな半径を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(9) 前記近位ループ及び前記遠位ループは、前記カテーテルの長手方向軸線に対して軸上にある、実施態様1に記載のカテーテル。
(10) 前記近位ループ及び前記遠位ループは、前記カテーテル10の長手方向軸線に対してある角度で斜めに配向されている、実施態様1に記載のカテーテル。
【0088】
(11) 前記斜角は、約45度〜105度の範囲である、実施態様10に記載のカテーテル。
(12) 前記斜角は、約75〜105度の範囲である、実施態様10に記載のカテーテル。
(13) 前記斜角は、約90度である、実施態様10に記載のカテーテル。
(14) 前記近位ループは、約8個〜20個の電極を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(15) 前記近位ループは、約10個の電極を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
【0089】
(16) 前記近位ループは、径方向に約180度に広がる約6個の電極を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(17) インピーダンスを測定するように適合された、少なくとも1つのリング電極を更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(18) PV電位を測定するように適合された、少なくとも1つのリング電極を更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(19) 前記細長い本体及び前記遠位アセンブリを通って延在する収縮ワイヤーを更に備え、前記制御ハンドルは、該収縮ワイヤーを作動させて、前記螺旋状形態部を収縮させるように構成されている、第1の制御部材を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(20) 前記細長い本体を通って延在する偏向ワイヤーを更に備え、前記制御ハンドルは、該偏向ワイヤーを作動させて、前記細長い本体の一部分を偏向させるように構成されている、第2の制御部材を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
図1
図2
図2A
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16